説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄水の異常温度の発生を抑制し、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】止水電磁弁25と流量センサ26と熱交換器50と入水サーミスタ50と出湯サーミスタ51と洗浄ノズル10と報知手段202と制御部60とを含み、制御部60は洗浄水の流量と入水温度と熱交換器60への入力とを基に、洗浄水の出湯温度の予測値を算出する出湯温度演算手段63を備え、出湯温度演算手段63が算出した予測値と、出湯サーミスタ51が検知した出湯温度とが所定の範囲以上異なる場合、報知手段202による異常報知および熱交換器40への通電の遮断を実施するものである。
これにより、入水サーミスタ50と出水サーミスタ51の異常検知が可能となり、洗浄水の異常温度の発生を抑制することが可能となり、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置における給湯温度の安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、貯湯槽内の水をヒータで加熱して洗浄に使用する温水を生成する給水加熱装置を備え、給水加熱装置は所定温度の温水を得るために、貯湯槽に温度センサとして設置したサーミスタで温水の温度を検知し、検知データに基づきヒータの通電を制御することにより温水の温度を維持している。
【0003】
しかしながら、サーミスタに異常が生じた場合、温水を所定温度に維持することができなくなり、衛生洗浄装置の機能を維持することができなくなるため、貯湯槽に入水口から供給される水温を検知する第1のサーミスタと、貯湯槽内の平均温度を検知する第2のサーミスタを設置し、通常は両方の検知データにより制御を行い、第1のサーミスタが故障した場合には、第2のサーミスタのみで制御を継続する構成となっている。
【0004】
サーミスタの故障として多く発生するのは、抵抗値が無限大となるオープン故障である。サーミスタは負特性の抵抗特性を有するものであり、オープン故障で抵抗値が無限大になった場合には、異常に低い温度を検知したことになり、この状態の検知データに基づきヒータの通電制御を継続した場合、ヒータに必要以上の通電が行われ、温水の温度が異常に上昇するという不具合が発生する。
【0005】
温水温度の異常上昇を防止するために、従来の衛生洗浄装置においては、入水口からの水温を検知する第1のサーミスタの抵抗値が無限大になるオープン故障が生じた場合には、第2のサーミスタの検知データのみで制御を行い、貯湯槽内の平均温度を検知する第2のサーミスタがオープン故障した場合には、給水加熱装置の機能を停止する構成となっている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−113439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、サーミスタの故障の症状としてはオープン故障のみを対象としたものである。しかしながら、サーミスタの故障の症状としては、オープン故障のように抵抗値が無限大にならず、正規の抵抗特性とは異なる抵抗特性が発生し、実際の温度とは異なる検知データが送信される故障がある。
【0008】
このような故障の場合、従来の衛生洗浄装置の構成においては、異常と判定することができず、給水加熱装置の運転が継続され、設定温度と異なる温度の温水が供給され、使用者が不快を感じることがあり、場合によっては高温の温水により、使用者や衛生洗浄装置自体が損傷を受けることがあり、衛生洗浄装置の快適性および安全性の観点から未だ改良の余地があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、サーミスタの故障がオープン故障以外の故障であっても、ヒータへの通電を適切に遮断し、温水の温度が異常に上昇することを防止し快適で安全な衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、洗浄水の供給と停止を制御する止水電磁弁と、洗浄水の流量を検知する流量センサと、洗浄水を昇温する熱交換器と、熱交換器に入水する洗浄水の温度を検知する入水サーミスタと、熱交換器から出水する洗浄水の温度を検知する出湯サーミスタと、洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、異常を報知する報知手段と、流量センサと入水サーミスタと出湯サーミスタの検知データに基づき、止水電磁弁と熱交換器と洗浄ノズルと報知手段とを制御する制御部とを含み、制御部は、流量センサが検知した洗浄水の流量と、入水サーミスタが検知した洗浄水の入水温度と、熱交換器への入力とを基に、洗浄水の出湯温度の予測値を算出する出湯温度演算手段を備え、制御部は、出湯温度演算手段が算出した予測値と、出湯サーミスタが検知した出湯温度とが、所定の範囲以上異なる場合、入水サーミスタおよび出湯サーミスタの少なくとも一方が異常であると判定し、報知手段による異常報知および熱交換器への通電の遮断の少なくとも一方の制御動作を実施するものである。
【0011】
これにより、入水サーミスタと出水サーミスタのいずれかに温度を誤検知する異常が生じている場合、出水サーミスタが検知した出湯温度と、出湯温度演算手段が算出した出湯温度の予測値とに差が発生することとなり、その差が誤差範囲等を考慮した所定範囲以上の場合は異常と判定し、報知手段で異常報知したり、熱交換器への通電を遮断することにより、設定温度より異常に冷たい洗浄水や、異常に熱い洗浄水が洗浄ノズルから噴出されることがなく、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衛生洗浄装置は、洗浄水の異常温度の発生を抑制し、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の水回路および制御系を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における熱交換器の外観を示す正面図
【図4】本発明の実施の形態1における図3に示すAA断面図
【図5】本発明の実施の形態1における第一流路形成部材42の内面を示す裏面図
【図6】本発明の実施の形態1における熱交換器への入力と予測温度とを示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態1における異常判定のフローチャート
【図8】本発明の実施の形態2における衛生洗浄装置の水回路および制御系を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態2における熱交換器への入力と予測温度とを示すグラフ
【図10】本発明の実施の形態2における異常判定のフローチャート
【図11】本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の水回路および制御系を示す模式図
【図12】本発明の実施の形態3における熱交換器の入力と予測温度とを示すグラフ
【図13】本発明の実施の形態3における異常判定のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、洗浄水の供給と停止を制御する止水電磁弁と、前記洗浄水の流量を検知する流量センサと、前記洗浄水を昇温する熱交換器と、前記熱交換器に入水する前記洗浄水の温度を検知する入水サーミスタと、前記熱交換器から出水する前記洗浄水の温度を検知する出湯サーミスタと、前記洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、異常を報知する報知手段と、前記流量センサと前記入水サーミスタと前記出湯サーミスタの検知データに基づき、
前記止水電磁弁と前記熱交換器と前記洗浄ノズルと前記報知手段とを制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記流量センサが検知した洗浄水の流量と、前記入水サーミスタが検知した前記洗浄水の入水温度と、前記熱交換器への入力とを基に、前記洗浄水の出湯温度の予測値を算出する出湯温度演算手段を備え、前記制御部は、前記出湯温度演算手段が算出した前記予測値と、前記出湯サーミスタが検知した出湯温度とが、所定の範囲以上異なる場合、前記入水サーミスタおよび前記出湯サーミスタの少なくとも一方が異常であると判定し、前記報知手段による異常報知および前記熱交換器への通電の遮断の少なくとも一方の制御動作を実施するものである。
【0015】
これにより、入水サーミスタと出湯サーミスタのいずれかに温度を誤検知する異常が生じている場合、出湯サーミスタが検知した出湯温度と、出湯温度演算手段が算出した出湯温度の予測値とに差が発生することとなり、その差が誤差範囲等を考慮した所定範囲以上の場合は異常と判定し、報知手段で異常報知したり、熱交換器への通電を遮断することにより、設定温度より異常に冷たい洗浄水や、異常に熱い洗浄水が洗浄ノズルから噴出されることがなく、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記制御部は、前記熱交換器へ供給する電力を測定する電力測定手段と時計手段とを備え、前記出湯温度演算手段は、前記電力測定手段が測定した電力と前記時計手段が計測した通電時間とを用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出するものである。
【0017】
これにより、出湯温度演算手段は予測値を正確に算出することが可能となり、出湯温度演算手段の精度と信頼性を向上することが可能となり、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1の発明において、前記制御部は、前記熱交換器に印加する電圧を測定する電圧測定手段と時計手段とを備え、前記出湯温度演算手段は、前記電力測定手段が測定した電圧と前記時計手段が計測した通電時間とを用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出するものである。
【0019】
これにより、出湯温度演算手段は、熱交換器の抵抗値と熱交換器に供給される電圧と通電時間により、予測値を正確に算出することが可能となり、出湯温度演算手段の精度と信頼性を向上することが可能となり、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1の発明において、前記制御部は、前記熱交換器に流れる電流を測定する電流測定手段と時計手段とを備え、前記出湯温度演算手段は、前記電流測定手段が測定した電流と前記時計手段が計測した通電時間とを用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出するものである。
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【0021】
これにより、出湯温度演算手段は、熱交換器の抵抗値と熱交換器に流れる電流と通電時間により、予測値を正確に算出することが可能となり、出湯温度演算手段の精度と信頼性を向上することが可能となり、快適性と安全性を備えた衛生洗浄装置を提供することができる。
【0022】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、前記制御部は、異常回数を記憶する異常回数記憶手段を備え、前記制御部は、前記異常回数記憶手段に所定の異常回数が記憶された場合に、前記報知手段による異常報知および前記熱交換器への通電の遮断の少なくとも一方の制御動作を実施するものである。
【0023】
これにより、流量センサ、入水サーミスタ、出湯サーミスタ、電力測定手段、電圧測定手段、電流測定手段、時計手段の異常に係わらない一時的な誤検知が発生した場合、報知手段による異常報知や熱交換器への通電の遮断は実施されないため、衛生洗浄装置の使い勝手と信頼性を向上することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるノズル装置を使用した衛生洗浄装置の斜視図を示すものであり、図2は衛生洗浄装置の水回路および制御系の構成を示す模式図である。
【0026】
<1>衛生洗浄装置の構成
図1に示すように、本願発明の衛生洗浄装置100は便器700の上面に設置して使用するものであり、便器700の後部に設置した本体200の前面には便座400と便蓋300が便座便蓋開閉機構(図示せず)を介して回動自在に枢支してあり、図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便蓋300は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉成すると便座400の全面を隠蔽する。
【0027】
本体200の前部中央には洗浄ノズル10が設置してあり、洗浄ノズル10はノズル駆動装置(図示せず)により、便器700の中央に向けて進出し、洗浄ノズル10の先端に設けた噴出口から使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄する。洗浄ノズル10は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部10aと、女性の局部を洗浄するビデノズル部10bと、お尻洗浄ノズル部10aとビデ洗浄ノズル部10bの外面を洗浄するノズル洗浄部10cとを備えている。
【0028】
本体200前面コーナー部には便座400に着座した人体を検知する着座検知センサ201が設置されており、着座検知センサ201が便座400に着座した人体を検知していない時には、洗浄ノズル10から洗浄水を噴出することを停止することにより、洗浄水が便器700の外に噴出してトイレ室内に飛散することを防止する。
【0029】
また、本体200前面コーナー部には衛生洗浄装置に異常が生じた場合に、使用者に異常を報知する報知手段として、LEDによる異常報知灯202が設置されており、衛生洗浄装置100に異常が発生した場合に点滅して異常を表示する。また、異常判定内容によっては、お尻、ビデの洗浄機能を停止させる。
【0030】
本体200の内部には、マイコンを主構成部材とする制御部60が設置されており、衛生洗浄装置100の各機能の制御を行う。制御部60は、経過時間を計測する時計手段61と、熱交換器40に供給した電力を計測する電力測定手段62と、流量センサ26が検出した熱交換器40に送給された洗浄水量と、入水サーミスタ50が検出した洗浄水の入水温度と、熱交換器40へ供給された電力量とを基に、洗浄水の出湯温度を演算する出湯温度演算手段63とを備えている。
【0031】
また、トイレ室内には、使用者の入室を検知する人体検知センサ500や衛生洗浄装置を操作するリモートコントローラ600が設置されている。
【0032】
人体検知センサ500はトイレ室の壁面等に取り付けられる。人体検知センサ500は、反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレ室内に使用者が入室したことを検知する。
【0033】
リモートコントローラ600には、その表面には複数の操作スイッチが設けられている。リモートコントローラ600は便座400上に着座した使用者が操作可能なトイレ室の壁面等の場所に取り付けられ、衛生洗浄装置の各機能の操作を行う。
【0034】
本体200の制御部60は、人体検知センサ500、リモートコントローラ600、着座センサ201および衛生洗浄装置100内に設置された各種センサの検知信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0035】
<2>衛生洗浄装置の水回路および制御系の構成
本体200の内部には洗浄ノズル10に洗浄水を供給する流路が形成されており、図2に示すように、本体200内には、分岐水栓21、ストレーナ22、逆止弁23、定流量弁24、止水電磁弁25、入水サーミスタ50、流量センサ26、熱交換器40、出湯サーミスタ51、水ポンプ28、バッファタンク29、切替弁30、洗浄ノズル10、バキュームブレーカ31、32等の流路構成部材と、制御部60が設置されている。
【0036】
図2に示すように、水道配管11には分岐水栓21が接続される。分岐水栓21と熱交換器40との間に接続される配管12には、ストレーナ22、逆止弁23、定流量弁24、止水電磁弁25および流量センサ26が順に接続されている。
【0037】
熱交換器40の入水口の近傍には、熱交換器40に供給される洗浄水の入水温度を検知する入水サーミスタ50が、熱交換器40の出湯口の近傍には、熱交換器40で加熱された出湯温度を検知する出湯サーミスタ51が設置されている。
【0038】
熱交換器40と切替弁30との間に接続される配管13には、水ポンプ28およびバッファタンク29が接続されている。
【0039】
切替弁30の複数のポートに洗浄ノズル10のお尻洗浄ノズル部10a、ビデノズル部10b、ノズル洗浄部10cがそれぞれ接続されている。
【0040】
バキュームブレーカ31は、止水電磁弁25と流量センサ26との間の配管12から延びる分岐配管14に接続され、熱交換器40よりも上方の位置に配置される。バキュームブレーカ32はバッファタンク29に設けられ、熱交換器40よりも上方の位置に配置される。なお、バキュームブレーカ32およびバッファタンク29は一体的に形成されている。したがって、バッファタンク29も熱交換器40よりも上方の位置に配置される。
【0041】
次に、本体200における洗浄水の流れおよび制御部60による本体200の各構成部の制御について説明する。
【0042】
水道配管11を流れる水道水が、洗浄水として分岐水栓21によりストレーナ22に供給される。これにより、洗浄水に含まれるゴミおよび不純物等はストレーナ22により除去される。
【0043】
次に、逆止弁23により配管12内における洗浄水の逆流が防止され、定流量弁24により配管12内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。そして、止水電磁弁25により熱交換器40への洗浄水の供給状態が切替えられる。止水電磁弁25の動作は、リモートコントローラ600の操作に基づき制御部60により制御される。
【0044】
配管12において、流量センサ26は、配管12内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部60に測定流量値を送信する。熱交換器40は、配管12を通して供給される洗浄水
を所定の温度に加熱する。熱交換器40の動作は、流量センサ26と、入水サーミスタ50と、出湯サーミスタ51とにより測定されたデータに基づいて制御部60により制御される。
【0045】
続いて、熱交換器40により加熱された洗浄水が、水ポンプ28によりバッファタンク29を通して切替弁30に圧送される。水ポンプ28の動作は、制御部60により制御される。
【0046】
バッファタンク29は、加熱された洗浄水の温度緩衝部として作用する。これにより、切替弁30に圧送される洗浄水の温度斑の発生が抑制される。
【0047】
切替弁30においては、切替弁モータ30aが動作することにより、水ポンプ28から圧送された洗浄水が、お尻洗浄ノズル部10a、ビデノズル部10b、ノズル洗浄部10cのいずれかに供給される。これにより、お尻洗浄ノズル部10a、ビデノズル部10b、ノズル洗浄部10cのいずれかから洗浄水が噴出する。切替弁モータ30aの動作は、制御部60により制御される。
【0048】
なお、本実施の形態においては、熱交換器40の前後にバキュームブレーカ31、32が設けられている。それにより、配管12および配管13内が負圧になった場合でも熱交換器40内の洗浄水が外部に流出することが防止される。その結果、熱交換器40の空焚きが防止される。
【0049】
<3>衛生洗浄装置の動作、作用
上記構成の衛生洗浄装置は、使用者がトイレ室に入室すると、人体検知センサ500が人体を検知し、制御部60は便座便蓋開閉機構を駆動して、便蓋300を自動的に開放する。使用者が便座400に着座すると着座検知センサ201が着座した人体を検知し、検知信号を制御部60に送信することにより、制御部60はリモートコントローラ600による便座装置100の洗浄操作が可能な状態とする。
【0050】
使用者がリモートコントローラ600を操作し、お尻洗浄またはビデ洗浄の操作を行うと、制御部60はノズル駆動装置を駆動し洗浄ノズル10を便器700の中央に進出させるとともに、止水電磁弁25、熱交換器40、水ポンプ28を駆動して洗浄水を加熱して洗浄ノズル10に送給することにより、洗浄ノズル10の噴出口から温水が使用者の局部に向けて噴出し、局部の洗浄を行う。
【0051】
洗浄水を送給している間は、制御部は出湯サーミスタ51の検知データに基づき、洗浄水の温度を設定温度に維持するように熱交換器40への電力の供給を制御する。この間、制御部60は、洗浄水の温度検知手段である入水サーミスタ50と出湯サーミスタ51の異常の検知を後述のように実施する。
【0052】
使用者がリモートコントローラ600により洗浄終了の操作を行うと、制御部60は止水電磁弁25、熱交換器40、水ポンプ28の駆動を停止し、ノズル駆動装置を逆方向に駆動し、洗浄ノズル10を本体200内に収納し洗浄動作は終了する。
【0053】
<4>熱交換器の構成および動作、作用
図3は熱交換器の外観を示す正面図であり、図4は図3に示すAA断面図である。
【0054】
図3に示すように、熱交換器40は正面視で略長方形状を成す平板状であり、図4に示すように、矩形平板状を成すヒータ41と、その一方の面(第一伝熱面)41aに対向配置された第一流路形成部材42と、他方の面(第二伝熱面)41bに対向配置された第二
流路形成部材43と、これらを収容して流入口44及び流出口45を有するケーシング46とを備えている。
【0055】
ヒータ41はセラミック製であり、100V通電において最大約1200Wの容量を備えている。第一流路形成部材42および第二流路形成部材43は、ABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で形成されている。
【0056】
熱交換器40はヒータ41の伝熱面が鉛直方向になるように縦置きした状態で衛生洗浄装置100の本体200内部に収容されている。
【0057】
図4に示すように、第一流路形成部材42は、第一伝熱面41aに対向する矩形平板状のベース部42aと、ベース部42aに突設された複数のリブ42bとを有している。同様に、第二流路形成部材43は、第二伝熱面41bに対向する矩形平板状のベース部43aと、ベース部43aに突設された複数のリブ43bとを有している。
【0058】
また、第一流路形成部材42の周縁部には壁状のフランジ部42cが周設されており、フランジ部42cは、第二流路形成部材43に近接する方向へ向かって所定寸法だけ延設されている。このフランジ部42cの先端部には、フランジ部42cに沿って周回する係合溝42dが形成されている。
【0059】
一方、第二流路形成部材43のベース部43aの周縁部にも壁状のフランジ部43cが周設されており、フランジ部43cは、第一流路形成部材42から離隔する方向へ向かって所定寸法だけ延設されている。このフランジ部43cの先端部は第一流路形成部材42側へ折り返されており、その端部には、フランジ部43cに沿って周回する係合突起43dが形成されている。
【0060】
このような第一流路形成部材42は、そのベース面42aが第二流路形成部材43のベース面43aに対向するようにして第二流路形成部材43に外嵌装着される。第一流路形成部材42のフランジ部42cが、第二流路形成部材43のフランジ部43cに外嵌され、更に、第一流路形成部材42の係合溝42dに第二流路形成部材43の係合突起43dが嵌入される。これにより、第一流路形成部材42と第二流路形成部材43とは接合され、内部に流路スペース47が形成される。
【0061】
また、図3に示すように、ケーシング46の下部には流入口44が設けられ、上部には流出口45が設けられている。これらの流入口44および流出口45は、流路スペース47に連通している。
【0062】
図5は、第一流路形成部材42の内面を示す裏面図である。
【0063】
図3に示すように、第一流路形成部材42のベース部42aには、略水平方向に沿って延びる複数のリブ42bが並設されている。
【0064】
このうち下から奇数番目のリブ42bは、その長手方向の一方の端部がフランジ部42cの内壁面に当接し、他端部はフランジ部42cの内壁面から所定寸法だけ離隔している。また、下から偶数番目のリブ42bは、その長手方向の一端部がフランジ部42cの内壁面から離隔し、他方の端部がフランジ部42cの内壁面に当接している。そして、流路スペース47には、これらのリブ42bによって画定され、流入口44から流出口45まで連通する蛇行流路48が形成されている。
【0065】
同様に、第二流路形成部材43のリブ43bは、第一流路形成部材42のリブ42bと
対称的な構成となっており、説明は省略するが、同様に流入口44から流出口45に至る蛇行流路49が形成されている。
【0066】
上記のように、第一流路形成部材42と第二流路形成部材43とに挟まれるようにして、平板状のヒータ41が設けられており、ヒータ41の両面の略全面に亘り蛇行流路48、49が形成されている。蛇行流路48、49の上流側は分流部を介して流入口44と連通し、下流側は合流部を介して流出口45と連通する構成となっている。
【0067】
上記構成の熱交換器40の流入口44から洗浄水が送給されると、洗浄水は流入口44の近傍の分岐部でヒータ41の両面に設けられた蛇行流路48、49流入し、蛇行流路48、49を通過した洗浄水は合流部で合流し流出口45から流出する。洗浄水は蛇行流路48、49を通過する間にヒータ41から加えられる熱により順次昇温し、流出口45から流出する時点で設定温度まで昇温する。
【0068】
本実施の形態の場合、熱交換器40を流れる洗浄水の流量は約500CC/分であり、流入口44から流入した洗浄水が流出口45から流出するまでに要する時間は約2秒間である。
【0069】
その間、制御部60は、入水サーミスタ50が検知する入水温度と、流量センサ26が検知する流量と、出湯サーミスタ51が検知する出湯温度に基づき、出湯温度が設定温度になるようにヒータ41への通電を制御する。
【0070】
<5>制御部の構成と異常検知の方法
図6は、熱交換器40に供給する最大電力が1200W、入水温度が20℃、洗浄水の流量が500CC/分の場合における熱交換器40の入力と出湯温度演算手段による予測温度との関係をグラフであり、図7は、電力測定手段を設けた場合における異常検出処理のフローチャートである。
【0071】
制御部60は、マイコンを主構成部材として形成されており、主な機能としては、経過時間を計測する時計手段61と、熱交換器40に供給した電力を計測する電力測定手段62と、流量センサ26が検出した熱交換器40に送給された洗浄水量と、入水サーミスタ50が検出した洗浄水の入水温度と、熱交換器40へ供給された電力量とを基に、洗浄水の出湯温度を演算する出湯温度演算手段63とを備えている。
【0072】
リモートコントローラ600により洗浄操作が開始されると、入水サーミスタ50で検知された入水温度T2℃の洗浄水が、流量センサ26が検知した流量Fcc/分の流量で、熱交換器40に継続して送給される。送給された洗浄水は、熱交換器40内の流路を通過する間に加熱され、出湯口から出湯するまでに設定温度T1℃まで昇温される。
【0073】
熱交換器40から出湯する出湯温度T3℃は出湯サーミスタ51で検知され、出湯温度T3℃が設定温度T1℃になるように制御部60は熱交換器40への電力の供給を制御し、 熱交換器40には、電力DWが継続して供給される。
【0074】
一方、制御部60の出湯温度演算手段63は、入水サーミスタ50で検知した入水温度T2と、流量センサが検知した流量Fと、電力測定手段で測定した電力Dとに基づき洗浄水の出湯温度の予測値を演算する。
【0075】
上記のようにFcc/分の水をDWの電力で加熱した場合の水の温度上昇値tは、
t=K×D/F
と推定することができる。ここで、Kは電力量とジュール熱量との換算係数および熱交換
器40の熱効率を含む定数であり、実際に使用する熱交換器40の実験値から設定したものである。
【0076】
すなわち、熱交換器40が上記条件で制御された場合、(T2+t)℃の温水が出湯されることを予測することができ、この温度を予測温度T4と称する。
【0077】
通常、流量センサ26、入水サーミスタ50、出湯サーミスタ51、の機能が全て正常に作動している場合は、設定温度T1と出湯温度T3と予測温度T4は等しい温度になる。
【0078】
本実施の形態においては、図6に示すように、熱交換器40の最大容量が1200Wであり、洗浄水の流量が500cc/分である。制御部60は設定温度T1に対応して供給する電力を制御する。例えば、設定温度T1が40℃に設定された場合、制御部60は約700Wの電力を供給する。
【0079】
異常検知のフローは図7に示すように、制御部60は、洗浄操作が開始されてから特定時間経過後に、入水サーミスタ50が検知した入水温度T2と流量センサ26が検知した流量Fと電力測定手段62が検知した電力Dのデータにより出湯温度演算手段63が予測温度T4を演算し、出湯サーミスタ51が検知した出湯温度T3と予測温度T4とを比較し、T3とT4が5度以上異なる場合、異常と判定し、熱交換器40への通電を遮断するとともに、異常報知灯202を点滅表示させる。
【0080】
検知動作を開始する前記特定時間は、洗浄水が流入口44から流入してから流出口45から流出するまでの時間と、ヒータ41の発熱が安定するまでの時間を考慮して、本実施の形態においては、洗浄操作を開始してから5秒後に設定しており、その後3〜5秒間隔で検知動作を繰りかえして実施する。
【0081】
以上のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、入水サーミスタ50と出湯サーミスタ51と流量センサ26のいずれかに異常が発生した場合、異常を検知し報知するとともに熱交換器への通電を遮断することにより安全を確保することができる。しかも、入水サーミスタ50と出湯サーミスタ51の異常はオープン故障に限らず、検知温度の誤差が大きくなる軽微な故障にも対応することが可能であり安全性と信頼性の高いものである。
【0082】
なお、本実施の形態においては、制御部60は出湯温度T3と予測温度T4とを比較し、T3とT4が5度以上異なる場合、異常と判定し、熱交換器40への通電を遮断するとともに、異常報知灯202を点滅表示させるとしたが、制御部60に異常回数記憶手段(図示せず)をさらに備え、異常と判定した場合、異常回数を異常回数記憶手段に記憶し、記憶した回数が所定回数に到達した時点で、熱交換器40への通電を遮断するとともに、異常報知灯202を点滅表示させる制御動作を実施するようにしてもよい。
【0083】
上記構成および作用を実施することにより、異常検知の誤検知による誤動作を抑制することが可能となり、より信頼性を向上することができる。また、本実施の形態の場合T3とT4との差が5度以上異なる場合を異常判定の基準としたが、異常回数記憶手段を備えることにより異常判定の基準を小さく(例えば3度以上)しても誤動作を抑制することが可能となり、異常判定の精度を向上することができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、制御部が異常と判定した場合、熱交換器40への通電を遮断するとともに、異常報知灯202を点滅表示させようにしたが、これに限るものではなく、これらの動作のいずれか一方のみを実施してもよい。
【0085】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2における、熱交換器40に供給する電源電圧の最大値が100V、入水温度が20℃、洗浄水の流量が500cc/分の場合における熱交換器に印加される電圧値と出湯温度演算手段による予測温度との関係をグラフであり、図10は、熱交換器の印加電圧を測定する電圧測定手段を設けた場合における異常検出処理のフローチャートである。
【0086】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、制御部60が電力測定手段62に替えて電圧測定手段64を備えたことである。
【0087】
本実施の形態においては、熱交換器40のヒータ41に印加する電圧を変更することにより、熱交換器への入力を制御する構成である。出湯温度演算手段63においては予め設定されたヒータ41の抵抗値と電圧測定手段64が計測した電圧と時間により電力量を演算し、実施の形態1と同様に、出湯温度の予測値を演算して、異常の判定を実施するものである。
【0088】
本実施の形態においては、電圧測定手段を採用したことにより、特に、電圧制御により熱交換器への電力の供給を制御する場合に有効である。
【0089】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3における、熱交換器40に供給する最大電流が12A、入水温度が20℃、洗浄水の流量が500cc/分の場合における熱交換器に流れる電流値と出湯温度演算手段による予測温度との関係をグラフであり、図13は、熱交換器に流れる電流を測定する電流測定手段を設けた場合における異常検出処理のフローチャートである。
【0090】
本実施の形態が実施の形態1および実施の形態2と異なる点は、制御部60が電力測定手段62および電圧測定手段64に替えて電流測定手段65を備えたことである。
【0091】
本実施の形態においては、熱交換器40のヒータ41に流れる電流と時間を計測することにより、出湯温度演算手段63においては予め設定されたヒータ41の抵抗値と電流測定手段65が計測した電圧と時間により電力量を演算し、実施の形態1と同様に、出湯温度の予測値を演算して、異常の判定を実施するものである。
【0092】
本実施の形態においては、電流測定手段を採用したことにより、ヒータに流れる電流を直接測定することができるため、各種の制御方法に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明にかかる衛生洗浄装置は、温度検知手段の軽微な異常を検出することが可能となるので、他の流体応用機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
10 洗浄ノズル
25 止水電磁弁
26 流量センサ
40 熱交換器
50 入水サーミスタ
51 出湯サーミスタ
60 制御部
61 時計手段
62 電力測定手段
63 出湯温度演算手段
64 電圧測定手段
65 電流測定手段
100 衛生洗浄装置
202 異常報知灯(報知手段)
T4 予測温度(予測値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水の供給と停止を制御する止水電磁弁と、
前記洗浄水の流量を検知する流量センサと、
前記洗浄水を昇温する熱交換器と、
前記熱交換器に入水する前記洗浄水の温度を検知する入水サーミスタと、
前記熱交換器から出水する前記洗浄水の温度を検知する出湯サーミスタと、
前記洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、
異常を報知する報知手段と、
前記流量センサと前記入水サーミスタと前記出湯サーミスタの検知データに基づき、前記止水電磁弁と前記熱交換器と前記洗浄ノズルと前記報知手段とを制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記流量センサが検知した前記洗浄水の流量と、前記入水サーミスタが検知した前記洗浄水の入水温度と、前記熱交換器への入力と、を基に、前記洗浄水の出湯温度の予測値を算出する出湯温度演算手段を備え、
前記制御部は、前記出湯温度演算手段が算出した前記予測値と、前記出湯サーミスタが検知した出湯温度とが、所定の範囲以上異なる場合、前記入水サーミスタおよび前記出湯サーミスタの少なくとも一方が異常であると判定し、前記報知手段による異常報知および前記熱交換器への通電の遮断の少なくとも一方の制御動作を実施することを特徴とした、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記熱交換器へ供給する電力を測定する電力測定手段と、時計手段と、を備え、
前記出湯温度演算手段は、前記電力測定手段が測定した電力と、前記時計手段が計測した通電時間と、を用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出する、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記熱交換器に印加する電圧を測定する電圧測定手段と、時計手段と、を備え、
前記出湯温度演算手段は、前記電力測定手段が測定した電圧と、前記時計手段が計測した通電時間と、を用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出する、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記熱交換器に流れる電流を測定する電流測定手段と、時計手段と、を備え、
前記出湯温度演算手段は、前記電流測定手段が測定した電流と、前記時計手段が計測した通電時間と、を用いて算出した前記熱交換器への入力を基に、出湯温度の予測値を算出する、請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、異常回数を記憶する異常回数記憶手段を備え、
前記制御部は、前記異常回数記憶手段に所定の異常回数が記憶された場合に、前記報知手段による異常報知および前記熱交換器への通電の遮断の少なくとも一方の制御動作を実施することを特徴とした、
請求項1〜4記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−46969(P2012−46969A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190305(P2010−190305)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】