説明

衛生用紙

【課題】衛生用紙における裏抜け防止または低減と紙の優れた柔らかさや手触り感の改善とを同時に達成できるものとする。
【解決手段】特定の第4級アンモニウム塩(A)、炭素数14〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコール(B)、及び、サイズ剤(C)を構成成分として含む衛生用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオル等の衛生用紙に係り、詳しくは水分の裏抜けを低減した衛生用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生用紙として、ティッシュペーパー等が市場に多く提供されている。この種の衛生薄葉紙は、例えば風邪などの際に鼻をかんだり、排便の際に汚物を拭き取ったり、化粧落しなどに使用されていることはもちろんであるが、この他にもかなりの割合で、ふきんの代わりとしてテーブルや床などにこぼした液体の拭き取りにも使用されている。
しかし、これまで使用されてきた衛生用紙は、手触り感や吸水性を向上させることに重点が置かれて製造されており、吸収した水分が裏抜けしてしまうことがあり、これが手に付着したり、強度が弱いために水分を若干多めに吸収しただけでシートが破れてしまうことが多く使用者に不快感を与えていた。この場合に米坪を上げたり、ラミネート加工する等してシートの強度を向上させることは行われていたが、この方法の場合にはコストが余計にかかってしまううえ、シートの柔軟性が損なわれるので使用感が悪くなるため好ましくない。
上記問題点に鑑み、撥水剤を含有させることによりコストを掛けずに裏抜けを少なくした技術が提案されている。例えば特許文献1では、第1セルロースプライと、第2セルロースプライとを含み、これら各セルロースプライの合わせ面部分に撥水剤(サイズ剤、疎水性化学物質)を印刷又はスプレー塗布したトイレットティッシュ又は前記各セルロースプライの間に撥水剤層を介在させたトイレットティッシュが提案されている。
しかしながら、上記特許文献1記載のトイレットティッシュ製品では撥水剤による層が中間層として形成されているものであるため、この撥水剤層に水分が達するまでは従来の
ティッシュ同様の吸水性を有することになるため製品がベタ付き易いという問題があった。また、撥水剤層を超えて水分が染み込んだ場合には裏抜けを全く防止できなくなってしまうとともに、サイズ剤を多く添加すると吸水性が損なわれて製品本来の機能を果たせなくなる虞がある。
そこで、特許文献2には、第4級アンモニウム塩又はサイズ剤を添加することで、衛生薄葉紙として機能し得る程度の吸水性を維持しつつ、ムラ無く水分の裏抜けを低減しようとするものが提案されている。
他方、この種の衛生用紙用途上適度な柔らかさと手触り感が要求される。紙の柔らかさや手触り感は繊維の種類、紙の密度、紙の水分、さらには紙の製造方法等の多くの因子が複雑に関与して発現するものと考えられている。
紙の柔らかさや手触り感を改善する方法として、グリセリン、脂肪酸エステル類、パラフィン乳化物、第4級アンモニウム塩等を添加する方法が用いられている。
例えば、特許文献3には、紙料への定着能を有し優れた柔軟効果を有することを課題とする、非イオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とを含有する柔軟剤が開示されている。この文献では、非イオン性界面活性剤としてアルコールのアルキレンオキサイド付加物が、カチオン性界面活性剤として、アルキルトリメチルアンモニウム塩が用いられている。また、特許文献4には、滑らかさとしっとり感を向上させることを課題とする、特定の繊維素材に、界面活性剤と多価アルコール類を含有させてなる繊維ウェブが開示されている。
しかしながら、上記先行技術は、衛生用紙における裏抜け防止と紙の優れた柔らかさや手触り感の改善との両者を達成したものではない。
【特許文献1】特表2002−519533号公報
【特許文献2】特開2006−42881号公報
【特許文献3】特開2004−44058号公報
【特許文献4】特開2001−262489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の主たる課題は、衛生用紙における裏抜け防止または低減と紙の優れた柔らかさや手触り感の改善とを同時に達成できる衛生用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
1.下記一般式(A)で表される第4級アンモニウム塩(A)と、
炭素数14〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコール(B)と、
サイズ剤(C)と
を構成成分として含むことを特徴とする衛生用紙。

(式中、R1は、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−を示し、R2は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良い。R3は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基を示す。X-は陰イオンを示す。)
【0005】
(作用効果)
特許文献2は第4級アンモニウム塩又はサイズ剤をパルプに添加して用紙の裏抜けを防止または低減したものであるが、本発明者らは、これら両者を添加することで、衛生用紙における裏抜け防止または低減と紙の優れた柔らかさや手触り感の改善との両者を同時に達成できることを知見したものである。
しかも、本発明に従って、脂肪族アルコールを併用することで、前記の効果がより一層顕著に発現することを知見したものである。なお、理由が必ずしも明確ではないが、消臭機能も発現することも知見している。
【0006】
2.さらに、成分(D)として昇華物質を含む1記載の衛生用紙。
【0007】
(作用効果)
昇華物質は、衛生用紙の使用時に臭覚に作用して清涼感を与える。この清涼感は、消臭機能とも関係するものと思われる。
【0008】
3.前記昇華物質が、メントール、カンファー及びシクロヘキサノールの群から選ばれたものである2記載の衛生用紙。
【0009】
4.1〜3のいずれかに記載の成分を、プライパートの工程において、プライ間に介在させる形態で外添する衛生用紙の製造方法。
【0010】
5.1〜3のいずれかに記載の成分を、衛生用紙搬送手段としてのロール状部材を備えた抄紙工程において、少なくとも1つの前記ロール状部材表面から前記添加成分を滲出させて衛生用紙に含有せしめて外添する衛生用紙の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衛生用紙における裏抜け防止または低減と紙の優れた柔らかさや手触り感の改善とを同時に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る柔軟剤は成分(A)として特定のアンモニウム塩と成分(B)として特定のアルコールを構成成分として含むものである。成分(A)に成分(B)を併用することにより、成分(A)単独よりも柔軟化効果が向上すると共に、得られる紙に滑らかでしっとりした優れた手触り感を与えることができる。特に、サイズ剤を含ませたときにおいて、用紙の裏抜けを抑制しながらも、優れた柔らかさや手触り感の改善を図ることができるものである。
【0013】
成分(A)は、下記一般式(A)で表される化合物である。

(式中、R1は、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−を示し、R2は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良い。R3は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基を示す。X-は陰イオンを示す。)
【0014】
成分(A)の上記一般式(A)において、R1及びR2は以下に示すものが紙の柔らかさの観点から好ましい。
上記一般式(A)において、R1としては、炭素数6〜24であり、12〜24が好ましく、16〜22がより好ましく、20〜22がさらに好ましい。また、R1は、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−であり、R1、R3は直鎖が好ましく、またアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。R2は、炭素数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、それぞれ異なっていても良い。R2は直鎖のアルキル基が好ましい。R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基であり、炭素数2〜4が好ましい。
【0015】
-としては、陰イオンであり、ハロゲンイオン、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオン、又は有機アニオン、例えば酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、並びにメチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン等が挙げられ、ハロゲンイオン又はアルキル硫酸イオンが好ましく、特に塩素イオン、メチル硫酸イオン又はエチル硫酸イオンが好ましい。
【0016】
一般式(A)の化合物として、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、N−アルキル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム塩、モノアルキルトリエチルアンモニウム塩、モノアルケニルトリメチルアンモニウム塩、塩化炭化水素オキシアルキレントリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。具体的には、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの臭化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化水素添加牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化硬化パーム油アルキルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、等の塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸べヘニルトリメチルアンモニウム等のエチル硫酸モノアルキルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。また、塩化オレイルトリメチルアンモニウム等の塩化モノアルケニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の塩化炭化水素オキシアルキレントリメチルアンモニウムなどが挙げられる(ここでの「炭化水素オキシアルキレン」は、基「R3−O−R4−」を意味する。)。
【0017】
成分(B)は、炭素数14〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールである。
成分(B)の脂肪族アルコールとしては、炭素数14〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールであり、炭素数16〜24が好ましく、18〜22がより好ましい。また、成分(B)が有する基は直鎖が好ましく、アルキル基が好ましい。好ましくは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、べヘニルアルコールが挙げられ、また、セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物であるセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールの混合物が挙げられる。特に、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0018】
成分(A)と成分(B)との重量比は、(A)/(B)=95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは(A)/(B)=90/10〜10/90、特に好ましくは、80/20〜20/80であるのが、紙の柔らかさや手触り感を両立する観点から好ましい。成分(A)の比率を増やすと、柔らかさに優れ、かっ、軽い感触の手触り感が得られる傾向がある。成分(B)の比率を増やすと、柔らかさに優れ、かつ、しっとりとした手触り感が得られる傾向がある。成分(A)と成分(B)の比率を任意に調製することで、柔らかさを維持しつつ、手触り感を調整することができる。
【0019】
成分(A)の柔軟剤全体中の含有量は、好ましくは0.01〜45重量%、より好ましくは0.1〜35重量%、さらに好ましくは0.5〜25重量%であるのが、紙の柔らかさと手触り感の観点から好ましい。成分(B)の柔軟剤全体中の含有量は、好ましくは0.01〜45重量%、より好ましくは0.1〜35重量%、さらに好ましくは0.5〜25重量%であるのが、紙の柔らかさと手触り感の観点から好ましい。
成分(A)と成分(B)の合計の柔軟剤全体中の含有量は、好ましくは0.01〜50重量%、さらに好ましくは0.2〜40重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%であるのが、柔軟剤の添加操作等のハンドリング性の観点から好ましい。
【0020】
本発明者らは、多くのモニターによる官能試験を経て、衛生用紙の吸水速度は3.5〜35秒、好ましくは5.5〜35秒の範囲であることが望ましいことを知見している。この「吸水速度」試験は、測定器具としてデジタルマイクロピペット、ストップウォッチ、三脚台を使用し、試料2枚重ねを一組として中央部直径40mm以上の穴のある支持台に置き、デジタルマイクロピペットに蒸留水を5μm取り、約10mmの高さから試験片に滴下し、水滴が試験片に接触した瞬間から、水が完全に吸収されて紙表面の反射が消えるまでの時間をストップウォッチで0.01秒単位で測定する試験であり、試験は5回行い、その平均値を小数点第1位まで記録する試験要領によって得た数値とするものである。
【0021】
この吸水速度が3.5秒未満である場合には、本発明が所望する裏抜け低減効果を得ることができない。逆に吸水速度が35秒を超えると撥水性が強すぎて水分を吸い取るという衛生薄葉紙本来の機能を損なう虞れがある。
【0022】
また、衛生用紙は、水浸透度が6枚以下、好ましくは3〜6枚であることが望ましい。この「水浸透度」試験は、シートを10枚重ねて1.3mlの水を滴下し、水分のすべてが浸透したのを目視により確認したならば、その浸透枚数を数えて得た数値とする。前記水浸透度が6枚を超えると本発明が所望する裏抜け低減効果が得られない。特に、水浸透度が3〜6枚の範囲内であると、吸水性能と裏抜け防止効果とがバランスし使用感が良好となる。
【0023】
そこで、本発明では、上記成分(A)及び成分(B)のほか、サイズ剤(C)を構成成分とする。このサイズ剤としては、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸などの中性サイズ剤、けん化天然ロジン、強化ロジンなどの酸性サイズ剤などを使用することができる。
【0024】
前記サイズ剤は、パルプスラリーの対パルプ乾燥重量に対して固形分重量で0.02〜0.06重量%と少量だけ含有することにより、吸水速度を3.5〜35.0秒とし、及び/又は水浸透度を6枚以下とすることができる。添加率が0.02重量%未満であると水分の裏抜けが十分に低減できない。0.06重量%を超えると撥水性が強すぎ、衛生用紙に必要な吸水性を阻害する傾向となる。特に、サイズ剤は0.05重量%以上含有させると急激に撥水性が強くなる性質があるので、サイズ剤の添加率は0.02〜0.04重量%とするのが望ましい。
【0025】
本発明において、メントール、カンファー、シクロヘキサノール、サリチル酸、α−シネロール及びこれらの誘導体等の昇華物質(D)を含有させることができる。ここで、昇華物質の添加量は、20〜200mg/cm3が望ましい。少ないと昇華物質の添加効果が十分でなく、他方過度の添加は肌触りを阻害する傾向となる。
【0026】
また、本発明の用紙には、パルプの種類によらず柔らかさと手触り感を付与する観点から、さらに成分(E)として多価アルコールを含有させることができる。
成分(E)の多価アルコールとしては、グリセリン類やグリコール類が挙げられ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエルスリトールなどが挙げられる。これらの中でもグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。
【0027】
成分(E)の含有量は、柔軟剤全体中に好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜55重量%、特に好ましくは、1〜40重量%であるのが、紙の柔らかさや手触り感の観点から好ましい。
成分(E)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量に対して、重量比((E)/〔(A)十(B)〕)で好ましくは1/10〜5/1、より好ましくは1/4〜4/1、さらに好ましくは1/3〜2/1であるのが、紙の柔らかさと手触り感の観点から好ましい。
【0028】
本発明の柔軟剤には、パルプの種類によらず柔らかさと手触り感を付与する観点から、さらに成分(F)として糖類を含有させることができる。
成分(F)の糖類として、単糖類、二糖類及び多糖類が挙げられ、具体的には、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元麦芽糖水飴、還元澱粉加水分解などが挙げられる。これらの中でも単糖類が好ましく、特にソルビトールが好ましい。
【0029】
成分(F)の含有量は、柔軟剤全体中に好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜55重量%、特に好ましくは、1〜40重量%であるのが、紙の柔らかさや手触り感の観点から好ましい。
成分(F)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計量に対して、重量比((F)/〔(A)+(B)〕)で好ましくは1/10〜5/1、より好ましくは1/4〜4/1、さらに好ましくは1/3〜2/1であるのが、紙の柔らかさと手触り感の観点から好ましい。
【0030】
本発明の柔軟剤には、さらに上記成分以外の植物油;動物油;ラノリン誘導体;高級脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルドタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などのアニオン系界面活性剤;EDTA、有機酸塩などのキレート剤;pH調整剤;ソルビン酸、デヒドロ酢酸、安息香酸、パラオキシ安息香酸及びその塩などの防腐剤を必要に応じて適量配合することができる。また、成分(A)以外の第4級アンモニウム塩系の柔軟剤を併用しても本発明の効果には悪影響を及ぼすことはない。
【0031】
本発明の柔軟剤の使用方法は、抄紙時のパルプスラリーに直接添加する方法や、或いは、2〜1000倍に水で希釈して処理液を調製し、長網抄紙機或いは円網抄紙機により湿紙を得るワイヤーパート、この湿紙をプレスし脱水を行なうプレスパート、引き続いて加熱乾燥を行なうドライパート、或いはドライパートの後の紙を塗工するコーター等を含有する塗エパート、トイレットペーパー等を製造するリワインドパート等の何れかの工程において、含浸機により含浸することも、噴霧機によりスプレーすることも、塗工機により塗布することも可能である。何れの場合にも、柔軟剤の添加量は、成分(A)と成分(B)の合計量でパルプ又は紙(紙の場合は製造に用いたパルプ)に対して0.01〜50重量%、より好ましくは0.01〜30重量%、特に好ましくは0.01〜10重量%となるように添加するのが紙の柔らかさや手触り感の観点から好ましい。本発明の柔軟剤の歩留まりの観点から、抄紙後のパルプシートに、含浸、スプレー及び塗布等の方法により、添加することが好ましい。
【実施例】
【0032】
(実施例1〜20、比較例1〜4)
表1〜4に示す組成の配合成分をビーカーに入れ、撹拌乳化することにより、添加剤を製造した。各添加剤のpH(25℃)は6〜8であった。さらに、広葉樹晒クラフトパルプを抄造し、得られた坪量13g/m2の衛生用紙の原紙に対し、乾燥パルプ100重量部に対して各表に示す重量部(有効分換算)となる量の各添加剤を塗布した。成分Cについては、抄造時に内添した。前記塗布方法は、各添加剤をイオン交換水にて2倍希釈した水分散液を原紙表面にスプレー塗布した。その後、紙常温条件下で1日乾燥させ被試験紙とした。
【0033】
<評価方法>
(柔らかさ及び手触り感)
被試験紙を5枚片手で握り、紙の柔らかさと手触り感について、10名の専門パネラーにより下記の5段階評価基準にしたがって評価した。
*柔らかさ、手触り感の評価基準
4:良い
3:やや良い
2:どちらとも言えない
1:劣る
10名の評価の平均点を小数点一桁で求め、3.6以上を◎、2.6〜3.5を○、1.6〜2.5を△、1.5以下を×として評価した。結果を表1、2に示す。
【0034】
(裏抜け防止及び吸水性)
水浸透度を測定した。水浸透度試験は、シートを10枚重ねて1.3mlの水を滴下し、水分のすべてが浸透したのを目視により確認した後、その浸透枚数を数えて得た数値とした。水浸透度が、シート3〜6枚の範囲内であると、吸水性能と裏抜け防止効果とがバランスし使用感が良好であり、評価は「○」とする。水浸透度が6枚を超えると本発明が所望する裏抜け低減効果が得られず、一方、3枚を下回ると、吸水性が悪くなるため、評価は「×」とする。
【0035】
(消臭性)
消臭性の評価は、実施例および比較例のものをそれぞれ、臭気サンプル(一般に臭いが強いと言われている食品「くさや」を使用)と一緒に密閉容器内に60分間放置し、その後、実施例および比較例のものをそれぞれ、臭気サンプルをそれぞれ取り出して、容器内の臭いを30人の被験者が評価(官能評価)。臭いがないと感じた場合を「○」とし、臭いがあると感じた場合を「×」とする評価とした。
【0036】
なお、表中の成分として、次記のものを使用した。
*塩化セチルトリメチルアンモニウム 「コータミン 60W」(花王(株)製、有効分30重量%)を有効分が表中の数値となるように用いた。
*ステアリルアルコール 「カルコール 8098」(花王(株)製)
*セトステアリルアルコール 「カルコール 6850」(花王(株)製)
*セチルアルコール 「カルコール 6098」(花王(株)製)
*グリセリン 「日本薬局方濃グリセリン」(花王(株)製)
*ソルビトール 「ソルビトール花王」(花王(株)製、有効分70重量%)を有効分が表中の数値となるように用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表1、2から、成分(A)及び成分(B)を含有する実施例は紙の柔らかさと手触り感に優れたものとなる。更に、成分(E)及び/又は成分(F)を併用する実施例11〜20では、柔らかさと手触り感が共に、より優れる傾向があることがわかる。
【0042】
(実施例21〜27)
実施例1に用いた添加剤の塗布量を変えて、実施例1と同様の方法で被試験紙を製造し、紙の柔らかさと手触り感について実施例1等と同様に評価した。結果を表3に示す。なお、表3には、参照のため実施例1の結果も併記した。
【0043】
(実施例28)
下記組成の添加剤〔pH(25℃)5〕を実施例1と同様の方法で製造した。
(重量%)
塩化べヘニルトリメチルアンモニウム 6.3
塩化セチルトリメチルアンモニウム 13.3
セトステアリルアルコール 7.7
アルキルケテンダイマー(AKD) 0.03
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.0
安息香酸ナトリウム 0.5
クエン酸(50%) 適量
水 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100.0
【0044】
(実施例29)
下記組成の柔軟剤〔pH(25℃)5〕を実施例1と同様の方法で製造した。
(重量%)
塩化べヘニルトリメチルアンモニウム 6.3
塩化セチルトリメチルアンモニウム 13.3
セトステアリルアルコール 7.7
アルキルケテンダイマー(AKD) 0.03
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.0
グリセリン 25.0
安息香酸ナトリウム 0.5
クエン酸(50%) 適量
水 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100.0
【0045】
実施例1で用いた広葉樹晒クラフトパルプ100%の紙に対して、実施例28及び29で製造した柔軟剤を用いて実施例1と同様の方法で処理した紙は、裏抜け防止と吸収性とがバランスよく両立され、消臭性にも優れ、そして、柔らかさと手触り感がさらに優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の衛生用紙は、トイレットペーパー、ティシュペーパー、フェイシャルティシュー及び京花紙等の薄葉紙、ペーパーナプキン、ペーパータオルなどを含むが、特にティシュペーパー、フェイシャルティシューに特に有用である。この場合において、米坪が10〜35g/m2、紙厚が80〜200μm、JIS P 8113に基づく乾燥引張強度が(縦方向)200〜400cN/15mm、(横方向)60〜200cN/15mmのものとするのが望ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される第4級アンモニウム塩(A)と、
炭素数14〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコール(B)と、
サイズ剤(C)と
を構成成分として含むことを特徴とする衛生用紙。

(式中、R1は、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−を示し、R2は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良い。R3は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基を示す。X-は陰イオンを示す。)
【請求項2】
さらに、成分(D)として昇華物質を含む請求項1記載の衛生用紙。
【請求項3】
前記昇華物質が、メントール、カンファー及びシクロヘキサノールの群から選ばれたものである請求項2記載の衛生用紙。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分を、プライパートの工程において、プライ間に介在させる形態で外添する衛生用紙の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分を、衛生用紙搬送手段としてのロール状部材を備えた抄紙工程において、少なくとも1つの前記ロール状部材表面から前記添加成分を滲出させて衛生用紙に含有せしめて外添する衛生用紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−88586(P2008−88586A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269658(P2006−269658)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】