説明

表示画像補正方法および画像表示装置

【課題】三次元補正を行うために記憶する補正用データの数を大幅に低減する。
【解決手段】水平位置xに対応した水平方向補正係数Kxを記憶し出力する水平方向補正係数LUT(12)と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Kyを記憶し出力する垂直方向補正係数LUT(22)と、ガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kpを記憶し出力する階調方向補正係数LUT(32)と、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正演算を行う補正演算器(40)と、三次元補正後階調値Qを基に画像を表示する画像表示器(2)とを具備する。
【効果】回路構成が小規模で済むと共に補正用データを設定するための調整工数を大幅に節減することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画像補正方法および画像表示装置に関し、更に詳しくは、表示装置の画面上の輝度むらや色むらを補正するための表示画像補正方法および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置の画面における画素の水平位置xおよび垂直位置yおよび階調値(信号レベル)zに対応した補正用データを用いて階調値を補正する三次元補正を行って、表示装置の画面上の輝度むらや色むらを補正する技術が知られている(例えば特許文献1の[0044]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−109927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術では、画素の水平位置xおよび垂直位置yおよび階調値zに応じた補正用データを予め記憶していた(例えば特許文献1の図7参照)。
しかし、例えば基準となる水平位置が100点、基準となる垂直位置が75点、基準となる階調値が5点とすると、記憶する補正用データの数は100×75×5=37500個となり、非常に多くのメモリ容量を必要とし、回路構成が大規模になる問題点があった。また、補正用データを設定するための調整工数が非常に多くかかる問題点があった。
そこで、本発明の目的は、三次元補正を行うために記憶する補正用データの数を大幅に低減でき、回路構成が小規模で済むと共に補正用データを設定するための調整工数を大幅に節減することが出来る表示画像補正方法および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、画像における画素の水平位置xに対応した水平方向補正係数Kx(x)と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Ky(y)と、階調値zまたはガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kp(P)とを記憶しておき、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正することを特徴とする表示画像補正方法を提供する。
上記第1の観点による表示画像補正方法では、表示画面における画素の水平位置および垂直位置および階調値に対応した補正用データにより階調値を補正する三次元補正を行うことが出来る。そして、例えば基準となる水平位置が100点、基準となる垂直位置が75点、基準となる階調値が5点とすると、記憶する補正用データ(=補正係数)の数は100+75+5=180個となり、三次元補正を行うために記憶する補正用データの数を大幅に低減することが出来て、回路構成が小規模で済むと共に予め補正用データを設定するための調整工数を節減することが出来る。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による表示画像補正方法において、画面中心部ではKx=1,Ky=1とすることを特徴とする表示画像補正方法を提供する。
上記第2の観点による表示画像補正方法では、画面中心部の輝度が不変となるため、画面中心部に色彩輝度計を当てて行うキャリブレーション(輝度や色やガンマ特性の校正)に影響を与えず、三次元補正とキャリブレーションの順序や組み合わせが自在となる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、画像における画素の水平位置xに対応した水平方向補正係数Kxを記憶し出力する水平方向補正係数出力手段と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Kyを記憶し出力する垂直方向補正係数出力手段と、階調値zまたはガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kp(P)を記憶し出力する階調方向補正係数出力手段と、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正演算を行う補正演算手段と、三次元補正後階調値Qを基に画像を表示する画像表示手段とを具備したことを特徴とする画像表示装置を提供する。
上記第3の観点による画像表示装置では、上記第1の観点による表示画像補正方法を好適に実施できる。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点による画像表示装置において、画面中心部ではKx=1,Ky=1とすることを特徴とする画像表示装置を提供する。
上記第4の観点による画像表示装置では、上記第2の観点による表示画像補正方法を好適に実施できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表示画像補正方法および画像表示装置によれば、三次元補正を行うために記憶する補正用データの数を大幅に低減することが出来る。これにより、回路構成が小規模で済むと共に、予め補正用データを設定するための調整工数を節減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】水平方向補正係数Kxと垂直方向補正係数Kyと階調方向補正係数Kpとを例示するグラフである。
【図3】水平方向補正係数Kxと垂直方向補正係数Kyと階調方向補正係数Kpの数値例を例示する概念図である。
【図4】ガンマ補正後階調値Pに対する画面上の輝度変化率J(P)を例示するグラフである。
【図5】水平方向補正係数Kxと垂直方向補正係数Kyの設定過程を説明するための数値例図である。
【図6】階調方向補正係数Kpの設定過程を説明するための数値例図である。
【図7】階調方向補正係数Kpの設定過程を説明するためのグラフである。
【図8】階調値50%のベタ画像を入力した場合の三次元補正の効果を説明する数値例図である。
【図9】階調値75%のベタ画像を入力した場合の三次元補正の効果を説明する数値例図である。
【図10】実施例2に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る画像表示装置100を示すブロック図である。
この画像表示装置100には、階調値zに対してガンマ補正を行いガンマ補正後階調値P(z)を出力するガンマ補正部1と、水平同期信号とクロック信号を基に画像における画素の水平位置xを出力する水平位置出力回路11と、水平位置xに対応した水平方向補正係数Kxを記憶し出力する水平方向補正係数LUT(LookUpTable)12と、垂直同期信号と水平同期信号を基に画像における画素の垂直位置yを出力する垂直位置出力回路21と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Kyを記憶し出力する垂直方向補正係数LUT22と、ガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kpを記憶し出力する階調方向補正係数LUT32と、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正演算を行う補正演算器40と、三次元補正後階調値Qを基に画像を表示する画像表示器2とを具備してなる。
【0013】
図2の(a)に、水平方向補正係数Kxを例示する。
水平方向補正係数Kxは、0≦Kx<2の値で、画面中央部の水平位置XcではKx=1である。後述するように、三次元補正を行わないで特定階調値のベタ画面を表示させた表示画面の二次元輝度分布特性から算出する。
【0014】
図2の(b)に、垂直方向補正係数Kyを例示する。
垂直方向補正係数Kyは、0≦Ky<2の値で、画面中央部の垂直位置YcではKy=1である。後述するように、三次元補正を行わないで特定階調値のベタ画面を表示させた表示画面の二次元輝度分布特性から算出する。
【0015】
図2の(c)に、階調方向補正係数Kpを例示する。
階調方向補正係数Kpは、0から70程度の値で、所定階調値Zcに対応するガンマ補正後階調値Pc=P(Zc)ではKp=1である。後述するように、ガンマ補正後階調値Pに対する画面の輝度変化率を用いて算出した値を基本として画像表示器2の階調特性や製品要求仕様や総合的な画質品位などを勘案して決める。
【0016】
図3の(a)に、基準となる水平位置を5点としたときの水平方向補正係数Kxの数値例を例示する。
図3の(b)に、基準となる垂直位置を5点としたときの垂直方向補正係数Kyの数値例を例示する。
図3の(c)に、基準となる階調値を5点としたときの階調方向補正係数Kpの数値例を例示する。
【0017】
図4は、ガンマ補正後階調値P(z)に対する輝度変化率J(P)=ΔL/ΔPを例示したグラフである。なお、ΔPはガンマ補正後階調値変化分(またはガンマ補正後階調値変化量)であり、ΔLはΔPに対する輝度変化分(または輝度変化量)である。
階調値z=50%に対応するガンマ補正後階調値P(50%)の時にJ(P)=0.96で、階調値z=75%に対応するガンマ補正後階調値P(75%)の時にJ(P)=1.56で、階調値z=100%に対応するガンマ補正後階調値P(100%)の時にJ(P)=2.20になっている。
【0018】
次に、図5を参照して、水平方向補正係数Kxおよび垂直方向補正係数Kyの設定方法を説明する。
(1)補正演算器40を作動させない状態とし、図5の(a)に示すような階調値z=50%のベタ画像の信号を与え、表示画面の5×5の点での輝度を2次元輝度測定器などで測定し、画面中心で得られた輝度値を100として各点の輝度値を正規化し、図5の(b)に示す如き三次元補正前の輝度分布L(x,y)を得る。なお、説明簡単化のため、輝度分布における点数を5×5個としているが、実際には数千個以上ある。
【0019】
(2)現在の輝度LのE%の輝度補正量を加えれば輝度が100%になるとすれば、
L(x,y)+L(x,y)×E(x,y)/100=100
であるから、これを変形すると、
E(x,y)=100×(100−L(x,y))/L(x,y)
となる。
上式により、図5の(c)に示す如き必要な輝度補正量E(x,y)を求める。
【0020】
(3)ガンマ補正後階調値PをK倍すれば輝度LがE%だけ変化するものとすれば、差分(K−1)に図4の輝度変化率J(P)を掛けた値がEになればよいから、
(K−1)×J(P)×100=E(x,y)
となる。これを変形すれば、
K(x,y)=E(x,y)/(100×J(P))+1
となる。ここで、階調値z=50%のベタ画像の信号を与えているから図4よりJ(P(50%))=0.96であり、
K(x,y)=E(x,y)/96+1
となる。
上式により、図5の(d)に示す如き仮のガンマ補正後階調値乗率K(x,y)を求める。
【0021】
(4)次式により仮のガンマ補正後階調値乗率K(x,y)から水平方向補正係数Kx(x)と垂直方向補正係数Ky(y)を算出する。なお、一般的表記はK(x,y),Kx(x),Ky(y)であるが、簡易表記としてK11〜K55,Kx1〜Kx5,Ky1〜Ky5を用いている。
Kx1=√((K11+K12+K13+K14+K15)/5)
Kx2=√((K22+K23+K24)/3)
Kx3=√(K33)
Kx4=√((K42+K43+K44)/3)
Kx5=√((K51+K52+K53+K54+K55)/5)
Ky1=√((K11+K21+K31+K41+K51)/5)
Ky2=√((K22+K32+K42)/3)
Ky3=√(K33)
Ky4=√((K24+K34+K44)/3)
Ky5=√((K15+K25+K35+K45+K55)/5)
上式は、図5の(e)に示すように、画面中央に近い位置の仮のガンマ補正後階調値乗率Kほど大きなウエイトを持たせたものである。また、三次元補正時に水平方向補正係数Kxと垂直方向補正係数Kyとを乗算するため、それぞれの係数は平方根にしている。
以上により、図5の(f)に示す如き水平方向補正係数Kx(x)と垂直方向補正係数Ky(y)とを求め、水平方向補正係数LUT12と垂直方向補正係数LUT22とを設定する。
【0022】
(5)階調方向補正係数Kp(P)は、仮の階調方向補正係数Kp’(P)を、
Kp’(P)=J(特定のガンマ補正後階調値)/J(P)
により求めて、それを経験的に修正して決定する。
例えば、特定のガンマ補正後階調値をP(50%)にすると、図4からJ(P(50%))=0.96であるから、
Kp’(P)=0.96/J(P)
となり、図6の(a)に示す如き仮の階調方向補正係数Kp’が得られる。
この仮の階調方向補正係数Kp’を、画像表示器2の階調特性や画像表示装置100の製品要求仕様や総合的な画質の品位などを勘案して修正し、図6の(b)に示す如き階調方向補正係数Kpを決定し、階調方向補正係数LUT32を設定する。
【0023】
図7の(a)は仮の階調方向補正係数Kp’を表し、図7の(b)は階調方向補正係数Kpを表している。ガンマ補正後階調値Pの中央部分(中間的な輝度になる部分)では仮の階調方向補正係数Kp’をそのまま階調方向補正係数Kpとするが、両端部分(暗い輝度になる部分と明るい輝度になる部分)を修正している。これは、画像表示器2が液晶パネルの場合、低輝度領域では表示むらの傾向が著しく異なり制御も困難なため補正をほとんど行わないこととし、高輝度領域では補正により最大輝度が犠牲になることを少なくするために補正量を下げている。
【0024】
上記のように水平方向補正係数LUT12,垂直方向補正係数LUT22,階調方向補正係数LUT32を設定した画像表示装置100において、補正演算器40を作動させ、図5の(a)に示すような階調値z=50%のベタ画像の信号を与えると、図8の(a)に示す如きガンマ補正後階調値乗率G(x,y,50%)を用いた三次元補正Q=G×Pが行われる。この結果、図8の(b)に示す如き輝度分布になり、輝度むらを補正できる。
【0025】
また、図9の(a)に示すような階調値z=75%のベタ画像の信号を与えると、三次元補正前は図9の(b)に示す如き輝度分布になったが、図9の(c)に示す如きガンマ補正後階調値乗率G(x,y,75%)を用いた三次元補正Q=G×Pが行われる結果、図9の(d)に示す如き輝度分布になり、輝度むらを補正できる。
【0026】
実施例1の画像表示装置100によれば次の効果が得られる。
(a)輝度むらを補正できる。カラー表示の場合は同様に色むらを補正できる。
(b)三次元補正を行うために記憶する補正用データの数を大幅に低減することが出来るので、LUT12,22,32の回路構成が小規模で済むと共に補正用データを設定するための調整工数を節減することが出来る。。
(c)従来は補正用データを設定するために階調ごとに2次元輝度データを測定する必要があったが、1つの特定階調の2次元輝度データを測定するだけでよいため、この点でも調整工数を節減することが出来る。
(d)画面中心部の輝度を不変として画面周辺部の補正を行うので、画面中心に色彩輝度計を当てて行うキャリブレーション(輝度や色やガンマ特性の校正)とは独立して調整が可能であり、輝度むら調整とキャリブレーションの順序や組み合わせが自在となる。
【0027】
−実施例2−
図10は、実施例2に係る画像表示装置100’を示すブロック図である。
この画像表示装置100’は、階調値zに応じて階調方向補正係数Kpを出力する階調方向補正係数LUT32’を用いている。階調値zとガンマ補正後階調値Pとは1:1に対応するため、このような構成も可能である。
【0028】
−実施例3−
カラー表示の場合は、R,G,Bそれぞれについて三次元補正を行うことにより、輝度むらの補正に加えて色むらも補正することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の表示画像補正装置および画像表示装置は、特にCCFLや拡散シートや液晶の塗布むら等に起因した液晶パネルの輝度むらや色むらを補正して画像を表示するのに有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 ガンマ補正部
2 画像表示器
11 水平位置出力回路
12 水平方向補正係数LUT
21 垂直位置出力回路
22 垂直方向補正係数LUT
32,32’ 階調方向補正係数LUT
40 補正演算器
100,100’ 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像における画素の水平位置xに対応した水平方向補正係数Kx(x)と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Ky(y)と、階調値zまたはガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kp(P)とを記憶しておき、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正することを特徴とする表示画像補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表示画像補正方法において、画面中心部ではKx=1,Ky=1とすることを特徴とする表示画像補正方法。
【請求項3】
画像における画素の水平位置xに対応した水平方向補正係数Kxを記憶し出力する水平方向補正係数出力手段と、垂直位置yに対応した垂直方向補正係数Kyを記憶し出力する垂直方向補正係数出力手段と、階調値zまたはガンマ補正後階調値P(z)に対応した階調方向補正係数Kp(P)を記憶し出力する階調方向補正係数出力手段と、三次元補正後階調値Q(x,y,z)={Kx(x)×Ky(y)×Kp(P(z))+1−Kp(P(z))}×(P(z))となるように補正演算を行う補正演算手段と、三次元補正後階調値Qを基に画像を表示する画像表示手段とを具備したことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像表示装置において、画面中心部ではKx=1,Ky=1とすることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−286656(P2010−286656A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140305(P2009−140305)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】