説明

表示パネルの異物除去方法

【課題】異物除去の効率を維持しながら、表示パネルに付着したイオン性不純物を迅速かつ確実に除去する。
【解決手段】液晶表示パネル1に水を付与する水付与工程と、繊維からなる芯部7aと、芯部7aの周面を被覆し吸水機能を有する被覆部7bとを有し、自重の100倍以上の水を吸収可能な高吸水性繊維7を棒状部材8の先端部分に取り付けて構成した拭き取り棒9によって液晶表示パネル1を擦り、液晶表示パネル8に付着した異物6および水を拭き取る拭き取り工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示パネルの異物除去方法に係り、特に、表示パネルから人体に基因する異物等のイオン性不純物を除去するのに好適な表示パネルの異物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示パネルを構成するパネル基板には、表示パネルの表示に用いられる表示電極が形成されており、表示電極の一端部は、パネル基板の端子部に延設されて、外部電極に接続される電極端子とされている。
【0003】
ここで、表示パネルの端子部は露出されているため、表示パネルの製造工程や、表示パネルを表示装置に組み込む実装工程等において、電極端子が設けられた端子部にごみや塵、液晶の残渣の他、人体に基因する汗、唾液、ふけ等の種々の異物が付着するおそれがある。そして、このような異物は、端子部に設けられた電極端子の腐蝕等の原因となり、ひいては、外部電極との接続不良や各電極端子間の短絡等の原因となることから、従来より、端子部の異物を除去することが行われている。
【0004】
従来の端子部の異物除去方法としては、有機溶剤等の洗浄液を含ませた布や綿棒等によって端子部を拭くことにより、端子部に付着した異物を除去することが行われていた。また、洗浄液を含ませた布等により端子部を拭き取った後は、有機溶剤の揮発性によって洗浄液を揮発させることにより、端子部の乾燥を行っていた。
【0005】
このような端子部の異物除去方法によれば、端子部に付着した異物のうち、ごみ、塵、さらには液晶の残渣等の異物については、比較的容易に除去することが可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような有機溶剤等の洗浄液を用いた従来の端子部の異物除去方法によれば、ごみや塵等の異物を有効に除去することは可能であるが、汗や唾液等の人体基因の異物等のイオン性不純物を完全に除去することができない場合があった。そして、このようなイオン性不純物が端子部に残っていると、電極端子が腐蝕してしまうおそれがあるという問題を有していた。
【0007】
また、イオン性不純物を確実に除去するために、純水を用いて洗浄することも考えられるが、水は揮発性が低いため、乾燥させるために長い時間が必要となり、異物除去工程の効率、ひいては、表示パネルの製造工程や、実装工程の効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、異物除去の効率を維持しながら、表示パネルに付着したイオン性不純物を迅速かつ確実に除去することができる表示パネルの異物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る表示パネルの異物除去方法の特徴は、表示パネルに付着した異物を除去する表示パネルの異物除去方法において、前記表示パネルに水を付与する水付与工程と、自重の100倍以上の水を吸収可能な高吸水性材料からなる拭き取り部材によって前記表示パネルを擦り、前記表示パネルに付着した異物および水を拭き取る拭き取り工程とを有する点にある。
【0010】
この請求項1に記載の発明によれば、水付与工程において水を付与することにより、ごみや塵だけでなく唾液や汗等の人体基因の異物が固着してしまった場合であっても、これらの異物を確実に表示パネルから浮き上がらせることができる。また、拭き取り工程において、この表示パネルから浮き上がった異物を拭き取ることができると同時に、高吸水性材料によって迅速かつ確実に水を吸収して、拭き取ることができ、効率的に表示パネルから異物を除去するとともに表示パネルを乾燥状態とすることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明に係る表示パネルの異物除去方法の特徴は、前記高吸水性材料が、形状を保持する繊維からなる芯部と、前記芯部の周面を被覆し吸水機能を有する被覆部とを有する高吸水性繊維とされている点にある。
【0012】
この請求項2に記載の発明によれば、高吸水性繊維は、芯部が形状を保持する繊維であることから、吸水機能を有する被覆部により吸水した後も、繊維としての機能を備えた高吸水性材料であるため、このような高吸水性繊維を用いて、不織布を作製し、棒状部材の先端部分に不織布を取り付けることによって綿棒形状に形成された拭き取り棒を作製したり、または長尺の抜き取り布を作製することができる。この拭き取り棒や拭き取り布を用いると、異物を擦り取ることができるとともに水を吸収することができるので、効果的に表示パネルに付着した異物および水を拭き取ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明に係る表示パネルの異物除去方法によれば、水付与工程において表示パネルに付着した異物を確実に浮き上がらせることができるとともに、拭き取り工程において異物と水の拭き取りを同時に行うことができる。これにより、異物除去の効率を維持しながら、表示パネルに付着した異物、特に、イオン性不純物を迅速かつ確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る表示パネルの異物除去方法の一実施形態を図1から図3を参照して説明する。ここで、本実施形態においては、表示パネルとしての液晶表示パネルを構成するパネル基板における端子部に付着した異物を除去する液晶表示パネルの端子部の異物除去方法について説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、表示パネルにおける表示を行う表示部に付着した異物を除去する場合等に用いてもよい。
【0015】
図1は、本実施形態に係る液晶表示パネルの端子部の異物除去方法の一工程を示す模式的側面図である。
【0016】
図1に示すように、異物除去の対象となる液晶表示パネル1は、一対のパネル基板2a、2bを有し、両パネル基板2a、2bの相互に対向する内面であって表示を行う表示部には、図示しない表示電極が設けられている。両パネル基板2a、2bのうち一方のパネル基板2aは他方のパネル基板2bと比較して平面形状において大きく形成されて端子部3とされており、各表示電極は端子部3に延設されて電極端子5とされている。
【0017】
このような液晶表示パネル1の端子部3上の異物6を除去するには、まず、液晶表示パネル1の端子部3に水を付与する水付与工程を行う。この水付与工程において付与される水としては、溶解している物質が除去され、純度が100%の理論純水に近い純水や、超純水を用いることが好ましく、また、付与される水の温度は適宜決定される。さらに、水を付与する手段としては、水噴霧装置等により水を噴霧したり、水蒸気を吹き付ける等、既知の種々の水を付与する手段を用いることができる。
【0018】
次に、水が付与された液晶表示パネル1の端子部3を拭き取り部材によって擦る拭き取り工程を行う。
【0019】
拭き取り部材は、自重の100倍以上の水を吸収可能な高吸水性材料を有しており、図2(a)(b)に示すように、この高吸水性材料としては、アクリル繊維等の繊維からなり形状を保持する芯部7aと、芯部7aの周面を被覆して吸水機能を有する被覆部7bとを有する高吸水性繊維7を用いることが好ましい。具体的には、高吸水性繊維7として、多量の水を吸収することができるとともに、多少の圧力を加えても離水せず、吸水速度が速い日本エクスラン工業株式会社の超吸水性繊維(ランシール(登録商標)F)等が挙げられる。本実施形態においては、この高吸水性繊維7を用いて作製した不織布を棒状部材8の先端部分に取り付けることによって、拭き取り部材として綿棒形状に形成された拭き取り棒9によって、液晶表示パネル1の端子部3を擦る。
【0020】
また、本発明に係る表示パネルの異物除去方法において用いられる拭き取り部材は、前述の構成に限定されるものではない。例えば、図3に示すように、拭き取り部材として、高吸水性繊維7を用いて形成された長尺の抜き取り布を用いてもよい。この拭き取り布11を用いて拭き取り工程を行うには、拭き取り布11の一端部を供給ローラ12に巻回するとともに、他端部を巻取ローラ13に巻回し、押圧部材15によって前記拭き取り部材を液晶表示パネル1の端子部3に押し付けて、抜き取り部材または液晶表示パネル1を搬送させながら、拭き取り布11によって端子部3を擦る。
【0021】
これにより、端子部3に付着したごみや塵の他、人体基因の異物6を抜き取るとともに、水付与工程において付与された水を拭き取る。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0023】
本実施形態によれば、水付与工程において水を付与することにより、ごみや塵だけでなく唾液や汗等の人体基因の異物6が固着してしまった場合であっても、この異物6を確実に端子部3から浮き上がらせることができる。また、拭き取り工程において、この端子部3から浮き上がった異物6を拭き取ることができると同時に、高吸水性材料によって迅速かつ確実に水を吸収して、拭き取ることができ、効率的に端子部3から異物6を除去するとともに端子部3を乾燥状態とすることができる。
【0024】
したがって、水付与工程において異物6を確実に浮き上がらせることができるとともに、拭き取り工程において異物6と水の拭き取りを同時に行うことができるので、異物除去の効率を維持しながら、表示パネルに付着したイオン性不純物を迅速かつ確実に除去することができる。
【0025】
また、高吸水性材料として、形状を保持する繊維からなる芯部7aと、芯部7aの周面を被覆し吸水機能を有する被覆部7bとを有する高吸水性繊維7を用いており、この高吸水性繊維7は、芯部7aが形状を保持する繊維であることから、吸水機能を有する被覆部7bにより吸水した後も、繊維としての機能を備えている。このため、このような高吸水性繊維7を用いることにより、前述の拭き取り棒9や拭き取りに布を作製することができ、この拭き取り棒9や拭き取り布11を用いて効果的に端子部3に付着した異物6および水を拭き取ることができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更することが可能である。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
液晶表示パネルにおける電極端子が形成された端子部に、唾液を付着させ、100℃に加熱されたホットプレート上に液晶表示パネルを10分間載置して唾液を加熱し、端子部上に固着させた。
【0028】
このような唾液が固着した液晶表示パネルの端子部の異物を除去するにあたり、日本エクスラン工業株式会社の超吸水性繊維(ランシール(登録商標)F)により作成された不織布を棒の先端部分に巻き付けて拭き取り棒を作製した。そして、まず、液晶表示パネルの端子部上に数滴の水を滴下し、前記拭き取り棒を用いて端子部を擦った。この結果、拭き取り棒によって、端子部上に固着した唾液を全部拭き取って除去することができるとともに、端子部に付与された水を全部吸収させることができ、端子部を短時間で確実に乾燥状態とすることができた。
【0029】
(実施例2)
液晶表示パネルにおける電極端子が形成された端子部に、汗を付着させ、100℃に加熱されたホットプレート上に液晶表示パネルを10分間載置して汗を加熱し、端子部上に固着させた。
【0030】
このような汗が固着した液晶表示パネルの端子部の異物を除去するにあたり、日本エクスラン工業株式会社の超吸水性繊維(ランシール(登録商標)F)により作成された不織布を棒の先端部分に巻き付けて拭き取り棒を作製した。そして、まず、液晶表示パネルの端子部上に数滴の水を滴下し、前記拭き取り棒を用いて端子部を擦った。この結果、拭き取り棒によって、端子部上に固着した汗を全部拭き取って除去することができるとともに、端子部に付与された水を全部吸収させることができ、端子部を短時間で確実に乾燥状態とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る表示パネルの異物除去方法における拭き取り工程の一実施形態を示す模式的斜視図
【図2】(a)は、図1の拭き取り工程において用いられる拭き取り部材の超吸水性繊維における吸水前の状態を示す模式的斜視図、(b)は、(a)超吸水性繊維における吸水後の状態を示す模式的斜視図
【図3】本発明に係る表示パネルの異物除去方法における拭き取り工程の他の実施形態を示す模式的平面図
【符号の説明】
【0032】
1 液晶表示パネル
2a、b パネル基板
3 端子部
5 電極端子
6 異物
7 高吸水性繊維
7a 芯部
7b 被覆部
8 棒状部材
9 拭き取り棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルに付着した異物を除去する表示パネルの異物除去方法において、
前記表示パネルに水を付与する水付与工程と、
自重の100倍以上の水を吸収可能な高吸水性材料からなる拭き取り部材によって前記表示パネルを擦り、前記表示パネルに付着した異物および水を拭き取る拭き取り工程とを有することを特徴とする表示パネルの異物除去方法。
【請求項2】
前記高吸水性材料は、形状を保持する繊維からなる芯部と、前記芯部の周面を被覆し吸水機能を有する被覆部とを有する高吸水性繊維とされている請求項1に記載の表示パネルの異物除去方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−33181(P2008−33181A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209105(P2006−209105)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】