説明

術具誘導手術支援装置

【課題】 本発明の目的は、MRI内において三次元位置検出装置を用いて術具誘導器具の規定断面をリアルタイムに追随・連続撮像しながら、術前に求めた特定領域(セグメンテーション)と手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示することである。
【解決手段】 MRI等の医療画像診断装置と三次元位置検出装置を用いて術具の位置をリアルタイムに追随する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いた特定領域を描出する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いて手術アクセス経路を算出する術具誘導手術支援装置において、
前記特定領域をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記MRI画像上にターゲットまでの方向及び直線距離を表示し,術具を誘導するため機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI内において三次元位置検出装置を用いて術具誘導器具の規定断面をリアルタイムに追随・連続撮像しながら、術前に求めた特定領域(セグメンテーション)と手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示する手段を備える術具誘導手術支援装置に関するものである。但し,針位置に対して奥にある場合と手前にある場合には表示色又は線種を変更してディスプレイに表示することで,三次元情報を視覚化でき,術具とターゲットの方向を二次元画像上で合わせる機能を有している。
【背景技術】
【0002】
患者による医療機関の選別及び治療方法の選択肢の広がりにより,低侵襲治療が普及しつつあり,外科手術手技は大切開手術から内視鏡下手術への移行が加速している。一方で内視鏡下手術では,限定された視野と手術空間により手技・適応の制約や術者ストレスの増大という問題を生じている。その解決方法として,内視鏡映像上にセグメンテーション特定領域を表示する機能(特許文献1)が提案されているが,手術に必要な情報は不足している。また,腹部一般の内視鏡外科手術では腹部臓器が術中に変形・移動するため,直視不可能な部位では腫瘍の位置を常に把握することが難しく,術具を腫瘍の位置に誘導するのに多くの時間を要することがあった。
【0003】
近年,術中のMRI画像を用いて穿刺針などの術具を目標部位に到達させるInterventional MRI(I-MRI)システムが登場し,いくつかの報告がなされている。具体的には,グラフィカルユーザインタフェースにMRI画像を表示して,画面上のボタンをクリックして,次に撮像する断層面を決定する方法(Magnetic Resonance in Medicine:Real-time interactive MRI on a conventional scanner;AB.Kerr他,38巻,pp.355−367(1997))や,三次元マウスなどを使う方法(米国特許−5512827号公報)などが提案されている。これらの方法では,撮像する断層面の位置や向きをマウスなどの入力手段で調整,設定しなければならず煩雑なので,MRI装置としては,より簡便に撮像する断層面の位置や向きを調整,設定できることが望ましい。その手法として,米国特許−5365927号公報や米国特許−6026315号公報などの断層面指示デバイス(ポインタなど)を用いて撮像する断層面を決定するMRI装置が提案されている(以下,ISC)。
【0004】
米国特許−5365927号公報は,断層面指示デバイスであるポインタに発光ダイオードが設けられ,操作者がポインタで指し示した位置を赤外線カメラで検出したり,関節にセンサが備えられたアームの先端部にポインタを設け,アームの関節の角度などでポインタの位置を検出し,これに基づいて,断層面を自動的に調整するものである。また,米国特許−6026315号公報は,2個の赤外線カメラと3個の反射球を備えたポインタとを使って指示した断層面を自動的に決定して撮像するものである。
【0005】
例えば(国際公開番号WO 03/026505 A1号公報)があり,図2に示すMRI装置1は,例えば,垂直磁場方式0.3T永久磁石MRI装置1であり,垂直な静磁場を発生させる上部磁石3と下部磁石5,これら磁石を連結するとともに上部磁石3を支持する支柱7,位置検出デバイス9,アーム11,モニタ13,モニタ支持部15,基準ツール17,パーソナルコンピュータ19,ベッド21,制御部23などを含んで構成されている。MRI装置1の図示しない傾斜磁場発生部は,領斜磁場をパルス的に発生させ,最大傾磁場強度15mT/mで,スルーレート20mT/m/msである。更に,MRI装置1は,静磁場中の被検体24に核磁気共鳴を生じさせるための図示しないRF送信器,被検体24からの核磁気共鳴信号を受信する図示しないRF受信器を備え,これらは12.8MHzの共振型コイルである。
【0006】
位置検出デバイス9は,2台の赤外線カメラ25と,赤外線を発光する図示しない発光ダイオードを含んで構成され,断層面指示デバイスであるポインタ27の位置及び姿勢を検出するものである。また,位置検出デバイス9は,アーム11により移動可能に上部磁石3に連結され,図2に示すように,MRI装置1に対する配置を適宜変更することができる。モニタ13,14は,図2に示すように,操作者29が把持するポインタ27により指示された被検体24の断層面の画像や術具36の映像等を表示するもので,モニタ支持部15により,赤外線カメラ25同様上部磁石3に連結されている。基準ツール17は,赤外線カメラ25の座標系とMRI装置1の座標系をリンクさせるもので,3つの反射球35を備え,上部磁石3の側面に設けられている。パーソナルコンピュータ19には,赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置が,位置データとして,例えば,RS232Cケーブル33を介して送信される。制御部23は,ワークステーションで構成され,図示しないRF送信器,RF受信器などを制御する。また,制御部23は,パーソナルコンピュータ19と接続されている。パーソナルコンピュータ19では赤外線カメラ25が検出し算出したポインタ27の位置をMRI装置1で利用可能な位置データに変換し制御部23へ送信し,映像記録装置34で記録する。位置データは,撮像シーケンスの撮像断面へ反映される。新たな撮像断面で取得された画像は液晶モニターに表示される。例えば断層面指示デバイスであるポインタを穿刺針などにとりつけ,穿刺針のある位置を常に撮像断面とする様に構成した場合,モニターには針を常に含む断面が表示されることになる。
【0007】
ここで、手術治療精度向上を目的とした手術シミュレーション機能の一環として、手術のアクセス経路を計算・描出する方法(特開2006-149560号公報、特開2002-186588号公報、特開2000-113086号公報、特開2003-30624号公報)も提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2007-7041号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記術具追随撮像機能(以下、ISC)は自由な断面を撮像できることから、位置決め撮像が不要で手術治療支援に有効である。しかし、ISCは二次元情報のために奥行き情報(三次元情報)が視覚化できず,術具とターゲットの方向を二次元画像上で合わせていたためターゲット中心(重心)に針を誘導するのが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、次の手段により解決することができる。
【0011】
本発明によれば、MRI等の医療画像診断装置と三次元位置検出装置を用いて術具の位置をリアルタイムに追随する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いた特定領域を描出する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いて手術アクセス経路を算出する術具誘導手術支援装置において、
前記特定領域をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記MRI画像上にターゲットまでの方向及び直線距離を表示し,術具を誘導するため機能を備える術具誘導手術支援装置が提供される。
【0012】
本発明は、MRI内において三次元位置検出装置を用いて術具誘導器具の規定断面をリアルタイムに追随・連続撮像しながら、術前に求めた特定領域(セグメンテーション)と手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示することである。但し,針位置に対して奥にある場合と手前にある場合には表示色又は線種を変更してディスプレイに表示することで,三次元情報を視覚化でき,術具とターゲットの方向を二次元画像上で合わせる機能を有している。また,ターゲットまでの方向及び直線距離を表示する方法は術具位置に連動して画面上に表示され,手術アクセス経路に誘導するように値を表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、MRI内において三次元位置検出装置を用いて術具誘導器具の規定断面をリアルタイムに追随・連続撮像しながら、術前に求めた特定領域(セグメンテーション)と手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示することである。但し,針位置に対して奥にある場合と手前にある場合には表示色又は線種を変更してディスプレイに表示することで,三次元情報を視覚化でき,術具とターゲットの方向を二次元画像上で合わせる機能を有している。また,ターゲットまでの方向及び直線距離を表示する方法は術具位置に連動して画面上に表示され,手術アクセス経路くるように誘導するように値を表示する。
【0014】
つまり,奥行き情報である三次元情報を二次元画像上に重畳(投影)表示することで,手術に必要な情報を増やし,手術精度を向上させる効果もある。また,一つのディスプレイに手術に必要な全ての情報を集約することで,術者の集中力を持続させる効果もあると考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明の機能フローを図1に示す。術前作業として、患者をMRIガントリー内に搬入後、MRIによる3D撮像を行い101、特定領域描出(撮像したい領域算出)102及びアクセス経路描出(術前プラニング)を行い103、各手術機器及びIVR-ISC装置を起動する104。MRI画像はモニタ上に連続して表示されており,ISC(針位置)に対してターゲットが手前(若しくは左)方向にある場合は105,特定領域を薄色で重畳表示し106,アクセス経路を実線(又は黄色線)で表示する107。一方,ISC(針位置)に対してターゲットが奥(若しくは右)方向にある場合は109,特定領域を輪郭で重畳表示し110,アクセス経路を波線(又は緑線)で表示する111。いずれの場合もディスプレイ上にはターゲット位置情報が明示されており108,数値による確認もできる。もし,ISC(針位置)に対してターゲットが中心(重心)方向にある場合は112,アクセス経路を太く(又は青線)114,特定領域内部の中心(重心)を濃く表示し115,術者は針位置調整をすることにより116,穿刺と治療が行われる117。ターゲットが複数個ある場合にはこれらの処理を繰り返すこととなり,終了する118。
【0017】
図3にISC撮像断面構成図を示す。術具36にはポインタ36が装着されており,術具位置検出装置にて術具位置を検出する。検出した位置情報を用いて術具を含む撮像断面301,第一直交断面302,第二直交断面303が構成される。
【0018】
図4にISCによる平行移動時の描写例を示す。患者400の腹部409にかけて,術具を頭方向から足方向へ平行移動401,403,405,407させた時,MRI画像は術具位置に連動して撮像断面がそれぞれ変更される402,404,406,408。この時,画像上には必ず術具が描出される410,411,412,413。
【0019】
図5にISCによる平行移動時(特定領域重畳時)の描写例を示す。図4と同様に患者500の腹部509にかけて,術具を頭方向から足方向へ平行移動501,503,505,507させた時,MRI画像は術具位置に連動して撮像断面がそれぞれ変更される502,504,506,508。この時,画像上には必ず術具が描出される510,511,512,513。ここで,事前にターゲット520を設定することで,画像上にはターゲット位置が投影表示される521,522,523,524。但し,ターゲット位置が術具よりも右にある場合には輪郭のみ表示し521,522,ターゲット位置が術具よりも左にある場合には内部を薄く表示する524。もし,ターゲットと術具位置にズレがない場合にはターゲット523を濃く表示し,術者にターゲットの奥行き情報を色調表示することができる。また,本表示例は初期設定時の表示であり,ターゲット描写設定はユーザが自由に変更できるものとする。
【0020】
図6にISCによる平行移動時(アクセス経路重畳時)の描写例を示す。図4と同様に患者600の腹部609にかけて,術具を頭方向から足方向へ平行移動601,603,605,607させた時,MRI画像は術具位置に連動して撮像断面がそれぞれ変更される602,604,606,608。この時,画像上には必ず術具が描出される610,611,612,613。ここで,事前に手術経路を設定することで,画像上には術具に相対した経路が投影表示される621,622,623,624。但し,求めた手術経路が術具よりも右にある場合には波線表示し621,622,ターゲット位置が術具よりも左にある場合には細い実線表示する624。もし,ターゲットと術具位置にズレがない場合には手術経路623を太く表示し,術者にターゲットの奥行き情報を色調表示することができる。本表示例は初期設定時の表示であり,手術経路描写設定はユーザが自由に変更できるものとする。
【0021】
図7にISCによる平行移動時(特定領域・アクセス経路重畳時)の描写例を示す。図4と同様に患者700の腹部709にかけて,術具を頭方向から足方向へ平行移動701,703,705,707させた時,MRI画像は術具位置に連動して撮像断面がそれぞれ変更される702,704,706,708。この時,画像上には必ず術具が描出される710,711,712,713。ここで,事前に手術経路及びターゲット720を設定することで,画像上には術具に相対した経路及びターゲット位置が投影表示される721,722,723,724。但し,求めたターゲット・手術経路が術具よりも右にある場合には輪郭721,722・波線731,732表示し,ターゲット位置・手術経路が術具よりも左にある場合には内部を薄く724・細い実線表示する734。もし,ターゲットと術具位置にズレがない場合には内部を濃く723・手術経路733を太く表示し,術者にターゲットの奥行き情報を色調表示することで視覚化することができる。本表示例は初期設定時の表示であり,ターゲット及び手術経路描写設定はユーザが自由に変更できるものとする。
【0022】
図8に本発明のGUI表示例を示す。画面上801にISC画像部802と各種情報部803があり,機能設定部840,表示画面設定部850がある。最初に3Dスキャン804を行い,手術経路805及び特定領域807を設定する。ISC 809を開始することで,画面802上に画像,ターゲット808,手術経路806,術具位置810及びターゲットまでの位置情報860,861が表示され,ターゲットまでの三次元位置情報を視覚的,数値的に表示することで,二次元画面に三次元情報を加えることができる。特定領域,手術経路は表示/非表示を選択することができ851,852,画像に反映される。また,手術経路を中心とした画面820や特定領域と針を三次元表示した画面830もある。但し,ここで表示される術具822,832,手術経路821,831,ターゲット823,833は同じ位置関係にあるものとする。その他,装置情報,患者情報,各種機能情報,術具情報の詳細を表示する場所もある834。
【0023】
また、本発明は術者自信(手技)による治療、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を示すISC画像重畳フローチャート図。
【図2】本発明のIVR-ISC基本構成を示す模式図。
【図3】本発明の術具誘導器具におけるISC撮像断面図を示す模式図。
【図4】本発明の実施形態におけるISC平行移動時の表示例を示す構成図。
【図5】本発明の実施形態におけるISC平行移動時(特定領域重畳時)の表示例2を示す構成図。
【図6】本発明の実施形態におけるISC平行移動時(アクセス経路重畳時)の表示例3を示す構成図。
【図7】本発明の実施形態におけるISC平行移動時(特定領域・アクセス経路重畳時)の表示例4を示す構成図。
【図8】本発明の実施形態を示すGUI表示例。
【符号の説明】
【0025】
1 MRI装置、3 上部磁石、5 下部磁石、7 支柱、9 位置検出デバイス、11 アーム、13 モニタ1、14 モニタ2、15 モニタ支持部、17 基準ツール、19 パーソナルコンピュータ、21 ベッド、23 制御部、24 被検体、25 赤外線カメラ、27 ポインタ、29 操作者、30 術者用モニタ、32 開口部、33 内視鏡、34 映像記録装置、35 反射球、36 術具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI等の医療画像診断装置と三次元位置検出装置を用いて術具の位置をリアルタイムに追随する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いた特定領域を描出する手段と前記MRI装置から得られる3Dボリューム画像を用いて手術アクセス経路を算出する術具誘導手術支援装置において、
前記特定領域をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示する手段と,
前記MRI画像上にターゲットまでの方向及び直線距離を表示し,術具を誘導するため機能を備える術具誘導手術支援装置。
【請求項2】
上記特定領域をMRI画像上に重畳表示する手段は術具を含む画像上の相対位置に重畳されたものであり,針位置に対して奥にある場合と手前にある場合には表示色又は線種を変更してディスプレイに表示することを特徴とする請求項1記載の術具誘導手術支援装置。
【請求項3】
上記手術アクセス経路をMRI画像上に重畳表示する手段は術具を含む画像上の相対位置に重畳されたものであり,針位置に対して奥にある場合と手前にある場合には表示色又は線種を変更してディスプレイに表示することを特徴とする請求項1記載の術具誘導手術支援装置。
【請求項4】
上記MRI画像上に特定領域が描出された時の重畳表示方法は特定領域及び手術アクセス経路の色又は濃度を変更し明瞭に提示することを特徴とする請求項1記載の術具誘導手術支援装置。
【請求項5】
上記ターゲットまでの方向及び直線距離を表示する方法は上記術具位置に連動して表示されるものであり,上記手術アクセス経路に誘導するように値を表示することを特徴とする請求項1記載の術具誘導手術支援装置。
【請求項6】
上記術具は術者自信(手技)による治療、ロボット/マニピュレータを用いた間接的な手術の何れにも適用可能とすることを特徴とする請求項1記載の術具誘導手術支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−201701(P2009−201701A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46977(P2008−46977)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】