説明

表示素子の製造方法及び表示素子

【課題】高価な装置を使用することなく簡単な方法で表示材料のシール材への到達時刻を面内で均一にすることにより、両基板にズレがなくシール強度が良好な表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】対向面に電極パターンが形成された一対の基板の周辺をシール材でシールし、内部に流動性を有する表示材料が満たされている表示素子の製造方法において、前記シール材と、前記表示材料が前記シール材に向かうことを抑制する抑制手段と、が設けられた一方の前記基板に対して、前記抑制手段の内側に前記表示材料を配置する工程と、前記表示材料が配置された一方の前記基板に他方の前記基板を押し当てて、前記表示材料を押し広げる工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子の製造方法及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来、紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手し、その電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられている。特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間に渡ってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は、必ずしも人間に優しい手段とは言い難い。例えば、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、見る姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間見ると消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由により十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い駆動電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。
【0006】
また、電気泳動法による表示素子も、10V以上の高い駆動電圧を必要とし、また、電気泳動性粒子凝集による画質劣化が起こりやすい。電気泳動性粒子を一定量で小分けする隔壁構造にすることで凝集を低減できるが、セル構成やプロセスが複雑になり、安定した製造が困難である。
【0007】
上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、酸化還元反応によるエレクトロクロミック材料の色変化を利用した(以下ECD)方式や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下EDと略す)方式が知られている。ECD方式やED方式(この2方式を以下電気化学表示素子と略す)は、3V以下の低電圧駆動が可能で、簡便なセル構成、また、優れた表示品位(明るいペーパーライクな白と引き締まった黒)といった特長を持っている。
【0008】
電気化学表示素子を作成する場合、表示材料の流動性が高いのでODF(One Drop Fill)法という製造方法がある。下基板の周囲に枠状にシール材を設け、シール材の内側に上記のODF法により表示材料を配置した後、上基板を下基板に圧着して上下基板の間に表示材料を封入して表示素子としている。表示材料は、上下基板を接着する未硬化のシール材を溶解してしまうため、表示材料のシール材への到達時刻が面内で不均一であると、シール材の溶解状態に差が生じる。すなわち、表示材料が早く到達したシール材の部分は、シール強度が低下したり、シール材の流動性が増加して下基板に上基板の圧着時に両基板にズレ(基板面内方向、ギャップ方向)が生じたりしてしまうという問題があった。
【0009】
表示材料のシール材からのオーバーフローを回避するため、基板中央部には滴下量を多く、端部(シール材近傍部)では少なくするという方法が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−241208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の滴下方法は、高精度の吐出量制御、吐出位置制御、基板圧着制御が要求されるため、高価な製造装置が必要となり、その結果、製造コストがアップしてしまう。また、本発明に係わる表示素子(電気化学表示素子)の表示材料として使用する電解液は、特許文献1に記載されている表示材料(液晶材料)と比較して、未硬化のシール材を溶解する程度が大きい。このため、電解液を使用する表示材料のシール材への到達時刻を面内で均一にする場合、上記のそれぞれの制御は、より高い精度が要求される。
【0011】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高価な装置を使用することなく簡単な方法で表示材料のシール材への到達時刻を面内で均一にすることにより、両基板にズレがなくシール強度が良好な表示素子の製造方法及びこの製造方法により製造した表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、以下の構成により解決される。
【0013】
1. 対向面に電極パターンが形成された一対の基板の周辺をシール材でシールし、内部に流動性を有する表示材料が満たされている表示素子の製造方法において、
前記シール材と、前記表示材料が前記シール材に向かうことを抑制する抑制手段と、が設けられた一方の前記基板に対して、前記抑制手段の内側に前記表示材料を配置する工程と、
前記表示材料が配置された一方の前記基板に他方の前記基板を押し当てて、前記表示材料を押し広げる工程と、を有することを特徴とする表示素子の製造方法。
【0014】
2. 前記抑制手段は、凸部若しくは撥液面、又は、凹部若しくは親液面であり、前記凹部若しくは前記親液面は前記シール材に接していないことを特徴とする1に記載の表示素子の製造方法。
【0015】
3. 前記抑制手段は、絶縁性を有することを特徴とする1又は2に記載の表示素子の製造方法。
【0016】
4. 前記抑制手段は、前記シール材に沿って連続して設けられていることを特徴とする1乃至3の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【0017】
5. 前記抑制手段は、前記シール材に沿って断続して設けられていることを特徴とする1乃至3の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【0018】
6. 前記抑制手段は、前記シール材に沿って2重に設けられていることを特徴とする2乃至5の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【0019】
7. 1乃至6の何れか一項に記載の表示素子の製造方法により製造されたことを特徴とする表示素子。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表示素子の製造法によれば、高価な装置を使用することなく簡単な方法で表示材料のシール材への到達時刻を面内で均一にすることができるため、両基板にズレがなくシール強度が良好な表示素子を製造することができる。また、本発明の表示素子によれば、両基板にズレがなくシール強度が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限らない。
【0022】
本発明は、酸化還元反応を利用した電気化学表示素子に関するものである。電気化学表示素子としては、ECD方式とED方式が挙げられるが、ここではED方式を例にする。尚、図1から図8の各図において、同じもの、又は同じ機能であるものに関しては、同じ符号で示している。
【0023】
〔表示素子の基本構成〕
図1(a)は、本発明に係わるED方式の表示素子100の一例の断面構造を示す概略図である。図1(b)は、観察側の透明な下基板5側から見た様子を示す図である。図1(b)において、後述のシール材7、凸部8以外は省略している。以下に、表示素子100の構成に関して説明する。
【0024】
観察側の透明な下基板5の上にはITO電極等の透明な電極1が形成されており、もう一方の上基板6には銀等の不透明な電極2が形成されている。電極1と電極2との間には銀または銀を化学構造中に含む化合物を有する電解液(表示材料)3が担持されており、対向する電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、電極1と電極2上で銀の酸化還元反応が行なわれ、還元状態の黒い銀画像と、酸化状態の透明な銀の状態を可逆的に切り替えることができる。
【0025】
表示素子100は、電解液3を下基板5と上基板6の間に封止するシール材7、本発明に係わるシール時に電解液3がシール材7に向かうことを抑制する抑制手段の一つである凸部8、電極2を周囲より絶縁するための絶縁膜4、良好な画像形成のため入射する光を拡散させるための白色散乱層9、対向する電極間に電圧を印加するTFT10等で構成されている。
【0026】
〔基板〕
上下基板として用いることのできる基板としては、ガラス基板の他、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。上記の基板は、透明基板(下基板)として用いることができる。更に、TFT素子を設ける透明でなくてもよい基板(上基板)としては、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。
【0027】
〔銀または銀を化学構造中に含む化合物〕
電解液3が有する銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0028】
〔電極〕
観察面側の電極1は、透明な電極で構成されて、ITOやIZOなど、一般的にディスプレイなどに用いられているような透明電極であれば、いずれでも使用することができる。電極2は、不透明な電極材料で構成され、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Ni、C、Cr、Al、Moなどや、これらの積層膜あるいは合金などを用いることができる。これら電極1及び電極2の形成方法は、スパッタ法や真空蒸着法などで成膜した後、フォトリソグラフィー及びエッチング処理する方法や、金属ナノ粒子を分散したインクを塗布して成膜しフォトリソグラフィー及びエッチング処理する方法あるいはスクリーン印刷やフレキソ印刷やインクジェット印刷などでダイレクトにパターニングする方法などがある。
【0029】
〔シール材〕
シール材7は電解液3が外に漏れないように封止するためのものであり、封止材とも呼ばれる。シール材7の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化性、光硬化性、湿気硬化性、嫌気硬化性等の各種硬化性樹脂が挙げられる。中でも、光硬化性樹脂、エポキシ系樹脂が好ましい。
【0030】
シール材7を下基板5又は上基板6に形成する方法は、例えばディスペンサによる塗布やスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
また、シール材7には、上下基板間の間隙を制御するスペーサーとして、樹脂製またはシリカ等の無機酸化物製の球体を混ぜ合わせてもよい。
〔抑制手段〕
図1に示すように、電解液3がシール材に向かうことを抑制する抑制手段として、凸部8がシール材7の内側に沿って下基板5に設けられている。
【0032】
表示素子100の製造において、電解液3を下基板5と上基板6との間に封止することに関して図2、図3、図4を用いて説明する。図2は、電解液3を下基板5と上基板6との間に封止する工程を説明する図である。
(1)下基板5の画像領域の外側の周囲を枠状に凸部8を、凸部8の外側の周囲を枠状にシール材7を形成する(図2(a))。
(2)凸部8の内側に、表示素子100における下基板5と上基板6との間を十分に埋め尽くす量の電解液3を、例えばODF法を用いて配置する(図2(b))。図2(b)において、30は電解液を滴下するディスペンサのノズルを示す。滴下された電解液3は、その流動性により広がる(図2(c))。広がりを促すために、電解液3の上部の表面を少し下向きに押すように上基板6を接触させてもよい。
【0033】
この段階で、シール材7に沿って枠状に設けている凸部8が電解液3がシール材に向かうことを抑制し、シール材7に対して溶解性を有する電解液3を凸部8の内側壁面辺りで止めることができ、電解液3はシール材7まで到達できない。この様子をシール材7と凸部8の周辺を拡大した図3(a)に示す。
【0034】
電解液3がシール材7に到達できないため、シール材7は、部分的にも溶解することなく、電解液3の封止材としての本来の機能を維持することができる。凸部8は、本例では枠状に連続して形成しているが(図1(b)参照)、電解液3がシール材7に到達しないように止めることができる範囲内で断続(例えば破線状)した枠状としてもよい。断続とすることにより凸部8を形成する材料を少なくすることができ、製造コストを低減できる。また、表示素子が撓んだ時に凸部8の剥がれ、クラックを防止することができる。
(3)下基板5の上に上基板6を重ねて配置した後、上基板6を下基板5に押圧する(図2(d)。矢印は押圧を示す。)。電解液3が凸部8を超えてシール材7に到達するように電解液3を押し広げ、隅々まで行き渡らせ、上基板6を下基板5に設けてあるシール材7に十分に接触させ、速やかにシール材7を硬化させることにより電解液3を内部に封止する。この上基板6を下基板5に押圧して、電解液3を封止する作業は、シール材7の周辺に空間が生じ難くするために真空中で行うのが好ましい。
【0035】
上基板6を下基板5に押圧する時の電解液3の様子を図3(b)に示す。図3(b)に示すように、電解液3は、強制的に押し広げられ、凸部8を乗り越え、枠状のシール材7の全周に渡ってほぼ同時に到達することになる。
【0036】
電解液3がほぼ同時にシール材7に到達するため、シール材7は部分的に電解液3と接触して溶解することがなく、全周に渡って均一な状態で電解液3の封止を行うことができる。よって、下基板5と上基板6との圧着時に、両基板の厚み方向や面内方向にズレを生じることなく、またシール強度が低下することなく良好に表示素子100を製造することができる。
【0037】
凸部8を形成する方法としては、例えば以下がある。凸部8を形成する材料として、公知のフォトリソグラフィー処理に使用されるレジスト材、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂などの感光性有機樹脂材料(例えば、ネガ型感光性フォトレジスト材料であるSU−8 3050(化薬マイクロケム社製)が挙げられる。上記の材料を用いて凸部8を形成する方法としては、例えばスピンコート法等の塗布とフォトリソグラフィー及びエッチング処理によるパターニングや、スクリーン印刷やインクジェット等のパターニング等が挙げられる。
【0038】
図3(a)において、シール材7から凸部8までの距離Aは、シール材7に接していても良く0以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、シール材7への電解液3の到達を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。凸部8の幅Bは20μm以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、凸部8の加工が容易で電解液3を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。高さCは、5μm以上、1mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、凸部8の加工が容易で電解液3を抑制する効果を十分に得ることができる。
【0039】
抑制手段として上述の凸部8の他、図4に示す様に、撥液膜を設ける等の撥液面41(図4(a))、凹部42(図4(b))、表面の活性化等の親液面43(図4(c))、及びこれらの組み合わせ(図4(d)撥液面41、凹部42)が挙げられる。
【0040】
撥液面をなす撥液処理は、図4(a)に示すように、これまで説明した凸部8と同様に、シール材7の内側に沿って枠状に行う。撥液処理された撥液面41は、電解液3に対する撥液性のため、電解液3がシール材7に向かうことを抑制することができる。尚、撥液面41等の撥液性を有する面における電解液3に対する接触角は50度以上とするのが好ましい。また、それ以外の領域では、接触角を20度以下とすることが好ましい。
【0041】
撥液処理方法としては、例えば導入ガスにフッ素またはフッ素化合物を含むガスを使用し、フッ素化合物及び酸素を含む減圧雰囲気下あるいは大気圧雰囲気下でプラズマ照射をする減圧プラズマ処理や大気圧プラズマ処理が挙げられる。フッ素またはフッ素化合物を含むガスとしては、CF、SF、CHF等が挙げられる。
【0042】
図4(a)において、シール材7から撥液面41までの距離Dは、シール材7に接していても良く0以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、シール材7への電解液3の到達を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。撥液面41の幅Eは、20μm以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、電解液3を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。
【0043】
凹部は、図4(b)に示すように、上記と同様に、シール材7の内側に沿って枠状に設ける。凹部42は、電解液3を凹部42に流れ込むように誘導するため、電解液3がシール材7に向かって広がろうとすることを抑制することができる。凹部42を形成する方法としては、例えば、上記で挙げている多孔質ITO材料で形成した透明電極面にフォトリソグラフィー及びエッチング処理を行う方法がある。
【0044】
図4(b)において、シール材7から凹部42までの距離Fは、電解液3を凹部42に流れ込むように誘導するため、シール材7に接すること無く0より大きく、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、シール材7への電解液3の到達を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。凹部42の幅Gは、100μm以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、凹部の加工が容易で電解液3を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。凹部42の深さHは、20μm以上、100μm以下が好ましい。この範囲にすることにより、凹部の加工が容易で電解液3がシール材に向かうことを抑制する効果を十分に得ることができる。
【0045】
親液面をなす親液処理は、図4(c)に示すように、上記と同様に、シール材7の内側に沿って枠状に行う。親液処理された親液面43は、電解液3に対する親液性のため、親液面43に電解液3を誘導するため、電解液3がシール材7に向かって広がろうとすることを抑制することができる。親液処理方法としては、例えば、酸素プラズマ処理による表面の活性化処理が挙げられる。
【0046】
図4(c)において、シール材7から親液面43までの距離Iは、親液面43が自体に電解液3を誘導するため、シール材7に接すること無く0より大きく、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、シール材7への電解液3の到達を抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。親液面43の幅Jは、20μm以上、5mm以下が好ましい。この範囲にすることにより、電解液3がシール材に向かうことを抑制する効果を十分に得ながら、下基板5自体が大きくなりすぎない。
【0047】
これまで、抑制手段として、撥液面、親液面、凸部、凹部の形成を挙げているが、これらを組み合わせることもできる。組み合わせることにより、電解液3がシール材に向かうことの抑制をより効果的に行うことができる。組み合わせの例としては、凸部8において、その表面に撥液処理を行い撥液面にする、また、図4(d)に示すように、シール材7の内側に沿って撥液面41を設け、更に撥液面41の内側に凹部42を設けるといった、抑制手段を2重に設ける、等がある。
【0048】
抑制手段として、これまで説明した中で、凸部8や撥液処理として撥液処理膜の様に物質を設ける場合、その物質が絶縁体であることが好ましい。抑制手段を絶縁体とすることにより、周囲にある電極1や電解液3等への電界等の電気的な悪影響を及ぼす懸念がないので好ましい。
【0049】
〔絶縁膜〕
絶縁膜4は、電極2のエッジとなる部分を覆うように形成している。絶縁材料としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などの有機樹脂材料や、SiOx、SiNx、などの無機絶縁膜など、一般的にディスプレイで用いられるような絶縁膜材料であれば、いずれでも用いることができる。好適には、膜の成膜が簡便な塗布できる材料が好ましい。感光性がある塗布材料はより好ましい。絶縁膜4の形成箇所は、表示領域内にある電極エッジを覆うように配置する。
【0050】
対向する電極を第1の電極及び第2の電極とすると絶縁膜は、例えば、以下に示すように設ける。例えば、第1の電極が共通電極で表示領域よりも大きい電極であり、第2の電極が画素毎に分割された画素電極でありアレイ状のものの場合、絶縁膜は第2の電極のエッジを覆うように配置することで、表示領域内の電極エッジをすべて覆うことができる。本実施の形態の絶縁膜4は、上記に該当する。
【0051】
また、例えば、第1の電極および第2の電極がセグメント電極あるいはストライプ電極であり、第1の電極と第2の電極の交点領域を表示領域とする構成の場合、第1の電極及び第2の電極の両方の電極エッジを覆うように絶縁膜を配置する。
【0052】
(白色散乱層)
表示素子は、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から多孔質の白色散乱層9を有することができる。多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
【0053】
電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0054】
電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
【0055】
水溶性化合物としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0056】
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0057】
白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0058】
水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0059】
多孔質白色散乱層の膜厚は、5μm〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10μm〜30μmの範囲である。
【0060】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高い化合物が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
【0061】
水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向する電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向する電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、インクジェットヘッド、スプレー方式等が挙げられる。
【0062】
〔表示素子のその他の構成要素〕
表示素子には、必要に応じて柱状構造物、スペーサーを用いることができる。
【0063】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0064】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物又はスペーサーのみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物のいずれも設けてもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップ(ほぼ一対の基板間のギャップに等しい。)の厚みに相当する。
【0065】
〔表示素子駆動方法〕
表示素子100においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行うことが好ましい。この駆動操作を行うことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121頁に詳しい解説がある。本発明の表示素子も、電極と電解液中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行えると推定される。
【0066】
表示素子100の駆動操作は、アクティブマトリック駆動を例としている。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能等のメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0067】
アクティブマトリック駆動に代えて単純マトリックス駆動であってもよい。純マトリックス駆動は、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加して駆動する方法である。単純マトリックス駆動方法を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
図1に示す表示素子100を以下のようにして作製した。図2を用いて説明する。
(抑制手段の形成工程)
観察側の下基板5として、表示領域を10型、外枠の大きさを230mm×180mm、厚み0.7mm無アルカリガラス基板(コーニング社製)を用意した。上記ガラス基板には、厚み100nmのITO電極(電極1)が設けてある。下基板5に、抑制手段である凸部8を以下の方法により設けた。
【0069】
ネガ型感光性フォトレジスト材料であるSU−8 3050(化薬マイクロケム社製)を、下基板5上に回転数4000rpmでスピンコートし、100℃のホットプレート上にて30分間プリベーク処理を行った。プリベーク後、下基板5に対して、平行光露光機にて凸部8のパターンが形成されたフォトマスクを介して400mJ/cmの紫外線を照射し、続いて100℃のホットプレート上で10分間熱処理(ポストベーク)を行った。熱処理後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)液を用いて現像処理を行い、紫外線の照射されていないフォトレジスト材料を除去し、イソプロピルアルコール(IPA)液にてリンス処理を行った後、乾燥させた。これによって、下基板5に高さ30μm、幅は40μmの凸部8を形成した。
【0070】
上記で形成した凸部8に更に撥液処理を行った。具体的には、フッ素系化合物としてCFを使用するプラズマ処理を行った。このプラズマ処理の条件を以下に示す。
・CFガス流量:900sccm
・パワー:1.0W/cm
・圧力:133Pa
・処理時間:30分間
また、上記の条件に代えて、以下の条件としても同程度の効果が得られることが確認できた。
・パワー:300W
・電極−基板間距離:1mm
・CFガス流量:100ccm
・ヘリウムガス流量:10L(リットル)/min
・搬送速度:5mm/s
(シール材の形成工程)
上記の通り凸部8を形成した下基板5に対し、シール剤である紫外線硬化樹脂を凸部8の外側にディスペンサにより塗布し、シール材7を形成した(図2(a)参照)。凸部8からシール材7までの距離は2mmとした。シール剤は、紫外線硬化樹脂(スリ−ボンド製30Y−296G)に、直径40μmのシリカビーズを上下基板間の間隙を制御するスペーサーとして、1質量%混ぜたものとした。
【0071】
上記で用意した樹脂をディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製、ML−5000XII)を用いて、条件をシール塗布温度50℃、塗布速度3mm/sec、エアー圧0.3MPaとして塗布によりシール材7を形成した。塗布したシール材7の流動性がなくなる程度に硬化させるため、紫外線照射(照射条件:1000mJ/cm、3分間)を行った。
【0072】
(表示材料配置工程)
凸部8の内側にディスペンサにより表示材料である電解液3を塗布(配置)した(図2(b)、(c)参照)。塗布された電解液3は、シール材7に向かい凸部8で停止し、シール材7には到達しなかった。塗布した電解液3は、以下とした。
【0073】
(電解液)
ジメチルスルホキシド(DMSO)とγ−ブチロラクトン(γBr)を6:4の割合で混合した溶媒に、析出溶解材料として1.00mol/lのヨウ化銀(AgI)、および支持電解質塩として1.33mol/lの臭化リチウム(LiBr)を溶解させる。
【0074】
この電解質に対して、高分子材料である分子量20万のポリエチレンオキシドと着色材である二酸化チタン(TiO)とを質量比で0.2:1.2の割合で添加し、これを均一に分散させた後、上記のポリエチレンオキシドと質量比で1:0.02の割合の架橋材を添加する。これを、100℃で10分間加熱して、ゲル状の電解液を得た。
【0075】
上記で用意した電解液をディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング社製、ML−5000XII)を用いて、表示領域に点状に滴下した。滴下した電解液の状態は、直径は約2mm、高さは60μmであった。電解液の滴下量は、表示領域の面積とガラス基板間の間隙量から推測した。
【0076】
(貼り合せ工程)
上記の電解液3を塗布した下基板5に別途用意したTFT等を設けた上基板6を貼り合せた(図2(d)参照)。尚、上基板6は、厚み0.7mm無アルカリガラス基板を使用した。
【0077】
まず、電解液3を塗布した下基板5を13.3Paまで減圧した空間に配置して、電解液3内の気泡を抜き取った(真空引き工程)。
【0078】
次に、真空引きを行った下基板5に上基板6を押し当てた。押し当てるに際して、下基板5と上基板6との間隔は、移動機構を用いて1μmの精度で管理した。上下基板の間隔が50μmの時点で上基板6を一旦止め、3分間放置した。上述の押し当てから放置までの一連の作業により、電解液3は凸部8に沿って、また凸部8を乗り越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。その後、更に上基板6を押し下げ、上下基板の間隔を40μmにした時点で、一定圧力になるようにした。圧力はロードセルにより測定した。
【0079】
上記の一定圧力下で、シール材7の硬化を行った。硬化は、まず紫外線照射(12000mJ/cm、5分間)による予備硬化行い、更にオーブンで80℃1時間、加熱した。
【0080】
以上で表示素子10を完成させた。完成した表示素子100のシール材7を目視にて観察したところ、電解液3が漏れている箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0081】
(実施例2)
抑制手段をTFTが形成されている上基板6に設ける例について図5を用いて説明する。
【0082】
(抑制手段の形成工程)
上基板6において、画素電極である電極2のエッジ部分に絶縁膜4を形成する際、同時に、実施例1の凸部8に該当する位置に絶縁膜41aを形成した。この絶縁膜41aを後述の処理を経て抑制手段である撥液面41とした。シール材7から撥液面41までの距離は2mmとし、撥液面41の幅は40μmとした。
【0083】
具体的には、厚み0.7mm無アルカリガラス基板(上基板6)に電極2、TFT10を形成し、更にこの上に、絶縁膜41aを成膜した。
【0084】
絶縁膜41aは、塗布型感光性絶縁材料であるPC403(アクリル性樹脂、JSR社製)を用い、スピンコータを用いて厚み1μmとなるように2000rpmで成膜し、5分間90℃でプリベークした。その後、電極2のエッジ及び抑制手段形成部分を覆って、露光、現像を行い。最後に220℃1hで焼成した。これにより、絶縁膜4且つ撥液面41となる絶縁膜41aを得て、この後、電極2等がある表示領域に白色散乱層9を形成した。白色散乱層9は、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、エタノール及び水の混和物を塗布し乾燥させて得た。
【0085】
次に、上基板6において、絶縁膜41aの内側に露出しているガラス面43aに対して以下の条件で酸素プラズマ処理を行った。
・酸素ガス流量:500sccm
・パワー:1.0W/cm
・圧力:133Pa
また、以下の条件で大気圧プラズマ処理しても同様の結果が得られた。
・パワー:300W
・電極−基板間距離:1mm
・酸素ガス流量:80ccm
・ヘリウムガス流量:10l/min
・搬送速度:10mm/s
酸素プラズマ処理により親液面となったガラス面43aならびに活性化された(親液化された)絶縁膜41aを得た。
【0086】
続いて、フッ素化合物を反応ガスとしプラズマ処理による撥液処理を30分間行った。
・CFガス流量:900sccm
・パワー:1.0W/cm
・圧力:133Pa
また、以下の処理条件で大気圧プラズマ処理しても同様の結果が得られた。
・パワー:300W
・電極−基板間距離:1mm
・CFガス流量:100ccm
・ヘリウムガス流量:10l/min
・搬送速度:5mm/s
上記によりガラス面43aの親液性を保持したままで絶縁膜41aを撥液性に改質することができる。この理由は、有機材料中選択的にフッ素化合物分子が入り込むようになるためと考えられる。この結果、撥液性の絶縁膜41a(撥液面41)の内側に親液性を保持したガラス面43a(親液面43)が得られ、これらは2重の抑制手段となる。親液面43の幅は2mmとした。
【0087】
「シール材の形成工程」以降は、実施例1と同様にして、上記の抑制手段を形成した上基板6にシール材7を形成し(図5(a))、電解液3を塗布した(図5(b))。塗布された電解液3は、シール材7に向かい親液面43に沿うように移動し撥液面41で停止し、シール材7には到達しなかった。下基板6に上基板5を重ね合わせて貼り合わせた(図5(c))。貼り合わせ時、電解液3は撥液面41に沿って、また撥液面41を越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。
【0088】
完成した表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液が漏れている箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0089】
(実施例3)
図6に示すように、実施例1の下基板5の表示領域の電極1の上に更に多孔質ITO膜60を重ねて形成した。具体的には、下基板5上に以下の多孔質ITO材料X806CN27S(住友金属鉱山社製)を回転数1000rpmでスピンコートにより塗布した。この後、250℃で焼成した。これを4回繰り返すことで、厚み4μmの多孔質ITO膜60を形成した。その後、フォトリソグラフィー及びエッチング処理にて、所定の外形を得た。
【0090】
これ以降は、使用する電解液以外は実施例1と同じとした。本実施例では、実施例1で示した撥液処理された凸部8と、その内側に親液性を有するガラス基板及び多孔質ITO膜60とで凹部42とが形成され、2重の抑制手段を形成した。シール材7から凸部8までの距離は2mm、凸部8と凹部42とは隣接しており、凹部42の幅は2mmとした。
【0091】
電解液3を塗布した時、塗布された電解液3は、シール材7に向かい凹部42に沿うように移動し凸部8で停止し、シール材7には到達しなかった。貼り合わせ時、電解液3は凹部42に沿って、また凸部8を越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。
【0092】
本実施例で使用した電解液に関して以下に示す。
【0093】
(電解液)
ジメチルスルホキシド(DMSO)とγ−ブチロラクトン(γBL)とを3:2の体積比で混合した溶媒に、析出溶解材料として、0.5mol/lのヨウ化銀(AgI)および支持電解質塩として0.75mol/lのヨウ化ナトリウム(NaI)を溶解させ、更に、クマリンを5g/l、メルカプトベンゾイミダゾールを5g/l、トリエタノールアミンを10g/lとなるように加えて溶液を調製した。なお、クマリン、メルカプトベンゾイミダゾールおよびトリエタノールアミンを添加剤と使用する。
【0094】
続いて、調製した溶液と、この溶液をゲル状にするためのアクリル基末端を有するポリエーテル・オリゴマと、表示背景を白くするための白色顔料である二酸化チタンとをそれぞれ質量比で、1:0.2:1.2の割合で混合し、ホモジナイザーおよび自転・公転方式ミキサーで均一に分散させて顔料分散液を調製した。
【0095】
この顔料分散液に析出促進剤として、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを顔料分散液に対して5質量%添加し、自転・公転方式ミキサーで攪拌することにより前駆体電解液を調製した。
【0096】
更に、ポリエーテル・オリゴマを架橋化反応させるための有機過酸化物(日本油脂社製「パーへキシルND」)をポリエーテル・オリゴマに対して2質量%加え、自転・公転方式ミキサーで攪拌することにより、後の工程でゲル化することが可能な電解液を調製した。
【0097】
最後に、この素子を100℃の恒温槽で10分間加熱して過酸化物によって、ポリエーテル・オリゴマを架橋反応させることによりゲル状の電解質を得た。このゲル状の電解質を本実施例の電解液とした。
【0098】
完成した表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液が漏れている箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0099】
(実施例4)
実施例1において、凸部8に撥液処理を行っているが、本実施例では、撥液処理を行わない以外は、実施例1と同じとした。電解液3を塗布した時、塗布された電解液3は、シール材7に向かい凸部8で停止し、シール材7には到達しなかった。貼り合わせ時、電解液3は、凸部8に沿って、また凸部8を越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。
【0100】
完成した表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液によりシール材の内側が浸食されているような箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0101】
(実施例5)
図7に示すように、実施例1における「抑制手段の形成工程」で示した、凸部8の形成及び凸部8の撥液処理に代わり、凸部8を形成する領域に対し、実施例2で示した同じ内容の酸素プラズマ処理を行い、この領域を親液面43とした。シール材7から親液面43までの距離は2mm、親液面43の幅は40μmとした。
【0102】
「シール材の形成工程」以降は、実施例1と同じとした。電解液3を塗布した時、塗布された電解液3は、シール材7に向かい撥液面43に沿って移動し停止し、シール材7には到達しなかった。貼り合わせ時、電解液3は、撥液面43に沿って、また撥液面43を越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。
【0103】
完成した表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液が漏れている箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0104】
(実施例6)
実施例1の「抑制手段の形成工程」で示した凸部8に代えて凹部42を設けた。まず、実施例1で示した凸部の範囲まで拡大した領域に多孔質ITO膜を形成した。具体的には実施例2と同様に、下基板5上に以下の多孔質ITO材料X806CN27S(住友金属鉱山社製)を回転数1000rpmでスピンコートにより塗布した。この後、250℃で焼成した。これを5回繰り返すことで、厚み5μmの多孔質ITO膜42aを形成した。その後、図8に示すようにフォトリソグラフィー及びエッチング処理にて、シール材7に沿って、幅20μm、深さ4μmの凹形状にパターニングし凹部42を形成した。シール材7から凹部42までの距離は2mmとした。
【0105】
「シール材の形成工程」以降は、実施例1と同じとした。電解液3を塗布した時、塗布された電解液3は、シール材7に向かい凹部42に沿って移動し停止し、シール材7には到達しなかった。貼り合わせ時、電解液3は、凹部42に沿って、また凹部42を越えてシール材7に向かって均一に広がり、シール材7にほぼ同時に到達した。
【0106】
完成した表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液が漏れている箇所は確認されず、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていないことが確認できた。
【0107】
(比較例1)
実施例1における「抑制手段の形成工程」で示した、凸部8の形成及び凸部8の撥液処理を行わなかった以外は、実施例1と同じとして表示素子を形成した。電解液3を塗布した時、塗布された電解液3は、シール材7に向かい、部分的にシール材7に到達した。
【0108】
表示素子のシール材を目視にて観察したところ、電解液によりシール材の幅が細くなっている部分が確認され、また、下基板5と上基板6とのズレが生じていることが確認された。
【0109】
以上の実施例1〜6、及び比較例1の結果より、シール材に沿って設けてある抑制手段により、高価な装置を使用することなく簡単な方法で表示材料のシール材への到達時刻を面内で均一にすることができ、両基板にズレが生じることなくシール強度が良好な表示素子を製造できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ED方式の表示素子の一例の断面構造を示す概略図である。
【図2】電解液を一対の基板の間に封止する工程を説明する図である。
【図3】シール材と凸部の周辺を拡大して示し、電解液がシール材に到達する様子を説明する図である。
【図4】電解液がシール材に向かうことを抑制する抑制手段の例を示す図である。
【図5】実施例2における電解液を封止する工程を示す図である。
【図6】実施例3における抑制手段の様子を示す図である。
【図7】実施例5における抑制手段の様子を示す図である。
【図8】実施例6における抑制手段の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1、2 電極
3 電解液
4 絶縁膜
5 下基板
6 上基板
7 シール材
8 凸部
9 白色散乱層
10 TFT
30 ノズル
41 撥液面
42 凹部
43 親液面
100 表示素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面に電極パターンが形成された一対の基板の周辺をシール材でシールし、内部に流動性を有する表示材料が満たされている表示素子の製造方法において、
前記シール材と、前記表示材料が前記シール材に向かうことを抑制する抑制手段と、が設けられた一方の前記基板に対して、前記抑制手段の内側に前記表示材料を配置する工程と、
前記表示材料が配置された一方の前記基板に他方の前記基板を押し当てて、前記表示材料を押し広げる工程と、を有することを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記抑制手段は、凸部若しくは撥液面、又は、凹部若しくは親液面であり、前記凹部若しくは前記親液面は前記シール材に接していないことを特徴とする請求項1に記載の表示素子の製造方法。
【請求項3】
前記抑制手段は、絶縁性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記抑制手段は、前記シール材に沿って連続して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記抑制手段は、前記シール材に沿って断続して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記抑制手段は、前記シール材に沿って2重に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の表示素子の製造方法により製造されたことを特徴とする表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−2687(P2010−2687A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161522(P2008−161522)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】