説明

表示装置および電子機器

【課題】表示面において移動可能な指示部によるアナログ表示と表示パネルにおける表示とが可能な表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】表示装置100は、表示面10aを有する表示パネル10と、指示部としての指針30と、指針30に設けられた磁界発生部としての永久磁石からなるローター31と、表示面10aと反対側の非表示面側に所定の方向に沿って設けられた複数の誘導磁界発生部としての誘導コイルLとを備え、指針30は、ローター31が複数の誘導コイルLのうちの少なくとも1つに対して表示パネル10を挟んで対向するように配置され、表示パネル10を挟んだローター31と誘導コイルLとの間隔は、ローター31が発生させる磁界と誘導コイルLが発生させる誘導磁界とが互いに反発または吸引し合うことによって指針30が所定の方向に移動可能な距離となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示面において移動可能な指示部を備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記表示装置として、液晶パネルに孔を開けて回転軸を通し、該回転軸にアナログ表示用の針を設けた時計用文字盤(特許文献1)や、時計ムーブメントの筒車が貫通する円孔が設けられた有機EL素子を時計ムーブメントに重畳させた指針式時計(特許文献2)が知られている。
また、回転する指針の回転中心を挟んで第1および第2表示手段が配置され、これらの表示手段を覆うように減光シートが設けられた指針計器が知られている(特許文献3)。
【0003】
上記特許文献1および上記特許文献2は、時計のアナログ指針の回転軸が貫通する孔を液晶パネルや有機EL素子などの表示手段に設けた例である。
これに対して、上記特許文献3では、指針の回転中心を挟んで配置された2つの表示手段を覆う減光シートを設けたことにより、あたかも2つの表示手段が一体化のように見せている。つまり、表示手段に指針の回転軸を貫通させる孔を開ける必要がない例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−35668号公報
【特許文献2】特開平8−313651号公報
【特許文献3】特開2002−36911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献3の指針計器では、2つの表示手段を減光シートで覆い、あたかも1つの表示手段と見せる構成であって、表示手段に回転軸を貫通させる孔を設けるのと変わらないくらい構造が複雑である。また、表示手段を減光シートで覆うので、表示手段の表示内容が視認し難くなるおそれがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の表示装置は、表示パネルと、指示部と、前記指示部に設けられた磁界発生部と、前記表示パネルの表示面の反対側に所定の方向に沿って設けられた複数の誘導磁界発生部とを備え、前記指示部は、前記磁界発生部が前記複数の誘導磁界発生部のうちの少なくとも1つに対して前記表示パネルを挟んで対向するように配置され、前記表示パネルを挟んだ前記磁界発生部と前記誘導磁界発生部との間隔は、前記磁界発生部が発生させる磁界と前記誘導磁界発生部が発生させる誘導磁界とが互いに反発または吸引し合うことによって前記指示部が前記所定の方向に移動可能な距離となっていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、表示パネルを挟んだ磁界発生部と誘導磁界発生部との間隔が誘導磁界によって指示部を移動可能な程度の距離となっているので、表示面において指示部をアナログ的に動かすための可動軸を貫通させる孔を表示パネルに設ける必要がない。また、特許文献3のように表示手段を覆う減光シートを設ける必要もないので、より簡素な構成で表示パネルにおける表示と指示部におけるアナログ表示とを組み合わせた表示が可能となり、視認性が向上した表示装置を提供できる。
なお、表示パネルを挟んだ磁界発生部と誘導磁界発生部との間隔は、磁界発生部が発生させる磁界または誘導磁界発生部が発生させる誘導磁界のいずれか一方が表示パネルを透磁可能な状態であればよい。言い換えれば、表示パネルの厚みは上記間隔の距離以下である。
【0009】
[適用例2]上記適用例の表示装置において、前記表示パネルを挟んだ前記磁界発生部と前記誘導磁界発生部との間隔が、0.2mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、誘導磁界発生部が発生させる誘導磁界または磁界発生部が発生させる磁界の磁束密度(Gauss)をそれほど大きくしなくても、誘導磁界によって指示部を動かすことが可能となる。上記間隔が0.2mm以下ならば、少なくとも一方の磁界における磁束密度がおよそ2000Gauss以上あればよい。該磁束密度の値を小さくすることができれば、磁界発生部および誘導磁界発生部を小型化することが可能となる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の表示装置において、前記複数の誘導磁界発生部は、仮想直線上または仮想曲線上に沿って配置されているとしてもよい。
この構成によれば、指示部を仮想直線上または仮想曲線上に沿って移動させることができる。言い換えれば、指示部により示すパラメーター(指標)の種類に合わせて指示部の動きを設定できる。例えば、パラメーター(指標)が温度や湿度ならば仮想直線上に沿って指示部を動かす方が高い視認性を実現できる。また例えば、パラメーター(指標)が回転数や速度ならば仮想曲線上に沿って指示部を動かすほうが高い視認性を得られる。これらのパラメーター(指標)を示す既存の計器類の動きに準じた動きを演出するほうが高い視認性を得やすい。
【0011】
[適用例4]上記適用例の表示装置において、前記表示面には、前記指示部を回動可能に軸支する支持部を備え、前記支持部周りに磁極が互いに反転するように複数の前記磁界発生部が配置され、前記複数の前記磁界発生部に対して前記表示パネルを挟んで対向するように前記複数の誘導磁界発生部が配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、表示パネルに回転軸を貫通させる孔を設けなくても、誘導磁界発生部が発生させる誘導磁界によって指示部を支持部を中心として自在に回動させることができる。
【0012】
[適用例5]上記適用例の表示装置において、前記支持部に軸支され回動可能な第1指示部と第2指示部とを有し、前記第1指示部と前記第2指示部とにおいて、前記複数の前記磁界発生部は、前記支持部を中心とする同心円上に沿って配置されているとしてもよい。
この構成によれば、支持部を中心として第1指示部と第2指示部とを個別に回動させることができる。例えば、第1指示部を時計の短針とし、第2指示部を時計の長針とすれば、表示パネルにおける表示とアナログ式の時計表示とを組み合わせた表示装置を提供できる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の表示装置において、前記磁界発生部が永久磁石であり、前記誘導磁界発生部が誘導コイルであることを特徴とする。
この構成によれば、強力な磁界を発生する特別な部材を用いなくても、指示部を動かすアナログ表示が可能となる。
【0014】
[適用例7]上記適用例の表示装置において、前記誘導コイルは磁性体コアを有することが好ましい。
この構成によれば、誘導コイルは磁性体コアを有しているので、磁界発生部としての永久磁石を磁性体コアと対向させて、一時的に指示部の位置を表示面上において保持させることが可能となる。つまり、電源から電力が供給されず、誘導コイルにおいて誘導磁界が発生していなくても、指示部を表示面上の所定の位置に配置させることが可能となる。
【0015】
[適用例8]上記適用例の表示装置において、前記表示パネルにおける表示がデジタル表示であることを特徴とする。
この構成によれば、表示パネルにおけるデジタル表示と指示部におけるアナログ表示とを組み合わせ、より多くの情報を高い視認性で表示することができる。
【0016】
[適用例9]本適用例の電子機器は、上記適用例の表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、簡素な構成で表示パネルにおける表示に加えて指示部によるアナログ表示が可能な電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の表示装置としての計器の構成を示す概略正面図。
【図2】図1のA−A’線で切った計器の構造を示す概略断面図。
【図3】(a)は指針の構成を示す概略斜視図、(b)は磁界発生部の構成を示す概略平面図。
【図4】(a)は誘導磁界発生部の構成を示す概略斜視図、(b)は概略平面図。
【図5】計器における磁界の発生状態を示す概略断面図。
【図6】磁界の磁束密度とエアギャップとの関係を示すグラフ。
【図7】計器の制御系を示すブロック図。
【図8】表示パネルの電気的な構成を示す等価回路図。
【図9】表示パネルの構造を示す概略断面図。
【図10】第1実施形態の表示装置における表示の1例を示す平面図。
【図11】第2実施形態の表示装置の構成を示す概略正面図。
【図12】図11のB−B’線で切った表示装置の構造を示す概略断面図。
【図13】第3実施形態の電子機器としてのフォトビューワーを示す概略斜視図。
【図14】(a)〜(c)は変形例の磁界発生部と誘導磁界発生部との相対的な位置関係を示す概略平面図。
【図15】(a)は変形例の表示装置の構造を示す概略断面図、(b)は永久磁石の着磁状態を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。以降の説明における各実施形態は、表示パネルに回転軸などを貫通させる孔を設けない実施例を示すものである。
【0019】
(第1実施形態)
<表示装置>
まず、本実施形態の表示装置について計器を例に図1〜図4を参照して説明する。図1は第1実施形態の表示装置としての計器の構成を示す概略正面図、図2は図1のA−A’線で切った計器の構造を示す概略断面図、図3(a)は指針の構成を示す概略斜視図、同図(b)は磁界発生部の構成を示す概略平面図、図4(a)は誘導磁界発生部の構成を示す概略斜視図、同図(b)は誘導磁界発生部の構成を示す概略平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の表示装置100は、外形が四角形の表示パネル10と、表示パネル10の表示面側に設けられた指示部としての指針30とを有する。指針30は表示面に設けられた支持部32によって回動可能に軸支されている。また、表示面には指針30の回動範囲を規定する始点側のストッパー36と終点側のストッパー37とが設けられている。
これらの支持部32やストッパー36,37は、表示面に対して接着固定してもよいし、粘着剤等を用いて着脱可能な状態に配置してもよい。
なお、支持部32は表示パネル10における表示領域9のほぼ中央部分に配置されているが、これに限定されるものではない。
【0021】
表示パネル10は、一対の基板1,2が重ね合わされたものであり、表示領域9には、赤(R)、緑(G)、青(B)の表示が可能な画素7が設けられている。同色の画素7が同一方向に並び、該同一方向に対して直交する方向に異色の画素7が並ぶ所謂ストライプ方式の画素配置となっている。なお、画素配置はこれに限定されるものではない。
【0022】
基板1は基板2に比べて短辺側が長くなっており、基板2からはみ出した部分が端子部1aとなっている。端子部1aには、外部駆動回路との電気的な接続を図るための中継基板5が実装されている。中継基板5は、例えばフレキシブル回路基板(FPC)であって、ドライバーIC6が平面実装されている。
【0023】
図2に示すように、表示パネル10の表示面10aに立設された支持部32は底部側が広がった縁部(フランジ)を有する略円柱状となっている。指針30は、支持部32の円柱部分と嵌合する孔30aと磁界発生部としての永久磁石からなるローター31とを有している。指針30は支持部32の縁部で受け止められ、ローター31と表示面10aとが所定の間隔をおいて対向配置されると共に、支持部32によって回動可能な状態で軸支されている。図中において符号32aで示した線分は、支持部32の軸つまり指針30の回動軸を示すものである。
【0024】
表示パネル10の表示面10aの反対側(背面側)には、表示パネル10を背面側から支持する支持板33と誘導磁界発生部としての誘導コイルLが設けられた回路基板34とが取り付けられている。支持板33は、例えばアルミニウムなどの金属板であり、表示パネル10よりも一回り大きく、上記回動軸32aを中心とする円孔33aを有している。該円孔33a部分に誘導コイルLが収まって、指針30側のローター31と表示パネル10を挟んで対向するように、回路基板34が接着剤35を用いて支持板33に接着固定されている。誘導コイルLは表示パネル10の背面にほぼ密着した状態となっている。
【0025】
図3(a)に示すように、指針30の一方の面(表示面10aに対向する側の面)には、ローター31が接着固定される。ローター31は、ドーナツ状であって孔31aの中心が回動軸32aと合致するように指針30に配置される。また、図3(b)に示すように、磁界発生部としてのローター31は、回動軸32a周りに磁極であるN極とS極とが交互に着磁されたものである。言い換えれば、磁極が互いに反転するように複数の永久磁石が回動軸32a周りに一体化されたものである。なお、一体化されていなくてもよく、複数の永久磁石を磁極が回動軸32a周りに反転するように個別に配置してもよい。
本実施形態では、N極とS極との組が回動軸32a周りに6組配置されている。これらの磁極は、回動軸32aを中心にしてそれぞれ等しい方位角度で配置されている。
【0026】
図4(a)に示すように、回路基板34上には、回動軸32a周りに合計6個の誘導コイルL1〜誘導コイルL6が配置されている。各誘導コイルLには、個別にモーター駆動電流が与えられる構成となっている。与えられたモーター駆動電流によって誘導コイルLに誘導磁界が回路基板34を厚み方向において貫通するように発生する。回路基板34と複数の誘導コイルLとの組み合わせを、以降、誘導コイルユニット44と呼ぶ。
【0027】
図4(b)に示すように、誘導コイルL1は例えば鉄などの磁性体コアC0と、回路基板34の基板面に対して略平行な面内において、磁性体コアC0に捲回されたコイルC1とを有している。他の誘導コイルLも同様である。誘導コイルL1〜誘導コイルL6の配置も回動軸32aを中心とした等しい方位角度で回路基板34上に配置されている。
本実施形態では、永久磁石のN極とS極の組は6組であるが、4組や8組でも良い。また誘導コイルLの数と磁極の組の数は同数でなくてもよい。例えば、N極とS極の組が8組で、誘導コイルLの数が6個であってもよい。
【0028】
次に、表示パネル10の表示面10a上において指針30を可動(回動)させる方法について、図5〜図7を参照して説明する。図5は計器における磁界の発生状態を示す概略断面図、図6は磁界の磁束密度とエアギャップとの関係を示すグラフ、図7は計器の制御系を示すブロック図である。
【0029】
図5に示すように、指針30のローター31は、表示面10aとの間に隙間が生ずるように表示パネル10に対して配置されている。表示パネル10を挟んだローター31と誘導コイルLとの間隔は、永久磁石であるローター31が発生させる磁界と誘導コイルLが発生させる誘導磁界とが反発または吸引し合うことによって、指針30を動かすことが可能な距離となっている。以降、ローター31と誘導コイルLとの間隔をエアギャップδと呼ぶ。
【0030】
また、図中に示したように、ローター31が発生させる磁界(磁力線)と誘導コイルLが発生させる誘導磁界(磁力線)とのうち少なくとも一方の磁界が表示パネル10を透磁する状態となるように、それぞれの磁力つまり磁束密度B[Gauss]を設定することが重要となる。
【0031】
図6は、ローター31を比較的に強力な磁界が得られる例えばネオジウム系磁石で構成した場合の磁束密度Bとエアギャップδとの関係を示したものである。図6に示すように、エアギャップδが1mmを越えると磁束密度B(G2)はおよそ100[Gauss]以下となってしまう。つまり、誘導コイルLにおいて強力な誘導磁界を発生させないと、指針30を動かすほどのトルクをローター31に与えることが難しくなる。
【0032】
エアギャップδを0.2mm以下とすると、磁束密度B(G1)がおよそ2000[Gauss]以上となる。つまり、誘導コイルLにおいてそれほど強力な誘導磁界を発生させなくても、指針30を動かすトルクをローター31に与えることができる。エアギャップδを0.2mm以下とするには、当然ながら表示パネル10の厚みを0.2mm未満とする必要がある。
【0033】
このようなローター31と誘導コイルユニット44との関係は、指針30を回動軸32aを中心として回動させる電磁アクチュエーターの1つであるブラシレスモーターを構成するものである。表示パネル10の厚みが0.2mm未満であるため、指針30に回動トルクを与えるブラシレスモーターのローター31や誘導コイルLにおいてそれほど強力な磁界を発生させる必要がないので、それぞれを薄型化、小型化可能である。
【0034】
図7に示すように、表示装置100は、表示パネル10を駆動するための信号を送出するドライバーIC6と、誘導コイルユニット44の各誘導コイルLにモーター駆動電流を供給するモータードライバー回路43とを備えている。また、モータードライバー回路43を制御するモーター制御回路42と、これらを統括的に制御するシステム制御回路41と、電源回路45とを備えている。
【0035】
システム制御回路41は、外部からの画像データの入力を受けて、これを設定されたタイミングでドライバーIC6に送出する。画像データは、例えば所定の表示パターンを繰り返し表示する画像データや異なる表示パターンを表示する画像データを含むものである。所定の表示パターンとは指針30が示すところのパラメーター(指標)の値や単位である。異なる表示パターンとは文字や映像などである。
【0036】
また、システム制御回路41は、外部からの制御データの入力を受けて、これをモーター制御回路42に送出する。制御データは、指針30が示すところのパラメーター(指標)を制御するデータである。モーター制御回路42は制御データに基づいてモータードライバー回路43に制御信号を送出し、モータードライバー回路43は該制御信号に基づいて各誘導コイルLにモーター駆動電流を送出する。
【0037】
誘導コイルユニット44は、モーター駆動電流によって誘導磁界を発生させ、ローター31と誘導コイルLとの間で反発または吸引が生ずるので、指針30が発生した誘導磁界により制御データに対応した所定の位置に回転移動する。
【0038】
外部電源に接続される電源回路45は、システム制御回路41を通じて各回路に必要な電力を供給する。
【0039】
このような表示装置100の電気的な構成によれば、表示パネル10においてデジタル表示を可能とする一方で、誘導コイルユニット44により指針30を回動させてアナログ表示させることも同時に実現できる。
また、誘導コイルLは磁性体コアC0を有しているので、仮に外部からの電源供給がストップしても永久磁石であるローター31により磁化して吸引され、指針30を表示パネル10を挟んで対峙する誘導コイルLに対して一時的に固定することができる。
なお、誘導コイルユニット44における誘導コイルLの個数は6個に限定されるものではなく、より細かく指針30を動かそうとする場合には、より多くの誘導コイルLを回動軸32a周りに配置することが好ましい。
【0040】
<表示パネル>
次に、表示パネル10について図8および図9を参照して説明する。図8は表示パネルの電気的な構成を示す等価回路図、図9は表示パネルの構造を示す概略断面図である。
前述したように、表示パネル10はエアギャップδの距離(長さ)未満の厚さとすることが重要であって、より具体的には0.2mm未満の厚さが実現されている。表示パネル10としては、液晶パネルや電気泳動パネルのように受光型の表示デバイスを採用することもできるが、本実施形態では、見栄えがよい自発光型の有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルを用いている。
【0041】
図8に示すように、表示パネル10は、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機ELパネルである。表示パネル10は、互いに絶縁された状態で交差する走査線3aおよびデータ線4aと、走査線3aに沿って延在する電源線3bとを備えている。
【0042】
これら走査線3aとデータ線4aとに囲まれた領域に画素7が配置されている。画素7は、走査線3aの延在方向とデータ線4aの延在方向とに沿ってマトリックス状に配置されている。
【0043】
各画素7には、陽極としての画素電極14、有機機能層15、陰極としての共通電極16によって構成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)17が設けられている。また、有機EL素子17を駆動制御する回路部としてのスイッチング用のTFT11と、駆動用のTFT12と、保持容量13とが設けられている。
有機機能層15は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順に積層されたものであり、画素電極14から注入された正孔と共通電極16から注入された電子とが発光層において再結合し、励起して発光する。
有機機能層15の構成は、これに限定されず、より効率的に発光を促すための中間層や電子注入層を含んでいてもよく、公知の構成を採用することができる。
【0044】
走査線3aは、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路3に接続されている。また、データ線4aは、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路4に接続されている。
【0045】
走査線駆動回路3から走査線3aを経由してスイッチング用のTFT11に走査信号が送出されオン状態になると、データ線駆動回路4からデータ線4aを介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用のTFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、画素電極14が駆動用のTFT12を介して電源線3bに電気的に接続したとき(すなわちオン状態となったとき)、電源線3bから画素電極14に駆動電流が流れ、さらに有機機能層15を通じて共通電極16に電流が流れる。有機機能層15の発光層は、画素電極14と共通電極16との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0046】
前述した表示パネル10を駆動するドライバーIC6は、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4のうち少なくとも一方と、電源線3bへ電力を供給できる構成とを有するものである。例えば、走査線駆動回路3は、表示パネル10の表示領域9の短辺に沿った周辺領域に回路部の一部として形成することも可能である。その場合には、ドライバーIC6は、上記データ線駆動回路4の構成を含むものとすればよい。また、上記走査線駆動回路3および上記データ線駆動回路4を表示パネル10の内部に造り込めば、ドライバーIC6を不要とすることもできる。
【0047】
図9に示すように、表示パネル10は、基板1と基板2とが対向して配置され、シール材80を介して接着され一体化されたものである。
【0048】
基板1上には複数の有機EL素子17が形成されている。有機EL素子17は、前述したように画素電極14と共通電極16とにより、例えば白色の光を発生する有機機能層15を挟持した構成を有する。複数の有機EL素子17を覆うように薄膜封止層74が形成されている。以降、説明上、有機EL素子17やこれを駆動するためのTFT11,12などの回路部が設けられた基板1を素子基板1と呼び、有機EL素子17が設けられた素子基板1を封着するように接着される基板2を封止基板2と呼ぶこととする。
【0049】
封止基板2は、透明なガラス基板やプラスチック基板を用いることができる。そして、有機EL素子17に対向する部分には、カラーフィルター層21が形成されている。カラーフィルター層21は、各色の発光画素7にそれぞれ対応して、赤色の着色層22R、緑色の着色層22G、青色の着色層22Bがマトリックス状に規則的(ストライプ方式)に配列された構成を有する。
また、カラーフィルター層21は、各着色層22R,22G,22Bを囲む領域に遮光層23を備えている。遮光層23は所謂ブラックマトリックス(BM)と呼ばれるものであって、実質的に画素7を区画するように封止基板2側に設けられている。遮光層23の材料としては、例えばCr(クロム)等を用いることができる。
また、カラーフィルター層21は、着色層22R,22G,22Bおよび遮光層23上を覆うオーバーコート層24と、オーバーコート層24上を覆う無機ガスバリア層25とを備えている。
【0050】
着色層22R,22G,22Bは、画素電極14上に形成された白色の有機機能層15に対向して平面的に重なるように配置されている。
着色層22R,22G,22Bの形成方法としては色材を含む感光性樹脂材料を塗布して、露光・現像することにより形成するフォトリソグラフィ法や、隔壁によって区画された膜形成領域に色材を含む液状体を塗布して乾燥させることにより形成する液状体塗布法などが挙げられる。
【0051】
オーバーコート層24は、例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料を用いて形成されており、表示領域9の内側から非表示領域(非発光領域)の周辺のシール材80の形成領域近傍まで延設されている。
無機ガスバリア層25は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0052】
素子基板1の有機EL素子17から発せられた光は、それぞれに対応する着色層22R,22G,22Bを透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察されるようになっている。
すなわち、表示パネル10は封止基板2側から発光が取り出されるトップエミッション構造となっている。
【0053】
有機EL素子17は、素子基板1上ではマトリックス状に規則的に配列され表示領域9を構成している。なお、有機EL素子17は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光が得られる3種類の有機材料を使い分けて3種類の有機EL素子、例えば赤色光を発生する有機EL素子、緑色光を発生する有機EL素子、青色光を発生する有機EL素子としても良い。
【0054】
素子基板1は、透明なガラス基板やプラスチック基板、あるいは不透明なステンレス板やアルミ板、シリコン基板等の導電性基板を用いることができる。
【0055】
本実施形態では、低温ポリシリコン技術を用いて周辺駆動回路内蔵型の表示パネル10を製造するので、素子基板1として耐熱性の高いガラス基板を用いている。
素子基板1の厚みは10μm以上100μm未満、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0056】
例えば、素子基板1の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。
【0057】
また、50μmよりも厚くなると、素子基板1上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子17を覆う有機緩衝層76や、封止基板2との間に充填される封止樹脂81等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子17を駆動制御するTFT12(TFT11)を圧迫する惧れがある。
【0058】
50μmよりも薄いガラス基板を用いた場合には、TFT12(TFT11)に加わる圧力をガラス基板が撓むことで緩和することができるが、ガラス基板の可撓性が低くなると、このような効果が得られにくくなり、駆動素子が破壊されたり、駆動素子の電気的特性が劣化してしまう惧れがある。
【0059】
発明者は、表示パネル10の厚みを極力薄くすることを鑑み、ガラス基板の厚みと発光欠陥の発生数との関係を検討した。そして、ガラス基板の厚みが20μm以上50μm以下である場合に、特に良好な機械的強度と電気的特性が得られることが明らかになった。
【0060】
すなわち、ガラス基板の厚みが20μmよりも薄い場合には、ディンプル等の影響による発光欠陥が多くなり、50μmよりも厚くなると、TFT12(TFT11)の破損や電気的特性の劣化が生じ、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られた。
【0061】
素子基板1上には、無機絶縁層71と樹脂平坦化層72とからなる回路層70が形成されている。無機絶縁層71は、例えば酸化珪素(SiO2)や窒化珪素(SiN)等の珪素化合物により形成されている。無機絶縁層71上には、有機EL素子17を駆動するためのTFT11,12、保持容量13、これらに繋がる走査線3a、電源線3b、データ線4aなどの回路部(図8参照)が形成されている。また、有機EL素子17の共通電極16に接続される配線19が形成されている。
【0062】
無機絶縁層71上には、Al(アルミニウム)合金等からなる金属反射層18が内装された樹脂平坦化層72が形成されている。樹脂平坦化層72は、絶縁性の樹脂材料、例えば感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
【0063】
樹脂平坦化層72上の金属反射層18と平面的に重なる領域には、有機EL素子17の画素電極14が形成されている。画素電極14は、正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。画素電極14は、樹脂平坦化層72および無機絶縁層71を貫通するコンタクトホール(図示省略)を介して、素子基板1上のTFT12に接続されている。
【0064】
樹脂平坦化層72上(回路層70上)には、有機EL素子17を区画するために、例えばアクリル樹脂等からなる絶縁性の隔壁層73が形成されている。隔壁層73は、画素電極14の上部を露出させる複数の開口部を有している。
【0065】
開口部と隔壁層73による凹凸形状に沿って、隔壁層73および画素電極14の上面を覆うように有機機能層15が形成されている。
【0066】
有機機能層15は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含むものである。有機機能層15は、発光層以外の層をも含む多層構造とすることも可能である。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層等、上記の再結合に寄与する層が挙げられる。
【0067】
有機機能層15の発光層としては、低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料が挙げられる。
【0068】
低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。
【0069】
これら低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料は、有機EL素子17の発する色の光(白色光)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。
【0070】
有機機能層15上には、有機機能層15をその凹凸形状に沿って覆うように、陰極としての共通電極16が形成されている。共通電極16は、例えば有機機能層15へ電子を注入し易くするための電子注入バッファー層と、電子注入バッファー層上に形成された電気抵抗の小さい導電層とを有する。
【0071】
電子注入バッファー層は、例えば、LiF(フッ化リチウム)やCa(カルシウム)、MgAg(マグネシウム‐銀合金)により形成されている。また、導電層は、例えばITOやAl等の金属により形成された電気抵抗の小さい導電層である。導電層は表示領域9の全面に形成されたものでなくても良く、例えば、MgとAgの合金からなる透明度の高い第1導電層を表示領域9の全面に形成し、Al等からなる低抵抗で透明度の低い第2導電層を補助電極として隔壁層73と重なる部分にストライプ状に形成しても良い。
【0072】
共通電極16は、表示領域9の全面を覆うと共に、表示領域9の周縁部(非表示領域)に形成されたAl等の無機導電膜からなる配線19と接続されている。配線19は、矩形に形成された表示領域9の3辺(図1に示した端子部1aが形成されていない辺)に沿って連続的に形成されている。
【0073】
また、共通電極16は、隔壁層73のうち、特に最外周を形成する部分、すなわち表示領域9の最外周に位置する有機機能層15の外側部を覆った状態でこれを囲む部分(以下、囲み部材ともいう)の回路層70上で露出する部位全体を覆って形成されている。これにより、共通電極16が、上記囲み部材と共に、表示領域9に設けられた複数の有機EL素子17の外側を封止している。特に、有機EL素子17は、無機絶縁層71上に形成され、共通電極16の外周部は無機絶縁層71と接触しているため、複数の有機EL素子17の底面、上面、側面の全てが無機膜で覆われることになり、高い封止性能が実現される。
【0074】
共通電極16上には、無機絶縁層71、樹脂平坦化層72および有機EL素子17の共通電極16を覆う薄膜封止層74が形成されている。薄膜封止層74は、共通電極16の回路層70上で露出する部位全体を覆って無機絶縁層71と接する電極保護層75と、電極保護層75の少なくとも表示領域9に形成された部分を覆う有機緩衝層(平坦化樹脂層)76と、有機緩衝層76の回路層70上で露出する部位全体を覆って、電極保護層75または無機絶縁層71と接する無機ガスバリア層77とを備えている。
【0075】
電極保護層75は、無機材料、例えば、酸化窒化シリコン(SiON)等の珪素化合物により構成されている。
【0076】
有機緩衝層76は、隔壁層73とその開口部による凹凸形状を埋めるように形成され、回路層70上の凹凸を平坦化している。また、無機ガスバリア層77に密着し、かつ機械的衝撃に対して緩衝機能を有する。有機緩衝層76を構成する材料としては、例えばエポキシ化合物等の透明性が高く、透湿性の低い樹脂を用いることができる。
【0077】
無機ガスバリア層77は、無機材料、特に、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えばSiON等により形成されている。
【0078】
薄膜封止層74は、共通電極16と共に、外部から有機EL素子17へ水分や酸素が浸入しないようにするための封止部材として機能する。薄膜封止層74のうち無機ガスバリア層77は、有機緩衝層76によって平坦化された面に形成されており、電極保護層75に比べて段差被覆性がよく、高い封止機能が得られる。特に、有機緩衝層76で機械的衝撃が緩和されるため、クラック等も生じにくく、長期にわたって優れた封止性能を維持することが可能である。
【0079】
また、無機ガスバリア層77は、直接又は無機膜である電極保護層75を介して無機絶縁層71と接しているため、無機ガスバリア層77と無機絶縁層71との界面から水分や酸素が浸入する惧れは少ない。そのため、同じく無機絶縁層71と接して形成される共通電極16と協働して極めて高い封止性能を実現することができる。
【0080】
素子基板1の薄膜封止層74が形成された面には、封止基板2が対向して配置されている。封止基板2は、シール材80を介して素子基板1上の薄膜封止層74と接着されている。
【0081】
本実施形態では、封止基板2による封止性能を良好にするために、プラスチック基板に比べて透湿性の低いガラス基板を用いている。この場合、封止基板2の厚みは10μm以上100μm未満、好ましくは20μm以上50μm以下である。
【0082】
素子基板1と封止基板2とがシール材80によって接着されたことにより生じた空間には、隙間なく封止樹脂81が充填されている。
【0083】
封止樹脂81は、素子基板1と封止基板2との間に設けられて薄膜封止層74の少なくとも表示領域9に対応する部位を覆うものである。封止樹脂81の材料としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂を用いることができる。
【0084】
シール材80は、素子基板1と封止基板2との間に、封止樹脂81を囲むように非表示領域に設けられたものである。シール材80の材料としては、水分透過率が低い材料、例えばエポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0085】
このような薄型の表示パネル10の製造方法、とりわけ素子基板1と封止基板2とをそれぞれの厚みが20μm以上50μm以下とする方法としては、当該厚みを有するガラス基板を用いてもよいが、ガラス基板の取り扱い上あるいはガラス基板上に各構成を形成する際に破損などのおそれがあるためあまり好ましくない。
そこで、例えば500μm程度の厚みのガラス基板を用い、素子基板1と封止基板2とを接合した後に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて所望の厚みまで研磨する方法やフッ酸などのエッチング溶液に浸漬してケミカルエッチングする方法を用いることが好ましい。
【0086】
このようにして得られた表示パネル10の総厚は、およそ150μm(0.15mm)以下となっている。また、上記の厚みにおいては、表示パネル10が可撓性を有しているので取り扱いにおいて割れが発生し難く、高い歩留まりで製造が可能である。
【0087】
本実施形態では、表示パネル10として自発光型の有機ELパネルを採用した。表示パネル10は有機EL素子17の発光に伴って発熱するため、背面側を支持する支持板33は、該発熱を放熱させる機能を持たせることが有効であるため、アルミニウムなど優れた熱伝導性を有する金属板を用いている。表示パネル10として受光型の表示デバイスを用いる場合には、発熱の心配がないので、支持板33を熱伝導性が低い絶縁材料を用いることもできる。
【0088】
図10は、表示装置としての計器における表示の1例を示す平面図である。図10に示すように、表示パネル10には、所定の表示パターンとして例えば速度を示す値や目盛りを指針30の回動範囲に沿った周辺領域に表示させる。速度単位(km/h)は、回動軸32aの上方に表示させる。一方、例えば車両などの速度検出結果を制御データとしてシステム制御回路41に入力すれば、指針30を速度検出結果に応じた位置に回転移動させ速度を指し示すことができる。さらに、表示領域9において指針30によるアナログ表示を邪魔し難い、例えば図中の右下の領域9aにおいて、「オイル交換の時期が近づきました」などの車両メンテナンス情報を表示したり、車両に取り付けたカメラが撮像した画像を表示させたりすることが可能となる。
【0089】
表示パネル10における所定の表示パターンはパラメーター(指標)を示すものであって、速度に限定されず、例えば車両におけるエンジンの回転数や燃料、オイルなどの残量を切り替えて表示させてもよい。すなわち、1つの表示装置100で複数のパラメーター(指標)を切り替えてアナログ表示することが可能となる。
【0090】
以上に述べた前記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0091】
(1)表示装置100は、総厚がおよそ0.15mmの表示パネル10を挟んで指針30側のローター31と誘導コイルLとが配置されている。したがって、エアギャップδを0.2mm以下とすることができ、誘導コイルLが発生させた誘導磁界により表示パネル10の表示面10aにおいて、指針30を所望の位置に回転移動させることができる。
すなわち、表示パネル10に指針30を回動させる回動軸を通す孔を設けなくても、表示パネル10における様々なデジタル表示と指針30によるアナログ表示とを駆使した高い視認性が得られる表示装置100を実現することができる。
(2)誘導コイルLは磁性体コアC0を有しているので、仮に電源が供給されない状態でも、指針30の永久磁石であるローター31により磁化して吸引され、表示面10aにおいて指針30を一時的に固定することができる。
【0092】
(第2実施形態)
<他の表示装置>
次に本実施形態の他の表示装置について図11および図12を参照して説明する。図11は第2実施形態の表示装置の構成を示す概略正面図、図12は図11のB−B’線で切った表示装置の構造を示す概略断面図である。
本実施形態の表示装置150は、第1実施形態の表示装置100に対して、時計の短針と長針にあたる複数の指示部を設けたものである。なお、第1実施形態の表示装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0093】
図11に示すように、表示装置150は、表示パネル10と、第1指示部としての短針130および第2指示部としての長針136とを備えている。短針130および長針136は、表示領域9のほぼ中央に設けられた支持部132によって回動可能な状態に軸支されている。短針130とこれを回動させる構成は、第1実施形態の指針30と同様な構成となっている。一方、長針136は、表示面側に設けられた磁界発生部としての永久磁石137を有している。表示パネル10の背面側には、誘導磁界発生部としての複数の誘導コイル138が支持部132を中心とした仮想円上に配置されている。
四角形の表示パネル10の端子部1aには、外部駆動回路との接続を図るための中継基板5が実装されている。中継基板5には表示パネル10を駆動するためのドライバーIC6が平面実装されている。
【0094】
図12に示すように、表示パネル10の表示面10a側には略円柱状の支持部132が立設しており、その円柱部分に短針130および長針136が順に取り付けられて、互いに邪魔されずに回動できるように軸支されている。短針130の表示面10a側には永久磁石からなるローター131が設けられている。長針136の先端側に近い座屈した部分の表示面10a側には磁界発生部としての永久磁石137が設けられている。
【0095】
ローター131は、第1実施形態の表示装置100におけるローター31と同様にドーナツ状であって、回動軸132a周りに磁極が反転して着磁化した一体型の永久磁石である。
【0096】
一方、長針136に取り付けられた永久磁石137は、回動軸132aの延在方向にN極とS極が分極したものでもよいし、回動軸132a周りに磁極が反転するように少なくとも2つの永久磁石を一体化したものでもよい。
【0097】
表示パネル10の背面側には、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する金属材料からなる支持板133が設けられている。支持板133は回動軸132aを中心とする第1の孔133aと、第1の孔133aと同心円上に設けられた複数の第2の孔133bを有している。
【0098】
回路基板134には、誘導磁界発生部としての誘導コイル138,139がそれぞれ同心円上に複数配置されている。回動軸132aに対して近い側に設けられた誘導コイル139が支持板133の第1の孔133aに、回動軸132aに対して遠い側に設けられた誘導コイル138が第2の孔133bに収まるように、回路基板134は支持板133に接着剤135を用いて接着固定されている。
表示パネル10を背面側から支持する支持板133に回路基板134が上記のように取り付けられることにより、短針130のローター131と誘導コイル139とが表示パネル10を挟んで所定の間隔で対向配置される。また、長針136の永久磁石137と誘導コイル138とが表示パネル10を挟んで所定の間隔で対向配置される。該所定の間隔は、第1実施形態で説明したエアギャップδであって、0.2mm以下の間隔となっている。表示面10aとローター131および永久磁石137との間には同じ距離の隙間が生ずるように支持部132において短針130と長針136とが軸支されている。
【0099】
同心円上に配置された複数の誘導コイル138,139には、それぞれ独立してモーター駆動電流が印加される構成となっている。したがって、発生した誘導磁界によって短針130と長針136とを独立して回動させることができる。なお、誘導コイル138,139はそれぞれ磁性体コアを有するものである。
【0100】
図11に示すように、表示パネル10は、支持部132を中心とする円上に時刻を示す文字(アラビア数字、ローマ数字、漢字)や目盛りを常態表示し、短針130と長針136とにより時刻をアナログ表示できる。また、表示領域9全体に亘って背景となる画像などをデジタル表示することができる。
【0101】
なお、第1実施形態でも説明したように、支持部132は、表示面10aに対して接着固定してもよいし、粘着剤等を用いて着脱可能な状態で固定してもよい。
【0102】
以上に述べた前記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0103】
(1)表示装置150は、短針130と長針136とにより「時」および「分」のアナログ表示を可能とすると共に、表示パネル10に背景としてのデジタル表示を行うことができる。
言い換えれば、それぞれ独立して回動を制御可能な複数の指示部を有することによって、二つのパラメーター(指標)を同時にアナログ表示することができる。
【0104】
(第3実施形態)
<電子機器>
次に本実施形態の電子機器について、図13を参照して説明する。図13は電子機器としてのフォトビューワーを示す概略斜視図である。
【0105】
図13に示すように、フォトビューワー300は、表示部を有する本体301と、本体301を背面側から支持する支持部302とを有している。表示部には、上記第2実施形態の表示装置150が搭載されている。
【0106】
本体301は、内部に記憶部を有すると共に、写真などの画像データを記憶部に取り込み可能な構成(例えば、メモリーカードスロットなど)を有している(図示省略)。
【0107】
支持部302は本体301に対して一方の端が軸支されており、支持部302を回動して所定の角度まで広げることによって、本体301の表示部をテーブルなどの平面に対して傾斜させて配置することができる。また、本体301の背面側に支持部302を収納することもできる。
【0108】
表示部には表示装置150が搭載されているので、時刻をアナログ表示する一方で、背景として写真などの画像データをデジタル表示することができる。
【0109】
なお、表示部における常態表示のパラメーターは、時刻に限らず、温度と湿度を表すようにして、本体301に温湿度を検知可能な構成を備えてもよい。
【0110】
上記第2実施形態の表示装置150や上記第1実施形態の表示装置100を搭載可能な電子機器は、フォトビューワー300に限定されない。例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、ゲーム機器、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体等が挙げられる。
【0111】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0112】
(変形例1)第1実施形態において、誘導磁界発生部としての誘導コイルLの回路基板34上における平面的な配置は、仮想円上に配置することに限定されない。図14(a)〜(c)は変形例の磁界発生部と誘導磁界発生部との相対的な位置関係を示す概略平面図である。
例えば、図14(a)に示すように、誘導磁界発生部としての誘導コイルLを仮想直線上に複数配置し、複数の誘導コイルLのうち少なくとも1つに表示パネルを挟んで永久磁石Mを有する指示部を対向配置する。誘導コイルLごとにモーター駆動電流をタイミングをずらして印加すれば、仮想直線上において指示部を動かすことができる。所謂電磁アクチュエーターとしてのリニアモーターの構成を表示装置に取り入れられる。
図14(b)に示すように、上記リニアモーターの構成は、仮想直線に限らず、仮想円弧上に複数の誘導コイルLを配置してもよい。
また、1つの表示装置に図14(a)や(b)に示したリニアモーターの構成を両方とも備えるとしてもよい。あるいは、それぞれを複数備える構成としてもよい。アナログ表示を行いたいパラメーターに応じて高い視認性が得られる誘導磁界発生部の配置を設定できる。
さらには、図14(c)のように表示パネルの画素の配置と同様にマトリックス状に複数の誘導コイルLを配置する。永久磁石Mを備えた指示部は、数値などで規定されるパラメーターを示すことに限定されず、表示パネルの表示面における平面的な位置を示すとしてもよい。指示部の形状は先端が細くなった指針に限らず、例えば星型やキャラクターなどの形状としてスクロールゲームのデジタル表示上において、キャラクターなどの位置をアナログ表示することができる。ゲームに立体感を持たせることが可能となる。
【0113】
(変形例2)第1実施形態において、誘導コイルLは磁性体コアC0を有することに限定されない。磁性体コアC0を排除して誘導コイルLの構成を簡素化してもよい。
【0114】
(変形例3)第1実施形態において、誘導磁界発生部は誘導コイルLに限定されない。図15(a)は変形例の表示装置の構造を示す概略断面図、同図(b)は永久磁石の着磁状態を示す平面図である。例えば、図15(a)に示すように、変形例の表示装置200は、アルミニウムなどの放熱部材からなる固定板210と、固定板210上に設けられた表示パネル10と、表示パネル10の表示面10a上に設けられた支持部32と、支持部32によって軸支された指針30とを有する。指針30における表示面10aに対向する側には永久磁石からなるローター31が設けられている。表示パネル10および固定板210を挟んで、ローター31と対向する位置に、永久磁石204が設けられている。永久磁石204は、モーター201の回転軸202に取り付けられたヨーク203上に配置されている。モーター201はモーター固定板205に取り付けられており、モーター固定板205には、ヨーク203の外周に設けられた突出部203aを所定の回転角度で係止させるストッパー206が設けられている。
ローター31と永久磁石204とは、互いに発生する磁界(破線で表示)が表示パネル10と固定板210とを透磁して吸引または反発し合う所定の間隔を置いて対向配置されている。
図15(b)に示すように、モーター201によって回転可能に取り付けられた永久磁石204は、円形であって、N極とS極とが例えば2つずつ交互に着磁されている。このような変形例の表示装置200によれば、誘導磁界発生部を永久磁石204として当該永久磁石204を回転運動させるモーター201(アクチュエーター)の構成を有しているので、上記第1実施形態と同様に指針30を回動させることができる。
【0115】
(変形例4)第1実施形態の表示パネル10は、デジタル表示されるものに限定されない。例えば、複数の画素によるデジタル表示と、アナログ的な所望のパターン形状の画素とを組み合わせたものでもよいし、アナログ的な様々なパラーン形状の画素を有するものでもよい。指示部によるアナログ的かつ立体的な表示と組み合わせて、より視認性を高められる。
【符号の説明】
【0116】
10…表示パネル、10a…表示面、30…指示部としての指針、31…磁界発生部としての永久磁石からなるローター、32…支持部、100…表示装置、130…第1指示部としての短針、132…支持部、136…第2指示部としての長針、137…永久磁石、138,139…誘導磁界発生部としての誘導コイル、150…表示装置、300…電子機器としてのフォトビューワー、C0…磁性体コア、L…誘導磁界発生部としての誘導コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
指示部と、
前記指示部に設けられた磁界発生部と、
前記表示パネルの表示面の反対側に所定の方向に沿って設けられた複数の誘導磁界発生部とを備え、
前記指示部は、前記磁界発生部が前記複数の誘導磁界発生部のうちの少なくとも1つに対して前記表示パネルを挟んで対向するように配置され、
前記表示パネルを挟んだ前記磁界発生部と前記誘導磁界発生部との間隔は、前記磁界発生部が発生させる磁界と前記誘導磁界発生部が発生させる誘導磁界とが互いに反発または吸引し合うことによって前記指示部が前記所定の方向に移動可能な距離となっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示パネルを挟んだ前記磁界発生部と前記誘導磁界発生部との間隔が、0.2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の誘導磁界発生部は、仮想直線上または仮想曲線上に沿って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示面には、前記指示部を回動可能に軸支する支持部を備え、
前記支持部周りに磁極が互いに反転するように複数の前記磁界発生部が配置され、
前記複数の前記磁界発生部に対して前記表示パネルを挟んで対向するように前記複数の誘導磁界発生部が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記支持部に軸支され回動可能な第1指示部と第2指示部とを有し、
前記第1指示部と前記第2指示部とにおいて、前記複数の前記磁界発生部は、前記支持部を中心とする同心円上に沿って配置されていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記磁界発生部が永久磁石であり、
前記誘導磁界発生部が誘導コイルであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記誘導コイルは磁性体コアを有することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示パネルにおける表示がデジタル表示であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−122865(P2011−122865A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279196(P2009−279196)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】