説明

衣類における首筋部分の換気構造

【課題】着衣(衣類)に風や圧力が作用した場合でも着衣の内部の通気乃至換気を確実に行える換気構造を提供する。
【解決手段】衣類の首筋部分に立ち上がり部分を有する襟部分を、首筋に対面する内側生地14と、内側生地に上端部が連結されて外面に現れる外側生地16と、両生地間に配設される中間生地15とを有し、内側生地は通気性を有する網地とし、中間生地は他の生地より硬く通気性を有しない芯地材とし、当該芯地材の上端部と前記内側生地と外側生地との縫着部分の間に空間20が形成されるように設けられるとともに、外側生地の下端部は衣類本体の襟ぐり10部分若しくは中間生地の下部に少なくとも1箇所で連結して非連結箇所を排気口18にすることにより内側生地から前記排気口との間に通気路21を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類における首筋部分の換気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類として、例えば雨天用の合羽等では風雨の進入を防止するために通水性のない合成樹脂シートの素材を上着状に形成してある。
この通水性のない合成樹脂シートは一般に織布の表面、裏面の少なくとも一面を樹脂コーティングするようにしてあり、こうしたものでは、通水性はもちろんのこと通気性もないものとなっている。
したがって、こうした合成樹脂シートで形成された合羽を着用するとその内部には熱気が溜まり、結露や蒸れを生じたりする。
こうした問題を解決するために特許文献1に示すように内部の熱気を逃がすための通気乃至換気構造を身ごろ部分に設けるようにしたものが提案されている。
【0003】
この特許文献1では、前身頃部分にネット状の編地とその外側に上半部にネット状の編地を連結した通気性と通水性を有しない中間生地とその外側に前記中間生地の上半部のネット状の編地部分を覆うための通気性と通水性を有しない外側生地を設けた構造のものが開示されている。
【0004】
ところがこうした内部の熱気を逃がすための通気乃至換気構造のものでは、例えば自転車や単車に乗るときに使用する場合、前方から風圧を受けると換気作用がまったく機能しなくなるという問題があった。
このことは、トラック競技の練習等のために使用するウインドブレーカー等のスポーツウェアについても、同様の問題が生じる。
また、こうした構造を例えば医療介護用の衣類に実施する場合には、布団や毛布等、寝具の重さが通気乃至換気構造に作用すると、上記と同様に換気作用がまったく機能しなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3136886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて提案されたものであって、着衣(衣類)に風や圧力が作用した場合でも着衣の内部の通気乃至換気を確実に行える換気構造を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造は、衣類の首筋部分に立ち上がり部分を有する襟部分を、首筋に対面する内側生地と、内側生地に上端部が連結されて外面に現れる外側生地と、両生地間に配設される中間生地とを有し、内側生地は通気性を有する網地とし、中間生地は他の生地より硬く通気性を有しない芯地材とし、当該芯地材の上端部と前記内側生地と外側生地との縫着部分の間に空間が形成されるように設けられるとともに、外側生地の下端部は衣類本体の襟ぐり部分若しくは中間生地の下部に少なくとも1箇所で連結して非連結箇所を排気口にすることにより内側生地から前記排気口との間に通気路を形成したことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造では、衣類がレインコート若しくは医療用乃至介護用ウェアまたはスポーツウェア、あるいは防寒用衣料であることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造は、衣類の首筋部分に立ち上がり部分を有する襟部分を、首筋に対面する内側生地と、内側生地に上端部が連結されて外面に現れる外側生地と、両生地間に配設される中間生地とを有し、内側生地は通気性を有する網地とし、中間生地は他の生地より硬く通気性を有しない芯地材とし、当該芯地材の上端部と前記内側生地と外側生地との縫着部分の間に空間が形成されるように設けられるとともに、外側生地の下端部は衣類本体の襟ぐり部分若しくは中間生地の下部に少なくとも1箇所で連結して非連結箇所を排気口にすることにより、内側生地から前記排気口との間に通気路を形成してあるので、着衣に風や圧力が作用した場合でも衣類の内部の通気乃至換気を確実に行える。
【0010】
これにより、レインコートはもとより、医療衣類やスポーツウェア等に幅広く実施することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】は、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造を実施したレインコートを着用した状態の全体斜視図である。
【図2】は、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造を実施したレインコートを着用した状態の首筋部分の斜視図である。
【図3】は、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造を実施したレインコートの襟部分を開いた状態の斜視図である。
【図4】は、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明にかかる衣類における首筋部分の換気構造を実施したレインコートを着用した状態の全体斜視図、図2はその首筋部分の斜視図、図3は首筋部分の換気構造を実施したレインコートの襟部分を開いた状態の斜視図であって、図中符号1はレインコートを全体的に示す。
このレインコート1は、裏面に合成樹脂をコーティングしたポリエステル繊維で織成された樹脂シート2で背中部分3と左右の前身ごろ部分4、肩部分5および袖部分6を縫製により連結して、前面部分にファスナ7で開閉できる前開きのレインコートに形成されており、表面にはフッ素樹脂をコーティングした一般的な形状をしたものとなっている。
上記左右の前身ごろの下部には前記樹脂シート2と同種の生地で形成されたポケット8が貼り付けられており、左右の前身ごろ部分4および肩部分5の内側には、図3に示すように、結露や張り付きを防止するために、ポリエステル繊維で編成されたネット生地9がこのレインコート1の内方(裏面)に張設されている。
【0014】
そして、左右の前身ごろ部分4および肩部分5の上端には襟ぐり10が形成され、この襟ぐり部分10には首筋部分11を換気するための、換気構造12を有する立て襟13が設けられている。
この首筋部分11の換気構造12は、図4に示すように、襟ぐり10部分に、首筋部分11に対面する内側生地14と、その外側に配設される中間生地15と、この中間生地15のさらに外側に配設された外側生地16とからなる。
内側生地14は合成樹脂繊維で粗めのネット状に編成された網地で形成されており、下端部分が襟ぐり10部分に縫着されている。
内側生地14の上端部は外側生地16の上端部に縫着されており、この外側生地16は、合成樹脂をコーティングしたポリエステル繊維で織成された樹脂シートで形成されるとともに、この外側生地16の下端部は数箇所(適宜箇所)を襟ぐり10部分に縫着により連結され、連結部分17の間の非連結箇所で開口する部分が後述する排気口18になっている。
【0015】
内側生地14と外側生地16との間に配設される中間生地15は、外側生地16と同様の生地を二つ折りにして上端部を縫着することにより座屈に対する強度を高めて立て襟13部分の芯材の作用をするようにしてある。
また、中間生地15の上端部は、襟ぐり10部分から内側生地14と外側生地16との縫着部分19に向けて深く入り込み、その入り込む量(高さ)は、その上端部と前記内側生地14と外側生地16との縫着部分19との間に空間20が形成される長さとなっている。
この中間生地15により、この立て襟13部分に図4に矢印で示すようなラビリンス状の排気用の通気路21が形成される。
【0016】
上記のように形成された首筋部分11の換気構造12では、身体で発生した熱気や湿気は首筋部分11に立ち上り、通気路21を介して外方に排出される。
すなわち、身体で発生した熱気や湿気は、網地で形成された内側生地14を透過して中間生地15の上方の空間20から外側生地16側に流れこみ、排気口18から外方に放出される。
これにより、例えば単車や自転車に乗ってからだの前面から風圧を受けているような場合でも、換気構造12の通気作用は悪影響を受けることがないので、身体は常に爽快に維持されるのである。
【0017】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、レインコー1を形成する素材は塩化ビニル等のシートで形成することができるのはもちろんのこと、芯材となる中間生地15は固めの非通気性を有する素材であれば実施することができるのは言うまでもないことである。
さらに、本発明にかかる首筋部分11の換気構造12はレインコート1にのみ実施されるものではなく、例えばウインドブレーカ等のスポーツウェアや介護用ないし医療用の衣料、あるいは防寒用衣料等、立て襟(いわゆるスタンドカラー)および襟部分に立ち上がり部分を備えた衣料、若しくは使用時に立ち上がり部分が形成されるような衣料であれば当該部分に本発明を実施することができるのは勿論のことである。
【0018】
スポーツウェアに実施すると、前述したのと同様に運動中に風圧を受けてもスポーツウェア内の熱気や湿気が当該換気構造12部分から放出されてウェア内の快適性は維持される。
また、介護用ないし医療用の衣料に実施した場合には、寝具等の重みが衣類に作用していても熱気や蒸れが換気構造12部分から外部に放出することができる。
加えて、上記実施の形態では、外側生地16の下端縁を襟ぐり10を止つける箇所は、排気口18を形成できればよく、その数は少なくとも1つ以上であればよい。
【符号の説明】
【0019】
1・・・レインコート
2・・・樹脂シート
3・・・背中部分
4・・・身ごろ部分
5・・・肩部分
6・・・袖部分
7・・・ファスナ
8・・・ポケット
9・・・ネット生地
10・・・襟ぐり
11・・・首筋部分
12・・・換気構造
13・・・立て襟
14・・・内側生地
15・・・中間生地
16・・・外側生地
17・・・連結部分
18・・・排気口
19・・・縫着部分
20・・・空間
21・・・通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類の首筋部分に立ち上がり部分を有する襟部分を、首筋に対面する内側生地と、内側生地に上端部が連結されて外面に現れる外側生地と、両生地間に配設される中間生地とを有し、内側生地は通気性を有する網地とし、中間生地は他の生地より硬く通気性を有しない芯地材とし、当該芯地材の上端部と前記内側生地と外側生地との縫着部分の間に空間が形成されるように設けられるとともに、外側生地の下端部は衣類本体の襟ぐり部分若しくは中間生地の下部に少なくとも1箇所で連結して非連結箇所を排気口にすることにより内側生地から前記排気口との間に通気路を形成したことを特徴とする衣類における首筋部分の換気構造。
【請求項2】
衣類が合羽若しくは医療用乃至介護用ウェアまたはスポーツウェア、あるいは防寒用衣料であることを特徴とする請求項1に記載の首筋部分の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−231423(P2011−231423A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100717(P2010−100717)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(503024136)トオケミ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】