説明

表示装置およびカメラ

【課題】 自発光型表示装置において生じうる表示領域、特にその周辺部の焼き付きを抑制する。
【解決手段】 画像信号(22)が入力され、前記画像信号に応じた画像が、複数の発光素子がマトリクス状に配置された表示領域(12)に表示される表示装置であって、
前記画像の輝度は、前記画像が書き換えられてからの経過時間とともに減少し、前記輝度の単位時間あたりの減少率が、前記表示領域の内での位置によって異なり、前記表示領域の中心で最も小さく、中心から離れるにつれて大きくなることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光方式の画像表示装置、詳しくは、有機EL素子を含む表示装置とそれを有するカメラに関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)やプラズマ素子のような発光素子を用いた発光型表示装置が利用されている。
【0003】
このような発光素子は発光させた場合に輝度の低下が生じる場合がある。
【0004】
このため多数の発光素子をマトリクス状に配列させた発光型表示装置では、表示画像に応じて輝度が低下した素子が表示面内に分布し、使用者から焼き付きとして視認されることがありうる。
【0005】
焼き付きの原因となる表示画像としては、例えばテレビ放送時のテロップや放送局マークや、デジタルカメラのモニタに表示される各種情報のように常に同じ場所に同じパターンが表示される画像が挙げられる。
【0006】
この表示パターンは表示装置の画面の比較的周辺部に配置されることが多いため、長時間の使用後は表示装置の周辺部に焼き付きが生じる可能性がある。
【0007】
このような発光型表示装置の周辺部に生じる焼き付きを低減する技術として、表示装置に画像を表示する際、画像の中心部の輝度に対して画像の周辺部の輝度を下げる処理を加えることで周辺部の焼き付きを低減させる技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−072951
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題とするところは、自発光型の表示装置において生じうる焼き付き、特に表示領域周辺部の焼き付きの低減である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、画像信号が入力され、前記画像信号に応じた画像が、複数の発光素子がマトリクス状に配置された表示領域に表示される表示装置であって、
前記画像の輝度は、前記画像が書き換えられてからの経過時間とともに減少し、前記輝度の単位時間あたりの減少率が、前記表示領域の内での位置によって異なり、前記表示領域の中心で最も小さく、中心から離れるにつれて大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示領域周辺部の輝度を表示時間に応じて徐々に下げていくことで、表示領域周辺部の輝度の時間平均を下げることが出来る。このため表示領域周辺部に配置された発光素子の劣化を低減でき、結果として表示領域周辺部に生じる焼き付きを低減することが出来る。
【0011】
また表示開始時には表示領域中央部と周辺部の輝度に差が無く、表示時間に応じて徐々に周辺部の輝度が下がっていくため、表示領域を観察している利用者の目が徐々に中央部と周辺部の間の輝度差に慣れていく。このため利用者が表示領域中心部と表示領域周辺部の輝度差に気が付く恐れが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発光素子の輝度低下は素子の発光強度の時間平均に依存する。したがって、発光表示装置の表示輝度の低下は表示画像の輝度の時間平均を下げることで低減できる。
【0013】
また、表示装置の面内の輝度分布変化がある一定の割合以下であれば、利用者は表示装置の面内輝度のむらを認識しにくい。
【0014】
これらの知見より、本発明によれば表示領域、特にその周辺部の輝度を表示時間に応じて徐々に下げていくことで、表示領域周辺部の輝度の時間平均を下げることが出来る。このため表示領域周辺部に配置された発光素子の輝度低下を抑制でき、結果として表示領域周辺部に生じる焼き付きを低減することが出来る。
【0015】
また表示開始時には表示領域中央部と周辺部の輝度に差が無く、表示時間に応じて徐々に周辺部の輝度が下がっていくため、表示領域を観察している利用者の目が徐々に中央部と周辺部の間の輝度差に慣れていく。このため利用者が表示領域中心部と表示領域周辺部の輝度差に気が付く恐れが少ない。
【0016】
なお、表示装置の「輝度」とは、表示された画像によって異なるものであるが、通常、最大信号が与えられたときの輝度、すなわち最大輝度を、その表示装置の明るさの指標として、単に「輝度」という。本明細書もこの用法に従う。
【0017】
RGBの3色の発光素子から構成された表示装置では、R表示、つまり赤の発光素子を100%の信号で全面に点灯させたときの輝度を定義できるし、同様にGの輝度、Bの輝度、およびそれらを全て発光させた白の輝度も定義できる。通常の画像表示が行われているときは、これらの輝度を最大として、それ以下の明るさで画像が表示されていることになる。
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態の表示装置11である。表示装置11は複数の発光素子(図示せず)がマトリクス状に配置された表示領域12を備える。表示領域12には表示装置11に入力された画像信号に応じた画像が表示される。
【0020】
表示領域12としては複数の有機EL素子を配置した有機EL表示パネルを用いても良い。またプラズマ発光素子を配置したプラズマ表示パネルを用いても良い。
【0021】
表示装置11は放送波を受信し表示するテレビジョン受信機のようにそれ単体で動作する表示装置であってもよいし、デジタルカメラなど別の装置の内部に組み込まれる表示装置であっても良い。
【0022】
図2は表示装置11の動作を説明するためのブロック図である。表示装置11は入力された画像信号22の輝度を調整するゲイン調整部21を備える。ゲイン調整部21は画像信号22中の位置に応じてある量のゲインを乗算して輝度を調整する。このとき画像中心部の輝度と画像周辺部の輝度に対してそれぞれ別のゲインを乗算する。ゲイン調整後の画像信号23が表示領域12に入力される。表示領域12は入力されたゲイン調整後の画像信号23に応じた画像を表示する。
【0023】
なお図2においてゲイン調整部21は表示装置11の内部にあるものとして図示したが、デジタルカメラ等の装置に表示装置11が組み込まれる場合は、ゲイン調整部21と同等の機能を持つ機構を表示装置11が組み込まれる装置内に別途設置してもよい。
【0024】
次に図3を用いてゲイン調整部21の動作について説明する。
【0025】
上述のようにゲイン調整部21は画像信号22中の画像情報に表示位置に対応したゲインを乗算して出力する。このとき場所ごとのゲインの時間に対する変化を図3に示す。図3のグラフ中、時間が0の点、すなわち表示開始時は表示領域中心部13に対応するゲインと表示領域周辺部14に対応するゲインは共に等しく1.0である。表示開始後、時間の経過とともに表示領域周辺部に対応するゲイン32は、表示領域中心部に対応するゲイン31よりも小さくする。これにより表示開始後、時間の経過と共に表示領域12に表示される画像は中心部より周辺部のほうが次第に暗くなる。
【0026】
時間に対する表示領域周辺部14に対応するゲイン14の減少率は利用者が観察中に輝度の低下に気が付かない量にするのが好ましい。1秒あたりに1.5%の減少率以下の減少率であれば利用者が観察中に輝度の低下に気が付かず好適である。また、周辺部の輝度が低下しすぎると違和感が生じるので、輝度の絶対値が一定値、例えば50cd/m2を下回る、もしくは表示開始からの輝度低下が一定割合、例えば50%を超えると、それ以上低下しないように設定しておくことが好ましい。
【0027】
時間に対する表示位置とゲインの関係はメモリ等の記憶装置に保存しても良い。この実施形態におけるブロック図を図4に示す。この場合、ゲイン調整部21は少なくともゲイン乗算部41とゲイン記憶部42と表示時間カウンタ部43を備える。ゲイン記憶部42には図3に示される位置情報と時間とゲイン値のテーブルを内部に製品出荷前に記録する。ゲイン乗算部41は入力された画像信号22の位置情報をゲイン記憶部42に送る。また表示時間カウンタ部はある時点から経過した時間をカウントしゲイン記憶部42に送る。ゲイン記憶部42は送られた位置情報と経過時間に応じたゲイン値をゲイン乗算部41に送り返す。ゲイン乗算部41は送り返されたゲイン値を画像信号に乗算し、調整された画像信号23として表示領域12に送信する。
【0028】
表示時間カウンタ部でカウントされる時間は外部からのリセット信号(図示せず)が入力されてからの時間をカウントしても良い。例えば表示装置11をデジタルカメラに組み込む場合には、シャッターボタンを押した信号により撮影された画像が、その直後に表示される。この場合は、シャッターボタンを押した信号をうけて、その後に画像が書き換えられた時刻を表示時間カウンタ部43に入力し、その時刻からの時間をカウントしてもよい。
【0029】
また画像信号22中のシーンの切り替わりを検出し、その時点からの時間をカウントしても良い。シーンの切り替わりは、テレビ画像では、通常の番組からCM(コマーシャルメッセージ)に変わったとき、動画像から静止画像に切り替わったときなどをシーンの切り替わりとして検出する。
【0030】
図4中のゲイン記憶部42の代わりに、リアルタイムにゲイン量を計算するゲイン計算部51を備えても良い。この実施形態におけるブロック図を図5に示す。
【0031】
ゲイン計算部51はゲイン乗算部41より送られた位置情報と表示時間カウンタ部43より送られた経過時間よりゲイン値を計算しゲイン乗算部41に送り返す。このゲイン値の算出式としては、画像中心部からの距離をパネルサイズで正規化した距離をx(0<x<1)、経過時間をt、ゲイン値をgとした際に、
g=1−(a+b*x)*t
となるような関数を選ぶ。a(a>0)、b(b>0)は輝度低下の最大許容値と表示領域内の輝度差の最大許容値とから決まる係数である。これ以外でも、gが時間に対して単調減少かつ画像中心部からの距離に対して単調減少な関数を用いることができる。
【0032】
以上説明した実施の形態によれば、表示開始時には中心部の輝度と周辺部の輝度が同一であって、時間経過に応じて周辺部の輝度が徐々に下がるために、輝度の変化による違和感を利用者に与えることなく、周辺部の輝度の時間平均を下げることが出来る。その結果、周辺部の焼き付きが抑制された表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の表示装置の外観を示す図である。
【図2】本発明の実施形態のブロック図である。
【図3】ゲイン調整部によって調整されるゲイン値の説明図である。
【図4】本発明の表示装置のゲイン調整部の構成を詳しく示すブロック図である。
【図5】本発明の表示装置のゲイン調整部の別の構成を詳しく示すブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
11 表示装置
12 表示領域
13 表示領域中心部
14 表示領域周辺部
21 ゲイン調整部
22 画像信号
23 ゲイン調整された画像信号
41 ゲイン乗算部
42 ゲイン記憶部
43 表示時間カウンタ部
51 ゲイン計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号が入力され、前記画像信号に応じた画像が、複数の発光素子がマトリクス状に配置された表示領域に表示される表示装置であって、
前記画像の輝度は、前記画像が書き換えられてからの経過時間とともに減少し、前記経過時間に対する前記輝度の減少率が、前記表示領域の内での位置によって異なり、前記表示領域の中心で最も小さく、中心から離れるにつれて大きくなることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
画像信号が入力され、入力された画像信号に、当該画像信号が表示される前記表示領域の内での位置と、前記経過時間とから定められるゲインを乗算した信号を出力するゲイン調整部を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ゲイン調整部が、少なくともゲイン乗算部とゲイン記憶部と表示時間カウンタ部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ゲイン調整部が、少なくともゲイン乗算部とゲイン計算部と表示時間カウンタ部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記減少率は、最も大きい位置で高々1.5%/秒であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光素子が有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画像信号から画像のシーンの切り替わりを検出し、前記経過時間を開始することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置と、シャッターボタンとを備えたカメラであって、前記シャッターボタンが押されることにより撮影された画像が表示された時刻から前記経過時間を開始することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−156761(P2010−156761A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333867(P2008−333867)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】