衣料及び衣料の製造方法
【課題】衿、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料又は衣料を製造するための技術であって、ユニークなデザインを施すことを可能とする技術を提案する。
【解決手段】衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りし、前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺し、前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱印捺し、前記構成パーツを洗浄し、前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料とする。
【解決手段】衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りし、前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺し、前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱印捺し、前記構成パーツを洗浄し、前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有するゴム編み部分を備えた衣料、並びに前記衣料を製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の染色手法の一つとして、染料を含む捺染糊を印捺して模様染めを行う『捺染』がある。捺染法は、まず染料や助剤を糊と練り合わせて捺染糊をつくり、捺染機等を用いて生地に捺染糊を印捺(プリント)し、次いで、水蒸気で加熱して、染料を繊維に浸透させると共に染着させ、さらに、付着染料や糊などを洗浄により除去して、乾燥して製品とする手法である。以下、染料を使用する捺染を『染料捺染』と記載する。
【0003】
一方、上記染料捺染と同様、生地に模様をプリントする手法として、顔料を使用する『顔料捺染』も知られている。顔料捺染法は、水又は非水溶媒に分散させた顔料を樹脂とともに捺染したのち加熱して、顔料を樹脂とともに生地に固着させる手法である。
前記顔料捺染では、細かい柄や色合いを自由に現出できるという特徴を有するものの、生地の表面に顔料が樹脂で塗着されるので、その塗着された部分が硬くなり、生地の風合いが損なわれることがある。
【0004】
一方、染料捺染では、繊維そのものに染料を染着させるため、捺染により生地の表面に現れる織り模様が覆われたり、生地が硬くなったりすることがない。この染料捺染の特性を利用して、特許文献1では、縦糸と横糸とを織り成すことによって地部分の表面に文字や図柄等の紋部分が現出された織りネーム状の生地に、染料インクが染着されてなる、ネーム入り布地が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、製品化されているか半製品であるかを問わず、被服や帽子や靴下などの各種の伸縮性布にプリント柄を入れる方法に関し、伸縮性布製の製品を使用状態と同一の伸展形状になるように型板にセットしたのち、該型板上で伸縮性布製の製品の外表面にプリント柄を染料捺染する技術が提案されている。この技術によれば、実際に装着したときと実質的に同一条件の伸展状態で染料捺染されるので、製品使用時のプリント柄のぼけや、位置ズレを防止することができる効果がうたわれている。
【特許文献1】実用新案登録第3067570号公報
【特許文献2】特開2001−61708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に鑑み、衿(首廻り)、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料又は衣料を製造するための技術であって、ユニークなデザインを施すことを可能とするものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、前構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされているものである。
【0009】
請求項2においては、前記衣料が、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、又はスウェットパーカーの何れか一つであるものである。
【0010】
請求項3においては、衿が伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、前記衿が内側の構成パーツと、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツとの二層で構成され、前記内側の構成パーツ及び前記外側の構成パーツのうち、何れか一方又は双方に模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされているものである。
【0011】
請求項4においては、前記ゴム編み地で構成された構成パーツの端部が切り放しとされ、該切り放しとされた端部にラバー調樹脂がプリントされているものである。
【0012】
請求項5においては、衿、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み部分を有する衣料の製造方法であって、前記衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りするステップと、前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺するステップと、前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱するステップと、前記構成パーツを洗浄するステップと、前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料を縫製とするステップとを、含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明によれば、本発明では、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所に、他の部分と比較して大幅に伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料及び該衣料を製造するに際し、前記ゴム編み部分に模様、絵柄、又は文字のプリントを施したユニークなデザインを美麗に体裁良く仕上げることができる。
また、ゴム編み部分に施された模様、絵柄、又は文字のプリントは、染料捺染によるものであるので、生地の柔らかさが維持されて肌触りが良好であり、顔料捺染と比較して、繊維の奥部まで染色されることからゴム編み部分が伸びてもプリントされた模様、絵柄、又は文字の外観が大幅に損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るTシャツの正面図、図2は本発明の一実施例に係るTシャツの背面図、図3はTシャツの製造の流れ図、図4は衿パーツの形状を示す図、図5は袖口パーツの形状を示す図、図6は染色によるプリントが施された衿パーツ及び袖口パーツの図である。
図7は袖に袖口パーツを縫合した様子を示す図、図8は袖に袖口パーツを縫合した別形態の様子を示す図である。図9は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図10は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図11は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図である。
図12は衿の構造を説明する断面図、図13は衿のラバープリント部分を示す図、図14は衿の構造を説明する断面図である。図15は衿パーツの別形態を示す図、図16は衿のラバープリント部分を示す図、図17は衿の構造を説明する断面図である。
図18は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図19は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図20は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図21はヘンリーネックシャツ型の衣料の首廻りの図である。
【0016】
本発明に係る衣料は、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所に、他の部分と比較して大幅に伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する製品である。つまり、前記衣料は、該衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で構成される。
前記衣料として、例えば、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、或いはスウェットパーカー等の、伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料を挙げることができる。
【0017】
そして、前記衣料は、該衣料の構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料による捺染にてプリントされていることを特徴の一つとするものである。つまり、衣料のゴム編み部分に染色による模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせのプリントが施されているのである。
なお、染色とは、染料のもつ繊維材料への染着性を利用して、繊維等に染料を収着又は固着させる技術である。染料は水溶液として分子状に拡散したのち、染料の繊維に対してもつ特定の親和性(染着性)によって、繊維上に収着又は固着されるものであり、繊維材料に顔料を固着材で固定する技術である顔料捺染は前記染色には含まれない。
【0018】
ここで、前記衣料の製造方法について、衣料として半袖Tシャツを例に挙げて説明する。
図1及び図2に示すように、前記Tシャツ10は、前身頃11と、後ろ身頃12と袖13・13とが縫製されて成り、前記前身頃11と後ろ身頃12にて形成される襟刳り17に縫合される衿15(首廻り)と、前記袖13・13の袖口16・16(袖13の裾13aに延設された飾り布)とに、ゴム編み部分を有する製品である。なお、図1及び図2において、前記ゴム編み部分は薄墨塗りで示されている。
但し、本発明に係る衣料において、ゴム編み部分は衿15及び袖口16・16に限定されるものではなく、上述した通り、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所などに、衣料の機能性又は意匠性に応じて設けることができる。
【0019】
図3は前記衣料の製造の流れ図である。図3に示す通り、まず、Tシャツ10の各構成パーツが裁断される(S1)。
平編み地(天竺編み地)が、Tシャツ10の前身頃11、後ろ身頃12、及び左右の袖13・13のカッティングパターンに合わせて裁断され、前身頃11、後ろ身頃12及び袖13・13の各構成パーツが準備される。
また、ゴム編み地が、衿15と袖口16・16とのカッティングパターンに合わせて裁断され、衿15と袖口16・16の各構成パーツが準備される。以下、衿15の構成パーツを『衿パーツ25』と、袖口16・16の構成パーツを『袖口パーツ26』と記載する。
【0020】
図4に示すように、前記衿パーツ25は、長尺帯状であり、左右両端は略V字状に切り欠かれている。また、図5に示すように、前記袖口パーツ26は、長尺帯状である。
前記衿パーツ25と袖口パーツ26とは、何れも長尺方向がゴム編み地の横方向(より伸びる方向)となるように裁断される。
【0021】
なお、前記ゴム編み地は、リブ編みや畦(あぜ)編みのニット地を含む総称であり、基本の編みパターンは表目と裏目を交互に配列したゴム編みである。前記ゴム編み地は、表目のみが表面に現れる前記平編み地と比較して、表面の凹凸が大きくなる。また、前記ゴム編み地は、平編み地よりも一層伸縮性に富み、特に横の引っ張りに対して大きな収縮性を有する。
【0022】
次に、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に、染料による捺染(以下、『染料捺染』と記載する。)を施すための捺染糊が作られる(S2)。
前記捺染糊は、染料と助剤を糊と練り合わせたものである。配色チャートに則って、もっとも美しく、そして正確に、染め上がるように染料や助剤や糊が調合される。
前記捺染糊に含まれる糊は、捺染作業時の便宜を図って、染料に或程度の粘度を付与するために含有されるものであり、糊成分としては例えばデンプン質のものが用いられる。
【0023】
続いて、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に染料捺染を施すが、その前に、Tシャツ10を構成する各構成パーツの地色を染め上げることもできる。この地色染めには、拡布状態で連続的に染めるパディング染色や、容器内で染料液に浸して染める液流染色などを採用することができる。
【0024】
ここで、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に染料捺染にて、模様、絵柄、又は文字のプリントが施される。
まず、前記衿パーツ25又は袖口パーツ26が、縫合されるときの伸展状態(図4下段)で捺染台に地張りされる(S3)。
【0025】
前記衿パーツ25は、長尺方向(編み目の横方向)に伸ばされた状態で前身頃11及び後ろ身頃12の肩部分が縫合されて成る襟刳り17(首廻り)に縫合される。本実施例においては、衿パーツ25は定常状態で長尺方向に40cmの帯状であるが、これが長尺方向に54cmに伸展された状態で、捺染台に地張りされる。
【0026】
一方、袖口パーツ26は、本実施例においては、殆ど伸展されない状態で、袖裾13aに縫合される。従って、袖口パーツ26は殆ど伸展されない状態で、捺染台に地張りされる。
【0027】
上記のように、染料捺染が施される構成パーツ(生地)が、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りされて、縫合されるときの伸展状態で捺染糊が捺染される。このことによれば、衿15又は袖口16・16のゴム編み部分に模様、絵柄、又は文字のプリントを施したユニークなデザインを備えるTシャツ10を、製品となった状態での前記プリントがぼやけたり歪んだりすることなく美麗に体裁良く仕上げられることとなる。
【0028】
上述のように捺染台に地張りされたパーツの上に、スクリーン型が載置され、該スクリーンの上から捺染糊が構成パーツに印捺される(S4)。前記スクリーン型は、順次移動させてパーツに所望のデザインにて捺染糊が印捺される。また、異なる色の捺染糊を同一のスクリーン型を用いて印捺して、深みのある色彩表現に仕上げられる。つまり、パーツにスクリーン印刷が施される。
【0029】
上記説明による染料捺染の作業ではハンドプリントが採用されているが、捺染機を用いた機械捺染を採用することもできる。
捺染機としては、ハンドプリントと同様にスクリーン型を用いて捺染を行うスクリーン型捺染機や、エッチングのようなローラの凹版で捺染を行うローラ捺染機等を採用することができる。
【0030】
続いて、捺染糊が印捺された構成パーツが、高温或いは高圧の蒸気で加熱(スチーミング)される(S5)。これにより、構成パーツの生地の繊維に染料がよく浸透するとともに、染着することとなる。
さらに、前記構成パーツから、未染着の染料や捺染糊が、洗剤や還元剤などを用いて完全に洗浄(ソーピング)され(S6)、前記構成パーツが乾燥される(S7)。
最後に、例えば図6に示すように、染色による模様、絵柄、又は文字のプリントが施された衿パーツ25及び袖口パーツ26を用いて、Tシャツ10の縫製が行われる(S8)。
【0031】
Tシャツ10の縫製において、袖13・13の縫合から行われる。
まず、袖13・13を筒状に縫合する袖縫いが行われる。
続いて、各袖13の袖裾13aに袖口パーツ26が縫合される。このとき、例えば図7に示すように、各袖13の袖裾13aが折り返され、この折り返し部分と合わせて袖口パーツ26が縫合される。袖口パーツ26の裾26cの端部は切り放しとされるため、ほつれないように、前記裾26cの端部の周縁に沿ってライン状にラバー調樹脂26bがプリントされる。つまり、図7において斜線で示される部分にラバー調樹脂26bがプリントされる。
【0032】
なお、前記ラバー調樹脂を使用するラバー樹脂捺染は、顔料を使用する顔料捺染と比較して柔らかく仕上がるものであり、本実施例では、袖口パーツ26の染料捺染が済んだ後に、袖口パーツ26の表裏面いずれかに無色透明のラバー調樹脂が捺染される。
ラバー調樹脂捺染では、まず、生地にラバーインクが印捺され、続いて、該ラバーインクが加熱される。この加熱により、ラバーインクがラバーへと変化し、生地にラバー調樹脂が定着することとなる。
【0033】
但し、図8に示すように、袖口パーツ26の裾26cを切り放しとせず、袖口パーツ26’を短尺方向に重ね合わせるように折ったものを、折り返された袖13の袖裾13aとともに縫合することもできる。
【0034】
前記袖13・13部分の縫製に続いて或いは同時に、前身頃11と後ろ身頃12の肩剥ぎ及び脇の縫合が行われる。そして、図9に示すように、前身頃11及び後ろ身頃12にて形成される襟刳り17に、衿パーツ25が縫合される。前記衿パーツ25は、短尺方向に重ね合わせるようにして折ったものが、長尺方向に伸ばされた状態で、前身頃11及び後ろ身頃12に縫合される。
さらに、前記前身頃11と後ろ身頃12とに袖13・13が縫合されて、身頃の裾の処理が行われ、Tシャツ10の縫製が終了する。
【0035】
上記の衣料の製造方法によれば、例えば図9〜図11に示すように、染色による模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせのプリントが施されたゴム編み部分を有する衣料が製造される。ゴム編み部分は、平編み地で成る衣料の他の部分と比較して表面の凹凸が大きいが、顔料捺染ではなく染料捺染が採用されて表面のみならず繊維の中まで染料が染着するので、ゴム編み部分が伸びて拡がっても色むらなく見栄えの良い製品となる。さらに、衣料のゴム編み部分を縫合されるときの伸展状態として捺染糊を印捺するので、製品となった衣料において染色による模様、絵柄、又は文字のプリントは、境界が意図に反してぼやけたり歪んだり、意図に反する色具合となったりすることがないのである。
【0036】
なお、染色によるプリントが施された衿パーツ25で成る衿15を備えた衣料は、本実施例のTシャツのように丸首のものに限定されず、例えば図21に示すように、丸首のTシャツやセーターの正面に、胸あたりまでの開きを備えたデザインのヘンリーネックシャツとすることもできる。
【0037】
次に、前記染色によるプリントが施された衿パーツで成る衿15の構造のバリエーションを紹介する。
【0038】
図12に示すように、衿15を、上記衿パーツ25である第一の衿パーツ25と、該第一の衿パーツ25よりも表面側に配置され、且つ、前記第一の衿パーツ25よりも襟刳り17からの立ち上がりの高さが低い第二の衿パーツ32とで構成することができる。つまり、衿15が内側の構成パーツ(第一の衿パーツ25)と、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツ(第二の衿パーツ32)との二層で構成されるのである。
【0039】
前記第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32とは、何れも衣料のゴム編み部分に該当し、何れか一方若しくは両方に、上記衣料の製造方法に則って染色による模様、絵柄、又は文字のプリントが施される。
第二の衿パーツ32は、意匠のために前中央部に略V字状の切り欠き32aが形成される。
【0040】
上記のように二枚の衿パーツで成る衿の一例として、図13及び図14に示すように、前身頃11(又は後ろ身頃12)の襟刳り17を折り返したところに、第二の衿パーツ32と、短尺方向に重ね合わせるようにして折った第一の衿パーツ25とを、合わせて縫合して、衿15としたものを挙げることができる。この場合、衿15のボリュームを抑えるためやラフさを表現するデザインのために、第二の衿パーツ32の縁32cは切り放しとされ、該第二の衿パーツ32はその周縁に沿ってラバー調樹脂32bがプリントされる。つまり、図13及び図14に、斜線で示されている部分にラバー調樹脂32bがプリントされる。なお、第二の衿パーツ32において前中央部に略V字状の切り欠き32aを形成する部分には、前記切り欠き32a部分の生地に張りを持たせるためにラバー調樹脂32bを拡張してプリントすることが望ましい。
【0041】
また、二枚の衿パーツで成る衿の一例として、図15に示すように、第一の衿パーツ25(25A)を折り重ねない一枚物に形成して、図16及び図17に示すように、前身頃11(又は後ろ身頃12)の襟刳り17を折り返したところに、第二の衿パーツ32と、第一の衿パーツ25とを、合わせて縫合して、衿15としたものを挙げることができる。この場合、衿15のボリュームを抑えるためやラフさを表現するデザインのために、第二の衿パーツ32の縁32c並びに第一の衿パーツ25Aの縁25cは切り放しとされ、第二の衿パーツ32及び第一の衿パーツ25Aはその周縁に沿ってラバー調樹脂32b・25bがプリントされる。つまり、図16及び図17に、斜線で示されている部分にラバー調樹脂がプリントされる。なお、第二の衿パーツ32において前中央部に略V字状の切り欠き32aを形成する部分には、前記切り欠き32a部分に張りを持たせるためにラバー調樹脂32bを拡張してプリントすることが望ましい。
【0042】
上記のようにして、第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32との二層で構成された衿15をTシャツに備えて、例えば、図18〜図20に示すように、模様、絵柄、又は文字のプリントを自在に組み合わせて意匠を構成することができる。第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32との二重構造となるので、模様、絵柄、又は文字のプリントと衿パーツの形状を含めて意匠の幅をより拡げることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るTシャツの正面図。
【図2】本発明の一実施例に係るTシャツの背面図。
【図3】Tシャツの製造の流れ図。
【図4】衿パーツの形状を示す図。
【図5】袖口パーツの形状を示す図。
【図6】染色によるプリントが施された衿パーツ及び袖口パーツの図。
【図7】袖に袖口パーツを縫合した様子を示す図。
【図8】袖に袖口パーツを縫合した別形態の様子を示す図。
【図9】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図10】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図11】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図12】衿の構造を説明する断面図。
【図13】衿のラバープリント部分を示す図。
【図14】衿の構造を説明する断面図。
【図15】衿パーツの別形態を示す図。
【図16】衿のラバープリント部分を示す図。
【図17】衿の構造を説明する断面図。
【図18】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図19】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図20】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図21】ヘンリーネックシャツ型の衣料の首廻りの図。
【符号の説明】
【0044】
10 Tシャツ
11 前身頃
12 後ろ身頃
13 袖
15 衿
16 袖口
25 衿パーツ
26 袖口パーツ
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有するゴム編み部分を備えた衣料、並びに前記衣料を製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の染色手法の一つとして、染料を含む捺染糊を印捺して模様染めを行う『捺染』がある。捺染法は、まず染料や助剤を糊と練り合わせて捺染糊をつくり、捺染機等を用いて生地に捺染糊を印捺(プリント)し、次いで、水蒸気で加熱して、染料を繊維に浸透させると共に染着させ、さらに、付着染料や糊などを洗浄により除去して、乾燥して製品とする手法である。以下、染料を使用する捺染を『染料捺染』と記載する。
【0003】
一方、上記染料捺染と同様、生地に模様をプリントする手法として、顔料を使用する『顔料捺染』も知られている。顔料捺染法は、水又は非水溶媒に分散させた顔料を樹脂とともに捺染したのち加熱して、顔料を樹脂とともに生地に固着させる手法である。
前記顔料捺染では、細かい柄や色合いを自由に現出できるという特徴を有するものの、生地の表面に顔料が樹脂で塗着されるので、その塗着された部分が硬くなり、生地の風合いが損なわれることがある。
【0004】
一方、染料捺染では、繊維そのものに染料を染着させるため、捺染により生地の表面に現れる織り模様が覆われたり、生地が硬くなったりすることがない。この染料捺染の特性を利用して、特許文献1では、縦糸と横糸とを織り成すことによって地部分の表面に文字や図柄等の紋部分が現出された織りネーム状の生地に、染料インクが染着されてなる、ネーム入り布地が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、製品化されているか半製品であるかを問わず、被服や帽子や靴下などの各種の伸縮性布にプリント柄を入れる方法に関し、伸縮性布製の製品を使用状態と同一の伸展形状になるように型板にセットしたのち、該型板上で伸縮性布製の製品の外表面にプリント柄を染料捺染する技術が提案されている。この技術によれば、実際に装着したときと実質的に同一条件の伸展状態で染料捺染されるので、製品使用時のプリント柄のぼけや、位置ズレを防止することができる効果がうたわれている。
【特許文献1】実用新案登録第3067570号公報
【特許文献2】特開2001−61708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に鑑み、衿(首廻り)、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料又は衣料を製造するための技術であって、ユニークなデザインを施すことを可能とするものを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、前構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされているものである。
【0009】
請求項2においては、前記衣料が、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、又はスウェットパーカーの何れか一つであるものである。
【0010】
請求項3においては、衿が伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、前記衿が内側の構成パーツと、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツとの二層で構成され、前記内側の構成パーツ及び前記外側の構成パーツのうち、何れか一方又は双方に模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされているものである。
【0011】
請求項4においては、前記ゴム編み地で構成された構成パーツの端部が切り放しとされ、該切り放しとされた端部にラバー調樹脂がプリントされているものである。
【0012】
請求項5においては、衿、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み部分を有する衣料の製造方法であって、前記衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りするステップと、前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺するステップと、前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱するステップと、前記構成パーツを洗浄するステップと、前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料を縫製とするステップとを、含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明によれば、本発明では、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所に、他の部分と比較して大幅に伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料及び該衣料を製造するに際し、前記ゴム編み部分に模様、絵柄、又は文字のプリントを施したユニークなデザインを美麗に体裁良く仕上げることができる。
また、ゴム編み部分に施された模様、絵柄、又は文字のプリントは、染料捺染によるものであるので、生地の柔らかさが維持されて肌触りが良好であり、顔料捺染と比較して、繊維の奥部まで染色されることからゴム編み部分が伸びてもプリントされた模様、絵柄、又は文字の外観が大幅に損なわれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るTシャツの正面図、図2は本発明の一実施例に係るTシャツの背面図、図3はTシャツの製造の流れ図、図4は衿パーツの形状を示す図、図5は袖口パーツの形状を示す図、図6は染色によるプリントが施された衿パーツ及び袖口パーツの図である。
図7は袖に袖口パーツを縫合した様子を示す図、図8は袖に袖口パーツを縫合した別形態の様子を示す図である。図9は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図10は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図11は衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図である。
図12は衿の構造を説明する断面図、図13は衿のラバープリント部分を示す図、図14は衿の構造を説明する断面図である。図15は衿パーツの別形態を示す図、図16は衿のラバープリント部分を示す図、図17は衿の構造を説明する断面図である。
図18は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図19は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図20は二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図、図21はヘンリーネックシャツ型の衣料の首廻りの図である。
【0016】
本発明に係る衣料は、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所に、他の部分と比較して大幅に伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する製品である。つまり、前記衣料は、該衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で構成される。
前記衣料として、例えば、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、或いはスウェットパーカー等の、伸縮するゴム編み(リブ編み)部分を有する衣料を挙げることができる。
【0017】
そして、前記衣料は、該衣料の構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料による捺染にてプリントされていることを特徴の一つとするものである。つまり、衣料のゴム編み部分に染色による模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせのプリントが施されているのである。
なお、染色とは、染料のもつ繊維材料への染着性を利用して、繊維等に染料を収着又は固着させる技術である。染料は水溶液として分子状に拡散したのち、染料の繊維に対してもつ特定の親和性(染着性)によって、繊維上に収着又は固着されるものであり、繊維材料に顔料を固着材で固定する技術である顔料捺染は前記染色には含まれない。
【0018】
ここで、前記衣料の製造方法について、衣料として半袖Tシャツを例に挙げて説明する。
図1及び図2に示すように、前記Tシャツ10は、前身頃11と、後ろ身頃12と袖13・13とが縫製されて成り、前記前身頃11と後ろ身頃12にて形成される襟刳り17に縫合される衿15(首廻り)と、前記袖13・13の袖口16・16(袖13の裾13aに延設された飾り布)とに、ゴム編み部分を有する製品である。なお、図1及び図2において、前記ゴム編み部分は薄墨塗りで示されている。
但し、本発明に係る衣料において、ゴム編み部分は衿15及び袖口16・16に限定されるものではなく、上述した通り、衿(首廻り)、袖口、身頃の裾、及び胴回りのうち何れか一カ所若しくは複数を組み合わせた箇所などに、衣料の機能性又は意匠性に応じて設けることができる。
【0019】
図3は前記衣料の製造の流れ図である。図3に示す通り、まず、Tシャツ10の各構成パーツが裁断される(S1)。
平編み地(天竺編み地)が、Tシャツ10の前身頃11、後ろ身頃12、及び左右の袖13・13のカッティングパターンに合わせて裁断され、前身頃11、後ろ身頃12及び袖13・13の各構成パーツが準備される。
また、ゴム編み地が、衿15と袖口16・16とのカッティングパターンに合わせて裁断され、衿15と袖口16・16の各構成パーツが準備される。以下、衿15の構成パーツを『衿パーツ25』と、袖口16・16の構成パーツを『袖口パーツ26』と記載する。
【0020】
図4に示すように、前記衿パーツ25は、長尺帯状であり、左右両端は略V字状に切り欠かれている。また、図5に示すように、前記袖口パーツ26は、長尺帯状である。
前記衿パーツ25と袖口パーツ26とは、何れも長尺方向がゴム編み地の横方向(より伸びる方向)となるように裁断される。
【0021】
なお、前記ゴム編み地は、リブ編みや畦(あぜ)編みのニット地を含む総称であり、基本の編みパターンは表目と裏目を交互に配列したゴム編みである。前記ゴム編み地は、表目のみが表面に現れる前記平編み地と比較して、表面の凹凸が大きくなる。また、前記ゴム編み地は、平編み地よりも一層伸縮性に富み、特に横の引っ張りに対して大きな収縮性を有する。
【0022】
次に、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に、染料による捺染(以下、『染料捺染』と記載する。)を施すための捺染糊が作られる(S2)。
前記捺染糊は、染料と助剤を糊と練り合わせたものである。配色チャートに則って、もっとも美しく、そして正確に、染め上がるように染料や助剤や糊が調合される。
前記捺染糊に含まれる糊は、捺染作業時の便宜を図って、染料に或程度の粘度を付与するために含有されるものであり、糊成分としては例えばデンプン質のものが用いられる。
【0023】
続いて、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に染料捺染を施すが、その前に、Tシャツ10を構成する各構成パーツの地色を染め上げることもできる。この地色染めには、拡布状態で連続的に染めるパディング染色や、容器内で染料液に浸して染める液流染色などを採用することができる。
【0024】
ここで、前記衿パーツ25及び袖口パーツ26に染料捺染にて、模様、絵柄、又は文字のプリントが施される。
まず、前記衿パーツ25又は袖口パーツ26が、縫合されるときの伸展状態(図4下段)で捺染台に地張りされる(S3)。
【0025】
前記衿パーツ25は、長尺方向(編み目の横方向)に伸ばされた状態で前身頃11及び後ろ身頃12の肩部分が縫合されて成る襟刳り17(首廻り)に縫合される。本実施例においては、衿パーツ25は定常状態で長尺方向に40cmの帯状であるが、これが長尺方向に54cmに伸展された状態で、捺染台に地張りされる。
【0026】
一方、袖口パーツ26は、本実施例においては、殆ど伸展されない状態で、袖裾13aに縫合される。従って、袖口パーツ26は殆ど伸展されない状態で、捺染台に地張りされる。
【0027】
上記のように、染料捺染が施される構成パーツ(生地)が、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りされて、縫合されるときの伸展状態で捺染糊が捺染される。このことによれば、衿15又は袖口16・16のゴム編み部分に模様、絵柄、又は文字のプリントを施したユニークなデザインを備えるTシャツ10を、製品となった状態での前記プリントがぼやけたり歪んだりすることなく美麗に体裁良く仕上げられることとなる。
【0028】
上述のように捺染台に地張りされたパーツの上に、スクリーン型が載置され、該スクリーンの上から捺染糊が構成パーツに印捺される(S4)。前記スクリーン型は、順次移動させてパーツに所望のデザインにて捺染糊が印捺される。また、異なる色の捺染糊を同一のスクリーン型を用いて印捺して、深みのある色彩表現に仕上げられる。つまり、パーツにスクリーン印刷が施される。
【0029】
上記説明による染料捺染の作業ではハンドプリントが採用されているが、捺染機を用いた機械捺染を採用することもできる。
捺染機としては、ハンドプリントと同様にスクリーン型を用いて捺染を行うスクリーン型捺染機や、エッチングのようなローラの凹版で捺染を行うローラ捺染機等を採用することができる。
【0030】
続いて、捺染糊が印捺された構成パーツが、高温或いは高圧の蒸気で加熱(スチーミング)される(S5)。これにより、構成パーツの生地の繊維に染料がよく浸透するとともに、染着することとなる。
さらに、前記構成パーツから、未染着の染料や捺染糊が、洗剤や還元剤などを用いて完全に洗浄(ソーピング)され(S6)、前記構成パーツが乾燥される(S7)。
最後に、例えば図6に示すように、染色による模様、絵柄、又は文字のプリントが施された衿パーツ25及び袖口パーツ26を用いて、Tシャツ10の縫製が行われる(S8)。
【0031】
Tシャツ10の縫製において、袖13・13の縫合から行われる。
まず、袖13・13を筒状に縫合する袖縫いが行われる。
続いて、各袖13の袖裾13aに袖口パーツ26が縫合される。このとき、例えば図7に示すように、各袖13の袖裾13aが折り返され、この折り返し部分と合わせて袖口パーツ26が縫合される。袖口パーツ26の裾26cの端部は切り放しとされるため、ほつれないように、前記裾26cの端部の周縁に沿ってライン状にラバー調樹脂26bがプリントされる。つまり、図7において斜線で示される部分にラバー調樹脂26bがプリントされる。
【0032】
なお、前記ラバー調樹脂を使用するラバー樹脂捺染は、顔料を使用する顔料捺染と比較して柔らかく仕上がるものであり、本実施例では、袖口パーツ26の染料捺染が済んだ後に、袖口パーツ26の表裏面いずれかに無色透明のラバー調樹脂が捺染される。
ラバー調樹脂捺染では、まず、生地にラバーインクが印捺され、続いて、該ラバーインクが加熱される。この加熱により、ラバーインクがラバーへと変化し、生地にラバー調樹脂が定着することとなる。
【0033】
但し、図8に示すように、袖口パーツ26の裾26cを切り放しとせず、袖口パーツ26’を短尺方向に重ね合わせるように折ったものを、折り返された袖13の袖裾13aとともに縫合することもできる。
【0034】
前記袖13・13部分の縫製に続いて或いは同時に、前身頃11と後ろ身頃12の肩剥ぎ及び脇の縫合が行われる。そして、図9に示すように、前身頃11及び後ろ身頃12にて形成される襟刳り17に、衿パーツ25が縫合される。前記衿パーツ25は、短尺方向に重ね合わせるようにして折ったものが、長尺方向に伸ばされた状態で、前身頃11及び後ろ身頃12に縫合される。
さらに、前記前身頃11と後ろ身頃12とに袖13・13が縫合されて、身頃の裾の処理が行われ、Tシャツ10の縫製が終了する。
【0035】
上記の衣料の製造方法によれば、例えば図9〜図11に示すように、染色による模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせのプリントが施されたゴム編み部分を有する衣料が製造される。ゴム編み部分は、平編み地で成る衣料の他の部分と比較して表面の凹凸が大きいが、顔料捺染ではなく染料捺染が採用されて表面のみならず繊維の中まで染料が染着するので、ゴム編み部分が伸びて拡がっても色むらなく見栄えの良い製品となる。さらに、衣料のゴム編み部分を縫合されるときの伸展状態として捺染糊を印捺するので、製品となった衣料において染色による模様、絵柄、又は文字のプリントは、境界が意図に反してぼやけたり歪んだり、意図に反する色具合となったりすることがないのである。
【0036】
なお、染色によるプリントが施された衿パーツ25で成る衿15を備えた衣料は、本実施例のTシャツのように丸首のものに限定されず、例えば図21に示すように、丸首のTシャツやセーターの正面に、胸あたりまでの開きを備えたデザインのヘンリーネックシャツとすることもできる。
【0037】
次に、前記染色によるプリントが施された衿パーツで成る衿15の構造のバリエーションを紹介する。
【0038】
図12に示すように、衿15を、上記衿パーツ25である第一の衿パーツ25と、該第一の衿パーツ25よりも表面側に配置され、且つ、前記第一の衿パーツ25よりも襟刳り17からの立ち上がりの高さが低い第二の衿パーツ32とで構成することができる。つまり、衿15が内側の構成パーツ(第一の衿パーツ25)と、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツ(第二の衿パーツ32)との二層で構成されるのである。
【0039】
前記第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32とは、何れも衣料のゴム編み部分に該当し、何れか一方若しくは両方に、上記衣料の製造方法に則って染色による模様、絵柄、又は文字のプリントが施される。
第二の衿パーツ32は、意匠のために前中央部に略V字状の切り欠き32aが形成される。
【0040】
上記のように二枚の衿パーツで成る衿の一例として、図13及び図14に示すように、前身頃11(又は後ろ身頃12)の襟刳り17を折り返したところに、第二の衿パーツ32と、短尺方向に重ね合わせるようにして折った第一の衿パーツ25とを、合わせて縫合して、衿15としたものを挙げることができる。この場合、衿15のボリュームを抑えるためやラフさを表現するデザインのために、第二の衿パーツ32の縁32cは切り放しとされ、該第二の衿パーツ32はその周縁に沿ってラバー調樹脂32bがプリントされる。つまり、図13及び図14に、斜線で示されている部分にラバー調樹脂32bがプリントされる。なお、第二の衿パーツ32において前中央部に略V字状の切り欠き32aを形成する部分には、前記切り欠き32a部分の生地に張りを持たせるためにラバー調樹脂32bを拡張してプリントすることが望ましい。
【0041】
また、二枚の衿パーツで成る衿の一例として、図15に示すように、第一の衿パーツ25(25A)を折り重ねない一枚物に形成して、図16及び図17に示すように、前身頃11(又は後ろ身頃12)の襟刳り17を折り返したところに、第二の衿パーツ32と、第一の衿パーツ25とを、合わせて縫合して、衿15としたものを挙げることができる。この場合、衿15のボリュームを抑えるためやラフさを表現するデザインのために、第二の衿パーツ32の縁32c並びに第一の衿パーツ25Aの縁25cは切り放しとされ、第二の衿パーツ32及び第一の衿パーツ25Aはその周縁に沿ってラバー調樹脂32b・25bがプリントされる。つまり、図16及び図17に、斜線で示されている部分にラバー調樹脂がプリントされる。なお、第二の衿パーツ32において前中央部に略V字状の切り欠き32aを形成する部分には、前記切り欠き32a部分に張りを持たせるためにラバー調樹脂32bを拡張してプリントすることが望ましい。
【0042】
上記のようにして、第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32との二層で構成された衿15をTシャツに備えて、例えば、図18〜図20に示すように、模様、絵柄、又は文字のプリントを自在に組み合わせて意匠を構成することができる。第一の衿パーツ25と第二の衿パーツ32との二重構造となるので、模様、絵柄、又は文字のプリントと衿パーツの形状を含めて意匠の幅をより拡げることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例に係るTシャツの正面図。
【図2】本発明の一実施例に係るTシャツの背面図。
【図3】Tシャツの製造の流れ図。
【図4】衿パーツの形状を示す図。
【図5】袖口パーツの形状を示す図。
【図6】染色によるプリントが施された衿パーツ及び袖口パーツの図。
【図7】袖に袖口パーツを縫合した様子を示す図。
【図8】袖に袖口パーツを縫合した別形態の様子を示す図。
【図9】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図10】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図11】衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図12】衿の構造を説明する断面図。
【図13】衿のラバープリント部分を示す図。
【図14】衿の構造を説明する断面図。
【図15】衿パーツの別形態を示す図。
【図16】衿のラバープリント部分を示す図。
【図17】衿の構造を説明する断面図。
【図18】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図19】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図20】二枚の衿パーツで成る衿を備えた衣料の首廻りの図。
【図21】ヘンリーネックシャツ型の衣料の首廻りの図。
【符号の説明】
【0044】
10 Tシャツ
11 前身頃
12 後ろ身頃
13 袖
15 衿
16 袖口
25 衿パーツ
26 袖口パーツ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、
前構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされていることを特徴とする衣料。
【請求項2】
前記衣料が、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、又はスウェットパーカーの何れか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の衣料。
【請求項3】
衿が伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、
前記衿が内側の構成パーツと、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツとの二層で構成され、
前記内側の構成パーツ及び前記外側の構成パーツのうち、何れか一方又は双方に模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされていることを特徴とする衣料。
【請求項4】
前記ゴム編み地で構成された構成パーツの端部が切り放しとされ、該切り放しとされた端部にラバー調樹脂がプリントされていることを特徴とする、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の衣料。
【請求項5】
衿、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み部分を有する衣料の製造方法であって、
前記衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りするステップと、
前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺するステップと、
前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱するステップと、
前記構成パーツを洗浄するステップと、
前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料を縫製とするステップとを、
含むことを特徴とする衣料の製造方法。
【請求項1】
衣料に備えられる衿、袖口、裾周り、及び胴回りの各構成パーツのうち何れか一つ又は複数の組み合わせが伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、
前構成パーツに模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされていることを特徴とする衣料。
【請求項2】
前記衣料が、Tシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、又はスウェットパーカーの何れか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の衣料。
【請求項3】
衿が伸縮するゴム編み地で成る衣料であって、
前記衿が内側の構成パーツと、前記内側の構成パーツよりも丈の短い外側の構成パーツとの二層で構成され、
前記内側の構成パーツ及び前記外側の構成パーツのうち、何れか一方又は双方に模様、絵柄、及び文字のうち何れか一つ又は複数の組み合わせが染料捺染にてプリントされていることを特徴とする衣料。
【請求項4】
前記ゴム編み地で構成された構成パーツの端部が切り放しとされ、該切り放しとされた端部にラバー調樹脂がプリントされていることを特徴とする、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の衣料。
【請求項5】
衿、袖口、裾周り、及び胴回りのうち何れか一つ又は複数の組み合わせに伸縮するゴム編み部分を有する衣料の製造方法であって、
前記衣料のゴム編み部分のカッティングパターンに合わせてゴム編み地を裁断して得た構成パーツを、縫合されるときの伸展状態で捺染台に地張りするステップと、
前記構成パーツに染料を含む捺染糊を印捺するステップと、
前記構成パーツを高温或いは高圧の蒸気で加熱するステップと、
前記構成パーツを洗浄するステップと、
前記構成パーツを所定部位に縫合して衣料を縫製とするステップとを、
含むことを特徴とする衣料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−214829(P2008−214829A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57160(P2007−57160)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(399088474)シー・コム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(399088474)シー・コム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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