説明

衛星通信システム、地上局および衛星通信方法

【課題】衛星局の回路規模縮小、電力消費量低減を達成することができる衛星通信システムを得ること。
【解決手段】地上局と、端末と、複数のビームを用いビームが構成するセル内の端末と地上局との通信を中継する衛星局と、を備える衛星通信システムであって、セルを、位置に基づいてグループ分けし、グループごとに地上局から衛星局への送信に用いるグループ周波数領域を定めておき、地上局は、送信データごとに宛先端末の位置するグループを宛先グループとして求め、宛先グループのグループ周波数領域内でその送信データが送信されるよう、送信データを周波数軸上に配置する地上局スイッチマトリックス部12、を備え、衛星局は、グループごとに、地上局から送信された受信データを、宛先のセルごとに周波数軸上に配置する衛星局スイッチマトリックス部、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上局と移動端末との通信を中継する衛星局を備える衛星通信システムおよび衛星通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1基以上の地上局と、1基以上の衛星局と、複数の端末と、で構成される移動体衛星通信システムにおいて、衛星局は、既存の通信ネットワークに接続される地上局から信号を受信し、受信した信号から送信信号を生成し、地上の端末へと送信信号を送出する。または、端末が衛星局に信号を送信し、同様に衛星局が、受信した信号から送信信号を生成し、地上局へと送信信号を送信する。
【0003】
従来の移動体衛星通信システムとしては、たとえば、下記非特許文献1に記載のシステムがある。下記特許文献1に記載の移動体衛星通信システムでは、衛星局のアンテナが、地上局から送られた送信信号を受信し、周波数変換部が、受信した無線周波数の信号をベースバンド信号へと変換する。衛星局のA/D(Analog/Digital)変換部が、受信信号をアナログからディジタルに変換し、分波部が、ディジタル変換された受信信号を分波する。衛星局のスイッチマトリックス部は、分波された信号を、通信相手先に応じて並び替え、合波部が、地上に送信する送信ビーム単位で並び替え後の各信号を合波し送信信号とする。そして、衛星局は、送信信号をディジタルからアナログに変換し、さらにベースバンド帯域から無線周波数の送信信号へと変換して、アンテナから送出されるビームで地上へと送信され、端末がその信号を受信する。
【0004】
一方、下記非特許文献2には、衛星局を介した地上局と端末との衛星通信システムにおいて、衛星局に大型アンテナを搭載し、サービスエリアである日本および日本近辺が100程度のセルで構成されるようなセル設計を行い、それらの各セルをマルチビームで覆う技術が開示されている。
【0005】
下記非特許文献1に記載されているシステムでは、地上局−衛星局(以降、この回線をフィーダリンクという)と、衛星局−各端末(以降、この回線をユーザリンクという)は、上り(送信)回線,下り(受信)回線ともに、異なる周波数帯域を用いている。フィーダリンクにはKa帯の450MHz、ユーザリンクにはS帯の30MHzを、それぞれ上りおよび下りの回線で用いている。
【0006】
また、下記非特許文献1に記載されているシステムでは、周波数利用効率の観点から、7セルを1単位とし(以降、この1単位をクラスターと呼ぶ)、クラスター単位で同一の周波数を使う、7セル繰り返し方式を用いている。クラスターを構成する7セルは互いに異なる周波数を用い、クラスター間では、クラスター内の同一位置のセルは同一の周波数を用いる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】橋本幸雄,“音声通信用搭載交換機”,通信総合研究所季報,Vol.49,Nos.3/4,2003
【非特許文献2】蓑輪正ら,“安心・安全のための地上/衛星統合移動通信システム”,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J91−B No.12,pp.1629−1640,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の技術によれば、移動体通信システムを実現させるため、スイッチマトリックスを用いて、各送信信号を通信相手先に照射されるビーム毎に並び替えるという方式を採っている。そのため、サービス提供エリアの増加や利用周波数帯域の増加が発生したり、または周波数利用効率化のためにシステムの運用に用いるビーム数が増えたりした場合、または非特許文献2に記載のような100ビームのシステムを考慮した場合、スイッチマトリックス部で並び替える信号の数が膨大となる。したがって、衛星局のスイッチマトリックスの回路規模が大きくなり、消費電力も増加する、といった問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、衛星局のスイッチマトリックスが実施する処理を簡素化し、衛星局の回路規模縮小および電力消費量低減を達成することができる衛星通信システムおよび衛星通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、地上局と、端末と、複数のビームを用いて前記ビームが構成するセル内の前記端末と前記地上局との通信を中継する衛星局と、を備える衛星通信システムであって、前記セルの位置に基づいて前記セルを複数のグループにグループ分けし、また、グループごとに前記地上局から前記衛星局への送信に用いる周波数領域であるグループ周波数領域をあらかじめ定めておき、前記地上局は、前記端末の位置を位置情報として保持し、また、前記セルの位置とそのセルが属するグループとの対応をセル情報として保持することとし、送信データごとに送信データと前記位置情報に基づいて宛先となる前記端末の位置を求め、求めた位置に対応するグループを前記セル情報に基づいて宛先グループとして求め、求めた宛先グループに対応するグループ周波数領域内の周波数でその送信データが送信されるよう、送信データを周波数軸上に配置する地上局スイッチマトリックス手段、を備え、前記衛星局は、グループごとに、そのグループのグループ周波数領域内の周波数で前記地上局から送信された受信データを、受信データの宛先のセルごとに、前記衛星局がそのセル内の前記端末への送信に用いる周波数領域であるセル周波数領域内の周波数でその受信データが前記端末へ送信されるよう、周波数軸上に配置する衛星局スイッチマトリックス手段、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地上局の地上局スイッチマトリックス手段が送信信号に対して通信相手の位置に基づいてあらかじめクラスター単位の並び替えを行った後に送信信号を送信し、衛星局の衛星局スイッチマトリックス手段が受信した送信信号に対して地上局クラスター内のセルに対応する並び替えを行うようにしたので、衛星局の回路規模縮小および電力消費量低減を達成することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1の衛星通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1のセル配置例を示す図である。
【図3】図3は、地上局の構成例を示す図である。
【図4】図4は、地上局スイッチマトリックス部が実施する並び替え処理のイメージを示す図である。
【図5−1】図5−1は、従来の地上局変調部によって生成されたフィーダリンク信号の周波数イメージの一例を示す図である。
【図5−2】図5−2は、本実施の形態の地上局変調部によって生成されたフィーダリンク信号の周波数イメージの一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態1の衛星局の機能構成例を示す図である。
【図7】図7は、クラスター内の宛て先セル別の送信信号イメージの一例を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態2の衛星通信システムの構成例を示す図である。
【図9】図9は、通信制御部が行う周波数の割り当てイメージの一例を示す図である。
【図10−1】図10−1は、クラスターへの送信周波数割り当ての一例を示す図である。
【図10−2】図10−2は、クラスターへの送信周波数割り当ての一例を示す図である。
【図11】図11は、セル番号順でない送信周波数割り当てのイメージの一例を示す図である。
【図12】図12は、地上局の地上局復調部の機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる衛星通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる衛星通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の衛星通信システムは、地上局1と、衛星局2と、各種端末3−1〜3−3と、で構成される。また、地上局1は地上ネットワーク4に接続されており、地上ネットワーク4には、例えば一般電話5,移動体基地局6,IPネットワーク7,交換スイッチ8などが接続されている。なお、地上局1および衛星局2は、本実施の形態ではそれぞれ1基を例示しているが、これに限らず、それぞれ複数基であっても良い。各種端末3−1〜3−3は、たとえば、持ち運びや携帯が可能な端末、また船上無線装置や定点設置を行う端末であり、衛星局2と通信できる設備を有する装置であればよくある特定の種別に限定されることはない。
【0015】
本実施の形態では、図1の地上局1から信号を送信し、衛星局2を経由して各種端末3と通信を行う場合について述べる。本実施の形態の衛星通信システムでは、フィーダリンクとユーザリンクは、それぞれ異なる周波数を用いることとする。具体的には、フィーダリンクではKa帯の周波数のうち450MHz幅の帯域を上り回線/下り回線で使用し、ユーザリンクはS帯の周波数のうち30MHz幅の帯域を上り回線/下り回線で使用する。また、サービス提供エリアは100のセルから構成され、7セルを1クラスターとして、各クラスターで同一周波数を用いる、7セル繰り返し方式を用いる。
【0016】
図2は、本実施の形態のセル配置例を示す図である。セル9内には、各セルの番号が示されており(#1,#2,…,#7)、#1〜#7の7つのセルでクラスター10−1〜10−4を構成する。なお、図2では、100のセルの一部として、クラスター10−1〜10−4に対応するセルを示しているが、全体としては、クラスター10−1〜クラスター10−15の15のクラスターが存在する。クラスター内では、30MHzの帯域を分割してセルごとに割当てることとする。
【0017】
また、地上局1は、各種端末3−1〜3−3のそれぞれ位置情報を、衛星局2を介した通信シーケンスによって、保持する。たとえば、各種端末3は、衛星局2から定期的に発せられる信号を受信し、それに応じた信号を、衛星局2を介して地上局1に送信することにより、地上局1は、各種端末3の位置情報を知ることができる。なお、各種端末3の位置情報を知る手段として、GPS(Global Positioning System)情報を利用した取得や、地上にある地上局1とは異なる設備経由といった手段を用いてもよい。
【0018】
図3は、地上局1の構成例を示す図である。図3に示すように、本実施の形態の地上局1は、地上局変調部100を備える。なお地上局1は地上局変調部100以外の機能を備えているが、本実施の形態の動作には用いないため、ここではその説明を省略する。地上局変調部100は、通信制御部11と、地上局スイッチマトリックス部12と、変調部13−1〜13−15と、合波部14−1〜14−15と、周波数変換部15−1〜15−15と、加算部16と、アンテナ部17と、で構成される。
【0019】
地上局1は、地上ネットワーク4から各種の送信データを受信すると、まず、地上局変調部100の通信制御部11が、送信データと通信相手先である各種端末3の位置情報との紐つけが行われる。地上局スイッチマトリックス部12は、送信データを、通信相手先の位置するクラスターごとに並び替えを行う。
【0020】
図4は、地上局スイッチマトリックス部12が実施する並び替え処理のイメージを示す図である。図4に示すように、3つの送信データD1〜D3が地上局スイッチマトリックス部に入力されたとする。この送信データD1〜D3は、それぞれ通信相手が異なり、図中の送信データD1〜D3を示す矩形なかの数字は、その送信データの通信相手先が位置するセルを示す数値である。この数字「#t−n」は、通信相手先がクラスター10−t内のセル#n(図2のセル内の番号、#1〜#7に対応する)に存在することを意味している。図4に示すように、地上局スイッチマトリックス部12は、送信データD1をクラスター10−1に対応する経路として変調部13−1に、送信データD2をクラスター10−3に対応する経路として変調部13−3に、送信データD3をクラスター10−10に対応する経路として変調部13−10に、それぞれ出力するよう並び替えを行う。
【0021】
なお、前述のように、フィーダリンクの帯域幅は450MHzであり、クラスターの数が15であるため、ここでは、たとえば、450MHzを15の帯域に分割し、分割した帯域ごとに、変調部13−1〜13−15以降の処理を実施するようにしている。
【0022】
その後、変調部13−1〜13−15は、入力されるクラスターごとに並び替えが行われた送信データに対して所定の変調処理を行い変調信号とし、合波部14−1〜14−15が、変調信号の合波処理を行う。そして、周波数変換部15は、合波処理後の信号に対してKa帯への周波数変換を行い、加算部16が周波数変換部15からの出力される周波数変換後の信号を加算し、アンテナ部17が、加算後の信号を衛星局2に向けてフィーダリンク信号として送出する。なお、各構成要素の現在の能力を考慮し、クラスターごとに変調部13−1〜13−15、合波部14−1〜14−15および周波数変換部15−1〜15−15をそれぞれ備えることとしているが、これに限らず、たとえばそれぞれ1つの変調部、合波部および周波数変換部が全クラスターに対応する処理を実施するようにしてもよい。
【0023】
図5−1,5−2は、地上局変調部100によって生成されたフィーダリンク信号の周波数イメージの一例を示す図である。図5−1,5−2では、横軸は周波数を表している。図5−1は、従来の地上局によって生成されたフィーダリンク信号の周波数イメージの一例を示し、図5−2は、本実施の形態の地上局変調部100によって生成されたフィーダリンク信号の周波数イメージの一例を示している。図5−1,5−2では、図4と同様に、各信号データに対応する通信相手先のクラスターとセルの情報を「#t−n」という形式で示している。図5−1に示すように、従来の地上局では、通信相手先に係わらず、周波数の空いているところから信号を並べている。これに対して、図5−2に示すように、本実施の形態の地上局変調部100では、地上局スイッチマトリックス部12が通信相手先のクラスターごとに送信信号の並び替えを行っている。
【0024】
図6は、本実施の形態の衛星局2の機能構成例を示す図である。図6に示すように、衛星局2は、フィーダリンク用アンテナ20と、周波数変換部21−1〜21−15と、分波部22−1〜22−15と、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15と、合波部24−11〜24−17,24−21〜24−27,…,24−151〜24−157と、周波数変換部25−11〜25−17,25−21〜25−27,…,25−151〜25−157と、ユーザリンク用アンテナ26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157を備えている。
【0025】
衛星局2は、フィーダリンク用アンテナ20を用いて、地上局1から送信されたフィーダリンク信号を受信する。衛星局2の周波数変換部21−1〜21−15は、受信したフィーダリンク信号をベースバンド信号へと変換する。なお、本実施の形態では、現在のハードウェア実現性を考慮し、周波数変換部21−1〜21−15では、それぞれが1クラスターの帯域幅と同一である30MHz単位で周波数変換を行うこととしている。したがって、受信した450MHzのフィーダリンク信号を周波数変換するため、合計15個の周波数変換部21−1〜21−15を備えている。ただし今後のハードウェアの性能向上によってはこの限りではなく、450MHzの帯域幅を一括で周波数変換を行うようにしてもよい。
【0026】
ところで、周波数変換部21−1〜21−15がそれぞれ周波数変換した30MHz帯域幅の信号の中には、信号帯域幅の異なる信号が複数含まれている。これは、利用ユーザによって、使用サービスが音声通話であったりデータ通信であったりと、使用サービスによって必要な周波数帯域が異なるためである。分波部22−i(i=1,2,…,15)は、周波数変換部21−iが周波数変換した30MHzの帯域幅の信号を分波し、これらの各使用周波数帯域の信号を抽出する。
【0027】
分波された各信号は、通信相手先の存在するセルに対応したユーザリンク用アンテナ26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157から、最終的に各種端末3−1〜3−3へと送信されるが、通信相手先のセルに対応して送信信号の合成を行う必要がある。衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15は、制御部27からの指示に基づいて分波された各信号を通信相手先のセルに応じて並び替えを行う。なお、各種端末3−1〜3−3の存在位置情報は、前述のように、地上局1の通信制御部11が保持および更新しており、地上局1はこれらの位置情報に基づいて、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15を制御するための情報や、各信号の周波数配置、送信するセルエリア情報を制御情報として生成し、別の通信回線を用いて、制御部27に対してその制御情報を送信する。制御部27はその制御情報に基づいて、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15に対して並び替えの指示を行う。
【0028】
なお、地上局1から送信されたフィーダリンク信号は地上局1の地上局スイッチマトリックス部12であらかじめクラスター単位に並び替えられているため、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15は、1クラスター内、すなわち7セルの範囲の並び替えを行えばよい。
【0029】
たとえば、音声サービスを想定して最小信号帯域幅を10kHzとすると、分波部22−1〜22−15は、30MHzの大域幅の送信信号を10kHzで最大3000波の信号に分波する。本実施の形態では、分波部を15個備えるものとしているため、仮に地上局スイッチマトリックス部12が送信信号の並び替えを行っていない場合、衛星局2の衛星局スイッチマトリックス部では、最大45000波(3000波×15個)の信号の並び替えを行う必要がある。これに対し、本実施の形態では、地上局スイッチマトリックス部12においてクラスター単位で信号の並び替えを行っているため、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15では、最大3000波の送信信号に対して、信号の並び替えを行えばよい。
【0030】
衛星局スイッチマトリックス部は、周波数変換部および分波部と同じく、15個備える必要があるが、最大3000波の送信信号の並び替え処理が可能であれば良いため、1つの衛星局スイッチマトリックスで最大45000波の信号並び替えを行う場合に比べ、回路規模を抑えることができる。
【0031】
そして、衛星局スイッチマトリックス部23−iは、制御部27からの指示に基づいて、分波された信号をその信号の通信相手のセルごとに並び替え、信号の通信相手のセルに対応する合波部24−ij〜24−ij(j=1,2,…,7)に出力する。なお、合波部24−ij〜24−ijは、セル#jに対応する処理を行うこととする。合波部24−i1〜24−i7は、衛星局スイッチマトリックス部23−iから入力された信号を、各セルへ送信するビーム単位で合波処理を行う。
【0032】
周波数変換部25−i1〜25−i7は、合波処理された信号に対してS帯へ周波数変換を施し、対応するユーザリンク用アンテナ26−i1〜26−i7へ周波数変換後の信号をそれぞれ出力する。ユーザリンク用アンテナ26−i1〜26−i7は、自身の送信先のセルに向けて入力された信号を送信する。このようにして、衛星局2から送信される信号は、各セルに向けられたマルチビームで地上に対して照射され、各種端末3−1〜3−3は、衛星局2から送信された信号を受信して、復調処理を行う。
【0033】
図7は、クラスター10−1内の宛て先セル別の送信信号イメージの一例を示す図である。図7では、横軸は周波数を表している。衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15が実施する信号並び替えは、たとえば、図7の左側の(a)のように、セル内の周波数配置はフィーダリンク信号内のクラスター10−1に対応する周波数位置の順番と同じ順番となるように並び替えてもよいし、右側の(b)のように、セル番号順に周波数位置を並び替えてもよい。
【0034】
なお、本実施の形態では、サービスエリアに対するセル設計を7セル繰り返しとしたが、7セル繰り返しでなくても良い。たとえば、30MHzを3つの周波数に分割してセル設計を行うような、1クラスターが3つのセルから構成される3セル繰り返しの場合にも、本実施の形態の動作を適用することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、7セルを単位とするクラスター単位で地上局スイッチマトリックス部12が送信信号に対して並び替えを行うようにしたが、これに限らず、衛星局2のマルチビームが構成するセルをセルの位置に基づいて複数のグループにグループ分けし、グループ単位で地上局スイッチマトリックス部12が送信信号に対して並び替えを行い、衛星局2では、グループ内のセルに対する並び替えを行うようにしてもよい。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、地上局1の地上局スイッチマトリックス部12が送信信号に対して通信相手の位置に基づいてあらかじめクラスター単位の並び替えを行った後に送信信号を送信し、衛星局2の衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15は、受信した送信信号に対して地上局クラスター内のセルに対応する並び替えを行うようにした。そのため、衛星局2側の信号の送信先に応じた信号の並び替え処理が簡素化され、衛星局2の衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15の回路規模を削減することができる。
【0037】
実施の形態2.
図8は、本発明にかかる衛星通信システムの実施の形態2の構成例を示す図である。本実施の形態の衛星通信システムの構成は実施の形態1の衛星通信システムと同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
実施の形態1では、地上局1から衛星局2を経由し、各種端末3−1〜3−3に信号を送信する場合について説明したが、本実施の形態では、各種端末3−1〜3−3から衛星局2を経由し、地上局1に信号を送信する場合について説明する。本実施の形態の衛星局2は、実施の形態1の衛星局2と同様であるが、さらに図8で示した構成要素を備える。なお、各種アンテナについては(フィーダリンク用アンテナ20,ユーザリンク用アンテナ26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157)、送受信の両方の機能を有することとして、図6中の実施の形態と同一の符号を付し実施の形態1で説明した機能と本実施の形態で説明する機能の両方を有することとしているが、送信用、受信用でそれぞれ異なるアンテナを用いてもよい。
【0039】
また、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15についても、実施の形態1で説明した機能と本実施の形態で説明する機能の両方を有することとしているが、本実施の形態で説明する機能を有する衛星局スイッチマトリックス部を実施の形態1の衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15とは別に15個備えるようにしてもよい。
【0040】
本実施の形態の衛星局2は、フィーダリンク用アンテナ20と、ユーザリンク用アンテナ26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157と、周波数変換部28−11〜28−17,28−21〜28−27,…,28−151〜28−157と、分波部29−11〜29−17,29−21〜29−27,…,29−151〜29−157と、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15と、合波部30−1〜30−15と、周波数変換部31−1〜31−15と、加算部32と、を備えている。
【0041】
つぎに、本実施の形態の動作を説明する。各種端末3−1〜3−3は、衛星局2を介して地上局1から通知された、地上局1の通信制御部11が管理する送信周波数を用いて発信を行う。地上局1の通信制御部11は、各種端末3−1〜3−3の位置情報を保持しており、この位置情報を元に、各種端末3−1〜3−3が発信を行う際に使用する送信周波数の割り当てを行う。
【0042】
図9は、通信制御部11が行う周波数の割り当てイメージの一例を示す図である。なお、本実施の形態では、実施の形態1の図2とで説明したように、サービス提供エリアは100のセルで構成され、7セルで1クラスターを構成する。通信制御部11は、図9に示すように、クラスター内の各セルの使用周波数が重ならないように、セルごとに送信周波数の割り当ておよび管理を行っている。また、通信制御部11は、通信を開始しようとする各種端末3−1〜3−3に対して、衛星局2経由で使用周波数の通知を行う。なお、1クラスター内の送信周波数の割り当ては、各セル等分でも良いし、周波数利用状況に応じて動的に変化させるようにしても良い。
【0043】
図10−1,10−2は、クラスター10−1への送信周波数割り当ての一例を示す図である。図10−1は、クラスター10−1のセル#1からセル#7までに対して使用周波数帯を等分割して割当てる例を示している。クラスター10−1の総周波数帯域を30MHzとすると、各セルに対して30/7MHzが割り当てられる。一方、図10−2は、通信制御部11が周波数の利用状況を考慮して各セルへの割り当てを行った例を示している。この例では、クラスター10−1のセル#2、セル#3には、送信信号を送出する各種端末が多数存在するとし、セル#6、セル#7には比較的各種端末が少ないとする。通信制御部11は、通信状況に基づいてこれの状況を検知し、セル#2、セル#3には、送信周波数が多く必要であり、セル#6、セル#7にはそれほど必要ないと判断し、セル#2、セル#3で使用する送信周波数を多く割り当て、その分、セル#6、セル#7の割り当て量を少なくしている。
【0044】
また、送信周波数の割り当ては、セル番号順でなくても良い。図11は、セル番号順でない送信周波数割り当てのイメージの一例を示す図である。図11は、ある1クラスターの送信周波数割り当ての状態を示したものである。図11に示した送信周波数割り当てでは、図10−1,10−2のようにセル番号順ではなく、たとえば、各セルに存在する各種端末から発信の要求があった場合に、その要求に基づいて各種端末が存在するセルに対して使用する送信周波数の割り当てを行う。
【0045】
衛星局2は、各種端末3−1〜3−3から送信された信号を、ユーザリンク用アンテナ26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157で受信する。周波数変換部28−11〜28−17,28−21〜28−27,…,28−151〜28−157は、受信した信号を無線周波数帯からベースバンド帯域へと変換する。分波部29−11〜29−17,29−21〜29−27,…,29−151〜29−157は、ベースバンドに変換された受信信号に含まれる、各種端末3−1〜3−3から受信した様々な信号の分波処理を行う。
【0046】
衛星局スイッチマトリックス部23−i(i=1,2,…,15)は、分波部29−i1〜分波部29−i7から出力される1クラスター内(=7セル)からの分波処理された受信信号を、地上局1へ送信する信号と、各種端末3−1〜3−3へ送信する信号とに分け、それぞれ信号の並び替えを行う。地上局1へ送信する信号は、図10−1,10−2に示されるように、各種端末3−1〜3−3がそれぞれ使用する送信周波数帯域はあらかじめ決定されているため、衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15は、同一クラスターの各種端末3−1〜3−3の信号を収集し、合波部30−1〜30−15へ収集した各種端末3−1〜3−3からの信号を、フィーダリンクの周波数配置を示す周波数は位置情報とともに合波部30−iへ転送する。なお、周波数配置情報は、制御部27が決定し保持していることとする。なお、このときのフィーダリンクの周波数配置は、たとえば、実施の形態1で説明した図5−2の配置のように、クラスターごとに周波数が配置されるとする。
【0047】
合波部30−iは、衛星局スイッチマトリックス部23−iから出力された信号を地上局1に送信する信号を、衛星局スイッチマトリックス部23−iから得た周波数配置情報に基づいて合波処理する。そして、周波数変換部31−iは、合波部30−iが合波処理した信号をベースバンド帯域からKa帯に周波数変換し、周波数変換後の信号を、加算部32に出力する。加算部32は、周波数変換部31−1〜31−15から出力された信号を加算し、合計450MHzの帯域のフィーダリンク信号とし、フィーダリンク用アンテナ20が、フィーダリンク信号を地上局1へ送信される。
【0048】
図12は、地上局1の地上局復調部101の機能構成例を示す図である。地上局1は、実施の形態1で述べたように、地上局変調部100を備えるが、地上局変調部100と共有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付している。図12に示すように、地上局1の地上局復調部101は、フィーダリンク用アンテナ41と、周波数変換部42−1〜42−15と、分波部43−1〜43−15と、復調部44−1〜44−15と、地上局スイッチマトリックス部12と、通信制御部11と、で構成される。
【0049】
フィーダリンク用アンテナ41は、衛星局2より送信された450MHzの帯域幅のフィーダリンク信号を受信する。地上局1の地上局復調部101は、周波数変換部および分波部をそれぞれ15個備えている。各周波数変換部は、それぞれクラスター単位で分割された受信信号30MHzずつを、Ka帯からベースバンドへと変換し、分波部は、分割された30MHzに含まれる各セルからの信号を取り出すために分波処理を行う。
【0050】
復調部44−1〜44−15は、クラスター単位で分波された信号の復調処理を行うが、ビットレートの異なる信号を復調できるよう、複数の復調器で構成される。復調部44−1〜44−15で復調された受信信号はビットデータとなり、地上局スイッチマトリックス部12に入力される。地上局スイッチマトリックス部12は、実施の形態1の場合と逆の流れでクラスター単位でのビットデータの並び替えを行い、通信制御部11へ出力する。なお、通信制御部11は、地上局スイッチマトリックス部12の並び替え処理に関する制御を行う。最後に、通信制御部11は、ビットデータを地上ネットワーク4へ送信する。
【0051】
このように、本実施の形態では、地上局1の通信制御部11が、各種端末3−1〜3−3が送信に用いる周波数を各種端末3−1〜3−3の存在する位置(セル)に基づいて決定するようにした。そのため、衛星局2の衛星局スイッチマトリックス部23−1〜23−15が信号の並び替えを行う必要がなくなり、衛星局2の回路規模を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる衛星通信システムおよび衛星通信方法は、地上局と移動端末との通信を中継する衛星局を備える衛星通信システムに有用であり、特に、多数のセルで構成されるマルチビームを用いる衛星通信システムに適している。
【符号の説明】
【0053】
1 地上局
2 衛星局
3−1〜3−3 各種端末
4 地上ネットワーク
5 一般電話
6 移動体基地局
7 IPネットワーク
8 交換スイッチ
9 セル
10−1〜10−4 クラスター
11 通信制御部
12 地上局スイッチマトリックス部
13−1〜13−15 変調部
14−1〜14−15 合波部
15−1〜15−15,21−1〜21−15,25−11〜25−17,25−21〜25−27,…、25−151〜25−157,28−11〜28−17,28−21〜28−27,…、28−151〜28−157,31−1〜31−15,42−1〜42−15 周波数変換部
16 加算部
17 アンテナ部
20,41 フィーダリンク用アンテナ
22−1〜22−15,29−11〜29−17,29−21〜29−27,…,29−151〜29−157,43−1〜43−15 分波部
23−1〜23−15 衛星局スイッチマトリックス部
24−11〜24−17,24−21〜24−27,…,24−151〜24−157,30−1〜30−15 合波部
26−11〜26−17,26−21〜26−27,…,26−151〜26−157 ユーザリンク用アンテナ
27 制御部
32 加算部
44−1〜44−15 復調部
100 地上局変調部
101 地上局復調部
D1,D2,D3 送信データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上局と、端末と、複数のビームを用いて前記ビームが構成するセル内の前記端末と前記地上局との通信を中継する衛星局と、を備える衛星通信システムであって、
前記セルの位置に基づいて前記セルを複数のグループにグループ分けし、また、グループごとに前記地上局から前記衛星局への送信に用いる周波数領域であるグループ周波数領域をあらかじめ定めておき、
前記地上局は、
前記端末の位置を位置情報として保持し、また、前記セルの位置とそのセルが属するグループとの対応をセル情報として保持することとし、送信データごとに送信データと前記位置情報に基づいて宛先となる前記端末の位置を求め、求めた位置に対応するグループを前記セル情報に基づいて宛先グループとして求め、求めた宛先グループに対応するグループ周波数領域内の周波数でその送信データが送信されるよう、送信データを周波数軸上に配置する地上局スイッチマトリックス手段、
を備え、
前記衛星局は、
グループごとに、そのグループのグループ周波数領域内の周波数で前記地上局から送信された受信データを、受信データの宛先のセルごとに、前記衛星局がそのセル内の前記端末への送信に用いる周波数領域であるセル周波数領域内の周波数でその受信データが前記端末へ送信されるよう、周波数軸上に配置する衛星局スイッチマトリックス手段、
を備えることを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
前記地上局は、
セルごとにそのセル内に位置する端末が衛星局へデータを送信する際に用いる周波数領域を端末周波数領域として決定し、前記端末の位置に基づいて、前記端末が位置するセルを求め、求めたセルに対応する端末周波数領域をその端末へ通知する通信制御手段、
をさらに備え、
前記端末は、通知された端末周波数領域を用いて衛星局へデータを送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の衛星通信システム。
【請求項3】
前記通信制御手段は、セルごとのそのセル内に存在する前記端末数と、そのセルの周辺セル内に存在する前記端末数と、の少なくとも1つに基づいて、前記端末周波数領域を決定することを特徴とする請求項2に記載の衛星通信システム。
【請求項4】
前記グループを互いに隣接する複数の前記セルで構成されるクラスターとする、
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の衛星通信システム。
【請求項5】
前記地上局は、前記端末の位置をGPS情報に基づいて求める、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛星通信システム。
【請求項6】
地上局と、端末と、複数のビームを用いて前記ビームが構成するセル内の前記端末と前記地上局との通信を中継する衛星局と、を備える衛星通信システムにおける前記地上局であって、
前記セルの位置に基づいて前記セルを複数のグループにグループ分けし、また、グループごとに前記地上局から前記衛星局への送信に用いる周波数領域であるグループ周波数領域をあらかじめ定めておき、
前記端末の位置を位置情報として保持し、また、前記セルの位置とそのセルが属するグループとの対応をセル情報として保持することとし、送信データごとに送信データと前記位置情報に基づいて宛先となる前記端末の位置を求め、求めた位置に対応するグループを前記セル情報に基づいて宛先グループとして求め、求めた宛先グループに対応するグループ周波数領域内の周波数でその送信データが送信されるよう、送信データを周波数軸上に配置する地上局スイッチマトリックス手段、
を備えることを特徴とする地上局。
【請求項7】
地上局と、端末と、複数のビームを用いて前記ビームが構成するセル内の前記端末と前記地上局との通信を中継する衛星局と、を備える衛星通信システムにおける衛星通信方法であって、
前記セルの位置に基づいて前記セルを複数のグループにグループ分けし、また、グループごとに前記地上局から前記衛星局への送信に用いる周波数領域であるグループ周波数領域をあらかじめ定めておき、
前記地上局が、前記端末の位置を位置情報として保持し、また、前記セルの位置とそのセルが属するグループとの対応をセル情報として保持することとし、送信データごとに送信データと前記位置情報に基づいて宛先となる前記端末の位置を求め、求めた位置に対応するグループを前記セル情報に基づいて宛先グループとして求め、求めた宛先グループに対応するグループ周波数領域内の周波数でその送信データが送信されるよう、送信データを周波数軸上に配置する地上局周波数配置ステップと、
前記衛星局が、グループごとに、そのグループのグループ周波数領域内の周波数で前記地上局から送信された受信データを、受信データの宛先のセルごとに、前記衛星局がそのセル内の前記端末への送信に用いる周波数領域であるセル周波数領域内の周波数でその受信データが送信されるよう、周波数軸上に配置する衛星局周波数配置ステップと、
を含むことを特徴とする衛星通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−288017(P2010−288017A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139464(P2009−139464)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】