説明

衛星ベースの位置決めシステムのための位相あいまい性解決法

本発明は、送信機(2)が少なくともNが3以上の搬送周波数で電磁放射線を放射する、人工衛星をベースとする位置決めシステムに関する。前記人工衛星をベースとする位置決めシステムのための位相あいまい性を解決するために、電磁放射線は受信機(1)で受信され、K擬似パス(3a、4a、5a、6a)とL搬送位相(3b、4b、5b、6b)、特に少なくとも二つの擬似パス(3a、5a)と少なくとも二つの搬送位相(3b、4b)がM個の距離データとして受信された放射線から導出され、ここでM=K+Lである。位置を決定するために、積分位相あいまい性が、2N−1個の距離データ以下のMの最大値の一次結合から導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴項前文に従って、人工衛星ベースの位置決めシステムのための位相あいまい性解決法と、コンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
位置決定のために、グローバルな又は人工衛星ベースの位置決めシステムGNSS(例えばGPS、GLONASS、GALILEO等)が、多くの用途に対して現在そして将来において用いられている。この目的のために、宇宙セグメントの人工衛星が複数の搬送周波数を有する電磁放射線を放射している。一般に、データ送信のための一つ以上のコードが、変調によってこれら搬送周波数に重ね合わされている。
【0003】
電磁放射線は、受信機によって検出され、位置決定のための異なる変数に関して評価される。従って、人工衛星から受信機までの信号の走行時間に基づいて、いわゆる擬似パスが決定され、種々の影響、例えば真のシステム時間と人工衛星や受信機クロックにおける各代表値との差異などによって、これらの偏差が生じる。これら擬似パス測定は、変調により搬送周波数に重ね合わされ、人工衛星からの信号放射の時間に関するデータを含んだコードをベースとしている。衛星信号は、例えばGPSシステムといった指定された複数の搬送周波数、L1(154・10.23・106Hz)、L2(120・10.23・106Hz)、又はL3(115・10.23・106Hz)で送信される。GALILEOの場合、例えば、対応する周波数は、E1-L1-E2とE5a(L5)と、第三信号として利用可能なE6(125・10.23・106Hz)で指定される。GALILEOの場合、他の周波数も同様に測定可能である。
【0004】
距離決定のための他の可能性は、信号の搬送位相データとしての使用に存する。位相シフト測定が実行され、搬送位相の使用は、正確な位置の決定を可能にする。しかし、位相測定の欠点は、それらの距離が、位相あいまい性と呼ばれる使用される波長の多重性によってのみ決定されることである。もしこれらの位相あいまい性が知られていたなら、擬似パスと同等に高度に正確ないわゆる位相パスは、搬送位相をベースとして利用可能であったろう。波長が応用可能なサイクルにおいて、搬送位相の助けを借りて、観察結果の掛け算によって位相パスが得られる。
【0005】
二つの周波数を利用することで、元来、電離層の走行時間遅れを補正することを目的としていた。しかし、特別な組み合わせの位相も一次結合によって生成することができる。例えば、電離層又は幾何学的に自由な一次結合である。このような一次結合、即ち一般的に組み合わせるべきn個の要素xiの所望の倍数の総和、即ち、関連した正又は負の係数aiと、要素と独立した任意の付加項を伴う

が、搬送位相、即ち位相パスの観測結果と同様に、擬似パスのために生成される。この目的のために、対応する観察結果は、特定の係数で掛け算される。幾何学的又は電離層から自由な一次結合を生成するために、実数の係数が用いられる。アルゴリズムにおける正確な決定のために、実数の係数は、位相あいまい性の積分の性質を破壊する。もし積分の変数が一次結合で用いられた場合、積分の性質はアルゴリズム内の決定のために保持される。
【0006】
いわゆる「ワイドレーン」を解くために、両波長での搬送位相と擬似パスの組み合わせは、1980年代に開発された。両波長での擬似パス測定用の最初の民間GPS受信機が、その時に市場に出た。この受信機は、L1周波数とL2周波数の両方で、まだ非暗号化Pコードを用いていた。約30メートルというより短いコード波長のために、測定された擬似パスは、実質的にC/Aコード(300メートル波長)を用いた擬似パス測定より高精度であった。L1とL2搬送位相測定と同様に、L1とL2擬似パスが記録された。「ワイドレーン」の場合に、積分変数のみが用いられ、積分の位相あいまい性の測定の有利さが保持された。
【0007】
二つの波長の測定結果の組み合わせの原理は、すべての観察結果に共通な項目の削除と、衛星への斜めの経路の組み合わせと、擬似パスに対する異なる信号となる対流圏等の分散的な電離層の項目と、位相測定とに存する。一般の解法が、都合の良いワイドレーンのために効果があるのに対して、この方法は2波長の所望の一次結合に対して設定できる。ステーションと人工衛星間のワイドレーンの解は、理論的にのみ可能であることに注意すべきである。周波数間で、人工衛星と受信機におけるクロックエラーの差が、この可能性を妨げる。このために、二つの衛星と二つの受信機又はそれぞれの差分クロックの導入間のいわゆる二重差分の形成後にのみ、解がもたらされる。
【0008】
二つの周波数を用い、調整された搬送位相と擬似パスとを測定するこのアプローチは、原則として搬送位相を用いて可能となる精度を擬似パス測定で可能となる位相あいまい性の決定と組み合わせる。位相と擬似パスが解くべき等式のシステムに組み合わされたいわゆるMelbourne-Wubbenaアプローチが、直接の解を可能にする。ここで、搬送位相測定は位相パスとして表される。即ち、メートル単位において、サイクルの代わりに通常用いられるいわゆる位相パスが、各搬送位相の波長の乗算によって得られる。
【0009】
他のアプローチは、二つの搬送周波数に対する位相パスのモデル化に基づいて次式に従う。

擬似パスは次式に従う。

ここで、i=1、2であり、

はi番目の搬送周波数と連携した位相パスを示し、Riはi番目の擬似パスを示し、(は特にクロックエラーと非分散エラー項を含む人工衛星と受信ユニット間の幾何学的パスを示し、

は、i番目の搬送周波数に対する電離層の影響を示し、Niはi番目の搬送周波数と連携した波長

に対する位相あいまい性を示し、

はi番目の搬送周波数と連携した位相パスのノイズ項を示し、

はi番目の擬似パスに対するノイズ項を示す。対応するシステムの等式の解は、対応する位置決定が可能なように、位相あいまい性Niの決定又は位相あいまい性と独立な項Aを有する位相あいまい性Niの一次結合

を含む。
【0010】
これら4つの観察結果からなる直接の数値組み合わせは、二つの搬送位相測定間の差異からなるあいまい性の解決を可能にする。一定の環境下で、唯一の解決を可能とするため、結果は一定回数蓄積しなければならない。即ち、計算されたワイドレーンの平均値が決定される。これは、擬似パス測定が一般的に非常に不正確だからである。他の可能性は、観察結果が最も単純な形にモデル化されたKalmanフィルタの使用である。フィルタの使用は、例えばEuler, Hans-Jurgen und Goad, Clyde C, "On optimal filtering of GPS dual frequency observations without using orbit Information", Bulletin Geodesique (1991) 65: 130-143に説明されている。
【0011】
これらの方法はすべて、観察結果を前処理する方法、即ち一般的に位相あいまい性を収束するために用いられる擬似パスと位相パスを構成する。一般的に、これらの方法は生の未区別の観察結果又は例えば二重差分といった文献に記載されたすべての差分に使用できる。もし、生の観察結果又は小さな分化水準が、受信機と人工衛星間の慣例の二重差分として用いられるなら、これらの積分値は二重差分のみで決定できるので、二重差分における位相あいまい性は、正確な差分位置決定として決定しなければならない。これはまだ残存するエラー、例えば人工衛星と受信機クロックエラーのために必要である。
等式(1)と(2)の位相パスと、等式(3)と(4)の二つの擬似パス測定と、それに続く二重微分として表現される二つの搬送位相測定の組み合わせによって、ワイドレーンに対して幾何学構造、即ち、人工衛星と受信機の位置の計算を含むこと無しに位相あいまい性が決定でき、特定できる。ここで、ワイドレーンの長所はこの方法にある。二つの任意の位置にある二つの同等の人工衛星が可視である限り、単に局所的な相関変数の決定をすることなしに、調整が実行される。
【0012】
すべての位相パスと擬似パスの共通派生物のために二つの周波数を用いることによって達成される精度は、原理的に二つの周波数によって限定される。位相パス又は擬似パスの独立した向上又は最適化は、不可能である。加えて、両方ともコード化され、必要な精度でその位相に関して評価可能な搬送周波数が、常に要求される。
【0013】
システムで利用可能な観察結果のタイプによって、先行技術の対応する方法は、擬似パスと位相パスに対する同等の周波数をベースとしている。拡大した又は新たな人工衛星位置決めシステムと、より多くの数の利用できる測定周波数についての議論の出現で、それぞれに適切な周波数に対する擬似パスと位相パスを用いた、即ち常にこれらの距離データを用いた新たな方法が開発された。
【0014】
先行技術である三周波数法が、例えばVollath et al., "Analysis of Three Carrier Ambiguity Resolution Technique for Precise Relative Positioning in GNSS-2" , Navigation, Inst, of Nav., Bd. 46, Nr. 1, pp 13-23に記載されている。この方法において、インデックス1、2と4の3つの周波数の観察結果が、擬似パスと位相パスに対して同時に用いられている。このアプローチは、幾何学的かつ電離層フリーの多周波数解に分割することを目的としているが、常に搬送周波数毎に測定される両変数、即ち擬似パスと搬送位相とを用いている。
【0015】
US2005/0080568には、位相あいまい性を解決するための方法が記載されており、そこでは三つのGPS周波数が同様に用いられている。ここでも、各位相観察結果に応じた擬似パスが常に用いられている。
【0016】
同一の周波数をベースとした位相パスと擬似パスとを用いた同様のアプローチが、Jung et al., "Optimization of Cascade Integer Resolution with Three Civil Frequencies" , Proceedings of the Inst. of Nav., 19.09.2000に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、位相あいまい性を解決する方法を提供することであり、例えば人工衛星をベースにした位置決めシステムのために、短い初期化時間又は一定の精度に対してより短い初期化時間で、従来技術と比較してより高精度の測定を可能とすることである。
【0018】
もう一つの目的は、高い柔軟性を有する方法と、特に異なる作用素の宇宙セグメントの衛星信号の改良された使用とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、本発明によれば、請求項1の方法又は主題によって、また従属請求項の特徴項によって達成され、又は達成物はさらに進んでいる。
【0020】
本発明は、請求項1記載の、人工衛星ベースの位置決めシステムのための位相あいまい性解決法に関し、また請求項11記載の対応するコンピュータプログラム製品に関する。
【0021】
本発明に係るコンセプトのベースは、位相あいまい性が、必ずしも常時測定されるとは限らない全ての搬送周波数に対する実在する又は評価可能な擬似パスと搬送位相によって解決され又は決定される。もし例えば変調されたオンコード無しで位相が利用可能な場合、又はもしコードが変調によって重ね合わされるが、擬似パス測定に対して利用可能でない場合、これは、特定の環境下で有利である。例えば必要なライセンスコストのせいで、擬似パス測定において、コードを使用しないことも望ましい。また、他のコードの助けでなく、特定のコードを使用するほうが、擬似パス測定をより正確に実行できる。日付をつけるのにひつようであった二つの距離データ間の互いとの、また各搬送周波数との結合が捨てられるように、選択された搬送周波数の擬似パスと搬送位相が用いられる。Nが3以下のN個の搬送周波数の一般的定式化において、即ち、少なくとも第一、第二、第三搬送周波数と、受信した放射線からK擬似パスとL搬送パスの距離データMとしての導出である M = K + L と、Mとして2N-1以下の距離データとが用いられる。
【0022】
3つの搬送周波数の場合において、これは搬送位相の2つの周波数の組み合わせと、測定された擬似パスのための少なくとも一つの別の周波数を意味する。擬似パスを決定するために用いられる一つ又は両方は、搬送位相測定に用いられるものと異なる場合がある。
【0023】
このアプローチは、例えば様々な利点の実現を可能にする。
●擬似パスが測定されていない周波数や、例えばコーディングが無い、又は評価できない ことによる擬似パスが測定できない周波数に対して、搬送位相測定を実行できる。
●擬似パス測定の組み合わせで、システムの結果としての著しく高い特有の測定精度を得 ることができる。
●擬似パス測定の組み合わせで、搬送位相の助けを借りたスムージングによって、他の周 波数より高い精度が可能である。これは、例えばサイクルエラーの削除といった、好ま しい効果を有する。
【0024】
二つの位相パス又は擬似パスを用いた一次結合法が、先行技術に記載されている。この一次結合は、例えばWubbena, Gerhard, "GPS Carrier Phases and Clock Modeling" in Groten, E. und Strauss, R. , "GPS-Techniques Applied to Geodesy and Surveying" , Springer Verlag, Heidelberg, ISBN 354050267X, 1988に記載されているように明示的に、又はEuler, Hans-Jurgen und Goad, Clyde C, "On optimal filtering of GPS dual frequency observations without using orbit information", Bulletin Geodesique (1991) 65, Seiten 130-143に記載されているように暗示的に用いることができる。
【0025】
GPSの近代化とともに、将来、搬送位相を備えた第三の波長と、おそらくはコーディングが利用可能となるであろう。明示的そして暗示的方法は、その時に、本発明に従って、第一と第三又は第二と第三搬送位相の組み合わせと各擬似パス測定において用いることができる。新しい欧州人工衛星システムGALILEOが、同様に2波長以上の信号を放射することになる。同様の計画が、ロシアのGLONASSにも存する。
【0026】
擬似パス測定の精度を向上できるように、擬似パスのスムージングを実行することも可能である。擬似パスと位相パスとの差異が、この目的のために用いられる。

ここで、

である。
【0027】
搬送位相とメートル法のペンダントである位相パスとが、サイクルエラーによって妨害されない限り、差分と擬似パスの測定ノイズは、平均の単純な計算によって減じることができる。この方法は、例えば信号周波数受信機の場合に用いられ、即ち、搬送位相と擬似パスとのみが、同じ周波数で測定できる。しかし、時間の関数としての電離層の変化と、分散によって生じる位相パスと擬似パスへの影響による差分信号とが、平均化の時間間隔の長さに関して障害を構成する。通常、試みは一分より長く無い間、フィルタにかけられる。
【0028】
それでもやはり、擬似パスの発散フリーのスムージングを得るために、本発明によれば、搬送位相測定の所望の一次結合を形成することが可能であり、まさしく擬似パスの変化に対応するその変化は、電離層の影響の分散に関連したサインの反転を意味する。用いられた搬送位相周波数は、いずれもスムーズにすべき擬似パスの周波数と一致する必要は無い。搬送位相と擬似パス間の単純な差分は、実体的に擬似パスのノイズ項のみを含む。このノイズ項は、時間と共に平均化することができ、スムーズ化された擬似パスが後退代入により得られる。
【0029】
二つの位相パスに対する係数の適切な選択によって、時間の関数としての変化が一つの選択した擬似パスと対応する一次結合を作り出すことが可能である。擬似パスをスムージング化するために、3つ以上の搬送周波数の測定の場合において、周波数がスムーズ化すべき擬似パスと対応しない搬送位相から電離層項の回転したサインを備えた変調した位相パスを形成することが可能である。もしスムーズ化すべき擬似パスと同一の周波数を有する搬送位相がサイクルエラーを有する場合、これは有利である。このような場合において、平均化は必然的に再初期化されなければならない。
【0030】
一次結合は、例えば次式のように記載できる。

ここで



はそれぞれ第一又は第二搬送周波数と調和した位相パスを示し、

は、位相パスの一次結合を示し、

は、位相あいまい性の一次結合を示し、

は、一次結合に対するノイズ項を示す。
【0031】
一次結合と第三又は別の周波数と調和した少なくとも一つの擬似パスとの差分は、次式に従って計算される。

ここで、Rkは第三又は他の搬送周波数の擬似パスであり、

は、調整されたノイズ項である。
【0032】
上述の方法とは対照的に、右側に時間に依存する変数が存在しないため、スムージングのための時間間隔は原理的に任意に長く選択可能である。
【0033】
第三搬送周波数f3と調和した擬似パスのための回転したサインと共に、第一と第二の搬送周波数f1とf2の位相測定のために位相組み合わせ解を生成するための適切な係数



は、以下のように定式化できる。

【0034】
従って、第三搬送周波数に対する変調した位相パスは、以下の式の位相パスの一次結合となる。

これは、以下のように展開できる。

【0035】
等式(7)をベースとして、位相あいまい性の一次結合として以下のように記載できる。

この表現は、時間に関連した変化と独立な所望の基礎を有する。
【0036】
一例として具体的に表現された用途において、搬送周波数f1とf2は、GPS周波数L1とL2に対応しており、第三周波数f3は、GPS周波数L5と対応している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、先行技術に係るグローバル位置決めシステムを用いた位置決定の説明図である。グローバルな人工衛星をベースとした位置決めシステムの受信ユニット1は、送信ユニットとしての衛星2から放射された電磁放射線Sを受信し、その固有の性質、例えば搬送位相や、変調によって重ね合わされた性質、例えばコードに関して放射線Sを評価する。一般に、少なくとも4つの衛星2の視線又は受信信号が、十分に正確な位置決定のために必要である。
【0038】
例えば電離層遅延や衛星2と受信ユニット1間のクロックずれといった様々なエラーや影響の補正のために、少なくとも2つの搬送周波数が一般的に二つの変数に関して評価される。図2は、先行技術に係る二つの搬送周波数を用いた位相あいまい性の直接解による位置決定の概略図である。ここで、受信ユニット1は第一搬送周波数3と第二搬送周波数4又は協調した波長の信号を解析する。重畳されたコードをベースとして、各搬送周波数と連携し、経過時間決定を経由した受信ユニット1から衛星2までの距離を表す擬似パス3aと4aを導出することができる。しかし、この距離はまだクロックエラーによって歪められる。同時に、位相シフト又は搬送位相3bと4bが、内部参照信号に関連した二つの搬送周波数に対して決定される。これらの搬送位相3bと4bは、距離を表し、正確であるが、まだ解決すべき位相あいまい性と関連する。二重微分計算によって、この位相あいまい性を解決するために、距離の実際の決定を無しで済ますことが可能である。擬似パス3aと4aと、メートル換算法としての搬送位相3bと4bと連携する位相パスとの組み合わせから、又はその差異から、このあいまい性は直接解決され、エラーは排除される。先行技術において、同じ二つの搬送周波数、例えばGPSの場合でL1とL2が位相測定と擬似パスの決定のために用いられる。
【0039】
図3に、第三の搬送周波数5を用いた本発明に係る第一実施例の方法の概要図を示す。この例において、第一搬送周波数3と第三搬送周波数5とはコーディングを運んでいるが、第二搬送周波数4はコード無しで放射されており、コードは使用されていない。本発明によれば、三つの搬送周波数はすべてそれらに固有の情報に関して用いられる。未コード化第二搬送周波数4又はコーディング無しで測定された第二搬送周波数4に関して、搬送位相4bが測定される。他方で、第三搬送周波数5が擬似パス5aに関し解析されるが、擬似パス3aと搬送位相3bの両方は、第一搬送周波数3に対してそれぞれ導出され、測定される。他の搬送周波数を使用することで、もし位相と擬似パスの両方のデータを持っていなくても、例えば周波数に依存した電離層遅延といった物理的条件に関してもより適切な搬送周波数を利用することが可能である。このように、利用可能な搬送周波数の選択における柔軟性は、先行技術と比較した本発明に関し、向上している。原理的に可能な位相と擬似パスとの可分性は、位置決定の向上を可能にする。物理的な又はアルゴリズム的な条件の最適化によって、例えばより正確又はスムーズな擬似パスを選択することで、精度の向上が達成できる。
【0040】
四つの搬送周波数を用いた本発明に係る方法の第二の実施例の形で、位相と擬似パスの完全な分離が図4に示される。この例において、人工衛星2は4つの異なる搬送周波数を有する放射線を放射する。ここで、第一と第二搬送周波数3と4は、コーディング無しに放射され、又はコーディング無しに測定され、第三と第四搬送周波数5と6は、コードを伴って放射される。短波長で正確な第一と第二搬送周波数3と4に対して、搬送位相3bと4bの測定が実行されるが、擬似パス5aと6aの測定は、比較的低い周波数の第三と第四搬送周波数5と6に対して実行される。本発明に係る方法によれば、このようにそれぞれに対して有利な周波数範囲において測定ができる。しかし、この展開とは独立に、種々の搬送周波数で配信されるコーディングも、所望の方法で評価することができる。
【0041】
図示された搬送位相は、参照位相に関連して実際に実行された測定と物理的に正確に対応してはいない。明確にするために、搬送位相とあいまい性の項は、直接擬似パスと関連付けている。さらに、選択したシステム固有の例にもかかわらず、本発明にかかる方法は原理的にすべての所望の一般的な人工衛星をベースとした位置決めシステム、例えばGPS,GALILEO、GLONASSにも利用できる。特に、指示記号である「第一」搬送周波数、「第二」搬送周波数などは、指示記号L1、L2などと同一である必要は無い。例えば、「第一」搬送周波数がL5として表されてもよいし、「第二」をL1、「第三」をL2としてもよい。さらに、搬送周波数のために純粋に図中で例示した連続した周波数は、本発明を限定するものでは無い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】先行技術に係るグローバル位置決めシステムを用いた位置決定の説明図である。
【図2】先行技術に係る二つの搬送周波数を用いた位相あいまい性の直接解による位置決定の概略図である。
【図3】3つの搬送周波数を用いた本発明に係る方法の第一実施例の概要図である。
【図4】4つの搬送周波数を用いた本発明に係る方法の第二実施例の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
一つの第一搬送周波数(3)と、一つの第二搬送周波数(4)と、一つの第三搬送周波数(5)を含み、Nが3以上であるN個の搬送周波数を有する電磁放射線(S)を放射する送信ユニット(2)と、
受信機(1)による電磁放射線(S)の受信と、
前記受信した放射線(S)から、M=K+LであるM個の距離データとしてのK擬似パス(3a、4a、5a、6a)とL搬送パス位相(3b、4b、5b、6b)の導出と、
からなる人工衛星をベースとした位置決めシステムのための位相あいまい性解決法であって、
位置決定のために、積分位相あいまい性が搬送位相(3b、4b、5b、6b)と擬似パス(3a、4a、5a、6a)との一次結合によって決定され、
導出のために2N−1以下のM個の距離データが用いられることを特徴とする位相あいまい性解決法。
【請求項2】
少なくとも二つの擬似パス(3a、4a、5a、6a)とL搬送位相(3b、4b、5b、6b)が距離データとして使用され、
第一搬送周波数(3)と第二搬送周波数(4)と連携した第一および第二搬送位相(3b、4b)と、第三搬送周波数(5)と連携した第三擬似パス(5a)とが、一次結合することを特徴とする請求項1記載の位相あいまい性解決法。
【請求項3】
導出が、以下の等式からなるシステムを解くことからなり、

ここで、i=1、2、3で

は、実測した変数としてのi番目の搬送位相(3b、4b、5b、6b)と連携した位相パスを示し、

は、実測した変数としてのi番目の擬似パス(3a、4a、5a、6a)を示し、

は、送信ユニット(2)と受信ユニット(1)間の特にクロックエラーと分散エラー項目を含む幾何学的なパスを示し、

は、特定のi番目の搬送周波数(3、4、5、6)に対する電磁層の影響を示し、

は、i番目の搬送周波数(3、4、5、6)と連携した波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、i番目の搬送周波数(3、4、5、6)と連携した位相パスに対するノイズ項目を示し、

は、i番目の擬似パス(3a、4a、5a、6a)に対するノイズ項目を示し、
解は、位相あいまい性

を決定することを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項4】
前記電磁放射線(S)が4番目の搬送周波数(6)を有し、
第一と第二の搬送位相(3b、4b)と、第四の搬送周波数に連携した第三擬似パス(5a)と第四擬似パス(6a)とが、特に以下の等式のシステムの解として一次結合し、

ここでi=1、2で、j=3、4であり、

は実測した変数としてのi番目の搬送周波数(3、4)に連携した位相パスを示し、

は、実測した変数としてのj番目の擬似パス(5a、6a)を示し、

は、送信ユニット(2)と受信ユニット(1)間の特にクロックエラーと分散エラー項目を含む幾何学的なパスを示し、

は、特定のi番目の搬送周波数(3、4)に対する電磁層の影響を示し、

は、特定のj番目の搬送周波数(5、6)に対する電磁層の影響を示し、

は、i番目の搬送周波数(3、4)に連携した波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、i番目の搬送周波数(3、4)と連携した位相パスに対するノイズ項目を示し、

は、j番目の擬似パス(5a、6a)に対するノイズ項目を示し、
解は、位相あいまい性

を決定することを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項5】
特に第三および/又は第四擬似パス(5a、6a)と、第一又は第二搬送位相(3b、4b)に連携した位相パスとの差異の平均値を算出することによって、第三と第四擬似パス(5a、6a)の少なくとも一つを平滑化することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項6】
正符号が電離層の項目を示すように、擬似パスの一次結合

が、第一と第二搬送位相(3b、4b)から形成されて、位相パスの変化が擬似パスの変化に対応することを特徴とする請求項5に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項7】
一次結合

が、以下の関係に従い、

ここで、

は、第一搬送周波数(3)に連携した位相パスを示し、

は、第二搬送周波数(4)に連携した位相パスを示し、

は、線形結合

を示し、ここで

は係数、

は位相パスから独立した項であり、

は、送信ユニット(2)と受信ユニット(1)間の特にクロックエラーと分散エラー項目を含む幾何学的なパスを示し、

は、平滑化すべき搬送周波数に対する電離層の影響を示し、
ここで、

であり、

は、第一搬送周波数(3)に連携した特定波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、第二搬送周波数(4)に連携した特定波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、線形結合

を示し、ここで

は係数、

は位相あいまい性から独立した部分であり、

は、一次結合に対するノイズ項を示し、
解は、位相あいまい性

の一次結合

を決定することを備えたことを特徴とする請求項6に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項8】
前記一次結合

が、

に従いように形成され、ここで
1とf2は、第一と第二搬送周波数(3、4)を示し、
kは、平滑化すべき擬似パス(3a、4a、5a、6a)に連携した搬送周波数(3、4、5、6)を示し、
ここで

であることを特徴とする請求項7に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項9】
前記一次結合

と、第三と第四擬似パス(5a、6a)の少なくとも一つとの差異が計算されることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項10】
前記差異が、以下の関係式に従って計算され、

ここで、

であり、

は、特定のk番目の搬送周波数(5、6)の擬似パス(5a、6a)を示し、

は、送信ユニット(2)と受信ユニット(1)間の特にクロックエラーと分散エラー項目を含む幾何学的なパスを示し、

は特定のk番目の搬送周波数(5、6)に対する電離層の影響を示し、

は、第一搬送周波数(3)に連携した特定波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、第二搬送周波数(4)に連携した特定波長

に対する位相あいまい性を示し、

は、線形結合

を示し、ここで

は係数、

は位相あいまい性から独立した部分であり、

は、一次結合に対するノイズ項を示し、

は、k番目の搬送周波数(5、6)の擬似パスに対するノイズ項を示し、
解は、位相あいまい性

の一次結合

を決定することを備えたことを特徴とする請求項9に記載の位相あいまい性解決法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1に記載の位相あいまい性解決法を実行するための、機械読み取り可能な媒体に記憶されるか又は電磁波によって実施されるプログラムコードを有する、コンピュータで実行されるコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−541109(P2008−541109A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511610(P2008−511610)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004610
【国際公開番号】WO2006/122748
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(501116608)ライカ ジオシステムズ アクチェンゲゼルシャフト (70)
【Fターム(参考)】