説明

衛星航法装置

【課題】一つの衛星から、異なる変調コードによってスペクトラム拡散されて送信される複数の衛星信号の再サーチでの信号捕捉性能を向上させる衛星航法装置を提供すること。
【解決手段】同期外れ時の再サーチの際に、一つの衛星から異なる変調コードによってスペクトラム拡散されて送信された複数の衛星信号に対して、周波数スキャンと、コードスキャンとを同時に並行して行う。そして、相関度検出部による各相関値を足し合わせた加算相関値のレベルに基づいてキャリア周波数とコード位相の再捕捉を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国のGPSやその他の衛星航法システムの衛星信号を受信し、現在時刻や利用者の現在位置を計算する衛星航法装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、現在世界中で広く使用されている。このGPSに採用されている技術は、その開発が開始された1970年代のものであり、その後の技術発展を取り入れて性能を向上させる必要性が叫ばれてきた。米国政府は、GPSを近代化するために、より高度な信号形式、新たな送信周波数の追加、高精度なシステム制御などの検討を続けており、2005年以降にこれらの成果を盛り込んだ新形式の衛星が順次打ち上げられる計画となっている。
【0003】
GPSの近代化では、従来の民生用GPS受信機が使用していたL1搬送波(周波数:1575.42MHz)のL1C/A変調コードに加え、これまで軍用のP(Y)コードのみで変調されていたL2搬送波(周波数:1227.60MHz)に、新たな民間用コードとして、L2C変調コードの変調が追加される。なお、変調コードを、以下では単にコードという。
【0004】
このL2Cコードは、P(Y)コードと直交した2相位相偏移変調(BPSK:Bi-Phase Shift Keying)であり、その時系列構造を図6に示している。L2Cコードは、L2CMコードとL2CLコードという2種類の疑似雑音コードを時分割して構成されている。このうち、L2CMコードの部分にはさらに航法データ(例、衛星の軌道情報や時刻情報等)がBPSKによって乗ぜられている。L2CMコードのビットレートは511.5kbps、コード長は10230チップなので、繰り返し周期は20msである。これに対し、L2CLコードのビットレートは511.5kbpsコード長は767250なので、繰り返し周期は1.5秒である。
【0005】
GPSの近代化では、L2Cコードの追加の後に、L5搬送波(周波数:1176.45MHz)に、L5I5コード及びL5Q5コードが、さらに追加される予定である。L5I5コード及びL5Q5コードは、いずれもビットレートが10.23Mbps、コード長が10230チップ、繰り返し周期は1msで、位相が互いに直交しており変調タイミングは同期している。
【0006】
一つの衛星から、これらLIC/Aコード、L2CMコード、L2CLコード、L5I5コード、L5Q5コードが全て送信され、各コード位相は互いに同期している。図7にその同期関係を示している。
【0007】
GPSでは、これらの信号コードを受信機内のコード発生器で発生させたコードによって逆拡散して信号を取り出す。また、信号を復調するためにはダウンコンバータの最終段の搬送波(キャリア)相関器に与える局部発振周波数がGPS信号の周波数と一致することが必要である。そのために、GPS受信機では、コード相関器に与えるコード位相のスキャンと、キャリア相関器に与える周波数のスキャンとを並行して実施し、コードとキャリアの双方の相関ピーク点を探索する。これらピーク点が検出されたら、ピーク点からずれないようにコードとキャリアとを追尾する。近代化GPSでの、LIC/Aコード、L2CMコード、L2CLコード、L5I5コード、L5Q5コードは、異なる符号であるため、それぞれの周波数、コードに対してコード発生器、コード相関器、キャリア相関器などを独立に用意し、独立した信号処理系を用いてそれぞれ処理している。この出願に関連する先行技術文献としては、次のものがある。
【非特許文献1】Richard D.Fontana,et al.,The New L2 Civil Signal,Proceedings of the Institute of Navigation ION GPS-2001,Salt Lake City,Utah,September 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
GPS信号の追尾中に、建物でGPS信号が遮られるなどの理由でGPS信号の受信が途絶えると、受信機は再びGPS信号の探索(サーチ)を開始する。このような、GPS信号の受信中断後の信号探索を、再サーチという。
【0009】
この再サーチにおいて、先行技術では、次のような問題がある。図6に示したように、L2Cコードは、L2CMコードとL2CLコードを時分割して構成されている。このため、時分割されない場合に比べて、L2CMコードとL2CLコードはともに信号電力が半分になっており、S/N比も半減する。従来からのL1C/Aコードは、時分割されていないので、L2CコードはL1C/Aコードに比べてS/N比が3dB低いことになる。また、GPSの規格の一つである“Interface Control Document ICD-GPS-200C-005R1”によれば、例えば仰角5度の衛星からのL1C/A信号の受信信号強度は−158.5dBであるのに対し、L2C信号の受信信号強度は−160dBであるので、L2Cコードの方が受信信号強度も低く事情はさらに悪いことがわかる。
【0010】
このようなS/N比が低いGPS信号などの衛星信号の相関ピーク点を探索して捕捉することは、何も障害物のない開けた場所ならばあまり問題とはならないが、街路樹が茂った道路や森林の中のように衛星信号が減衰している環境では、困難である。このような衛星信号が減衰した環境では、GPS信号でのL1C/A信号やL5I5信号、L5Q5信号に対しても、良好な捕捉性能を発揮することが難しくなる。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、一つの衛星から、異なる変調コードによってスペクトラム拡散された複数の衛星信号の再サーチでの信号捕捉性能を向上させる衛星航法装置を提供することを目的とする。また、1つのGPS衛星から送信されるL2Cコードの受信信号の再サーチでの信号捕捉性能を向上させ、さらにL1C/AコードやL5I5コード、L5Q5コードの受信信号の再サーチでの信号捕捉性能をも向上させる衛星航法装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の衛星航法装置は、同一の衛星から、所定の送信キャリアが、同期し且つ異なる変調コードによってスペクトル拡散されて送信される複数の衛星信号を受信し、それら各衛星信号をそれぞれ逆拡散して追尾する衛星航法装置において、
各衛星信号の受信キャリア周波数と発生キャリア周波数とのキャリア相関を求めるキャリア相関部と、
各衛星信号の受信変調コードと発生変調コードとのコード位相相関を求めるコード位相相関部と、
キャリア相関及びコード位相相関された各衛星信号の相関値を足し合わせた加算相関値のレベルを、検出する相関度検出部を有し、
各衛星信号を追尾している状態から追尾が外れ、再サーチを行う場合に、各衛星信号に対して前記発生キャリア周波数と前記発生変調コード位相とを変化させながら、前記キャリア相関部でのキャリア相関と前記コード位相相関部でのコード位相相関を並行して行い、
前記相関度検出部での加算相関値に基づいて、各衛星信号におけるキャリア周波数とコード位相の再捕捉を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2の衛星航法装置は、請求項1に記載の衛星航法装置において、発生キャリア周波数fsLnを発生させる際に、それぞれの衛星信号の衛星からの衛星送信周波数fLnに比例する量として変化するオフセット周波数k・ΔfLnと、追尾していたときの発生キャリア周波数foLnと、に応じて各サーチキャリア周波数を決定し、
発生コード位相φsLnを発生させる際に、それぞれの衛星信号の衛星からの変調コードのビットレートすなわち単位時間当たりの位相変化量φLnに比例する量として変化するオフセットコード位相j・ΔφLnと、追尾していたときの発生コード位相φoLnと、に応じて各サーチコード位相を決定することを特徴とする。
【0014】
請求項3の衛星航法装置は、請求項1または2に記載の衛星航法装置において、前記相関度検出部は、前記加算相関値のピーク点を検出して、キャリア周波数とコード位相の再捕捉を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項4の衛星航法装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の衛星航法装置において、キャリア相関及びコード位相相関された各相関値に、それぞれ重み付けを行う重み付加部を設け、各衛星信号の受信状態に応じた重み付けを与えた上で、前記相関度検出部に供給することを特徴とする。
【0016】
請求項5の衛星航法装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の衛星航法装置において、前記複数の衛星信号は、GPS衛星から送信されるL1C/Aコード、L2CMコード、L2CLコード、L5I5コード、及びL5Q5コードのうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衛星航法装置によれば、再サーチの際に、相関度検出部による各相関値を足し合わせた加算相関値のレベルに基づいてキャリア周波数とコード位相の再捕捉を行うから、捕捉性能を向上することができる。
【0018】
また、衛星送信周波数fLnに比例する量として変化するオフセット周波数k・ΔfLnと、追尾していたときの発生キャリア周波数foLnと、に応じてサーチキャリア周波数を決定し、且つ衛星からの変調コードのビットレートすなわち単位時間当たりの位相変化量φLnに比例する量として変化するオフセットコード位相j・ΔφLnと、追尾していたときの発生コード位相φoLnと、に応じてサーチコード位相を決定する。したがって、複数の衛星信号の再サーチを同時に開始して、同時に捕捉することができる。
【0019】
また、各衛星信号の受信状態、例えば、受信時間率や信号強度の標準偏差、に応じた重み付けを、各相関値に与えた上で、相関度検出部に供給するから、より適切に相関度の検出を行うことができる。
【0020】
また、本発明の衛星航法装置は、近代化されたGPSの外にも、ロシアのGLONASS,欧州のGALILEO、米国のWAAS、日本のMSAS,欧州のEGNOSなど、同期した複数の変調コードによってそれぞれスペクトラム拡散された複数の衛星信号が送信される衛星航法システムに、広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る衛星航法装置の実施例の構成を示す図である。本発明の衛星航法装置は、同一の衛星から、所定の送信キャリアが、同期し且つ異なる変調コードによってスペクトル拡散されて送信される複数の衛星信号を受信し、それら各衛星信号をそれぞれ逆拡散して追尾する衛星航法システムに適用することができる。以下の実施例では、近代化される予定のGPSに適用する衛星航法装置について説明するが、同様の他の衛星航法システムの衛星航法装置にも適用することができる。
【0022】
図1において、アンテナ10は、GPSの多数の衛星からの衛星信号を受信する。その多数の衛星のうちの一つの衛星から、L1C/Aコードで変調されたL1搬送波(周波数:1575.42MHz)と、軍用のP(Y)コードと直交したBPSKのL2Cコードで変調されたL2搬送波(周波数:1227.60MHz)を受信する。L2Cコードは、L2CMコードとL2CLコードという2種類の疑似雑音コードを時分割して構成されている。このうち、L2CMコードの部分にはさらに航法データ(例、衛星の軌道情報や時刻情報等)がBPSKによって乗ぜられている。
【0023】
さらに、位相が互いに直交しており変調タイミングは同期しているL5I5コード及びL5Q5コードで変調されたL5搬送波(周波数:1176.45MHz)を受信する。これらLIC/Aコード、L2CMコード、L2CLコード、L5I5コード、L5Q5コード位相は互いに同期している。それらのコード周期やビットレートなどは、図6や図7に示されており、既に説明した通りである。
【0024】
L1受信部110は、L1搬送波を数MHzの中間周波数に変換するダウンコンバータであり、フィルタによって、L2搬送波やL5搬送波などは除去され、L1搬送波の受信キャリア周波数が出力される。同様に、L2受信部120は、L1搬送波を数MHzの中間周波数に変換するダウンコンバータであり、フィルタによってL2搬送波の受信キャリア周波数が出力される。また、同様に、L5受信部130は、L5搬送波を数MHzの中間周波数に変換するダウンコンバータであり、フィルタによってL5搬送波の受信キャリア周波数が出力される。
【0025】
L1周波数相関部210は、L1受信キャリア周波数とL1発生キャリア周波数とのキャリア相関を求める。このキャリア相関が得られている追尾状態においては、L1受信キャリア周波数にL1発生キャリア周波数が追尾するように、周波数追尾制御信号StfL1によってL1発生キャリア周波数が制御される。
【0026】
L2周波数相関部220は、L2受信キャリア周波数とL2発生キャリア周波数とのキャリア相関を求める。このキャリア相関が得られている追尾状態においては、L2受信キャリア周波数にL2発生キャリア周波数が追尾するように、周波数追尾制御信号StfL2によってL2発生キャリア周波数が制御される。
【0027】
L5周波数相関部230は、L5受信キャリア周波数とL5発生キャリア周波数とのキャリア相関を求める。このキャリア相関が得られている追尾状態においては、L5受信キャリア周波数にL5発生キャリア周波数が追尾するように、周波数追尾制御信号StfL5によってL5発生キャリア周波数が制御される。
【0028】
受信信号を復調するためには、キャリア相関器に与える発生キャリア周波数が、受信キャリア周波数と一致し、且つ、コード位相相関器に与える発生コード位相が、受信コード位相と一致していることが必要である。追尾している状態では、キャリア周波数及びコード位相が一致しており、受信信号の受信キャリア周波数や受信コード位相の変化に、発生キャリア周波数や発生コード位相が、追従して変化されている。
【0029】
この追尾状態では、周波数サーチ指令信号Sfsは発生されていないので、各周波数相関部210、220、230では、周波数サーチは行われない。
【0030】
図2は、L1周波数相関部210の構成例を示す図であり、相関器212とL1局部発振器214とL1探索周波数計算部216とL1周波数追尾制御部218を有している。
【0031】
相関器212は、L1受信部110からの受信キャリア周波数と、L1局部発振器214から発生される発生キャリア周波数との相関を取り、L1受信コードを出力する。
【0032】
L1周波数追尾制御部218は、追尾状態では、周波数追尾制御信号StfL1によって、L1発振キャリア周波数が、L1受信キャリア周波数を追尾するように制御されるキャリア周波数制御信号を発生し、L1探索周波数計算部216を介してL1局部発振器214に入力する。なお、追尾状態では、周波数サーチ指令信号Sfsが発生されていないので、発生キャリア周波数制御信号は、L1探索周波数計算部216をそのまま通過してL1局部発振器214へ入力される。
【0033】
L1受信キャリア周波数を追尾している状態から追尾が外れると、再サーチを行う。追尾が外れると、L1周波数追尾制御部218の発生キャリア周波数は追尾していたときの発生キャリア周波数に固定される。そして、L1探索周波数計算部216は、追尾外れに応じて発生される周波数サーチ指令信号Sfsに応じて、その衛星からの衛星送信周波数に比例する量として変化するオフセット周波数と、追尾していたときの発生キャリア周波数とを加算した発生キャリア周波数を発生するような、発生キャリア周波数制御信号をL1局部発振器214へ供給する。即ち、追尾外れ時に発生される、加算した発生キャリア周波数は、当該衛星からのL1送信周波数fLnに比例する量として変化するオフセット周波数と、追尾していたときの発生キャリア周波数とに応じて決定される。
【0034】
なお、L1探索周波数計算部216からの発生キャリア周波数制御信号は、L1周波数追尾制御部218にも入力される。これは、再サーチの結果、受信信号が捕捉されたときに、その捕捉時の発生キャリア周波数を、再追尾時に用いるためである。
【0035】
L2周波数相関部220と、L5周波数相関部230の構成例は、L1周波数相関部210の構成例を示す図2と同様な構成であり、図2の「L1」がそれぞれ「L2」もしくは「L5」に変更されることになる。
【0036】
図1に戻って、L1C/Aコード位相相関部310は、L1周波数相関部210からのL1C/A受信コードと、L1C/A発生コードとのコード相関を求める。このコード相関が得られている追尾状態においては、L1C/A受信コード位相にL1C/A発生コード位相が追尾するように、コード位相追尾制御信号StφL1C/AによってL1C/A発生コード位相が制御される。
【0037】
L2CMコード位相相関部320は、L2周波数相関部220からのL2CM受信コードと、L2CM発生コードとのコード相関を求める。このコード相関が得られている追尾状態においては、L2CM受信コード位相にL2CM発生コード位相が追尾するように、コード位相追尾制御信号StφL2CMによってL2CM発生コード位相が制御される。
【0038】
L2CLコード位相相関部330は、L2周波数相関部220からのL2CL受信コードと、L2CL発生コードとのコード相関を求める。このコード相関が得られている追尾状態においては、L2CL受信コード位相にL2CL発生コード位相が追尾するように、コード位相追尾制御信号StφL2CLによってL2CL発生コード位相が制御される。
【0039】
L5I5コード位相相関部340は、L5周波数相関部230からのL5I5受信コードと、L5I5発生コードとのコード相関を求める。このコード相関が得られている追尾状態においては、L5I5受信コード位相にL5I5発生コード位相が追尾するように、コード位相追尾制御信号StφL5I5によってL5I5発生コード位相が制御される。
【0040】
また、同様に、L5Q5コード位相相関部350は、L5周波数相関部230からのL5Q5受信コードと、L5Q5発生コードとのコード相関を求める。このコード相関が得られている追尾状態においては、L5Q5受信コード位相にL5Q5発生コード位相が追尾するように、コード位相追尾制御信号StφL5Q5によってL5Q5発生コード位相が制御される。
【0041】
追尾状態では、コード位相サーチ指令信号Sφsもやはり発生されていないので、各コード位相相関部310〜350では、コード位相サーチは行われない。
【0042】
図3は、L1C/Aコード位相相関部310の構成例を示す図であり、相関器312とL1C/Aコード発生器314とL1C/A探索コード位相計算部316とL1C/Aコード位相追尾制御部318と同期加算部319を有している。
【0043】
相関器312は、L1周波数相関部210からのL1C/A受信コードと、L1C/Aコード発生器314から発生される発生コードとの相関を取り、コード相関値を出力する。
【0044】
L1C/Aコード位相追尾制御部318は、追尾状態では、コード位相追尾制御信号StφL1C/Aによって、L1C/A発生コード位相が、L1C/A受信コード位相を追尾するように制御されるコード位相制御信号を発生し、L1C/A探索コード位相計算部316を介してL1C/Aコード発生器314に入力する。なお、追尾状態では、コード位相サーチ指令信号Sφsが発生されていないので、コード位相追尾制御信号StφL1C/AはL1C/A探索コード位相計算部316をそのまま通過してL1C/Aコード相関器314へ入力される。
【0045】
L1C/A受信コード位相を追尾している状態から追尾が外れると、再サーチを行う。追尾が外れると、L1C/Aコード位相追尾制御部318の発生コード位相は追尾していたときの発生コード位相に固定される。そして、L1C/A探索コード位相計算部316は、追尾外れに応じて発生されるコード位相サーチ指令信号Sφsに応じて、その衛星からの衛星信号の変調コードのビットレートに比例する量として変化するオフセットコード位相と、追尾していたときの発生コード位相とを加算した発生コード位相を発生するような、発生コード位相制御信号をL1C/Aコード相関器314へ供給する。即ち、追尾外れ時に発生される、加算した発生コード位相は、当該衛星からの変調コードのビットレートすなわち単位時間当たりの位相変化量に比例する量として変化するオフセットコード位相と、追尾していたときの発生コード位相とに応じて決定される。
【0046】
なお、L1C/A探索コード位相計算部316からの発生コード位相制御信号は、L1C/Aコード位相追尾制御部318にも入力される。これは、再サーチの結果、受信信号が捕捉されたときに、その捕捉時の発生コード位相を、再追尾時に用いるためである。
【0047】
同期加算部319は、相関器312から出力される相関値を一定時間に亘って同期加算し、L1C/Aコードの相関値として、出力する。その同期加算する一定時間は、L1C/Aコードの周期に合わせて決められる。その一定時間は、通常、L1C/Aコード周期の整数倍に設定される。その整数倍は、感度を良くしたい場合には長く設定されることが良く、また、サーチ時間を短くしたい場合には短く設定されることがよい。
【0048】
L2CMコード位相相関部320、L2CLコード位相相関部330、L5I5コード位相相関部340、L5Q5コード位相相関部350の構成例は、L1C/Aコード位相相関部310の構成例を示す図3と同様な構成であり、図3の「LC/A1」がそれぞれ「L2CM」、「L2CL」、「L5I5」もしくは「L5Q5」に変更されることになる。
【0049】
再び、図1に戻って、重み付加部410は、L1C/Aコード位相相関部310からのL1C/Aコード相関値に、重み付け制御信号SwtL1C/Aに応じた重みを付加する。また、重み付加部420、430、440、450は、コード位相相関部320、330、340、350からのL2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の各コード相関値に、重み付け制御信号SwtL2CM、SwtL2CL、SwtL5I5、SwtL5Q5に応じた重みを、それぞれ付加する。
【0050】
これらの重み付け制御信号SwtL2CM、SwtL2CL、SwtL5I5、SwtL5Q5は、追尾状態では全て規定値(例、1)にしておき、再サーチ時には、各受信信号L1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の受信状態を追尾中に観測しておき、それぞれの受信状態に応じて所定の重み付け値にすることができる。例えば、追尾中の受信状態としては、受信時間率や、信号強度の標準偏差などが用いられる。例えば、受信時間率が、高いほど受信が安定しているので、受信時間率に比例するように、重み付け値を大きくする。また、信号強度の標準偏差が、小さいほど受信が安定しているので、その標準偏差が大きくなるほど、重み付け値を小さくすることがよい。
【0051】
加算回路500は、重み付加部410〜450でそれぞれ重み付けされた相関値を加算し、相関度検出部600へ供給する。
【0052】
相関度検出部600は、加算回路500からの加算相関値を監視する。再サーチ時において、加算相関値が、第1所定閾値を超えたときに受信信号が捕捉されたと判定する。また、加算相関値が、ピーク値になったときに受信信号が捕捉されたと判定するようにしてもよく、この場合には、相関度検出部600を相関ピーク検出部と言い換えても良い。この相関度検出部600で、加算相関値に基づいて受信信号が捕捉されたと判定されたときに、その捕捉判定信号を、制御装置900に供給する。
【0053】
相関度検出部600は、また、追尾状態においても、加算相関値が入力されており、追尾状態が何らかの原因で外れた場合に、その加算相関値が第2所定閾値よりも低くなることを検出して、同期外れの判定を行うようにする。この同期外れの判定信号を、また、制御装置900に供給する。
【0054】
なお、コード位相相関部310〜350の相関値を、同期外れの判定に用いるようにすることができる。この場合に、いずれか1つのコード位相相関部の相関値を用いて、その相関値レベルで、同期外れを検出することがよい。
【0055】
制御装置900は、本発明の衛星航法装置の制御を司るものであり、相関度検出部600からの再サーチでの捕捉判定信号、追尾状態での同期外れ判定信号が入力され、再サーチを行う際の周波数サーチ指令信号Sfsやコード位相サーチ指令信号Sφs、各周波数制御信号StfL1、StfL2、StfL5や、各コード位相制御信号StφL1C/A、StφL2CM、StφL2CL、StφL5I5、StφL5Q5を発生する。また、重み付け制御信号StwL1C/A〜StwL5Q5を発生する。その他、図示しないが、本発明の衛星航法装置の制御に必要な制御信号を発生する。
【0056】
なお、本発明の衛星航法装置には、コンピュータを用いたソフトウエア処理を用いることができ、したがって、この実施例において、各構成部は、ソフトウエア処理と専用ハードウエア装置の組み合わせによって、或いはハードウエアもしくはソフトウエアによって、実現することができる。
【0057】
さて、以上のように構成される本発明の衛星航法装置の動作を、図4の再サーチ時のタイミングチャート、図5の各コード位相の説明図をも参照して、説明する。
【0058】
まず、追尾状態においては、周波数追尾制御信号StfL1〜StfL5によって、各受信キャリア周波数に各発生キャリア周波数が追尾するように制御されており、且つ、コード位相追尾制御信号StφL1C/A〜StφL5Q5によって、各受信コード位相に各発生コード位相が追尾するように制御されているから、各受信信号についてキャリア相関及びコード相関が得られている。したがって、相関度検出部600への加算相関値は第2所定閾値を超えており、制御装置900からは周波数サーチ指令信号Sfs、コード位相サーチ指令信号Sφsは発生されていない。
【0059】
GPS信号の追尾中に、建物でGPS信号が遮られるなどの理由でGPS信号の受信が途絶えると(図4の時点t1)、各周波数相関部210〜230、各コード位相相関部310〜350での相関は得られないから、相関度検出部600への加算相関値は第2所定閾値を下回り、同期外れを検出する。
【0060】
同期外れが検出されると、制御装置900は、周波数サーチ指令信号Sfs、コード位相サーチ指令信号Sφsを発生し、且つ、周波数追尾制御信号StfL1〜StfL5及びコード位相追尾制御信号StφL1C/A〜StφL5Q5を同期外れ直前の状態に維持する。また、重み付け制御信号SwtL1C/A〜SwtL5Q5は、それぞれ所定値に設定される。
【0061】
再サーチの開始時には、追尾状態の最終時点t1におけるL1、L2、L5の各発生キャリア周波数を、各探索周波数の初期値とする。GPS信号は、GPS衛星の運動によってドップラー偏移を受けており、再サーチ中に僅かずつ受信キャリア周波数が変化するので、各周波数相関部210〜230の探索周波数計算部にて、探索周波数を初期値を中心に所定周波数範囲をスキャンさせて、その周波数変化をカバーする。
【0062】
同様に、再サーチの開始時には、追尾状態の最終時点t1におけるL1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の各発生コード位相を、各探索コード位相の初期値とする。ここでコードチップとはコード位相の単位であり、コードの1ビットに相当する位相角を1チップと呼ぶ。GPS信号は、再サーチ中に僅かずつ受信キャリア周波数が変化するので、相関値が最大となる各コード位相は、追尾時の最終コードチップ(初期値)から次第にずれていく。各コード位相相関部310〜350の探索コード位相相関部にて、探索コード位相を初期値を中心に所定コード位相範囲をスキャンさせて、そのコード位相変化をカバーする。
【0063】
再サーチ時の動作を、探索周波数及び探索コード位相について、詳しく説明する。まず、探索周波数については、L1、L2、L5のいずれの周波数についても追尾状態が外れるまでは追尾できていたのであり、追尾外れと実質的に同時に時点t1で再サーチを開始する。したがって、再サーチ開始時点のL1、L2、L5の受信キャリア周波数は、追尾状態の最終時点t1におけるL1、L2、L5の各発生キャリア周波数に等しいとして扱って良い。
【0064】
L1、L2、L5の受信キャリア周波数は、再サーチ中に僅かずつ変化するが、その変化量ΔfL1、ΔfL2、ΔfL5と、それぞれの衛星信号の衛星からの衛星送信周波数fL1、fL2、fL5には、次の式(1)のような関係がある。
【0065】
ΔfL1/fL1=ΔfL2/fL2=ΔfL5/fL5 (1)
ΔfL1:L1信号の受信キャリア周波数の変化量
ΔfL2:L2信号の受信キャリア周波数の変化量
ΔfL5:L5信号の受信キャリア周波数の変化量
L1:衛星から送信されるL1信号のキャリア周波数
L2:衛星から送信されるL2信号のキャリア周波数
L5:衛星から送信されるL5信号のキャリア周波数
【0066】
この式(1)の関係を利用して、再サーチでの周波数スキャンの際、L1信号、L2信号及びL5信号の探索周波数の初期値(即ち、追尾時の最終の発生キャリア周波数)からのオフセットが、変化量ΔfL1、ΔfL2、ΔfL5の関係を保つようにしながら、各探索周波数をスキャンさせる。これにより、例えば、L1探索周波数がL1信号の受信キャリア周波数に合致したときに、L2探索周波数及びL5探索周波数も同時に、L2信号及びL5信号の受信キャリア周波数に合致させることができる。
【0067】
その再サーチでの周波数スキャンの例が、図4の(b)に示されている。再サーチの開始時点t1から、探索周波数を所定範囲に亘って、次の式(2)のようにスキャンする。式(2)では、L1信号を例にしているが、L2信号やL5信号についても同様である。
【0068】
fsL1=foL1+k・ΔfL1 (2)
fsL1:L1探索周波数
foL1:L1信号の探索周波数の初期値
k :係数、0、+1、−1、+2、−2、+3、・・・・
【0069】
この式(2)に示されるような、所定周波数範囲内の探索周波数のスキャンを、第1所定時間T1で行い、衛星信号が再び捕捉されるまで繰り返し行う。
【0070】
次に、探索コード位相について説明する。いずれのコードについても、追尾状態が外れるまでは追尾できていたのであり、追尾外れと実質的に同時に時点t1で再サーチを開始する。したがって、再サーチ開始時点のL1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の受信コード位相は、追尾状態の最終時点t1におけるL1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の各発生コード位相に等しいとして扱って良い。
【0071】
L1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の受信コード位相は、再サーチ中に僅かずつ変化するが、その変化量ΔφL1C/A、ΔφL2CM、ΔφL2CL、ΔφL5I5、ΔφL5Q5と、それぞれの衛星信号の衛星からの各コードのビットレートには、次の式(3)のような関係がある。
【0072】
ΔφL1C/A=ΔφL2CM/0.5=ΔφL2CL/0.5
=ΔφL5I5/10=ΔφL5Q5/10 (3)
ΔφL1C/A:L1C/Aコード位相の変化量
ΔφL2CM :L2CMコード位相の変化量
ΔφL2CL :L2CLコード位相の変化量
ΔφL5I5 :L5I5コード位相の変化量
ΔφL5Q5 :L5Q5コード位相の変化量
0.5 :L2CM及びL2CLコードのビットレートとL1C/Aコードのビットレ ートとの比
10 :L5I5及びL5Q5コードのビットレートとL1C/Aコードのビットレ ートとの比
【0073】
これらの関係の一例を図5に示している。再サーチ開始時点t1のコード位相が、L2CLコードのコード列の開始点(即ち、0チップ目)から時間にして21.6852msの時点にあったとする。この時点t1での各コードのコードチップは、L1C/A=701チップ目、L2CM=862チップ目、L2CL=11092チップ目、L5I5=7010チップ目、L5Q5=7010チップ目となる。この位相関係は、図7にも示しているので参照されたい。
【0074】
この時点t1から、或る時間だけ経過した時点で、L1C/Aコードが+10チップずれたとすると、L2CMコードは+5チップ、L2CLコードは+5チップ、L5I5コードは+100チップ、L5Q5コードは+100チップずれることになる。したがって、現在の各コード位相は、L1C/A=711チップ目、L2CM=867チップ目、L2CL=11097チップ目、L5I5=7110チップ目、L5Q5=7110チップ目となる。
【0075】
この関係を利用して、再サーチでの各コード位相のスキャンの際、L1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の探索コード位相の初期値(即ち、追尾時の最終コードチップ)からのオフセットが、式(3)の関係を保つようにしながら、各探索コード位相をスキャンさせる。これにより、例えば、L1C/A探索コード位相がL1C/A受信コード位相に合致したときに、他のL2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の探索コード位相も全て、それぞれL2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の受信コード位相に合致させることができる。
【0076】
その再サーチでのコード位相スキャンの例が、図4の(c)に示されている。再サーチの開始時点t1から、探索コード位相を所定範囲に亘って、次の式(4)のようにスキャンする。式(4)では、L1信号を例にしているが、L2信号やL5信号についても同様である。
【0077】
φsL1=φoL1+j・ΔφL1 (4)
φsL1:L1探索コード位相
φoL1:L1信号の探索コード位相の初期値
j :係数、0、+1、−1、+2、−2、+3、・・・・
【0078】
この式(4)に示されるような、所定コード位相範囲内の探索コード位相のスキャンを、第2所定時間T2で行い、衛星信号が再び捕捉されるまで繰り返し行う。図4(c)では、図示を簡単にするために、探索コード位相は連続的に変化するように表現している。
【0079】
GPS信号を復調するためには、L1受信信号、L2受信信号、及びL5受信信号について、各受信キャリア周波数と各発生キャリア周波数とが一致し、且つ、各受信コード位相と各発生コード位相とが一致することが必要である。このために、コード相関器に与えるコード位相のスキャンと、キャリア相関器に与える周波数のスキャンとを並行して実施し、コードとキャリアの双方の相関ピーク点を探索する。
【0080】
図4において、衛星信号が時点t1で断状態になると、直ちに探索周波数及び探索コード位相のスキャンが開始される。
【0081】
探索周波数が或る特定周波数にあるときに、探索コード位相は第2所定時間T2の間に所定コード位相範囲内のスキャンを行う。この第2所定時間T2毎に、探索周波数が変更されその都度、所定コード位相範囲内のスキャンが行われる。
【0082】
所定周波数範囲内の探索周波数のスキャンが第1所定時間T1かけて行われると、引き続いて、周波数及びコード位相の探索が繰り返して行われる。
【0083】
図4(a)のように、衛星信号が探索周波数の第2回目のスキャン中の時点t2で回復すると、その回復時点t2の後に、探索周波数が受信キャリア周波数と一致し、且つ、探索コード位相が受信コード位相と一致する時点t3で、衛星信号が再び捕捉される。
【0084】
衛星信号が捕捉されると、各コード位相相関値310〜350からの相関値は大きくなり、重み付け、及び加算された加算相関値は、ピーク点或いは、相関度検出部600の第1所定閾値を超える。そして、相関度検出部600から制御装置900へ捕捉判定信号が供給される。
【0085】
制御装置900は、その捕捉判定信号を受けて、その時点t3の各受信キャリア周波数及び受信コード位相を追尾するように、周波数相関部210〜230及びコード位相相関部310〜350に、各制御信号StfL1〜StφL5Q5を送出する。このとき、周波数サーチ指令信号Sfs、コード位相サーチ指令信号Sφs等の再サーチのための信号は発生されなくなる。
【0086】
以上のような、周波数及びコード位相のスキャンを行うことで、L1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の5種類全てのコード位相について同時に相関ピークを得ることができる。即ち、相関ピークを検出したときには、5種類全てのコードの相関値が有意な値となっている。これらの相関値を加算回路500で加算することによって、それぞれのコード単独の相関値よりも大きな値を得ることができ、S/N比を改善することができる。
【0087】
したがって、時分割されて、信号電力が半分になっているL2Cコード(L2CMコードとL2CLコード)の再サーチでの信号捕捉性能を向上させることができる。また、L1C/Aや、L5I5、L5Q5についても、他のコードと相関値を足し合わせることによって、単独で探索する場合よりも再サーチでの信号捕捉性能を向上させることができる。
【0088】
以上説明した実施例では、L1C/A、L2CM、L2CL、L5I5、L5Q5の5種類全てのコードを用いているが、5種類のうちの2種類乃至4種類のコードを用いる場合にも本発明は有効である。
【0089】
また、本発明の衛星航法装置は、近代化されたGPSの外にも、ロシアのGLONASS,欧州のGALILEO、米国のWAAS、日本のMSAS,欧州のEGNOSなど、同期した複数の変調コードによってそれぞれスペクトラム拡散された複数の衛星信号が送信される衛星航法システムに、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る衛星航法装置の実施例の構成を示す図
【図2】L1周波数相関部の構成例を示す図
【図3】L1C/Aコード位相相関部の構成例を示す図
【図4】本発明の衛星航法装置の再サーチ時のタイミングチャート
【図5】各コード位相の状態を説明する図
【図6】L2Cコードの時系列構造を示す図
【図7】各コードの同期関係を示す図
【符号の説明】
【0091】
10 アンテナ
110 L1受信部
120 L2受信部
130 L5受信部
210 L1周波数相関部
212 相関器
214 L1局部発振器
216 L1探索周波数計算部
218 L1周波数追尾制御部
220 L2周波数相関部
230 L5周波数相関部
310 L1C/Aコード位相相関部
312 相関器
314 L1C/Aコード相関器
316 L1C/A探索コード位相計算部
318 L1C/Aコード位相追尾制御部
319 同期加算部
320 L2CMコード位相相関部
330 L2CLコード位相相関部
340 L5I5コード位相相関部
350 L5Q5コード位相相関部
410〜450 重み付加部
500 加算回路
600 相関度検出部
900 制御装置
Sfs 周波数サーチ指令信号
Sφs コード位相サーチ指令信号
StfL1〜StfL5 周波数追尾制御信号
StφL1C/A〜StφL5Q5 コード位相追尾制御信号
SwtL1C/A〜SwtL5Q5 重み付け制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の衛星から、所定の送信キャリアが、同期し且つ異なる変調コードによってスペクトル拡散されて送信される複数の衛星信号を受信し、それら各衛星信号をそれぞれ逆拡散して追尾する衛星航法装置において、
各衛星信号の受信キャリア周波数と発生キャリア周波数とのキャリア相関を求めるキャリア相関部と、
各衛星信号の受信変調コードと発生変調コードとのコード位相相関を求めるコード位相相関部と、
キャリア相関及びコード位相相関された各衛星信号の相関値を足し合わせた加算相関値のレベルを、検出する相関度検出部を有し、
各衛星信号を追尾している状態から追尾が外れ、再サーチを行う場合に、各衛星信号に対して前記発生キャリア周波数と前記発生変調コード位相とを変化させながら、前記キャリア相関部でのキャリア相関と前記コード位相相関部でのコード位相相関を並行して行い、
前記相関度検出部での加算相関値に基づいて、各衛星信号におけるキャリア周波数とコード位相の再捕捉を行うことを特徴とする、衛星航法装置。
【請求項2】
発生キャリア周波数を発生させる際に、それぞれの衛星信号の衛星からの衛星送信周波数に比例する量として変化するオフセット周波数と、追尾していたときの発生キャリア周波数と、に応じて各サーチキャリア周波数を決定し、
発生コード位相を発生させる際に、それぞれの衛星信号の衛星からの変調コードのビットレートに比例する量として変化するオフセットコード位相と、追尾していたときの発生コード位相と、に応じて各サーチコード位相を決定することを特徴とする、請求項1に記載の衛星航法装置。
【請求項3】
前記相関度検出部は、前記加算相関値のピーク点を検出して、キャリア周波数とコード位相の再捕捉を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の衛星航法装置。
【請求項4】
キャリア相関及びコード位相相関された各相関値に、それぞれ重み付けを行う重み付加部を設け、各衛星信号の受信状態に応じた重み付けを与えた上で、前記相関度検出部に供給することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の衛星航法装置。
【請求項5】
前記複数の衛星信号は、GPS衛星から送信されるL1C/Aコード、L2CMコード、L2CLコード、L5I5コード、及びL5Q5コードのうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の衛星航法装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−258436(P2006−258436A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72375(P2005−72375)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】