説明

衝撃検知システムおよび該衝撃検知システムを使用した衝撃検知方法

【課題】 強い風による振動を検知せず、落石などによる衝撃のみを適確に検知し得る衝撃検知システムを提供する。
【解決手段】 所定の間隔で基礎部97の上に固定的に立設された複数の支柱99の間に張り渡されて落石93などの衝撃物の衝撃を防護する防護フェンス21に沿って保護管10に挿入された光ファイバケーブルを防護フェンス21に接触することなく張り巡らして落石93などの衝撃を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば崖の下を走っている道路において崖から落下してくる落石などの衝撃物を防ぐ防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らして、この衝撃物の落下による衝撃を検知する衝撃検知システムおよび該衝撃検知システムを使用した衝撃検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路の一方の側が上方に切り立った山などの崖になっているようなところでは、崖からの落石が道路上の通行人や車両などに当たらないように道路の一方の側縁と崖との間に防護フェンスが敷設されている。この防護フェンスは、所定の間隔で基礎部の上に固定的に立設された複数の支柱の間に張り渡されて固定されている。なお、防護フェンスは、崖からの落石が防護フェンスに当たったとしても、支柱から簡単に取れないように支柱の崖側の側面、すなわち落石が衝突する側の側面にボルトなどで固定されている。
【0003】
このように敷設されている防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らせることにより、この光ファイバケーブルで崖からの落石を検知することができる。更に詳しくは、崖からの落石が防護フェンスに当たり、その衝撃により防護フェンスが振動すると、光ファイバケーブルも防護フェンスとともに振動するが、この光ファイバケーブルの振動により光ファイバケーブル内を伝播する光信号の位相が変化するので、この位相の変化を検知することにより落石を検知することができる(非特許文献1参照)。また、光ファイバケーブルに光信号を入力した時点から位相の変化を検知した時点までの時間を測定することにより、落石があった場所も検知することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】土木学会 第62回年次 学術講演会 平成19年9月13日 「光ファイバケーブルによる落石検知システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らせて、落石を検知する従来の方法においては、光ファイバケーブルを鋼管や可撓管などの保護管で保護されてから防護フェンスに例えばインシュロックなどで固定しているが、防護フェンスは、金網で構成されているものであるため、例えば風によって簡単に揺れてしまい、この揺れにより防護フェンスの金網に固定された光ファイバケーブルも揺れ、光ファイバケーブルはこの揺れによる振動を検知することになる。
【0006】
ところで、上述した風による揺れが度を過ぎて強くない通常の風によるものである場合には、この通常の風による振動を光ファイバケーブルが検知したとしても、検知した振動波形の大きさから落石による振動でなく、通常の風による振動であると判断することができ、これを除外することができるが、通常の風よりも一段と強い風、例えば海沿いの地域で台風に近い風速の風が常時吹いているような場合には、この強い風による振動を光ファイバケーブルが検知し、この検知した振動波形が大きく、落石による振動と区別できず、落石によるものと誤判定してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、強い風による振動を検知せず、落石などによる衝撃のみを適確に検知し得る衝撃検知システムおよび該衝撃検知システムを使用した衝撃検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、請求項1記載の衝撃検知システムは、所定の間隔で基礎部の上に固定的に立設された複数の支柱の間に張り渡されて衝撃物の衝撃を防護する防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らして衝撃物の衝撃を検知する衝撃検知システムであって、衝撃物が防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルに衝突したときの防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルへの衝撃を光ファイバケーブルが防護フェンスに接触することなく振動で検知するように光ファイバケーブルを防護フェンスに接触させずに支柱に固定する固定手段を有することを要旨とする。
【0009】
請求項1記載の衝撃検知システムにあっては、光ファイバケーブルは固定手段で防護フェンスに接触しないように支柱に固定されて、防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルへの衝撃を防護フェンスに接触することなく振動で検知するため、防護フェンスが例えば台風並みの強い風で揺れたりしても、この揺れにより光ファイバケーブルは影響されず、従ってこの風による振動を落石などの衝撃物による衝撃であると誤検知することなく、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0010】
請求項2記載の衝撃検知システムは、前記固定手段が、支柱の根本寄りの下部において光ファイバケーブルを固定することを要旨とする。
【0011】
請求項2記載の衝撃検知システムにあっては、光ファイバケーブルは支柱の根本寄りの下部に固定されるため、防護フェンスが台風並みの強い風で揺れ、これにより仮に支柱も先端が揺れたとしても、その根本寄りの下部はほとんど揺れることがなく、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0012】
請求項3記載の光ファイバケーブルは、前記固定手段が、基端部が支柱に固定的に取り付けられ、先端部が支柱から離隔して防護フェンスに接触しないように延出した離隔部材と、この離隔部材の先端部において光ファイバケーブルを防護フェンスに接触させないように固定的に保持する保持部材とを有することを要旨とする。
【0013】
請求項3記載の光ファイバケーブルにあっては、固定手段は支柱に基端部が固定され、先端部が防護フェンスに接触しないように延出し、この先端部において光ファイバケーブルを防護フェンスに接触させないように固定的に保持しているため、防護フェンスが例えば台風並みの強い風で揺れたりしても、この揺れによる振動を落石などの衝撃物による衝撃であると誤検知することなく、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0014】
また、前記離隔部材が、基端面が支柱に固定的に取り付けられ、先端部が支柱から離隔して延出した棒状部材または基端部が直角に短く折曲し、この短く折曲した折曲部が支柱に固定的に取り付けられ、先端部が支柱から離隔して延出した棒状部材または一辺が支柱に密接するように固定され、前記一辺に対向する他辺が先端部として支柱から離隔して延出した矩形の枠状部材を有することを要旨とする。
【0015】
つまり、離隔部材が棒状部材または基端部が短く折曲した棒状部材または矩形の枠状部材であって、これらの先端部が支柱から離隔しているため、防護フェンスが台風並みの強い風で揺れたりしても、この揺れにより光ファイバケーブルは影響されず、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0016】
請求項4記載の衝撃検知システムは、前記支柱が立設された基礎部が、所定の高さをもって所定の長さ防護フェンスの下部に連続的に堅固に構築された構造物であり、前記光ファイバケーブルは、衝撃物が基礎部に衝突したときの基礎部への衝撃を基礎部の振動により検知し得るように基礎部の下部寄りの部分に防護フェンスに沿って固定的に取り付けられていることを要旨とする。
【0017】
請求項4記載の衝撃検知システムにあっては、光ファイバケーブルは基礎部の下部寄りの部分に防護フェンスに沿って固定的に取り付けられ、衝撃物が基礎部に衝突したときの基礎部への衝撃を基礎部の振動により検知するため、落石などの衝撃物が基礎部に衝突した時の衝撃も適確に検出することができる。
【0018】
また、前記光ファイバケーブルで検知した光信号に基づき衝撃物が衝突した位置を検出することができることを要旨とする。
【0019】
つまり、光ファイバケーブルで検知した光信号に基づき衝撃物が衝突した位置を検出することができるため、例えば衝撃物を迅速に除去したり、または衝撃物の衝突により例えば破損した防護フェンスを迅速に修理することができる。
【0020】
請求項5記載の衝撃検知システムは、前記防護フェンスおよび光ファイバケーブルが、支柱の、衝撃物による衝撃が加わる衝撃側の側面に固定的に取り付けられることを要旨とする。
【0021】
請求項5記載の衝撃検知システムにあっては、防護フェンスおよび光ファイバケーブルが支柱の、衝撃物による衝撃が加わる衝撃側の側面に固定的に取り付けられるため、仮に防護フェンスに衝撃物が衝突したとしても、防護フェンスは容易に取り外れないし、また光ファイバケーブルに衝撃物が仮に直接衝突した場合には、衝撃物の衝撃を直接かつ確実に検知することができる。
【0022】
請求項6記載の衝撃検知システムは、前記光ファイバケーブルが、保護管に入れられ保護されてから防護フェンスから離隔して沿うように張り巡らされ、固定手段により保護管の上から支柱に固定されることを要旨とする。
【0023】
請求項6記載の衝撃検知システムあっては、光ファイバケーブルは保護管に入れられ保護されてから防護フェンスに沿って張り巡らされ、固定手段により保護管の上から支柱に固定されるため、光ファイバケーブルは振動などで引っ張られても切れにくい。
【0024】
請求項7記載の衝撃検知システムは、前記光ファイバケーブルが、多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の互いに離れた位置にある2本の光ファイバで構成されることを要旨とする。
【0025】
請求項7記載の衝撃検知システムにあっては、光ファイバケーブルは多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の互いに離れた位置にある2本の光ファイバで構成されるため、光ファイバケーブルに落石などの衝撃物からの衝撃が加わった場合に、2本の光ファイバに位相差が明確に発生し、衝撃の有無を適確に検知することができる。
【0026】
請求項8記載の衝撃検知方法は、請求項1記載の衝撃検知システムを使用して、衝撃物の衝撃を検知する衝撃検知方法であって、防護フェンスに接触しないように光ファイバケーブルを支柱の根本寄りの下部に固定しながら防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らし、この光ファイバケーブルの一端から光信号を入力し、光ファイバケーブルの他端から出力される光信号を受信し、前記入力した光信号と受信した光信号とに基づいて防護フェンスへの衝撃物の衝撃を検知することを要旨とする。
【0027】
請求項8記載の衝撃検知方法にあっては、防護フェンスに接触しないように光ファイバケーブルを支柱の根本寄りの下部に固定しながら防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らし、光ファイバケーブルに光信号を入力して防護フェンスへの衝撃物の衝撃を検知するため、防護フェンスが例えば台風並みの強い風で揺れたりしても、この揺れにより光ファイバケーブルは影響されず、従ってこの風による振動を落石などの衝撃物による衝撃であると誤検知することなく、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0028】
また、支柱が所定の高さをもって所定の長さ防護フェンスの下部に連続的に堅固に構築された基礎部の上に固定的に立設され、前記光ファイバケーブルは、防護フェンスに沿って手前から遠端部まで張り巡らされた後、遠端部でUターンして遠端部から手前に向かって基礎部の下部寄りの部分に基礎部に沿って固定的に取り付けられ、基礎部への衝撃物の衝撃も検知するようになっていることを要旨とする。
【0029】
つまり、支柱は基礎部の上に固定的に立設され、光ファイバケーブルは防護フェンスに沿って遠端部まで張り巡らされた後、遠端部でUターンして基礎部の下部寄りの部分に固定的に取り付けられ、基礎部への衝撃物の衝撃も検知するため、落石などの衝撃物が基礎部に衝突した時の衝撃も適確に検出することができる。
【0030】
請求項9記載の衝撃検知方法は、前記光ファイバケーブルが、多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の離れた位置にある2本の光ファイバで構成され、光ファイバケーブルの一端において前記2本の離れた位置にある光ファイバの両方に同時に同じ光信号を入力し、光ファイバケーブルの他端において2本の光ファイバから出力される光信号の位相差に基づいて衝撃物の衝撃の有無を検知することを要旨とする。
【0031】
請求項9記載の衝撃検知方法にあっては、光ファイバケーブルが多数の光ファイバをまとめた多芯光ファイバケーブルの中の離れた位置にある2本の光ファイバで構成され、光ファイバケーブルの一端において2本の離れた位置にある光ファイバの両方に光信号を入力し、その位相差に基づいて衝撃物の衝撃の有無を検知するため、光ファイバケーブルに落石などの衝撃物からの衝撃が加わった場合に、2本の光ファイバに位相差が明確に発生し、衝撃の有無を適確に検知することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、光ファイバケーブルは固定手段で防護フェンスに接触しないように支柱に固定されて、防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルへの衝撃を防護フェンスに接触することなく振動で検知するので、防護フェンスが例えば台風並みの強い風で揺れたりしても、この揺れにより光ファイバケーブルは影響されず、従ってこの風による振動を落石などの衝撃物による衝撃であると誤検知することなく、落石などによる真の衝撃のみを適確に検知することができる。
【0033】
本発明によれば、光ファイバケーブルは多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の互いに離れた位置にある2本の光ファイバで構成されるので、光ファイバケーブルに落石などの衝撃物からの衝撃が加わった場合に、2本の光ファイバに位相差が明確に発生し、衝撃の有無を適確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係わる衝撃検知システムの全体的構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す衝撃検知システムを設置した基礎部、支柱、道路、崖の関係を分かり易く示した断面図である。
【図3】図1に示す衝撃検知システムに使用されている離隔部材を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3に示す離隔部材を示す側面図である。
【図5】図1に示す衝撃検知システムに使用され得る離隔部材の別の構成を拡大して示す枠状部材の斜視図である。
【図6】図1に示す衝撃検知システムに使用されている保持部材を拡大して示す斜視図である。
【図7】図1に示した衝撃検知システムの電気回路図である。
【図8】図7に示す電気回路を持った図1に示す衝撃検知システムにおける各部の信号の波形を示す波形図である。
【図9】図1に示す衝撃検知システムに使用されている光ファイバケーブルの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態を説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係わる衝撃検知システムの全体的構成および設置状態を示す斜視図であり、図2は、図1に示す衝撃検知システムを設置した基礎部、支柱、道路、崖の関係を分かり易く示した断面図である。
【0037】
本実施形態の衝撃検知システムは、図1、2に示すように、例えば崖91の下を走っている道路92に崖91からの落石93が落ち込まないように防護すべく道路92と崖91との間に敷設された落石防護柵95を構成する基礎部97と支柱99に固定的に取り付けられ、崖91からの落石93が基礎部97や支柱99に当たった場合の衝撃を検知する光ファイバケーブルを保護するように内包した鋼管や可撓管などからなる保護管10を有し、この保護管10内に図3〜6に示すように光ファイバケーブル1が挿入され保護されている。なお、光ファイバケーブル1は、図9で後述するように、鞘1sで被覆された多芯光ファイバケーブルのうちの2本の光ファイバ1a、1bを使用して構成されている。
【0038】
光ファイバケーブル1を保護するように挿入された保護管10は、崖91と道路92との間に道路92に沿って長く設置された基礎部97の上に所定の間隔で立設された複数の支柱99に3〜8cm程度の長さの離隔部材11を介して図1において手前から遠端に向かって順次取り付けられ、最後の支柱99を終わった遠端部でUターンして、元に戻るように基礎部97に適当な間隔で固定的に取り付けられている。そして、このようにUターンして迂回するように複数の支柱99と基礎部97に取り付けられた保護管10内に挿入されている光ファイバケーブル1は、その一端がスタートセンサ3に接続され、他端がエンドセンサ5に接続され、このスタートセンサ3とエンドセンサ5は、測定器7に接続されている。
【0039】
光ファイバケーブル1を挿入された保護管10は、基礎部97の上に立設された各支柱99の根本寄りの下部の側面、すなわち崖91に面する側の側面に取り付けられた棒状の離隔部材11の先端部寄りの部分に保持部材13により固定されている。また、基礎部97においては、光ファイバケーブル1を挿入された保護管10は、基礎部97の下部寄りの部分に保持部材15により固定されている。
【0040】
また、複数の支柱99の間には、金網などからなる防護フェンス21が全体にわたって張り渡されて、支柱99に固定され、これにより崖91からの落石93が道路92の上に落ち込まないようになっている。なお、防護フェンス21は、崖91からの落石93が当たった場合に簡単に取れないように支柱99の崖側の側面、すなわち崖91からの落石93が衝突する側の側面にボルトなどにより固定されている。
【0041】
前記離隔部材11、すなわち保護管10を支柱99に取り付けている離隔部材11は、図3および4に拡大して示すように、基端面がねじ11a(図4)により支柱99に固定された棒状部材であり、この棒状の離隔部材11の先端部の上に光ファイバケーブル1を挿入された保護管10が保持部材13およびねじ13a、13bにより固定的に保持されている。このように取り付けられることにより、光ファイバケーブル1を挿入された保護管10は、支柱99および支柱99の崖側の側面に固定された防護フェンス21から離隔して接触しないようになっていて、これにより防護フェンス21が風などにより揺れたり、振動したとしても、保護管10、ひいては保護管10内に挿入されている光ファイバケーブル1は揺れたり、振動せず、これにより後述するように風などによる揺れや振動を落石の衝撃と誤判定しないようになっている。
【0042】
なお、本実施形態では、離隔部材11を用いて、光ファイバケーブル1を挿入された保護管10を防護フェンス21から離隔して接触しないように固定しているが、本発明は、このような構造の離隔部材11に限定されるものでなく、例えば基端部が直角に短く折曲し、この短く折曲した折曲部が支柱99に固定的に取り付けられ、先端部が支柱99から離隔して延出した棒状部材または一辺が支柱に密接するように固定され、この一辺に対向する他辺が先端部として支柱から離隔して延出した矩形の枠状部材などでもよいものである。
【0043】
図5は、このような矩形の枠状部材の構造を示す側面図である。同図に示す枠状部材17は、矩形の一辺17aが支柱99に密接して、ねじ18a、18bにより固定され、この一辺17aに対向する他辺17bに光ファイバケーブル1を挿入された保護管10が保持部材19およびねじ19a、19bにより保持されている。なお、この保護管10が保持されている他辺17bは、支柱99および支柱99に固定された防護フェンス21から2〜5cm離隔していて、防護フェンス21が風などで揺れたり、振動したとしても、防護フェンス21が保護管10に接触せず、従って防護フェンス21の揺れや振動で保護管10に挿入された光ファイバケーブル1が揺れたり振動せず、これにより風などによる揺れや振動を落石の衝撃と誤判定しないようになっている。
【0044】
図6は、光ファイバケーブル1を挿入された保護管10を基礎部97に固定している前記保持部材15を示す斜視図である。この保持部材15は、図4に示した保持部材13と同様に光ファイバケーブル1を挿入された保護管10の円周部を囲んで保持する円弧状部と、この円弧状部の両側に延出してねじ止めされるねじ止め部と有し、円弧状部に保護管10を保持し、ねじ15a、15bでねじ止め部を基礎部97に固定することにより、光ファイバケーブル1を挿入された保護管10は、同図に示すように、保持部材15およびねじ15a、15bにより基礎部97に固定されている。
【0045】
図7は、図1に示した衝撃検知システムの電気回路図である。同図に示すように、スタートセンサ3とエンドセンサ5の間で防護フェンス21に沿って張り巡らされ保護管10内に挿入された光ファイバケーブル1は、2本の光ファイバ1a、1bで構成されている。すなわち、測定器7の出力光信号Aは、スタートセンサ3に入力され、このスタートセンサ3で2つに分けられ、一方の光信号B1は、一方の光ファイバ1aに入力され、他方の光信号B2は、他方の光ファイバ1bに入力された後、スタートセンサ3からの両光信号B1、B2は、光ファイバケーブル1の光ファイバ1a、1b内を防護フェンス21に沿って遠端部まで伝播された後、遠端部でUターンし、基礎部97に沿って元に戻るように伝播して、エンドセンサ5に入力し、エンドセンサ5で1つの光信号に合成され、エンドセンサ5から1つの出力光信号Cとして測定器7に入力される。
【0046】
図8は、上述したように、測定器7からの光信号がスタートセンサ3を介して光ファイバケーブル1を防護フェンス21、基礎部97に沿って伝播し、エンドセンサ5を介して測定器7に戻る場合における各部の光信号の波形を示す波形図である。なお、この波形図は、崖91から落石93がなく、従って防護フェンス21や基礎部97が衝撃を受けず、光ファイバケーブル1が静止している場合の波形を「(a)振動がない場合」として図示し、また崖91からの落石93が防護フェンス21や基礎部97に衝突して、防護フェンス21や基礎部97が振動し、光ファイバケーブル1が振動を受けた場合の波形を「(b)振動がある場合」として図示している。
【0047】
まず、図8の信号波形図において、「(a)振動がない場合」について説明する。測定器7の出力光信号Aが、同図(a‐1)に示すように、例えば正常な正弦波であると、この正弦波の光信号Aは、スタートセンサ3で2つに分配され、スタートセンサ3から同図(a‐2)、(a‐3)に示すように同じ2つの正弦波の出力光信号B1、B2として出力され、光ファイバケーブル1の光ファイバ1a、1bにそれぞれ入力される。
【0048】
光ファイバケーブル1は、同図の(a)振動がない場合には、振動を受けず、静止しているので、光ファイバ1a、1bを伝播する2つの正弦波の光信号B1、B2は、振動の影響を受けず、従って2つの正弦波の光信号B1、B2の間に位相差も生じることなく、光ファイバケーブル1を一周し、同じ正弦波の光信号B1、B2としてエンドセンサ5に入力され、エンドセンサ5において1つの光信号に合成され、同図(a‐4)に示すように、エンドセンサ5から1つの出力光信号Cとして測定器7に入力される。
【0049】
測定器7は、エンドセンサ5から光信号Cを受信すると、この光信号Cと先に出力した光信号Aとに基づいて、具体的には、光信号Aから光信号Cを減算した同図(a‐5)に示すような結果に基づいて崖91から落石93があったか否かの判定、すなわち崖91からの落石93が防護フェンス21や基礎部97に衝突して、防護フェンス21や基礎部97が振動し、これにより光ファイバケーブル1も振動したか否かの判定を行う。今の説明の「(a)振動がない場合」には、同図(a‐5)に示すように、光信号Aから光信号Cを減算した結果は、「0」となるので、崖91からの落石93は、なかったものと判定される。
【0050】
一方、同図の「(b)振動がある場合」には、測定器7から同図(b‐1)に示すようにスタートセンサ3に入力された正弦波の光信号Aは、スタートセンサ3で2つの正弦波の光信号B1、B2として分配され、光ファイバケーブル1の光ファイバ1a、1bにそれぞれ入力され光ファイバケーブル1を伝播するが、この伝播の途中において崖91から落石93があり、この落石93が防護フェンス21や基礎部97に衝突して、防護フェンス21や基礎部97を振動させ、これにより保護管10に挿入された光ファイバケーブル1も振動した場合には、別々の光ファイバ1a、1bを通る2つの光信号に位相差が生じ、同図(b‐2)、(b‐3)に示すように位相差のある2つの光信号B1、B2としてエンドセンサ5に入力される。
【0051】
エンドセンサ5が、このように位相差のある2つの光信号B1、B2を合成すると、この2つの光信号は位相差のところで互いに加減算して打ち消し合うように合成され、この結果、エンドセンサ5の出力は、この図8の(b‐4)においては、「0」となる。この「0」となったエンドセンサ5の出力光信号Cは、測定器7に入力される。
【0052】
測定器7は、エンドセンサ5から「0」の光信号Cを受信すると、この光信号Cと先に出力した光信号Aとに基づいて、すなわち上述したように光信号Aから光信号Cを減算した結果に基づいて崖91から落石93があったか否かの判定を行う。今の説明の「(b)振動がある場合」には、正弦波の光信号Aから「0」の光信号Cを減算した結果は、同図(b‐5)に示すように、正弦波となるので、崖91から落石93があったものとの判定、すなわち崖91からの落石93が防護フェンス21や基礎部97に衝突して、防護フェンス21や基礎部97が振動し、これにより保護管10に挿入された光ファイバケーブル1も振動し、この信号した光ファイバケーブル1を構成する2本の光ファイバ1a、1bを伝播する2つの光信号に位相差が生じたものとの判定を行う。
【0053】
なお、測定器7から光ファイバケーブルに光信号を入力した時点から測定器7において位相差を検知した時点までの時間を測定することにより、落石93があった場所も検知することができる。
【0054】
図9は、保護管10に挿入された光ファイバケーブル1の構成を示す図である。同図に示すように、光ファイバケーブル1は、周囲を例えばビニールなどの鞘(シース、または防食層ともいう)1sで被覆された多芯の、すなわち40芯の光ファイバケーブル(例えば、40SM‐WBB)で構成されるとともに、その中心に鋼芯(テンションメンバともいい、鋼線のほか、FRPやアラミド繊維等が適宜用いられる)1dが配設されている。40芯の光ファイバケーブル1は、同図に示すように、8芯ずつまとめたものを5組設けて構成され、この5組と鋼芯1dの間は隙間材などを充填されている。このように構成される光ファイバケーブル1の40芯のうちの2本を前記光ファイバ1a、1bとして使用しているが、この2本の光ファイバ1a、1bは、同図に示すように、離れた位置にある2本の光ファイバを使用している。
【0055】
このように離れた位置にある2本の光ファイバ1a、1bを使用することにより、上述したように、保護管10に挿入された光ファイバケーブル1が落石93などの衝撃で振動した場合に、互いに離れた位置にある2本の光ファイバ1a、1bが衝撃を受けるタイミングが異なることになり、これにより2本の光ファイバ1a、1bを伝播する2つの光信号に位相差が発生するのである。従って、この位相差を検知することにより、落石93の有無を感度良く検知することができるのである。
【0056】
なお、前記実施形態において、基礎部97は、所定の高さ、長さをもって連続的に構築されているが、本発明は、このような基礎部に限られるものでなく、例えば地面に部分的に埋設されたコンクリートで構築されたものでもよいものである。また、防護フェンス21は、金網などで構成されているが、本発明は、これに限定されるものでなく、棒状部材を組み合わせて構成してもよいものである。離隔部材11や保持部材13、15は、上述したようなものに限らず、上述した機能を有するものであれば、任意のものを使用し得るものである。
【0057】
更に、本発明の衝撃検知システムは、崖91に沿って走っているような道路に設置されるものに限定されず、また衝撃物も落石などに限定されるものでなく、例えば重要な建物、施設、区域、場所などを防護するために設けられている防護フェンスにも適用し得るし、また落石などの代わりに強風で飛んでくる瓦や看板などから防護するためにも適用し得るものである。
【符号の説明】
【0058】
1 光ファイバケーブル
1a、1b 光ファイバ
3 スタートセンサ
5 エンドセンサ
7 測定器
10 保護管
11 離隔部材
13、15 保持部材
17 枠状部材
21 防護フェンス
91 崖
92 道路
93 落石
97 基礎部
99 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で基礎部の上に固定的に立設された複数の支柱の間に張り渡されて衝撃物を防ぐ防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らして衝撃物の衝撃を検知する衝撃検知システムであって、
衝撃物が防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルに衝突したときの防護フェンス、支柱または光ファイバケーブルへの衝撃を光ファイバケーブルが防護フェンスに接触することなく振動で検知可能に当該光ファイバケーブルを前記支柱に固定する固定手段を有することを特徴とする衝撃検知システム。
【請求項2】
前記固定手段は、支柱の根本寄りの下部において光ファイバケーブルを固定することを特徴とする請求項1記載の衝撃検知システム。
【請求項3】
前記固定手段は、基端部が支柱に固定的に取り付けられ、先端部が支柱から離隔して防護フェンスに接触しないように延出した離隔部材と、この離隔部材の先端部において光ファイバケーブルを防護フェンスに接触させないように固定的に保持する保持部材とを有することを特徴とする請求項1または2記載の衝撃検知システム。
【請求項4】
前記光ファイバケーブルは、衝撃物が基礎部に衝突したときの基礎部への衝撃を基礎部の振動により検知し得るように基礎部の下部寄りの部分に防護フェンスに沿って固定的に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の衝撃検知システム。
【請求項5】
前記防護フェンスおよび光ファイバケーブルは、支柱の、衝撃物による衝撃が加わる衝撃側の側面に固定的に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の衝撃検知システム。
【請求項6】
前記光ファイバケーブルは、保護管に入れられ保護されてから防護フェンスから離隔して沿うように張り巡らされ、固定手段により保護管の上から支柱に固定されることを特徴とする請求項5に記載の衝撃検知システム。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルは、多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の互いに離れた位置にある2本の光ファイバで構成されることを特徴とする請求項6に記載の衝撃検知システム。
【請求項8】
請求項1記載の衝撃検知システムを使用して、衝撃物の衝撃を検知する衝撃検知方法であって、
防護フェンスに接触しないように光ファイバケーブルを支柱の根本寄りの下部に固定しながら防護フェンスに沿って光ファイバケーブルを張り巡らし、
この光ファイバケーブルの一端から光信号を入力し、光ファイバケーブルの他端から出力される光信号を受信し、前記入力した光信号と受信した光信号とに基づいて防護フェンスへの衝撃物の衝撃を検知する
ことを特徴とする衝撃検知方法。
【請求項9】
前記光ファイバケーブルは、多数の光ファイバを1本のケーブルとしてまとめた多芯光ファイバケーブルの中の離れた位置にある2本の光ファイバで構成され、光ファイバケーブルの一端において前記2本の離れた位置にある光ファイバの両方に同時に同じ光信号を入力し、光ファイバケーブルの他端において2本の光ファイバから出力される光信号の位相差に基づいて衝撃物の衝撃の有無を検知することを特徴とする請求項8記載の衝撃検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate