説明

衛星電波受信装置

【課題】 サイズを大型化せずに測位衛星からの信号検出時間を短縮することの出来る衛星電波受信装置を提供する。
【解決手段】 衛星電波受信装置において、受信手段と、衛星信号を検出するための演算を2以上の所定数の受信周波数に対して並列的に実行可能な検出演算手段(151、154)と、第1の周波数間隔で順番に設定した一の受信周波数の信号を検出演算手段に第1のビット数のデジタルデータとして取得させ、演算結果に基づいて衛星信号を検出する捕捉手段(156)と、衛星信号が検出された場合に、第1の周波数間隔より狭い第2の周波数間隔で順番に所定数個ずつ設定した受信周波数の信号を検出演算手段に第1のビット数より小さい第2のビット数のデジタルデータとして各々取得させ、並列的に行われる演算結果に基づいて衛星信号の受信周波数を特定する特定手段(156)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位衛星から電波を受信して衛星信号を取得する衛星電波受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)をはじめとするGNSS(Global Navigation Satellite System)に係る測位衛星から送信された電波を受信する受信装置を備え、時刻情報や位置情報を取得することのできる電子腕時計といった携帯型装置がある。このような携帯型装置では、取得された時刻情報や位置情報に基づいて表示時刻の修正を行ったり、タイムゾーンの設定を行ったりすることが出来る。
【0003】
測位衛星から出力される衛星信号は、測位衛星ごとに設定された固有の拡散コード(擬似雑音)を用いて拡散変調されて電波送信されている。この電波を受信する際には、受信する測位衛星で設定されている拡散コードを用いて逆拡散することで、この測位衛星からの衛星信号を復号、取得することができる。測位衛星は、所定の軌道上を各々移動しており、何れの測位衛星が可視状態であって電波を受信可能であるかが事前に分からない受信装置では、受信された受信電波信号に対して全ての測位衛星の拡散コードにより総当りで逆拡散処理を行って衛星信号を検出し、受信可能な測位衛星を識別する捕捉処理を行う。
【0004】
このような捕捉処理には、以前より、マッチドフィルタ(スライディング相関器)が用いられ、また、複数衛星の拡散コードによる逆拡散処理が並列的に行われることで、捕捉処理の高速化が図られている。更に、特許文献1には、データの読み書きを行うメモリを複数備え、同時並列的に行われる逆拡散処理のデータをこれら複数のメモリに対して並列的に読み書きさせることで演算処理に対するI/O処理での遅延を防ぐ技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、捕捉処理を行う相関部と、取得されたデータに基づいて位置や時刻の計算処理を行うマイクロプロセッサとにそれぞれ供給される電力やクロック信号を各々必要な期間および周波数に設定することによって電力消費を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−159670号公報
【特許文献2】特開2002−122655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測位衛星から送信された電波は、測位衛星が高速で地球の周りを移動することによるドップラー効果により、送信周波数とは異なる周波数で受信される。従って、予め現在位置データや測位衛星の軌道情報を有しない受信装置で測位衛星からの電波を受信する際には、ドップラー効果により変化しうる周波数範囲で測位衛星からの電波の受信周波数を探索する必要がある。この結果、捕捉処理に要する時間は、受信周波数ステップの数に比例して長くなるという問題がある。
【0008】
しかしながら、マッチドフィルタなどにおいて受信データを記憶する記憶部は、捕捉処理に用いられる他の部分と比較して捕捉処理回路のサイズ上で占める割合が大きい。従って、複数の受信周波数に係る受信データを並列的に処理するための記憶部を各々設けて捕捉処理の高速化を図ろうとすると、捕捉処理を行う回路規模が大きくなってしまうという課題があった。
【0009】
この発明の目的は、サイズを大型化させずに測位衛星からの電波を受信する時間を短縮することの出来る衛星電波受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、
測位衛星から電波送信された衛星信号を取得する衛星電波受信装置において、
前記衛星信号の送信周波数を含む周波数帯の電波を受信可能な受信手段と、
前記受信手段により受信された受信電波信号から前記衛星信号を検出するための所定の演算を予め定められた2以上の所定数の受信周波数に対して並列的に実行可能な検出演算手段と、
第1の周波数範囲に亘り第1の周波数間隔で順番に一の受信周波数を設定して、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を第1のビット数のデジタルデータとして取得させ、当該デジタルデータによる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号を検出する捕捉手段と、
前記捕捉手段により前記衛星信号が検出された場合に、前記第1の周波数間隔より狭い第2の周波数間隔で順番に前記所定数個ずつ受信周波数を設定し、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を前記第1のビット数より小さい第2のビット数のデジタルデータとして各々取得させ、当該所定数個のデジタルデータにより並列的に行われる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号の受信周波数を特定する特定手段と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に従うと、短時間で衛星信号の受信周波数を特定することが出来る。また、予め定められた複数個の周波数に対して並列的に衛星信号の検出を行う際には、一周波数ずつ個別に衛星信号の検出を行なう際と比較して取得するデジタルデータのビット数を小さくするので、平行してデジタルデータの取得を行ってもデータ容量の増大を抑えることができ、従って、衛星電波受信装置のサイズを大型化させないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の衛星電波受信装置の構成および信号の流れを示すブロック図である。
【図2】捕捉エンジンおよびこれに関連する部分の構成を示す図である。
【図3】中間周波数生成部が備えるNCOの構成を示すブロック図である。
【図4】捕捉エンジンにおいて、一のGPS衛星のC/Aコードを生成して一の受信周波数で当該一のGPS衛星からの電波を受信した場合の捕捉エンジンからの出力データの例を示す図である。
【図5】検索処理においてコントローラのCPUが実行する制御処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】検出動作処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】検索処理内でメモリに記憶されるデータの配列パターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の衛星電波受信装置を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の衛星電波受信装置の構成および信号の流れを示すブロック図である。
【0015】
この衛星電波受信装置1は、例えば、携帯型時計に搭載されて、GPS衛星からの受信電波に基づいて時刻情報を出力するものである。衛星電波受信装置1は、受信アンテナANTと、低雑音増幅器(LNA)11と、狭帯域フィルタ12と、発振回路13と、RF部14と、ベースバンド部15などを備えている。
【0016】
受信アンテナANTは、GPS衛星から送信されているL1帯(1.57542GHz)の電波が受信可能なアンテナである。また、狭帯域フィルタ12は、例えば、SAWフィルタ(表面弾性波フィルタ)であり、1〜10MHz程度の帯域を有する。この帯域幅は、ドップラー効果や衛星電波受信装置1の計器誤差によるGPS衛星からの送信周波数と衛星電波受信装置1による受信周波数との間のずれの大きさに比べて十分に広い。
【0017】
発振回路13には、例えば、温度補償回路を備えた水晶発振器(TCXO)が一般的に用いられている。この発振回路13は、基準周波数として、例えば、16.368MHzの信号を生成して出力する。
【0018】
RF部14は、受信した電波に基づく搬送波周波数の受信信号(受信電波信号)を中間周波数帯の信号に変換し、デジタルデータ化して出力する。このRF部14は、ダウンコンバータ141と、PLL(Phase Locked Loop)142と、ADC(アナログ・デジタル変換器)143などを備えている。
【0019】
ダウンコンバータ141は、受信電波信号を中間周波数の信号に変換する回路であり、例えば、ミキサや狭帯域フィルタを備えている。中間周波数IF0は、例えば、4MHz程度の値である。
【0020】
PLL142は、発振回路13の出力信号に同期してダウンコンバータ141のミキサに所定のローカル周波数の信号を入力する回路であり、例えば、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、プリスケーラ、および、位相比較器などを備えている。VCOは、入力される直流電圧によって定められる周波数の信号を生成してダウンコンバータ141のミキサに出力する。プリスケーラは、このVCOの出力信号を分周して、位相比較器に出力する。位相比較器は、VCOが出力する分周信号の位相と、発振回路の出力信号の位相とを比較して、これらの位相差に基づいてVCOへ出力する直流電圧を変化させる。このような構成によりローカル周波数を制御することで、一定の周波数信号を安定してダウンコンバータ141へ出力することが可能となる。
【0021】
ADC143は、中間周波数帯の信号に変換されてダウンコンバータ141から出力された受信電波信号を所定のサンプリング周波数でデジタル値に変換してベースバンド部15へ出力する。ADC143から出力される各デジタル値は、特に制限されないが、例えば、12ビットのデータである。
これらの受信アンテナANT、低雑音増幅器11、狭帯域フィルタ12、および、RF部14により、受信手段が構成される。
【0022】
ベースバンド部15は、捕捉エンジン151と、追尾エンジン152と、中間周波数生成部153(ローカル周波数発振手段)と、逆拡散コード生成部154と、演算処理部155などを備えている。また、ベースバンド部15には、ベースバンド部15の動作を統括し、CPU(Central Processing Unit)などを含むコントローラ156(捕捉手段、特定手段)と、一時データを記憶するRAM(Random Access Memory)などのメモリ157(演算結果記憶手段)とが含まれている(図2参照)。
【0023】
捕捉エンジン151は、RF部14から入力したデジタル信号から衛星信号を検出してその受信周波数と衛星識別番号とを特定するための演算処理を行う回路であり、後に詳述する。
【0024】
追尾エンジン152は、捕捉エンジン151による演算処理で特定された受信周波数および衛星識別番号により受信される衛星信号と、衛星電波受信装置1の内部クロックとの間で位相同期点を検出し、また、この位相同期を維持して復調した衛星信号を継続的に出力する回路である。
【0025】
中間周波数生成部153は、中間周波数ローカル信号を生成して、捕捉エンジン151、又は、追尾エンジン152に出力する。本実施形態の衛星電波受信装置1におけるベースバンド部15に設けられた中間周波数生成部153は、2個のNCO(Numerically-Controlled Oscillator、数値制御発振器)153a、153bにより構成されている(図2参照)。これらのNCO153a、153bでは、各々に対して入力される設定値により、生成される中間周波数ローカル信号の周波数が独立に細かく制御される。また、NCO153a、153bは、それぞれI相(In Phase)ローカル信号と、このI相ローカル信号に直交するQ相(Quadrature Phase)ローカル信号とを出力可能に構成されている。
【0026】
逆拡散コード生成部154は、拡散コードを生成し、捕捉エンジン151、又は、追尾エンジン152に出力する。本実施形態の衛星電波受信装置1における逆拡散コード生成部154では、衛星識別番号が指定されると、この衛星識別番号に対応する測位衛星で拡散コードとして用いられているC/Aコードが生成される。C/Aコードは、一周期1msの期間に送信される1023個の二値符号データ(チップ)の配列により構成されている。
これらの捕捉エンジン151および逆拡散コード生成部154により、検出演算手段が構成される。
【0027】
演算処理部155は、追尾エンジン152で復調されて出力された衛星信号を復号して時刻データを取得する。また、演算処理部155は、必要に応じてGPS衛星の位置の算出、および、衛星電波受信装置1の現在位置の算出を行って、これらの取得データや算出データを所定のフォーマットで出力する。
【0028】
次に、捕捉エンジン151の内部構成について説明する。
【0029】
図2は、捕捉エンジン151およびこれに関連する部分の構成を示す図である。
【0030】
捕捉エンジン151は、I/Q変換部1511と、2個の積分部1512a、1512bと、相関器1513と、2個の二乗回路1514a、1514bなどを備えている。
【0031】
I/Q変換部1511は、RF部14で中間周波数帯のデジタル信号に変換された受信電波信号から直交する2成分のベースバンド信号を分離して出力する。このI/Q変換部1511は、4個のミキサ1511a〜1511dと、2個のスイッチ1511e、1511fとを備える。スイッチ1511e、1511fは、コントローラ156から送られる制御信号に基づき、同期してオンオフが制御される。スイッチ1511e、1511fがオンされている期間には、RF部14からI/Q変換部1511に入力された中間周波数帯のデジタル信号がミキサ1511a〜1511dの4系統に分離されて入力され、スイッチ1511e、1511fがオフされている期間には、デジタル信号がミキサ1511a、1511bの2系統に分離されて入力される。
【0032】
ミキサ1511a、1511bは、入力されたデジタル信号と、NCO153aから出力された中間周波数IF1のI相ローカル信号およびQ相ローカル信号とを混合する。また、ミキサ1511c、1511dは、入力されたデジタル信号と、NCO153bから出力された中間周波数IF2のI相ローカル信号およびQ相ローカル信号とを混合する。そして、ミキサ1511a、1511bからは、中間周波数IF1に対応する受信周波数のI相およびQ相のベースバンド信号がそれぞれ出力され、ミキサ1511c、1511dからは、中間周波数IF2に対応する受信周波数のI相およびQ相のベースバンド信号がそれぞれ出力される。
【0033】
積分部1512aは、ミキサ1511a、1511bから出力されたベースバンド信号をそれぞれC/Aコード1チップの長さ、即ち、1/1023ms(〜1μs)に亘って積分して、それぞれI相データ、Q相データとして出力する。また、積分部1512bは、ミキサ1511c、1511dから出力されたベースバンド信号をそれぞれC/Aコード1チップの長さに亘って積分して、それぞれI相データ、Q相データとして出力する。或いは、これらの積分部1512a、1512bは、C/Aコード1チップの長さに比して周期の短い交流成分をカットするローパスフィルタであってもよい。
【0034】
相関器1513は、例えば、マッチドフィルタである。この相関器1513は、積分部1512a、1512bの出力データ(I相データ、Q相データ)と、逆拡散コード生成部154で生成されたC/AコードとをC/Aコード1周期分(1023個)ずつ保持して、I相データおよびQ相データと、C/Aコードとの間の相関をそれぞれ求める。相関器1513は、シフトレジスタ1513a、1513b、RAM1513c、セレクタ1513d、乗算器群1513e、1513f、および、加算器1513g〜1513jを備えている。
【0035】
シフトレジスタ1513a、1513bには、12ビットのデータが1023段に亘って保持される。シフトレジスタ1513aには、I相データが積分部1512a、1512bから入力される。また、シフトレジスタ1513bには、Q相データが積分部1512a、1512bから入力される。シフトレジスタ1513a、1513bは、それぞれ1個の12ビット(第1のビット数)データを1023個保持する形態と、2個の6ビット(第2のビット数)データを並列的に1023個ずつ保持する形態との間で切り替えることが出来るようになっている。
【0036】
シフトレジスタ1513a、1513bにおけるデータ保持形態の切り替えは、I/Q変換部1511におけるスイッチ1511e、1511fのオンオフと連動して制御される。スイッチ1511e、1511fがオフの期間には、積分部1512aから出力された12ビットのI相データおよび12ビットのQ相データがそのまま順番にそれぞれシフトレジスタ1513a、1513bに入力され、1023個ずつ蓄積される。このとき、積分部1512bからは、シフトレジスタ1513a、1513bにデータが入力されない。一方、スイッチ1511e、1511fがオンの期間には、積分部1512a、1512bからそれぞれ出力された12ビットのI相データに基づく6ビットのデータが並列にシフトレジスタ1513aへ入力され、また、積分部1512a、1512bからそれぞれ出力された12ビットのQ相データに基づく6ビットのデータが並列にシフトレジスタ1513bへ入力される。そして、それぞれ1023個のデータが入力された順に直列に蓄積されていく。
【0037】
積分部1512a、1512bからシフトレジスタ1513a、1513bへ入力されるデータを12ビットから6ビットに変換する際には、例えば、12ビットデータのうち上位6ビットのみを取得するように構成することができる。
【0038】
RAM1513cには、C/Aコード一周期分に当たる1023チップの二値符号データが逆拡散コード生成部154から入力される。本実施形態のRAM1513cは、最大4衛星分のC/Aコードを一度に記憶可能であり、セレクタ1513dにより何れかのGPS衛星のC/Aコードが1つ選択される。RAM1513cに格納される各符号データは、特に制限されないが、衛星電波受信装置1の小型化及び演算の簡略化のため、1ビットで表される。
【0039】
乗算器群1513eは、RAM1513cに記憶されたC/Aコードの中からセレクタ1513dにより選択されたGPS衛星のC/Aコードを表す各チップデータと、積分部1512aから入力されてシフトレジスタ1513aに記憶された同位相、即ち、同一順番に入力された各I相データとをそれぞれ乗算し、加算器1513gに出力する。また、乗算器群1513eは、RAM1513cに記憶されたC/Aコードの中からセレクタ1513dにより選択されたGPS衛星のC/Aコードを表す各チップデータと、積分部1512bから入力されてシフトレジスタ1513aに記憶された同位相の各I相データとをそれぞれ乗算し、加算器1513hに出力する。一方、乗算器群1513fは、RAM1513cに記憶されたC/Aコードの中からセレクタ1513dにより選択されたGPS衛星のC/Aコードを表す各チップデータと、積分部1512aから入力されてシフトレジスタ1513bに記憶された同位相の各Q相データとをそれぞれ乗算し、加算器1513iに出力する。また、乗算器群1513fは、RAM1513cに記憶されたC/Aコードの中からセレクタ1513dにより選択されたGPS衛星のC/Aコードを表す各チップデータと、積分部1512bから入力されてシフトレジスタ1513bに記憶された同位相の各Q相データとをそれぞれ乗算し、加算器1513jに出力する。
【0040】
加算器1513g、1513iは、乗算器群1513e、1513fから入力された値の総和をそれぞれ求めて、I相データの相関値、および、Q相データの相関値として二乗回路1514aに出力する。また、加算器1513h、1513jは、乗算器群1513e、1513fから入力された値の総和をそれぞれ求めて、I相データの相関値、および、Q相データの相関値として二乗回路1514bに出力する。
【0041】
二乗回路1514aは、加算器1513gから入力されたI相データの相関値、および、加算器1513iから入力されたQ相データの相関値をそれぞれ二乗して加算する。また、二乗回路1514bは、加算器1513hから入力されたI相データの相関値、および、1513jから入力されたQ相データの相関値をそれぞれ二乗して加算する。これらの計算結果は、ベースバンド部15のメモリ157へそれぞれ独立に送られて後述する所定のアドレスに記憶される。なお、加算器1513g〜1513jは、求められた二乗和の平方根を出力することとしても良い。
【0042】
図3は、中間周波数生成部153が備えるNCO153a、153bの構成を示すブロック図である。
【0043】
NCO153a、153bは、同一の構成であり、ここでは一のNCOについて説明する。本実施形態のNCOは、DDS(Direct Digital Synthesizer)の回路構成をとり、加算器1531、1532と、レジスタ1533と、COS_ROM1534と、SIN_ROM1535などを備えている。
【0044】
加算器1531は、設定されたIFタイミングの値およびオフセットの値が入力されてこれらの値を加算する。加算器1531で加算された値は、加算器1532に送られる。加算器1532は、この加算器1531から入力された値とレジスタ1533から入力された値とを加算して、COS_ROM1534およびSIN_ROM1535に出力するとともに、レジスタ1533に記憶させる。即ち、加算器1532およびレジスタ1533は、位相アキュムレータとして機能する構成であり、レジスタ1533に記憶される値は、予め定められた時間間隔で、加算器1531から加算器1532に入力された値ずつ増加していく。そして、レジスタ1533に記憶された値が最大値となった後に再び0に戻ることで、一周期の経過が示されることになる。加算器1532およびレジスタ1533は、特に限られないが、例えば、32ビットのデータ容量を有する。
【0045】
COS_ROM1534およびSIN_ROM1535は、それぞれ、振幅が1の余弦関数および正弦関数の一周期を、例えば、8ビットで表される256の位相に等分割し、各位相での余弦関数および正弦関数の値を位相に対応するアドレスに格納したROM(Read Only Memory)である。COS_ROM1534およびSIN_ROM1535は、位相の値が入力されると対応するアドレスから余弦関数および正弦関数の値を読み出し、出力するルックアップテーブルとして用いられる。本実施形態のNCOでは、加算器1532からCOS_ROM1534およびSIN_ROM1535に32ビットの数値が入力されると、例えば、そのうちの上位8ビットの値によって示される位相に対応するアドレスから余弦関数および正弦関数の値が読み出される。そして、これらの値が予め定められた時間間隔で次々に読み出されていくことで、指定された周波数のI相ローカル信号LoIおよびQ相ローカル信号LoQが生成される。なお、入力された数値のうち、下位24ビットの値に基づいてCOS_ROM1534およびSIN_ROM1535から読み出された値を線形補間し、例えば、12ビットの値として出力することとしてもよい。
【0046】
ここで、IFタイミングの設定入力値は、標準の中間周波数、即ち、本実施形態のNCOでは、中間周波数IF0=4.092MHzに対応する値である。従って、中間周波数のオフセット値(周波数チャンネル)が0の場合には、NCOからは、4.092MHzのローカル周波数信号が出力される。一方、オフセット値を0から変化させることにより、出力するローカル周波数を4.092MHzからデジタル的に増減させることが可能となる。本実施形態のNCOでは、周波数チャンネルの変化1に対応する周波数変化量Δfを100Hzとする。従って、周波数チャンネルが1増加するごとに出力されるローカル周波数が中間周波数IF0から100Hzずつ上昇し、周波数チャンネルが1減少するごとに出力されるローカル周波数が中間周波数IF0から100Hzずつ低下する。従って、例えば、±15kHzの範囲内で捕捉処理を行う場合には、−150チャンネルから+150チャンネルまでの範囲で周波数チャンネルを変化させることになる。
【0047】
次に、本実施形態の衛星電波受信装置1の捕捉エンジン151における衛星電波の検索手順について説明する。
【0048】
図4は、捕捉エンジン151において、一のGPS衛星のC/Aコードを生成して一の受信周波数で当該一のGPS衛星からの電波を受信した場合の捕捉エンジン151からの出力データの例を示す図である。
【0049】
シフトレジスタ1513a、1513bに記憶された一の中間周波数に係るベースバンドデータ2046個と、逆拡散コード生成部154からRAM1513cに入力されてセレクタ1513dにより選択された一のC/Aコードを示す1023個のチップデータとの間の位相差は、シフトレジスタ1513a、1513bに1データずつ入力していくと、C/Aコードの1周期ごとに1回1チップ未満となる。拡散コードでは、異なる位相のデータ配列間での自己相関はとても低く、従って、位相差が1チップ以上ある場合には、出力値は、常に非常に小さいノイズレベルの値となるのに対し、位相差が1チップ未満となったときにのみ、出力値が急激に増大する。即ち、二乗回路1514a、1514bから出力される相関値のうち一周期の中で最大の値によって衛星信号が検出されたか否かを判断することができる。或いは、この最大値と、非最大の各値の平均値との比により算出されるS/N値を用いて衛星信号の検出有無を判断することも可能である。また、S/N値として、例えば、上記算出された値の対数を利用してもよい。
【0050】
上記相関値の算出は、各GPS衛星のC/Aコードおよび各受信周波数に対して行われる必要がある。GPS衛星からの電波の受信周波数は、GPS衛星からの送信周波数に対してGPS衛星の移動速度によるドップラー速度、および、発振回路13の発振周波数に含まれるオフセット誤差といった計器誤差の影響の範囲内で変化する。この周波数変化量Δfは、通常の状態では、最大で±15kHz程度である。従って、ダウンコンバータ141により中間周波数帯に変換された受信電波信号からベースバンド信号を抽出する際にNCO153a、153bから出力する中間周波数IF1、IF2のローカル周波数信号も、中間周波数IF0からの周波数変化量Δfを同じ範囲で変化させて受信周波数を特定する必要がある。100Hz程度の精度で受信周波数を特定するには、周波数変化量Δfを300回程度切り換えて繰り返し捕捉エンジン151による演算を行わせることで探索動作を繰り返さなければならない。
【0051】
そこで、本実施形態の衛星電波受信装置1では、先ず、一度目の探索動作として、±15kHzの範囲内(第1の周波数範囲)において500Hzの周波数間隔(第1の周波数間隔)で1衛星当たり60回の探索を行う。そして、最大のS/N値が得られたC/Aコード、および、周波数に基づき、二度目の探索動作として、当該C/Aコードにおいて当該周波数を中心とした±500Hz程度の範囲内(第2の周波数範囲)で周波数変化量Δfを100Hz間隔(第2の周波数間隔)として再度探索を行うことにより、受信周波数を特定する。
【0052】
次に、捕捉エンジン151を用いた衛星電波の検索処理の動作手順についてフローチャートを用いて説明する。
【0053】
図5は、全てのGPS衛星、及び、設定されたすべての周波数範囲に亘ってGPS衛星からの電波の探索を行う検索処理において、コントローラ156のCPUが実行する制御処理の手順を示したフローチャートである。また、図6は、図5内で呼び出される検出動作処理の制御手順を示すフローチャートである。また、図7は、検索処理内でメモリ157に記憶されるデータの配列パターンを示した図である。
【0054】
検索処理が開始されると、コントローラ156のCPUは、先ず、捕捉エンジン151における演算設定を12ビット分解能、4衛星同時サーチとする(ステップS1)。具体的には、CPUは、スイッチ1511e、1511f、積分部1512b、および、NCO153bをオフし、また、積分部1512aからシフトレジスタ1513a、1513bにそれぞれ12ビットのデータを出力させるように設定する。
【0055】
次に、CPUは、初期値として周波数チャンネルchを「−150」に設定し、また、衛星識別番号nを「1」に設定する(ステップS2)。
【0056】
CPUは、逆拡散コード生成部154に検出衛星番号として衛星識別番号n〜n+3を順番に入力し、衛星識別番号n〜n+3に対応するGPS衛星におけるC/Aコードを生成して、それぞれRAM1513cに記憶させる(ステップS3)。また、CPUは、設定された周波数チャンネルchをNCO153aへ入力するオフセット値として設定する(ステップS4)。
【0057】
ステップS1〜S4における変数の設定が完了すると、コントローラ156のCPUは、検出動作処理を呼び出して、GPS衛星から送信された信号の一度目の検出動作を行う(ステップS5)。この検出動作処理では、図6に示すように、CPUは、先ず、捕捉エンジン151全体に動作クロックを供給し、ミキサ1511aおよび積分部1512aで算出された12ビットのI相データをシフトレジスタ1513aへ順番に格納させ、また、ミキサ1511b及び積分部1512aで算出された12ビットのQ相データをシフトレジスタ1513bへ順番に格納させる。シフトレジスタ1513a、1513bのすべてのレジスタに12ビットデータが格納されると、CPUは、次のI相データ、Q相データがシフトレジスタ1513a、1513bに入力される前に、セレクタ1513dを操作して衛星識別番号n〜n+3に対応するGPS衛星のC/Aコードを順番に乗算器群1513e、1513fへ出力させる。そして、これらのC/Aコードデータとシフトレジスタ1513aのI相データおよびシフトレジスタ1513bのQ相データとにより演算処理が行われ、二乗回路1514a、1514bで相関値が算出されると、CPUは、この相関値の出力を順番に周波数チャンネルch=−150、位相P=0の値としてメモリ157に記憶させる。
【0058】
それから、コントローラ156のCPUは、I相データおよびQ相データがシフトレジスタ1513a、1513bにそれぞれ入力されて位相Pが変化するごとにセレクタ1513dを動作させて、衛星識別番号n〜n+3に対応するGPS衛星のC/Aコードを順番に乗算器群1513e、1513fへ出力させる。そして、演算処理が行われて二乗回路1514a、1514bで相関値が算出されると、CPUは、二乗回路1514a、1514bから出力された相関値をメモリ157における当該位相Pのアドレスへ順番に記憶させていく。図7(a)に示すように、求められた相関値は、C/Aコードの位相P、受信周波数F(即ち、受信チャンネルch)、および、衛星識別番号nの3つの変数による三次元配列上に配置される。捕捉エンジン151においてこれらの3つの変数を設定して求められた相関値の出力データは、これらの3つの変数により定められるアドレスに記憶される。
【0059】
全2046位相の相関値がメモリ157に記憶されると(ステップS41)、CPUは、同一の周波数チャンネルchにおける最大の相関値を取得する(ステップS42)。続いて、CPUは、この周波数チャンネルchにおける最大値以外の相関値の平均値を求めて、ノイズレベルを算出する(ステップS43)。そして、CPUは、ステップS42の処理で取得された最大の相関値と、ステップS43の処理で算出されたノイズレベルの相関値との比を算出してS/N値とする(ステップS44)。それから、CPUの処理は、検索処理に戻る。
【0060】
CPUの処理が検索処理に復帰すると、CPUは、先ず、検出動作処理で求められたS/N値および最大のS/N値が取得された衛星識別番号nをメモリ157に記憶させる(ステップS6)。図7(b)に示すように、検出動作処理が行われた周波数チャンネルch、衛星識別番号n、S/N値がテーブルに記憶される。
【0061】
次に、CPUは、周波数チャンネルchに5を加算する(ステップS7)。CPUは、新たな周波数チャンネルchが「155」であるか否かを判別する(ステップS8)。周波数チャンネルchが「155」ではないと判別された場合には、“NO”に分岐し、CPUの処理はステップS4に戻って、新たに設定された周波数チャンネルchにおける相関値の算出処理を行う(ステップS4〜S7)。即ち、一度目の検出動作では、中間周波数IF0に対して±15kHzの範囲において、500Hzの周波数間隔で相関値の算出が行われる。
【0062】
一方、ステップS8の判別処理において、周波数チャンネルchが「155」であると判別された場合には、CPUの処理は、“YES”に分岐する。CPUは、周波数チャンネルchを初期化して「−150」に戻すと共に、衛星識別番号nに4を加算する(ステップS9)。
【0063】
CPUは、ステップS9の処理で新たに設定された衛星識別番号nが「33」であるか否かを判別する(ステップS10)。衛星識別番号nが「33」ではないと判別された場合には、CPUの処理は、ステップS3へ戻り、検出衛星番号として新たに設定された衛星識別番号n〜n+3に対応するGPS衛星について、相関値を取得する処理を繰り返す(ステップS3〜S7)。
【0064】
ステップS10の判別処理で、衛星識別番号nが「33」であると判別された場合には、CPUの処理は、ステップS11へ移行する。CPUは、図7(b)に示したメモリ157のテーブルに記憶されたS/N値の中から最大値を検索し、当該最大値における衛星識別番号nを一次検出衛星識別番号n1として設定し、また、周波数チャンネルchの値を一次検出チャンネルch1として設定する。
【0065】
ステップS11の処理により一度目の探索が終了すると、コントローラ156のCPUは、二度目の探索を開始する。先ず、コントローラ156のCPUは、捕捉エンジン151における演算設定を6ビット分解能、2周波数同時サーチとする(ステップS12)。具体的には、CPUは、スイッチ1511e、1511f、積分部1512b、および、NCO153bをオンし、また、積分部1512a、1512bからシフトレジスタ1513a、1513bにそれぞれ6ビットずつのデータを並列に出力させるように設定する。
【0066】
次に、CPUは、検出衛星番号として一次検出衛星識別番号n1に設定する(ステップS13)。それから、CPUは、変数mを0に設定する(ステップS14)。また、CPUは、周波数チャンネルchを「ch1−4+m」、「ch1−3+m」に設定して、これらの設定された周波数チャンネルchをNCO153a、153bへ入力するオフセット値としてそれぞれ設定する(ステップS15)。
【0067】
ステップS12〜S15の処理で設定が行われると、CPUは、二度目の検出動作処理を実行する(ステップS16)。この検出動作処理では、図6で示したように、先ず、CPUは、捕捉エンジン151に、一次検出衛星識別番号n1に対応するGPS衛星のC/Aコードにより、各位相Pにおいて2つの周波数チャンネルch=ch1−4+m、ch1−3+mに対して並列的に相関値を算出させる。そして、CPUは、求められた相関値をメモリ157に記憶させる(ステップS41)。この相関値は、メモリ157上に周波数チャンネルchおよび位相Pの2つの変数によって設定された二次元配列内に記憶される。ここで、求められた相関値を実際に記憶するメモリ157上の実アドレスは、相関値を出力する二乗回路1514a又は1514bにそれぞれ対応してメモリ157a又は157bに設定される。このように、メモリ157は、二乗回路1514a、1514bの動作タイミングが重なっても平行して書込みが可能に構成されている。
【0068】
設定された2つの周波数チャンネルにおいて全ての位相Pに対して求められた相関値がメモリ157に記憶されると、CPUは、周波数チャンネルchごとに最大の相関値を取得し(ステップS42)、ノイズレベルを計算して(ステップS43)、各周波数チャンネルchにおけるS/N値を算出する(ステップS44)。ステップS42〜S44の処理は、ステップS5で実行された一度目の検出動作処理における各処理と同様であり、詳しい説明を省略する。それから、CPUの処理は、検索処理に戻る。
【0069】
CPUの処理が検索処理に戻ると、CPUは、求められた2つのS/N値をテーブルに保存する(ステップS17)。
【0070】
CPUは、変数mに2を加算する(ステップS18)。それから、CPUは、この変数mの値が10であるか否かを判別する(ステップS19)。変数mが10でないと判別された場合には、CPUの処理は、ステップS15に戻り、捕捉エンジン151に、新たに設定された受信チャンネルchにおける検出動作を行わせる(ステップS15〜S18)。即ち、二度目の検出動作では、一次検出周波数チャンネルch1に対応する受信周波数に対して−400Hz〜+500Hzの範囲において、100Hzの周波数間隔で相関値の算出が行われる。
【0071】
一方、ステップS19における判別処理で、変数mが10であると判別された場合には、CPUは、周波数チャンネルch=ch1−4〜ch1+5において算出されてメモリ157のテーブルに記憶されたS/N値の中で、最大の値が得られた周波数チャンネルchの値を二次検出チャンネルchmに設定する(ステップS20)。そして、CPUは、一次検出チャンネルch1と二次検出チャンネルchmとが等しいか否かを判別する(ステップS21)。一次検出チャンネルch1と二次検出チャンネルchmとが等しくないと判別された場合には、CPUは、二次検出チャンネルchmの値を一次検出チャンネルch1として設定する(ステップS24)。それから、CPUの処理はステップS14に戻って、CPUは、新たな一次検出チャンネルch1に基づいて二度目の探索に係る各処理を繰り返す(ステップS14〜S20)。
なお、このステップS21の判別処理およびステップS24の処理と再探索は、行わないこととしてもよい。
【0072】
ステップS21の判別処理で、一次検出チャンネルch1と二次検出チャンネルchmとが等しいと判別された場合には、この検索結果をメモリ157のテーブルに保存し(ステップS22)、二次検出チャンネルchmをキャリア周波数として特定して(ステップS23)、検索処理を終了する。
【0073】
以上のように、本発明の実施形態の衛星電波受信装置1によれば、受信したL1帯の受信電波信号からGPS衛星の衛星信号を検出する捕捉エンジン151を備え、捕捉エンジン151は、先ず、コントローラ156が±15kHzの周波数範囲に亘り500Hz間隔で順番に設定した受信周波数の受信信号を12ビットのデジタルデータとして取得して、当該デジタルデータから各GPS衛星からの衛星信号を検出するための演算を行う。そして、衛星信号が検出された場合には、続いて、コントローラ156が同時に2つの受信周波数を100Hz間隔で順番に設定していき、捕捉エンジン151は、これら2つの受信周波数の受信信号を6ビットのデジタルデータとして各々取得して、これら2つの受信周波数に係るデジタルデータから並列的に衛星信号を検出するための演算を行う。そして、コントローラ156は、この演算結果に基づいて衛星信号の受信周波数を特定する。従って、従来、衛星信号の捕捉処理において時間を要していた受信周波数の探索時間を短縮することが出来る。また、探索時間を短縮することにより、受信動作時間を短縮させることができ、電力消費を低減させることができる。また、1度目の探索結果に基づいて2度目の探索の際に取得するデジタルデータのダイナミックレンジを縮小して必要なデータの記憶にビット数を減らすことができるので、複数の受信周波数データを同時に記憶するための記憶容量の増加を抑えることができ、従って、探索の高速化に伴う衛星電波受信装置1のサイズの増加を抑えることができる。
【0074】
また、特に、1度目の探索の際に12ビットデジタルデータを取得し、2度目の探索の際に2周波数に対してそれぞれ6ビットデジタルデータを取得することで、必要なシフトレジスタ1513a、1513bの記憶容量を同一とすることができ、シフトレジスタ1513a、1513bのサイズを変化させることなく短時間で衛星信号の受信周波数を特定することが出来る。
【0075】
また、捕捉エンジン151における衛星信号の探索は、中間周波数生成部153のNCO153a、153bへの入力値に基づいて設定される受信周波数のベースバンド信号と、測位衛星において衛星信号をスペクトル拡散変調するC/Aコードとの相関値を求めることにより行うので、安定的且つ容易に周波数を制御しながら迅速に衛星信号の探索を行うことが出来る。
【0076】
また、ベースバンド信号とC/Aコードとの相関値は、12ビットデジタルデータを入力可能なマッチドフィルタ(相関器1513)によって求められる。そして、このマッチドフィルタは、2度目の探索の際に2つの受信周波数に係る6ビットデジタルデータを並列的に入力して、それぞれC/Aコードとの相関値を求めることが可能な構成なので、全位相における相関値の算出が高速化されると共に、マッチドフィルタのサイズを変化させること無く2周波数の入力データに対する相関値の算出を並列的に行うことが出来る。
【0077】
また、ダウンコンバータ141で中間周波数帯に変換された受信電波信号からベースバンド信号を取得するための中間周波数生成部153は、NCO153a、153bを2つ独立に備え、各々異なる周波数信号を出力して、中間周波数帯の受信電波信号と混合させることで、マッチドフィルタに対し容易に2つの受信周波数のベースバンド信号を並列的に入力させることができる。また、NCO153a、153bは、マッチドフィルタのシフトレジスタ1513a、1513bに比較して十分にサイズが小さいので、並列化によってもサイズの増大にはほとんど影響しない。
【0078】
また、2度目の探索の際には、1度目の探索と同様にデジタル変換された12ビットデータから上位6ビットを選択してシフトレジスタ1513a、1513bへ入力させることとするので、ADC143、I/Q変換部1511や積分回路1512a、1512bの構成を変更することなく容易に入力ビット数の変換を行うことが出来る。
【0079】
また、2度目の探索の際には、1度目の探索の際に衛星信号が検出された周波数の上下±500Hz程度の範囲でのみ探索を行うので、2度目の探索時間を更に短縮することが出来る。
【0080】
また、2度目の探索の際に捕捉エンジン151で並列的に算出され、二乗回路1514a、1514bから出力される相関値は、それぞれ独立したメモリ157a、157bに記憶されるので、二乗回路1514a、1514bからの出力タイミングが重なってもメモリへの書込みタイミングが遅延する心配が無い。
【0081】
また、1度目の探索においては、RAM1513cとセレクタ1513dとを用いて複数のGPS衛星からの衛星信号を並列的に検出可能であり、2度目の探索においては、検出された衛星信号のうち、最も受信強度の高いGPS衛星からの衛星信号についてのみ検出を行って受信周波数を特定するので、不要なGPS衛星からの衛星信号の探索処理を行わないことによる探索処理の時間短縮を図ることが出来る。
【0082】
また、複数衛星の受信データが必要な場合には、1度目の探索処理において検出された衛星信号を送信したGPS衛星に対してのみ2度目の探索処理を行うこととすることも可能であるので、不要なGPS衛星からの衛星信号の探索処理を行わないことによる探索処理の時間短縮を図ることが出来る。
【0083】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、相関器1513において12ビットデータを取得、演算して1度目の探索を行い、2周波数の6ビットデータを取得、演算して2度目の探索を行ったが、取得データは、この組み合わせに限られない。例えば、1度目の探索が16ビットデータの演算により行われ、2度目の探索が8ビットデータの演算によって行われるものとしてもよい。また、2度目の探索は、3周波数の4ビットデータを用いた演算により行われることとしてもよい。この場合には、NCO、捕捉エンジン151の各演算処理部、及び、メモリ157をそれぞれ3系統備える必要がなる。また、上記1度目の探索におけるデジタルデータのビット数と、2度目の探索において並列に処理されるデジタルデータの合計ビット数とは、同一に限られない。1度目のビット数と2度目の合計ビット数が異なる場合には、1度目の探索或いは2度目の探索の何れかに余分なビット数が生じるが、例えば1度目の探索においては12ビットのデータを用い、2度目の探索においては2周波数で8ビットデータを用い、シフトレジスタ1513a、1513bには16ビット格納可能とすることでも、単純に12ビットの入力を2系統用意するよりも記憶容量の増加を抑えることができ、即ち、シフトレジスタのサイズの大型化を抑えることができる。
【0084】
また、上記実施の形態では、12ビットデータのうち上位6ビットを取得することとしたが、これに限られない。例えば、1度目の探索で取得された最大の相関値を表現可能な6ビットを取得することとしてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、予め決定されたビット数及び周波数の数に分割されたが、1度目の探索結果のダイナミックレンジなどに基づいて分割方法を可変とすることとしてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、もっとも受信強度の高かった位置衛星の受信周波数のみ特定したが、現在位置の算出などを行う場合に複数衛星からの衛星信号を取得する必要がある場合には、検出された複数の衛星の受信周波数を特定することとしてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成の配置や受信周波数の設定間隔および範囲といった数値などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0088】
[付記]
<請求項1>
測位衛星から電波送信された衛星信号を取得する衛星電波受信装置において、
前記衛星信号の送信周波数を含む周波数帯の電波を受信可能な受信手段と、
前記受信手段により受信された受信電波信号から前記衛星信号を検出するための所定の演算を予め定められた2以上の所定数の受信周波数に対して並列的に実行可能な検出演算手段と、
第1の周波数範囲に亘り第1の周波数間隔で順番に一の受信周波数を設定して、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を第1のビット数のデジタルデータとして取得させ、当該デジタルデータによる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号を検出する捕捉手段と、
前記捕捉手段により前記衛星信号が検出された場合に、前記第1の周波数間隔より狭い第2の周波数間隔で順番に前記所定数個ずつ受信周波数を設定し、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を前記第1のビット数より小さい第2のビット数のデジタルデータとして各々取得させ、当該所定数個のデジタルデータにより並列的に行われる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号の受信周波数を特定する特定手段と、
を備えることを特徴とする衛星電波受信装置。
<請求項2>
前記第2のビット数は、前記第1のビット数を前記所定数で除した値である
ことを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
<請求項3>
前記検出演算手段は、設定された受信周波数のベースバンド信号を取得し、当該ベースバンド信号と、前記測位衛星において前記衛星信号をスペクトル拡散変調する拡散コードとの相関を求める
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の衛星電波受信装置。
<請求項4>
前記検出演算手段は、前記ベースバンド信号と前記拡散コードとの相関を求めるマッチドフィルタを備え、
当該マッチドフィルタは、前記第2のビット数のデジタルデータを前記予め定められた複数並列的に入力し、各々前記拡散コードとの相関を求めることが可能な構成である
ことを特徴とする請求項3に記載の衛星電波受信装置。
<請求項5>
設定された前記予め定められた複数の異なる周波数信号を出力するローカル周波数発振手段を備え、
前記検出演算手段は、当該ローカル周波数発振手段から出力される周波数信号の各々に前記受信電波信号を混合することにより、異なる受信周波数の前記ベースバンド信号を並列的に取得する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の衛星電波受信装置。
<請求項6>
前記第2のビット数のデジタルデータは、前記第1のビット数のデジタルデータのうち、当該第2のビット数分の上位ビットデータである
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項7>
前記特定手段は、前記捕捉手段により前記衛星信号が検出された場合に、当該衛星信号が検出された検出周波数を含み、前記第1の周波数範囲より狭い第2の周波数範囲に亘り、前記所定数個ずつ順番に受信周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項8>
前記検出演算手段により前記所定数個の受信周波数に対して並列に相関が求められる場合に、当該並列に求められた相関値が各々独立に記憶される演算結果記憶手段
を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項9>
前記捕捉手段は、複数の前記測位衛星からの前記衛星信号を並列的に検出可能であり、前記特定手段は、前記捕捉手段により複数の前記測位衛星からの前記衛星信号が検出された場合には、当該検出された前記衛星信号のうち、最も受信強度の高い前記測位衛星からの前記衛星信号の受信周波数を特定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
<請求項10>
前記捕捉手段は、複数の前記測位衛星からの前記衛星信号を並列的に検出可能であり、前記特定手段は、前記捕捉手段により複数の前記測位衛星からの前記衛星信号が検出された場合には、当該検出された前記測位衛星からの前記衛星信号の受信周波数を各々特定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
【符号の説明】
【0089】
1 衛星電波受信装置
11 低雑音増幅器
12 狭帯域フィルタ
13 発振回路
14 RF部
141 ダウンコンバータ
142 PLL
143 ADC
15 ベースバンド部
151 捕捉エンジン
1511 I/Q変換部
1511a〜1511d ミキサ
1511e、1511f スイッチ
1512a、1512b 積分部
1513 相関器
1513a、1513b シフトレジスタ
1513c RAM
1513d セレクタ
1513e、1513f 乗算器群
1513g〜1513j 加算器
1514a、1514b 二乗回路
152 追尾エンジン
153 中間周波数生成部
153a、153b NCO
1531、1532 加算器
1533 レジスタ
1534 COS_ROM
1535 SIN_ROM
154 逆拡散コード生成部
155 演算処理部
156 コントローラ
157 メモリ
157a、157b メモリ
ANT 受信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から電波送信された衛星信号を取得する衛星電波受信装置において、
前記衛星信号の送信周波数を含む周波数帯の電波を受信可能な受信手段と、
前記受信手段により受信された受信電波信号から前記衛星信号を検出するための所定の演算を予め定められた2以上の所定数の受信周波数に対して並列的に実行可能な検出演算手段と、
第1の周波数範囲に亘り第1の周波数間隔で順番に一の受信周波数を設定して、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を第1のビット数のデジタルデータとして取得させ、当該デジタルデータによる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号を検出する捕捉手段と、
前記捕捉手段により前記衛星信号が検出された場合に、前記第1の周波数間隔より狭い第2の周波数間隔で順番に前記所定数個ずつ受信周波数を設定し、前記検出演算手段に当該受信周波数の信号を前記第1のビット数より小さい第2のビット数のデジタルデータとして各々取得させ、当該所定数個のデジタルデータにより並列的に行われる前記所定の演算結果に基づいて前記衛星信号の受信周波数を特定する特定手段と、
を備えることを特徴とする衛星電波受信装置。
【請求項2】
前記第2のビット数は、前記第1のビット数を前記所定数で除した値である
ことを特徴とする請求項1記載の衛星電波受信装置。
【請求項3】
前記検出演算手段は、設定された受信周波数のベースバンド信号を取得し、当該ベースバンド信号と、前記測位衛星において前記衛星信号をスペクトル拡散変調する拡散コードとの相関を求める
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の衛星電波受信装置。
【請求項4】
前記検出演算手段は、前記ベースバンド信号と前記拡散コードとの相関を求めるマッチドフィルタを備え、
当該マッチドフィルタは、前記第2のビット数のデジタルデータを前記予め定められた複数並列的に入力し、各々前記拡散コードとの相関を求めることが可能な構成である
ことを特徴とする請求項3に記載の衛星電波受信装置。
【請求項5】
設定された前記予め定められた複数の異なる周波数信号を出力するローカル周波数発振手段を備え、
前記検出演算手段は、当該ローカル周波数発振手段から出力される周波数信号の各々に前記受信電波信号を混合することにより、異なる受信周波数の前記ベースバンド信号を並列的に取得する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の衛星電波受信装置。
【請求項6】
前記第2のビット数のデジタルデータは、前記第1のビット数のデジタルデータのうち、当該第2のビット数分の上位ビットデータである
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記捕捉手段により前記衛星信号が検出された場合に、当該衛星信号が検出された検出周波数を含み、前記第1の周波数範囲より狭い第2の周波数範囲に亘り、前記所定数個ずつ順番に受信周波数を設定する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
【請求項8】
前記検出演算手段により前記所定数個の受信周波数に対して並列に相関が求められる場合に、当該並列に求められた相関値が各々独立に記憶される演算結果記憶手段
を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
【請求項9】
前記捕捉手段は、複数の前記測位衛星からの前記衛星信号を並列的に検出可能であり、前記特定手段は、前記捕捉手段により複数の前記測位衛星からの前記衛星信号が検出された場合には、当該検出された前記衛星信号のうち、最も受信強度の高い前記測位衛星からの前記衛星信号の受信周波数を特定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。
【請求項10】
前記捕捉手段は、複数の前記測位衛星からの前記衛星信号を並列的に検出可能であり、前記特定手段は、前記捕捉手段により複数の前記測位衛星からの前記衛星信号が検出された場合には、当該検出された前記測位衛星からの前記衛星信号の受信周波数を各々特定する
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の衛星電波受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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