説明

表示体、粘着ラベル、転写箔及びラベル付き物品

【課題】高い偽造防止効果を達成可能な表示技術を提供する。
【解決手段】本発明の表示体10は、光透過性を有し、金属を含んだ前面隠蔽層11と、前記前面隠蔽層11と向き合い、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示すか又は互いに異なる偏光を透過光として射出する複数の領域12a,12bとを具備し、前記前面隠蔽層11及び前記複数の領域12a,12bは、使用時に、前記複数の領域12a,12bが前記前面隠蔽層11を間に挟んで観察者と向き合うように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止効果を提供する表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造防止手段として、ホログラム、回折格子及び多層膜などのOVD(Optical Variable Device)が使用されることがある。OVDは、光の干渉を利用して立体画像又は装飾画像を表示する。OVDが表示する像は、観察角度に応じた色の変化、所謂カラーシフトを生じる。
【0003】
OVDは、このように独特な視覚効果を有しているのに加え、その製造に高度な技術を必要とする。それ故、OVDは、クレジットカード、有価証券及び証明書類等において、偽造防止用の表示体として使用されている。また、最近では、スポーツ用品、コンピュータ部品などの電気製品及びソフトウェアパッケージなどの製品が真正品であることを証明する認証シール又はその製品のパッケージを封印する封印シールにおいても、OVDが使用されるようになった。
【0004】
このように、OVDは、高い偽造防止効果を達成するため、様々な物品で使用されている。また、OVDは、装飾効果などの偽造防止効果以外の目的でも広く使用されている。
【0005】
しかしながら、OVDが広く使用されるようになった結果、市販のOVDを加工して真正品に類似した視覚効果を得ることが容易になった。真正品と類似した視覚効果を有しているOVDが使用された場合、それが偽造品であることを見抜くのは困難である。
【0006】
特許文献1には、支持体上に、剥離層、ホログラム形成層、透過性薄膜層、印刷層、反射性薄膜層及び接着層を順次積層してなる転写箔が記載されている。ホログラム形成層、透過性薄膜層、印刷層、反射性薄膜層及び接着層からなる転写材層又はその一部は、支持体から物品上へと転写して、表示体として使用する。
【0007】
この表示体では、印刷層は、ホログラム形成層と物品との間に介在する。それ故、ホログラム形成層の一部が印刷層によって隠蔽されることがない。従って、ホログラム形成層の全体に亘ってホログラム像を表示することが可能である。
【0008】
また、印刷層が表示する像とホログラム像との重ね合わせは、ホログラムのみでは不可能な視覚効果を達成する。そして、印刷層の材料として蛍光インキを使用した場合、印刷層の存在自体を悟られ難い。従って、この表示体は、高い偽造防止効果を達成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−199783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この表示体において蛍光インキを使用した場合であっても、印刷層の存在が悟られることがある。これは、蛍光インキを使用した部分と他の部分とでは、透明感に相違を生じるからである。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、高い偽造防止効果を達成可能な表示技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、光透過性を有し、金属を含んだ前面隠蔽層と、前記前面隠蔽層と向き合い、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示すか又は互いに異なる偏光を透過光として射出する複数の領域とを具備し、前記前面隠蔽層及び前記複数の領域は、使用時に、前記複数の領域が前記前面隠蔽層を間に挟んで観察者と向き合うように配置される表示体が提供される。
【0013】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る表示体と、前記表示体に支持された粘着層とを具備した粘着ラベルが提供される。
【0014】
本発明の第3側面によると、第1側面に係る表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔が提供される。
【0015】
本発明の第4側面によると、第1側面に係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備したラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、高い偽造防止効果を達成可能な表示技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】台紙付き粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図4】転写箔の一例を概略的に示す断面図。
【図5】図1及び図2に示す表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面。
【図6】図5に示すラベル付き物品のVI−VI線に沿った断面図。
【図7】図5及び図6に示すラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図8】図5及び図6に示すラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図9】本発明の第2態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図10】図9に示す表示体のX−X線に沿った断面図。
【図11】図9及び図10に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図12】図9及び図10に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図13】図9及び図10に示す表示体の一変形例を概略的に示す平面図。
【図14】図13に示す表示体のXIV−XIV線に沿った断面図。
【図15】図13及び図14に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図16】図13及び図14に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図17】本発明の第3態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図18】図17に示す表示体のXVIII−XVIII線に沿った断面図。
【図19】図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図20】図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図。
【図21】図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品の前面側に偏光子を設置し、このラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図。
【図22】図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品の前面側に偏光子を設置し、このラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図。
【図23】図17及び図18に示す表示体の一変形例を概略的に示す断面図。
【図24】図17及び図18に示す表示体の他の変形例を概略的に示す断面図。
【図25】図17及び図18に示す表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、本発明の第1態様を説明する。
図1は、本発明の第1態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。
【0020】
なお、図1には、表示体10の前面、即ち、観察者と向き合うべき表示面を描いている。また、図1及び図2において、X方向及びY方向は、表示体10の前面に平行であり且つ互いに直交する方向である。そして、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0021】
図1及び図2に示す表示体10は、例えば偽造防止に利用可能な素子である。この表示体10は、図2に示すように、前面隠蔽層11と、複数の領域12a及び12bとを含んでいる。
【0022】
前面隠蔽層11は、これを前面側から照明した場合に、前面隠蔽層11の背面側に位置した領域12a及び12bの各パターンが、前面側から観察している観察者によって知覚されるのを防止する。前面隠蔽層11は、例えば、金属光沢を有しており、前面側から照明した場合に照明光の一部を鏡面反射する。前面隠蔽層11は、光散乱性を有していてもよい。
【0023】
加えて、前面隠蔽層11は、光透過性を有している。前面隠蔽層11の透過率は、例えば5%乃至80%の範囲内にあり、典型的には30%乃至60%の範囲内にある。
【0024】
前面隠蔽層11は、金属を含んでいる。例えば、前面隠蔽層11は、単体金属又は合金からなる金属層である。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、金、銀、クロム、ニッケル、銅、又はそれらの1つ以上を含んだ合金を使用する。
【0025】
この金属層は、例えば、パターニングされた層である。この場合、金属層は、例えば、互いから離間した複数の島状部からなる層、又は、網目状に複数の開口が設けられた層である。この構造を採用した場合、例えば、金属層に占める開口部の面積比を適宜設定することにより、所望の透過率を達成できる。
【0026】
パターニングされた金属層は、例えば、処理液に可溶性の樹脂からなるパターンを下地上に形成し、次いで、その上に金属又は合金からなる薄膜を堆積させ、その後、樹脂パターンを処理液に溶解させてその上の金属又は合金を除去することにより得られる。或いは、パターニングされた金属層は、金属又は合金からなる連続膜としての薄膜を形成し、この薄膜の上に樹脂パターンを形成し、この樹脂パターンをマスクとして用いて薄膜を酸又はアルカリでエッチングすることにより得られる。ここで、用語「連続膜」は、開口及び切れ込みなどの隙間なしに一面に広がった膜、即ち「ベタ膜」を意味している。なお、樹脂パターンは、印刷によって形成してもよく、フォトリソグラフィを利用して形成してもよい。
【0027】
金属層は、パターニングを行うことなしに形成することができる。例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法によると、金属又は合金は、まず、互いから離間した複数の島状部からなる層を形成し、次いで、網目状に複数の開口が設けられた層を形成し、その後、連続膜を形成する。従って、堆積を初期の段階で終了すれば、互いから離間した複数の島状部からなる金属層、又は、網目状に複数の開口が設けられた金属層が得られる。また、十分に薄ければ、金属層は連続膜であってもよい。気相堆積法を利用する場合、金属層の厚さは、堆積させるべき材料の光学特性にもよるが、典型的には約5nm乃至約1000nmの範囲内とする。
【0028】
前面隠蔽層11は、金属片又は合金片を樹脂中に分散させてなる金属光沢インキを用いて形成してもよい。金属片又は合金片と樹脂との比及び前面隠蔽層11の厚さを適宜設定することにより、所望の透過率を達成できる。また、印刷法を利用するため、複雑な形状を有している前面隠蔽層11を形成することが容易であるのに加え、前面隠蔽層11の透過率に分布を生じさせることも容易である。即ち、高い意匠性を容易に達成できる。なお、以下で使用する用語「金属含有層」は、先の金属層と金属光沢インキを用いて得られる層とを含意していることとする。
【0029】
前面隠蔽層11は、金属含有層と染料及び/又は顔料を含有した着色層との積層体を含んでいてもよい。例えば、金属含有層が或る波長範囲の光を散乱させる場合、この波長範囲内の光を吸収する着色層を使用すると、前面隠蔽層11の金属光沢感を高めることができる。なお、この着色層の材料には、例えば、領域12a及び12bに関して後述する着色層と同様の材料を使用する。
【0030】
金属含有層及び着色層は、形状が互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。金属含有層及び着色層の形状が異なっている場合、表示体10に、金属含有層及び着色層の重複部と非重複部とに対応した像を表示させることができる。
【0031】
前面隠蔽層11は、金属含有層と多層膜との積層体を含んでいてもよい。多層膜は、適宜設定された光学的厚さを各々が有している複数の透明誘電体層からなる。この多層膜に例えば白色光を照射すると、多層膜内で強め合う干渉と弱め合う干渉とが生じ、先の光学的厚さなどに応じた透過及び反射スペクトルが得られる。従って、金属含有層と多層膜とを組み合わせると、金属含有層のみでは不可能な視覚効果を達成できる。
【0032】
透明誘電体層の材料としては、例えば、Sb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、SiO2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3乃至1.4)、AlF3(1.6)、Al23(1.6)及びGaO(1.7)などの無機化合物を使用する。或いは、透明誘電体層の材料として、ポリエチレン(1.51)、ポリメチルメタクリレート(1.51)及びポリスチレン(1.60)などの有機化合物を使用してもよい。なお、化合物名の後に括弧書きした数値は、その化合物の屈折率を表している。
【0033】
金属含有層及び多層膜は、形状が互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。金属含有層及び多層膜の形状が異なっている場合、表示体10に、金属含有層及び多層膜の重複部と非重複部とに対応した像を表示させることができる。
【0034】
領域12a及び12bは、前面隠蔽層11の背面と向き合っている。領域12a及び12bは、前面隠蔽層11の背面に対して平行な方向に隣接している。この例では、領域12bは、文字列「TP」に対応した形状を有している。なお、図1において、表示部Aaは表示面のうち領域12aに対応した部分であり、表示部Abは表示面のうち領域12bに対応した部分である。
【0035】
領域12a及び12bは、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示すか又は互いに異なる偏光を透過光として射出する。なお、「互いに異なる偏光」は、直線偏光と楕円偏光と円偏光とからなる群より選択される2つ、電場ベクトルの振動方向及び強度の少なくとも一方が互いに異なる2つの直線偏光、楕円の短軸に対する長軸の比、楕円の長軸の向き、強度及び電場ベクトルの回転方向の少なくとも1つが互いに異なる2つの楕円偏光、並びに強度及び電場ベクトルの回転方向の少なくとも一方が互いに異なる2つの円偏光を含んでいる。
【0036】
この例では、領域12a及び12bは、可視光領域内の何れかの波長を有している自然光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示す着色層である。具体的には、領域12aは、領域12bと比較して、可視光のうち前面隠蔽層11が透過させる何れかの光成分に関する透過率がより大きい。また、領域12a及び12bの各々は、典型的には、前面隠蔽層11と比較して反射率がより小さい。
【0037】
着色層は、例えば、バインダ樹脂と染料及び/又は顔料との混合物からなる。この混合物に占める染料及び顔料の割合は、例えば0.1%乃至80%の範囲内とする。この割合が小さい場合、透過光の着色が不十分となることがある。この割合が大きい場合、先の混合物から得られる層の強度が不十分となることがある。
【0038】
染料としては、例えば、C.I.Direct Red2及びC.I.Direct Red28などの直接染料、C.I.Acid Orange7などの酸性染料、C.I.Basic Blue9などの塩基性染料、又はC.I.Disperse Yellow7及びC.I.Disperse Violet1などの分散染料を使用する。また、フタロシアニンのように顔料として機能する色素を化学修飾することによって得られ、染料としての挙動を示すものを使用してもよい。染料として、1種の化合物を使用してもよく、複数種の化合物を混合して使用してもよい。
【0039】
顔料としては、例えば、亜鉛華、二酸化チタン、弁柄及びカーボンブラックなどの無機顔料、又は、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、キノフタロン及びフタロシアニンなどの有機顔料を使用する。顔料として、1種の化合物を使用してもよく、複数種の化合物を混合して使用してもよい。
【0040】
着色層は、例えば、グラビア法及びスクリーン印刷法などの印刷法によって形成する。着色層の厚さは、例えば、0.1μm乃至50μmの範囲内とする。
【0041】
着色層として、多層膜を使用してもよい。例えば、領域12a及び12bの双方が多層膜であってもよい。或いは、領域12a及び12bの一方がバインダ樹脂と染料及び/又は顔料との混合物からなり、領域12a及び12bの他方が多層膜であってもよい。
【0042】
領域12a及び12bの一方は、着色層でなくてもよい。例えば、領域12bは、透明であるか又は光散乱性を有している無色の層であってもよく、領域12aに設けられた空隙又は開口であってもよい。
【0043】
ここでは、一例として、領域12a及び12bの双方が、バインダ樹脂と染料及び/又は顔料との混合物からなる着色層であるとする。
【0044】
この表示体10は、例えば、物品に支持させる。この物品が表示体10を支持すべき位置に透明な部分を含んでいる場合、典型的には、表示体10に、前面隠蔽層11と同様の背面隠蔽層を、領域12a及び12bを間に挟んで前面隠蔽層11と向き合うように設ける。
【0045】
この表示体10を物品に支持させる場合、例えば、以下に説明する粘着ラベル又は転写箔を利用する。
【0046】
図3は、粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。
図3に示す粘着ラベル2は、表示体10と粘着層20aとを含んでいる。
【0047】
粘着ラベル2が含んでいる表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明した表示体10と同様である。即ち、この表示体10は、前面隠蔽層11を間に挟んで領域12a及び12bと向き合った基材13を更に含んでいる。基材13は、光透過性を有している。基材13は、光散乱性であってもよいが、典型的には透明である。基材13は、例えば樹脂からなる。
【0048】
粘着層20aは、表示体10の背面を被覆している。
粘着層20aは、感圧接着剤などの粘着剤からなる。粘着剤としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、又は、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系若しくはポリイソブチル系粘着剤を使用する。
【0049】
粘着剤は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン及びビニルモノマーなどの凝集成分;不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー及びアクリルニトリルなどの改質成分;重合開始剤;可塑剤;硬化剤;硬化促進剤;酸化防止;又はそれらの2つ以上を含んだ混合物を使用する。
【0050】
粘着層20aは、例えば、表示体10の背面に粘着剤を印刷又は塗布することにより得られる。粘着剤の印刷又は塗布には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷方法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布方法を用いる。
【0051】
表示体10には、他の方法により粘着層20aを設けることができる。例えば、セパレータ上に粘着層20aを形成しておき、セパレータから表示体10上へと粘着層20aを転写してもよい。
【0052】
この粘着ラベル2は、物品に貼り付ける前は、通常、離型紙及び離型フィルムなどの支持体30aに剥離可能に支持されている。即ち、この粘着ラベル2は、物品に貼り付ける前は、通常、台紙付き粘着ラベルとして取り扱う。そして、表示体10を物品に支持させる際には、この粘着ラベル2を支持体30aから剥離し、表示体10が粘着層20aを間に挟んで物品と向き合うようにこれを物品に貼り付ける。
【0053】
この構成を採用した場合、物品から粘着ラベル2を剥がそうとしたときに表示体10が破壊されるように、表示体10に切れ込みを設けてもよい。或いは、層間接着強さの分布を形成してもよい。こうすると、物品から粘着ラベル2を剥がそうとしたときに、層間接着強さの強い部分と弱い部分との境界で脆性破壊を生じさせることができる。
【0054】
図4は、転写箔の一例を概略的に示す断面図である。
図4に示す転写箔3は、転写材層10’と接着層20bと支持体30bとを含んでいる。
【0055】
転写材層10’は、互いに隣接した転写部及び非転写部を含んでいる。図4では、転写部と非転写部との境界を破線で示している。
【0056】
転写部は、前面隠蔽層11を間に挟んで領域12a及び12bと向き合った剥離保護層14を更に含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した表示体10と同様である。他方、非転写部は、典型的には、転写部と同様の積層構造を有している。非転写部は、転写部と同様の積層構造を有していなくてもよい。非転写部は省略することができる。
【0057】
剥離保護層14は、光透過性を有している。剥離保護層14は、光散乱性であってもよいが、典型的には透明である。剥離保護層14は、例えば樹脂からなる。
【0058】
剥離保護層14は、支持体30bに対する接着強さが、前面隠蔽層11に対する接着強さと比較して弱い。剥離保護層14は、支持体30bからの転写部の剥離を容易にすると共に、剥離した転写部、即ち表示体10の前面隠蔽層11等を損傷及び劣化から保護する役割を果たす。剥離保護層14は、省略することができる。
【0059】
接着層20bは、転写材層10’の背面を被覆している。接着層20bは、例えば熱可塑性樹脂からなる。
【0060】
支持体30bは、転写材層10’の前面を剥離可能に支持している。支持体30bは、例えば樹脂からなる。支持体30bは、接着層20bと比較してより高いガラス転移温度を有している。
【0061】
この転写箔3を用いた場合、例えばホットスタンプを利用して表示体10を物品に貼り付けることができる。即ち、まず、接着層20bが物品と向き合うように転写箔3及び物品を配置し、転写部が物品の転写位置と正対するようにそれらを位置合わせする。次に、この状態で、転写箔3のうち転写部に対応した部分を間に挟んで、加熱したスタンプヘッドを物品に押し当てて、スタンプヘッドと物品とに挟まれた位置で接着層20bを可塑化させる。次いで、スタンプヘッドを物品から離間させ、続いて、転写箔を物品から引き離す。こうすると、転写部と非転写部との境界に沿って、接着層20b及び転写材層10’が脆性破壊を生じる。このようにして、転写部を支持体30bから物品上へと転写する。
【0062】
次に、表示体10を含んだラベル付き物品について説明する。
図5は、図1及び図2に示す表示体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す平面である。図6は、図5に示すラベル付き物品のVI−VI線に沿った断面図である。
【0063】
図5及び図6に示すラベル付き物品1は、表示体10と粘着又は接着層20と物品40とを含んでいる。
【0064】
表示体10は、図1及び図2を参照しながら説明した表示体10と同様である。この表示体10は、図3を参照しながら説明したように基材13を更に含んでいてもよい。或いは、この表示体10は、図4を参照しながら説明したように剥離保護層14を更に含んでいてもよい。
【0065】
粘着又は接着層20は、表示体10の背面を被覆している。粘着又は接着層20は、例えば、図3を参照しながら説明した粘着層20aである。粘着又は接着層20は、図4を参照しながら説明した接着層20bであってもよい。粘着又は接着層20なしで表示体10を物品に支持させることができる場合、粘着又は接着層20は省略することができる。
【0066】
物品40は、粘着又は接着層20を間に挟んで表示体10を支持している。物品40のうち、表示体10を支持している部分の少なくとも一部は、光透過性を有している。
【0067】
この光透過性を有している部分は、典型的には不透明である。この部分が不透明である場合、図1及び図2を参照しながら説明した領域12a及び12bの各パターンが、背面側から観察している観察者によって知覚されるのを防止することができる。この不透明な部分は、例えば、紙、顔料を含有したプラスチック層、又はこれらの少なくとも一方を支持したガラス板で構成することができる。
【0068】
この光透過性を有している部分は、透明であってもよい。表示体10が上述した背面隠蔽層を含んでいれば、領域12a及び12bの各パターンが、背面側から観察している観察者によって知覚されるのを防止することができる。なお、光透過性を有している部分が透明である場合、表示体10は、物品40を間に挟んで観察者と向き合うように物品40に支持させてもよい。
【0069】
次に、この表示体10が表示する像について説明する。
図7は、図5及び図6に示すラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。図8は、図5及び図6に示すラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。なお、図7及び図8において、参照符号50は光源を示している。
【0070】
図7に示すように、表示体10を前面側から照明した場合、照明光の一部は表示体10の前面隠蔽層11によって反射され、他の一部は前面隠蔽層11によって吸収され、残りは前面隠蔽層11を透過する。前面隠蔽層11を透過した光の一部は領域12a又は12bによって吸収され、他の一部は領域12a又は12bを透過し、残りは領域12a又は12bによって反射される。領域12a及び12bが反射した光は強度又はスペクトルが互いに異なっているが、これら反射光は、強度が比較的低く、前面隠蔽層11を透過できるのはそれらの一部のみである。
【0071】
即ち、表示体10が前方へ射出する領域12a及び12bからの反射光は、前面隠蔽層11が前方へ反射する光と比較して遥かに低強度である。それ故、領域12a及び12bが反射した光の強度又はスペクトルが互いに異なっていても、表示体10を前面側から観察している観察者には、それらの相違を判別できない。従って、領域12aに対応した表示部Aaと領域12bに対応した表示部Abとは同じ色に見え、表示体10は文字列「TP」を表示しない。
【0072】
図8に示すように、物品40と粘着又は接着層20とを間に挟んで表示体10を背面側から照明した場合、照明光の一部は、物品40と粘着又は接着層20とをこの順に透過し、領域12a又は12bに入射する。この入射光の一部は領域12a又は12bを透過し、更にその一部が前面隠蔽層11を透過する。
【0073】
このような条件のもとでは、表示体10を前面側から観察している観察者には、領域12a及び12bを透過した光のみが表示に寄与する。そして、領域12a及び12bが透過させた光は、強度又はスペクトルが互いに異なっている。それ故、領域12aに対応した表示部Aaと領域12bに対応した表示部Abとは、異なる色に見える。従って、この場合、表示体10は文字列「TP」を表示する。
【0074】
このように、領域12a及び12bは潜像を形成しており、この潜像は、特殊な条件のもとで可視化する。そして、領域12a及び12bは前面隠蔽層11によって隠蔽されているため、通常の観察条件のもとで潜像が可視化することはない。従って、領域12a及び12bが潜像を形成していることは悟られ難い。それ故、この技術によると、高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0075】
なお、領域12a及び12bは、白色光で照明して透過光を肉眼で観察した場合に、典型的には、互いから識別することが可能な色を表示する。この場合、通常、領域12a及び12bは、白色光で照明して反射光を肉眼で観察した場合にも互いから識別することが可能な色を表示する。従って、領域12a及び12bの反射率並びに前面隠蔽層11の透過率が高い場合には、表示体10を前面側から照明することによって潜像が可視化する可能性がある。
【0076】
領域12a及び12bが、白色光で照明して反射光を肉眼で観察した場合に互いから識別することが不可能又は困難な色を表示すれば、領域12a及び12bの反射率並びに前面隠蔽層11の透過率が高くても、表示体10を前面側から照明することによって潜像が可視化することはない。また、この構成を採用した場合、領域12a及び12bが、白色光で照明して透過光を肉眼で観察したときに互いから識別することが不可能又は困難な色を表示するとしても、領域12a及び12bが透過させる光のスペクトルが異なっていれば、例えば白色光源の代わりに波長範囲の狭い光源を使用するか又は多層膜などの光学フィルタを用いることによって照明光の波長範囲を制限することにより、潜像を可視化することができる。
【0077】
即ち、この構成を採用した場合、反射光を観察する通常の観察条件のもとで潜像が可視化することはなく、透過光を観察する条件のもとでも、所定の光源又は光学フィルタを使用しない限り、潜像が可視化することはない。従って、より高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0078】
なお、この光学フィルタは、ラベル付き物品1の構成要素であってもよい。例えば、表示体10は、領域12a及び12bを間に挟んで前面隠蔽層11と向き合った光学フィルタを更に含んでいてもよい。或いは、物品40は、表示体10と向き合う部分が光学フィルタとしての機能を有していてもよい。この場合も、反射光を観察する条件のもとで潜像が可視化することをより確実に防止できる。
【0079】
次に、本発明の第2態様を説明する。
図9は、本発明の第2態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図10は、図9に示す表示体のX−X線に沿った断面図である。
【0080】
図9及び図10に示す表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1及び図2を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0081】
即ち、この表示体10は、レリーフ構造形成層15を更に含んでいる。レリーフ構造形成層15は、前面隠蔽層11を間に挟んで領域12a及び12bと向き合っている。
レリーフ構造形成層15は、光透過性を有している。レリーフ構造形成層15は、典型的には透明材料、例えば透明樹脂からなる。
【0082】
レリーフ構造形成層15の前面隠蔽層11側の主面には、レリーフ構造が設けられている。このレリーフ構造は、回折格子、ホログラム及び光散乱構造の少なくとも1つを構成している。ここでは、一例として、レリーフ構造は、格子定数及び/又は溝の向きが互いに異なる2つの回折格子を構成している第1及び第2レリーフ構造を含んでいることとする。レリーフ構造形成層15は、省略することができる。
【0083】
レリーフ構造形成層15の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線若しくは電子線硬化性樹脂を使用する。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂又はビニル樹脂を使用する。熱硬化性樹脂としては、例えば、反応性水酸基を有するアクリルポリオール若しくはポリエステルポリオールにポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン樹脂又はフェノール樹脂を使用する。紫外線又は電子線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル、エポキシメタクリル、ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートを使用する。
【0084】
レリーフ構造形成層15は、例えば、以下の方法より形成することができる。例えば、熱可塑性樹脂層に、レリーフ構造が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当て、その後、熱可塑性樹脂層から原版を取り除く。或いは、紫外線硬化性樹脂からなる塗膜を形成し、これに原版を押し当てながら紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させ、その後、塗膜から原版を取り除く。或いは、熱硬化性樹脂からなる塗膜を形成し、これに原版を押し当てながら加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、その後、塗膜から原版を取り除く。
【0085】
前面隠蔽層11は、レリーフ構造形成層15のレリーフ構造が設けられた面を被覆している。図10では、前面隠蔽層11のうち、第1レリーフ構造に対応した第1部分に参照符号11aを付し、第2レリーフ構造に対応した第2部分に参照符号11bを付している。
【0086】
なお、ここでは、一例として、領域12aは領域12bに設けられた空隙又は開口であり、領域12bは遮光層であるとする。
【0087】
図9には、第1部分11aに対応した表示部と第2部分11bに対応した表示部との境界を一点鎖線で示している。図9に示すように、この例では、第2部分11bに対応した表示部は、花冠形状を有しているパターンを構成している。
【0088】
また、図9には、領域12aに対応した表示部と領域12bに対応した表示部との境界を破線で示している。図9に示すように、この例では、領域12cは中空の星形状を有しているパターンを構成している。
【0089】
この表示体10は、例えば、物品に支持させる。この表示体10を物品に支持させる場合、例えば、図11及び図12を参照しながら説明した構造を採用すること以外は図3を参照しながら説明したのと同様の粘着ラベルを利用する。或いは、図11及び図12を参照しながら説明した構造を採用すること以外は図4を参照しながら説明したのと同様の転写箔を利用してもよい。
【0090】
次に、この表示体10が表示する像について説明する。
図11は、図9及び図10に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。図12は、図9及び図10に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。
【0091】
図11に示すように、表示体10を前面側から照明した場合、照明光の一部は、表示体10の前面隠蔽層11とレリーフ構造形成層15との界面に設けられた回折構造によって回折される。従って、図7に関する説明から明らかなように、表示体10を前面側から観察している観察者には、中空の星形状を有しているパターンは見えず、回折光を知覚可能な条件のもとでは花冠形状を有しているパターンを含んだ回折像が見え、回折光を知覚不可能な条件のもとでは表示体10は鏡面の如く見える。
【0092】
図12に示すように、物品40を間に挟んで表示体10を背面側から照明した場合、図8に関する説明から明らかなように、表示体10を前面側から観察している観察者には、領域12a及び12bを透過した光のみが表示に寄与する。上記の通り、ここでは、領域12aは空隙又は開口であり、領域12bは遮光層であるので、領域12aに対応した表示部は明るく見え、領域12bに対応した表示部は暗く見える。従って、この場合、表示体10は、中空の星形状を有しているパターンを表示する。
【0093】
このように、領域12a及び12bは潜像を形成しており、この潜像は、特殊な条件のもとで可視化する。そして、領域12a及び12bは前面隠蔽層11によって隠蔽されているため、通常の観察条件のもとで潜像が可視化することはない。従って、領域12a及び12bが潜像を形成していることは悟られ難い。それ故、この技術によると、高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0094】
また、表示体10が表示する回折像は、前面隠蔽層11が領域12a及び12bを隠蔽していることを悟られ難くする。従って、回折像を表示する構成を採用した表示体10は、この構成を採用していない表示体と比較してより高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0095】
なお、ここでは、前面隠蔽層11の表面に回折格子としてのレリーフ構造を設けたが、前面隠蔽層11の表面にホログラム又は光散乱構造としてのレリーフ構造を設けてもよい。この場合も、上述したのと同様の又は類似した効果を得ることができる。
【0096】
或いは、前面隠蔽層11の表面にレリーフ構造を設ける代わりに、前面隠蔽層11の前面側に、体積ホログラム、多層膜、又は固化させたコレステリック液晶層を設置してもよい。この場合も、上述したのと同様の又は類似した効果を得ることができる。
【0097】
この表示体10には、様々な変形が可能である。
図13は、図9及び図10に示す表示体の一変形例を概略的に示す平面図である。図14は、図13に示す表示体のXIV−XIV線に沿った断面図である。
【0098】
図13及び図14に示す表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図9及び図10を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0099】
即ち、この表示体10は、図3を参照しながら説明した基材13を更に含んでいる。基材13は、省略することができる。
【0100】
レリーフ構造形成層15は、基材13の背面に支持されている。レリーフ構造形成層15の中央には、四角形状の開口が設けられている。なお、この開口は、図13では、二点鎖線で示している。
【0101】
レリーフ構造形成層15の背面には、その全体に亘って、1つの回折格子を構成しているレリーフ構造が設けられている。前面隠蔽層11は、レリーフ構造形成層15の背面のみを被覆している。
【0102】
領域12bは、レリーフ構造形成層15の背面の略半分を被覆したL字形状の遮光層である。そして、領域12aは、レリーフ構造形成層15のうち領域12bで被覆されていない部分の背面側に位置したL字形状の領域である。図13では、領域12a及び12bの境界を破線で示している。
【0103】
次に、この表示体10が表示する像について説明する。
図15は、図13及び図14に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。図16は、図13及び図14に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。
【0104】
図15に示すように、表示体10を前面側から照明した場合、表示体10を前面側から観察している観察者には、L字形状を有しているパターンは見えない。そして、この場合、表示体10を前面側から観察している観察者には、回折光を知覚可能な条件のもとでは枠形状を有している回折像が見え、回折光を知覚不可能な条件のもとでは表示体10は四角形状の窓が設けられた鏡面の如く見える。
【0105】
図16に示すように、物品40と粘着又は接着層20とを間に挟んで表示体10を背面側から照明した場合、表示体10を前面側から観察している観察者には、領域12aに対応した表示部は明るく見え、領域12bに対応した表示部は暗く見える。従って、この場合、表示体10は、より明るいL字形状のパターンとより暗いL字形状のパターンとからなる枠形状のパターンを表示する。
【0106】
このように、領域12a及び12b並びに前面被覆層11は、表示体10の全体に亘って設けられていなくてもよい。
【0107】
次に、本発明の第3態様を説明する。
図17は、本発明の第3態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図18は、図17に示す表示体のXVIII−XVIII線に沿った断面図である。
【0108】
図17及び図18に示す表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図9及び図10を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0109】
即ち、この表示体10では、レリーフ構造形成層15は、前面隠蔽層11の背面側に位置している。レリーフ構造形成層15の前面には、図9及び図10を参照しながら説明したのと同様のレリーフ構造が設けられている。
【0110】
前面隠蔽層11は、レリーフ構造形成層15の前面を被覆している。前面隠蔽層11の前面には、レリーフ構造形成層15の前面に設けられているのと同様のレリーフ構造が設けられている。
【0111】
また、この表示体10は、中間層17と保護層19とを更に含んでいる。
中間層17は、レリーフ構造形成層15と領域12a及び12bとの間に介在している。中間層17は、例えば、領域12a及び12bが形成する凹凸表面を平坦化する役割を果たす。中間層17は、省略することができる。
【0112】
中間層17は、光透過性を有している。中間層17は、光散乱性を有していてもよいが、典型的には透明である。中間層17は、例えば透明樹脂からなる。中間層17の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂及び塩化ビニル樹脂等の高分子樹脂、又は、紫外線硬化が可能なモノマー若しくはオリゴマーを使用する。この材料は、紫外線吸収剤、光重合開始剤、消泡剤、レベリング剤及びブロッキング防止剤などの添加剤を更に含んでいてもよい。中間層17は、例えば、この材料を必要に応じて有機溶剤に溶解させ、これを、グラビア法、マイクログラビア法、コンマコータ法及びダイコータ法などの塗布法により下地上に塗布し、この塗膜を乾燥させることにより得られる。
【0113】
保護層19は、前面隠蔽層11の前面を被覆している。保護層19は、前面隠蔽層11等を損傷及び劣化から保護する役割を果たす。保護層19は、光透過性を有している。保護層19は、光散乱性を有していてもよいが、典型的には透明である。保護層19は、例えば透明樹脂からなる。保護層19は、省略することができる。
【0114】
領域12a及び12bは、異なる光学的異方性を有している。例えば、領域12a及び12bは、少なくとも一方が複屈折性を有しており、この複屈折性が互いに異なっている。或いは、領域12a及び12bは、少なくとも一方が偏光子として機能し、この偏光子としての機能が互いに異なっている。
【0115】
例えば、領域12a及び12bは、各々が面内方向に遅相軸と進相軸とを含み、遅相軸の向き及びリターデイションの少なくとも一方が互いに異なる複屈折層である。或いは、領域12a及び12bは、一方が光学的に等方性であり、他方が面内方向に遅相軸と進相軸とを含んだ複屈折層である。或いは、領域12a及び12bは、各々が特定波長の右又は左円偏光を選択的に反射し、選択反射する円偏光の波長、強度及び電場ベクトルの回転方向の少なくとも1つが互いに異なる複屈折層である。或いは、領域12a及び12bは、一方が光学的に等方性であり、他方が特定波長の右又は左円偏光を選択的に反射する複屈折層である。
【0116】
或いは、領域12a及び12bは、例えば、直線偏光子、楕円偏光子及び円偏光子からなる群より選択される2つである。或いは、領域12a及び12bは、透過軸の向きが互いに異なる直線偏光子である。或いは、領域12a及び12bは、透過させる円偏光の電場ベクトルの回転方向が互いに異なる円偏光子である。或いは、領域12a及び12bは、楕円の短軸に対する長軸の比、長軸の向き及び透過させる楕円偏光の電場ベクトルの回転方向の少なくとも1つが互いに異なる楕円偏光子である。
【0117】
ここでは、一例として、領域12a及び12bは、各々が面内方向に遅相軸と進相軸とを含んだ複屈折層、即ち位相差層であり、リターデイションが互いに等しく、遅相軸の向きが互いに異なっていることとする。
【0118】
この表示体10では、偏光子16と位相差層18と中間層17とが領域12a及び12bを構成している。具体的には、偏光子16のうち位相差層18と向き合っていない部分16aと、中間層17のうち位相差層18と向き合っていない部分17aとは、領域12aを構成している。そして、位相差層18と、偏光子16のうち位相差層18と向き合った部分16bと、中間層17のうち位相差層18と向き合った部分17bとの積層体は、領域12bを構成している。
【0119】
偏光子16は、例えば層形状を有しており、中間層17及びレリーフ構造形成層15を間に挟んで前面隠蔽層11と向き合っている。偏光子16は、直線偏光子、円偏光子及び楕円偏光子の何れであってもよい。また、偏光子16は、吸収型偏光子及び散乱型偏光子の何れであってもよい。吸収型の直線偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)延伸フィルムにヨウ素を吸収させたPVA−ヨウ素型偏光子、二色性染料型偏光子、金属若しくは金属化合物含有型偏光子、又はポリエン型などの高分子多結晶型偏光子を使用する。ここでは、一例として、偏光子16は、吸収型の直線偏光子であるとする。
【0120】
位相差層18は、偏光子16と中間層17との間に介在している。位相差層18は、偏光子16の一部と向き合っており、ここでは、文字列「TP」に対応した形状を有している。典型的には、位相差層18は、中間層17とほぼ等しい透過率を有している。ここでは、一例として、位相差層18と中間層17とは、白色光で照明した場合にほぼ等しい透過スペクトルを示すこととする。
【0121】
位相差層18としては、例えば、液晶材料を固定化してなる固定化液晶層である。この液晶材料としては、例えば、サーモトロピック液晶の性質を持ったスメチクチック液晶材料又はネマチック液晶材料を使用する。典型的には、架橋性及び/又は重合性の液晶材料を使用する。
【0122】
架橋性及び/又は重合性の液晶材料としては、例えば、液晶分子の末端にアクリル基等の官能基を導入した液晶材料を使用する。このような液晶材料は、開始剤の存在下で活性エネルギー線を照射することによって重合及び/又は架橋し得る。
【0123】
重合及び/又は架橋し得る液晶材料としては、例えば、分子中に2個以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマー又はオリゴマーを含有したものを使用する。そのような液晶材料としては、例えば、ラジカル重合性モノマー又はオリゴマーを使用する。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能性モノマー、又は、ポリウレタンポリアクリレート、エポキシ樹脂系ポリアクリレート及びアクリルポリオールポリアクリレートなどの多官能性オリゴマーを使用する。
【0124】
ラジカル重合性モノマー又はオリゴマーは、多官能性モノマー又はオリゴマーに加えて、一官能性モノマーを更に含んでいてもよい。一官能性モノマーとしては、例えば、アルキル(C1〜C18)アクリレート、アルキル(C1〜C18)メタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコールアクリレート、アルキレン(C2〜C4)グリコールメタクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)アクリレート、アルコキシ(C1〜C10)アルキル(C2〜C4)メタクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコールアクリレート、ポリアルキレン(C2〜C4)グリコールメタクリレート、アルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコールアクリレート、又はアルコキシ(C2〜C10)ポリアルキレン(C2〜C4)グリコールメタクリレートを使用する。なお、官能記名に続けて括弧書きした「Cm〜Cn」は、その官能基が含んでいる炭素原子の数がm乃至nの範囲内にあることを示している。
【0125】
重合及び/又は架橋し得る液晶材料として、カチオン重合性モノマー又はオリゴマーを使用してもよい。カチオン重合性モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、又はグリシジルエステル系化合物を使用する。
【0126】
ラジカル重合用の開始剤としては、例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系等のアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、又はα−アシルオキシムエステル系の開始剤を使用する。例えば、α−アミノアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、イソプロピルチオキサントン、又はベンゾフェノンとN−メチルジエタノールアミンとの組み合わせを使用する。
【0127】
カチオン重合用の開始剤としては、例えば、この目的で一般に使用されている化合物、又は、そのような化合物と増感剤若しくは過酸化物との混合物を使用する。例えば、アリルヨードニウム塩−α−ヒドロキシアセトフェノン系、トリアリルスルホニウム塩系、メタロセン化合物−パーオキサイド併用系、メタロセン化合物−チオキサントン併用系、又はメタロセン化合物−アントラセン併用系開始剤を使用する。
【0128】
固定化液晶層は、例えば、以下の方法により形成する。
まず、固体化液晶層を形成すべき下地表面に配向処理を施す。例えば、下地表面をラビング布で擦るラビング処理を行う。ラビング布としては、例えば、コットン又はベルベットを使用する。
【0129】
下地上には、配向膜を形成してもよい。例えば、下地上に、PVA及びポリイミドなどの樹脂を含んだ塗工液を塗布し、この塗膜を乾燥させる。この塗布には、例えば、ワイヤバーを使用した方法、グラビア法、又はマイクログラビア法を利用する。また、塗膜は、乾燥後の厚さが例えば0.1μm乃至20μmの、典型的には0.3μm乃至10μmの範囲内になるように形成する。次いで、この塗膜に、ラビング処理を施す。これにより、配向膜を得る。
【0130】
配向膜は、光配向技術などの他の配向技術を利用して形成してもよい。また、下地表面への配向処理及び配向膜の形成は省略してもよい。
【0131】
次に、下地又は配向膜上に、架橋性及び/又は重合性液晶材料と、開始剤と、任意に溶剤とを含んだ液晶組成物を塗布する。塗膜を乾燥させた後、この塗膜をパターン露光する。例えば、この塗膜に、マスクを介して紫外線を照射する。或いは、この塗膜に電子線で描画する。これにより、塗膜の露光部で、液晶材料の架橋及び/又は重合を生じさせる。
【0132】
その後、塗膜を現像処理に供して、塗膜から未露光部を除去する。以上のようにして、固体化液晶層を得る。
【0133】
固体化液晶層は、フォトリソグラフィを利用して形成する代わりに、グラビア印刷法などの印刷法を利用して形成してもよい。例えば、ガラス転移温度以上に加熱した液晶材料を印刷し、これを冷却することにより液晶材料を固定化してもよい。但し、液晶材料を架橋又は重合させた場合、液晶材料を架橋又は重合させない場合と比較して高い物理的強度を達成できる。
【0134】
位相差層18として、固体化液晶層以外の層を使用してもよい。例えば、位相差層18として、一軸延伸した高分子フィルムを使用することができる。高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリカーボネート又はポリオレフィンを使用することができる。或いは、位相差層18として、セロハンを使用してもよい。
【0135】
このようなフィルムを位相差層18として使用する場合、例えば、所定の形状に切り抜いたフィルムを準備し、これを偏光子16上に貼り付ける。或いは、連続膜としてのフィルムを偏光子16に貼り付け、その後、このフィルムから不要な部分を除去する。このようにして、位相差層18を得る。
【0136】
位相差層18の遅相軸は、偏光子16の透過軸に対して交差させる。例えば、位相差層18の遅相軸と偏光子16の透過軸とが成す角度は約45°とする。また、潜像を可視化したときに観察者に知覚させるべき光の一成分の波長をλとした場合、波長λの光に関する位相差層18のリターデイションは、例えば約λ/4とする。或いは、波長λの光に関する位相差層18のリターデイションは、例えば約λ/2とする。ここでは、一例として、位相差層18の遅相軸と偏光子16の透過軸とは45°の角度を成しており、位相差層18のリターデイションはλ/2であるとする。
【0137】
この表示体10は、例えば、物品に支持させる。この表示体10を物品に支持させる場合、例えば、図17及び図18を参照しながら説明した構造を採用すること以外は図3を参照しながら説明したのと同様の粘着ラベルを利用する。或いは、図17及び図18を参照しながら説明した構造を採用すること以外は図4を参照しながら説明したのと同様の転写箔を利用してもよい。
【0138】
次に、この表示体10が、肉眼で観察した場合に表示する像について説明する。
図19は、図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品を前面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。図20は、図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像を概略的に示す平面図である。
【0139】
図19に示すように、表示体10を前面側から照明した場合、照明光の一部は、表示体10の前面隠蔽層11と保護層19との界面に設けられた回折構造によって回折される。従って、図11に関して説明したのと同様に、表示体10を前面側から観察している観察者には、中空の星形状を有しているパターンは見えず、回折光を知覚可能な条件のもとでは花冠形状を有しているパターンを含んだ回折像が見え、回折光を知覚不可能な条件のもとでは表示体10は鏡面の如く見える。
【0140】
図20に示すように、物品40を間に挟んで表示体10を背面側から照明した場合、物品40を透過した照明光は、偏光子16に入射する。偏光子16は、電場ベクトルの振動方向が吸収軸に平行な直線偏光を吸収し、電場ベクトルの振動方向が透過軸に平行な直線偏光を透過させる。
【0141】
偏光子16の第1部分16aが透過させた直線偏光は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに、中間層17の一部17a及びレリーフ構造形成層15をこの順に透過し、前面隠蔽層11に入射する。前面隠蔽層11は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに、第1部分16aからの直線偏光の一部のみを透過させる。前面隠蔽層11を透過した第1部分16aからの直線偏光は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに保護層19を透過し、観察者によって知覚される。
【0142】
他方、偏光子16の第2部分16bが透過させた直線偏光は、位相差層18に入射する。この直線偏光は、位相差層18を透過することにより、その電場ベクトルの振動方向が90°回転する。位相差層18が透過させた直線偏光は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに、中間層17の他の一部17b及びレリーフ構造形成層15をこの順に透過し、前面隠蔽層11に入射する。前面隠蔽層11は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに、第2部分16bからの直線偏光の一部のみを透過させる。前面隠蔽層11を透過した第2部分16bからの直線偏光は、電場ベクトルの振動方向を回転させることなしに保護層19を透過し、観察者によって知覚される。
【0143】
上記の通り、図8に関する説明から明らかなように、表示体10を前面側から観察している観察者には、領域12a及び12bを透過した光のみが表示に寄与する。上記の通り、位相差層18と中間層17とは白色光で照明した場合にほぼ等しい透過スペクトルを示すので、領域12aからの表示光のスペクトルと領域12bからの表示光のスペクトルとはほぼ等しい。そして、領域12aからの表示光と領域12bからの表示光とは電場ベクトルの振動方向が90°異なっているが、観察者にはそのような相違を知覚することはできない。従って、領域12aに対応した表示部と領域12bに対応した表示部とは同じ色に見える。即ち、この場合、表示体10は、領域12a及び12bの各々に対応したパターンを表示しない。
このように、表示体10は、肉眼で観察した場合には、一般的なOVDの如く見える。
【0144】
次に、この表示体10が、背面側から照明し、偏光子を介して観察した場合に表示する像について説明する。
【0145】
図21は、図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品の前面側に偏光子を設置し、このラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図である。図22は、図17及び図18に示す表示体を含んだラベル付き物品の前面側に偏光子を設置し、このラベル付き物品を背面側から照明した場合に表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図である。
【0146】
図21及び図22において、参照符号60は、偏光子を示している。
偏光子60は、直線偏光子、円偏光子及び楕円偏光子の何れであってもよい。例えば、領域12a及び12bが電場ベクトルの振動方向が異なる直線偏光を射出する場合、偏光子60として直線偏光子又は楕円偏光子を使用する。或いは、領域12aが右円偏光及び左円偏光の一方を射出し、領域12aが右円偏光及び左円偏光の他方を射出する場合は、偏光子60として円偏光子又は楕円偏光子を使用する。
【0147】
また、偏光子60は、吸収型偏光子及び散乱型偏光子の何れであってもよい。吸収型の直線偏光子としては、例えば、PVA延伸フィルムにヨウ素を吸収させたPVA−ヨウ素型偏光子、二色性染料型偏光子、金属若しくは金属化合物含有型偏光子、又はポリエン型などの高分子多結晶型偏光子を使用する。ここでは、一例として、偏光子60は、吸収型の直線偏光子であるとする。
【0148】
図21及び図22には、図20を参照しながら説明した観察条件のもとでラベル付き物品1と観察者との間に偏光子60を設置した様子を描いている。
【0149】
光源50、ラベル付き物品1及び偏光子60をこのように配置した場合、偏光子60の透過軸を、領域12bに対応した表示部が射出する直線偏光の電場ベクトルの振動方向に対して平行にすると、領域12aからの直線偏光は偏光子60によって吸収され、領域12bからの直線偏光は偏光子60を透過する。それ故、図21に示すように、表示面のうち領域12aに対応した表示部は暗く見え、表示面のうち領域12bに対応した表示部は明るく見える。従って、表示体10は、文字列「TP」を表示する。
【0150】
他方、偏光子60の透過軸を、領域12aに対応した表示部が射出する直線偏光の電場ベクトルの振動方向に対して平行にすると、領域12aからの直線偏光は偏光子60を透過し、領域12bからの直線偏光は偏光子60によって吸収される。それ故、図22に示すように、表示面のうち領域12aに対応した表示部は明るく見え、表示面のうち領域12bに対応した表示部は暗く見える。従って、表示体10は、文字列「TP」を表示する。
【0151】
このように、領域12a及び12bは潜像を形成しており、この潜像は、表示体10を背面側から照明し、これを前面側から偏光子60を介して観察することにより可視化する。そして、領域12a及び12bは前面隠蔽層11なしでも互いからの識別が不可能又は困難であるのに加え、前面隠蔽層11によって隠蔽されているため、通常の観察条件のもとで潜像が可視化することはない。従って、領域12a及び12bが潜像を形成していることは悟られ難い。それ故、この技術によると、高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0152】
また、表示体10が表示する回折像は、前面隠蔽層11が領域12a及び12bを隠蔽していることを悟られ難くする。従って、回折像を表示する構成を採用した表示体10は、この構成を採用していない表示体と比較してより高い偽造防止効果を達成可能することができる。
【0153】
なお、ここでは、前面隠蔽層11の表面に回折格子としてのレリーフ構造を設けたが、前面隠蔽層11の表面にホログラム又は光散乱構造としてのレリーフ構造を設けてもよい。この場合も、上述したのと同様の又は類似した効果を得ることができる。
【0154】
前面隠蔽層11の表面に設けられているレリーフ構造は、省略してもよい。この場合、レリーフ構造に由来する効果は得られないが、他の効果は得ることができる。
【0155】
前面隠蔽層11の表面にレリーフ構造を設ける代わりに、前面隠蔽層11の前面側に、体積ホログラム、多層膜、又は固化させたコレステリック液晶層を設置してもよい。この場合も、上述したのと同様の又は類似した効果を得ることができる。
【0156】
この表示体10には、様々な変形が可能である。
図23は、図17及び図18に示す表示体の一変形例を概略的に示す断面図である。図23に示す表示体10は、偏光子16の代わりに基材13を含んでいること以外は、図17及び図18を参照しながら説明した表示体10と同様である。即ち、この表示体10では、中間層17のうち位相差層18と向き合っていない部分17aは、領域12aを構成している。そして、位相差層18と、中間層17のうち位相差層18と向き合った部分17bとの積層体は、領域12bを構成している。
【0157】
この表示体10は、肉眼で観察した場合には、図19及び図20を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。そして、この表示体10は、背面側から直線偏光などの偏光で照明し、偏光子60を介して観察した場合には、図21及び図22を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。
【0158】
図24は、図17及び図18に示す表示体の他の変形例を概略的に示す断面図である。図24に示す表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図23を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0159】
即ち、この表示体10では、位相差層18は連続膜である。位相差層18は、例えば、基材13の全面に設けられている。
【0160】
位相差層18は、領域18a及び18bを含んでいる。領域18a及び18bは、例えば、各々が複屈折性を有しており、遅相軸の向きが互いに異なる。或いは、領域18a及び18bは、各々が複屈折性を有しており、遅相軸の向きが互いに等しく、リターデイションが互いに異なっている。或いは、領域18a及び18bの一方は複屈折性を有しており、領域18a及び18bの他方は光学的に等方性である。ここでは、一例として、領域18a及び18bは、各々が複屈折性を有しており、それらの遅相軸は互いに対して直交しており、それらの各々のリターデイションはλ/4であるとする。
【0161】
領域18a及び18bは、それぞれ図23に示す表示体の領域12a及び12bに対応した形状を有している。領域18aと部分17aとの積層体は領域12aを構成しており、領域18bと部分17bとの積層体は領域12bを構成している。
【0162】
位相差層18としては、例えば、図17及び図18に示す表示体10に関して説明したのと類似した固定化液晶層を使用することができる。この場合、例えば、まず、メソゲンを異なる方向に配向させる複数の領域を含んだ下地を準備する。例えば、マスクを利用して、これら領域を異なる方向にラビングする。或いは、光配向技術を利用して、これら領域を形成する。次に、この下地上に、図17及び図18に示す表示体10に関して説明したのと同様の方法により、固定化液晶層を形成する。こうすると、メソゲンの配向方向が異なる複数の領域を含んだ固定化液晶層が得られる。
【0163】
この表示体10は、肉眼で観察した場合には、図19及び図20を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。そして、この表示体10は、例えば、背面側から電場ベクトルの振動方向が領域18a及び18bの遅相軸に対してそれぞれ+45°及び−45°の角度を成している直線偏光で照明し、右又は左円偏光子としての偏光子60を介して観察した場合には、図21を参照しながら説明したのと同様の像又は図22を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。
【0164】
図25は、図17及び図18に示す表示体の更に他の変形例を概略的に示す断面図である。図24に示す表示体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図23を参照しながら説明した表示体10と同様である。
【0165】
即ち、この表示体10は、位相差層18の代わりに偏光層16を含んでいる。偏光層16は、領域16a及び16bを含んでいる。
【0166】
領域16a及び16bは、例えば、各々が偏光子として機能し、透過軸の向きが互いに異なっている。或いは、領域16a及び16bの一方は偏光子として機能し、領域16a及び16bの他方は、光吸収性と光透過性とを有しており、光学的に等方性である。ここでは、一例として、領域16a及び16bは、各々が吸収型の直線偏光子として機能し、それらの透過軸の向きは互いに対して直交しているとする。
【0167】
この偏光層16としては、例えば、図24に示す表示体10に関して説明した固定化液晶層に二色性染料を添加したものを使用することができる。二色性染料の吸収軸は、メソゲンの配向方向とほぼ等しい。従って、二色性染料を添加すること以外は同様の方法により、透過軸の向きが互いに異なる領域16a及び16bを含んだ偏光層16を得ることができる。
【0168】
二色性染料としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノリン系又はピラゾロン系色素系化合物を使用する。例えば、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Violet 48、又はC.I.Direct Red 39を使用する。
【0169】
この表示体10は、肉眼で観察した場合には、図19及び図20を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。そして、この表示体10は、例えば、背面側から自然光で照明し、直線偏光子又は楕円偏光子としての偏光子60を介して観察した場合には、図21を参照しながら説明したのと同様の像又は図22を参照しながら説明したのと同様の像を表示する。
【0170】
図1乃至図25を参照しながら説明した表示体10が背面隠蔽層を更に含んでいる場合、背面隠蔽層の表面は、鏡面であってもよく、回折格子、ホログラム及び光散乱構造の少なくとも1つを構成するレリーフ構造が設けられていてもよい。前面隠蔽層及び背面隠蔽層の双方にレリーフ構造を設ける場合、それらレリーフ構造は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0171】
表示体10を支持すべき物品が、表示体10を支持すべき位置に透明な部分を含んでいる場合、表示体10に背面隠蔽層を設ける代わりに、先の物品に背面隠蔽層を設けてもよい。例えば、背面隠蔽層は、物品の透明な部分と表示体10との間に設けてもよい。或いは、背面隠蔽層は、物品の透明な部分を間に挟んで表示体10と向き合うように設けてもよい。
【0172】
これら表示体10において、領域12a及び12bは、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示すか又は互いに異なる偏光を透過光として射出する。これら表示体10は、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に、領域12a及び12bとは異なる透過率を示すか又は領域12a及び12bとは異なる偏光を透過光として射出する1つ以上の領域を更に含んでいてもよい。
【0173】
表示体10の各構成要素は、その機能を損なわない範囲で着色されていてもよい。また、表示体10は、その表面又は層間に、印刷パターンを更に含んでいてもよい。このような構成を採用すると、例えば、意匠性を向上させることができる。
【0174】
表示体10は、他の層を更に含んでいてもよい。例えば、表示体10は、層間接着強さを高めるべく、接着アンカー層を更に含んでいてもよい。
【実施例】
【0175】
以下に、本発明の例を記載する。
【0176】
<例1>
図9及び図10を参照しながら説明したのと類似した表示体10を製造した。
具体的には、まず、図示しない基材上に、グラビア法によりウレタン樹脂を塗布した。基材としては、厚さが25μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した。ウレタン樹脂からなる塗膜は、5μmの厚さに形成した。
【0177】
この塗膜の表面に、ロールエンボス法を用いて第1及び第2レリーフ構造を形成することにより、レリーフ構造形成層15を得た。なお、第1及び第2レリーフ構造としては、溝の長さ方向が互いに対して直交する回折格子を形成した。また、これらレリーフ構造の輪郭は花冠形状とした。
【0178】
次いで、レリーフ構造形成層15上に、真空蒸着法により前面隠蔽層11を形成した。前面隠蔽層11としては、厚さが0.03μmのアルミニウム層を形成した。
【0179】
続いて、前面隠蔽層11上に、グラビア印刷法を用いて、領域12a及び12bを形成した。この印刷には、アクリル樹脂にカーボンブラックを添加してなる黒色インキを使用した。領域12bとしては、星形状を有している部分と、隙間を空けてそれらを取り囲んでいる部分とからなり、2μmの厚さを有している黒色パターンを形成した。そして、この黒色パターンの隙間を、領域12bとした。
【0180】
次に、このようにして得られた表示体10を用いて、図3を参照しながら説明したのと類似した台紙付き粘着ラベルを製造した。具体的には、領域12a上に粘着層20aを形成して、粘着ラベル2を得た。粘着層20aの形成には、コンマコート法を利用した。粘着層20aとしては、アクリル系粘着剤からなり、20μmの厚さを有している層を形成した。この粘着ラベル2の粘着層20a上に、支持体30aとして離型紙をラミネートした。これにより、台紙付き粘着ラベルを得た。
【0181】
その後、この台紙付き粘着ラベルを用いて、図11及び図12に示すラベル付き物品1を製造した。即ち、支持体30aから粘着ラベル2を剥離し、これを物品40に貼り付けた。物品40としては、紙に印刷パターンを設けてなる商品券を使用した。なお、この商品券の粘着ラベル2を貼り付けるべき部分は、不透明であり且つ光透過性を有していた。
【0182】
<比較例1>
領域12a及び12bを基材とレリーフ構造形成層15との間に配置したこと以外は、例1において製造したのと同様の表示体10を製造した。この表示体10を用いて、例1において説明したのと同様の方法によりラベル付き物品1を製造した。
【0183】
<比較例2>
前面隠蔽層11として厚さが0.2μmのアルミニウム層を形成したこと以外は、例1において製造したのと同様の表示体10を製造した。なお、厚さが0.2μmのアルミニウム層は、光透過性を有していない。この表示体10を用いて、例1において説明したのと同様の方法によりラベル付き物品1を製造した。
【0184】
<評価1>
例1並びに比較例1及び2に係るラベル付き物品1を、前面側、即ち表示体10側から白色光で照明し、反射光を観察した。次に、これらラベル付き物品1を、背面側から白色光で照明し、透過光を観察した。その結果を、以下の表1に纏める。
【表1】

【0185】
表1において、「V」は、領域12a及び12bの各々に対応した像を視認できたことを表している。また、「NV」は、領域12a及び12bの各々に対応した像を視認できなかったことを表している。
【0186】
比較例1に係るラベル付き物品1は、前面側から白色光で照明して反射光を観察した場合には、花冠形状のパターンを含んだ回折像と、領域12a及び12bの各々に対応した像とを表示した。そして、比較例1に係るラベル付き物品1は、背面側から白色光で照明して透過光を観察した場合にも、領域12a及び12bの各々に対応した像を表示した。
【0187】
また、比較例2に係るラベル付き物品1は、前面側から白色光で照明して反射光を観察した場合には、花冠形状のパターンを含んだ回折像のみを表示した。そして、比較例2に係るラベル付き物品1は、背面側から白色光で照明して透過光を観察した場合は、像を表示しなかった。
【0188】
これに対し、例1に係るラベル付き物品1は、前面側から白色光で照明して反射光を観察した場合には、領域12a及び12bの各々に対応した像は表示せずに、花冠形状のパターンを含んだ回折像を表示した。そして、例1に係るラベル付き物品1は、背面側から白色光で照明して透過光を観察した場合には、領域12a及び12bの各々に対応した像を表示した。即ち、領域12a及び12bは、通常の観察条件のもとでは可視化せず、特殊な観察条件のもとでのみ可視化する潜像を形成していることを確認できた。
【0189】
<例2>
保護層19を省略したこと以外は図17及び図18を参照しながら説明したのと同様の表示体10を製造した。
【0190】
具体的には、まず、厚さが40μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムと、PVAフィルムにヨードを吸収させてなる厚さが20μmの直線偏光フィルムとを、厚さが10μmのアクリル感圧接着剤層を間に挟んで貼り合せた。
【0191】
このようにして得られた偏光子16上に、グラビア印刷機を用いて、スメクチック液晶材料を含有した塗工液を塗布した。この塗工液は、スメクチック液晶材料に光重合開始剤を添加し、更に有機溶剤で希釈することにより調製した。塗工液の塗布は、文字列「TP」に対応した形状を有し、乾燥膜厚が1.2μmの塗膜が得られるように行った。塗膜を乾燥させた後、これに紫外線を照射することにより塗膜を硬化させた。このようにして、位相差層18を得た。
【0192】
次に、ワイヤーバーを用いて、偏光子16及び位相差層18上に、ウレタン樹脂を有機溶剤に溶解させてなる溶液を塗布した。この塗膜を乾燥させて、中間層17を得た。
【0193】
続いて、中間層17上に、グラビア法によりウレタン樹脂を塗布した。ウレタン樹脂からなる塗膜は、5μmの厚さに形成した。更に、この塗膜の表面に、ロールエンボス法を用いて第1及び第2レリーフ構造を形成することにより、レリーフ構造形成層15を得た。なお、第1及び第2レリーフ構造としては、溝の長さ方向が互いに対して直交する回折格子を形成した。また、これらレリーフ構造の輪郭は花冠形状とした。
【0194】
その後、レリーフ構造形成層15上に、真空蒸着法により前面隠蔽層11を形成した。前面隠蔽層11としては、厚さが0.05μmのアルミニウム層を形成した。
【0195】
次に、このようにして得られた表示体10を用いて、図3を参照しながら説明したのと類似した台紙付き粘着ラベルを製造した。具体的には、偏光子16上に粘着層20aを形成して、粘着ラベル2を得た。粘着層20aの形成には、コンマコート法を利用した。粘着層20aとしては、アクリル系粘着剤からなり、20μmの厚さを有している層を形成した。この粘着ラベル2の粘着層20a上に、支持体30aとして離型紙をラミネートした。これにより、台紙付き粘着ラベルを得た。
【0196】
その後、この台紙付き粘着ラベルを用いて、図19及び図22に示すラベル付き物品1を製造した。即ち、支持体30aから粘着ラベル2を剥離し、これを物品40に貼り付けた。物品40としては、紙に印刷パターンを設けてなる商品券を使用した。なお、この商品券の粘着ラベル2を貼り付けるべき部分は、不透明であり且つ光透過性を有していた。
【0197】
<評価2>
例2に係るラベル付き物品1を、前面側、即ち表示体10側から自然光としての白色光で照明し、反射光を肉眼で観察した。また、このラベル付き物品1を、背面側から自然光としての白色光で照明し、透過光を肉眼で観察した。
【0198】
その結果、例2に係るラベル付き物品1は、前面側から自然光としての白色光で照明して反射光を肉眼で観察した場合には、図19に示すように、領域12a及び12bの各々に対応した像は表示せずに、花冠形状のパターンを含んだ回折像を表示した。また、このラベル付き物品1は、背面側から自然光としての白色光で照明して透過光を肉眼で観察した場合には、図20に示すように像を表示しなかった。
【0199】
次に、例2に係るラベル付き物品1を、前面側、即ち表示体10側から自然光としての白色光で照明し、直線偏光子を介して反射光を観察した。また、このラベル付き物品1を、背面側から自然光としての白色光で照明し、直線偏光子を介して透過光を観察した。
【0200】
その結果、例2に係るラベル付き物品1は、前面側から自然光としての白色光で照明し、直線偏光子を介して反射光を観察した場合には、図19に示すように、領域12a及び12bの各々に対応した像は表示せずに、花冠形状のパターンを含んだ回折像を表示した。また、このラベル付き物品1は、背面側から自然光としての白色光で照明し、直線偏光子を介して透過光を肉眼で観察した場合には、図21又は図22に示すように、花冠形状のパターンを含んだ回折像は表示せずに、文字列「TP」に対応した像を表示した。そして、この場合、直線偏光子60をその法線の周りで回転させたところ、文字列「TP」に対応した像とその背景の像との間で明暗が反転した。
【符号の説明】
【0201】
1…物品、10…表示体、10’…転写材層、11…前面隠蔽層、11a…第1部分、11b…第2部分、12a…領域、12b…領域、13…基材、14…剥離保護層、15…レリーフ構造形成層、16…偏光子、16a…部分、16b…部分、17…中間層、17a…部分、17b…部分、18…位相差層、18a…領域、18b…領域、19…保護層、20…粘着又は接着層、20a…粘着層、20b…接着層、30a…支持体、30b…支持体、40…物品、50…光源、60…偏光子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有し、金属を含んだ前面隠蔽層と、前記前面隠蔽層と向き合い、可視光領域内の何れかの波長を有している偏光を照明光として照射した場合に互いに異なる透過率を示すか又は互いに異なる偏光を透過光として射出する複数の領域とを具備し、前記前面隠蔽層及び前記複数の領域は、使用時に、前記複数の領域が前記前面隠蔽層を間に挟んで観察者と向き合うように配置される表示体。
【請求項2】
前記複数の領域の少なくとも一部は、前記表示体を前記複数の領域側から自然光としての白色光で照明し且つ前記表示体を前記前面隠蔽層側から観察した場合に識別が不可能であって、前記表示体を前記複数の領域側から偏光で照明し且つ前記表示体を前記前面隠蔽層側から偏光子を介して又は偏光子なしで観察することにより可視化する潜像を形成している請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記複数の領域は、第1偏光子を含んだ第1領域と、前記第1偏光子とは透過軸の向きが異なる第2偏光子を含んだ第2領域とを含み、前記第1及び第2領域は前記潜像の少なくとも一部を形成している請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記複数の領域は、光学的異方性を有している第1領域と、光学的に等方性であるか又は前記第1領域とは異なる光学的異方性を有している第2領域とを含み、前記第1及び第2領域は前記潜像の少なくとも一部を形成している請求項2に記載の表示体。
【請求項5】
前記複数の領域は、第1多層膜を含んだ第1領域と、多層膜を含んでいないか又は前記第1多層膜とは前記波長を有している光についての透過率が異なる第2多層膜を含んだ第2領域とを含み、前記第1及び第2領域は前記潜像の少なくとも一部を形成している請求項2に記載の表示体。
【請求項6】
前記前面隠蔽層の表面にレリーフ構造が設けられている請求項1に記載の表示体。
【請求項7】
前記レリーフ構造は回折構造又は光散乱構造を含んだ請求項6に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の領域を間に挟んで前記前面隠蔽層と向き合った背面隠蔽層を更に具備し、光前記背面隠蔽層は、透過性を有し、金属を含んだ背面隠蔽層を更に具備した請求項1に記載の表示体。
【請求項9】
前記前面及び背面隠蔽層の各々の表面にレリーフ構造が設けられている請求項8に記載の表示体。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体に支持された粘着層とを具備した粘着ラベル。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを具備した転写箔。
【請求項12】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備したラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−280079(P2010−280079A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133205(P2009−133205)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】