説明

表示装置、通信装置及びプログラム

【課題】画像のスクロール中にフリックを繰り返す場合の操作感を向上させること。
【解決手段】表示制御部200は、画像のスクロールを指示する動作が検知された場合に、この動作に対応する方向に第1のスクロール量だけ画像をスクロールさせる。表示制御部200は、スクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が検知された場合に、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量を増大させたスクロールを新たに実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、通信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の画面に触れた物体の挙動に応じて画像を変化させる技術が知られている。例えば、画面上で指先を滑らせた方向に画像をスクロールさせる機能が典型的である。この種の機能に関連する技術として、特許文献1では、指先を滑らせる際の画面に対する押圧力の強弱に応じて、スクロールの速度を変化させることが提案されている。また、特許文献2では、画面上でスタイラスペンを滑らせる速度に応じて、スクロールの移動量を変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−99057号公報
【特許文献2】特開2003−330613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像をスクロールさせる機能の1つとして、画面上で指先を払った方向に画像をスクロールさせるフリックと呼ばれる機能が知られている。この機能では、指先を払う操作は一瞬で済むが、画面から指先を離した後も、定められた量だけスクロールが継続され、あたかも画像に対して慣性が働いているかのように感じられるので、快適な操作感が得られる。しかし、1回のフリックで行われるスクロールのスクロール量は有限であるため、画面の長さの数十倍、数百倍といった長大な画像の場合、所望の領域に達するまでに何度もフリックを繰り返さなければならないことがある。その場合、スクロールが止まらないうちに、使用者が先を急いで何度もフリックを繰り返すという傾向がある。
本発明は、画像のスクロール中にフリックを繰り返す場合の操作感を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、画面と、表示データに基づく画像を前記画面に表示させる表示手段と、前記画像のスクロールを指示する動作を前記画面上で検知する検知手段と、前記検知手段によって前記動作が検知された場合に、前記動作に対応する方向に第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせるスクロール手段と、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする表示装置を提供する。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の表示装置において、前記制御手段は、実行中のスクロールよりもスクロール量及びスクロール速度を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールと逆の方向に対応する前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと逆の方向に前記第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせる逆スクロール手段を有することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記スクロールの停止を指示する動作を前記画面上で検知する停止指示検知手段と、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に前記停止指示検知手段によって停止を指示する動作が検知された場合に、実行中のスクロールを停止させる停止手段と、前記停止手段によってスクロールが停止された場合に、スクロール量を前記第1のスクロール量に設定する設定手段とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記制御手段は、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって複数回検知された場合に、当該動作の時間間隔の長さに応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記制御手段は、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって複数回検知された場合に、当該動作の時間間隔の変動幅が閾値未満であるならば、実行中のスクロールと同じ速度でスクロールを継続させることを特徴とする。
【0008】
請求項7に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記制御手段は、前記表示データに含まれる画像の種類に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1又は2に記載の表示装置において、前記制御手段は、前記表示データに含まれる特定の種類の画像の量に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする。
【0009】
請求項9に係る発明は、移動通信網経由で前記表示データを受信する受信手段と、請求項1乃至8のいずれかに記載の表示装置とを有することを特徴とする通信装置を提供する。
請求項10に係る発明は、コンピュータを、表示データに基づく画像を表示装置の画面に表示させる表示手段と、前記画像のスクロールを指示する動作を前記画面上で検知する検知手段と、前記検知手段によって前記動作が検知された場合に、前記動作に対応する方向に第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせるスクロール手段と、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御する制御手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像のスクロール中にフリックを繰り返す場合の操作感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】通信端末100のハードウェア構成を示す図である。
【図2】表示部108の平面図である。
【図3】図2のI−I線における断面図である。
【図4】画面207上の座標の定義を示す図である。
【図5】表示制御部200が実行する処理の概略を示す図である。
【図6】図5のステップA07における処理を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態
本発明の実施形態について説明する。
(1.1)構成
【0013】
図1は、通信端末100のハードウェア構成を示す図である。通信端末100は、例えば携帯電話機である。なお、通信端末100は、基地局、交換機、中継装置等からなる移動通信網に接続することにより通話及びパケット通信を行うが、移動通信網については、本発明の内容と直接的な関係がないため、説明を省略する。
通信端末100は、制御部101、記憶部102、パケット通信部103、通話部104、マイクロフォン105、スピーカ106、操作部107、表示部108、アンテナ109及びIC(Integrated Circuit)カード端子110を備える。
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、CPUがROMに記憶されているOS(Operating System)を実行することによって通信端末100の動作を制御する。
【0014】
記憶部102は、例えば、電力の供給がなくても記憶を保持する半導体メモリであり、アプリケーションプログラムや、移動通信網経由で受信したデータ等を記憶する。アプリケーションプログラムの1つとして、通信端末100をWWW(World Wide Web)ブラウザとして機能させるためのブラウザプログラムが記憶されている。
パケット通信部103は、通信端末100を移動通信網に接続してパケット通信を行うための通信インターフェイスである。パケット通信部103は、CPU101から供給されたデータに基づいてパケットを生成し、このパケットをアンテナ109を介して基地局に送信する。また、基地局から送信されたパケットがアンテナ109によって受信されると、パケット通信部103は、このパケットをつなぎ合わせてCPU101に供給する。
【0015】
通話部104は、通信端末100を移動通信網に接続して通話を行うための通信インターフェイスである。マイクロフォン105は、入力した音声を表す音声信号を通話部104に供給し、通話部104は、この音声信号を基地局に送信する。また、通話部104は、基地局から受信した音声信号をスピーカ106に供給し、スピーカ106は、この音声信号を音声に変換して出力する。
ICカード111は、UIM(User Identity Module)やUSIM(Universal Subscriber Identity Module)等の呼称で呼ばれる、電力の供給がなくても記憶を保持するICチップを樹脂の板に埋め込んだ記憶媒体である。ICカード111は、通信事業者と携帯電話の使用に関する契約を交わした使用者に当該通信事業者から貸与される。ICカード111には、使用者を一意に識別するための使用者識別子、通信事業者を一意に識別するための事業者識別子、電話番号等が記憶されている。ICカード端子110にICカード111を装着して電源を投入すると、制御部101が通話やパケット通信を許可する。
【0016】
表示部108は、表示データに基づく画像を表示する表示装置であり、例えば、液晶表示装置である。図2は、表示部108の平面図である。図3は、図2のI−I線における断面図である。ガラス基板204上には、A本の走査線201とB本のデータ線202とが形成されている(A、Bは、正の整数)。走査線201の各々とデータ線202の各々とは互いに直交し、走査線201とデータ線202との交差部の各々に画素回路203が設けられている。
表示制御部200は、CPU、ROM、RAMを有し、ROMに記憶された表示制御プログラムをCPUが実行することによって表示部108の動作を制御する。
【0017】
画像メモリ214には、画像を構成する画素の階調を表す表示データが記憶される。走査線駆動回路211は、一定の時間間隔で順番に1本ずつ走査線201を選択し、選択した走査線201にアクティブレベルの走査信号を、それ以外の走査線201に非アクティブレベルの走査信号を供給する。表示制御部200は、走査線駆動回路211によって選択された走査線201上の画素回路203に対応する表示データを画像メモリ214から読み出し、読み出した表示データをデータ線駆動回路212に供給する。データ線駆動回路212は、走査線駆動回路211によって選択された走査線201上の画素回路203の各々に、表示制御部200から供給された表示データが示す階調に応じた電圧をデータ線202を介して印加する。光源205が発した光は、ガラス基板204を透過し、画素回路203は、印加された電圧に応じて定められる透過率でこの光を透過する。このようにして、各画素回路203に対応する位置に表示データに基づく画素が表示される。以上の処理を繰り返すことによって、一定の時間間隔で画像が更新される。1画面分の画像の更新に要する時間を(1/C)秒(Cは、正の数)とすると、画像は1秒間にC回更新される。
【0018】
画素回路203が形成された領域は、その全体がタッチパネル206で覆われている。タッチパネル206は、例えば、静電容量方式のタッチパネルであり、導電性を有する透明な膜をガラス基板上に形成したものである。図3におけるタッチパネル206の上面を画面207と呼ぶ。物体が画面207に触れると、表示制御部200が膜と物体との間の静電容量の変化を検知することによって、物体が接触している領域を特定する。タッチパネル206が静電誘導方式の場合、画面207に接触する物体は、人体と同等の導電性を有するものであればいかなるものでもよいが、本実施形態では、指先で画面に触れるものとする。
タッチパネル206が設けられていることにより、表示部108は、通信端末100を操作するための操作部107の機能を兼ね備える。具体的には、表示制御部200は、操作子の画像を表示させるための表示データを表示部108に供給する。すると、表示部108には、操作子の画像が表示され、使用者が所望の操作子に指先で触れると、表示制御部200は、タッチパネル206上で指先が接触した領域を特定し、その領域に対応する操作子を表示データに基づいて特定し、その操作子に対応する命令を通信端末100の各部に出力する。
【0019】
図4は、画面207上の座標の定義を示す図である。本実施形態では、画面207の左上隅を原点とし、横方向をx軸(右方向が正)、縦方向をy軸(下方向が正)とする。座標値の単位は、原点から数えた画素の数である。すなわち、左上隅の画素の座標値は、(x,y)=(1,1)である。同様に、右上隅は、(x,y)=(B,1)、左下隅は、(x,y)=(1,A)、右下隅は、(x,y)=(B,A)である。同一のy座標上の画素の連なりをラインと呼ぶ。つまり、画面207上のライン数は、走査線201の数と同一で、A本である。また、画面207のy方向の長さを1画面長と呼ぶ。
【0020】
表示データで表される画像上の座標についても、上記と同様に定義する。ここで、画像上の座標とは、或る表示データで定められた全画素を仮想的な平面上に展開した画像における座標である。画像のライン数は、表示データ毎にまちまちであるから、表示データで表される画像の全体を一度に画面207に表示し切れないことがある。そのため、表示データで表される画像のどの部分を表示させるかを決める必要がある。表示制御部200は、表示データで表される画像のどの部分を表示部108に表示させるかを、ポインタPを用いて制御する。ポインタPは、表示データで表される画像上のy座標を示す。初期状態では、表示制御部200は、ポインタPを1に設定し、(x,y)=(1,1)を先頭として(1/(C×A))秒毎に1ライン分ずつ順番に表示データを読み出し、読み出した表示データをデータ線駆動回路212に供給する。
【0021】
表示制御部200は、画面207に接触した指先の挙動に基づいて、表示部108における画像の表示を制御する。具体的には、表示制御部200は、指先が画面207に接触したことを検知した場合に、指先の位置を特定する。例えば、指先が接触した領域に外接する矩形の図心を算出し、この図心を指先の位置とする。表示制御部200は、(1/C)秒毎に指先の位置の算出を繰り返し、算出された位置に基づいて、画面207上の指先の変位と移動速度を算出し、算出された移動速度に基づいて、画像の表示を制御する。表示の制御の内容は、以下のとおり分類される。
【0022】
(ア)タップ(tap)
タップとは、画面207を指先で叩く動作を指す。タップを検知した場合の制御の一例を示すと、表示部108に表示されたメニューのいずれかに対するタップを検知すると、表示制御部200は、当該項目に予め対応付けられた処理を実行する。
(イ)タッチ(touch)
タッチとは、指先を画面207上で移動させずに或る期間以上、継続して画面207に触れる動作を指す。タッチを検知した場合の制御の一例を示すと、表示部108に一覧表示された通話履歴のいずれかに対するタッチを検知すると、表示制御部200は、当該履歴に対する処理を選択するためのメニューを表示させる。例えば、「電話帳に追加」、「通話履歴から削除」等の項目を表示する。そして、いずれかの項目に対するタップを検知すると、表示制御部200は、タップされた項目に対応する処理を実行する。
【0023】
(ウ)ドラッグ(drag)
ドラッグとは、画面207上で指先を滑らせる動作を指す。ドラッグを検知した場合、表示制御部200は、指先の速度のy成分と同じ方向に当該y成分と同じ速度で画像をスクロールさせる。
(エ)フリック(flick)
フリックとは、画面207上で指先を払う動作を指す。フリックを検知した場合、表示制御部200は、指先の速度のy成分と同じ方向に画像をスクロールさせる。表示制御部200は、指先の速度のy成分の大きさによって、指先の動作がフリックとドラッグのいずれであるかを判定する。具体的な制御内容については、後述する。
【0024】
なお、上記の(ウ)、(エ)では、画像をy方向にスクロールさせる例を示したが、この例は、例えばWWWブラウザ等の文書閲覧ソフトウェアで文書を表示させる場合のように、表示データで表される画像のy方向の長さが1画面長よりも長い場合に該当する。これに対して、表示データで表される画像のx方向の長さが画面207のx方向の長さよりも長い場合には、画像をx方向にスクロールさせる。なお、y方向のスクロールとx方向のスクロールは、方向が異なるだけで、処理の内容は実質的に同じであるから、本実施形態では、画像をy方向にスクロールさせる場合についてのみ説明する。
【0025】
(1.2)動作
以下に示す動作は、画像の表示中に使用者が画面207に指先を接触させて何らかの操作を行った場合に表示制御部200が実行する動作である。
画面207に使用者の指先が接触したことを検知すると、表示制御部200は、表示制御プログラムに基づいて、以下に示す処理を実行する。つまり、表示制御プログラムは、イベント駆動型のプログラムである。
【0026】
図5は、表示制御部200が実行する処理の概略を示す図である。同図に示した処理は、画面207上で行われた操作が上記(ア)乃至(エ)のいずれに該当するのかを判定するための処理である。
ステップA01では、表示制御部200が、画面207上の指先の動作がフリックであるか否かを判定する。具体的には、表示制御部200が、画面207上の指先の速度のy成分の大きさが第1の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、第1の閾値は、正の数である。指先の速度のy成分の大きさが第1の閾値以上であるならば(ステップA01:YES)、操作がフリックであると判断し、ステップA07に進む。指先の速度のy成分の大きさが第1の閾値未満であるならば(ステップA01:NO)、ステップA02に進む。ステップA07の処理については、後述する。
【0027】
ステップA02では、表示制御部200が、画面207上の指先の動作がドラッグであるか否かを判定する。具体的には、表示制御部200が、画面207上の指先の速度のy成分の大きさが第2の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、第2の閾値は、第1の閾値よりも小さい正の数である。指先の速度のy成分の大きさが第2の閾値以上であるならば(ステップA02:YES)、操作がドラッグであると判定し、ステップA06に進む。指先の速度のy成分の大きさが第2の閾値未満であるならば(ステップA02:NO)、ステップA03に進む。
ステップA06では、表示制御部200が、上記(ウ)に記したように、ドラッグに対応する処理を実行する。
【0028】
ステップA03では、表示制御部200が、画面207上の指先の動作がタッチであるか否かを判定する。具体的には、表示制御部200が、画面207に指先が接触した期間の長さが第3の閾値以上であるか否かを判定する。ここで、第3の閾値は、正の数である。指先が接触した期間の長さが第3の閾値以上であるならば(ステップA03:YES)、操作がタッチであると判定し、ステップA05に進む。指先が接触した期間の長さが第3の閾値未満であるならば(ステップA03:NO)、操作がタップであると判定し、ステップA04に進む。
ステップA04では、表示制御部200が、上記(ア)に例示したように、タップに対応する処理を実行する。
ステップA05では、表示制御部200が、上記(イ)に例示したように、タッチに対応する処理を実行する。
【0029】
図6は、図5のステップA07における処理を詳細に示す図である。同図は、フリックに応じて実行するスクロールのスクロール量及びスクロール速度を決定するための処理を含む。また、スクロール量及びスクロール速度は、スクロールの実行中に行われたフリックの回数に応じて変更される。詳しくは、以下のとおりである。
ステップB01では、表示制御部200が、スクロール中であるか否かを判定する。具体的には、表示制御部200が、スクロール中であるか否かを示すフラグFを参照する。フラグFの初期値は0であり、この場合、スクロール中でないことを示す。フラグFが1の場合、スクロール中であることを示す。この判定の結果、スクロール中であるならば(ステップB01:YES)、ステップB02に進み、スクロール中でないならば(ステップB01:NO)、ステップB04に進む。
【0030】
(1.2.1)スクロール中でない状態でフリックが行われた場合
スクロール中でない状態でフリックが行われた場合、フラグFは初期値、すなわち0に設定されているから、ステップB01でNOと判定され、ステップB04に進む。
ステップB04では、表示制御部200が、フラグFを1に書き換える。また、表示制御部200が、カウンタnを0に初期化する。カウンタnは、スクロール中に行われたフリックの回数を示す。つまり、スクロール中でない状態でフリックが行われた場合に、当該フリックを契機として、フラグFが1に書き換えられ、カウンタnが0に初期化される。
【0031】
ステップB06では、表示制御部200が、次式により、スクロール量L(n)を算出する。ここで、スクロール量L(n)は、ライン数を表す。
【数1】

スクロール中でない状態でフリックが行われた場合、n=0であるから、スクロール量L(0)=M又は−Mとなる。
なお、L(n)の計算結果が整数でない場合には、小数部分の切り捨て等によりL(n)を整数にする。
【0032】
さらに、表示制御部200が、次式により、ポインタ増分ΔP(n)を算出する。ポインタ増分ΔP(n)は、(1/C)秒間のポインタPの移動量である。つまり、ポインタ増分ΔP(n)は、言い換えれば、スクロール速度である。
【数2】

スクロール中でない状態でフリックが行われた場合、n=0であるから、ポインタ増分ΔP(0)=N又は−Nとなる。
なお、ΔP(n)の計算結果が整数でない場合には、小数部分の切り捨て等によりΔP(n)を整数にする。
【0033】
続いて、表示制御部200が、ステップB07からB09までの処理を(1/C)秒毎に繰り返す。
ステップB07では、表示制御部200が、ポインタPにポインタ増分ΔP(n)を加算する。
ステップB08では、表示制御部200が、(x,y)=(1,P+ΔP(n))を先頭として(1/(C×A))秒毎に1ライン分ずつ表示データを読み出し、データ線駆動回路212に供給する。
ステップB09では、表示制御部200が、直前のフリック以後にポインタPに加算したポインタ増分ΔP(n)の累積値がスクロール量L(n)に達したか否かを判定し、累積値がスクロール量L(n)に達しないならば(ステップB09:NO)、ステップB07に戻り、ステップB07からB09の処理を繰り返す。このようにして、指先が画面207から離れた後も、スクロール量L(n)のスクロールが完了するまでスクロールが続けられる。
一方、直前のフリック以後のポインタ増分ΔP(n)の累積値がスクロール量L(n)に達したならば(ステップB09:YES)、ステップB10に進み、表示制御部200がフラグFを0に書き換えて、処理を終了する。つまり、スクロール量L(n)で定められたスクロールが完了した場合、フラグFは0に書き換えられる。
【0034】
(1.2.2)実行中のスクロールと同方向のフリックが行われた場合
次に、スクロール中にフリックが行われた場合について説明する。スクロール中に画面207上で何らかの操作が行われた場合、表示制御部200は、表示制御プログラムに基づいて実行中であった処理を打ち切り、新たに、図5のステップA01から処理を開始する。
ここでは、実行中のスクロールと同方向のフリックが行われた場合の動作について説明する。実行中のスクロールと同方向のフリックが行われた場合、表示制御部200は、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量及びスクロール速度を増大させたスクロールを新たに実行する。処理の詳細は、以下のとおりである。
スクロール中にフリックが行われた場合、ステップA01の判定がYESとなるから、ステップA07に進む。フラグFは1に設定されているから、ステップB01でYESと判定され、ステップB02に進む。
ステップB02では、表示制御部200が、フリックの方向が実行中のスクロールに対応する方向であるか否かを判定する。具体的には、指先の速度のy成分の符号とスクロール量L(n)の符号とを比較し、両者が互いに異なるならば、フリックの方向が実行中のスクロールに対応する方向であると判定する。例えば、スクロールが上向きとすると、スクロール量L(n)は正である。新規のフリックが上向きであるとすると、指先の速度のy成分の符号は負である。この場合、指先の速度のy成分の符号とスクロール量L(n)の符号とが異なるから、フリックの方向が実行中のスクロールに対応する方向であると判定し(ステップB02:YES)、ステップB03に進む。
【0035】
ステップB03では、表示制御部200が、カウンタnに1を加算する。前述のとおり、カウンタnは画像のスクロール中に行われたフリックの回数を表し、スクロール中に最初にフリックが行われた場合、カウンタnは1となる。
ステップB06では、表示制御部200が、数1により、スクロール量L(n)及びポインタ増分ΔP(n)を算出する。
そして、表示制御部200が、ステップB07からB09までの処理を(1/C)秒毎に繰り返す。
【0036】
つまり、表示制御部200が、実行中のスクロールに対応する方向のフリックを検知する度に、直前のフリックの際に設定したスクロール量のR倍のスクロール量を新たに設定するとともに、直前のフリックの際に設定したポインタ増分のR倍のポインタ増分を新たに設定し、実行中のスクロールと同じ方向に、このスクロール量及びポインタ増分に従って、スクロールを新たに実行する。例えば、R=1.5とすると、実行中のスクロールと同じ方向のフリックを1回検知したならば、新たにポインタ増分ΔP(1)=1.5×Nで、スクロール量L(1)=1.5×Mのスクロールを行う。2回目のフリックを検知したならば、新たにポインタ増分ΔP(2)=2.25×Nで、スクロール量L(2)=2.25×Mのスクロールを行う。3回目のフリックを検知したならば、新たにポインタ増分ΔP(3)=3.375×Nで、スクロール量L(3)=3.375×Mのスクロールを行う、・・・という具合である。
【0037】
(1.2.3)スクロール中にスクロールと逆方向のフリックが行われた場合
次に、実行中のスクロールと逆方向のフリックが行われた場合の動作について説明する。実行中のスクロールと逆方向のフリックが行われた場合、表示制御部200は、スクロール量及びスクロール速度を初期値に設定し、実行中のスクロールと逆方向のスクロールスクロールを実行する。処理の詳細は、以下のとおりである。
スクロール中にフリックが行われた場合、ステップA01の判定がYESとなるから、ステップA07に進む。フラグFは1に設定されているから、ステップB01でYESと判定され、ステップB02に進む。
ステップB02では、表示制御部200が、フリックの方向が実行中のスクロールに対応する方向であるか否かを判定する。例えば、実行中のスクロールが上向きとすると、スクロール量L(n)は正である。スクロール中に行われたフリックが下向きであるとすると、指先の速度のy成分の符号は正である。この場合、指先の速度のy成分の符号とスクロール量L(n)の符号とが同じであるから、フリックの方向が実行中のスクロールと逆の方向に対応すると判定し(ステップB02:NO)、ステップB05に進む。
ステップB05では、表示制御部200が、カウンタnを0に初期化し、ステップB06に進む。この場合、n=0であるから、スクロール量及びポインタ増分は、初期値に設定される。ただし、指先の速度のy成分の符号が反転したから、スクロールの方向は逆方向となる。例えば、上向きのスクロール中に指先を下向きに払った場合、指先の速度のy成分が正であるから、スクロール量L(0)=−M、ポインタ増分ΔP(0)=−Nとなり、下向きのスクロールが実行される。
【0038】
(1.2.4)スクロールを止める場合
スクロール中にタップ又はタッチが行われた場合(ステップA04又はA05)、表示制御部200が、ポインタPへのポインタ増分ΔP(n)の加算を停止し、その結果、スクロールが停止される。スクロールの停止後にフリックが行われた場合、カウンタnが0に初期化されるから、スクロール量及びポインタ増分は初期値に設定される。
【0039】
以上が、表示制御部200が実行する処理の内容である。
本実施形態では、実行中のスクロールと同じ方向にフリックを繰り返す度に、実行中のスクロールよりもスクロール量及びスクロール速度を増大させたスクロールを新たに実行するから、スクロール量及びスクロール速度が一定の場合と比べて速く目標の画像にたどり着くことができる。
また、タップ又はタッチでスクロールを止めた場合、次回のスクロール量及びスクロール速度を初期値に戻すから、次回のスクロールでスクロール量及びスクロール速度が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。
また、実行中のスクロールと逆の方向にフリックするとフリックの方向にスクロールさせるから、スクロールし過ぎた分を取り戻すことができる。また、この場合、スクロール量及びスクロール速度を初期値に戻すから、スクロール量及びスクロール速度が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。
このように、本実施形態によれば、表示装置でフリックを繰り返す場合の操作感を向上させることができる。
【0040】
(2)変形例
以下に示す変形例は、互いに組み合わせてもよい。
(2.1)変形例1
スクロール量及びポインタ増分の算出に、上記実施形態で示した以外の式を用いてもよい。例えば、スクロール量の算出に次式を用いてもよい。
【数3】

また、スクロール中にフリックが繰り返された場合に、スクロール速度を変化させずに、スクロール量のみを増大させるようにしてもよい。あるいは、スクロール中にフリックが繰り返された場合に、スクロール量を変化させずに、スクロール速度のみを増大させるようにしてもよい。
要するに、実行中のスクロールよりもスクロール量とスクロール速度との少なくとも一方を増大させるように構成されていればよい。
【0041】
(2.2)変形例2
スクロール中に複数回のフリックが行われた場合にフリックの時間間隔を計測し、時間間隔の長さに応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させるようにしてもよい。例えば、時間間隔が3回続けて閾値よりも短い場合に、スクロール量又はスクロール速度を増大させるようにしてもよい。フリックの時間間隔が短い場合、急いでスクロールさせたいという意思を使用者が持っている可能性が高いからである。
(2.3)変形例3
スクロール中に複数回のフリックが行われた場合にフリックの時間間隔を計測し、時間間隔の変動幅が閾値未満である場合、フリックをそれ以上行わなくても、それまでと同じ速度でスクロールを継続するようにしてもよい。例えば、フリックが行われる度にその前後の時間間隔の差を求め、5回連続して時間間隔の差が閾値未満であるならば、フリックをそれ以上行わなくても、それまでと同じ速度でスクロールを継続するようにしてもよい。
また、マウスのダブルクリックのように、連続する2回のフリックの時間間隔が閾値未満である場合に、フリックをそれ以上行わなくても、予め定められた速度でスクロールを継続するようにしてもよい。
【0042】
(2.4)変形例4
フリックの際の画面に対する押圧力を計測するセンサをタッチパネル206に設け、押圧力が大きいほどスクロール量又はスクロール速度を大きくするようにしてもよい。
フリックの際の画面上における指先の変位量が大きいほどスクロール量又はスクロール速度を大きくするようにしてもよい。
フリックの際の画面上における指先の移動速度が大きいほどスクロール量又はスクロール速度を大きくするようにしてもよい。
【0043】
(2.5)変形例5
表示データで指定された画像の種類に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させるようにしてもよい。例えば、予め表示データのファイルの拡張子とスクロール量又はポインタ増分とを対応付けて記憶しておき、画像メモリ214に書き込まれた表示データのファイルの拡張子に応じてスクロール量又はポインタ増分を設定するようにしてもよい。例えば、テキストを表示した場合のスクロール量又はスクロール速度を写真を表示した場合よりも小さくするようにしてもよい。
また、表示データ中に複数の種類の画像が混在する場合に、特定の種類の画像の量に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させるようにしてもよい。例えば、HTML(HyperText Markup Language)データで、テキストと複数のJPEG(Joint Photographic Experts Group)ファイルが混在する場合、表示中の領域においてJPEGファイルに対応する画像の面積を求め、この面積の画面207の面積に対する比率が高いほどスクロール量又はスクロール速度を増大させるようにしてもよい。
【0044】
(2.6)変形例6
上記の実施形態では、携帯電話機の表示部に本発明を適用した例を示したが、例えば、パーソナルコンピュータのモニタや、携帯音楽プレーヤの表示部等に本発明を適用してもよい。
上記の実施形態では、表示部108として液晶表示装置を用いた例を示したが、有機EL(Organic Electro-Luminescence)を用いた表示装置等、いかなる表示装置を用いてもよい。
上記の実施形態では、表示制御部200がプログラムを実行することによって表示部108を制御する例を示したが、同様の機能をハードウェアで実装してもよい。また、かかるプログラムを、光ディスク等の記録媒体に記録した形態で提供してもよいし、通信網を介して通信装置100にダウンロードさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100…通信端末、101…制御部、102…記憶部、103…パケット通信部、104…通話部、105…マイクロフォン、106…スピーカ、107…操作部、108…表示部、109…アンテナ、110…ICカード端子、111…ICカード、200…表示制御部、201…走査線、202…データ線、203…画素回路、204…ガラス基板、205…光源、206…タッチパネル、207…画面、211…走査線駆動回路、212…データ線駆動回路、214…画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面と、
表示データに基づく画像を前記画面に表示させる表示手段と、
前記画像のスクロールを指示する動作を前記画面上で検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記動作が検知された場合に、前記動作に対応する方向に第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせるスクロール手段と、
前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、実行中のスクロールよりもスクロール量及びスクロール速度を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールと逆の方向に対応する前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと逆の方向に前記第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせる逆スクロール手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記スクロールの停止を指示する動作を前記画面上で検知する停止指示検知手段と、
前記スクロール手段によるスクロールの実行中に前記停止指示検知手段によって停止を指示する動作が検知された場合に、実行中のスクロールを停止させる停止手段と、
前記停止手段によってスクロールが停止された場合に、スクロール量を前記第1のスクロール量に設定する設定手段と
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって複数回検知された場合に、当該動作の時間間隔の長さに応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって複数回検知された場合に、当該動作の時間間隔の変動幅が閾値未満であるならば、実行中のスクロールと同じ速度でスクロールを継続させることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記表示データに含まれる画像の種類に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記表示データに含まれる特定の種類の画像の量に応じてスクロール量又はスクロール速度を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項9】
移動通信網経由で前記表示データを受信する受信手段と、
請求項1乃至8のいずれかに記載の表示装置と
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項10】
コンピュータを、
表示データに基づく画像を表示装置の画面に表示させる表示手段と、
前記画像のスクロールを指示する動作を前記画面上で検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記動作が検知された場合に、前記動作に対応する方向に第1のスクロール量だけ前記画像をスクロールさせるスクロール手段と、
前記スクロール手段によるスクロールの実行中に当該スクロールに対応する方向の前記動作が前記検知手段によって検知された場合に、実行中のスクロールと同じ方向のスクロールであって、実行中のスクロールよりもスクロール量を増大させたスクロールを新たに実行するように前記スクロール手段を制御する制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−168890(P2012−168890A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31205(P2011−31205)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】