説明

表示機能を備えた安価な空気浄化マスク

【課題】空気中のウイルスやバクテリア、VOCなどに対する分解力を有し、かつ安価に大量に生産でき、機能を再生、繰り返し使用できるマスクを提供すること。またマスクのpH、あるいは機能性の経時的な変化を可視化し、文字やマークが表示されたり消えたりするマスクを提供すること。
【解決手段】空気浄化力を有するアルカリ性粒状物質あるいは多孔性成形体で構成されるシート1を、マスク2内部に挟み、ウイルスやバクテリア、VOCなどその他人体に有害な粒子を捕捉、分解、除去する。シートのpHは次第に中性に近づき、その機能性は失われていくが、定期的にシートの交換、再生により機能性を回復することができる。色を変化させる指示薬を染み込ませ、シートのpHの変化に応じてシート自体の色を変化させ、マスクの機能性の変化を可視化したり、特定の文字やマークが表示されたり消えたりすることで、周囲へ特定のメッセージを伝えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気浄化マスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されているマスクは、ガーゼを重ね合わせたマスク本体と、このマスク本体の両端部に取り付けられたゴム紐により構成されている。このマスクの着用時にはゴム紐を両耳に引っかけ、マスク本体で使用者の口や鼻を覆うようになっている(例えば、特許文献1参照)。マスクを着用する目的は、雑菌などが外部から体内へ侵入することを防いだり、あるいは逆に体内から外部へ飛散することを防止するためのものである。そのため、場合により吸着剤や抗菌剤などをマスク本体に挟むか、あるいは配合し、より多くの雑菌などを吸着できるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−357871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガーゼマスクは実質的にウイルスやVOCなど感染性や活性のある小さな粒子に対しては効果が期待できない。
【0005】
また、吸着剤や抗菌剤などを配合したマスクは、そうした粒子に対する効果をある程度期待したものであるが、コスト高のため、高価である。
【0006】
また上記のような機能性を持ったマスクも、機能性の持続性が不明で、機能性が失われる時期が判別できない課題があった。
【0007】
さらに機能性が失われた後は、買い換えるしか方法がなく、マスクの入手が困難な地域においてはマスクを大量に在庫しておかなければならない課題もあった。
【0008】
また従来のマスクは白一色の無機質な外観で周囲に与える印象が決して良いとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
空気浄化力を有する水酸化カルシウムなどからなるアルカリ性の粒状物質あるいは多孔性成形体で構成されるシートを、マスク内部に配合するか、挟むことで、ウイルスやバクテリア、細菌、プリオン、VOC、硫化水素など人体に有害な粒子を捕捉、分解、除去し、体内への吸入や、周囲への飛散を阻止することができる。
【0010】
水酸化カルシウムは安価に、かつ容易に入手できる材料であるため、該マスクは安価にかつ大量に生産することができる。
【0011】
該シートはプレス成形機やパン型造粒機で成形したり、または調湿性や吸着性を有する樹脂で成形したりできる。この際に吸着剤を混ぜ込むこともできる。
【0012】
該シートのpHは次第に中性に近づき、その機能性は失われていくが、該シートを水酸化カルシウムあるいはドロマイトからなる水溶液に浸漬するか、あるいは吹きかけることで、該空気浄化マスクの機能を回復することができる。
【0013】
また該シートにpHによって色を変化させる指示薬を染み込ませ、シートのpHの変化に応じてシート自体の色を変化させ、マスクの機能性の変化を可視化することができる。同様に指示薬の色の変化により特定の文字やマークが表示されたり消えたりすることで、周囲へ特定のメッセージあるいはイメージを伝えることができる。
【発明の効果】
【0014】
該空気浄化マスクは、高い浄化性能をもちつつ、安価で、入手しやすい材料からなり、該マスクを安価に大量に、かつ迅速に生産できる。そのため、特殊な生産機器を持たない地域においても、容易に該マスクを生産でき、需要に応えることができる。
【0015】
また水酸化カルシウム等のアルカリ性物質に、pHの変化により色を変える指示薬を染み込ませることで、機能性が失われつつあることが目視により簡便に確認が出来る。
【0016】
また指示薬をある特定の文字やマーク状に染み込ませることで、メッセージ性やエンターテイメント性を持たせることもでき、従来のマスクが周囲に与えている悪印象を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】マスク本体、マスクの構成
【図2】アルカリ性物質で構成されるシート、あるいは粒状物質が封入されたシート模式図
【図3】指示薬により色や文字、マークなどを表示させる場合の模式図
【図4】指示薬、シート1、取り付け具9、マスク本体2、ガーゼあるいはフィルター5の組み立て時の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質からなる粒状物質6を、プレス成形機やパン型造粒機で成形したり、または調湿性や吸着性を有する樹脂で成形したりすることでシート状に成形する。この際に吸着剤を混ぜ込むこともできる。
【0019】
シート状に成形した粒状物質6を袋状フィルター7に挿入し、シート1を作成する。袋状フィルター7はアルカリ性物質の粒径以下の孔径を有し、かつ通気性の高い孔径を有する。
【0020】
該シート1を、呼吸時に吸気が該シート1を通るようにマスクへ取り付ける。取り付け位置は特定されるものではないが、望ましくは図1のようにマスク外側に付ける。これにより、塩基性物質あるいは酸性物質が体内へ取り込まれることを極力防ぐことができる。
【0021】
該シート1は、使用時には経時的にそのpHが中性に近づき、次第に機能性、つまり空気浄化性が失われていく。その機能性を回復するため、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの水酸化物、次亜塩素酸、塩酸などからなる還元性溶液あるいは酸化性溶液を吹きかけるか、あるいはそうした溶液に浸漬することで、再度pHを塩基性領域あるいは酸性領域に戻し、マスクを殺菌消毒するとともに、その機能性も回復させることができる。これによりマスクは、そうした溶液をスプレーなどと共に携帯することで長期間使用することができる。
【0022】
該シート1は、指示薬を染み込ませることで、そのpHの変化を色で可視化することができる。これにより機能性が失われつつあることが目視により簡便に確認が出来る。指示薬としてはたとえば、ブロモチモールブルー (BTB)、ブロムクレゾールパープル、フェノールフタレイン (PP)、メチルオレンジ(MO)、メチルレッド(MR)、チモールブルー(TB)などが用いられる。いずれの指示薬を用いるかは、それぞれの変色域や色で選択する。また指示薬をある特定の文字やマーク状に染み込ませることで、メッセージ性やエンターテイメント性を持たせることもできる。
【実施例1】
【0023】
水酸化カルシウムを、パン型造粒機にて粒径100ミクロンの顆粒状に成形し、孔径50ミクロンのシート状フィルターで包みシートを作成した。
【0024】
シートに該シートをマスクに設置し、粒径100nmのインフルエンザウイルスを含むガスで流通実験を行い、出口におけるウイルス濃度を測定した。その結果99%のウイルスを除去していた。
【実施例2】
【0025】
水酸化カルシウムを、圧縮成形機にて孔径1〜100ミクロンの細孔を有するシート状成形体に成形した。
【0026】
該シートをマスクに設置し、粒径100nmのインフルエンザウイルスを含むガスで流通実験を行い、出口におけるウイルス濃度を測定した。その結果99%のウイルスを除去していた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
マスク産業に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1,アルカリ性物質で構成されるシート、あるいは粒状物質が封入されたシート
2,マスク本体
3,ゴムバンドあるいはマスクの取り付け具
4,1のマスクへの袋状取り付け具
5,ガーゼあるいはフィルター
6,アルカリ性物質、あるいは粒状物質
7,袋状フィルター
8,指示薬により変化した色、あるいは文字、マーク等
9,1のマスクへのテープ状取り付け具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質からなる粒状物質あるいは多孔性成形体で構成されるシートが、マスク内部に配合、あるいは挟み込まれ、該粒状物質がその粒径によって指定される孔径を有したフィルターで被われていることを特徴とする空気浄化マスク。

【請求項2】
請求項1に記載の該シートに、pHによって色を変化させる指示薬を染み込ませ、シートのpHの変化に応じてシート自体の色を変化させ、マスクの機能性の変化を可視化することを特徴とするマスク。また、色の変化により、特定の文字やマークが表示されたり消えたりすることで、マスクの機能性の変化を可視化したり、周囲へあるメッセージを伝えることを特徴とするマスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274022(P2010−274022A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131749(P2009−131749)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(309020127)
【出願人】(509154110)
【出願人】(509154121)
【Fターム(参考)】