説明

表示手段

【課題】 本発明は運転者のシステム信頼性をより高めることを可能とした推奨行動値の表示手段を提供する。
【解決手段】 周囲と自車両の状況に応じた運転者の推奨行動値(速度、加減速度、制動力、アクセル開度、ブレーキ操作量、操舵量、横加速度等)を表示する表示手段において、推奨行動値の上限値(y)から下限値(y)までの範囲の大きさに応じて、その範囲を表示する際に、輝度、色相、彩度、模様密度等を変化させることで同範囲を曖昧に表示することにより、運転者が推奨行動値を幅のある数値として認識しやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等において操作者の推奨行動値を表示する表示手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されるナビゲーション装置や走行支援装置において、運転者に速度や操舵量の推奨値を提示することで、運転を支援する装置が知られている。例えば、特許文献1に開示されている技術は、インフラ情報などに基づいてカーブ走行時に適切な推奨速度を運転者に提示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシステム側から提供される推奨速度等の情報は、予測に基づいた情報であるため、現在車速等の情報とは異なり、予測の基となる物理量の検出精度のほかに、予測精度の影響を受ける。さらに、他の車両や歩行者等の存在によっても影響を受けることになる。例えば、上述の特許文献1に記載された技術の場合には、運転者がカーブを曲がる際に推奨速度以下での走行を維持するために、カーブに入る時点の減速操作を支援しているが、先行車両や対向車両が存在する場合、それらの車両の挙動によっては、推奨通りの減速操作が困難であったり、適切でない場合が出てきてしまい、実現結果との間にずれが生ずる。このように予測と実現結果とのずれが大きいと、運転者のシステムに対する信頼性が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は運転者のシステム信頼性をより高めることを可能とした推奨行動値の表示手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる表示手段は、運転者に推奨する運転操作量である推奨行動値を表示する表示手段において、推奨行動値の上限値から下限値までの範囲の大きさに応じて、同範囲を曖昧に表示することを特徴とする。
【0007】
この推奨行動値は、例えば、車両の場合には、速度、加減速度、アクセル開度、ブレーキ操作量、操舵量といった車両挙動を変更するための運転者による各種操作量として提供されるものである。
【0008】
ここで、上限値から下限値までの範囲の輝度、色相、彩度、模様密度の少なくともいずれか一つを一方から他方に向けて変化させるか、中央付近から上限値、下限値側の双方に向けて変化させることで曖昧表示を行うとよい。
【発明の効果】
【0009】
自車両や周囲の車両の状況に応じて運転者の推奨行動値を設定する場合、前述したように、推奨行動値自体にずれが生じざるを得ない。本発明によれば、推奨行動値自体に上限値と下限値を持つ幅のある値として設定し、運転者に対して表示する際に、この幅に応じて範囲を曖昧に表現することにより、運転者が推奨行動値の範囲を認識しやすくなるとともに、推奨行動自体に余裕があるため、その実現が容易になる。また、実現結果自体もある程度の余裕幅があることが容易に認識できるので、システムの提案する推奨行動に過剰な期待を抱くことがなく、システムに対する信頼性も向上する。
【0010】
上述したように、輝度、コントラスト、模様密度等を設定することで、範囲幅を視認性よく曖昧に表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかる表示装置を含む運転支援システムのブロック構成図である。
【図2】図1の装置における表示処理を示すフローチャートである。
【図3】予測値の頻度例を示すグラフである。
【図4】図3の予測値に基づく推奨行動値を示すグラフである。
【図5】図1の装置における表示例を示す図である。
【図6】別の予測値の頻度例を示す図である。
【図7】図6の予測値に基づく推奨行動値を示すグラフである。
【図8】他車両の予測速度変化を示す図である。
【図9】図8の予測値に基づく推奨行動値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に、本発明にかかる表示装置を含む運転支援システムのブロック構成図を示す。この運転支援システムは、ECU(Electric Control Unit)1を中心に構成されており、ECU1は、CPU、ROM、RAM等を含む。ECU1は、予測手段10、推奨値設定手段11、表示制御手段12を備えている。各手段10〜12は、ECU1内でハードウェア的に区分されて構成されていてもよいし、共通のハードウェアを用いるソフトウェアとして実現されていてもよい。また、後述する他のECU2内でその一部を構成していてもよい。また、ECU1は、車内LAN等によって他のECU2(エンジンECUやブレーキECU等の車両制御ECUや情報処理関連のECUなど)に接続されている。
【0014】
ECU1には、車速センサ31、舵角センサ32のほか、自車両が走行する車線の区画線を認識する白線認識装置33や、自車両周囲の障害物や先行車両を検出する障害物検出装置34の各出力が入力されている。一方、ECU1は、表示装置41やスピーカー42に接続されて、表示、音声信号を出力する。表示装置41としては、計器パネル内に配置される各種の表示系や、汎用モニターを利用したディスプレイ等が利用できる。
【0015】
本システムの動作について説明する。図2は、図1の装置における表示処理を示すフローチャートである。この動作はECU1によって運転支援システムの作動中、所定のタイミングで繰り返し実行される。最初に、車両状態量が読み込まれる(ステップS1)。ここで読み込む車両状態量としては、車速センサ31で取得した車速、舵角センサ32で取得した操舵量、白線認識装置33で取得した車線情報、障害物検出装置34で取得した先行車両との距離、相対速度のほか、図示していないナビゲーション装置で取得した自車両の位置、周囲の交通状況などが含まれる。
【0016】
次に、取得した車両状態量に基づいて予測手段10による予測が行われる(ステップS2)。ここでの予測としては、例えば、特許文献1に記載されているような車線情報に基づいて自車両の車両挙動を予測したり、周囲の車両の車両挙動予測が挙げられる。予測後にこの予測値について、基礎となる状態量の検出精度や予測推定精度に基づいて取りうる上下限値を算出する(ステップS3)。
【0017】
上下限値を算出後に、推奨値設定手段11は、予測値、上下限値に応じて運転者が行動すべき操作量の推奨値を算出する(ステップS4)。この運転者の操作量としては、推奨速度、推奨加速度(減速度)、推奨制動力、推奨アクセル開度、推奨ブレーキ操作量、推奨操舵量、推奨横加速度といった車両挙動を変更する各種の操作量が挙げられる。設定後、表示制御手段12は、下限値、上限値の範囲を曖昧に表示するよう表示装置41に指示して表示を行う(ステップS5)。このとき、あわせてスピーカー42により運転者に推奨行動を指示するとよい。
【0018】
以下、表示例について具体的に説明する。第1の表示例は、予測値Aに基づいて、推奨値Bを表示する場合の例である。予測値Aについては、図3に示されるように、その中心値がx、標準偏差がσである。この場合の上限値xとしては、x+σが、下限値xとしては、x−σがそれぞれ採用される。このときのxに対する推奨値がyであり、同様に、x、xに対する推奨値がy、yである場合、推奨値Bを表示する際の濃度を図4に示されるように、yで最大として、yで最小となるようにy、y間で直線的に変化するよう表示させる。図5(a)はこの表示例を示している。もちろん、これとは、逆に、濃度をyで最大として、yで最小となるようにy、y間で直線的に変化するよう表示させることも可能である。運転者の行動が推奨値範囲より小さい側にずれることは許容されるが、大きい側にずれることは許容されない場合には、前者(図5(a)に示される例)の表示が好ましく、逆の場合には、後者の表示とすればよい。
【0019】
また、推奨値範囲から小さい側、大きい側のいずれにずれることも好ましくない場合には、その濃度がyで最大となり、y、yのいずれの側へ向けても濃度が低くなるような表示(図5(b)参照)を行うとよい。
【0020】
ここでは、濃度(コントラストまたは輝度)を変化させる場合を示したが、色相、彩度、模様の密度を変化させることによって推奨値の範囲を表示してもよい。いずれの場合であっても、上限値、下限値付近の表示とそれに隣接する領域との区別が曖昧になるように表示を行う。このような表示を行うことにより、推奨値が推定誤差等を含むことを運転者が視覚的に容易に認識することができる。このため、推奨値に対して運転者が過剰な期待を抱くことがなく、推奨値通りの行動をした場合の実現結果が予測値とずれた場合であっても、運転者がシステムに対して不信感を持つことが少ない。また、推奨値自体が上限値と下限値を有する幅のある範囲として提供されるので、運転者が推奨行動を行う際に余裕を持って行動することができるため、運転者の負担を軽減することもできる。
【0021】
次に、第2の表示例を図6、図7を参照して説明する。ここでは、例えば、交差点の停止線等の所定の位置で停止する場合を考える。図6に示されるように推奨値の中心値をxとしたとき、最も進行方向よりの推奨位置がx、車両側の推奨位置をxとする。ここで、図6の横軸は、現在位置からの走行距離を示しており、縦軸は、停止位置の予測値について誤差を考慮した場合の出現度の積算値である。この予測値に基づいて燃費上も有利でかつ安全に停止するための推奨速度を求める。x、x、xそれぞれに対する推奨速度値がそれぞれvs、vs、vsである場合、図7に示されるように、vs、vs間の範囲について濃度を直線的に変化させて表示する。この場合も第1の表示例と同様の効果が得られる。
【0022】
続いて、第3の表示例を図8、図9を参照して説明する。ここでは、先行車両の車両挙動を予測して、適切な車間距離を維持しつつ、これに追従して走行する場合を考える。図8に示されるように、直前車の予想速度の中間値がvであり、その上限値がv、下限値がvであると予想したとする。それぞれに対応する自車両の推奨速度がv'、v'、v'である場合、図9に示されるように、v'、v'間の範囲について濃度を直線的に変化させて表示する。この場合も第1、第2の表示例と同様の効果が得られる。
【0023】
以上の表示例は、推奨速度の場合を例に説明してきたが、その他の推奨値の表示の場合も同様の手法で表示を行うとよい。ここでは、推奨値範囲を静的に表示する例を説明してきたが、推奨値範囲の輝度、色相、彩度、模様密度を動的に変化させることで、この範囲を曖昧に表示してもよい。例えば、図5に示されるようなバー表示の場合に推奨値範囲の色合いをその下限から上限に向けて流動して見えるように変化させる。もちろん、上限から下限に向けて流動させたり、中央値から上限、下限の双方へ向けて、あるいは、上限、下限から中央値へ向かって流動させてもよい。表示手法はバー表示に限られるものではなく、アナログ的な表示手法であれば他の各種の表示を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、車両等において、運転者に推奨行動値を表示する表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1、2…ECU、10…予測手段、11…推奨値設定手段、12…表示制御手段、31…車速センサ、32…舵角センサ、33…白線認識装置、34…障害物検出装置、41…表示装置、42…スピーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に推奨する運転操作量である推奨行動値を表示する表示手段において、
推奨行動値の上限値から下限値までの範囲の大きさに応じて、同範囲を曖昧に表示することを特徴とする表示手段。
【請求項2】
上記上限値から下限値までの範囲の輝度、色相、彩度、模様密度の少なくともいずれか一つを一方から他方に向けて変化させることで曖昧表示を行うことを特徴とする請求項1記載の表示手段。
【請求項3】
上記上限値から下限値までの範囲の輝度、色相、彩度、模様密度の少なくともいずれか一つを中央付近から上限値、下限値側の双方に向けて変化させることで曖昧表示を行うことを特徴とする請求項1記載の表示手段。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図5】
image rotate