説明

表示用前面板の製造方法

【課題】膜厚が均一な反射防止膜を備えた表示用前面板を製造する方法を提供する。
【解決手段】はじめに、透明基板20を準備する。次に、透明基板20の観察者側の面上に、低屈折率層31の材料を含む多数の液滴33を吐出する。その後、透明基板20の観察者側の面上の液滴33を硬化させる。これによって、低屈折率層31からなる反射防止膜30を備えた表示用前面板40が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に対して観察者側に配置される表示用前面板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶ディスプレイ(以下、LCDとも言う。)やプラズマディスプレイ(以下、PDPとも言う)などの表示部の観察者側に、表示部を保護するための表示用前面板を設けることが知られている。この表示用前面板の観察者側の最外面をガラス基板などの透明基板とする場合、透明基板/空気界面の屈折率差により反射が起こる。
【0003】
このため、通常、表示用前面板には反射防止フィルムや反射防止膜が設置されている(例えば、特許文献1の図6(B)(C)参照)。この反射防止フィルムは、Tac(セルローストリアセテートフレークスを主原料とし、溶剤にメチレンクロライド、可塑剤にトリフェニールフォスフェートなどを用いるもの)フィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの基材フィルムに反射防止材料を塗布したものからなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−215056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、透明基板に反射防止フィルムが貼り付けられる態様について図15(a)−(e)を用いて説明する。まず、ロール状になった基材フィルム95が広げられ(図15(a)参照)、次に、基材フィルム95の一面に反射防止材96がコーティングされる(図15(b)参照)。その後、反射防止材96が乾燥された後で露光されることで、反射防止フィルムが準備される。
【0006】
次に、透明基板20が準備され(図15(c)参照)、そして、透明基板20に接着剤やテープなどの接着層を介して基材フィルム95が貼り付けられる(図15(d)参照)。その後、透明基板20からはみ出た反射防止フィルムが切断される(図15(e)参照)。
【0007】
反射防止フィルムを用いた場合には、上記のように反射防止フィルムを透明基板20に貼る作業が発生し、反射防止フィルムを透明基板20に貼る際に異物や気泡の混入などのリスクが生じる。また、基材フィルム95によって光の透過率が低下してしまう。また、反射防止フィルムを用いた場合には、透明基板20から面方向にはみ出た部分をカットする必要が生じ、無駄が生じてしまう。さらに、基材フィルム95にはうねりがあるため、このうねりによって見た目が不均一になってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る表示用前面板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表示部に対して観察者側に配置される表示用前面板の製造方法において、透明基板を準備する工程と、前記透明基板の観察者側の面上に、反射防止材料を含む多数の液滴を吐出する工程と、前記透明基板の観察者側の面上の前記液滴を硬化させて、反射防止材料を含む反射防止膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする表示用前面板の製造方法である。
【0010】
本発明による表示用前面板の製造方法において、好ましくは、前記液滴が、インクジェット法により前記透明基板の観察者側に吐出される。
【0011】
本発明による表示用前面板の製造方法において、前記透明基板が、湾曲した輪郭を少なくとも部分的に有していてもよい。
【0012】
本発明による表示用前面板の製造方法において、前記透明基板と前記反射防止膜との間に、観察者側から前記反射防止膜に印加される圧力を緩和するための緩衝層が介在されていてもよい。
【0013】
本発明による表示用前面板の製造方法において、前記反射防止膜は、観察者側の最外面に位置する低屈折率層を有し、前記低屈折率層の光屈折率は前記透明基板の光屈折率よりも小さく、かつ、前記低屈折率層の厚みは80〜150nmの範囲内となっていてもよい。この場合、好ましくは、前記緩衝層の厚みは0.5μm以上となっており、前記緩衝層に対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込んだ際のビッカース硬度は50〜100の範囲内であり、かつ、その際の前記緩衝層の総変形量に対する前記緩衝層の弾性変形量の割合は0.55以上となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、はじめに、透明基板の観察者側の面上に、反射防止材料を含む多数の液滴を吐出し、次に、各液滴を硬化させることにより、反射防止材料を含む反射防止膜が透明基板の観察者側の面上に形成される。このため、反射防止膜の膜厚を、透明基板の全域にわたって略均一にすることができる。このことにより、全域にわたって反射ムラの小さい表示用前面板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態による表示装置を示す断面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による表示用前面板の製造方法を示す図。
【図3】図3(a)(b)は、表示用前面板の製造方法において、透明基板に反射防止材料を含む多数の液滴を吐出する工程を示す図。
【図4】図4(a)(b)(c)は、図3(b)に示す枠IVで囲まれた領域内の液滴が広がる様子を示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態による表示用前面板の反射防止膜を拡大して示す断面図。
【図6】図6は、第1の比較の形態による表示用前面板の反射防止膜を拡大して示す断面図。
【図7】図7(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態の変形例において、透明基板に反射防止材料を含む多数の液滴を吐出する工程を示す平面図。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態による表示装置を示す断面図。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態による表示装置を示す断面図。
【図10】図10は、緩衝層の総変形量および弾性変形量を説明するための図。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態の変形例による表示装置を示す断面図。
【図12】図12は、本発明の第4の実施の形態による表示装置を示す断面図。
【図13】図13は、本発明の第4の実施の形態の変形例による表示装置を示す断面図。
【図14】図14は、意匠部を備えた表示装置の例を示す断面図。
【図15】図15は、反射防止フィルムを用いた表示用前面板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る表示用前面板の第1の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。はじめに、表示用前面板40を備えた表示装置70全体について説明する。
【0017】
表示装置
図1に示すように、表示装置70は、LCD、PDP、有機ELなどの表示部50と、表示部50に対して観察者側に配置された表示用前面板40と、を備えている。これら表示部50および表示用前面板40は、映像を表示させるための表示領域と、表示領域の周縁に位置する非表示領域とに区画されていてもよい。
【0018】
表示用前面板
表示用前面板40は、表示部50を保護するために設けられるものである。この表示用前面板40は、透明基板20と、透明基板20の観察者側に設けられた反射防止膜30と、を備えている。図1に示すように、表示用前面板40において、反射防止膜30が観察者側の最外面の層(膜)となっている。このうち透明基板20は、矩形状の輪郭を有していてもよく、若しくは、湾曲した輪郭を少なくとも部分的に有していてもよい。例えば後に図3を参照して示すように、透明基板20の四隅が湾曲部23から構成されていてもよい。
【0019】
なお本明細書において、「層」、「膜」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。従って、例えば「膜」は、層とも呼ばれ得るような部材や部分も含む概念となっている。
【0020】
以下、表示用前面板40を構成する各要素について詳細に説明する。
【0021】
(透明基板)
はじめに透明基板20について説明する。透明基板20の材料は、表示部50からの光を外部に取り出すことができる限り特に限定されるものではない。例えば、透明基板20の材料として、光透過性や耐久性等を考慮して、ガラスやポリマー等が用いられる。本実施の形態においては、透明基板20の材料としてガラスが用いられており、その光屈折率は例えば1.50となっている。透明基板20の厚みは、表示用前面板40に求められる強度や表示部50の寸法等に応じて適宜設定されるが、例えば0.1〜1.5mmの範囲内となっている。なお本明細書において、光屈折率は、波長550nmの光に対する屈折率となっている。屈折率の測定方法は特に限定されないが、分光反射スペクトルから算出する方法、エリプソメーターを用いて測定する方法及びアッベ法を挙げることができる。
エリプソメーターとしてはジョバンーイーボン社製UVSELが挙げられる。
なお、本件の屈折率はテクノ・シナジー社製DF1030Rにて測定した値である。
【0022】
(反射防止膜)
次に反射防止膜30について説明する。反射防止膜30は、表示装置70の観察者側の最外面における外光の反射を低減するために設けられる膜である。この反射防止膜30は、図1に示すように、観察者側の最外面に位置する低屈折率層31を有している。
【0023】
低屈折率層31の光屈折率は、反射防止膜30における外光の反射を少なくするため、透明基板20の光屈折率よりも小さくなっている。本実施の形態においては、低屈折率層31の光屈折率は、ガラスからなる透明基板20の光屈折率である1.50よりも小さくなっており、好ましくは1.35よりも小さくなっている。これによって、反射防止膜30における外光の反射を低減することができる。
【0024】
このような低屈折率層31を構成する材料としては、光透過性を有するとともに所望の光屈折率が実現される限りにおいて特に限定されず、周知の材料が用いられる。例えば低屈折率層31の材料として、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂を用いることができる。また低屈折率層31として、特開2005−43749号公報に開示されているような、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖にエチレン性不飽和基を有する重合単位を含む低屈折率層が用いられてもよい。
【0025】
また、低屈折率層31内に複数の中空フィラー(図示せず)が分散されていてもよい。中空フィラーの内部は空気などで充填されており、このため、低屈折率層31全体としての光屈折率をより小さくすることができる。このような中空フィラーとしては、例えば、中空になっているガラスビーズなどが用いられる。
【0026】
また光の干渉が生じるのを防ぐため、低屈折率層31の厚みは、可視光の波長の1/4よりもほぼ小さくなっている。例えば、低屈折率層31の厚みは、80〜150nmの範囲内となっている。これによって、低屈折率層31において光の干渉が生じるのを防ぐことができる。
【0027】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。はじめに、表示用前面板40および表示装置70の製造方法について説明する。
【0028】
表示用前面板の製造方法
まず、透明基板20が準備される(図2(a)参照)。次に、透明基板20の観察者側の面上に低屈折率層31が形成される(図2(b)参照)。以下、透明基板20の観察者側の面上に低屈折率層31を形成する方法について、図3(a)(b)および図4(a)(b)(c)を参照して詳細に説明する。ここでは、インクジェット法により低屈折率層31を形成する方法について説明する。
【0029】
はじめに図3(a)に示すように、低屈折率層31の材料(反射防止材料)を含む吐出液を透明基板20の観察者側の面上に吐出する吐出機81を準備する。この吐出機81は、吐出液をインクジェット法により吐出するための1つのノズル82を有している。
【0030】
次に図3(b)に示すように、透明基板20上で吐出機81を走査させながら、吐出液を透明基板20上に断続的に吐出する。これによって、透明基板20の観察者側の面上に、低屈折率層31の材料を含む多数の液滴33が点状に吐出される。
【0031】
図4(a)(b)(c)は、図3(b)に示す枠IVで囲まれた領域内の液滴33を拡大して示す図である。図4(a)(b)(c)においては、多数の液滴33から低屈折率層31が形成される様子が時系列で示されている。以下、低屈折率層31が形成される過程について詳細に説明する。
【0032】
図4(a)は、吐出機81から吐出された直後の液滴33を示す図である。図4(a)に示す例において、各液滴33は、互いに接触することなく透明基板20の観察者側の面上にある。ここで、各液滴33の直径が符号dにより表されており、各液滴33間の間隔が符号wにより表されている。
【0033】
図4(b)は、時間の経過に伴って各液滴33が透明基板20の観察者側の面上で広がり、これによって各液滴33が互いに接触している様子を示す図である。このような液滴33の広がりは、例えば、液滴33の粘度や液滴、または液滴33と透明基板20の観察者側の面との間のぬれ性などに応じて進行すると考えられる。
【0034】
さらに時間が経過すると、各液滴33がさらに広がり、これによって、透明基板20の観察者側の面が全域にわたって液滴33で覆われる。その後、各液滴33を硬化させる。これによって、図4(c)に示すように、透明基板20の観察者側の面上に、反射防止材料を含む低屈折率層31が形成される。このようにして、低屈折率層31からなる反射防止膜30が透明基板20の観察者側の面上に形成される。
【0035】
なお、全域にわたって透明基板20の観察者側の面を覆う多数の液滴33を硬化させる方法が特に限られることはなく、様々な方法が適宜用いられる。例えば、液滴33は、乾燥された後で露光されたり、乾燥された後で加熱されたり、乾燥された後で露光および加熱されたり、乾燥のみされたりすることで硬化される。
なお一般に、低屈折率層31の材料に紫外線硬化樹脂が含まれている場合には、各液滴33を露光することで硬化が達成される。また、低屈折率層31の材料に熱硬化樹脂が含まれている場合には、各液滴33を加熱することにより硬化が達成される。
【0036】
以上のようにして、透明基板20と、透明基板20の観察者側に設けられた反射防止膜30と、を備えた表示用前面板40が製造される。
【0037】
表示装置の製造方法
そして、このように製造された表示用前面板40を表示部50の観察者側に配置して取り付けることで表示装置70が製造される(図1参照)。
【0038】
次に、本実施の形態の効果を、第1の比較の形態と比較して説明する。図5は、本実施の形態の効果を説明するための図であり、本実施の形態による表示用前面板40の反射防止膜30を拡大して示す断面図である。図6は、第1の比較の形態による表示用前面板90の反射防止膜92を拡大して示す断面図である
【0039】
第1の比較の形態
はじめに図6を参照して、第1の比較の形態による表示用前面板90について説明する。第1の比較の形態による表示用前面板90において、反射防止膜92を構成する低屈折率層91は、低屈折率層91の材料を含む吐出液が連続的に吐出されることにより形成されている。例えば、低屈折率層91の材料を含む吐出液が、ダイコート法、スピンコート法またはディップコート法などにより吐出されている。すなわち第1の比較の形態において、低屈折率層91の材料を含む吐出液を吐出する方法は、多数の液滴を点状で断続的に吐出する方法ではない。
【0040】
吐出方法としてダイコート法、スピンコート法またはディップコート法が用いられる場合、形成される低屈折率層91の端部に、図6に示すような盛り上がり部93が形成されることが考えられる。なぜなら、スピンコート法またはディップコート法においては吐出液が透明基板20の周縁部に溜まる傾向があるが、この際、吐出液の表面張力に起因して、透明基板20の周縁部に溜まった吐出液が盛り上がり部93として残るからである。なお、吐出液が透明基板20の周縁部に溜まる傾向は、一般に、透明基板20の四隅が湾曲部23によって構成されている場合により大きくなる。またダイコート法においては、吐出液の吐出を開始する位置と吐出液の吐出が終了する位置で単位面積あたりの吐出量が多くなるからである。
【0041】
図6において、低屈折率層91の厚みの最大値、すなわち盛り上がり部93における低屈折率層91の厚みが符号bにより表されている。また、低屈折率層91の厚みの最小値が符号bにより表されている。図6に示すように、低屈折率層91の厚みの最大値bと最小値bとの間には大きな差がある。このため、低屈折率層91の所定の箇所における厚み、とりわけ端部近傍における厚みは、低屈折率層91全域の厚みの平均値から大きくかい離した値となっている。このような低屈折率層91の厚みのばらつきは、低屈折率層91における光の反射率のばらつきを生じさせる。このため、第1の比較の形態による反射防止膜92においては、光の反射ムラが生じていると考えられる。
【0042】
本実施の形態の効果
これに対して本実施の形態によれば、上述のように、低屈折率層31の材料を含む吐出液は、多数の液滴33として点状に透明基板20上に吐出される。このため、透明基板20の全域にわたって、各液滴33が吐出される位置を精密に制御することができる。すなわち、透明基板20の観察者側の面上に、全域にわたって均一な密度で吐出液を吐出することができる。このことにより、図5に示すように、形成される低屈折率層31の厚みを、透明基板20の全域にわたって均一にすることができる。これによって、低屈折率層31における光の反射率を均一にすることができ、このことにより、光の反射ムラが生じるのを防ぐことができる。
【0043】
また本実施の形態によれば、透明基板20の輪郭によらず、透明基板20の全域にわたって、各液滴33が吐出される位置を精密に制御することができる。このため、透明基板20が湾曲した輪郭を有する場合、例えば透明基板20の四隅が湾曲部23から構成されている場合であっても、透明基板20の観察者側の面の全域にわたって均一な密度で吐出液を吐出することができる。このことにより、透明基板20が湾曲した輪郭を有する場合であっても、低屈折率層31の厚みを透明基板20の全域にわたって均一にすることができ、これによって、低屈折率層31における光の反射率を均一にすることができる。
【0044】
厚み分布
以下、低屈折率層31の好ましい厚み分布について説明する。図5において、低屈折率層31の厚みの最大値が符号aにより表されており、低屈折率層31の厚みの最小値が符号aにより表されている。図5に示すように、低屈折率層31の厚みの最大値aと最小値aはほぼ等しくなっている。従って、低屈折率層31の厚みは、低屈折率層31全域の厚みの平均値の近傍に分布している。例えば、低屈折率層31の厚みの分布は、厚みの平均値から±10%の範囲内となっている。
【0045】
なお、低屈折率層31の厚みの平均値を算出する方法が特に限られることはなく、例えば、任意の10点において測定された低屈折率層31の厚みを平均することにより、低屈折率層31の厚みの平均値が算出される。
【0046】
なお本実施の形態において、低屈折率層31の厚みの分布を決定する様々なパラメータ、例えば液滴33の特性、液滴33の直径d、液滴33間の間隔wなどは、低屈折率層31の所望の厚みの分布が達成されるよう適宜設定される。例えば、低屈折率層31の材料を含む液滴33の粘度は0.1〜20cPの範囲内となっている。また、液滴33間の間隔wは例えば0.005〜2.0mmの範囲内となっている。さらに、液滴33の直径dが液滴33間の間隔wに対して相対的に画定される場合、液滴33の直径dは例えば0.8w〜1.2wの範囲内となっている。なお図4(a)においては、吐出機81から吐出された直後の各液滴33が互いに接触していない例を示したが、これに限られることはなく、吐出機81から吐出された直後の各液滴33が互いに接触していてもよい。
【0047】
次に、本実施の形態の効果を、第2の比較の形態と比較してさらに説明する。
【0048】
第2の比較の形態
第2の比較の形態として、上述の第1の比較の形態と同様にして低屈折率層91が形成され、その後、盛り上がり部93を含む低屈折率層91が、対応する透明基板20とともに切断されて除去されるという形態について考える。この場合、盛り上がり部93を含む低屈折率層91が取り除かれることにより、低屈折率層91の厚みのばらつきは小さくなると考えられる。しかしながら、この場合、切断の際に低屈折率層91に応力が印加され、これによって低屈折率層91が損傷することや、低屈折率層91が透明基板20から部分的に剥離されることが考えられる。また、透明基板20として強化ガラスなどの高い強度を有する材料が用いられる場合、透明基板20の切断が困難になり、このため表示用前面板40の製造工程が複雑になることが考えられる。
【0049】
本実施の形態の効果
これに対して本実施の形態によれば、上述のように、透明基板20および低屈折率層31を切断することなく、低屈折率層31の厚みを全域にわたって均一にすることができる。このため、光の反射率が均一な低屈折率層31を備えた表示用前面板40を容易に製造することができる。
【0050】
変形例
なお本実施の形態において、低屈折率層31の材料を含む吐出液を吐出する吐出機として、1つのノズル82のみを有する吐出機81が用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図7(a)(b)に示すように、一列に並べられた複数のノズル82を有する吐出機83が用いられてもよい。図7(a)(b)は、複数のノズル82を有する吐出機83を示す平面図である。図7(a)(b)においては、吐出機83の下側に設けられたノズル82が、便宜的に点線で示されている。
【0051】
図7(a)においては、吐出機83の走査方向Fと、複数のノズル82が並ぶ方向Rとが直交する例が示されている。図7(a)に示す例によれば、一列に並べられた複数のノズル82を有する吐出機83を用いることにより、透明基板20の観察者側の面上に効率的に複数の液滴33を吐出することができる。なお図7(a)に示す例においては、各液滴33の間の間隔wは、方向Rにおける各ノズル82間の間隔により決定される。
【0052】
図7(b)においては、吐出機83の走査方向Fと、複数のノズル82が並ぶ方向Rとがなす角度θが調整可能となっている例が示されている。この場合、角度θを調整することにより、透明基板20に吐出される各液滴33の間の間隔wを任意に調整することが可能となっている。すなわち、一種類の吐出機83により、任意の間隔wで液滴33を吐出することができる。これによって、透明基板20の観察者側の面上に効率的に複数の液滴33を吐出することができるとともに、形成される低屈折率層31の厚みの分布を柔軟に調整することが可能となる。
【0053】
なお図7(a)(b)に示す例において、一列に並べられた複数のノズル82を有する吐出機83が用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、多列に並べられた複数のノズル82を有する吐出機が用いられてもよい。
【0054】
第2の実施の形態
次に図8を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図8は、本発明の第2の実施の形態による表示装置を示す断面図である。
【0055】
図8に示す第2の実施の形態は、表示用前面板が、透明基板の表示部側に設けられた追加反射防止膜をさらに備えた点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。図8に示す第2の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
図8に示すように、表示用前面板40は、透明基板20の観察者側に設けられた反射防止膜30と、透明基板20の表示部50側に設けられた追加反射防止膜35と、を備えている。このうち追加反射防止膜35は、表示部50側の最外面に位置する追加低屈折率層36を有している。追加反射防止膜35および追加低屈折率層36は、第1の実施の形態における反射防止膜30および低屈折率層31と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0057】
このように本実施の形態においては、透明基板20の観察者側だけでなく表示部50側にも追加反射防止膜35が設けられている。このため、表示用前面板40は、外光が表示用前面板40の観察者側で反射するのを防ぐだけでなく、表示部50からの光が表示用前面板40の表示部50側で反射するのを防ぐことができる。
【0058】
第3の実施の形態
次に図9を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここで図9は、本発明の第3の実施の形態による表示装置を示す断面図である。
【0059】
図9に示す第3の実施の形態は、透明基板20と反射防止膜30との間に緩衝層が介在されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。図9に示す第3の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
図9に示すように、表示用前面板40は、透明基板20と、透明基板20の観察者側に設けられた緩衝層60と、緩衝層60の観察者側に設けられた反射防止膜30と、を備えている。
【0061】
(緩衝層)
緩衝層60は、外部からの応力が反射防止膜30の低屈折率層31に印加された場合に、この応力を緩和するために設けられるものである。この緩衝層60は、所定の弾性変形特性および所定の硬度を有している。このため、低屈折率層31に応力が印加されている間、緩衝層60が弾性変形することにより低屈折率層31に印加される応力を適切に緩和することができ、また応力が取り除かれた後には、緩衝層60の形状が弾性的にほぼ元通りになることにより低屈折率層31の形状をほぼ元通りにすることができる。これによって、低屈折率層31が破断することや、低屈折率層31に凹みが形成されたままとなるのを防ぐことができる。
【0062】
上述の機能を緩衝層60に付与するため、緩衝層60の厚みは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上となっている。このように、緩衝層60の厚みを、低屈折率層31の厚みに比べて十分に大きくすることにより、低屈折率層31に印加される応力を適切に緩和することができる。
【0063】
また、緩衝層60に対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込んだ際のビッカース硬さは50〜100の範囲内となっており、より好ましくは60〜90の範囲内となっている。これによって、緩衝層60に適度な強度を付与することができる。なお本実施の形態において、ビッカース硬さとはJIS Z 2244に規定されるビッカース硬さであり、例えば以下のようにして測定される。
【0064】
はじめに、適切な基板、例えば1.1mmの厚みを有するガラス板の上に、2.5μmの厚みを有する緩衝層60を設ける。次に、緩衝層60に対してビッカース圧子を押し込み荷重5mNで押し込む。この際ビッカース圧子の荷重時間、保持時間および減重時間は例えばそれぞれ20秒、5秒および20秒となっている。その後、緩衝層60に形成された凹みの面積を計測する。このような計測を複数回、例えば3回行い、計測された凹みの面積の平均値に基づいて、緩衝層60のビッカース硬さを算出する。
【0065】
さらに、上述のように緩衝層60に対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込んだ際の、緩衝層60の総変形量に対する緩衝層60の弾性変形量の割合は、0.55以上となっており、より好ましくは0.60以上となっている。これによって、低屈折率層31が破断することや、低屈折率層31に凹みが形成されたままとなるのを防ぐことができる。なお本実施の形態において、「弾性変形量の割合」は、以下のようにして算出される。
【0066】
緩衝層60に対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込んだ際には、緩衝層60は、図10に示すようなヒステリシス曲線(押し込み荷重−変形量)を描いて変形する。図10に示すように、緩衝層60は、押し込み荷重が“0”の初期点Oから押し込み荷重が5mNの中間点Oまで変形した後、中間点Oから中間点Oまで所定の保持時間だけ5mNの押し込み荷重で保持され、その後、押し込み荷重が開放される。これにより、最終的に、緩衝層60の変形量は最終点Oに至る。このとき、緩衝層60が完全弾性体であれば最終点Oの変形量は“0”となるが、実際には緩衝層60が完全弾性体であることはなく、最終点Oでの変形量は正の量として残る。この量が塑性変形量であり、ビッカース圧子による押し込みを終了した時点(中間点O)での変形量を総変形量とすれば、この総変形量から前記の塑性変形量を差し引いた分が弾性変形量となる。このようにして定義される各変形量を用いて、「弾性変形量の割合」が、(弾性変形量)/(総変形量)として定義される。
【0067】
好ましくは、緩衝層60の光屈折率は、透明基板20の光屈折率との差の絶対値が0.03以下となるよう設定されている。例えば、透明基板20として1.50の光屈折率を有するガラスが用いられる場合、緩衝層60の光屈折率が1.47〜1.53の範囲内に設定される。これによって、緩衝層60と透明基板20との間の界面で光が反射するのを防ぐことができる。
【0068】
緩衝層60の材料は、所定の光透過性を有するとともに、上述の特性を満たすよう選択される。例えば緩衝層60の材料として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂等が用いられる。このうちアクリル樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メラミンアクリレートなどが挙げられる。
【0069】
緩衝層60の材料となる樹脂を得る方法は特には限られないが、例えば、樹脂を形成しうるモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの有機材料に光重合開始剤を配合することにより得られる。例えば、ウレタンアクリレート樹脂は、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、あるいはプレポリマーを反応させ、得られた生成物に、水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレート系のモノマーを反応させることによって得られる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などが単独で、あるいは併用して用いられる。
【0070】
このような緩衝層60は、好ましくは、反射防止膜30の低屈折率層31と同様の方法により透明基板20の観察者側の面上に形成される。すなわち、緩衝層60の材料を含む吐出液を多数の液滴として点状に透明基板20上に吐出することにより、透明基板20の観察者側の面上に緩衝層60が形成される。これによって、形成される緩衝層60の厚みを、透明基板20の全域にわたって均一にすることができる。
その後、低屈折率層31の材料を含む吐出液を多数の液滴33として点状に透明基板20上に吐出することにより、緩衝層60上に低屈折率層31が形成される。このことにより、表示装置70において光の反射ムラが生じるのを防ぐことができる。
【0071】
変形例
なお本実施の形態において、透明基板20の観察者側の面上にのみ反射防止膜30が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第3の実施の形態の場合と同様に、透明基板20の表示部50側の面上に、追加低屈折率層36からなる追加反射防止膜35が設けられていてもよい。また、図11に示すように、透明基板20と追加反射防止膜35との間に追加緩衝層65が介在されていてもよい。この追加緩衝層65は、透明基板20の観察者側に設けられる緩衝層60と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
第4の実施の形態
次に図12を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。ここで図12は、本発明の第4の実施の形態による表示装置を示す断面図である。
【0073】
図12に示す第4の実施の形態は、反射防止膜が、低屈折率層の表示部側に設けられた高屈折率層をさらに有する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。図12に示す第4の実施の形態において、図1乃至5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図12に示すように、反射防止膜30は、観察者側の最外面に位置する低屈折率層31と、低屈折率層31の表示部50側に設けられた高屈折率層32と、を含んでいる。この高屈折率層32の光屈折率は、透明基板20および低屈折率層31の光屈折率よりも大きくなっている。このような高屈折率層32を設けることにより、反射防止膜30が外光の反射を防止する効果をより高くすることができる。
【0075】
好ましくは、上述の第3の実施の形態の場合と同様に、透明基板20と反射防止膜30との間に緩衝層60が介在されている。これによって、反射防止膜30の低屈折率層31が破断することや、低屈折率層31に凹みが形成されたままとなるのを防ぐことができる。
【0076】
高屈折率層32の光屈折率は、透明基板20および低屈折率層31の光屈折率よりも大きい限りにおいて特には限定されないが、例えば1.55〜2.20の範囲内となっている。高屈折率層32を構成する材料としては、高い光屈折率を有する周知の材料を用いることができ、例えば特開2005−43749号公報に開示されているような材料を用いることができる。高屈折率層32の厚みは、例えば20〜300nmの範囲内となっている。
【0077】
このような高屈折率層32は、好ましくは、反射防止膜30の低屈折率層31と同様の方法により形成される。すなわち、高屈折率層32の材料を含む吐出液を多数の液滴として点状に透明基板20上または緩衝層60上に吐出することにより、透明基板20上または緩衝層60上に緩衝層60が形成される。これによって、形成される緩衝層60の厚みを、透明基板20の全域にわたって均一にすることができる。
その後、低屈折率層31の材料を含む吐出液を多数の液滴として点状に透明基板20上に吐出することにより、緩衝層60上に低屈折率層31が形成される。このことにより、表示装置70において光の反射ムラが生じるのを防ぐことができる。
【0078】
変形例
なお本実施の形態において、反射防止膜30が低屈折率層31と高屈折率層32とからなる例を示したが、これに限られることはない。反射防止膜30の観察者側の最外面に低屈折率層31が位置する限りにおいて、反射防止膜30はその他の様々な層を含んでいてもよい。例えば、低屈折率層31の光屈折率よりも大きく、かつ高屈折率層32の光屈折率よりも小さい光屈折率を有する中屈折率層(図示せず)が、高屈折率層32の表示部50側に設けられていてもよい。この場合、高屈折率層32の光屈折率がより大きくなっていてもよく、例えば1.70〜2.20の範囲内となっていてもよい。さらに、アンダーコート層やハードコート層などが反射防止膜30の表示部50側の最外面に設けられていてもよい。
【0079】
また本実施の形態において、透明基板20の観察者側の面上にのみ反射防止膜30が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上述の第3の実施の形態の場合と同様に、透明基板20の表示部50側の面上に、追加低屈折率層36と追加高屈折率層37とを含む追加反射防止膜35が設けられていてもよい。また、図13に示すように、透明基板20と追加反射防止膜35との間に追加緩衝層65が介在されていてもよい。これら追加高屈折率層37および追加緩衝層65は、透明基板20の観察者側に設けられる緩衝層60と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0080】
その他の変形例
また上述の各実施の形態において、デザイン性を高めるための意匠層が適宜形成されていてもよい。例えば図14に示すように、表示用前面板40の観察者側の非表示領域内に意匠層10が形成されていてもよい。
【0081】
また上述の各実施の形態において、図示はしないが、透明基板20を保護するためのハードコート層やアンダーコート層が透明基板20の面上に設けられていてもよい。
【0082】
また上述の各実施の形態において、吐出液がインクジェット法により吐出される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、吐出液が多数の液滴として点状に吐出される限りにおいて、様々な吐出方法を適宜用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0084】
はじめに反射防止膜の膜厚について、実施例1および比較例1に基づいて説明する。
【0085】
(実施例1)
はじめに透明基板20を準備した。次に、低屈折率層31の材料を含む吐出液を、多数の液滴33として点状に透明基板20上に吐出した。次に、所定時間の経過後、各液滴33を硬化させた。これによって、透明基板20上に低屈折率層31が形成された。
【0086】
得られた低屈折率層31の厚みを低屈折率層31の全域にわたって複数の点で測定した。次に測定結果に基づいて、厚みの平均値と、平均値に対する分布を求めた。結果、低屈折率層31の厚みの分布は、厚みの平均値から±10%の範囲内となっていた。また、低屈折率層31からなる反射防止膜30を備えた表示用前面板40に関して、光の反射率の分布を測定した。結果、反射率の分布は、反射率の平均値から±10%の範囲内となっていた。
【0087】
(比較例1)
はじめに透明基板20を準備した。次に、低屈折率層91の材料を含む吐出液を、ダイコート法によって透明基板20上に直接吐出した。この際、吐出は、透明基板20の周縁部から開始させた。次に、吐出液を硬化させた。これによって、透明基板20上に低屈折率層91が形成された。
【0088】
得られた低屈折率層91の厚みを低屈折率層91の全域にわたって複数の点で測定した。次に測定結果に基づいて、厚みの平均値と、平均値に対する分布を求めた。結果、低屈折率層91の厚みの分布は、厚みの平均値から±74%の範囲内でばらついていた。また、低屈折率層91からなる反射防止膜92を備えた表示用前面板90に関して、光の反射率の分布を測定した。結果、反射率の分布は、反射率の平均値から±74%の範囲内でばらついていた。
【0089】
比較例1においては、透明基板20の周縁部に位置する低屈折率層91に盛り上がり部93が形成されたため、厚みおよび反射率の分布が大きくばらついたと考えられる。
【0090】
次に反射防止膜の耐擦傷性について、実施例2に基づいて説明する。
【0091】
(実施例2)
以下、4種類の反射防止膜30を準備し、各反射防止膜30に対して耐擦傷性の試験を行った結果について説明する。
【0092】
はじめに透明基板20を準備した。次に、緩衝層60用の材料として、組成の異なる4種類の材料(材料1〜4)を準備した。各材料は、緩衝層60の材料として上述したウレタンアクリレートなどのポリマーに、所定のモノマーを配合することにより得られたものである。なお、得られる4種類の緩衝層60のビッカース硬さまたは弾性変形量の割合がそれぞれ異なるよう、各材料の組成が適宜調整されている。次に、上述の材料1〜4を用いて、4種類の緩衝層60(第1〜第4の緩衝層60)を形成した。
【0093】
得られた第1〜第4の緩衝層60それぞれに対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込み、上述のビッカース硬さおよび弾性変形量の割合を測定した。結果、第1の緩衝層60においては、ビッカース硬さが70であり、弾性変形量の割合が0.63であった。また第2の緩衝層60においては、ビッカース硬さが58であり、弾性変形量の割合が0.56であった。また第3の緩衝層60においては、ビッカース硬さが64であり、弾性変形量の割合が0.58であった。また第4の緩衝層60においては、ビッカース硬さが64であり、弾性変形量の割合が0.67であった。
【0094】
次に、第1〜第4の緩衝層60それぞれの上に、低屈折率層31からなる反射防止膜30を形成した。
【0095】
得られた4種類の反射防止膜30(第1〜第4の反射防止膜30)に対して、耐擦傷性の試験を行った。具体的には、100gの荷重をかけたスチールウール(No.0000)を、各反射防止膜30上で掃引させた(往復10回、ストローク100mm)。その後、各反射防止膜30に擦傷痕が視認されるか否かについて目視で確認した。結果、擦傷痕は視認されなかった。
【符号の説明】
【0096】
10 意匠層
20 透明基板
30 反射防止膜
31 低屈折率層
32 高屈折率層
33 液滴
35 追加反射防止膜
36 追加低屈折率層
37 追加高屈折率層
40 表示用前面板
50 表示部
60 緩衝層
65 追加緩衝層
70 表示装置
81 吐出機
82 ノズル
83 吐出機
90 表示用前面板
91 低屈折率層
92 反射防止膜
93 盛り上がり部
95 基材フィルム
96 反射防止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に対して観察者側に配置される表示用前面板の製造方法において、
透明基板を準備する工程と、
前記透明基板の観察者側の面上に、反射防止材料を含む多数の液滴を吐出する工程と、
前記透明基板の観察者側の面上の前記液滴を硬化させて、反射防止材料を含む反射防止膜を形成する工程と、を備えた
ことを特徴とする表示用前面板の製造方法。
【請求項2】
前記液滴が、インクジェット法により前記透明基板の観察者側に吐出される
ことを特徴とする請求項1に記載の表示用前面板の製造方法。
【請求項3】
前記透明基板が、湾曲した輪郭を少なくとも部分的に有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示用前面板の製造方法。
【請求項4】
前記透明基板と前記反射防止膜との間に、観察者側から前記反射防止膜に印加される圧力を緩和するための緩衝層が介在されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示用前面板の製造方法。
【請求項5】
前記反射防止膜は、観察者側の最外面に位置する低屈折率層を有し、
前記低屈折率層の光屈折率は前記透明基板の光屈折率よりも小さく、かつ、前記低屈折率層の厚みは80〜150nmの範囲内となっており、
前記緩衝層の厚みは0.5μm以上となっており、
前記緩衝層に対して5mNの荷重でビッカース圧子を押し込んだ際のビッカース硬度は50〜100の範囲内であり、かつ、その際の前記緩衝層の総変形量に対する前記緩衝層の弾性変形量の割合は0.55以上である
ことを特徴とする請求項4に記載の表示用前面板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−225992(P2012−225992A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91052(P2011−91052)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】