説明

衣服

【課題】 絞り紐の端部を把持して引出す操作がし易く、しかもその操作によってフードの前開口辺部が顔面にフィットし易い衣服の提供。
【解決手段】 衣服本体を着用者が着用して該着用者の頭部を、その後方から前方へ向けて、顔面を露出させるように覆うフードが衣服本体に一体または着脱自在に別体に設けられ、該フードには着用者の顔面を露出させることを可能とする前開口辺部が設けられ、該前開口辺部を着用者の顔面周辺部に密着させるための絞り紐が前開口辺部に設けられた挿通路に挿通され、該挿通路には、前開口辺部における着用者の顎よりも下方に相当する位置から絞り紐の端部を導出するよう導出口部が形成されている衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防寒用の衣服等の衣服に関し、特に着用者の頭部を後方から前方へ向けて覆うフードを有する上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、着用者の頭部を後方から前方へ向けて覆うフードを有する衣服が種々提案されている。フードは、着用者の頭部に着脱自在とする必要があり、しかも装着した後は、頭部との間に風雨が入らないようにフィットさせることが好ましい。このため、フードの前開口辺部を頭部の顔面の形状に沿わすための絞り紐、例えばゴム紐が、フードの前開口辺部に挿通されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来例では、絞り紐は前開口辺部の一部に沿うように挿通されて、その端部は頭部の顔面の側部に相当する部位から導出されている。そして着用者は、フードの前開口辺部を着用者の頭部の顔面にフィットさせるべく、絞り紐の導出部分を手指で把持して絞り紐を前開口辺部からさらに引出すようにする。
【特許文献1】特開2003−201609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の衣服では、絞り紐はその端部が着用者の頭部の顔面の側部に相当する部位から導出されているから、着用者はフードの前開口辺部を顔面にフィットさせるために腕(手指)が絞り紐の端部位置に届くまで上げる必要がある。しかも、絞り紐の端部は頭部の顔面の側部に相当する部位から導出されているから絞り紐を手指で把持した後は前方へ引出して前開口辺部を絞るようにする動作が自然な動作となるものの、絞り紐の端部を前方へ引出すと、フードの前開口辺部が着用者の頭部の顔面にフィットしにくい。
【0004】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、絞り紐の端部を把持して引出す操作がし易く、しかもその操作によってフードの前開口辺部が顔面にフィットし易い衣服の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の衣服は、衣服本体を着用者が着用して該着用者の頭部を、その後方から前方へ向けて、顔面を露出させるように覆うフードが衣服本体に一体または着脱自在に別体に設けられ、該フードには着用者の顔面を露出させることを可能とする前開口辺部が設けられ、該前開口辺部を着用者の顔面周辺部に密着させるための絞り紐が前開口辺部に設けられた挿通路に挿通され、該挿通路には、前開口辺部における着用者の顎よりも下方に相当する位置から絞り紐の端部を導出するよう導出口部が形成されていることを特徴としている。
【0006】
上記構成において、着用者が衣服を着用して、顔面を露出するよう着用者がその頭部に後方から前方に向けてフードを被る。前開口辺部を着用者の顔面周辺部に密着させるには、絞り紐の端部を導出口部からさらに引出すことで可能になるが、このとき絞り紐を挿通している挿通路には、前開口辺部における着用者の顎よりも下方に相当する位置から絞り紐の端部が導出されているから、絞り紐が顔面の側部に相当する部位から導出されている場合に比べて着用者は低い位置で絞り紐を引出すようになって、その操作が楽になる。
さらに、前方に引出していた場合では着用者の頭部の顔面周辺部にフィットしにくい状態が生じていたが、絞り紐の端部が顎よりも下方に相当する位置にある構成として着用者が衣服を着用して絞り紐の端部を下方に引出すように操作すれば、前開口辺部が顔面周辺部のほぼ全体に沿うようになって、しかも前開口辺部が顔面周辺部のほぼ全体にフィットし易くなる。
【0007】
本発明の衣服では、挿通路は前開口辺部に沿う細長の袋状に形成され、挿通路から前方に庇部材が突出され、絞り紐の端部は導出口部から導出されて且つ庇部材の下端部に形成された引出穴からその表側に導出されていることを特徴としている。
上記構成においては庇部材があるから、その分だけ風雨が顔面に当たるのを抑制することができ絞り紐の端部を引出穴から引出すことで、挿通路および庇部材の双方が絞られ、着用者の顔面の下部を大きな面積で覆う。
【0008】
本発明の衣服は、フードの前開口辺部を絞っていない状態において、導出口部と引出穴とは所定距離だけ離れていて導出口部と引出穴との間を通過する絞り紐の端部は露出していることを特徴としている。
上記構成において、フードの前開口辺部を絞っていない状態からフードの前開口辺部を絞ると、導出口部と引出穴とが隣合うように近付いて挿通路および庇部材が無理なく絞られる。
【0009】
本発明の衣服では、絞り紐は一本のゴム紐であり、該絞り紐の端部には、前開口辺部を絞った状態で該端部の導出口部からの導出量を、前開口辺部に係止して保持する止め具が設けられていることを特徴としている。
上記構成において、絞り紐の端部を導出口部から引出して前開口辺部を絞り、止め具を導出口部側に移動させて開口辺部に係止させることで、前開口辺部の絞り状態が保持される。
【0010】
本発明の衣服では、衣服本体に、フード対して着用者側にあって着用者の頸をその外周で覆う頸覆い部材が設けられ、該頸覆い部材を絞る絞り紐が、フードの絞り紐とは別に設けられるとともに、頸覆い部材を絞る絞り紐の操作部が頸覆い部材の外周部に導出して設けられていることを特徴としている。
上記構成によれば、フードの前開口辺部を絞る絞り紐と、頸覆い部材を絞る絞り紐との引出し操作部分が離れるから、フードあるいは頸覆い部材の絞り操作が分かり易くなる。
そして、頸覆い部材を絞る絞り紐の操作部が頸覆い部材の上後部に設けられているようにすれば、フードの前開口辺部を絞る絞り紐と、頸覆い部材を絞る絞り紐との引出し操作部分を可及的に離すことになるから、各絞り紐の操作を迷うことなく行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衣服では、絞り紐を挿通している挿通路には、前開口辺部における着用者の顎よりも下方に相当する位置から絞り紐の端部が導出されているから、絞り紐が顔面の側部に相当する部位から導出されている場合に比べて着用者は低い位置で絞り紐を引出すようになって、その操作が楽であり、絞り紐を前方に引出していた場合では着用者の頭部の顔面周辺部にフィットしにくい状態が生じていたが、絞り紐の端部が顎よりも下方に相当する位置にある構成として着用者が衣服を着用して絞り紐の端部を下方に引出すように操作すれば、前開口辺部が顔面周辺部のほぼ全体に沿うようになって、しかも前開口辺部が顔面周辺部のほぼ全体にフィットし易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る衣服の実施形態を、図1ないし図3に基づいて説明する。これらの図に示す衣服は、釣行等に際して着用される防寒用の上衣である。図1は上衣の要部の正面図、図2は要部の拡大正面図、図3は背面図である。なお、後述のフードは左右対称なので、図2を左右の兼用の図として、左右一方の符号と左右他方の符号の双方を示している。
図1に示すように、上衣1は衣服本体2にフード3を一体に備える。フード3の内側には衣服本体2にネックウオーマー部(頸覆い部材)4を一体に備える。フード3は、前方のみを開放した袋状に形成されており、衣服本体2を着用者5が着用して着用者5の頭部6を、その後方から前方へ向けて、顔面7を露出させるように覆うものである。
【0013】
フード3は、その下端前部が衣服本体2の左右の前身頃10,11の上端部に縫着され、下端側部が衣服本体2の肩部12の上端部に縫着され、下端後部が後身頃13の上端部に縫着されて衣服本体2と一体化されている。
ネックウオーマー部4は左右の前身頃10,11の上端部、肩部12の上端部、後身頃13の上端部に縫着されて、左右の前身頃10,11を、スライドファスナ10Aを閉じた状態で周方向に同一高さの円筒形状となって、着用者5の頸5Aをその外周で覆う。
【0014】
フード3はその前部に前開口辺部14が形成されていることで着用者5の顔面7を露出させることを可能としている。前開口辺部14は後述の第一絞り紐15を固定することなく挿通する挿通路部材16と、挿通路部材16から前側に向けて突出する庇部材17とから構成される。換言すると挿通路部材16はフード3全体の前側寄りに、顔面7周辺部に沿うように配置されており、その前側が庇部材17として構成されている。
【0015】
前述のように、前開口辺部14を着用者5の顔面周辺部に密着させるための前記第一絞り紐15が挿通路部材16に挿通されている。挿通路部材16は小径のパイプ状に形成されており、前開口辺部14における着用者5の顎5Aよりも下方に相当する位置から第一絞り紐15の各端部20,21を導出するよう導出口部22,23が形成されている。第一絞り紐15の端部20,21はそれぞれ導出口部22,23から導出されて、しかも庇部材17の下端部に形成された引出穴24,25からその表側(人体21に対して外側)に導出されている。引出穴24,25は庇部材17の生地を保護すべく合成樹脂製のリング部材35が設けられている。
庇部材17は、左右中心側ほど挿通路部材16からの突出量が多くなるように設定されている。換言すれば、フード3を着用者5が着用した際に、着用者5の頭頂部側ほど側部に比べて庇部材17が前方に突出するよう形成されている。
【0016】
フード3の前開口辺部14を絞っていない状態において、導出口部22,23と引出穴24,25とは所定距離L1だけ離れていて導出口部22,23と引出穴24,25との間を通過する第一絞り紐15の端部20,21は露出している。
ここで、第一絞り紐15は一本のゴム紐であり、第一絞り紐15の両端部20,21を導出口部22,23から導出するようにして第一絞り紐15の途中が挿通路部材16を挿通している。第一絞り紐15の端部20,21には、前開口辺部14を絞った状態で端部20,21の導出口部22,23からの導出量を、前開口辺部14に係止して保持する止め具26,27が設けられている。この止め具26,27としてはスライド・ストッパが用いられ、端部20,21は止め具26,27の幅方向途中を挿通している。止め具26,27はそれぞれ左右の前身頃10,11の合せ部側に止め生地26a,27aを介して保持されている。したがって、着用者5が上衣1を着用しスライドファスナ10Aを閉じた状態では、止め具26,27(端部20,21)は着用者5の中心側にある。
【0017】
さらに具体的には、スライドファスナ10Aの前側には、スライドファスナ10Aを閉じた状態で風雨の侵入を防止するための左右の前立て部材11A,11Bが、ネックウオーマー部4を含む衣服本体2の上下方向(丈方向)に亘って設けられており、止め生地26a,27aの基端部は前立て部材11A,11Bの縫着基端部に併せてそれぞれ左右の前身頃10,11に縫着されている。
第一絞り紐15の端部20,21の先端には、第一絞り紐15の端部20,21を引出す際に着用者5等が手指で把持する摘み30,31が固着されている。この摘み30,31によって、止め具26,27から第一絞り紐15の端部20,21が抜け出るのを防止するようにもなっている。
【0018】
ネックウオーマー部4には、これを単独で絞るための手段を有している。すなわちフード3の前開口辺部14とは別に絞るための第二絞り紐50が、ネックウオーマー部4の上部に挿通されるようにして設けられている。第二絞り紐50の各端部50a,50bはネックウオーマー部4における合せ部側に内装固定されている。第二絞り紐50としてゴム紐が使用されている。
ネックウオーマー部4の上後部にリング部材51に保護された導出穴52が形成されており、この導出穴52から第二絞り紐50の途中部分が引出されてこの引出された部分が操作部53とされている。操作部53は止め具54に挿通されてループ状に設けられている。止め具54として、スライド・ストッパが用いられている。すなわち止め具54は、ネックウオーマー部4の生地に外側から係止してネックウオーマー部4の上部を絞った状態を保持するものである。
絞り量を保持するための前記スライド・ストッパは何れも一般的な構成を有するものであり、ストッパ本体に絞り紐を挿通して、ストッパ本体に内蔵するスプリングによって押圧操作部を、絞り紐がスライド・ストッパに固定されるよう付勢しているものである。したがって、絞り紐をスライド・ストッパに対してスライドするには、前記スプリングの弾性に抗して押圧操作部を押圧することで可能となる。
【0019】
上記構成において、着用者5は上衣1を着用して、スライドファスナ10Aを閉じ、ネックウオーマー部4を絞る場合は、手指で操作部53を把持しつつ止め具54を操作、すなわち押圧操作部を押圧して操作部53を後方や上方に引くことで第二絞り紐50を導出穴52から引出し、止め具54を導出穴52側へ移動することでネックウオーマー部4が着用者5の頸5A周りに絞られ、止め具54を操作、すなわち押圧操作部を押圧解除することで、絞り状態が保持される。
【0020】
フード3を被って前開口辺部14を絞る場合では、先ず着用者5は第一絞り紐15の端部20(21)や摘み30(31)を手指で把持する。このとき第一絞り紐15の端部20(21)は、着用者5の顎5Aよりも下方に相当する位置において導出口部22(23)から導出されているから、着用者5は無駄に腕を持上げることなく第一絞り紐15の端部20(21)を把持することができる。
さらに、着用者5は止め具26(27)を把持して操作、すなわち押圧操作部を押圧し、第一絞り紐15の端部20(21)を、例えば下方や、斜め下方等に向けて引く。この場合、止め具26(27)は左右の前身頃10,11の合せ部側に止め生地26a(27a)を介して保持されることで無駄に動かないから着用者5は止め具26(27)を幅方向中心側で安定した状態で操作することができる。
【0021】
そして止め具26(27)を庇部材17側である上方に移動させ、庇部材17を押上げるようにすると、導出口部22(23)と引出穴24(25)とは所定距離L1だけ離れているから、先ず庇部材17の下部が絞られて所定距離L1がなくなるようになって、続いて挿通路部材16が絞られる。
このように第一絞り紐15はその端部20(21)が着用者5の顎5Aよりも下方にあって、前開口辺部14を下方から上方へ向けて絞るようになるから、前開口辺部14の下部は着用者5の顎5Aに係るようにして絞られ、したがって着用者5の顔面7周辺部に密着し易い。
このため防寒性に優れ、水の侵入も効果的に防止することができる。前開口辺部14の絞り状態を保持するためには、止め具26(27)を庇部材17の下部に当てた状態で操作、すなわち押圧操作部を押圧解除することで可能となる。
【0022】
さらに、本発明の実施形態によれば、第一絞り紐15と第二絞り紐50の操作部分を一箇所にまとめるのではなく可及的に離してあることにより、何れの操作をするのかが着用者5にとって分かり易い。
したがって、第一絞り紐15と第二絞り紐50の何れの操作をするのかが着用者5にとって分かり易くするために、第一絞り紐15の操作部は上記実施形態のままで、第二絞り紐50の操作部53をネックウオーマー部4の側方に配置するように構成することも可能である。
上記実施形態では、フード3は衣服本体2に一体的に形成されている場合を示したが、図示しないが、例えばフード3をスライドファスナによって衣服本体2に着脱自在に構成した上衣についても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の上衣の要部の正面図
【図2】同じく要部の拡大正面図
【図3】同じく背面図
【符号の説明】
【0024】
1…上衣、2…衣服本体、3…フード、4…ネックウオーマー部、5…着用者、6…頭部、7…顔面、10,11…前身頃、10A …スライドファスナ、12…肩部、14…前開口辺部、15…第一絞り紐、16…挿通路部材、17…庇部材、20,21…端部、22,23…導出口部、24,25…引出穴、26,27…止め具、50…第二絞り紐、53…操作部、54…止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体を着用者が着用して該着用者の頭部を、その後方から前方へ向けて、顔面を露出させるように覆うフードが衣服本体に一体または着脱自在に別体に設けられ、該フードには着用者の顔面を露出させることを可能とする前開口辺部が設けられ、該前開口辺部を着用者の顔面周辺部に密着させるための絞り紐が前開口辺部に設けられた挿通路に挿通され、
該挿通路には、前開口辺部における着用者の顎よりも下方に相当する位置から絞り紐の端部を導出するよう導出口部が形成されていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
挿通路は前開口辺部に沿う細長の袋状に形成され、挿通路から前方に庇部材が突出され、絞り紐の端部は導出口部から導出されて且つ庇部材の下端部に形成された引出穴からその表側に導出されていることを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項3】
フードの前開口辺部を絞っていない状態において、導出口部と引出穴とは所定距離だけ離れていて導出口部と引出穴との間を通過する絞り紐の端部は露出していることを特徴とする請求項2記載の衣服。
【請求項4】
絞り紐は一本のゴム紐であり、該絞り紐の端部には、前開口辺部を絞った状態で該端部の導出口部からの導出量を、前開口辺部に係止して保持する止め具が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の衣服。
【請求項5】
衣服本体に、フード対して着用者側にあって着用者の頸をその外周で覆う頸覆い部材が設けられ、該頸覆い部材を絞る絞り紐が、フードの絞り紐とは別に設けられるとともに、頸覆い部材を絞る絞り紐の操作部が頸覆い部材の外周部に導出して設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の衣服。
【請求項6】
頸覆い部材を絞る絞り紐の操作部が頸覆い部材の上後部に設けられていることを特徴とする請求項5記載の衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−161882(P2009−161882A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1021(P2008−1021)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】