説明

表示装置および表示方法

【課題】表示装置単体で扱うときは持ちやすく、複数の表示装置を近接させて扱うときは画面表示の邪魔にならないような仮想的な額縁表示を行う。
【解決手段】表示装置外周部に複数の近接センサを備え、さらに表示装置外周部及び内部に複数の被検出体を備えることで、同様の構成を持つ他の表示装置の近接を検知し、近接を検知した部分の額縁表示を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイを備えた表示装置および表示方法に関する。

【背景技術】
【0002】
ディスプレイを備えた表示装置において、装置全体の大きさを抑えながら大画面化を実現するため、装置の額縁にあたる部分の幅を狭くする狭額縁化が進んでいる。しかし、携帯可能な表示装置における額縁は、そこに指を置くことで、画面を指で隠してしまうことを防いだり、さらにそのディスプレイがタッチパネルも兼ねている場合には意図しない接触反応を防いだりする役割も果たしている。したがって、額縁を指の幅より極端に狭くした表示装置は、持ちづらかったり誤接触を引き起こしたりする恐れがあった。
【0003】
そこで、特許文献1のように、タッチパネルの端部に指が触れた場合に画面表示の縮小や移動を行って、表示が指で隠れないようにするモニタ付きカメラが考えられている。このカメラは、別の見方をすると、主表示の周りの領域に表示された仮想的な額縁(以下、「額縁表示」という)の形を変化させるものであると考えることもできる。
【0004】
一方、狭額縁であることを生かして、表示装置の画面をつなげるように複数近接させて用いたい場合、近接している部分に額縁表示が行われていると、画面間で大きな隔たりができてしまうため、閲覧の邪魔になってしまう。
【0005】
そのため、表示装置単体で利用するときは額縁表示を行い、複数の表示装置を近接させて用いるときは近接部分の額縁表示を消去するような仕組みが必要となる。


【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4178484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の装置はあくまで表示装置単体の持ち方によって額縁表示の変更を行うものであって、複数の装置を近接させて用いる場合に適用することはできなかった。
【0008】
そこで本発明は、表示装置同士の位置関係に応じて額縁表示を変更することで、単体で利用するときと複数を近接させて利用するときの両方において使いやすい表示装置を提供することを目的とする。


【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる第1の表示装置は、ディスプレイと、前記ディスプレイ上の外周部の少なくとも一部分に主表示と視覚的に区別された額縁表示を行う画像表示手段と、を備える表示装置において、他の表示装置が近接していることを検知する近接検知手段と、前記近接検知手段により検知された情報によって前記額縁表示を変更する表示変更手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
これにより、表示装置単体で利用するときと複数を近接させて利用するときの両方において、利用状況に合った額縁表示を行うことができる。
【0011】
本発明にかかる第2の表示装置は、第1の発明の構成に加え、前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、前記近接検知手段により近接が検知された部分のみの表示を変更することを特徴としている。
【0012】
これにより、複数の画面間の障壁をなくすことができ、見易くすることができる。さらに、複数の表示装置が外部領域(表示装置以外の空間)と接している部分にのみ額縁表示を行うことができるので、複数の表示装置があたかも一つの大きな表示装置になったかのような印象を与えることができる。
【0013】
本発明にかかる第3の表示装置は、第1の発明の構成に加え、前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、前記近接検知手段により近接が検知された部分の両端から、前記額縁表示の幅にあたる長さだけ除いた部分の表示を変更することを特徴としている。
【0014】
これにより、複数の表示装置が近接した際の額縁表示の連続性を高めることができる。
【0015】
本発明にかかる第4の表示装置は、第2または第3の発明の構成に加え、前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、表示を変更する部分と表示を変更しない部分の境界付近において、互いの部分の額縁表示へと段階的に変更することを特徴としている。
【0016】
これにより、複数の表示装置が斜めに重なるなどした際にできる額縁表示の不連続さを目立たなくさせることができる。さらに、近接センサの間隔が広いために起こる額縁表示の不連続さも目立たなくさせることができる。
【0017】
本発明にかかる第5の表示装置は、第1から第4のいずれか一つの発明の構成に加え、 前記ディスプレイ上における接触の位置を検知する接触検知手段を備え、前記額縁表示の領域が接触無効領域も兼ねることを特徴としている。
【0018】
これにより、接触しても反応を引き起こさない領域を視覚化することができ、それにより把持のための領域を確保し、誤操作を防ぐことができる。
【0019】
本発明にかかる第6の表示装置は、第5の発明の構成に加え、前記ディスプレイ上に表示されたアイコンをドラッグにより他の表示装置へ移動するための通信手段を備えることを特徴としている。
【0020】
これにより、一方の表示装置から他方の表示装置へと直感的にアイコンを移動させることができる。
【0021】
本発明にかかる第7の表示装置は、第6の発明の構成に加え、前記ディスプレイ上に表示されたアイコンをドラッグにより他の表示装置へ移動するときに、前記接触検知手段により前記ディスプレイ上の前記アイコンに接触が行われていれば、前記アイコンを表示した状態を維持することを特徴としている。
【0022】
これにより、カット&ペーストに相当するドラッグ操作と、コピー&ペーストを直感的に使い分けることができる。
【0023】
本発明にかかる第8の表示装置は、第5または第6の発明の構成に加え、他の表示装置が重なるように近接した場合に、前記接触検知手段により重なりの領域に接触があったことが検知されると、前記他の表示装置よりも表側に存在していると判断することを特徴としている。
【0024】
これにより、表示装置の重なりの上下を、簡単な操作で判別することができる。
【0025】
本発明にかかる第9の表示装置は、第5または第6の発明の構成に加え、少なくとも二つの他の表示装置が同じ時刻に近接し、かつ前記額縁表示を変更した領域のうち少なくとも二つの形が同じである場合に、前記他の表示装置のうち少なくとも一つを、一度引き離して再び近接させるように指示することを特徴としている。
【0026】
これにより、複数の表示装置が同時かつ同じ近接領域の形で接近した場合に、どちらに近接しているのがどちらの表示装置なのかを区別することができる。
【0027】
本発明にかかる表示方法は、ディスプレイ上の外周部の少なくとも一部分に主表示と視覚的に区別された額縁表示を行う画像表示ステップを含む表示方法において、他の表示装置が近接していることを検知する近接検知ステップと、前記近接検知ステップにより検知された情報によって前記額縁表示を変更する表示変更ステップと、を含むことを特徴としている。
【0028】
これにより、表示装置単体で利用するときと複数を近接させて利用するときの両方において、利用状況に合った額縁表示を行うことができる。
【0029】
なお、本発明における「近接」とは、「接触(完全にくっつく)」の状態と「接近(接触しない程度まで近づく)」の状態の両方を含む概念をいう。また、「額縁表示の変更」とは、額縁表示を完全に消去する場合に加え、額縁表示の幅、模様、色、透明度などを変更する場合も含む。


【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、表示装置単体で扱うときは額縁表示を行い、複数の表示装置を近接させて用いるときには閲覧や操作の邪魔にならないように額縁表示を変更することで、単体で利用するときと複数の表示装置を近接して用いるときの両方において利便性を向上することができる。


【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に記載の表示装置の概略図
【図2】本発明の実施例1に記載の表示装置の機能ブロック図
【図3】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の動作を表すフローチャート
【図4】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図5】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図6】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図7】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図8】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図9】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図10】本発明の実施例1に記載の表示装置の額縁表示の説明図
【図11】本発明の実施例2に記載の表示装置の機能ブロック図
【図12】本発明の実施例2に記載の表示装置の額縁表示の動作を表すフローチャート
【図13】本発明の実施例2に記載の表示装置の、近接部分の形状判断の動作を表すフローチャート
【図14】本発明の実施例2に記載の表示装置の、近接部分の形状判断の動作を表す説明図
【図15】本発明の実施例2に記載の表示装置の、近接した表示装置の判別の動作を表す説明図
【図16】本発明の実施例2に記載の表示装置のデータ転送の動作を表すシーケンス図
【図17】本発明の実施例2に記載の表示装置の額縁表示およびデータ転送の説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
図1は本発明を適用した表示装置100であり、図2はその機能ブロック図である。表示装置100の正面部にはディスプレイ105が備えられている。筐体110は表示装置100の裏面と側面の全体、およびディスプレイ105(表示面)の一部を覆っているが、ディスプレイ105が筐体110によって隠される幅は人間の指の幅よりも極端に狭くなっている。
【0033】
表示装置100の外周部付近には、近接検知手段として、被検出体115(115a)を内蔵した複数の近接センサ120が設けられており、他の表示装置に設けられた被検出体115bの近接を検出することができる。なお、近接センサ120が被検出体115を検知できる距離の限界(感度)は、後述する額縁表示125の幅(本実施例では例えば2cm)程度であることが望ましい。これより大幅に大きいと(例えば4cm)、接触部分から離れた部分までも近接と検知してしまう。一方で、大幅に小さいと(例えば0.5cm)、表示装置同士を完全に接触させた状態でも近接を検知できない危険性がある。
【0034】
さらに、表示装置100の外周部以外の部分にも複数の被検出体115が設けられている。各々の被検出体115および近接センサ120の間隔は、実現したい額縁表示の精度のレベルに応じて調整すればよいが、近接センサ120が同じ表示装置内の被検出体115を誤って検出してしまうことを防ぐために、近接センサ120の感度(本実施例では2cm程度)よりも大きい(たとえば3cm)距離であることが望ましい。
【0035】
ディスプレイ105には、他の表示装置と近接していない状態においては、外周部に把持領域として十分な幅(例えば2cm)の額縁表示125が、その内側の主表示領域127と区別できるように色を変えて表示されている。主表示領域127の表示はこの額縁表示125の領域には表示されないため、表示装置100を手で持って閲覧・操作する場合には、指をこの額縁表示125の領域に置くことにより安定して把持することが可能となる。近接センサ120の情報は近接検出処理部160を通じて中央情報処理部150に送られ、画像表示手段および表示変更手段としての表示制御部155を通じて、額縁表示125を変化させるために利用される。
【0036】
なお、本実施例では、ディスプレイ105が筐体110によって隠される幅を人間の指の幅より極端に狭いものとしたが、完全に幅が無い場合や、逆に指の幅より太いようなものであっても良い。
【0037】
また、本実施例では額縁表示125を全外周に表示しているが、上下部分のみといったような、一部分に表示するものであっても良い。
【0038】
次に、図3のフローチャートおよび図4を用いて、この表示装置100aが同様の構成を持つ他の表示装置100bと同一平面内で隣接するように近接した際の動作を説明する。
【0039】
図4(A)のように、表示装置100aに表示装置100bが近接した状態になると、ステップS101において、表示装置100a、100bの外周部に設けられた近接センサ120(図示せず、以下同様)が相手の表示装置の外周部に設けられた被検出体115(図示せず、以下同様)の近接を互いに検知し、当該近接部分に表示されている額縁表示を消去する(ステップS102)。なお、近接部分に表示されている額縁表示とは、近接を検知した近接センサを中心とし、隣接する近接センサとの中間地点を端部とする領域のことであり、例えば図1の近接センサ120nが近接を検知した場合は、額縁表示125nの領域を指す。
【0040】
その際、ただ単に近接部分の額縁表示を消去してしまうと、図4(B)のように額縁表示が不連続な領域126が存在してしまうため、図4(C)のように額縁表示消去領域130の両端から額縁の幅(本実施例では2cm)にあたる長さだけ除くことで消去領域を短くして、額縁表示の連続性を高めるようにしても良い。また、図4(D)のように、額縁表示125が段階的に消えていくようにグラデーションをかけて表示しても良い。
【0041】
このようにして近接部分の額縁表示のみを消去することにより、二つの表示装置を一つの大きな表示装置と見たときの外周部にのみ額縁表示を行うことができる。
【0042】
なお、額縁表示消去領域130には、一辺の額縁表示が完全に消去された場合は主表示を額縁表示消去領域130の方向に引き伸ばしたものを表示しても良いし、そうではない場合は背景画像を表示するようにしても良い。
【0043】
一方で、表示装置100aと表示装置100bが離れ、ステップS101において、近接センサ120が相手の表示装置の近接を検出できなくなると、額縁表示消去領域130に再び額縁表示125を行う(ステップS103)。
【0044】
このようにして表示装置100a、100bが近接していないときには額縁表示を行い、近接しているときには近接部分の額縁表示を行わないようにすることで、単体で使用するときは持ちやすく、複数隣接させて用いるときは複数の表示装置があたかも一つの大きな表示装置になったかのような印象を与えることができる。
【0045】
次に、図5を用いて、表示装置100aの上側に表示装置100bの一部が重なるように近接した場合を説明する。
【0046】
なお、表示装置100aの厚さは、近接センサ120の感度(本実施例では2cm)の半分よりも小さい(例えば0.8cm)ものとする。
【0047】
この場合、表示装置100a、100bの外周部に設けられた近接センサ120が相手の表示装置の外周部及び内部の被検出体115を検出するため、この情報を用いて近接部分の額縁表示を消去すれば、二つの表示装置を一つの大きな表示装置と見たときの外周部にのみ額縁表示を行うことができる。
【0048】
その際、ただ単に近接部分の額縁表示を消去してしまうと、図5(B)のように額縁表示が不連続な領域126が存在してしまうため、先述の隣接するように近接した場合で説明したのと同様に、図5(C)のように、額縁表示消去領域130の両端を額縁表示の幅(本実施例では2cm)にあたる長さだけ除くことで消去領域を短くすれば、額縁表示の連続性を高めることができる。ただ、図6(A)のように斜めに重なっている場合は、図6(B)のように額縁表示消去領域130の両端を額縁表示の幅だけ短くしても、不連続な領域126が残ってしまう。そこで、図6(C)のように、額縁表示125が段階的に消えていくようにグラデーションをかけて表示すれば、額縁表示の不連続さを目立たなくすることができる。
【0049】
またこのグラデーションによる方法は、近接センサ同士の間隔が広いことに起因して、表示装置同士を近接させた際の額縁表示が不連続になってしまう場合においても、その不連続さを目立たなくさせるのに有効である。
【0050】
なお、図5(B)(C)および図6(B)(C)においては、重なりの下側にある表示装置100aにおいても、重なりの上側にある表示装置100bと同様に、近接部分における額縁表示の変更が行われている。
【0051】
本実施例に記載の形態によれば、図7(A)に示したように、表示装置100aの上部に表示装置100bが完全に含まれるように近接した場合も、同じ処理により、図7(B)のように表示装置100bの全外周の額縁表示を消去することができる。
【0052】
さらにこの形態によれば、図8(A)に示したように、3つ以上の表示装置が近接状態にある場合や、表示装置同士が交差している場合(例えば、交差領域128)、表示装置が長方形以外の多角形や曲線を含む形である場合(例えば、曲線接触領域129)にも、図8(B)のように、近接部分の額縁表示の変更を行うことができる。
【0053】
加えて、図9(A)および(B)に示したように、本実施例のディスプレイは背景が透けて見えるシースルー型であっても良い。表示装置100の構成では、重なりの上側の表示装置100bにおいて額縁表示消去領域130bが作られることに加え、重なりの下側の表示装置100aにおいても額縁表示消去領域130aが作られるため、シースルー型であっても外部領域と接している部分のみに額縁表示を行えることになる。
【0054】
また、上記の例によらず、一部でも近接が検知されたときは外周部すべての額縁表示を行わないようにしても良い。この方法は、複数の表示装置を近接させたまま机の上に置いておく場合などにおいて、画面表示を広く行えるという利点がある。
【0055】
さらに、本実施例では、適切な額縁表示を両表示装置間で通信を行うことなく実現している。このため、表示装置の構造を簡略化することができるのも利点である。
【0056】
なお、本実施例においては額縁表示を消去することについて述べたが、図10(B)に示したような近接部分の額縁表示の模様を変更するものや、近接部分の額縁表示の幅、色、透明度などを消去しない程度に変更するものであっても良い。また、図10(C)のように、近接部分に加え、近接部分以外の額縁表示も変更するようにしても良い。この場合においても、複数の表示装置を一つの大きな表示装置と見たときの外周部に同種の額縁表示を行うことで、複数の表示装置が一体化したかのような感覚をユーザに与えることができる。
【0057】
さらには、本実施例においては他の表示装置の近接を検知するために、複数の被検出体と、被検出体を検出するための複数の近接センサを用いたが、圧力を検知する圧力センサや、金属全般を検出する金属センサ、赤外線による近接センサ等を用いて近接を検知しても良い。


【実施例2】
【0058】
図11は実施例1の表示装置100のディスプレイ105の代わりに接触検知手段としてのタッチパネル205およびタッチ検出部210を備え、さらに近接通信制御部214および近接通信送受信部215を加えた表示装置200を表す機能ブロック図である。その他の部分は実施例1の表示装置100と同一あるため、同一のものについては同じ符号を用いて説明を行う。
【0059】
タッチパネル205はディスプレイとしての機能も備えるため、表示装置200の外観は図1と同様である。このタッチパネル205およびタッチ検出部210により、タッチパネル上の複数点の接触操作を検出することができる。
【0060】
通信手段としての近接通信送受信部215は表示装置200の内部に設けられており、他の表示装置の近接通信送受信部215bが近くにあるとき(例えば、十数cm程度以内の距離)に通信を行うことができる。具体的な近接通信の規格としてはNFC(Near Field Communication)などが考えられるが、これに限るものではない。
【0061】
また、本実施例で近接通信を用いるのは、あらかじめ通信の認証を行っていない機器同士が簡単につながることができるという点に加え、遠距離に存在する無関係の機器へのデータ転送を防ぐことができるというセキュリティ面での利点があるためであるが、通信の認証を行わせる場合やセキュリティ面を意識する必要がない場合は、近接通信以外の通信手段を用いるようにしても良い。
【0062】
画面上の外周部には、実施例1の図1と同様に、他の表示装置と近接していない状態においては、額縁表示125がその内側の主表示領域127と区別できるように表示されている。ここで、額縁表示125は接触無効領域も兼ねているため、この表示装置200を手で持って閲覧・操作する場合には、指をこの額縁表示125に置くことにより誤操作を引き起こすことなく、安定して把持することが可能となる。
【0063】
次に、図12のフローチャートを用いて、この表示装置200aが同様の構成を持つ別の表示装置200bと近接した際の動作を説明する。
【0064】
表示装置200aと表示装置200bが一か所でも近接した状態になると、ステップS201において、表示装置200a、200bの外周部に設けられた近接センサ120が相手の表示装置の被検出体115の近接を互いに検知し、近接通信送受信部215が相手の表示装置と通信を行うための準備段階に入る(ステップS202、S203)。準備が完了し通信が確立されたら(ステップS204)、近接部分のみの額縁表示を消去し(ステップS205)、その額縁表示消去領域130を接触有効領域とする。
【0065】
なお、額縁表示125を、グラデーションをかけて段階的に消えていくようにした場合は、表示の濃さが例えば50%であるところを境界として接触有効領域と接触無効領域に分けるようにすることができる。
【0066】
また、額縁表示を、近接時には色を変更、通信可能時には消去するなどとしてそれぞれの状態を区別できるようにしても良い。
【0067】
このようにして表示装置200a、200bの近接部分の額縁表示を消去することにより、複数の表示装置があたかも一つの大きな表示装置になったかのようにユーザに感じさせることに加え、両表示装置間でデータを送る際の障壁が消えたようにユーザに感じさせることができる。また、近接している部分にのみ額縁表示を行うことで、再び表示装置を引き離すために把持し直す場合に、誤操作を引き起こすことのない領域を分かりやすくすることができる。
【0068】
一方で、表示装置200aと表示装置200bが離れ、ステップS201において、近接センサ120が相手の表示装置の近接を検出できなくなると、近接通信を切断し(ステップS212、S213)、切断が完了したら額縁表示消去領域130に額縁表示を行うようにする(ステップS214)。
【0069】
ここでさらに、図13のフローチャートを用いて、額縁表示消去領域が変化した場合に、表示装置200a、200bがどのように近接しているかを判断する方法を説明する。
【0070】
ステップS220において、額縁表示消去領域が新たに出現した場合や、その形に変化があった場合は、ステップS221において、両表示装置間で、自己の表示装置の形状の情報と、自己の表示装置の額縁表示消去領域130の形状の情報と、近接が検知されたときの時刻という三種類の情報からなる近接情報を互いに送りあう。この送られてきた近接情報のうち、表示装置の形状の情報と、額縁表示消去領域130の形状の情報を用いることで、ステップS222において、相手の表示装置がどのような形で近接しているかを決定することができる。
【0071】
ただし、二つの表示装置が重なりのない状態から、図14(A)のように、重なっている状態へと変化したことが判明した場合(ステップS223、S224)、どちらの表示装置が重なりの上側であるかまでは、近接センサ120からの情報だけでは分からない。そこでその場合は、両表示装置において、重なり領域217に例えば「ここをタッチ」というメッセージを表示し(ステップS225、図14(B))、重なり領域217がタッチされた側を表側(上側、表示面が隠されていない側)であるとすることで、両端末の上下関係を判断することができる(ステップS226、S227)。
【0072】
このようにして二つの表示装置がどのような形で近接しているかを判断することにより、図14(C)のように、両端末の境界にあたる場所に転送領域219(表示装置200aにおいては転送領域219a、表示装置200bにおいては転送領域219b)を設定することができる。なお、この転送領域219は、隣接する場合の両表示装置、および重なる場合の上側の表示装置においては、額縁表示消去領域130と一致する。
【0073】
また、三つ以上の表示装置が近接する場合のうち、図15(A)〜(C)に示したように、ステップ228において、表示装置200aの複数の額縁表示消去領域130aのうち、少なくとも二つの形が同じであると判断される場合は、どちらの表示装置がどちらの額縁表示消去領域130aに近接しているかということを近接センサ120からの情報だけでは判断することはできない。この場合、ステップS229において、ステップS221で送信された近接情報のうち、近接が検知されたときの時刻の情報を用いることで、表示装置とその近接位置を対応付けることができる(ステップS231)。
【0074】
一方、ステップS229において、表示装置200aに表示装置200bと200cが同時もしくは短い時間差で近接したために近接の時刻から判別できない場合は、一度いずれかの端末を引き離して近接し直すように図15(C2)のようなメッセージを表示したり、表示装置200aがスピーカを備えている場合には、図15(C3)のように音声等で促したりすることで(ステップS230)、再び近接しなおした時刻から表示装置を判別することができる(ステップS231)。
【0075】
次に、図16のシーケンス図および図17を用いて、表示装置200aから表示装置200bにオブジェクトのアイコンをドラッグ(指などを接触させたまま移動すること)によって転送する方法を説明する。
【0076】
なお、ここでいうオブジェクトとは、画像ファイルや文書ファイルなどのデータそのものを表し、そのオブジェクトのアイコンに対して移動や消去などの操作を行うことによって、データの移動や消去を行うことができる。
【0077】
初期状態における主表示領域127(接触有効領域)内には、図17(A)にようにドラッグが可能なオブジェクトのアイコン220aが表示されている。
【0078】
表示装置200aが表示装置200bの上に重なるように近接して額縁表示の少なくとも一部が消去されているとき、表示装置200aに表示されているアイコン220aをドラッグして少なくともその一部が転送領域219aに含まれるように移動させると(ステップS250、図17(B))、このオブジェクトの名前や種類などからなる基本情報に加え、アイコン220aの位置情報が表示装置200bに送られ(ステップS251、S260)、表示装置200b上の転送領域219bに、送られてきたオブジェクトの基本情報とアイコンの位置情報に基づいて、アイコン220bを半透明の状態で表示する(ステップS261、図17(C))。
【0079】
そして、ステップS262において、表示装置200bの画面上においてアイコン220bを転送領域219bの外にドラッグすると(図17(D))、そのオブジェクトのデータの転送要求が表示装置200aに送られ(ステップS263、S252)、それに応じて表示装置200aから表示装置200bにデータ転送が開始される(ステップS253)。
【0080】
そして転送が完了すると(ステップS264)、転送が完了したことが表示装置200aに通知され(ステップS265、S254)、表示装置200a上のアイコン220aおよびオブジェクトのデータが消去される(ステップS255)。一方で、表示装置200b上のアイコン220bは半透明状態を解除されて濃く表示される(ステップS266、図17(E))。このようにして、表示装置間でのドラッグを直感的に行うことが可能となる。
【0081】
以上の形態により、本実施例2では、実施例1に記載したような様々な近接の場合において、額縁表示の変更およびデータ転送を実現することが可能となる。
【0082】
なお、上記の表示装置間でのドラッグは表示装置間でカット&ペーストを行うことに相当するが、表示装置200bにおいて半透明のアイコン220bを転送領域219bから引き離す(アイコン220aを表示装置200aから200bに移動させる)際(ステップS262)に、表示装置200aにおけるアイコン220aが例えばもう一本の指などによって接触が行われている場合は、アイコン220aを表示した状態を維持し、表示装置200aからオブジェクトのデータを消去しないようにして、表示装置間でのコピー&ペーストに相当するものを実現するようにしても良い。
【0083】
また、アイコン220aを転送領域219aに向けて弾く(素早くドラッグしながら指を離す)操作を行ったときに転送が行われるようにしても良い。この場合、弾かれたアイコン220aは速度を少しずつ落としながらそのまま軌道上を動き続け、所定の速度以上で転送領域219aに到達した場合には、連続的な移動に見えるように、その速度および軌道を計算して、表示装置200bの画面上にアイコン220bを表示する。


【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、表示装置同士の位置関係に応じて額縁表示を変更することで、単体で利用するときと複数を近接させて利用するときの両方において使いやすい表示装置を提供することができる。

【符号の説明】
【0085】
100(100a、100b) 表示装置
105 ディスプレイ
110 筐体
115(115a、115b) 被検出体
120(120n) 近接センサ(近接検知手段)
125 額縁表示
126 額縁表示が不連続な領域
127 主表示領域
128 交差領域
129 曲線接触領域
130 額縁表示消去領域
150 中央情報処理部
155 表示制御部(画像表示手段、表示変更手段)
160 近接検出処理部
200(200a、200b) 表示装置
205 タッチパネル(接触検知手段)
210 タッチ検出部
214 近接通信制御部
215 近接通信送受信部
217 重なり領域
219(219a、219b) 転送領域
220(220a、220b) アイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと、前記ディスプレイ上の外周部の少なくとも一部分に主表示と視覚的に区別された額縁表示を行う画像表示手段と、を備える表示装置において、他の表示装置が近接していることを検知する近接検知手段と、前記近接検知手段により検知された情報によって前記額縁表示を変更する表示変更手段と、を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、前記近接検知手段により近接が検知された部分のみの表示を変更することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、前記近接検知手段により近接が検知された部分の両端から、前記額縁表示の幅にあたる長さだけ除いた部分の表示を変更することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示変更手段は、前記額縁表示のうち、表示を変更する部分と表示を変更しない部分の境界付近において、互いの部分の額縁表示へと段階的に変更することを特徴とする、請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ディスプレイ上における接触の位置を検知する接触検知手段を備え、前記額縁表示の領域が接触無効領域も兼ねることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の表示装置。
【請求項6】
前記ディスプレイ上に表示されたアイコンをドラッグにより他の表示装置へ移動するための通信手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ディスプレイ上に表示されたアイコンをドラッグにより他の表示装置へ移動するときに、前記接触検知手段により前記ディスプレイ上の前記アイコンに接触が行われていれば、前記アイコンを表示した状態を維持することを特徴とする、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
他の表示装置が重なるように近接した場合に、前記接触検知手段により重なりの領域に接触があったことが検知されると、前記他の表示装置よりも表側に存在していると判断することを特徴とする、請求項5または6に記載の表示装置。
【請求項9】
少なくとも二つの他の表示装置が同じ時刻に近接し、かつ前記額縁表示を変更した領域のうち少なくとも二つの形が同じである場合に、前記他の表示装置のうち少なくとも一つを、一度引き離して再び近接させるように指示することを特徴とする、請求項5または6に記載の表示装置。
【請求項10】
ディスプレイ上の外周部の少なくとも一部分に主表示と視覚的に区別された額縁表示を行う画像表示ステップを含む表示方法において、他の表示装置が近接していることを検知する近接検知ステップと、前記近接検知ステップにより検知された情報によって前記額縁表示を変更する表示変更ステップと、を含むことを特徴とする表示方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−248137(P2012−248137A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121426(P2011−121426)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】