説明

衛星による測位システムの用に供される基準点のネットワークにおけるネットワーク特異的変数の計算法

本発明は、(a)基準点としての受信ユニットのネットワークを前記基準点からなる複数のグループに分割するステップと、(b)前記グループ特異的補正変数を計算するステップと、(c)前記グループ特異的補正変数の組み合わせを求めるステップと、(d)前記ネットワーク特異的補正パラメータを導くステップと、を含む、前記ネットワークを有する衛星測位システムの用に供される、補正計算法を提供する。前記ステップ(a)は、(イ)前記基準点を、エッジ重み付接続グラフにおけるノードとして表し、そして、前記エッジでつながれた前記ノードの除去が発生した場合に、前記除去の発生を重み付関数に入力し、(ロ)前記グラフから、特に、プリムまたはクラスカルアルゴリズムに基づいて、最小全域木を導き、そして、(ハ)前記グループを確立するために、各々の場合において最大の重みを有する前記エッジを前記最小全域木から除去することによって、前記最小全域木を分割することを含む。前記(ハ)において、前記エッジを除去することによって、(i)前記分割の結果得た全ての部分木が、ノードの数に関する濃度条件、特に、下限値nmin、および、上限値nmaxを有する濃度条件を満たす部分木を生成し、または、(ii)ノード数が前記濃度条件を上回るような部分木を生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る衛星による測位システムに供される基準点のネットワークにおけるネットワーク特異的変数の計算法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
全地球、または、衛星による測位システムGNSS(例えば、GPS,GLONASS,ガリレオ等)は、様々な測位用途において現在に用いられているのはもちろん、将来にも用いられるだろう。物理的な条件によって、隔離地で作動する基準点(reference station)によって受信された後に得られる位置精度は制限されてしまう。
【0003】
微分GNSS(differential GNSS)の場合、可動性ユニット(mobile unit)、いわゆる、ローバー(rover)の測位は、衛星までの測定値データ、および、データ受信だけでなく、1つ以上の基準点の測定値データの受信によって、行われる。基準点の位置は知られており、そして、これはまた衛星の同じ信号を受信するので、微分補正法(differential correction method)によって一部のエラーまたは不正確さを減らすことができる。このようなエラーの例として、電離層または対流圏のエラー、あるいは、衛星の軌道から起こり得る幾何学的地形のエラーなどがある。微分法によって、基準点を使用しないでローバーを使用した場合に比べて、精度をより高めることが可能である。そのような基準点は、受信された衛星の信号からローバーのほうにデータを連続的に送信する。ここにいうデータは、未加工データでも良く、加工されたデータであっても良い。しかしながら、実際、基準点は、各々の測定プロセスに対して再びインストールされないものの、異なるユーザーによって同時に用いられる固定設備型基準点(fixed-installation reference station)の全ネットワークは土台(basis)を形成する。したがって、ネットワーク補正パラメータが、ネットワークから送信されか、または、ローバーに近傍に配された基準点に相当する虚像の(virtual)基準点に対するデータが、ネットワークにおける基準点の測定値から計算される。US5,899,957には、選ばれた領域に対するGPS補正距離を送信するための方法および装置が記載されている。この特許文書にはまた、このアプローチに関連した先行技術に対する概観が含まれている。
【0004】
基準点のネットワークについては文献[Zebhauser B.E., Euler H.-J., Keenan C.R., Wubbena G. (2002), "A Novel Approach for the Use of Information from Reference Station Networks Conforming to RTCM V2.3 and Future V3.0", ION (US Institute of Navigation), National Technical Meeting 2002, San Diego]などに紹介されている。
【0005】
そのようなネットワークは概して、制限された計算能力(特に、PCに基づくシステムの場合)に起因して、同時データ処理は不可能とされる多数の基準点を有する。したがって、同時に処理可能な基準点の数は、ネットワークを構成する基準点の総数より少ない。それゆえ、データ処理のためには、ネットワークは、合同で処理可能な(jointly processible)基準点からなるいくつかのグループまたは集団(cluster)にて分割される。その際に、前記グループは、例えば、エラー発生の観点から特定された(すなわち、所定の)基準を満たさなければならない。
【0006】
このようなグループまたは集団に属する基準点は、概して互いに隣接して存在するため、その地理的な分布は、基準点の分割の際に実質的な基準となる。更なる基準は、前記グループに割り当てられた領域または地理的な分布が球形を有しなければならないという条件である。現時点において、4〜8の基準点からなるグループが、その大きさ的に好ましいとされているが、そのような制限は濃度条件(cardinality condition)と呼ばれるものである。したがって、分割が、そのグループの大きさがこの所定の範囲内のグループを生じさせるようなものである場合、このグループに対して更なる分割を行う必要はない。極端的なケースとして、数値範囲の代わり、単一数量(single quantity)を特定して、(それに相当する分割可能性を考慮することで)分割後にすべてのグループが同じ大きさを有するようにすることも可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は衛星による測位システムに関する補正情報の改良された計算法を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、基準点のネットワークの自動または動的分割を可能にすることである。
【0009】
本発明の第3の目的は、ネットワークのロバスト性(robustness)、特に、基準点の失敗(failure)についてのロバスト性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、特許請求の範囲における請求項1、または、その従属項の発明特定事項などによって達成される。そのようは解決手段については後述する。
【0011】
本発明は、請求項1に係る衛星による測位システムに供される基準点のネットワークにおけるネットワーク特異的変数の計算法に関する。また、本発明は、前記計算法を実行させるためのコンピュータプログラムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衛星による測位システムに関する補正情報の改良された計算法が提供されるので、基準点のネットワークの自動または動的分割を可能にすることである。また、ネットワークのロバスト性、特に、基準点の失敗についてのロバスト性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によれば、ネットワークにおける変化、例えば、基準点における失敗(failure)、または、基準点におけるスイッチ・オン/スイッチ・オフに基づいて、ネットワークの自動分割(特に、動的分割)を設けることが好ましい。その後、ネットワークの機能、または、ネットワークの構造における変化をリアルタイムでモニターすることができる。それによって、本発明に係る動的分割は、例えば、事象制御方式(event-controlled manner)、または、固定割合(fixed rate)で行われる。さらに、動的分割は、ネットワークにおいて、可動性受信ユニット、いわゆる、ローバーユニットを含ませるための前提条件である。これらは静的に配置されているのではないため、適度に更新可能で、かつ、より柔軟な分割が必要となる。
【0014】
全体の基準点をいくつかのグループまたは集団に分割することは次のように表すことができる。
【0015】
まず、与えられているのは次の通りである。
【0016】
− d次元空間に存在する点または位置の場合、n個の対象または基準点からなるセットxに対して、(x1、...、xn)=:xである。xj=(xj1,...、xjd)もまた適用することができる。
【0017】
− コスト関数(H)は、次の[数1]の通りである。
【0018】
【数1】

(この[数1]は、対象をグループに割り当てる際にかかるコストを示す。別のグループに属した対象と異なる対象を割り当てる場合には、類似対象の割り当てに比べてより多くのコストがかかる。)
【0019】
また、求めようとしているのは、次の[数2]に示す割り当てファクターである。
【0020】
【数2】

(ここで、グループjには、Cj=j⇔xjが割り当てられる。c=arg minc H(c\x))
【0021】
対象を分割してグループを形成させる、いわゆる、クラスタリング手法(clustering method)は、対象の表示(representation)に対するアプローチ、例えば、ユークリッド空間または距離マットリックスにおけるベクトル的に表された対象の表示、コスト関数(cost function)の選択、例えば、L2標準、または、カルバック・ライブラー発散(Kullback-Leibler divergence)、および、割り当てアルゴリズムの最適化によって異なってくる。周知のアプローチとして、例えば、k−平均クラスタリング(k-means clustering)、または、主成分分析(principle component analysis)などがある。
【0022】
本発明によれば、基準点のネットワークはエッジ(edge;辺とも呼ぶ。)−重み付接続グラフ(cohesive and edge-weighted graph)としてモデル化される。このグラフにおいて、基準点はエッジでつながれたノード(node)を示す。ここで、エッジでつながれている各基準点間の距離は、エッジに割り当てられた重み関数(weight function)に入力されるが、本発明では、特にL2またはユークリッド標準を用いることも可能である。しかしながら、原則的に、ディレクトリに記憶されたそれ以外の距離測定値または別の標準を用いても良く、距離に予め補正値を与えても良い。さらに、例えば、アンテナ、または、受信パラメータ、基準点の高度、測定回数、使用したシステムの数(例えば、GLONASS,GPS,ガリレオなど)、および、地形特異的パラメータまたは大気パラメータのような更なる変数を重み関数に入力しても良い。地形特異的パラメータは、例えば、海岸への近接性、または、山の存在などの基準点間の地形に基づいて異なってくる。そのような変数は、例えば、デジタル領域または高度モデルから導かれ、例えば、大気の影響をモデリングするにあたってそれに相当する影響を説明する。大気パラメータは、基準点の部分的な測定値から導かれるか、あるいは、格子(grid)、または、領域の中で基準点が配置されているようなより大きな環境に関する条件を説明する。
【0023】
グラフの生成(作成)、および、分割において、次の2つの条件を記録し、それらをアルゴリズムとして考慮すべきである。先ず、最初の条件として接続グラフ(cohesive graph)を作成すべきである。これは、グラフを構成するすべてのノードが、更なるノードおよびエッジを介して、互いに直間接的につながれている(即ち、接続されている)ことを意味する。これを接続性条件(connectivity condition)と呼ぶ。二つ目に、特定数の対象または基準点からなるグループは、分割によって生じるが、この数は所定の(即ち、特定された)数値範囲に該当する必要がある。この条件を濃度条件と呼ぶ。
【0024】
接続グラフを作成するためには、原則的に、先ずすべてのノードをエッジでつなぐ。そこで、事前選択を考慮する場合もあるが、それにより、実際の接続の数を減らすことができる。そのような接続性の事前選択(これは、特に計算時間の最適化に関係する。)の例を挙げると、適当な距離閾値を特定する際に、接続性条件を適用して、各々の場合においてエッジによって各ノードをそれ以外のノードにいちいちつなぐことなく、接続グラフを作成することが必要である。一般的に、接続グラフを作成するためには、その距離が前記距離閾値より小さい全てのノードを、エッジを用いて互いにつなぐ。距離閾値が、与えられたネットワークに対する接続性条件を満たす場合、つながれている、つまり、全てのノードが直間接的につながれているグラフが生成される。通常、このような距離閾値は70kmである。距離閾値があまりにも大きく選択された場合には、計算すべきエッジの数があまりにも多くなる。他方で、距離閾値があまりにも小さく選択された場合には、接続グラフが作成(生成)されないので、接続性条件は侵害され、または、維持できなくなる。したがって、この距離閾値が平均70kmであり得るが、100kmまたはそれ以上大きくなることもあり得る。後者は、例えば、キャリア相の観測(carrier phase observation)が評価(evaluate)されなければならず、そして、積分不明確さ(integral ambiguity)をリアルタイムで(すなわち、数分以下の遅れをもって)決定しなければならないようなネットワークの場合である。キャリア相の観測を評価した結果からそのような積分あいまいさを決定しないネットワーク、および、キャリア相以外の観測(例えば、コード相の観測)だけを評価するネットワークの場合、前記距離閾値は、前記範囲の数倍(通常、150または300km)であり得る。したがって、自動測位は、観測タイプの有効性(すなわち、観測量)に基づいて、および/または、生成されるこれらのネットワークのデータ産物に基づいて、行われる。単純なリンク(link)は、有効な観測タイプ、または、生成されるデータ産物に対する距離閾値、および、関連数値を有する基準表(reference table)である。その後、このような距離閾値は、実現しようとするデータ産物、または、現時点の観測量に基づいて選択される。
【0025】
距離閾値に関するデータ産物および計算可能な基準を導くために適切な変数に関しては、先行技術文献などに記載されている。
【0026】
したがって、電離層屈折における誤差の影響に基づいて相関距離(correlation distance)を導くことに関しては、文献[Skone S.H. (2001), "The impact of magnetic storms on GPS receiver performance", Journal of Geodesy 75 (2001) 9/10, 457-468]などを参考することができる。
【0027】
距離に基づく誤差を決定すること、つまり、キャリア相の不明確さ(ambiguity)の分解性(resolvability)に関する情報、および、距離閾値を導いて、それを確立するのに適した変数を決定することに関しては、文献[Wubbena, Gagge, Seeber, Boder, Hankemeier (1996), "Reducing Distance Dependent Errors for Real-Time Precise DGPS Applications by Establishing Reference Station Networks", paper presented at ION 96, Kansas City]、および、文献[Georgiadou Y. & Kleusberg A. (1998), "On the effect of ionospheric delay on geodetic relative GPS positioning", 1987, manuscripta geodetica (1988) 13:1-8]などを参考することができる。
【0028】
それによって生成されたエッジ重み付接続グラフは、その後分割される。即ち、前記グラフは、基準点からなるいくつかのグループに分割されるが、そのときに、基準点の数、および、選ばれた濃度条件によって、すべてのグループが濃度条件を満たすまでに、数回、それより遥かに多く分割が行われることもある。
【0029】
グラフを生成した後は、先ず、最小全域木(minimum spanning tree)を導くことによって、グラフに存在しているエッジを取り除く。この目的を達成するために様々なアプローチを取ることができるが、特に、経過時間挙動(transit time behavior)によって、それぞれのケースにおいて本発明に使用されるのに部分的に(locally)最も適したソリューションを選択する欲張りアプローチ(greedy approach)を取ることができる。このような例として、例えば、文献["Introduction to Algorithms" by Thomas A. Cormen, Charles E. Leiserson, Ronald Rivest, Clifford Stein, The MIT Press, 2nd Edition, ISBN:0262032937, pages 567-573]などを参考することができる。
【0030】
最小全域木を使用した場合、以下のメリットがある:
−最小全域木に対する分割アルゴリズムが早い(O(|E|log|V|)
−分割がワンパスで実行される
−濃度条件および接続性条件を容易に、または、それほど手間をかけずに、積分する(intergrate)ことができる。
【0031】
その後、それによって得られた部分木(partial tree)が前記濃度条件の下限値以上となっている場合には、最も重みの大きい(highest weight)エッジを、前記導かれた最小全域木から取り除く。これによって形成された部分木が濃度条件の上限値を超えない場合には、濃度条件が、最終的に生成されたすべての部分木に対して満たされるまでに、前記部分木を同様の原則に基づいてさらに分割していく。この条件を満たす部分木は、分割によって確立すべき基準点のグループを示す。この分割ステップは、全ての部分木が濃度条件を満たす場合、または、それ以上更に分割することが許されない場合、例えば、分割の対象となる1以上の部分木をその濃度条件を維持しながらそれ以上分割することができない場合に、終了する。これは、例えば、部分木が9つのノードを含み、そして、濃度条件が下限値として5つのノード、および、上限値として7つのノードという強度(を有するグループを必要とする場合である。
【0032】
分割される部分木において、そのノードの数が濃度条件の上限値を上回るが、濃度条件の下限値を下回るためにそれ以上分割することができないような状況を回避するために、濃度条件は、更なる基準として以下に示す[数3]に基づいて選択され得る。
【0033】
【数3】

【0034】
ここで、nmaxは濃度条件の上限値であり、nminは濃度条件の下限値である。この規則を用いた場合、得られる部分木は、それらが濃度条件を満たす限り、さらに分割することができる。
【0035】
このような分割ステップが終わると、グループに対するグループ特異的補正変数をそれぞれ計算する。ここで、これらの補正変数は、その後、ネットワーク特異的補正パラメータを導くために再び重ねあわせ処理(combine)され得る。このための1つのアプローチとして、1以上のグループに割り当てられた基準点、または、そのグループに属する基準点を用いることである。この目的を達成するために、エッジを除去する際に、これらのエッジでつながれていた2の基準点のうち1つを、その結果(即ち、エッジを除去した結果)得られる双方のグループまたは部分木に属するものとみなして、それにより、補正パラメータを計算する際に、それを考慮する。
【0036】
本発明に係る計算法については、後述する実施例の項においてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例はあくまでも本発明の計算法を例示する目的で示されたものに過ぎない。
【0037】
図1は、基準点3のネットワークから、従来技術に係る受信ユニットとしての可動性ローバーまでの補正値Kの計算、および、送信に関する概略図である。ローバーユニット1、および、基準点の両方は全地球測位システムの衛星2から衛星信号Sを受信する。ネットワークで受信された衛星信号Sは部分的に(locally)、または、グループで処理されて、グループ特異的補正値として中央計算ユニット4に渡される。ネットワーク特異的補正値Kの計算は、そこで行われ、その後、ネットワーク特異補正値Kは送信ユニットの送信機5によって、ローバーユニット1の受信機1aのほうに送信される。受信されたネットワーク特異的補正値Kは、そこでローバーユニット1の衛星受信機1aによって受信された衛星信号Sに基づいて位置精度を高めるのに機能する。ここでは、送信機4を含むネットワーク、および、一方向コミュニケーション(unidirectional communication)が選択されているが、本発明に係る計算法は双方向コミュニケーションにも適したものである。
【0038】
図2は、12個の連続してナンバリングされた基準点からなるネットワークに関する一例である。ここで、前記基準点はいくつかのグループに分割されるが、この実施例においては、より明確に表すために簡略化を行った。濃度条件は、許容される範囲として2〜4個の基準点からなるグループを特定すべきである。この場合、接続性条件は、例えば70kmとして規定される。
【0039】
ネットワークに対するエッジ重み付接続グラフの生成を伴う計算法における第1のステップは、図3に示した概略図のように行うことができる。70km未満の距離だけ離れている全てのノード(基準点を示す)は、エッジでつながれている。この実施例において、エッジは、ノード間の距離を重み(weight)として保有する(carry)。このユークリッド距離が記載され、そして、例えば、大気アンテナに関連した影響、または、地理学上の影響のような更なるパラメータを重み付関数(weighing function)に入力することも可能だが、より明確にするために、ここではそれらについては図示しない。したがって、この第1のステップを行った結果、エッジ重み付接続グラフが生成される。ここでは、もっぱら距離だけが重み関数として考慮された。
【0040】
図4は、ネットワークを示すグラフに対して最小全域木を導くことを示した概略図である。この実施例において、最小全域木は、従来技術に知られているプリムアルゴリズム(Prim algorithm)を用いて、ノード1から出発して導かれる。このプロセスを遂行するために、各々の場合において、得られた全域木にすでに属しているノードの周りに沿って、外側限界(outer limit)を描く。ここで、この外側限界と交差する全てのエッジから、重みが最小のエッジを選んで、全域木を拡張させる。このエッジでつながれたノードは前記全域木に追加される。この実施例において、ノード1の周りにある架空のリング(imaginary ring)を横切る3つのエッジのうち、ノード4まで60.9を有するエッジが、重みが最小のエッジとなるため、そのエッジを有するノード4が全域木に追加される。ノード1および4の周りに描かれた線はもとの3つのエッジのうち2つ、および、ノード3とノード4との間にある重み56を有するエッジと交差する。これは、重みが最小のエッジを持っているので、ノード3と共に全域木に追加される。ノード1および3はノード4を介してつながれているので、ノード1とノード3間の直接的なエッジは除去される。この進歩的なアプローチに基づいて、最小全域木は導き出されるが、本発明によれば、そのほかのアプローチ、例えば、クラスカルアルゴリズム(Kruskal algorithm)のような欲張り方法を用いることも可能である。
【0041】
図5は、概略図に基づいて、最小全域木を分割することを示す。このグラフにおいて、重みが最大のエッジが識別されるが、この実施例においては、ノード7とノード11間のエッジであり、その重みは63.2である。エッジの距離から得た、5つおよび7つのノードを有する、2つの部分木は、濃度条件を満たすことができないので、これらはさらに分割される。この分割については図6に記載されている。
【0042】
左側の部分木では、ノード3とノード12間の重み56.4を有するエッジが除去されるが、それは、ノード1とノード4間に重み60.9を有するエッジ、ノード2とノード3間に重み60.2を有するエッジ、および、ノード12とノード7間に最終的に重み58.2を有するエッジ(即ち、より重みの大きいエッジ)が、その後形成されるグラフが濃度条件を侵害することなく除去することができないか、または、それ以上分割することができないからである。これは、前記エッジが、除去後に、濃度条件を満たすか、または、さらに分割され得る部分木を導くことを可能にする最大の重みを有するエッジである場合には、そのエッジを正確に除去することが許されることを意味する。重み56.4を有するエッジを除去した結果生じた2つのグループは4つおよび3つのノードを有するので、濃度条件は2つの部分に対して満たされ、更なる分割は不要となる。
【0043】
右側の部分木に関連して、61.1の重みを有するエッジは最大の重みを有するエッジではない。しかしながら、このエッジは、濃度条件を侵害せずに除去することができ、または、その後さらに分割することができるグラフを残すことができる最大の重みを有するエッジである。この場合に、前記エッジを除去した時、2つおよび3つのノードを有する2つのグループが生じる。ここで、いずれのグループも濃度条件を満たす。グラフとしての表示、および、その後のアルゴリズム的な分割を通じて、基準点からなるネットワークが自動的に分割される。特に、前記ネットワークを実際の作業条件に連続的にまたは反復的に適用させること(つまり、動的に適用させること)は、計算ステップを繰り返し行いことによって、または、グループ特異的補正、および、ネットワーク特異的補正のそれに続く計算を伴うその分割ステップを繰り返し行うことによって、可能となる。
【0044】
図7は、複数のグループに分割され、かつ、より多くの標準点を有するネットワークに関する実際の例を示すものである。ここで、ネットワークはババリア(Bavaria)のドイツ連邦政府の所有地をカバーするもので、図8に分割された領域として示されている。基準点の高度分布は無視されるし、そして、各々のグループにおいて、各々の場合に示した中央局(central station)までの接続線(connecting line)は単に例示の目的で示したものである。
【0045】
図9は、分割の結果2以上のグループに属するようになった基準点の測位を示す一例である。この目的を達成するために、最小全域木を分割する際に、各々の分割ステップにおいて、除去すべきエッジの2つのノードのうち一つは、得られる両方の部分木に割り当てられ、それにより、前記2つの部分木(つまり、それらのグループ)間にリンクが生じる。ここで、リングは順にグループ特異的補値正値と、ネットワーク特異的補正値の計算に対する観点(view)との組み合わせを可能にする。図9に示した左側の部分図において、ノード7とノード11との間に重み63.2を有するエッジが除去される。この2つのノードのうち、ノード7は、右側の部分図にて示したように、両方のグループに属するものとみなされて、コンピュータにて処理される。多数の部分木、または、グループに属するこのような“重複する(余分な)”ノードを含ませることは、例えば、濃度条件の適用によって、分割プロセスの際に、または、例えば、分割が完了した後にのみ共通するノードをそれらの各々の2次グループに割り当てることによって、分割が完了した後に、起こり得る。後者の場合、分割アルゴリズムは多数の所属(affliation)を考慮する必要がない。
【0046】
本明細書では、システム特異的実施例が選択されているが、本発明に係る方法は原則的に衛星による測位システム、例えば、GPS,ガリレオ、または、GLONASSなどにも用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】基準点のネットワークを用いた補正値の送信を示す概略図である。
【図2】分割される基準点のネットワークの一例を示す。
【図3】ネットワークに対して重み付接続グラフを生成する概略図である。
【図4】ネットワークを示すグラフに対する最小全域木を導く概略図である。
【図5】最小全域木の分割に関する概略図である。
【図6】最小全域木の分割に関する概略図である。
【図7】いくつかのグループに分割される基準点のネットワークに関する実際の例を示した概略図である。
【図8】基準点のネットワークに関する実際の例を示すダイヤグラムである。ここで、ネットワークはいくつかのグループに分割される。
【図9】基準点の決定に関する概略図である。ここで、基準点は分割によって2以上のグループに属するようになる。
【符号の説明】
【0048】
1 ローバーユニット
2 衛星
3 基準点
4 送信機
5 ネットワーク
S 衛星信号
K 補正値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基準点としての受信ユニットのネットワークを前記基準点からなる複数のグループに分割するステップと、
(b)前記グループ特異的補正変数を計算するステップと、
(c)前記グループ特異的補正変数の組み合わせを求めるステップと、
(d)前記ネットワーク特異的補正パラメータを導くステップと、
を含む、前記ネットワークを有する衛星測位システムの用に供される、補正計算法であって、
前記ステップ(a)が、
(イ)前記基準点を、エッジ重み付接続グラフにおけるノードとして表し、そして、前記エッジでつながれた前記ノードの除去が発生した場合に、前記除去の発生を重み付関数に入力し、
(ロ)前記グラフから、特に、プリムまたはクラスカルアルゴリズムに基づいて、最小全域木を導き、そして、
(ハ)前記グループを確立するために、各々の場合において最大の重みを有する前記エッジを前記最小全域木から除去することによって、前記最小全域木を分割することを含み、
前記(ハ)において、前記エッジを除去することによって、(i)ノード数に関する濃度条件、特に、下限値nmin、および、上限値nmaxを有する濃度条件を満たす部分木を生成し、または、(ii)ノード数が前記濃度条件を上回るような部分木を生成する
ことを特徴とする補正計算法。
【請求項2】
2つの前記ノードをつなぐ前記エッジを、前記ノード間の距離、特に、ユークリッド距離が所定の距離閾値を超えない場合にのみ生成することを特徴とする請求項1に記載の補正計算法。
【請求項3】
前記グラフに、前記距離閾値を超えない前記全てのエッジを生成することを特徴とする請求項2に記載の補正計算法
【請求項4】
前記距離閾値を、観測データの有効性、及び/または、生成すべきネットワークデータ産物の関数として自動的に決定することを特徴とする請求項2または3に記載の補正計算法。
【請求項5】
前記重み関数には、前記基準点のパラメータ、前記基準点の観測データから導かれたパラメータ、地形特異的なパラメータ、及び/または、大気パラメータを入力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の補正計算法。
【請求項6】
前記濃度条件として、許容される前記ノードの数が、4〜8であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の補正計算法。
【請求項7】
前記濃度条件を、以下に示す[数1]を満たすように選択することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の補正計算法。
【数1】

【請求項8】
前記分割を行う際に、1以上の前記基準点を2以上の前記グループに割り当てることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の補正計算法。
【請求項9】
前記ネットワークの前記受信ユニットのうち少なくとも一部が、可動性の受信ユニットであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項の記載の補正計算法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の補正計算法を実行させるための符号系列を有する電磁搬送波としての、または、データ記録媒体としてのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−540307(P2009−540307A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514657(P2009−514657)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004796
【国際公開番号】WO2007/144071
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(501116608)ライカ ジオシステムズ アクチェンゲゼルシャフト (70)
【Fターム(参考)】