説明

衛星構体パネル、及び衛星構体パネルの組立方法

【課題】 雌ねじを有するコ字形状の継手具において、ハニカムパネルとの接着結合後に雌ねじに損傷が生じた場合、継手具の脱着が不可能であるために、継手具全体およびハニカムサンドイッチパネルの一部を除去する必要が生じる。
【解決手段】 コ字形状の継手具4を、ハニカムサンドイッチパネル1に接着する第1、第2の取付部材11a、11bと、雌ねじを有して交換可能な塊状部材12または14に分けて製造し、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12または14のリーマ穴にリーマピン17を通し、ナット20によって締結した状態で、ハニカムサンドイッチパネル1に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工衛星(以下、衛星)の衛星構体を構成する衛星構体パネル、及び衛星構体パネルの組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ穴を有したコ字状の継手具を、サンドイッチパネルの接合部に接着し、衛星構体パネルを構成していた。衛星構体パネルは、継手具を介して他の衛星構体パネルに結合される。
【0003】
【特許文献1】特公平5―23587号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の衛星構体パネルは、コ字状の継手具とサンドイッチパネルの接着時に、雌ねじに接着材が流入したり、ボルト締結時の焼き付き等による損傷が生じて、継手具の脱着が不可能になるという問題があった。
この場合、継手具全体及びサンドイッチパネルの一部を除去する必要が生じる。
【0005】
このような損傷は、衛星構体パネルに電子機器が装備され、衛星構体が組みあがった後の試験作業工程で、衛星構体パネルの一部を取り外す際に確認されることがある。このような場合、作業性及び粉塵防護の観点から、構体パネルの着脱や電子機器の取り外しを行ってから、継手具全体及びサンドイッチパネルの一部の除去が行われるので、衛星の製造工期の大幅な遅延に繋がる恐れがある。このような工期遅延は、衛星の製造において致命的な問題であった。
【0006】
また、衛星の製造過程において、強度上の設計変更により、コ字状の継手具に設けられた雌ねじを、フローティングナット付の雌ねじに変更しなければならない場合や、その逆を選択する必要が生じる場合がある。
このような場合も、継手具全体及びサンドイッチパネルの一部を除去する必要が生じるという問題があった。
【0007】
この発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、衛星構体パネルに接合され、他の衛星構体パネルと結合される継手具において、継手具の雌ねじ部分を自在に交換できるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による衛星構体パネルは、端面にテーパ面を有したL字形状の第1の取付部材と、端面にテーパ面を有したL字形状の第2の取付部材と、両端に第1、第2の取付部材のテーパ面にそれぞれ嵌合するテーパ面を有し、雌ねじの設けられた塊状部材と、塊状部材及び第1、第2の取付部材を固定するための固定ピンとを有した継手具と、ハニカムサンドイッチパネルと、を備え、第1、第2の取付部材がテーパ面を対向させて離間配置されるとともに、当該各取付部材におけるL字形状の内周面がハニカムサンドイッチパネルの端面に接着され、塊状部材が相互にテーパ面を突き合わせた状態で第1、第2の取付部材の間に嵌め込まれ、少なくとも2つの固定ピンが、塊状部材及び第1、第2の取付部材の各テーパ面を着脱可能に共に貫通し、塊状部材が第1、第2の取付部材に対し着脱可能に結合されたものである。
【0009】
また、この発明による衛星構体パネルの組立方法は、衛星構体パネルと、ボルト穴の設けられた他の衛星構体パネルを、ボルトにより締結する衛星構体パネルの組立方法において、ボルトを外し、請求項1記載の衛星構体パネルと他の衛星構体パネルを分離する工程、固定ピンを外し、塊状部材を分離する工程、新たな塊状部材を第1、第2の取付部材の間に嵌め込む工程、塊状部材及び第1、第2の取付部材の各テーパ面を、共に貫通するように固定ピンを挿入する工程、ボルトを締結し、請求項1記載の衛星構体パネルと他の衛星構体パネルとを結合する工程、の順序で、衛星構体パネルを分離、再組立するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、継手具の雌ねじ部が破損した場合に、衛星構体パネルから継手具全体を除去することなく、雌ねじの設けられた塊状部材のみを取り替えることで、破損に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図を用いて説明する。
図1は衛星構体の利用形態を示す図であり、(a)は衛星構体パネルが利用される衛星を示す斜視図、(b)は衛星構体の分解図である。なお、発明の主旨とるところを除いて、詳細な図の記載を省略している。
図において、衛星100は、衛星構体50と太陽電池パネル60が設けられている。太陽電池パネル60は衛星構体50の外側面に取り付けられる。衛星構体50は、複数の衛星構体パネル10を立方体形状に組み合わせ、結合されて構成される。衛星構体パネル10の内面には、複数の電子機器60が取り付けられている。
【0012】
図2は衛星構体パネルの接続部分を示しており、図1のA部詳細図を示す。この図では、衛星構体パネル10と他の衛星構体パネル10bとが、コ字型の継手具4及びボルト70及びワッシャ73を介して相互に結合されている。衛星構体パネル10は、ハニカムサンドイッチパネル1の端部の3面に継手具4の内側面が接着されている。継手具4は雌ねじが設けられている。図示の例では、継手具4が雌ねじを有したフローティングナット16を備えている。他の衛星構体パネル10bは、ハニカムサンドイッチパネル3の端部周辺にインサート71が埋設されている。インサート71は、ボルト穴72を有し、ワッシャ73と共に、衛星構体パネル10に設けられた継手具4の雌ねじに締結される。これによって、継手具4と他の衛星構体パネル10bとの間で位置決めがなされ、ボルト70を通じてボルト70の軸方向及び軸垂直方向に荷重が伝達される。
【0013】
図3は衛星構体パネル10における継手具4の配置例を示す図である。
図示の例では、継手具4として、ハニカムサンドイッチパネル1の端部に設けられた、タイプの異なる継手具4aと継手具4bを示している。
なお、実際の衛星構体パネル10に取り付けられる継手具4a、4bのそれぞれの数は、衛星構体パネル10に要求される強度、剛性や、大きさによって決定される。
【0014】
ハニカムサンドイッチパネル1は、ハニカムコア3の表裏両面に、表皮材2がそれぞれ接着されて構成される。ハニカムコア3はアルミが用いられ、表皮材2はカーボン繊維を交互に配交して樹脂接着剤で固めた複合材料やアルミ板等を用いて構成される。
【0015】
継手具4aは、母材となる第1、第2の取付部材11a、11bと、第1、第2の取付部材11a、11bに着脱可能に取り付けられた塊状部材12を備えて構成される。継手具4bは、母材となる第1、第2の取付部材11a、11bと、第1、第2の取付部材11a、11bに着脱可能に取り付けられた塊状部材14を備えて構成される。継手具4aは、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材14が2本のリーマピン17で共に固定されている。継手具4bは、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材14が2本のリーマピン17で共に固定されている。第1、第2の取付部材11a、11b、塊状部材12、14は、アルミのように表皮材2と線膨張係数が近い金属材料で構成される。なお、リーマピン17にアルミを用いる場合は、硬質アルマイト処理を表面に施して、表面硬度を硬くしておくのが良い。リーマピン17に断熱性を持たせる場合は、線膨張係数の異なる他の金属を用いることもある。
以下、継手具4a、継手具4bの構造について、順に説明する。
【0016】
まず、図4は、継手具4aの接合構造(雌ねじ方式)を示す図であり、図3のBB断面を示している。また、図5は、継手具4aの構造(雌ねじ方式)を示す図であり、(a)は継手具4aを雌めじ15方向から見た斜視図、(b)は継手具4aを鍔側から見た図、(c)は継手具4aを継手部11と塊状部材12に分離した状態を示す図である。
【0017】
図において、継手具4aはL字形状の第1、第2の取付部材11a、11bと、塊状部材12と、リーマピン17と、ナット20を備えて構成される。第1、第2の取付部材11a、11bは、ハニカムサンドイッチパネル1の端部における端面、及び端面を間に挟む上下の表皮面の3面に固定される。
【0018】
第1、第2の取付部材11a、11bにおけるL字形状の一端部は、端面に僅かに傾斜したテーパ面が形成されるとともに、内面側がハニカムサンドイッチパネル1の端面に密着している。第1、第2の取付部材11a、11bのテーパ面は相互に離間して対向配置され、ハニカムサンドイッチパネル1の端面から離れるに従って両テーパ面間の距離が離れるように、ハニカムサンドイッチパネル1に対しテーパ面が外向きに傾斜している。第1、第2の取付部材11a、11bのテーパ面の傾斜度と長さは同じとなっている。第1、第2の取付部材11a、11bは外側面からテーパ面を通過する、少なくとも2つの貫通リーマ穴(ピン穴)18が設けられている。なお、第1、第2の取付部材11a、11bのテーパ面やリーマ穴18は、硬質アルマイト処理を表面に施して、表面硬度を硬くしておくのが良い。
【0019】
第1、第2の取付部材11a、11bは、L字形状の他端部側が平坦な鍔状になっており、この鍔状部分の内面側がハニカムサンドイッチパネル1の表皮2に接着される。この際、ハニカムサンドイッチパネル1の表皮2と第1の取付部材11aまたは第2の取付部材11bは、接着剤の接着層6を間に挟み込むようにして接着されている。また、表皮2と第1の取付部材11aまたは第2の取付部材11bとの間には、高精度の厚さ寸法を有するスペーサ7が介在して、両者の間隔が所定の距離に設定されている。すなわち、継手具4aの内部厚さ寸法は、図4に示す通り、ハニカムサンドイッチパネル1の厚さ寸法d1とハニカムサンドイッチパネル1と継手具4の隙間寸法d2(両側)を加算した結果d3と等しい。これによって、継手具4aに印加される荷重は、第1、第2の取付部材11a、11bの接着面を通じて、ハニカムサンドイッチパネル1の表皮2に伝達される。
【0020】
塊状部材12は両端部にハの字型に対向配置されたテーパ面を有している。この両テーパ面の傾斜度と長さは同じとなっており、塊状部材12は斜辺の長さが共通で線対称な台形断面形状を有する六面体をなしている。塊状部材12の両テーパ面は、台形断面の上底と下底に対し平行に、少なくとも2つのリーマ穴が貫通している。塊状部材12には、台形断面の上底と下底を垂直に貫通する雌ねじ13が設けられている。なお、塊状部材12のリーマ穴は、第1、第2の取付部材11a、11bにそれぞれ設けられたリーマ穴18と、穴径及び数が一致する。また、塊状部材12のテーパ面やリーマ穴は、硬質アルマイト処理を表面に施して、表面硬度を硬くしておくのが良い。
【0021】
塊状部材12の各テーパ面は、第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bの各テーパ面に突き当てられ、第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bの間に嵌合されて位置決めされる。すなわち、第1の取付部材11aのテーパ面と塊状部材12の一方のテーパ面とが密着し、塊状部材12の他方のテーパ面と第2の取付部材11bのテーパ面とが密着しており、第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材12とでコの字型の継手具が形成される。この状態で、少なくとも2本のリーマピン17は、それぞれ第1の取付部材11a、塊状部材12、及び第2の取付部材11bの各リーマ穴を共に貫通し、塊状部材12と第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bとが、少なくとも2本のリーマピン17によって相互に締結される。この際、各リーマピン17は、第1の取付部材11aのテーパ面、塊状部材12の両テーパ面、及び第2の取付部材11bのテーパ面を順に突き抜けるようにして、各テーパ面を貫通している。また、各リーマピン17の先端部には雄ねじが設けられ、雄ねじにナット20が係合して、各リーマピン17が第1、第2の取付部材11a、11b、及び塊状部材12に締結されている。これによって、リーマピン17が軸方向に与圧を有した状態で確実に固定される。塊状部材12は、雌ねじ13がハニカムサンドイッチパネル1の端面に垂直になるように配置される。これによって、雌ねじ13に締結されるボルト70の軸方向(ボルト軸方向)が、ハニカムサンドイッチパネル1の端部側面に垂直な方向となっている。
なお、第1の取付部材11a、塊状部材12、及び第2の取付部材11bに設けられるリーマ穴は、予め明けられた小穴に対し、リーマピン17のリーマ径と穴径が一致するように、現物に合わせた現合追加工による穴加工を行うことによって形成しても良い。
【0022】
このように、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12の各テーパ面が接触し、接触面同士が密着することによって、塊状部材12が第1、第2の取付部材11a、11bに対して、リーマピンの軸方向に位置決め固定され、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12の間で荷重伝達がなされる。同時に、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12とが、リーマピンの軸に垂直な方向(ボルト軸方向及びボルト軸に垂直な方向)に位置決め固定され、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12の間で荷重伝達がなされる。なお、リーマピン17は少なくとも2本設けられるので、第1、第2の取付部材11a、11bに対する、塊状部材12のリーマピン周りの回転が拘束される。
【0023】
塊状部材12のリーマピン軸方向に作用する荷重は、第1、第2の取付部材11a、11bに作用し、ハニカムサンドイッチパネル1に対して伝達される。ハニカムサンドイッチパネル1に伝達される荷重は、表皮2の垂直方向に圧縮力として作用し、曲げモーメントに変換されて、表皮2に対して面内荷重として伝達される。この際、リーマピン17はナット20によって軸方向に固定されているので、塊状部材12のリーマピンの軸方向に作用する荷重が、第1、第2の取付部材11a、11bの一方を表皮2から引き剥がすように作用することはない。例えば、第1の取付部材11aに対し塊状部材12のテーパ面を通じて図4の上方向に荷重が伝達される場合、同荷重はナット20を通じて第2の取付部材11bにも伝達され、第1の取付部材11a、11bに対しモーメント荷重として作用する。このモーメント荷重は、第1の取付部材11a、11bと上下表皮2との間で接合面の面内方向の荷重に変換され、接合面の面外方向の荷重には変換されないので、第1の取付部材11a、11bと表皮2との接着剥離を防ぐことができる。
【0024】
また、塊状部材12から第1の取付部材11a、11bに対し、リーマピンの軸垂直方向に作用する荷重は、ハニカムサンドイッチパネル1の表皮2に対して面内荷重として伝達される。この際、第1の取付部材11a、11bに対し、塊状部材12のテーパ面を通じて、リーマピンの軸に垂直でかつハニカムサンドイッチパネル1に向かう方向に作用する荷重は、リーマピン17とナット20の間の軸力(引張荷重)に変換され、第1、第2の取付部材11a、11bがハニカムサンドイッチパネル1の表皮2から引き剥がされる方向に作用することはない。
【0025】
また、図5(c)に示すように、リーマピン17は、第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材12に対し、着脱可能に結合している。また、塊状部材12は第1、第2の取付部材11a、11bに対し、着脱可能に嵌合している。この際、ナット20を取り外すことによって、リーマピン17は第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材12から取り外すことができる。同時に、リーマピン17を取り外すことによって、塊状部材12を第1、第2の取付部材11a、11bから取り外すことができる。
【0026】
次に、図6は、継手具4bの接合構造(フローティングナット方式)を示す図であり、図3のCC断面を示している。また、図7は、継手具4bの構造(フローティングナット方式)を示す図であり、(a)は継手具4bを雌めじ15方向から見た斜視図、(b)は継手具4bを鍔側から見た図、(c)は継手具4bを継手部11と塊状部材14に分離した状態を示す図である。継手具4bは、ボルト70としてリーマボルトをフローティングナット16に係合することによって、他の衛星構体パネル10bを固定する。この場合、リーマボルトはリーマ穴(ピン穴)15と嵌合するように同一径にしておく。
なお、図において、第1、第2の取付部材11a、11b及びリーマピン17、ナット20と、ハニカムサンドイッチパネル1への接着構造は、図4、5で説明したものと同一構成であるので、ここでは説明を省略する。
【0027】
塊状部材14は両端部にハの字型に対向配置されたテーパ面を有している。この両テーパ面の傾斜度と長さは同じとなっており、塊状部材14は斜辺の長さが共通で線対称な台形断面形状を有する六面体をなしている。塊状部材14の両テーパ面は、台形断面の上底と下底に対し平行に、少なくとも2つのリーマ穴が貫通している。塊状部材14には、台形断面の上底と下底を垂直に貫通するリーマ穴15が設けられている。また、塊状部材14における台形断面の上底側には、リーマ穴15と同軸にフローティングナット16が取り付けられている。なお、塊状部材14のリーマ穴は、第1、第2の取付部材11a、11bにそれぞれ設けられたリーマ穴18と、穴径及び数が一致する。また、塊状部材14のリーマ穴及びテーパ面は、硬質アルマイト処理を施して、表面硬度を硬くしておくの蛾良い。
【0028】
塊状部材14の各テーパ面は、第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bの各テーパ面に突き当てられ、第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bの間に嵌合されて位置決めされる。すなわち、第1の取付部材11aのテーパ面と塊状部材14の一方のテーパ面とが密着し、塊状部材14の他方のテーパ面と第2の取付部材11bのテーパ面とが密着しており、第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材14とでコの字型の継手具が形成される。この状態で、少なくとも2本のリーマピン17は、それぞれ第1の取付部材11a、塊状部材14、及び第2の取付部材11bの各リーマ穴を共に貫通し、塊状部材14と第1の取付部材11a及び第2の取付部材11bとが、少なくとも2本のリーマピン17によって相互に締結される。この際、各リーマピン17は、第1の取付部材11aのテーパ面、塊状部材14の両テーパ面、及び第2の取付部材11bのテーパ面を順に突き抜けるようにして、各テーパ面を貫通している。また、各リーマピン17の先端部には雄ねじが設けられ、雄ねじにナット20が係合して、各リーマピン17が第1、第2の取付部材11a、11b、及び塊状部材14に締結されている。これによって、リーマピン17が軸方向に与圧を有した状態で確実に固定される。塊状部材14は、リーマ穴15がハニカムサンドイッチパネル1の端面に垂直になるように配置される。これによって、リーマ穴15及びフローティングナット16に締結されるボルト70の軸方向(ボルト軸方向)が、ハニカムサンドイッチパネル1の端部側面に垂直な方向となっている。
なお、第1の取付部材11a、塊状部材12、及び第2の取付部材11bに設けられるリーマ穴は、予め明けられた小穴に対し、リーマピン17のリーマ径と穴径が一致するように、現物に合わせた現合加工による穴追加工を行うことによって形成しても良い。
【0029】
このように、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材14の各テーパ面が接触し、接触面同士が密着することによって、塊状部材14が第1、第2の取付部材11a、11bに対して、リーマピンの軸方向に位置決め固定され、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12の間で荷重伝達がなされる。同時に、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材14とが、リーマピンの軸に垂直な方向(ボルト軸方向及びボルト軸に垂直な方向)に位置決め固定され、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12の間で荷重伝達がなされる。なお、リーマピン17は少なくとも2本設けられるので、第1、第2の取付部材11a、11bに対する、塊状部材14のリーマピン周りの回転が拘束される。
【0030】
塊状部材14のリーマピン軸方向に作用する荷重は、第1、第2の取付部材11a、11bに作用し、ハニカムサンドイッチパネル1に対して伝達される。ハニカムサンドイッチパネル1に伝達される荷重は、表皮2の垂直方向に圧縮力として作用し、曲げモーメントに変換されて、表皮2に対して面内荷重として伝達される。この際、リーマピン17はナット20によって軸方向に固定されているので、塊状部材14のリーマピンの軸方向に作用する荷重が、第1、第2の取付部材11a、11bの一方を表皮2から引き剥がすように作用することはない。例えば、第1の取付部材11aに対し塊状部材14のテーパ面を通じて図4の上方向に荷重が伝達される場合、同荷重はナット20を通じて第2の取付部材11bにも伝達され、第1の取付部材11a、11bに対しモーメント荷重として作用する。このモーメント荷重は、第1の取付部材11a、11bと上下表皮2との間で接合面の面内方向の荷重に変換され、接合面の面外方向の荷重には変換されないので、第1の取付部材11a、11bと表皮2との接着剥離を防ぐことができる。
【0031】
また、塊状部材14から第1の取付部材11a、11bに対し、リーマピンの軸垂直方向に作用する荷重は、ハニカムサンドイッチパネル1の表皮2に対して面内荷重として伝達される。この際、第1の取付部材11a、11bに対し、塊状部材14のテーパ面を通じて、リーマピンの軸に垂直でかつハニカムサンドイッチパネル1に向かう方向に作用する荷重は、リーマピン17とナット20の間の軸力(引張荷重)に変換され、第1、第2の取付部材11a、11bがハニカムサンドイッチパネル1の表皮2から引き剥がされる方向に作用することはない。
【0032】
また、図7(c)に示すように、リーマピン17は、第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材14に対し、着脱可能に結合している。また、塊状部材14は第1、第2の取付部材11a、11bに対し、着脱可能に嵌合している。この際、ナット20を取り外すことによって、リーマピン17は第1、第2の取付部材11a、11b及び塊状部材14から取り外すことができる。同時に、リーマピン17を取り外すことによって、塊状部材14を第1、第2の取付部材11a、11bから取り外すことができる。
【0033】
この実施の形態では、ボルト穴72の設けられた他の衛星構体パネル10bを、ボルト70により締結する衛星構体パネルの組立方法において、次の工程手順で、雌ねじの損傷を修復し、衛星構体パネル10aと他の衛星構体パネル10bとを分離、再組立することができる。なお、第1、第2の取付部材11a、11bは、ハニカムサンドイッチパネル1の端部に接着されている。
第1の工程では、ボルト穴72を介して雌ねじ(雌ねじ13またはフローティングナット16)に締結されているボルト70を外し、衛星構体パネル10aと他の衛星構体パネル10bを分離する。
第2の工程では、ナット20及びリーマピン17を外し、塊状部材12または14を分離する。
第3の工程では、新たな塊状部材12または14を、第1、第2の取付部材11a、11bの間に嵌め込んで、各テーパ面が相互に突き当たるようにしてコの字状の継手具を形成する。
第4の工程では、塊状部材12または14及び第1、第2の取付部材11a、11bの各テーパ面を、共に貫通するようにリーマピン17を挿入する。なお、この際、塊状部材12または14及び第1、第2の取付部材11a、11bの各テーパ面を貫通するより径の大きいリーマ穴を追加工し、このリーマ穴と同一径となる径の大きいリーマピン17を挿入しても良い。
第5の工程では、ボルト70をボルト穴72を介して雌ねじ(雌ねじ13またはフローティングナット16)に締結し、衛星構体パネル10と他の衛星構体パネル10bとを再結合する。
【0034】
さらに、この実施の形態によれば、継手具4aと継手具4bの交換を行うことができる。例えば、製品開発の進展に伴い、雌ねじ締結方式からフローティングナットとリーマ締結方式への変更またはその逆を選択する必要が生じる場合がある。このような場合であっても、塊状部材12と塊状部材14を交換するだけで、容易に締結方式を変更することができる。
【0035】
なお、雌ねじ締結方式では、ねじの締結力によってねじ座面に生じる摩擦力により、他の衛星構体パネル10bを締結する。他の衛星構体パネル10bとの結合に際して、パネル面内方向での位置決め許容度があるので、ボルト穴の位置寸法誤差を許容することができる。反面、衛星構体パネル間で所要以上の荷重が印加された場合、衛星構体パネル10bとの締結部分が滑る可能性があるので、構造設計上は衛星構体パネル10の面外方向にのみ荷重伝達されると仮定することがある。
また、フローティングナットとリーマ締結方式の場合、リーマボルトがリーマ穴15に嵌合することによって、他の衛星構体パネル10bに対しパネル面内方向に完全に位置決め固定されるが、寸法誤差の許容度はない。また、構造上は、衛星構体パネル間で3方向に荷重伝達される。
このように、設計条件によって、雌ねじ締結方式とフローティングナットとリーマ締結方式の使い分けは重要であり、製造及び試験(例えば、熱環境試験)段階で両方式を変更できることは、ロケットによる打上及び熱環境下での素材変形や確実な強度設計が要求される衛星の製造上有用である。
【0036】
以上説明した通り、この実施の形態1は、端面にテーパ面を有したL字形状の第1の取付部材11aと、端面にテーパ面を有したL字形状の第2の取付部材11bと、両端に第1、第2の取付部材11a、11bのテーパ面にそれぞれ嵌合するテーパ面を有し、雌ねじ(雌ねじ13またはフローティングナット16)の設けられた塊状部材12または14と、塊状部材12または14及び第1、第2の取付部材11a、11bを固定するためのリーマピン17とを有した継手具4aまたは4bと、ハニカムサンドイッチパネル1とを備え、第1、第2の取付部材11a、11bがテーパ面を対向させて離間配置されるとともに、当該各取付部材におけるL字形状の内周面がハニカムサンドイッチパネル1の端面に接着され、塊状部材12または14が相互にテーパ面を突き合わせた状態で第1、第2の取付部材11a、11bの間に嵌め込まれ、少なくとも2つのリーマピン17が、塊状部材12または14及び第1、第2の取付部材11a、11bの各テーパ面を着脱可能に共に貫通し、塊状部材12または14が第1、第2の取付部材11a、11bに対し着脱可能に結合される。すなわち、コ字形状の継手具4を、ハニカムサンドイッチパネル1に接着する第1、第2の取付部材11a、11bと、交換可能な塊状部材12または14に分けて製造し、第1、第2の取付部材11a、11bと塊状部材12または14のリーマ穴にリーマピン17を通し、ナット20によって締結した状態で、ハニカムサンドイッチパネル1に取り付けることを特徴とする。これにより、継手具4aまたは4bとハニカムサンドイッチパネル1が固定され、ボルト70を介して継手具4aまたは4bに結合された他の衛星構体パネル10bからハニカムサンドイッチパネル1への荷重伝達経路が形成される。
【0037】
この実施の形態1によれば、塊状部材12の雌ねじ13または塊状部材14におけるフローティングナット16もしくはリーマ穴15が破損した場合は、継手具全体を除去することなく、塊状部材12または14のみを取り替えることで対処することができる。したがって、ハニカムサンドイッチパネル1に接着した状態で切削等の処置で全体を除去する必要はない。
【0038】
また、継手具4aまたは継手具4bの交換時には、ハニカムサンドイッチパネル1の接着部に影響を及ぼさないので、継手具4aあるいは4bとサンドイッチパネル1との接着強度を減少させることは無い。
【0039】
さらに、継手具の構成を、摩擦強度により設計強度が設定される雌ねじ締結方式の継手具4aから、部材強度により設計強度が設定されるフローティングナットとリーマ締結方式の継手具4bに変更する場合、またはその逆の変更を行う必要が生じた場合においても、継手具全体を除去することなく、継手具4aと継手具4bを取り替えることで容易に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】衛星構体の利用形態を示す図である。
【図2】この発明に係る実施の形態1による衛星構体パネルの接続部分の構造を示す図である。
【図3】この発明に係る実施の形態1による衛星構体パネルにおける継手具の配置を示す図である。
【図4】この発明に係る実施の形態1による継手具(雌めじ方式)の接合構造を示す図である。
【図5】この発明に係る実施の形態1による継手具(雌めじ方式)の構造を示す図である。
【図6】この発明に係る実施の形態1による継手具(フローティングナット方式)の接合構造を示す図である。
【図7】この発明に係る実施の形態1による継手具(フローティングナット方式)の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ハニカムサンドイッチパネル、2 表皮、3 コア材、4、4a、4b 継手具、6 接着層、7 スペーサ、10 衛星構体パネル、10b 他の衛星構体パネル、11a 第1の取付部材、11b 第2の取付部材、12 塊状部材、13 雌ねじ、14 塊状部材、15 リーマ穴、16 フローティングナット、17 リーマピン(固定ピン)、18 リーマ穴、20 ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面にテーパ面を有したL字形状の第1の取付部材と、端面にテーパ面を有したL字形状の第2の取付部材と、両端に上記第1、第2の取付部材のテーパ面にそれぞれ嵌合するテーパ面を有し、雌ねじの設けられた塊状部材と、上記塊状部材及び第1、第2の取付部材を固定するための固定ピンとを有した継手具と、
ハニカムサンドイッチパネルと、
を備え、
上記第1、第2の取付部材がテーパ面を対向させて離間配置されるとともに、当該各取付部材におけるL字形状の内周面がハニカムサンドイッチパネルの端面に接着され、
上記塊状部材が相互にテーパ面を突き合わせた状態で上記第1、第2の取付部材の間に嵌め込まれ、少なくとも2つの固定ピンが、上記塊状部材及び第1、第2の取付部材の各テーパ面を着脱可能に共に貫通し、上記塊状部材が第1、第2の取付部材に対し着脱可能に結合されたことを特徴とする衛星構体パネル。
【請求項2】
請求項1記載の衛星構体パネルと、ボルト穴の設けられた他の衛星構体パネルを、ボルトにより締結する衛星構体パネルの組立方法において、
上記ボルトを外し、請求項1記載の衛星構体パネルと他の衛星構体パネルを分離する工程、
上記固定ピンを外し、上記塊状部材を分離する工程、
新たな上記塊状部材を上記第1、第2の取付部材の間に嵌め込む工程、
上記塊状部材及び上記第1、第2の取付部材の各テーパ面を、共に貫通するように上記固定ピンを挿入する工程、
上記ボルトを締結し、請求項1記載の衛星構体パネルと他の衛星構体パネルとを結合する工程、
の順序で、衛星構体パネルを分離、再組立することを特徴とした衛星構体パネルの組立方法。
【請求項3】
ハニカムサンドイッチパネルと、上記ハニカムサンドイッチパネルの端部の3面を覆うように取付けられたコ字状の継手具とを、接着剤により接着して接合する衛星構体パネルの組立方法において、
端部にテーパ面を有したL字形状の第1、第2の取付部材を、上記ハニカムサンドイッチパネルの端部に接着し、
両端部にテーパ面を有し上記第1、第2の取付部材とは別体となる雌ねじの設けられた塊状部材を、そのテーパ面が上記第1、第2の取付部材のテーパ面に突き当たるように設置して、コ字状の継手具を形成した後、
上記第1、第2の取付部材と上記塊状部材に、着脱可能な固定ピンを共に貫通させて、上記第1、第2の取付部材と上記塊状部材を着脱可能に結合したことを特徴とした衛星構体パネルの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−245880(P2007−245880A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71003(P2006−71003)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】