説明

衛星端末の初期設定方法

【課題】 周回衛星を利用した衛星端末の初期設定を無線により行う、衛星端末の初期設定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 衛星端末20は、初期設定無線機10から送信される初期設定データを受信し、記憶手段のEEPROMにこのデータを書き込み、正常に書き込みが終了すると書き込み終了信号を初期設定無線機10へ送信し、書き込みが正常に行われないと書き込み異常信号を送信して、初期設定データの再送を待ち受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周回衛星を利用した衛星端末の初期設定を行う方法に関し、詳しくは、無線により初期設定を行う衛星端末の初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周回衛星を利用してデータ収集サービス及び測位サービスを受ける衛星端末は、運用を開始する前に周波数、送信間隔、運用するサービスなどの設定を行う必要がある。図4は、衛星端末の初期設定を行うための従来のシステムを示すシステム構成図である。図4において、PC又は専用書き込み機器30が、書き込み用シリアルケーブル35を介して衛星端末20の外部シリアルポートに接続される。衛星端末20は、初期設定モードに設定されて外部シリアルポートがアクティブとなる。
【0003】
次にPC又は専用書込み機30の画面上の初期設定書込みメニューに従ってデータが書き込まれ、書き込まれたデータは衛星端末20へ送信される。衛星端末20は、データが正常書き込まれると、正常書き込み信号をPC又は専用書き込み機器30へ送信し、送信終了後、電源はオフされる。PC又は専用書き込み機器30が、この正常書き込み信号を確認すると、シリアルケーブルがはずされ、初期設定が終了する。運用時には、データ収集機器40が、ユーザデータ転送ケーブル45を介して、同じ外部シリアルポートのコネクタに接続されて動作する。
【0004】
図5は、従来の初期設定のシーケンスを示すフローチャートである。PCあるいは専用書き込み機器30と衛星端末20とが、書き込み用シリアルケーブルを介して接続され、それぞれの電源が投入される(ステップ400)。衛星端末20は初期モードに設定される(ステップ410)。これにより衛星端末20の外部シリアルポートがアクティブとなり、PCあるいは専用書き込み機器30からのデータを待ち受ける受信状態となる(ステップ420、ステップ430)。データを受信すると、EEPROMの所定のエリアに該当するデータを書き込み、初期設定値をセットする(ステップ440)。書き込みが正常に行われると、それぞれの電源がオフされて、初期設定を終了する(ステップ450)。
【0005】
衛星端末20を単体で運用する場合、この初期設定におけるケーブルの接続交換の負担は、それほど大きな問題にならない。しかし、観測システムの通信手段として使用する場合、衛星端末20は、観測機器の内部に組み込まれてしまう。したがって、初期設定を終えた後にトラブルが生じて再設定となった場合、又は運用後に設定変更が生じた場合には、部分的ではあるが観測機器の分解が必要となり、設定の負担が大きくなる。特に海洋観測機器や、ブイなどの通信手段とする場合は、防水ケース内部に組み込まれて密閉されるため、さらに大きな負担が要求される。特許文献1には、無線機のスケルチ制御信号をPCで書き込み変更する旨の記載がされている。
【特許文献1】特開2002−43972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、周回衛星を利用した衛星端末の初期設定を無線により行う、衛星端末の初期設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衛星端末の初期設定方法は、周回衛星を利用して測位等のデータ収集を行う衛星端末の初期設定を行う衛星端末の初期設定方法であって、衛星端末と初期設定無線機とによりシステム構成され、衛星端末は、制御手段と記憶手段と送受信手段とを有し、初期設定無線機は、制御手段と記憶手段と送受信手段と表示手段とを有し、衛星端末の電源がオンされると、衛星端末の制御手段は、記憶手段に事前に記憶されている初期動作プログラムにより初期設定状態をチェックするステップと、初期設定されていなければ送受信機をアクティブに設定し、初期設定無線機からの初期設定データの受信を待つステップと、初期設定無線機の電源がオンされると、初期設定無線機の制御手段は、記憶手段に事前に記憶されている初期設定プログラムにより、初期設定データを入力するための入力画面を表示手段へ表示するステップと、入力画面に初期設定データが入力されると、入力された初期設定データを送受信手段により衛星端末へ送信するステップと、衛星端末の制御手段は、送受信手段を介して初期設定データを受信すると、初期設定データを記憶手段へ記憶するステップと、初期設定データが正常に記憶手段へ記憶されると、書き込み終了信号を、送受信機を介して初期設定無線機に送信し、初期設定を終了するステップと、初期設定データが正常に記憶手段へ記憶されないと、書き込み異常信号を、送受信機を介して初期設定無線機に送信し、初期設定無線機からの初期設定データの受信を再度待つステップと、初期設定無線機の制御手段は、送受信手段を介して衛星端末から書き込み終了信号を受信すると、初期設定データの送信を停止して動作を終了し、書き込み異常信号を受信すると、再度初期設定データを送信するステップと、を有することを特徴とする。無線の出力は、電波法の法定出力を越えないことが条件である。
【0008】
本発明の衛星端末の初期設定方法は、さらに、衛星端末の電源がオンされると、衛星端末の制御手段は、初期設定状態のチェックを開始し、初期設定が終了していなければ、運用モードに入ることを禁止するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周回衛星を利用した衛星端末の初期設定を運用時の無線により行うことができるため、初期設定のためのシステムのセットアップが容易となり、運用中における設定変更においても、装置を分解することなく外部から非接触で変更することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による衛星端末の初期設定方法の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による衛星端末の初期設定方法を適用するシステムを示す初期設定システム図である。衛星端末20は、制御手段と記憶手段と送受信手段とを有し、初期設定無線機10は、制御手段と記憶手段と送受信手段と表示手段とを有している。衛星端末20は、初期設定無線機10から送信される初期設定データを受信し、記憶手段のEEPROMにこのデータを書き込む。正常に書き込みが終了すると書き込み終了信号を初期設定無線機10へ送信し、書き込みが正常に行われないと書き込み異常信号を送信して、初期設定データの再送を待ち受ける。初期設定無線機10は、初期設定用の専用機ではなく、次に述べる初期設定プログラムで動作するPCにより、一般のPSK変調器、信号発生器及びアンテナを制御しても良い。
【0011】
図2は、本発明の衛星端末の初期設定方法を示すフローチャートである。衛星端末20の電源がオンされると、衛星端末の制御手段は、記憶手段に事前に記憶されている初期動作プログラムにより初期設定状態をチェックするステップ(ステップ200、ステップ210)。初期設定されていなければ運用モードの入力を禁止して初期設定モードに入り、送受信機をアクティブに設定して初期設定無線機10からの初期設定データの受信を待つ(ステップ220〜ステップ250)。衛星端末の制御手段は、送受信手段を介して初期設定データを受信すると、初期設定データを記憶手段のEEPROMへ記憶する(ステップ260)。初期設定データが正常にEEPROMへ記憶されないと、書き込み異常信号を、送受信機を介して初期設定無線機10に送信し、初期設定無線機10からの初期設定データの受信を再度待つ(ステップ270、ステップ295)。初期設定データが正常にEEPROMへ記憶されると、書き込み終了信号を、送受信機を介して初期設定無線機10に送信し、初期設定を終了する(ステップ270〜ステップ290)。ステップ210において初期設定データが既に書き込まれていると、ステップ280、ステップ290へ進み、運用モードへ移行することができる。
【0012】
図3は、本発明の初期設定無線機の初期設定方法を示すフローチャートである。初期設定無線機10の電源がオンされると、初期設定無線機10の制御手段は、記憶手段に事前に記憶されている初期設定プログラムにより、初期設定データを入力するための入力画面を前記表示手段へ表示する(ステップ300、ステップ310)。入力画面に初期設定データが入力されると、入力された初期設定データを送受信手段により衛星端末20へ送信する(ステップ320、ステップ330)。初期設定無線機10の制御手段は、送受信手段を介して衛星端末20から書き込み終了信号を受信すると、初期設定データの送信を停止して初期設定動作を終了する(ステップ340〜ステップ360)。書き込み異常信号を受信すると、再度初期設定データを送信する(ステップ350、ステップ330)。
【0013】
以上説明したように、本発明によると、周回衛星を利用した衛星端末の初期設定及び運用状態の確認を、運用サービスの周波数及び変調方式を用いて、専用の初期設定無線機を用いなくても一般のPC、PSK変調器、信号発生器及びアンテナを用いて行うことができるため、初期設定のためのシステムのセットアップが容易となり、運用中における設定変更においても、装置を分解することなく外部から非接触で変更することが可能となり、衛星端末の生産及び運用の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】衛星端末の初期設定を行うシステムを示す初期設定システム図。
【図2】本発明の衛星端末の初期設定方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の初期設定無線機の初期設定方法を示すフローチャート。
【図4】従来のシステムを示すシステム構成図。
【図5】従来の初期設定のシーケンスを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0015】
10 初期設定無線機
20 衛星端末
30 PC又は専用書込み機器
40 データ収集機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回衛星を利用して測位等のデータ収集を行う衛星端末の初期設定を行う衛星端末の初期設定方法であって、前記衛星端末と初期設定無線機とによりシステム構成され、前記衛星端末は、制御手段と記憶手段と送受信手段とを有し、前記初期設定無線機は、制御手段と記憶手段と送受信手段と表示手段とを有し、
前記衛星端末の電源がオンされると、前記衛星端末の制御手段は、前記記憶手段に事前に記憶されている初期動作プログラムにより初期設定状態をチェックするステップと、
初期設定されていなければ前記送受信機をアクティブに設定し、前記初期設定無線機からの初期設定データの受信を待つステップと、
前記初期設定無線機の電源がオンされると、前記初期設定無線機の制御手段は、前記記憶手段に事前に記憶されている初期設定プログラムにより、初期設定データを入力するための入力画面を前記表示手段へ表示するステップと、
前記入力画面に前記初期設定データが入力されると、入力された前記初期設定データを前記送受信手段により前記衛星端末へ送信するステップと、
前記衛星端末の制御手段は、前記送受信手段を介して前記初期設定データを受信すると、前記初期設定データを前記記憶手段へ記憶するステップと、
前記初期設定データが正常に前記記憶手段へ記憶されると、書き込み終了信号を、前記送受信機を介して前記初期設定無線機に送信し、初期設定を終了するステップと、
前記初期設定データが正常に前記記憶手段へ記憶されないと、書き込み異常信号を、前記送受信機を介して前記初期設定無線機に送信し、前記初期設定無線機からの前記初期設定データの受信を再度待つステップと、
前記初期設定無線機の制御手段は、前記送受信手段を介して前記衛星端末から前記書き込み終了信号を受信すると、前記初期設定データの送信を停止して動作を終了し、前記書き込み異常信号を受信すると、再度前記初期設定データを送信するステップと、
を有することを特徴とする衛星端末の初期設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星端末の初期設定方法において、前記衛星端末の電源がオンされると、前記衛星端末の制御手段は、前記初期設定状態のチェックを開始し、前記初期設定が終了していなければ、運用モードに入ることを禁止するステップを有することを特徴とする衛星端末の初期設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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