説明

表示素子

【課題】表示速度が速く、電極耐性が向上された表示素子を提供する。
【解決手段】対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも一つが、含窒素炭素電極層を有する電極であることを特徴とする表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀の溶解析出を利用した電気化学的な表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
【0003】
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は必ずしも人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
【0004】
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない(メモリー性)反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
【0005】
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低く白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は電圧高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。また、エレクトロクロミック表示素子は、3V以下の低電圧で駆動が可能であるが、黒色またはカラー色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーン、レッド等)の色品質が十分でなく、メモリー性を確保するため表示セルに蒸着膜等の複雑な膜構成が必要などの懸念点がある。
【0006】
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション(以下、EDと略す)方式が知られている。ED方式は、3V以下の低電圧で駆動が可能で、簡便なセル構成、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、米国特許第4,240,716号明細書、特許第3428603号公報、特開2003−241227号公報等で、様々な方法が開示されている。
【0007】
本発明者は、上記各特許文献に開示されている技術を詳細に検討した結果、従来技術では、いづれもハロゲン化銀、ハロゲン化アルカリを含む電解質の構成であり、この構成で繰り返し駆動を行なうと、ハロゲン化合物が酸化還元しない低電圧駆動では、駆動速度が十分でなく、銀の酸化還元の見かけの酸化還元速度を上げる為に駆動電圧を上げると、電解液が着色したり、ハロゲン酸化体が対向電極の金属電極を腐食させる局部電池反応等により電極耐久性が十分でないという課題があることが判明した。
【0008】
銀の電界析出を用いるED法表示素子において、書き込みと消去を繰り返すと、対向電極(非表示側)の成分と銀との交換が起こり、対向電極の劣化につながる。対向電極が劣化することにより、画像表示速度、消去速度が低下していき、書き込みが不可能になっていくという課題があった。
【0009】
一方、エレクトロデポジション法において、対向電極の耐性を向上する方法の1つとして、炭素を利用した電極形成方法が、特許文献等で知られている。
【0010】
例えば、銀塩溶液からITO透明電極上への銀の析出を利用して光の透過率を制御する光学フィルターの対向電極の材料コストを低減する光学装置として、対向電極の一方の表面を、少なくとも1種の導電性粒子と少なくとも1種のバインダーとを含有し、該導電性粒子とし炭素材料を用いる光学装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、作用電極と、対極と、これらの電極に接して配された電解液とを有し、この電解液への印加電界により電気化学的に調光される光学装置において、その明細中において導電性粒子である炭素材料をバインダーと混合して対向電極とする旨が記載されている(例えば、特許文献2参照。)。また、可視光域において光透過率又は光反射率の制御が可能な光学フィルタなどに使用される光学装置において、積層構造を有し、その最上部に炭素材料を含む対向電極が開示されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
【0011】
一般に、対向電極として炭素電極を用いることで、対向電極の劣化がなく、繰り返し書き換えに耐える表示素子が形成できるとされている。しかしながら、炭素電極は、一般に用いられるITO(Snドープ酸化インジウム)電極や金属電極に比べ電気供給能力に欠けるため、表示速度が遅くなるなどの問題点があった。
【0012】
しかしながら、上記に示したいずれの特許文献にも、表示速度を十分に確保したまま、電極耐性を向上する手段に関しては一切開示されておらず、本発明の含窒素炭素電極層についての示唆もない。
【特許文献1】特開平10−274790号公報
【特許文献2】特開2001−59980号公報
【特許文献3】特開2001−51307号公報
【特許文献4】特開2001−51308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、表示速度が速く、電極耐性が向上された表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも一つが、含窒素炭素電極層を有する電極であることを特徴とする表示素子。
【0016】
2.前記含窒素炭素電極層が、多孔質構造を有することを特徴とする前記1に記載の表示素子。
【0017】
3.前記含窒素炭素電極層に含まれる窒素原子が、下記構造式〔1〕、〔2〕及び〔3〕から選ばれる少なくとも1つの結合形態で含有されることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子。
【0018】
【化1】

【0019】
4.前記含窒素炭素電極層を形成する含窒素炭素材料が、含窒素五員環構造または含窒素六員環構造を有する炭素化合物から形成されることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【0020】
5.前記含窒素五員環構造または含窒素六員環構造を有する炭素化合物が、下記一般式(1)または(2)で表される化合物であることを特徴とする前記4に記載の表示素子。
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、R1〜R7は、各々シアノ基、アミノ基、イミノ基、N−オキシド、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、アルキル基、及びそれらから誘導される結合から選ばれる少なくとも1つであり、各々は同一であっても異なっていてもよい。〕
6.前記含窒素炭素電極層と基板との間に、非炭素系電極が、前記含窒素炭素電極と接した状態で存在していることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。
【0023】
7.前記非炭素系電極は導電性層を有し、該導電性層が銀を含むことを特徴とする前記6に記載の表示素子。
【0024】
8.前記電解質が、実質的にアルカリ金属を含まないことを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【0025】
9.前記電解質が、有機溶媒を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。
【0026】
10.前記電解質が、下記一般式(3)または(4)で表される化合物の少なくとも1種と、下記一般式(5)または(6)で表される化合物の少なくとも1種とを含有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の表示素子。
【0027】
【化3】

【0028】
〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【0029】
【化4】

【0030】
〔式中、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
一般式(5)
7−S−R8
〔式中、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
【0031】
【化5】

【0032】
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR9は同一でも異なっていてもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
11.前記電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Ag](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の表示素子。
【0033】
式(1)
0≦[X]/[Ag]≦0.01
【発明の効果】
【0034】
本発明により、表示速度が速く、電極耐性が向上された表示素子を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0036】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも一つが、含窒素炭素電極層を有する電極であることを特徴とする表示素子により、表示速度が速く、電極耐性が向上された表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0037】
以下、本発明の表示素子を構成する各要素について説明する。
【0038】
本発明の表示素子は、対向電極間に、銀、または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を有し、銀の溶解析出を生じさせるように対向電極の駆動操作を行うED方式の表示素子である。
【0039】
〔銀または銀を化学構造中に含む化合物〕
本発明に係る銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
【0040】
〔含窒素炭素電極層を有する電極〕
本発明の表示素子においては、対向電極の少なくとも一つが、含窒素炭素電極層を有する電極であることを特徴とする。
【0041】
電気化学分野においては、炭素電極が一般的な電極の一つとしてよく知られており、例えば、「エレクトロニクス用カーボン 技術大全集」(技術情報協会編)などに、使用される炭素材料やその製法などが紹介されている。
【0042】
本発明の表示素子に用いる含窒素炭素電極層とは、一般的な炭素電極中には存在しない窒素を含有させた特殊な炭素電極である。このような窒素を内部に含む炭素電極については、電気二重層キャパシタ用としての報告はあるが、いずれも本発明のような電気化学反応に関する効果については鑑みられていなかった。
【0043】
本発明の表示素子において、対向電極の少なくとも一つとして含窒素炭素電極を用いることで、電極自体の耐性が向上すると共に、一般的な炭素電極では達成し得なかった表示速度の向上を見ることができた。
【0044】
上記特性の達成理由に関しては、全てが明確にはなっていないが、次のように推測している。
【0045】
図1は、本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【0046】
図1の(a)は、本発明の表示素子1において、可視化の駆動を行った時に起こる反応を示している。可視化の駆動を行った場合、閲覧側の透明電極2では、電解質5中に溶解している銀イオン(Ag+)に透明電極2から電子(e-)が与えられて、銀(Ag)が透明電極2上に析出し、通常、黒色画像4を生じさせる。この時、対向電極3上では、銀(この銀は、表示素子作成当初には存在しないが、可視化→無色化を一度行った時点で少なからず生じるものである)から電子が対向電極3に移動し、銀イオン(Ag+)となって電解質5中に放出される。
【0047】
図1の(b)は、無色化の反応を示している。閲覧側の透明電極2では、銀から電子を受け取り、銀は銀イオンとなって電解質5中に放出される。対向電極3上では、銀イオンに電子が与えられ、銀となって析出する。このため、対向電極3上での電子交換の反応速度が遅いことが、表示速度の律速となる。電極の耐久性を目的として、対向電極3に炭素電極を使用した場合、透明電極2に対してこの電子交換の反応速度が遅くなるため。表示速度が低下する。
【0048】
本発明の表示素子において、含窒素炭素電極を使用することで表示速度が向上する理由としては、銀あるいは銀イオンと電極との間の電子の交換が、銀(Ag)が電極中の窒素(N)と結合し、N−Ag結合が形成されることによりAgが速やかに酸化還元反応することができるためと推測している。
【0049】
このような効果を発揮する含窒素炭素電極層を有する対応電極においては、窒素原子は、前記構造式〔1〕〜〔3〕から選ばれる少なくとも1つの結合形態で電極内に存在する。その中でも、特に、構造式〔1〕で示すピリジン型が特に好ましい。窒素の結合については、XPS等による化学結合状態評価により解析できる。以下に、XPSにより求めた化学結合状態の一例を示す。
【0050】
【化6】

【0051】
(多孔質構造)
本発明の表示素子においては、本発明の目的効果をより発揮させる観点からは、含窒素炭素電極層表面に窒素原子が表出していることが好ましく、そのためには、表面積が大きい、いわゆる多孔質構造であることが好ましい。
【0052】
本発明でいう「多孔質」とは、含窒素炭素電極層に、微小な穴が多数開いた状態であることを意味し、電極が設けられている面積より、電極の表面積が大きくなっている状態である。本発明の効果を出現させるためには、孔が基板または基板と含窒素炭素電極層との間に存在する後述する非炭素系電極にまで貫通している必要はない。
【0053】
(含窒素炭素電極層を有する電極の製造方法とその原料)
本発明に係る含窒素炭素電極層の製造方法として、炭素電極中に窒素を含ませる方法としては、いくつかの方法を挙げることができる。例えば、カーボンフェルトにポリアミノキノクサリン粒子を担持させた電極が、電気化学会第73回大会講演要旨集1L30に開示されている。また、CVD法や、プラズマ法によって、一般的な炭素電極中に窒素をドープすることも可能である。また、マイカなどをテンプレートとしてキノリンやピリジンなどの含窒素複素環炭化水素とテンプレートとの複合体を形成し、これを高温で処理し、更にテンプレートを除去するという方法が、例えば、独立行政法人産業技術総合研究所から発表されている。また、メラミンとホルムアルデヒドから架橋ポリマーゲルを形成する方法がG.C.Rubin、R.W.Pekaraによって発表されており(J.Non−Cryst.Solids 186(1995)219)、この架橋ポリマーゲルを窒素雰囲気下で焼成することによって、多孔質構造を有した炭素電極を得ることができる。
【0054】
上述した含窒素炭素電極層の製造方法の中でも、特に好ましいのは、含窒素炭素材料を調製し、これと導電材料、バインダーとを混合し、少量のアルコールを加えてペースト状にし、基板あるいは非炭素系導電層上に塗布し、デシケーター中で乾燥させる方法である。あるいは、含窒素炭素材料と導電材料、バインダーを混合する際に適量のアルコールを加えて強く混練することでシート状とし、これを押し延ばすことで適切な厚みとした後に乾燥させる方法によっても得ることができる。
【0055】
これらの方法で適用可能な含窒素炭素材料としては、特に制限はないが、含窒素五員環構造または含窒素六員環構造を有する炭素化合物が、効率よく形成できる観点で好ましく、特に、前記一般式(1)または(2)で表される化合物が好ましい。
【0056】
前記一般式(1)または(2)で表される化合物を400℃から800℃程度の高温で加熱処理することで、容易に含窒素炭素材料を得ることができる。なお、加熱処理を施す際には、酸素との結合を避けるために、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0057】
導電材料としては、金属や合金の微粒子、カーボンブラック、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素などの導電性炭素微粒子などから選ぶことができる。
【0058】
導電材料は、含窒素炭素材料の0質量%〜50質量%の範囲で用いることが好ましい。導電材料が多いほうが導電度は向上するが、本発明の表示素子においては、導電度の向上と表示速度の向上が必ずしも相関しない。
【0059】
また、本発明に係る多孔質構造を有する含窒素炭素電極層を形成する方法としては、例えば、バインダーは、含窒素炭素材料と導電材料との総和(固形分総和)に対し、5質量%〜300質量%の範囲で添加することが好ましい。更に好ましくは5質量%〜100質量%の範囲であり、より好ましくは5質量%〜40質量%の範囲である。バインダーが固形分総和の300質量%を超えて添加された場合、含窒素炭素材料がバインダーの中に埋もれてしまい、十分な窒素が表出しないことになり、本発明の目的効果を十分に引き出す妨げになる。
【0060】
本発明に係る含窒素炭素電極層に適用しうるバインダーとしては、天然ゴム系、セルロース系、フェノール系、ウレタン系、エポキシ系、フッ素系の樹脂などを用いることができる。特に好ましいのは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)などのフッ素系樹脂である。これらフッ素系の樹脂は、繊維状に粒子をつなぎとめる効果が高く、少量の添加で効果を上げることができるため、好適である。さらに耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性などの性能が優れている。
【0061】
上記説明した本発明に係る多孔質構造を有する含窒素炭素電極層を形成する方法の中でも、含窒素炭素材料とバインダー、導電性材料を混合しペースト状にして形成し、所望の基板上に塗布する方法が、含窒素炭素電極層の厚み制御や処理の簡便性の点から特に好ましい。
【0062】
含窒素炭素電極層の好ましい厚みは、セルの構造により異なる。含窒素炭素電極層と基板の間に非炭素系電極が、含窒素炭素電極と接した状態で存在している場合には、5〜100ナノメートル(nm)程度であることが好ましい。
【0063】
〔非炭素系電極〕
本発明の表示素子においては、本発明に係る含窒素炭素電極層と基板との間に、非炭素系電極が含窒素炭素電極と接した状態で存在している構成をとることが好ましい。すなわち、含窒素炭素電極が銀を溶解する電解質に接触することが好ましいので、非炭素系電極は含窒素炭素電極層より基板側に位置し、更に電極間の電子移動効率を阻害しないために、含窒素炭素電極層と非炭素系電極は接触していることが好ましい。
【0064】
非炭素系電極の構成材料としては、例えば、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、アルミニウムなどの金属の他、シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体、ビスマス−シリコン−オキサイド、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム−スズ−酸化物、インジウム−亜鉛−酸化物、フッ素ドープ酸化スズなどの金属酸化物を用いることができる。また、これらは混合して用いてもよい。
【0065】
このような電極を形成する方法として、めっき法、スパッタ法などの他、これら電極形成材料の微粒子をバインダーと混合し、ペースト状にして塗布する方法も可能である。特に、非炭素系電極が導電性層を有し、この導電性層が銀を含むことをことが、電解液への銀の効率的な供給が可能となる点で好ましい。
【0066】
〔アルカリ金属イオン〕
本発明の表示素子においては、電解質がLiなどのアルカリ金属(イオン)を実質的に含まない系が好ましい。電解質中にアルカリ金属が存在すると、銀の代わりにアルカリ金属が電極上で電子交換を起こしてしまい、画像形成を阻害する。
【0067】
〔有機溶媒〕
本発明の表示素子においては、電解質に有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒は、好ましい電解質を有効に溶解することができ、電気分解などの危険性が少ないため好適である。
【0068】
本発明に適用可能な有機溶媒としては、電解質を溶解できれば各種用いることができるが、より好ましくは、一般式(3)または(4)で表される化合物である。
【0069】
はじめに、本発明に係る一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0070】
前記一般式(3)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0071】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0072】
以下、本発明に係る一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0073】
【化7】

【0074】
次いで、本発明に係る一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0075】
前記一般式(4)において、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
【0076】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
【0077】
以下、本発明に係る一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0078】
【化8】

【0079】
上記例示した一般式(3)及び一般式(4)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(3−1)、(3−2)、(4−3)が好ましい。
【0080】
本発明に係る一般式(3)、(4)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0081】
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
【0082】
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
【0083】
更に、本発明の表示素子には、前記一般式(5)または(6)で表される化合物の少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0084】
前記一般式(5)において、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表し、これらには芳香族の直鎖基または分岐基が含まれる。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良い。ただし、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。
【0085】
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
【0086】
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解質中で銀を可溶化することが必要である。例えば、銀と配位結合を生じさたり、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀
と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基も銀溶剤として、有用に作用し、共存化合物への影響が少なく、溶媒への溶解度が高い特徴がある。
【0087】
以下、本発明に係る一般式(5)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0088】
5−1:CH3SCH2CH2OH
5−2:HOCH2CH2SCH2CH2OH
5−3:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
5−4:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
5−5:HOCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2OH
5−6:HOCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OH
5−7:H3CSCH2CH2COOH
5−8:HOOCCH2SCH2COOH
5−9:HOOCCH2CH2SCH2CH2COOH
5−10:HOOCCH2SCH2CH2SCH2COOH
5−11:HOOCCH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2COOH
5−12:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
5−13:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
5−14:H3CSCH2CH2CH2NH2
5−15:H2NCH2CH2SCH2CH2NH2
5−16:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
5−17:H3CSCH2CH2CH(NH2)COOH
5−18:H2NCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2NH2
5−19:H2NCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2NH2
5−20:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
5−21:HOOC(NH2)CHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH(NH2)COOH
5−22:HOOC(NH2)CHCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH(NH2)COOH
5−23:HOOC(NH2)CHCH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH(NH2)COOH
5−24:H2N(O=)CCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2C(=O)NH2
5−25:H2N(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(O=)NH2
5−26:H2NHN(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NHNH2
5−27:H3C(O=)NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(O=)CH3
5−28:H2NO2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SO2NH2
5−29:NaO3SCH2CH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH2SO3Na
5−30:H3CSO2NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHO2SCH3
5−31:H2N(NH=)CSCH2CH2SC(NH)NH2・2HBr
5−32:H2N(NH=)CSCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SC(=NH)NH2・2HCl
5−33:H2N(NH=)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=NH)NH2・2HBr
5−34:〔(CH33NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2N(CH332+・2Cl-
【0089】
【化9】

【0090】
【化10】

【0091】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物5−2が好ましい。
【0092】
次いで、本発明に係る一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0093】
前記一般式(6)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zはイミダゾール環類を除く含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR4は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0094】
一般式(6)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH34、N(C494、N(CH331225、N(CH331633、N(CH33CH265等が挙げられる。
【0095】
一般式(6)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
【0096】
一般式(6)のR4で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
【0097】
次に、一般式(6)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されりものではない。
【0098】
【化11】

【0099】
【化12】

【0100】
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物6−12、6−18が好ましい。
【0101】
〔ハロゲンイオンまたはハロゲン原子濃度〕
本発明の表示素子においては、電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Ag](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0102】
式(1)
0≦[X]/[Ag]≦0.01
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Ag]が0.01よりも大きい場合は、銀の酸化還元反応時に、X-→X2が生じ、X2は黒化銀と容易にクロス酸化して黒化銀を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Ag]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
【0103】
〔電解質−銀塩〕
本発明の表示素子においてはヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
【0104】
本発明に係る電解質層に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が起きやすくなる傾向にあり不利である。
【0105】
(電解質材料)
本発明の表示素子において、電解質が液体である場合には、以下の化合物を電解質中に含むことができる。カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。また、特開2003−187881号公報の段落番号〔0062〕〜〔0081〕に記載の溶融塩電解質組成物も好ましく用いることができる。さらに、I-/I3-、Br-/Br3-、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
【0106】
また、支持電解質が固体である場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を電解質中に含むことができる。
【0107】
パーフルオロスルフォン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn25、CeF3等の含F化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd23、HfO2、Y23、Nb25、WO3、Bi23、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C55NHAg56、Rb4Cu167Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
【0108】
また、支持電解質としてゲル状電解質を用いることもできる。電解質が非水系の場合、特開平11−185836号公報の段落番号〔0057〕〜〔0059〕に記載のオイルゲル化剤を用いことができる。
【0109】
更に、電解質が下記一般式(A)で表される化合物を含有することが、本発明の目的効果をより奏することができる観点から好ましい。
【0110】
【化13】

【0111】
上記一般式(A)において、X及びYは、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。k及びiは、各々0または1〜4の正整数を、n及びmは、各々3〜7の正整数を表し、Aは酸成分を表す。
【0112】
一般式(A)において、X及びYの炭素数が5以上、k及びiが5以上、または、n及びmが8以上の場合には、スピロアンモニウム化合物塩のイオン導電性が低下し好ましくない。
【0113】
一般式(A)において、スピロアンモニウム化合物塩のカチオンとしては、例えば、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロブチルイオン、アザシクロペンタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロブチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロペンチルイオン、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロペンチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘキシルイオン、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘキシルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロヘプチルイオン、アザシクロオクタン−1−スピロ−1′−アザシクロヘプチルイオン、スピロ−(1,1′)−ビアザシクロオクチルイオンが挙げられる。
【0114】
一般式(A)において、Aは酸成分を表し、例えば、過塩素酸イオン(ClO4-)、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3-)、トリフルオロ酢酸イオン(CF3CO2-)、ビストリフルオロメタンスルフォニルイミドイオン((CF3SO22-)、ペルフルオロブタンスルホン酸イオン(C49SO3-)、トリストリフルオロメタンスルフォニルメチドイオン((CF3SO23-)、ジシアナミドイオン((CN)2-)等が挙げられる。
【0115】
本発明において、一般式(A)で表されるスピロアンモニウム化合物塩は、以下の製造方法により得られる。
【0116】
まず、イソプロピルアルコール溶媒中、炭酸カリウム存在下でアザシクロアルカンに両末端を臭素化させたジブロモアルカンを作用させてスピロアンモニウムブロマイドを得、次に該ブロマイドを水またはアルコール中で電気透析により脱塩させて水酸化スピロアンモニウム溶液を得る。次いで、得られた水酸化スピロアンモニウム溶液に、一般式(A)中のAに対応する酸成分を、等モル量添加して、中和反応させた後、減圧下で脱水させて、目的とするスピロアンモニウム化合物塩を得ることができる。
【0117】
一般式(A)で表される化合物の電解液への好ましい添加量は、0.1質量%以上、10質量%以下である。0.1質量%以上であれば、本発明の向上効果を発揮し、また10質量%以下であれば、電解液での低温析出を生じることが無く、安定した状態で電解質中に存在させることができる。
【0118】
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質層に増粘剤を用いることができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダーとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
【0119】
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
【0120】
〔白色散乱層〕
本発明の表示素子は、非閲覧側の電極が炭素電極であるため、電解質液が透明の場合、炭素電極自身の色が見えてしまい、視認性に影響を与える。したがって、電解質中に、電解質溶媒に実質的に溶解しない白色散乱物質を混入するか、あるいは炭素電極より閲覧側に、白色散乱物質を含む多孔質白色散乱層を形成することが必要となる。
【0121】
このような白色散乱物質として、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラスなど、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
【0122】
本発明においては、上記白色粒子の中でも、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al23、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えて、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
【0123】
これらの白色粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0124】
また、多孔質白色散乱層を形成する場合、電解質中に実質的に溶解しない水溶性高分子と、上記白色散乱物質との水混和物を塗布、乾燥して形成することができる。
【0125】
本発明に係る電解質溶媒に実質的に溶解しない水溶性高分子としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル器変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0126】
本発明においては、ゼラチン及びゼラチン誘導体、または、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体を好ましく用いることができる。
【0127】
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、重量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
【0128】
本発明に係る水溶性高分子と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水溶性高分子/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
【0129】
本発明に係る水溶性高分子と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、対向電極の少なくとも1方の電極面上に付与することが好ましい。媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
【0130】
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができ、例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
【0131】
本発明に係る媒体上に付与した水溶性高分子と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
【0132】
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬化剤により水溶性高分子の硬化反応を行うことが好ましい。
【0133】
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水溶性高分子としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
【0134】
これらの硬膜剤は、水溶性高分子1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。
【0135】
〔電解質層のその他の添加剤〕
本発明の表示素子の構成層には、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を挙げることができ、これらの補助層中には、各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
【0136】
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
【0137】
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
【0138】
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7 XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
本発明の表示素子の対向電極間の構成層について、更に説明する。
【0139】
本発明の表示素子に係る構成層として、正孔輸送材料を含む構成層を設けることができる。正孔輸送材料として、例えば、芳香族アミン類、トリフェニレン誘導体類、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール類、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトルイジン誘導体、CuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を挙げることができる。
【0140】
〔基板〕
本発明で用いることのできる基板としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート類、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンジナフタレンジカルボキシラート、ポリエチレンナフタレート類、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアセタール類、ポリスチレン等の合成プラスチックフィルムも好ましく使用できる。また、シンジオタクチック構造ポリスチレン類も好ましい。これらは、例えば、特開昭62−117708号、特開平1−46912、同1−178505号の各公報に記載されている方法により得ることができる。更に、ステンレス等の金属製基盤や、バライタ紙、及びレジンコート紙等の紙支持体ならびに上記プラスチックフィルムに反射層を設けた支持体、特開昭62−253195号(29〜31頁)に支持体として記載されたものが挙げられる。RDNo.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄及び同No.307105の879頁に記載されたものも好ましく使用できる。これらの支持体には、米国特許第4,141,735号のようにTg以下の熱処理を施すことで、巻き癖をつきにくくしたものを用いることができる。また、これらの支持体表面を支持体と他の構成層との接着の向上を目的に表面処理を行っても良い。本発明では、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理を表面処理として用いることができる。更に公知技術第5号(1991年3月22日アズテック有限会社発行)の44〜149頁に記載の支持体を用いることもできる。更にRDNo.308119の1009頁やプロダクト・ライセシング・インデックス、第92巻P108の「Supports」の項に記載されているものが挙げられる。その他に、ガラス基板や、ガラスを練りこんだエポキシ樹脂を用いることができる。
【0141】
〔透明電極〕
また、本発明の表示素子は、対向電極の少なくとも1種が透明電極であることが好ましい。透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0142】
電極をこのように形成するには、例えば、基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
【0143】
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
【0144】
シール剤は電解質が外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
【0145】
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
【0146】
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
【0147】
〔スクリーン印刷〕
本発明においては、シール剤、柱状構造物、電極パターン等をスクリーン印刷法で形成することもできる。スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを基板の電極面上に被せ、スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を加熱硬化、乾燥させる。スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解するなどしてペースト状にして用いることが望ましい。
【0148】
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。表示素子とするには、基板間に電解質組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、一方の基板に電解質組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0149】
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
【0150】
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、諧調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
【0151】
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0153】
《電極の作製》
(電極1の作製:比較例)
ガラス基板上に、公知の方法を用いて、電極厚み0.8μm、ピッチ145μm、電極幅130μmの銀−パラジウム電極を作製し、これを電極1とした。
【0154】
(電極2の作製:比較例)
活性炭、ケッチェンブラック、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を8:1:1の質量比で、エタノール中を滴下しながら混合した。全体がよく混合し、ペースト状になったところで、ガラス基板上に厚さ75nm、電極ピッチ145μm、電極幅130μmになるようにマスキングして塗布し、デシケーター中で乾燥させて、多孔質炭素電極である電極2を作製した。
【0155】
(電極3の作製:本発明)
上記作製した電極2を、ポリアミノキノクサリン溶液に浸漬し、これを引き上げて乾燥し、電極表面にポリアミノキノクサリンを付与した含窒素炭素電極である電極3を作製した。
【0156】
(電極4の作製:本発明)
上記作製した電極2を、図2に示すようなプラズマ容器100内の試料部101に装着し、窒素雰囲気下で圧力133Paの条件で、温度制御器102を接続した加熱体103により、高周波アンテナ104を用いて、温度150℃に加熱した状態で30分のプラズマ処理を行い、含窒素炭素電極である電極4を作製した。
【0157】
(電極5の作製:本発明)
G.C.Rubinらの文献(J. Non−Cryst.Solids 186(1995)219)に従って、メラミン−ホルムアミドエアロゲルを調製した。このエアロゲルを、窒素雰囲気下で900℃で1時間焼成し、メラミン−ホルムアルデヒドカーボンエアロゲルを形成し、含窒素炭素電極である電極5を作製した。(実施例)
(電極6の作製:本発明)
2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアゾナフタレンを窒素雰囲気下において800℃1時間処理を行うことにより、含窒素炭素材料を得た。この含窒素炭素材料と導電性炭素であるケッチェンブラック、PTFE樹脂を、8:1:1の質量比で電極2と同様に混合、処理し、含窒素炭素電極である電極6を作製した。
【0158】
(電極7の作製:比較例)
電極2の作製で用いたペーストを、電極1である銀−パラジウム電極上に、電極位置を合わせて厚さ75nm、電極ピッチ150μm、電極幅125μmになるようにマスキングして塗布し、デシケーター中で乾燥させ、銀電極上に多孔質炭素電極を形成した電極7を作製した。
【0159】
(電極8の作製:本発明)
上記電極7の作製において、多孔質炭素電極部分を、ポリアミノキノクサリン溶液に浸し、これを引き上げて乾燥した以外は同様にして、電極表面にポリアミノキノクサリンが付与された含窒素炭素電極である電極8を作製した。
【0160】
(電極9の作製:本発明)
上記電極6の作製に用いた含窒素炭素電極ペーストを、電極3と同様に電極1上に塗布、処理して、含窒素炭素電極である電極8を作製した。
【0161】
(電極10:透明電極の作製)
厚さ1.5mmで2cm×4cmのガラス基板状にピッチ145μm、電極幅130μmのITO膜を公知の方法に従って形成し透明電極(電極1)を得た。
【0162】
《電解質液の調製》
(電解質液1の調製)
ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解させた後に、酸化チタン(平均一次粒径0.37μm)300mgを加えて超音波分散機にて該酸化チタンを分散し、さらにポリビニルピロリドン(平均分子量15000)を150mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌し、電解質液1を得た。
【0163】
《表示素子の作製》
周辺部を平均粒子径70μmのガラス製球形ビーズを体積分率で10%含むオレフィン系封止剤により縁取りされた電極1〜9に、電解質液1を滴下し、その上から電極10を電極同士が対向するように配置し、9.8kPaの圧力で押圧して、表示素子1〜9を作製した。ただし、表示素子5は、電極7の背面にガラス基板を添付した。
【0164】
《表示素子の評価》
上記作製した各表示素子について、下記の評価を行った。
【0165】
(表示速度の評価)
上記で作製した各表示素子に1.5Vの電圧を3秒間印加して白色を表示させた後に、−1.5Vの電圧を0.5秒間印加させてグレーを表示させ、550nmでの反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。測定した反射率をRGlayとし、RGlayを表示速度の指標とした。ここでは、RGlayが低いほど表示速度が高いとする。
【0166】
(繰り返し耐久性の評価)
上記作製した表示素子1、3〜6、8、9について、下記の方法に従って繰り返し耐久性の評価を行った。
【0167】
各表示素子に対して、コニカミノルタセンシング社製分光測色計CM−3700dの550nmの反射率が10%となる様な駆動条件を求めた後、該駆動条件で白化−黒化を1000回駆動させた。
【0168】
その後再度黒化させ、300画素四方の黒化像をCCDカメラにて撮像し、電極幅が3/4以下になっている(断線も含む)ストライブ電極の本数を数えた。評価値と劣化本数は、10は劣化なし、9は1〜5本、8は6〜10本、7は11〜15本、6は16〜20本、5は21〜25本、4は26〜30本、3は31〜35本、2は36〜40本、1は41本以上とし、評価値が高いほど電極耐久性が優れていることを示す。
【0169】
(電極の窒素含有率の測定)
上記作製した電極3〜6について、燃焼法による組成分析を行い、窒素含有量を算出した。
【0170】
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
表1に記載の結果より明らかなように、含窒素炭素電極を有する本発明の表示素子は、比較例に対し、表示速度が速く、かつ電極の繰り返し耐久性に優れていることが分かる。
【0173】
また、電極3〜6について、XPS N1sスペクトル分析により窒素−炭素の化学結合状態を測定した結果、それぞれの電極で四級窒素とピリジン型窒素のピークが認められた。得られたスペクトルを、図3に示す。
【0174】
なお、図3の各電極における縦軸のスペクトル強度の序列に特に意味はなく、便宜上4つの電極のスペクトルを縦に配置したものである。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の表示素子の原理を説明する概念図である。
【図2】実施例で用いたプラズマ処理装置の概略図である。
【図3】XPS N1sスペクトル分析により窒素−炭素の化学結合状態を測定したスペクトルである。
【符号の説明】
【0176】
1 表示素子
2 透明電極
3 対向電極
4 黒色画像(銀画像)
5 電解質
100 プラズマ処理容器
101 試料部
102 温度制御器
103 加熱体
104 高周波アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向電極間に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質を有し、銀の溶解析出を生じさせるように該対向電極の駆動操作を行う表示素子であって、該対向電極の少なくとも一つが、含窒素炭素電極層を有する電極であることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記含窒素炭素電極層が、多孔質構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記含窒素炭素電極層に含まれる窒素原子が、下記構造式〔1〕、〔2〕及び〔3〕から選ばれる少なくとも1つの結合形態で含有されることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子。
【化1】

【請求項4】
前記含窒素炭素電極層を形成する含窒素炭素材料が、含窒素五員環構造または含窒素六員環構造を有する炭素化合物から形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項5】
前記含窒素五員環構造または含窒素六員環構造を有する炭素化合物が、下記一般式(1)または(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の表示素子。
【化2】

〔式中、R1〜R7は、各々シアノ基、アミノ基、イミノ基、N−オキシド、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、アルキル基、及びそれらから誘導される結合から選ばれる少なくとも1つであり、各々は同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項6】
前記含窒素炭素電極層と基板との間に、非炭素系電極が、前記含窒素炭素電極と接した状態で存在していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項7】
前記非炭素系電極は導電性層を有し、該導電性層が銀を含むことを特徴とする請求項6に記載の表示素子。
【請求項8】
前記電解質が、実質的にアルカリ金属を含まないことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項9】
前記電解質が、有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示素子。
【請求項10】
前記電解質が、下記一般式(3)または(4)で表される化合物の少なくとも1種と、下記一般式(5)または(6)で表される化合物の少なくとも1種とを含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示素子。
【化3】

〔式中、Lは酸素原子またはCH2を表し、R1〜R4は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
【化4】

〔式中、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。〕
一般式(5)
7−S−R8
〔式中、R7、R8は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。但し、S原子を含む環を形成する場合には、芳香族基をとることはない。〕
【化5】

〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのR9は同一でも異なっていてもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
【請求項11】
前記電解質に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Ag](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の表示素子。
式(1)
0≦[X]/[Ag]≦0.01

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−122829(P2008−122829A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308846(P2006−308846)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】