説明

表示装置およびドナー基板

【課題】発光層の膜厚均一性を向上させることができる表示装置およびドナー基板を提供する。
【解決手段】赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの両隣に、青色有機発光素子10B1,10B2を設ける。ドナー基板40上では、赤,緑および青の3色の有機発光素子10R,10B1,10G,10B2に相当する領域に、赤および緑の2色のみの転写層50R,50Gを形成し、それらの幅を1色あたり約1.5倍に広げる。すなわち、隔壁42の配置間隔Wdt、赤色有機発光素子10Rまたは緑色有機発光素子10Gの幅Wstは、Wdt>Wstを満たす。赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gをインクジェット法で成膜した場合に、液滴の着弾精度許容範囲が広くなり、膜厚不均一が小さくなる。転写された赤色発光層および緑色発光層の膜厚均一性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色有機発光素子,緑色有機発光素子および青色有機発光素子を備えた表示装置、およびこの表示装置の赤色発光層および緑色発光層を転写法により形成するためのドナー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示装置が盛んに開発されており、駆動用基板に、第1電極、発光層を含む複数の有機層および第2電極を順に積層した有機発光素子(有機EL(Electroluminescence )素子)を用いた有機発光表示装置が注目されている。有機発光表示装置は、自発光型であるので視野角が広く、バックライトを必要としないので省電力が期待でき、応答性が高く、装置の厚みを薄くできるなどの特徴を有している。そのため、テレビ等の大画面表示装置への応用が強く望まれている。
【0003】
有機発光表示装置の大型化や生産性向上のため、更に大型のマザーガラスの使用が検討されている。その際、一般的なメタルマスクを用いた発光層の形成方法では、金属シートに開口パターンを設けたメタルマスクを介して発光材料を蒸着または塗布することによりR,G,Bの発光層をパターニングするようにしているので、大型基板に対応してメタルマスクも大型化する必要がある。
【0004】
しかしながら、メタルマスクの大型化により、マスクの自重によるたわみ、蒸着時の熱膨張が顕著になることに加えて、メタルマスクそのものの開口パターンの精度が大型化により低下するので、発光層のパターニング精度も得られなくなってしまうという問題がある。また、メタルマスクと基板との接触による素子へのダメージ、マスク上の異物などによる欠点不良も、大型化に伴って深刻化する。このようなことから、メタルマスクを必要としないパターニング技術が求められている。
【0005】
大型基板対応のマスクレスパターニング方式の一つとして、特許文献1に記載されたインクジェット法が挙げられる。インクジェット法は、真空設備が不要でコスト的に有利な方式であるが、積層構造の素子を形成する上では問題もある。例えば、第1層目が成膜済みの基板上に、第2層以降を直接インクジェットなど湿式塗布で積層しようとすると、成膜済みの層がそのインクにより溶解することで積層構造の層間界面がぼけてしまい、素子特性が大幅に劣化してしまうおそれがある。上下の層の間で相互溶解しないように、例えば水溶性材料の層の上に、油溶性材料の層を成膜することで、積層が可能となる場合もあるが、材料の選択肢または素子構成が大きく制限されてしまうので、特性向上の妨げとなっている。また、乾燥後の発光層は、画素の周囲の絶縁層付近で極端に厚膜化または薄膜化してしまう傾向にあり、画素内膜厚不均一による輝度ムラあるいは色度ムラ、または電流密度分布の偏りによる素子寿命の低下あるいは光取り出し効率の低下が生じ、消費電力が増大するという問題もある。
【0006】
大型基板対応の他のプロセスとして、レーザなどの輻射線を用いた転写法がある。転写法は、支持材に発光材料を含む転写層を形成したドナー要素を形成し、このドナー要素を、有機発光素子を形成するための被転写基板に対向配置し、減圧環境下で輻射線を照射することにより転写層を被転写基板に転写する方法である(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。レーザ転写法は、従来のマスク蒸着法に対して、高精細化が可能である、大型基板対応が可能であるという二つの優位性を有している。有機ELの大型テレビ量産を実現する上で、大型基板対応の製造技術の確立は必須と考えられているが、レーザ転写法は、大型基板に対してもパターニング精度を一定に保つことができるため、その有力候補の一つとなっている。
【特許文献1】特開1998−12377号公報
【特許文献2】特開2002−110350号公報
【特許文献3】特表2002−534782号公報
【特許文献4】特開2004−87143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載された従来の転写法では、R,G,B各色のドナー要素を用いて、R,G,B各色ごとに転写工程を行っているので、一枚の基板に対する製造プロセスで、通常、少なくとも三枚のドナー要素と、三回の転写工程とを要し、工程数の増加による生産効率の低下およびコストアップの要因となってしまっていた。
【0008】
ちなみに、特許文献4には、転写回数を削減するため、ドナー要素にR,G,Bの転写層のパターンを予め形成しておき、一括転写で多色の発光層を形成する方法が開示されている。しかし、この方法では、ドナー要素にR,G,Bの転写層をインクジェット法で成膜する場合には、液滴の着弾精度の低さが問題になる場合があった。そのため、上述したインクジェット法で発光層を直接形成する場合と同様に、ドナー要素上の転写層の膜厚不均一が生じやすく、そのまま転写すると、転写された発光層の膜厚不均一の原因となってしまい、より改善の余地があった。また、インクジェット法に代えて他の湿式法、例えばフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度が大判になるほど困難になるため、同様の問題が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、発光層の膜厚均一性を向上させることができる表示装置およびドナー基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による表示装置は、一画素内に、赤色発光層を有する赤色有機発光素子と、緑色発光層を有する緑色有機発光素子と、青色発光層を有する青色有機発光素子とを含み、青色有機発光素子は複数に分割され、分割された青色有機発光素子の各々が、赤色有機発光素子および緑色有機発光素子の同じ側に隣接して設けられているものである。
【0011】
本発明によるドナー基板は、上記本発明による表示装置の、赤色発光層および緑色発光層を、輻射線を用いた転写法により形成するためのものであって、剛体の支持基板上に隔壁を有し、隔壁の配置間隔をWdt、赤色有機発光素子または緑色有機発光素子の幅をWstとすると、Wdt>Wstを満たすものである。
【0012】
本発明の表示装置では、一画素内において青色有機発光素子が複数に分割されており、分割された青色有機発光素子の各々が、赤色有機発光素子および緑色有機発光素子の同じ側に隣接して設けられているので、赤色発光層および緑色発光層のみをドナー基板を用いて転写法により形成するようにした場合に、ドナー基板上では、赤,緑および青の3色の有機発光素子に相当する領域に、赤および緑の2色のみの転写層を形成することが可能となり、ドナー基板上の転写層の幅は1色あたり約1.5倍に広くなる。よって、インクジェット法により転写層を形成する際に、液滴の着弾精度許容範囲が広くなり、転写層の膜厚不均一が小さくなる。また、インクジェット法に代えて他の湿式法、例えばフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度が大判になっても確保され、同様に転写層の膜厚不均一が小さくなる。従って、このドナー基板から転写法により形成された発光層の膜厚均一性が向上する。
【0013】
本発明のドナー基板では、隔壁の配置間隔をWdt、赤色有機発光素子または緑色有機発光素子の幅をWstとすると、Wdt>Wstが満たされているので、このドナー基板上に転写層をインクジェット法で成膜した場合に、液滴の着弾速度許容範囲が広くなり、転写層の膜厚不均一が小さくなる。また、インクジェット法に代えて他の湿式法、例えばフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度が大判になっても確保され、同様に転写層の膜厚不均一が小さくなる。よって、このドナー基板から転写法により形成された発光層の膜厚均一性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置によれば、一画素内において青色有機発光素子を複数に分割し、分割した青色有機発光素子の各々を、赤色有機発光素子および緑色有機発光素子の同じ側に隣接して設けるようにしたので、赤色発光層および緑色発光層のみをドナー基板を用いて転写法により形成するようにした場合に、ドナー基板上の転写層の幅を1色あたり約1.5倍に広げることができる。よって、インクジェット法により転写層を形成する際に、液滴の着弾精度許容範囲を広くすることができ、転写層の膜厚不均一を小さくすることができる。また、インクジェット法に代えて他の湿式法、例えばフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度を大判にしても確保することができ、同様に転写層の膜厚不均一を小さくすることができる。従って、このドナー基板から転写法により形成された発光層の膜厚均一性を向上させることができる。
【0015】
本発明のドナー基板では、隔壁の配置間隔をWdt、赤色有機発光素子または緑色有機発光素子の幅をWstとすると、Wdt>Wstを満たすようにしたので、このドナー基板上に転写層をインクジェット法で成膜した場合に、液滴の着弾精度許容範囲を広くすることができ、転写層の膜厚不均一を小さくすることができる。また、インクジェット法に代えて他の湿式法、例えばフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度を大判にしても確保することができ、同様に転写層の膜厚不均一を小さくすることができる。よって、このドナー基板から転写法により形成された発光層の膜厚均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(表示装置)
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、ガラスよりなる駆動用基板11の上に、赤色の光を発生する赤色有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する緑色有機発光素子10Gと、青色の光を発生する青色有機発光素子10B1,10B2と(以下、「有機発光素子10R,10G,10B1,10B2」と総称する。)がマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されている。なお、隣り合う有機発光素子10R,10B1,10G,10B2の組み合わせが一つの画素(ピクセル)10を構成している。画素ピッチは例えば300μmである。
【0018】
青色有機発光素子10B1,10B2は、一つの画素10内で二つに分割されたものであり、各々赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの同じ側(図1では例えば右側)に隣接して設けられている。すなわち、表示領域110全体としてみると、赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの両隣に、青色有機発光素子10B1,10B2が配置されている。これにより、この表示装置では、後述する赤色発光層および緑色発光層の膜厚均一性を向上させることができるようになっている。
【0019】
赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの発光領域は同じ幅Wsを有し、青色有機発光素子10B1,10B2の発光領域は、赤色有機発光素子10Rまたは緑色有機発光素子10Gの発光領域の半分の幅Wsbを有していることが好ましい。RGBのサブピクセルの面積をそろえるには、2分割した青色有機発光素子10B1,10B2は、赤色有機発光素子10Rまたは緑色有機発光素子10Gに対して半分の面積を有することが望ましいからである。
【0020】
有機発光素子10R,10B1,10G,10B2は長方形の平面形状を有し、各色別に長手方向(列方向)に配列された赤色素子列110R,青色素子列110B1,緑色素子列110G,青色素子列110B2を構成している。これらの赤色素子列110R,青色素子列110B1,緑色素子列110G,青色素子列110B2は、表示領域110内において、行方向に順に配置されている。
【0021】
図2および図3は、この表示装置の駆動方式の一例として、各画素10の二つの青色有機発光素子10B1,10B2を別々の駆動トランジスタTr1で駆動する場合を表したものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されている。表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。画素駆動回路140は、後述する第1電極13の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10B1,10G,10B2)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0022】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2のいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0023】
図4および図5は、この表示装置の他の駆動方式として、各画素10の二つの青色有機発光素子10B1,10B2を一つの駆動トランジスタTr1で駆動する場合を表したものであり、このことを除いては、図2および図3に示したものと同様である。
【0024】
図6は図1に示した有機発光素子10R,10B1,10G,10B2の断面構成を表したものである。有機発光素子10R,10B1,10G,10B2は、それぞれ、駆動用基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタ(図示せず)および平坦化絶縁膜(図示せず)を間にして、陽極としての第1電極13、絶縁層14、後述する赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBを含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有している。
【0025】
このような有機発光素子10R,10G,10Bは、窒化ケイ素(SiNx )などの保護膜17により被覆され、更にこの保護膜17上に接着層20を間にしてガラスなどよりなる封止用基板30が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0026】
第1電極13は、例えば、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されている。また、第1電極13は、反射電極により構成してもよい。その場合、第1電極13は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、第1電極13を構成する材料としては、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0027】
絶縁層14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば酸化シリコンまたはポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。絶縁層14には、第1電極13の発光領域13Aに対応して開口部が設けられており、後述するドナー基板40の隔壁42に対応して、駆動用基板11側の隔壁としての機能も有している。なお、有機層15および第2電極16は、発光領域13Aだけでなく絶縁層14の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁層14の開口部だけである。
【0028】
有機層15は、第1電極13の側から順に、正孔注入層および正孔輸送層15ABと、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBと、電子輸送層および電子輸送層15DEとを積層した構成を有するが、これらのうち赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CB以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBへの正孔輸送効率を高めるためのものである。赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子注入層は、例えば厚みが0.3nm程度であり、LiF,Li2 Oなどにより構成されている。なお、図6では、正孔注入層および正孔輸送層を一層(正孔注入層および正孔輸送層15AB)、電子輸送層および電子注入層を一層(電子輸送層および電子注入層15DE)として表している。
【0029】
赤色発光層15CRは、赤色有機発光素子10Rの発光領域13Aに設けられている。緑色発光層15CGは、緑色有機発光素子10Gの発光領域13Aに設けられている。青色発光層15CBは、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10Bに共通に形成された青色共通層である。
【0030】
有機発光素子10Rの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。有機発光素子10Rの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。赤色発光層15CRは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )により構成されている。
【0031】
有機発光素子10Gの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Gの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。緑色発光層15CGは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Gの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0032】
有機発光素子10Bの正孔注入層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。有機発光素子10Bの正孔輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。青色発光層15CBは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0033】
第2電極16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。
【0034】
保護膜17は、有機層15に水分などが侵入することを防止するためのものであり、透過水性および吸水性の低い材料により構成されると共に十分な厚みを有している。また、保護膜17は、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBで発生した光に対する透過性が高く、例えば80%以上の透過率を有する材料により構成されている。このような保護膜17は、例えば、厚みが2μmないし3μm程度であり、無機アモルファス性の絶縁性材料により構成されている。具体的には、アモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x x )およびアモルファスカーボン(α−C)が好ましい。これらの無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないので透水性が低く、良好な保護膜17となる。また、保護膜17は、ITOのような透明導電材料により構成されていてもよい。
【0035】
接着層20は、例えば熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。
【0036】
封止用基板30は、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2の第2電極16の側に位置しており、接着層20と共に有機発光素子10R,10B1,10G,10B2を封止するものであり、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2で発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板30には、例えば、カラーフィルタ(図示せず)が設けられており、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2で発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっていてもよい。
【0037】
カラーフィルタは、封止用基板30のどちら側の面に設けられてもよいが、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2の側に設けられることが好ましい。カラーフィルタが表面に露出せず、接着層20により保護することができるからである。また、発光層15Cとカラーフィルタとの間の距離が狭くなることにより、赤色発光層15CR,緑色発光層15CGおよび青色発光層15CBから出射した光が隣接する他の色のカラーフィルタに入射して混色を生じることを避けることができるからである。カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2に対応して順に配置されている。
【0038】
赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0039】
(ドナー基板)
次に、この表示装置の製造方法に用いられるドナー基板について説明する。
【0040】
図7は、ドナー基板の構成を表したものである。ドナー基板40は、赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGをレーザ光を用いた転写法により形成する工程に用いられるものであり、剛体の支持基板41上に、ストライプ状の隔壁42を有している。
【0041】
支持基板41は、後述するように、赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを構成する発光材料を含む転写層を形成するためのものであり、後述する被転写基板との位置合わせが可能な堅固さを有すると共に、レーザ光に対する透過性の高い材料、例えばガラスにより構成されている。
【0042】
支持基板41の表面には、レーザ光を吸収する光熱変換層43と、保護層44とが設けられている。光熱変換層43は、例えば、モリブデン(Mo),チタン(Ti),クロム(Cr)あるいはこれらを含む合金など吸収率の高い金属材料により構成され、隔壁42により分割された領域の一部に、例えばストライプ状に形成されている。保護層44は、発光材料を光熱変換層43からの汚染から保護するためのものであり、窒化ケイ素(SiNx)または酸化シリコンなどにより構成されている。なお、保護層44は、図8に示したように省略してもよい。
【0043】
隔壁42は、支持基板41上に、駆動用基板11上の赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成したい領域(発光領域13A)に対応して設けられている。これにより、このドナー基板40では、隔壁42で分割された領域ごとに異なる色の発光材料を含む転写層を形成し、転写回数を削減することができるようになっている。隔壁42は、例えば、高さが1μmないし3μm程度であり、ポリイミドまたはアクリル樹脂により構成されている。また、隔壁42は、例えば図9に示したように、エッチングまたはサンドブラスト等により支持基板41を加工することにより形成されたものでもよい。
【0044】
このドナー基板40は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0045】
まず、上述した材料よりなる支持基板41上に、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる光熱変換層43を形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。次いで、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法により、上述した材料よりなる保護層44を形成する。続いて、支持基板41の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により所定の形状に成形し、焼成することにより、隔壁42を形成する。以上により、図7に示したドナー基板40が形成される。
【0046】
また、ドナー基板40は、次のようにして製造することもできる。
【0047】
まず、上述した材料よりなる支持基板41を、エッチングまたはサンドブラスト等により加工し、隔壁42を形成する。次いで、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる光熱変換層43を形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状に成形する。次いで、例えばCVD法により、上述した材料よりなる保護層44を形成する。以上により、図9に示したドナー基板40が形成される。
【0048】
(表示装置の製造方法)
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0049】
まず、駆動用基板11に、第1電極13、絶縁層14および正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成する。
【0050】
すなわち、上述した材料よりなる駆動用基板11を用意し、この駆動用基板11の上に画素駆動回路140を形成したのち、全面に感光性樹脂を塗布することにより平坦化絶縁膜(図示せず)を形成し、露光および現像により所定の形状にパターニングすると共に、駆動トランジスタTr1と第1電極13との接続孔(図示せず)を形成し、焼成する。
【0051】
次いで、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第1電極13を形成し、例えばドライエッチングにより所定の形状に成形する。なお、駆動用基板11の所定の位置には、後述する転写工程においてドナー基板との位置合わせに使用するアライメントマークを形成してもよい。
【0052】
続いて、駆動用基板11の全面にわたり絶縁層14を形成し、例えばフォトリソグラフィ法により、第1電極13の発光領域13Aに対応して開口部を設ける。
【0053】
そののち、例えばエリアマスクを用いた蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる正孔注入層および正孔輸送層15ABを順次成膜する。これにより、被転写基板11Aが形成される。
【0054】
被転写基板11Aを形成したのち、例えばインクジェット法により、ドナー基板40に赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを形成する。すなわち、まず、図10(A)および図10(B)に示したように、緑色発光材料を溶媒に溶解させてインク51を調合し、このインク51をインクジェットノズル52から滴下することにより、ドナー基板40の隔壁42で分割された領域に、緑色発光材料を含む緑色転写層50Gを塗布し、真空中または不活性ガス雰囲気中でべーク炉などにより乾燥させる。インクジェット成膜は、材料劣化を防ぐためN2 などの不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0055】
次いで、図10(B)および図10(C)に示したように、隔壁42で分割された隣の領域に、緑色転写層50Gと同様にして、赤色発光材料を含む赤色転写層50Rを塗布し、乾燥させる。以上により、隔壁42で分割された領域ごとに異なる色の発光材料を含む赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを形成する。
【0056】
なお、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの塗布順は特に限定されない。また、前処理として、混色防止用に隔壁42に撥インク性を持たせるため、フッ素プラズマ処理などをしてもよい。乾燥工程は、各色塗布後に行うようにしてもよいし、全色塗布後に一括で行うようにしてもよい。ただし、各色塗布後に乾燥させたほうが、膜厚均一性の観点から、より望ましい。塗布方法としては、インクジェット法のほか、フレキソ印刷法など他の方法を用いてもよい。
【0057】
ドナー基板40に赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを形成したのち、転写法により発光層15Cを形成する。すなわち、図11(A)に示したように、赤色転写層50R,緑色転写層50G,青色転写層50Bを被転写基板11Aに対向配置する。その際、真空環境下で、ドナー基板40と被転写基板11Aを密着させて、真空保持フレームで両基板間の真空を保持しながら大気圧環境下へ搬出する。これにより、基板内外の圧力差により、ドナー基板40は被転写基板11に均一に密着する。
【0058】
次いで、図11(B)および図11(C)に示したように、ドナー基板40の裏面側からドナー基板40の全面にレーザ光LBを照射し、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを昇華または気化させて被転写基板11Aに転写することにより赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成する。
【0059】
このとき、ドナー基板40には、支持基板41上の隔壁42で分割された領域ごとに異なる色の発光材料を含む赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gが形成されているので、一回の転写で被転写基板11Aに赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成することができる。よって、発光材料の使用効率を向上させることができ、ランニングコストを削減することが可能となる。また、転写回数を削減することができ、製造装置のコストを低減すると共に生産能力も高めることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、一つの画素10内で青色有機発光素子10B1,10B2が二つに分割され、各々赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの同じ側に隣接して設けられているので、ドナー基板40上では、赤,緑および青の3色の有機発光素子10R,10B1,10G,10B2に相当する領域に、赤および緑の2色のみの転写層50R,50Gを形成することができ、それらの幅を1色あたり約1.5倍に広げることができる。すなわち、図12に示したように、隔壁42の配置間隔をWdt、赤色有機発光素子10Rまたは緑色有機発光素子10Gの幅をWstとすると、これらは、Wdt>Wstを満たしている。これにより、このドナー基板40上に赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gをインクジェット法で成膜した場合に、液滴の着弾精度許容範囲を広くすることができ、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの膜厚不均一を小さくすることができる。インクジェット法に代えてフレキソ印刷法を用いた場合は、版の精度を大判にしても確保することができ、同様に赤色転写層50Rおよび緑色転写法50Gの膜厚不均一を小さくすることができる。よって、このドナー基板40から転写法により形成された赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGの膜厚均一性を向上させることができる。
【0061】
更に、図13に示したように、支持基板41上の隔壁42により分割された領域の幅をWd、被転写基板11上の赤色発光層15CRまたは緑色発光層15CGを形成したい領域、すなわち発光領域13Cの幅をWsとすると、Wd>Wsを満たすようにすることが好ましい。
【0062】
その理由は以下の通りである。赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを、インクジェット法などの湿式で成膜すると、乾燥後の赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gは、隔壁42付近で極端に厚膜化または薄膜化してしまう傾向にあり、これをそのまま転写すると、赤色発光層15CRまたは緑色発光層15CGに画素内膜厚不均一が生じるおそれがある。これに対して、Wd>Wsを満たすようにすることにより、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの膜厚が均一な部分のみを転写することができ、赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGの画素内膜厚均一性を向上させることができる。よって、赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGの画素内輝度ムラあるいは色度ムラを抑えることができると共に、電流密度分布の偏りを低減することにより素子寿命の低下あるいは光取り出し効率の低下を改善し、消費電力の増大を抑えることもできる。このように、画質を劣化させることなくドナー基板40への赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの湿式成膜を可能とすることができるので、製造装置のコスト削減も可能となる。
【0063】
更に、光熱変換層43の幅をWtとすると、Ws<Wt<Wdを満たすようにすれば、より好ましい。ドナー基板40の全面にレーザ光LBを照射した場合に、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの膜厚が均一な部分のみを転写することができるからである。
【0064】
赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成したのち、図11(D)に示したように、ドナー基板40と被転写基板11Aとを分離する。被転写基板11Aには、例えば蒸着により、青色発光層15CB、電子輸送層および電子注入層15DE、並びに第2電極16を形成する。このようにして、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2を形成する。一方、使用済みのドナー基板40は、通常有機EL用のシャドウマスク洗浄に用いられている洗浄液、例えば、関東化学(株)製「OEL Clean series」などを用いて洗浄、再生が可能である。よって、ドナー基板40に隔壁42を設けることによって、ランニングコストの点で大きな損失にはなるおそれはない。
【0065】
有機発光素子10R,10B1,10G,10B2を形成したのち、これらの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。保護膜17の形成方法は、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法またはCVD法が好ましい。また、保護膜17は、第2電極16を大気に暴露することなく、第2電極16の形成と連続して行うことが望ましい。大気中の水分や酸素により有機層15が劣化してしまうのを抑制することができるからである。更に、有機層15の劣化による輝度の低下を防止するため、保護膜17の成膜温度は常温に設定すると共に、保護膜17の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0066】
また、例えば、上述した材料よりなる封止用基板30の上に、赤色フィルタの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタと同様にして、青色フィルタおよび緑色フィルタを順次形成する。
【0067】
そののち、保護膜17の上に、接着層20を形成し、この接着層20を間にして封止用基板30を貼り合わせる。その際、封止用基板30のカラーフィルタを形成した面を、有機発光素子10R,10G,10B側にして配置することが好ましい。以上により、図1に示した表示装置が完成する。
【0068】
このようにして得られた表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10B1,10G,10B2に駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。赤色有機発光素子10Rでは、赤色発光層15CRと、青色共通層である青色発光層15CBとが形成されているが、最もエネルギー準位の低い赤色にエネルギー移動が起こり、赤色発光が支配的となる。緑色有機発光素子10Gでは、緑色発光層15CGと、青色共通層である青色発光層15CBとが形成されているが、よりエネルギー準位の低い緑色にエネルギー移動が起こり、緑色発光が支配的となる。青色有機発光素子10B1,10B2では、青色発光層15CBのみを有するので、青色発光が生じる。この光は、第2電極16,カラーフィルタおよび封止用基板30を透過して取り出される。
【0069】
このように本実施の形態では、一つの画素10内で青色有機発光素子10B1,10B2を二つに分割し、各々赤色有機発光素子10Rおよび緑色有機発光素子10Gの同じ側に隣接して設けるようにしたので、ドナー基板40上では、赤,緑および青の3色の有機発光素子10R,10B1,10G,10B2に相当する領域に、赤および緑の2色のみの転写層50R,50Gを形成することができ、それらの幅を1色あたり約1.5倍に広げることができる。すなわち、隔壁42の配置間隔をWdt、赤色有機発光素子10Rまたは緑色有機発光素子10Gの幅をWstとすると、Wdt>Wstを満たすようにすることができる。これにより、このドナー基板40上に赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gをインクジェット法で成膜した場合に、液滴の着弾精度許容範囲を広くすることができ、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの膜厚不均一を小さくすることができる。インクジェット法に代えてフレキソ印刷法を用いた場合も、版の精度を大判にしても確保することができ、同様に赤色転写層50Rおよび緑色転写法50Gの膜厚不均一を小さくすることができる。よって、このドナー基板40から転写法により形成された赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGの膜厚均一性を向上させることができる。
【0070】
(変形例1)
図14は、本発明の変形例1に係るドナー基板40の構成を表したものである。本変形例のドナー基板40は、光熱変換層43を支持基板41の全面に設けたことを除いては、上記実施の形態と同様の構成を有している。例えば、図15に示したように、保護層44を省略してもよい。また、図16に示したように、隔壁42は、エッチングまたはサンドブラスト等により支持基板41を加工することにより形成したものでもよい。
【0071】
本変形例のドナー基板40は、光熱変換層43を支持基板41の全面に形成することを除いては、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0072】
次に、本変形例のドナー基板40を用いた表示装置の製造方法について説明する。
【0073】
まず、上記実施の形態と同様にして、駆動用基板11に、第1電極13、絶縁層14および正孔注入層および正孔輸送層15ABを形成し、被転写基板11Aを形成する。
【0074】
次いで、図10に示した工程により、上記実施の形態と同様にして、ドナー基板40に赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを形成する。
【0075】
続いて、転写法により赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成する。すなわち、図17(A)に示したように、図11(A)に示した工程により、上記実施の形態と同様にして、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを被転写基板11Aに対向配置する。
【0076】
そののち、図17(B)に示したように、ドナー基板40の裏面側からレーザ光LBを照射し、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gを昇華または気化させて被転写基板11Aに転写することにより赤色発光層15CRおよび緑色発光層15CGを形成する。
【0077】
このとき、図18および図19に示したように、レーザ光LBの照射幅をWtとすると、Ws<Wt<Wdを満たすようにすることが好ましい。ドナー基板40の全面に光熱変換層43が形成されている場合に、赤色転写層50Rおよび緑色転写層50Gの膜厚が均一な部分のみを転写することができるからである。
【0078】
赤色発光層15Cおよび緑色発光層15CGを形成したのち、図17(D)に示したように、ドナー基板40と被転写基板11Aとを分離する。被転写基板11Aには、上記実施の形態と同様にして、例えば蒸着により、青色発光層15CB、電子輸送層および電子注入層15DE、並びに第2電極16を形成する。このようにして、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2を形成する。
【0079】
有機発光素子10R,10B1,10G,10B2を形成したのち、上記実施の形態と同様にして、これらの上に上述した材料よりなる保護膜17を形成する。そののち、保護膜17の上に、接着層20を形成し、この接着層20を間にして、カラーフィルタを形成した封止用基板30を貼り合わせる。以上により、図1に示した表示装置が完成する。
【0080】
(変形例2)
図20は、本発明の変形例2に係るドナー基板40の構成を表したものである。本変形例のドナー基板40は、隔壁42の下に、レーザ光LBを反射させる反射層45を設けたことを除いては、上記変形例1と同様の構成を有している。
【0081】
反射層45は、支持基板41上の隔壁42により分割された領域の中央部分を回避して形成されている。これにより、本変形例2では、光熱変換層43が支持基板41の全面に設けられている場合にも、転写工程において上記実施の形態と同様にレーザ光LBをドナー基板40の全面に照射することができる。また、隣り合う前記反射層の間の距離をWtとすると、Ws<Wt<Wdを満たすことが好ましい。
【0082】
本変形例のドナー基板40は、隔壁42の下に反射層45を形成することを除いては、上記実施の形態と同様にして製造することができる。また、本変形例のドナー基板40を用いた表示装置の製造方法は、上記実施の形態と同様である。
【0083】
なお、上記実施の形態および変形例では、ドナー基板40の隔壁42がストライプ状に形成されている場合について説明したが、隔壁42は、図21または図22に示したように、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2と同様の長方形の平面形状(短冊形状)としてもよい。ただし、隔壁42へのレーザ光LBの照射による熱ダメージを回避するためには、隔壁42はストライプ形状とされることが好ましい。
【0084】
(モジュールおよび適用例)
以下、上述した各実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記各実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0085】
(モジュール)
上記各実施の形態の表示装置は、例えば、図23に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、被転写基板11の一辺に、封止用基板30および接着層20から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0086】
(適用例1)
図24は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0087】
(適用例2)
図25は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0088】
(適用例3)
図26は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0089】
(適用例4)
図27は、上記各実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0090】
(適用例5)
図28は、上記各実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0091】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、転写工程でレーザ光を照射する場合について説明したが、例えばランプなど他の輻射線を照射するようにしてもよい。
【0092】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法,成膜条件およびレーザ光の照射条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法,成膜条件および照射条件としてもよい。例えば、第1電極13は、誘電体多層膜を有するようにすることもできる。
【0093】
更に、例えば、上記実施の形態においては、駆動用基板11の上に、第1電極13,有機層15および第2電極16を駆動用基板11の側から順に積層し、封止用基板30の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、駆動用基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0094】
加えて、例えば、上記実施の形態では、第1電極13を陽極、第2電極16を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極としてもよい。さらに、第1電極13を陰極、第2電極16を陽極とすると共に、駆動用基板11の上に、第2電極16,有機層15および第1電極13を被転写基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0095】
更にまた、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10B1,10G,10B2の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、第1電極13と有機層15との間に、酸化クロム(III)(Cr2 3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【0096】
更にまた、上記実施の形態では、第2電極16が半透過性電極により構成され、発光層15Cで発生した光を第2電極16の側から取り出す場合について説明したが、発生した光を第1電極13の側から取り出すようにしてもよい。この場合、第2電極16はできるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。
【0097】
加えてまた、上記各実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記各実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した表示装置の駆動方式の一例を説明するための図である。
【図3】図2に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図4】図1に示した表示装置の駆動方式の他の例を説明するための図である。
【図5】図4に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図6】図1に示した有機発光素子の構成を表す断面図である。
【図7】図1に示した表示装置の製造方法に用いるドナー基板の構成を表す断面図および平面図である。
【図8】ドナー基板の変形例を表す断面図である。
【図9】ドナー基板の他の変形例を表す断面図である。
【図10】ドナー基板への転写層の形成方法を工程順に表す断面図である。
【図11】図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図12】被転写基板とドナー基板との位置関係を表す断面図である。
【図13】被転写基板とドナー基板との位置関係を表す平面図である。
【図14】本発明の変形例1に係るドナー基板の構成を表す断面図および平面図である。
【図15】ドナー基板の変形例を表す断面図である。
【図16】ドナー基板の他の変形例を表す断面図である。
【図17】図14に示したドナー基板を用いた表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
【図18】被転写基板とドナー基板との位置関係を表す断面図である。
【図19】被転写基板とドナー基板との位置関係を表す平面図である。
【図20】本発明の変形例2に係るドナー基板の構成を表す断面図および平面図である。
【図21】ドナー基板の変形例を表す平面図である。
【図22】ドナー基板の他の変形例を表す平面図である。
【図23】上記各実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図24】上記各実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図25】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図26】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図27】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図28】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0099】
10…画素、10R…赤色有機発光素子、10G…緑色有機発光素子、10B1,10B2…青色有機発光素子、11…駆動用基板、11A…被転写基板、13…第1電極、14…絶縁層、15…有機層、15AB…正孔注入層および正孔輸送層、15CR…赤色発光層、15CG…緑色発光層、15CB…青色発光層、15DE…電子輸送層および電子注入層、16…第2電極、17…保護膜、20…接着層、30…封止用基板、40…ドナー基板、50R…赤色転写層、50G…緑色転写層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一画素内に、赤色発光層を有する赤色有機発光素子と、緑色発光層を有する緑色有機発光素子と、青色発光層を有する青色有機発光素子とを含み、
前記青色有機発光素子は複数に分割され、分割された前記青色有機発光素子の各々が、前記赤色有機発光素子および前記緑色有機発光素子の同じ側に隣接して設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記赤色有機発光素子および前記緑色有機発光素子の発光領域は同じ幅を有し、前記青色有機発光素子の発光領域は、前記赤色有機発光素子または前記緑色有機発光素子の発光領域の半分の幅を有する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記青色発光層は、前記赤色有機発光素子,前記緑色有機発光素子および前記青色有機発光素子に共通に形成された青色共通層である
ことを特徴とする請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
一画素内に、赤色発光層を有する赤色有機発光素子と、緑色発光層を有する緑色有機発光素子と、青色発光層を有する青色有機発光素子とを含み、前記青色有機発光素子は複数に分割され、分割された前記青色有機発光素子の各々が、前記赤色有機発光素子および前記緑色有機発光素子の同じ側に隣接して設けられている表示装置の、前記赤色発光層および前記緑色発光層を、輻射線を用いた転写法により形成するためのドナー基板であって、
剛体の支持基板上に隔壁を有し、前記隔壁の配置間隔をWdt、前記赤色有機発光素子または前記緑色有機発光素子の幅をWstとすると、
Wdt>Wst
を満たすことを特徴とするドナー基板。
【請求項5】
前記支持基板上の前記隔壁により分割された領域の幅をWd、前記赤色有機発光素子または前記緑色有機発光素子の発光領域の幅をWsとすると、
Wd>Ws
を満たすことを特徴とする請求項4記載のドナー基板。
【請求項6】
前記支持基板上の前記隔壁により分割された領域の少なくとも一部に、前記輻射線を吸収する光熱変換層が形成されており、前記光熱変換層の幅をWtとすると、
Ws<Wt<Wd
を満たすことを特徴とする請求項5記載のドナー基板。
【請求項7】
前記輻射線の照射幅をWtとすると、
Ws<Wt<Wd
を満たすことを特徴とする請求項5記載のドナー基板。
【請求項8】
前記支持基板上の前記隔壁により分割された領域の一部を回避して、前記輻射線を反射する反射層が形成されており、隣り合う前記反射層の間の距離をWtとすると、
Ws<Wt<Wd
を満たすことを特徴とする請求項5記載のドナー基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2009−146716(P2009−146716A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322502(P2007−322502)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】