説明

表示装置の製造方法および表示装置

【課題】有機層の厚みのばらつきに起因する視野角特性の悪化、または輝度あるいは色度のムラを抑えることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供する。
【解決手段】赤色有機層16Rを、(2L)/λ+Φ/(2π)=mを満たす理論値Lの厚みで形成し、その厚みLdを計測する。次いで、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bについて、各色ごとの理論値Lに、赤色有機層16Rの厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出する。続いて、その設定値Laの厚みで緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bを形成する。補正値aは、例えば、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みと理論値Lr,Lg,Lbとのずれ量ΔLr,ΔLg,ΔLbが、ΔLr/Lr=ΔLg/Lg=ΔLb/Lbを満たすように算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤,緑および青を含む複数色の有機発光素子を備えたフルカラー表示可能な表示装置の製造方法および表示装置に係り、特に共振器構造を有する有機発光素子を備えたものに好適な表示装置の製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、第1電極および第2電極の間に発光層を含む有機層を有し、第1電極と第2電極との間に直流電圧を印加すると発光層において正孔−電子再結合が起こり、光を発生するものである。このような有機発光素子を用いた表示装置では、製造工程上の原因により有機層の厚みが表示領域内で変動し、色度または輝度ムラの原因となってしまう場合がある。
【0003】
従来では、例えば特許文献1に記載されたように、有機層の厚みの変動によって生じる輝度ムラを、有機層の厚みの変動そのものを低減することによって解決しようとする提案がある。
【特許文献1】特開平11−339960号公報
【特許文献2】特開平9−190883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来方法は、原因そのものである有機層の厚みの変動を低減するという直接的で効果の高い方法であるが、そのための装置構成が複雑になり、製造コストの増大を招いてしまうという問題があった。特に、ガラス基板サイズを大きくする場合、有機層の厚み分布の低減が困難になり、生産性の低下やパネル特性の悪化のおそれがあった。
【0005】
また、有機発光素子では、発光層において発生した光を、第1電極と有機層との界面および第2電極と有機層との界面の間で多重反射により共振させる共振器構造を形成する場合がある。共振器構造における共振波長は、二つの界面の間の光路長(光学的距離)すなわち有機層の厚みによって決まり、有機層の厚みに対して極めて敏感な依存性を有する。そのため、有機層の厚み変動そのものを低減することにより色度または輝度ムラを抑えるという従来方法では、その厚み分布を非常に小さくする必要があり、上述した問題が更に顕著になってしまっていた。
【0006】
また、共振器構造により共振された光のスペクトルはピークが高く幅が狭くなる。そのため、表示画面に対して正面方向の光取り出し効率が向上する一方、画面を斜めから見た場合には、発光波長が大きくシフトしたり、発光強度が低下するという問題があった。すなわち、従来では、画面を視る角度により輝度の差異や色ずれが生じ、視野角特性の悪化または画像品位の低下などを招いてしまうという問題があった。
【0007】
更に、このような視野角特性の悪化の問題は、共振長のばらつき、すなわち、有機層の厚みのばらつきによっても生じてしまっていた。
【0008】
ちなみに、従来では、有機発光素子の視野角特性を改善するため、透明基板に凹面構造、光拡散層または光屈折層などを形成することにより、光の出射方向を拡散させ、光の指向性を平均化することで視野角の拡大を図ろうとする試みがある(例えば、特許文献2参照。)しかし、この方法では、透明基板に形成した凹面構造、光拡散層または光屈折層などにより、外光も散乱され、外光コントラストが著しく悪化してしまうという問題があった。また、新たに凹面構造、光拡散層または光屈折層などを設ける必要があり、コストアップの原因にもなっていた。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、有機層の厚みのばらつきに起因する視野角特性の悪化、または輝度あるいは色度のムラを抑えることができ、表示品質を向上させることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による表示装置の製造方法は、基板に第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を順に積層することにより複数の有機発光素子を形成すると共に、前記複数の有機発光素子として、赤色,緑色および青色を含む複数色の有機発光素子を形成するものであって、有機層を形成する工程は、以下の(A)〜(D)の工程を含むものである。
(A)複数色のうち第一色目の有機層を、理論値Lの厚みで形成する工程
(B)第一色目の有機層の厚みLdを計測する工程
(C)複数色のうち他の色の有機層について、各色ごとの理論値Lに、第一色目の有機層の厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出する工程
(D)他の色の有機層を設定値Laの厚みで形成する工程
【0011】
本発明による表示装置は、第1電極および第2電極の間に発光層を含む赤色有機層を有する赤色有機発光素子と、第1電極および第2電極の間に発光層を含む緑色有機層を有する緑色有機発光素子と、第1電極および第2電極の間に発光層を含む青色有機層を有する青色有機発光素子とを配列した表示領域を備え、緑色有機層または青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状は、赤色有機層を含む残り二色の有機層の表示領域内における厚み分布を緩和可能な形状であるものである。
【0012】
なお、本明細書における「厚み分布」とは、一つの有機発光素子内における厚み分布ではなく、表示領域(表示有効エリア)内における厚み分布をいう。
【0013】
本発明による表示装置では、表示領域内において赤,緑および青の各色有機層の厚み分布があり、この厚み分布に従って赤,緑および青の発光波長が表示領域内で変化している。よって、赤,緑および青の単色の色度または輝度に表示領域内で分布が生じていると共に、赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの色度または輝度にも表示領域内で分布が生じている。ここでは、緑色有機層または青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状が、赤色有機層を含む残り二色の有機層の表示領域内における厚み分布を緩和可能な形状とされているので、緑または青の単色の色度または輝度の分布は、残り二色の色度または輝度の分布と相殺されて、白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布が低減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表示装置の製造方法によれば、第一色目の有機層を、理論値Lの厚みで形成し、その厚みLdを計測したのち、他の色の有機層について、各色ごとの理論値Lに、第一色目の有機層の厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出し、その設定値Laの厚みで他の色の有機層を形成するようにしたので、第一色目の有機層の厚みの変動による影響を、他の色の有機層の厚み調整により緩和することが可能となる。よって、有機層の厚みの変動に起因する視野角特性の悪化を抑えることができ、特に赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの視野角特性の悪化を抑え、表示品質を高めることができる。
【0015】
本発明の表示装置によれば、緑色有機層または青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状を、赤色有機層を含む残り二色の有機層の表示領域内における厚み分布を緩和可能な形状とするようにしたので、赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布を低減することができる。よって、特に人間の視覚特性上視認されやすい白色または中間色の色度または輝度ムラを抑え、表示品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板11の上に、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されると共に、この表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されたものである。
【0018】
表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極15の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
図3は、表示領域110の平面構成の一例を表したものである。表示領域110には、赤色の光を発生する赤色有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する緑色有機発光素子10Gと、青色の光を発生する青色有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に形成されている。なお、隣り合う赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10B(以下、「有機発光素子10R,10G,10B」と総称する。)の組み合わせが一つの画素(ピクセル)10を構成している。
【0021】
図4は図3に示した有機発光素子10R,10G,10Bの断面構成を表すものである。有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1、平坦化絶縁膜13、陽極としての第1電極14、電極間絶縁膜15、後述する発光層16CR,16CG,16CBを含む赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16B、および陰極としての第2電極17がこの順に積層された構成を有している。
【0022】
このような有機発光素子10R,10G,10Bは、窒化ケイ素(SiNx )などの保護膜30により被覆され、更にこの保護膜30上に接着層40を間にしてガラスなどよりなる封止用基板50が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。
【0023】
駆動トランジスタTr1は、平坦化絶縁膜13に設けられた接続孔13Aを介して第1電極15に電気的に接続されている。
【0024】
平坦化絶縁膜13は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、微細な接続孔13Aが形成されるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化絶縁膜13の構成材料としては、例えば、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料が挙げられる。
【0025】
第1電極14は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。第1電極14は、例えば積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が100nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。
【0026】
電極間絶縁膜15は、第1電極14と第2電極17との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば感光性樹脂により構成されている。電極間絶縁膜15には、発光領域に対応して開口部が設けられている。なお、有機層16および第2電極17は、開口部だけでなく電極間絶縁膜15の上にも設けられているが、発光が生じるのは電極間絶縁膜15の開口部だけである。
【0027】
赤色有機層16Rは、例えば、第1電極14の側から順に、正孔注入層16AR,正孔輸送層16BR,発光層16CRおよび電子輸送層16DRを積層した構成を有する。緑色有機層16Gは、例えば、第1電極14の側から順に、正孔注入層16AG,正孔輸送層16BG,発光層16CGおよび電子輸送層16DGを積層した構成を有する。青色有機層16Bは、例えば、第1電極14の側から順に、正孔注入層16AB,正孔輸送層16BB,発光層16CBおよび電子輸送層16DBを積層した構成を有する。これらのうち発光層16CR,16CG,16CB以外の層は必要に応じて設ければよい。また、赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bは、それぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層16AR,16AG,16ABは、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層16BR,16BG,16BBは、発光層16CR,16CG,16CBへの正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層16CR,16CG,16CBは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層16DR,16DG,16DBは、発光層16CR,16CG,16CBへの電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層16Dと第2電極17との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0028】
赤色有機層16Rの正孔注入層16ARは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)により構成されている。赤色有機層16Rの正孔輸送層16BRは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。赤色有機層16Rの発光層18CRは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものにより構成されている。赤色有機層16Rの電子輸送層16DRは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0029】
緑色有機層16Gの正孔注入層16AGは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。緑色有機層16Gの正孔輸送層16BGは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。緑色有機層16Gの発光層16CGは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものにより構成されている。緑色有機層16Gの電子輸送層16DGは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0030】
青色有機層16Bの正孔注入層16ABは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、m−MTDATAあるいは2−TNATAにより構成されている。青色有機層16Bの正孔輸送層16BBは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、α−NPDにより構成されている。青色有機層16Bの発光層18CBは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、スピロ6Φ(spiro6Φ)により構成されている。青色有機層16Bの電子輸送層16DBは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。
【0031】
第2電極17は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。
【0032】
第2電極17は、また、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、有機発光素子10R,10G,10Bは、第1電極14と赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bとの界面を第1端部P1、第2電極17と赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bとの界面を第2端部P2とし、赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bを共振部として、発光層16CR,16CG,16CBで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このように共振器構造を有するようにすれば、発光層16CR,16CG,16CBで発生した光が多重干渉を起こし、第2端部P2の側から取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、ピーク強度を高めることができる。すなわち、色純度を向上させ、発光効率を高めることができる。また、封止用基板50側から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタ51との組合せにより有機発光素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができる。
【0033】
そのためには、第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離Lは数1を満たすようにすることが好ましい。
【0034】
(数1)
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(式中、Lは第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離、Φは第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは第2端部P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLが正となる整数をそれぞれ表す。なお、数1においてLおよびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
【0035】
光学的距離Lは、具体的には、共振器の共振波長(取り出される光のスペクトルのピーク波長)と、第2端部P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長とを一致させ、光取り出し効率を高めるように決定される。
【0036】
また、光学的距離Lは、第1端部P1と第2端部P2との間に挟まれた赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの厚みに相当する。赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bは、表示領域110内において厚み分布を有する。この厚み分布は、後述する成膜プロセスに起因するものであり、上述したようにその厚み分布自体を小さくすることには限界がある。
【0037】
本実施の形態では、緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状は、赤色有機層16Rを含む残り二色の有機層の表示領域110内における厚み分布を緩和可能な形状である。これにより、この表示装置では、輝度または色度のムラを抑えて表示品質を向上させることができるようになっている。
【0038】
より好ましくは、緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状は、赤色有機層16Rを含む残り二色の有機層の表示領域110内における厚み分布を打消し可能な形状である。このようにすることにより、輝度または色度のムラを確実に抑えることができるからである。
【0039】
図5ないし図7は、赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状の例を表したものである。具体的には、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状と、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの有機層の表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状とは、設定厚みの線Lに関して対称であることが好ましい。なお、ここにいう「対称」とは必ずしも正確に設定厚みの線Lに関して対称である場合に限らず、ほぼ対称であればよい。
【0040】
例えば、図5に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状は、表示領域110の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状であり、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状は、表示領域110の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状である。
【0041】
この反対に、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGが凹形状、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBが凸形状であってもよい。
【0042】
また、緑色有機層16Gに代えて、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凸形状、赤色有機層16Rおよび緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DR,DGが凹形状であってもよい。
【0043】
更にその反対に、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凹形状、赤色有機層16Rおよび緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DR,DGが凸形状であってもよい。
【0044】
あるいは、例えば図6に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状は、表示領域110の左端から右端に向かって厚くなる右上がり形状であり、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状は、表示領域110の右端から左端に向かって厚くなる左上がり形状である。
【0045】
この反対に、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGが左上がり形状、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBが右上がり形状であってもよい。
【0046】
また、緑色有機層16Gに代えて、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが右上がり形状、赤色有機層16Rおよび緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DR,DGの形状が左上がり形状であってもよい。
【0047】
更にその反対に、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが左上がり形状、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DGが右上がり形状であってもよい。
【0048】
また、例えば図7に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状は、表示領域110の左部に極大値、右部に極小値を有する凸凹形状であり、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DRの形状は、表示領域110の左部に極小値、右部に極大値を有する凹凸形状である。
【0049】
この反対に、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGが凹凸形状、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBが凸凹形状であってもよい。
【0050】
また、緑色有機層16Gに代えて、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凸凹形状、赤色有機層16Rおよび緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DR,DGの形状が凹凸形状であってもよい。
【0051】
更にその反対に、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凹凸形状、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DGが凸凹形状であってもよい。
【0052】
図4に示した接着層40は、例えば熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。
【0053】
図4に示した封止用基板50は、有機発光素子10R,10G,10Bの第2電極17の側に位置しており、接着層40と共に有機発光素子10R,10G,10Bを封止するものであり、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板50には、例えば、カラーフィルタ51が設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0054】
カラーフィルタ51は、封止用基板50のどちら側の面に設けられてもよいが、有機発光素子10R,10G,10Bの側に設けられることが好ましい。カラーフィルタ51が表面に露出せず、接着層40により保護することができるからである。また、発光層16CR,16CG,16CBとカラーフィルタ51との間の距離が狭くなることにより、発光層16CR,16CG,16CBから出射した光が隣接する他の色のカラーフィルタ51に入射して混色を生じることを避けることができるからである。カラーフィルタ51は、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。
【0055】
赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0056】
更に、カラーフィルタ51における透過率の高い波長範囲と、共振器構造から取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止用基板50から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタ51を透過し、その他の波長の外光が有機発光素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
【0057】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0058】
まず、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成したのち、全面に感光性樹脂を塗布することにより平坦化絶縁膜13を形成し、露光および現像により平坦化絶縁膜13を所定の形状にパターニングすると共に接続孔13Aを形成し、焼成する。
【0059】
次いで、例えばスパッタ法により、上述した材料よりなる第1電極14を形成し、ウェットエッチングにより第1電極14を選択的に除去して各有機発光素子10R,10G,10Bごとに分離する。
【0060】
続いて、基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により発光領域に対応して開口部を設け、焼成することにより、電極間絶縁膜15を形成する。
【0061】
そののち、図8に示したように、ライン状蒸発源61上で基板11を一方向(矢印A方向)に進行させて、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる赤色有機層16Rの正孔注入層16AR,正孔輸送層16BR,発光層16CRおよび電子輸送層16DRを形成する。このライン状蒸発源61は、左部,中心部および右部の3分割のヒータ62L,62C,62Rおよび温度制御器(図示せず)を有しており、個別に温度制御が可能となっている。中心部の温度を左部および右部に対して相対的に高くすることにより、中心部の蒸発レートが左部および右部よりも高くなるので、赤色有機層16Rの表示領域110内における厚み分布DRを凸形状とすることができる。また、中心部の温度を左部および右部に対して相対的に低くすることにより、中心部の蒸発レートが左部および右部よりも低くなるので、赤色有機層16Rの表示領域110内における厚み分布DRを凹形状とすることができる。
【0062】
赤色有機層16Rを形成したのち、赤色有機層16Rと同様にして、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bを順次形成する。その際、ライン状蒸発源61の左部,中心部および右部の温度を、赤色有機層16Rの形成工程と同様に制御する。これにより、図5に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状を、例えば、表示領域110の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状とし、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状を、例えば、表示領域110の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状とする。
【0063】
青色有機層16Bを形成したのち、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる第2電極17を成膜し、図5に示したような有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。続いて、有機発光素子10R,10G,10Bの上に上述した材料よりなる保護膜30を形成する。
【0064】
また、例えば、上述した材料よりなる封止用基板50の上に、赤色フィルタの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタと同様にして、青色フィルタおよび緑色フィルタを順次形成する。
【0065】
そののち、保護膜30の上に、接着層40を形成し、この接着層40を間にして封止用基板50を貼り合わせる。その際、封止用基板50のカラーフィルタ51を形成した面を、有機発光素子10R,10G,10B側にして配置することが好ましい。以上により、図3ないし図5に示した表示装置が完成する。
【0066】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第1電極14と第2電極17との間で多重反射し、第2電極17,カラーフィルタ51および封止用基板50を透過して取り出される。
【0067】
このとき、表示領域110内においては、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚み分布DR,DG,DBがあり、この厚み分布DR,DG,DBに従って赤,緑および青の発光波長が表示領域110内で変化している。よって、赤,緑および青の単色の色度または輝度に表示領域110内で分布が生じていると共に、赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの色度または輝度にも表示領域110内で分布が生じている。ここで、本実施の形態では、例えば図5に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状は、例えば、表示領域110の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状とされ、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状は、例えば、表示領域110の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状とされているので、緑の単色の色度または輝度の分布は、赤および青の色度または輝度の分布と相殺されて、白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布が低減される。一般的に、人間の視覚特性上、赤,緑および青の飽和色よりも、白色または肌色といった中間色の色度または輝度ムラが視認されやすい。よって、白色または中間色の色度または輝度の分布が低減されることにより、視認される色度または輝度ムラが抑えられ、その結果、表示品質が向上する。
【0068】
表1は、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚み分布DR,DG,DBの形状の八つの組合せ(No.1〜No.8)について、表示領域110の中心部および端部の白色色差Δu’v’および輝度比Y(端部)/Y(中心部)のシミュレーション結果を表すものである。表1では、(青,緑,赤)=(凸,凹,凹),(凹,凸,凹),(凸,凹,凸),(凹,凸,凸)の四つの場合(No.2,3,5,6)のみ白色色差および輝度比が小さくなっている。
【0069】
【表1】

【0070】
なお、シミュレーションでは、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定厚みをそれぞれ196nm,100nm,120nmとし、厚み分布DR,DG,DBは、設定厚みに対して表示領域110の中心部と端部とで±2%となるように設定した。従って、厚み分布DR,DG,DBの形状は、設定厚みに対して中心部が98%、端部が102%となる凹形状と、中心部が102%、端部が98%となる凸形状との2種類がある。
【0071】
表示領域110の中心部および端部の白色色差Δu’v’および輝度比Y(端部)/Y(中心部)の計算は、次のようにして行った。赤,緑および青の各色について、各有機発光素子10R,10G,10Bの構成材料のnk値および厚みから、共振器フィルターのスペクトルを計算した。この際、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みを上述した厚み分布DR,DG,DBの形状に対応した値で形成し、厚み分布DR,DG,DBの各点での共振器フィルターを計算することができる。得られた共振器フィルターのスペクトルに、干渉効果を含まない発光層16CR,16CG,16CB内部のスペクトルを掛け合わせ、更にカラーフィルタ51の透過率を掛け合わせることにより、表示装置の外部に取り出される発光スペクトルが得られる。厚み分布DR,DG,DBを構成する各点の赤,緑および青の発光スペクトルから、各点の色度および輝度を計算する。表示領域110の中心部でホワイトバランスの調整を行い、表示領域110の各位置での白色色度および輝度から、表示領域110の中心部と端部の白色色差Δu’v’および輝度比Y(端部)/Y(中心部)を計算した。
【0072】
表2は、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定厚みをそれぞれ196nm,245nm,290nmとしたことを除いては、表1と同様にしてシミュレーションを行った結果を表したものである。表2では、表1と同様に、(青,緑,赤)=(凸,凹,凹),(凹,凸,凹),(凸,凹,凸),(凹,凸,凸)の四つの場合(No.2,3,5,6)のみ白色色差および輝度比が小さくなっている。
【0073】
【表2】

【0074】
以上の結果を、図9を参照して更に説明する。図9は、表1に示した八つの組合せ(No.1〜No.8)のそれぞれに対応した色度変化を表したものである。位置0mmが図9の(0,0)に対応し、位置300mm、−300mmはそれぞれのプロットの端部に対応する。青と緑の厚み分布DG,DBの形状が同一、すなわち(青,緑)=(凸,凸),(凹,凹)であるNo.1,4,5,8の場合、中心部からの色差Δu’v’は直線的に大きくなる。青と緑の厚み分布DG,DBの形状が異なる、すなわち(青,緑)=(凸,凹),(凹,凸)であるNo.2,3,6,7の場合、中心部からの色差Δu’v’は曲線的になり、小さくなる。輝度比Y(端部)/Y(中心部)は、緑および青の変化に大きく依存するので、緑および青が同形状の厚み分布DG,DBを持つ(青,緑)=(凸,凸),(凹,凹)の場合(No.1,4,5,8)に大きくなり、緑および青が異なる形状の厚み分布DG,DBを持つ(緑,青)=(凸,凹),(凹,凸)の場合(No.2,3,6,7)には相殺して小さくなる。
【0075】
すなわち、緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状を、赤色有機層16Rを含む残り二色の有機層の有機層の表示領域110内における厚み分布を緩和可能な形状とすれば、緑または青の単色の色度または輝度の分布を、残り二色の色度または輝度の分布と相殺し、白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布を低減することができることが分かる。
【0076】
表3は、図6に示したような斜めの厚み分布DR,DG,DBの四つの組合せ(No.1〜No.4)について、表示領域110内の2点間で最大となる白色色差Δu’v’および輝度比Y(最小値)/Y(最大値)のシミュレーション結果を表すものである。表3では、(赤,緑,青)=(/,/,\),(/,\,/)の場合のみ白色色差および輝度比が小さくなっている。なお、3色すべてが中心に対して左右対称の組み合わせの場合は表3と同様の結果であるため、省略した。
【0077】
【表3】

【0078】
なお、シミュレーションでは、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定厚みをそれぞれ196nm,100nm,120nmとし、厚み分布DR,DG,DBは、設定厚みに対して表示領域110内の最厚点と最薄点とで±2%となるように設定した。従って、厚み分布DR,DG,DBの形状は、設定厚みに対して左側の最薄点が98%、右側の最厚点が102%となる右上がり形状(/)と、左側の最厚点が102%、右側の最薄点が98%となる左上がり形状(\)との2種類がある。
【0079】
すなわち、斜めの厚み分布とした場合も、凹凸分布の場合と同様に、緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状を、赤色有機層16Rを含む残り二色の有機層の有機層の表示領域110内における厚み分布を緩和可能な形状とすれば、緑または青の単色の色度または輝度の分布を、残り二色の色度または輝度の分布と相殺し、白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布を低減することができることが分かる。
【0080】
このように本実施の形態では、緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布の形状を、赤色有機層16Rを含む残り二色の有機層の有機層の表示領域110内における厚み分布を緩和可能な形状とするようにしたので、赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの色度または輝度の分布を低減することができる。よって、特に人間の視覚特性上視認されやすい白色または中間色の色度または輝度ムラを抑え、表示品質を向上させることができる。
【0081】
(第2の実施の形態)
図10は本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の製造方法の流れを表すものである。この製造方法は、第1の実施の形態で説明した製造方法とは赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bを形成する工程が異なるものである。なお、この製造方法は、第1の実施の形態に係る表示装置を製造する場合に限られるものではないが、理解を容易とするために、第1の実施の形態で示した図5に示したような緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGの形状は、表示領域110の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状であり、赤色有機層16Rおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DBの形状は、表示領域110の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状である表示装置を製造する場合について説明する。
【0082】
まず、第1の実施の形態と同様にして、基板11の上に画素駆動回路140,平坦化絶縁膜13,第1電極14および電極間絶縁膜15を形成する。
【0083】
次いで、第1の実施の形態と同様にして、図8に示した工程により、赤色有機層16Rを形成する(ステップS101)。その際、赤色有機層16Rは、数1により算出した理論値Lの厚みで形成するが、製造工程上の原因により、表示領域110内において厚み分布DRが生じ、この厚み分布DR自体を小さくすることには限界がある。
【0084】
続いて、例えば蒸着速度モニターを用いて、赤色有機層16Rの厚みLdを計測する(ステップS102)。また、蒸着速度モニターに代えて、光学干渉式の膜厚測定器(膜厚センサ)を用いれば、膜厚測定精度の向上が期待できる。
【0085】
そののち、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bについて、各色ごとの理論値Lに、赤色有機層16Rの厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出する(ステップS103)。
【0086】
例えば、赤色有機層16Rの厚みLdを計測した結果として、赤色有機層16Rの表示領域110内における厚み分布DRが凹形状になっていた場合には、図5に示したように、緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布DGが凸形状、青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凹形状となるように補正値aを算出し、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定値Laを算出する。これにより、本実施の形態では、第1の実施の形態で説明したような赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DG,DBを確実に形成することが可能となる。
【0087】
補正値aは、計測値Ldから理論値Lを引いたものであるから、以下の式で計算される。
a=Ld−L
緑色有機層16Gの表示領域110内における厚み分布が凸形状となるように、緑色有機層16Gの設定値Laは、補正値aの符号を反転して、La=L−aとする。青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DBが凹形状となるように、青色有機層16Bの設定値Laは、La=L+aとする。
【0088】
緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定値Laを算出したのち、基板11を搬送する速度を調整し(ステップS104)、緑色有機層16Gを設定値Laの厚みで形成する(ステップS105)。基板11の搬送速度を速くすると、基板11に蒸着される有機材料の厚みが薄くなり、基板11の搬送速度を遅くすると、基板11に蒸着される有機材料の厚みが厚くなる。なお、基板11の搬送速度に代えて、緑色有機層16Gの成膜レートを調整するようにしてもよい。
【0089】
緑色有機層16Gを形成したのち、基板11を搬送する速度を調整し(ステップS106)、青色有機層16Gを設定値Laの厚みで形成する(ステップS107)。なお、基板11の搬送速度に代えて、青色有機層16Bの成膜レートを調整するようにしてもよい。
【0090】
青色有機層16Bを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、第2電極17および保護膜30を形成し、この保護膜30の上に接着層40を形成し、この接着層40を間にして封止用基板50を貼り合わせる。以上により、図3ないし図5に示した表示装置が完成する。
【0091】
このように本実施の形態では、赤色有機層16Rを、理論値Lの厚みで形成し、その厚みLdを計測したのち、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bについて、各色ごとの理論値Lに、赤色有機層16Rの厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出し、その設定値Laの厚みで緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bを形成するようにしたので、第1の実施の形態のような赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの表示領域110内における厚み分布DR,DG,DBを確実に形成することが可能となる。よって、有機層の厚みの変動に起因する輝度または色度のムラを抑えることができ、特に赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色の輝度または色度のムラを抑え、表示品質を高めることができる。
【0092】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る表示装置について説明する。この表示装置は、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの変動を全色で同程度とするようにしたことを除いては、第1および第2の実施の形態と同様の構成を有している。よって、対応する構成要素には、同一の符号を付して説明する。
【0093】
なお、本実施の形態における「厚みの変動」とは、第1および第2の実施の形態にいう「厚み分布DR,DG,DB」とは異なり、一つの有機発光素子10R(または10G、10B)内における赤色有機層16R,緑色有機層16G,青色有機層16Bの厚みのばらつきをいう。
【0094】
赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの理論値Lは、数1を満たしている。また、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの理論値をそれぞれLr,Lg,Lbとし、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みLdと理論値Lとのずれ量ΔL(ΔL=Ld−L)をそれぞれΔLr,ΔLg,ΔLbとすると、数2を満たしている。これにより、この表示装置では、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みのばらつきに起因する視野角特性の悪化を抑え、表示品質を高めることができるようになっている。
【0095】
(数2)
ΔLr/Lr=ΔLg/Lg=ΔLb/Lb
【0096】
図11は、45度の色度視野角特性として、白色の0度と45度の色差Δu’v’を、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの各々の厚みに対して3次元プロットしたものである。例えば、製造工程で±2%のばらつきがある場合、赤色有機層16Rおよび緑色有機層16Gの厚みばらつきの範囲は、図11(D)の中央の正方形を含む立方体となる。
【0097】
図11から分かるように、色度視野角特性は、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの合計厚みに対するずれ比率が、赤,緑および青で同じになった場合に小さくなる。よって、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みLdと理論値Lとのずれ量ΔLr,ΔLg,ΔLbが、数2を満たすことにより、赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの厚みがばらついた場合にも視野角特性の悪化を抑制することが可能となる。なお、数2は、図11(D)における右上角と左下角との対角線に対応する。
【0098】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0099】
まず、第1の実施の形態と同様にして、基板11の上に画素駆動回路140,平坦化絶縁膜13,第1電極14および電極間絶縁膜15を形成する。
【0100】
次いで、第2の実施の形態と同様にして、赤色有機層16Rを、数1により算出した理論値Lrの厚みで形成し(図10;ステップS101)、蒸着速度モニターまたは膜厚センサを用いて、赤色有機層16Rの厚みLdを計測する(図10;ステップS102)。
【0101】
続いて、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bについて、各色ごとの理論値Lg,Lbに、赤色有機層16Rの厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値ag,abを加えることにより、各色ごとに設定値Lag,Labを算出する(図10;ステップS103)。
【0102】
具体的には、まず、赤色有機層16Rの厚みLdと理論値Lrとのずれ量ΔLr(ΔLr=Ld−Lr)を算出する。次いで、緑色有機層16Gについて、数1により算出した理論値Lgに、補正値agすなわち数2により算出した最適なずれ量ΔLgを加え、設定値Lag(Lag=Lg+ΔLg)を算出する。また、青色有機層16Bについて、数1により算出した理論値Lbに、補正値abすなわち数2により算出した最適なずれ量ΔLbを加え、設定値Lab(Lab=Lb+ΔLb)を算出する。
【0103】
数1により理論値Lr,Lg,Lbを算出する際には、数1におけるmを、すべての色で等しくすることが好ましい。次数mが高いほど視野角特性が悪化するので、次数mの高い色があるとその色によって視野角特性がほぼ決定されてしまう。そのため、数1におけるmをすべての色で等しくしたほうが、本実施の形態により視野角特性を制御しやすいからである。
【0104】
すなわち、m=0の場合は0次の共振条件となり視野角特性は良好であるが、理論値Lすなわち光学的距離が最小となるために、赤色有機層16R,緑色有機層16Gまたは青色有機層16Bの厚みが薄くなり、第1電極14と第2電極17とのショートにより非発光点(滅点)などの画素欠陥が生じるおそれがある。このような画素欠陥を低減するためには、例えばm=1の1次の共振条件を用いて理論値Lを大きくすることが好ましいが、m=0の場合に比べて共振フィルタのスペクトルが細くなるために、視野角特性は低下する。m=2の場合は更に視野角特性が悪化する。
【0105】
例えば、すべての色でm=1とした場合、赤色有機層16Rの厚みの理論値Lrは300nm、緑色有機層16Gの厚みの理論値Lgは250nm、青色有機層16Bの厚みの理論値Lbは196nmである。
【0106】
緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの設定値Lag,Labを算出したのち、基板11を搬送する速度を調整し(図10;ステップS104)、緑色有機層16Gを設定値Lagの厚みで形成する(図10;ステップS105)。基板11の搬送速度を速くすると、基板11に蒸着される有機材料の厚みが薄くなり、基板11の搬送速度を遅くすると、基板11に蒸着される有機材料の厚みが厚くなる。なお、基板11の搬送速度に代えて、緑色有機層16Gの成膜レートを調整するようにしてもよい。
【0107】
緑色有機層16Gを形成したのち、基板11を搬送する速度を調整し(図10;ステップS106)、青色有機層16Gを設定値Labの厚みで形成する(図10;ステップS107)。なお、基板11の搬送速度に代えて、青色有機層16Bの成膜レートを調整するようにしてもよい。
【0108】
なお、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bは、上述したような赤色,緑色,青色の順、または緑色,赤色,青色の順で形成することが好ましい。赤色または緑色は、青色に比べて、厚みのばらつきによる視野角特性が変化する感度が大きいからである。
【0109】
青色有機層16Bを形成したのち、第1の実施の形態と同様にして、第2電極17および保護膜30を形成し、この保護膜30の上に接着層40を形成し、この接着層40を間にして封止用基板50を貼り合わせる。以上により、図3ないし図5に示した表示装置が完成する。
【0110】
この表示装置では、各画素に対して第1の実施の形態で説明したように駆動制御がなされ、表示が行われる。ここでは、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みと理論値Lとのずれ量ΔLr,ΔLg,ΔLbが、数2を満たしているので、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの変動がすべての色で同程度となっている。よって、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの変動に起因する視野角特性の悪化が抑えられ、特に赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの視野角特性が向上する。
【0111】
このように本実施の形態では、赤色有機層16Rを、理論値Lの厚みで形成し、その厚みLdを計測したのち、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bについて、各色ごとの理論値Lに、赤色有機層16Rの厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出し、その設定値Laの厚みで緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bを形成するようにしたので、赤色有機層16Rの厚みの変動による影響を、緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚み調整により緩和することが可能となる。よって、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの変動に起因する視野角特性の悪化を抑えることができ、特に赤,緑および青の混色によって構成される白色または中間色を表示したときの視野角特性の悪化を抑え、表示品質を高めることができる。
【0112】
また、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みと理論値Lとのずれ量ΔLr,ΔLg,ΔLbが、数2を満たすようにしたので、赤色有機層16R,緑色有機層16Gおよび青色有機層16Bの厚みの変動を、すべての色で同程度とすることができ、より高い効果を得ることが可能となる。
【0113】
また、上記実施の形態では、第1色目の赤色有機層16Rの厚みを計測するようにしたが、第1色目および第2色目の厚みを計測し、その計測結果に基づいて第3色目の厚みを制御するようにしてもよい。
【0114】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0115】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図12に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板50および接着層40から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0116】
(適用例1)
図13は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0117】
(適用例2)
図14は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0118】
(適用例3)
図15は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0119】
(適用例4)
図16は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0120】
(適用例5)
図17は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0121】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10Bが共振器構造を有する場合について説明したが、本発明は、共振器構造を有しない有機発光素子を用いた表示装置にも適用可能である。
【0122】
また、上記実施の形態では、表示領域110に、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10G,青色有機発光素子10Bが順に全体としてマトリクス状に形成されている場合について説明したが、これらは必ずしも順に配列されていなければならないわけではなく、他の配列としてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態においては、基板11の上に、第1電極14,有機層16および第2電極17を基板11の側から順で積層し、封止用基板50の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、積層順序を逆にして、基板11の上に、第2電極17,有機層16および第1電極14を基板11の側から順に積層し、基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0124】
加えてまた、例えば、上記実施の形態では、第1電極14を陽極、第2電極17を陰極とする場合について説明したが、陽極および陰極を逆にして、第1電極14を陰極、第2電極17を陽極としてもよい。さらに、第1電極14を陰極、第2電極17を陽極とすると共に、基板11の上に、第2電極17,有機層16および第1電極14を基板11の側から順に積層し、基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0125】
更にまた、上記実施の形態では、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、第1電極14と有機層16との間に、酸化クロム(III)(Cr2 O3 ),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。また、例えば第1電極14は、誘電体多層膜とすることもできる。
【0126】
加えてまた、上記実施の形態では、第2電極17が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、第2電極17は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極14の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んで半透過性電極に対向する位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設けた上で、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10Bを保護膜30で覆うようにし、この保護膜30を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜30を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0127】
更にまた、本発明は、第2電極17を透明電極により構成すると共に、この透明電極の有機層16と反対側の界面の反射率が大きくなるように構成し、第1電極14と有機層16との界面を第1端部、透明電極の有機層と反対側の界面を第2端部とした共振器構造を構成した場合についても適用することができる。例えば、透明電極を大気層に接触させ、透明電極と大気層との境界面の反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。また、接着層との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。さらに、赤色有機発光素子10R,緑色有機発光素子10Gおよび青色有機発光素子10Bを保護膜30で覆い、この保護膜30との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。
【0128】
加えてまた、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0129】
更にまた、上記第3の実施の形態では、赤色,緑色および青色の三色フルカラー表示装置を例として説明したが、本発明は、白色、シアン色またはマゼンタ色等の中間色を加えた4色以上のフルカラー表示装置にも適用可能であり、これにより、色域をより広くすることができる。その場合、第一色目の有機層は、数1により算出する理論値Lの最も大きい色の有機層とすることが好ましい。理論値Lが大きい色は、理論値Lの小さい色に比べて、厚みのばらつきによる視野角特性が変化する感度が大きいからである。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【図4】図3に示した有機発光素子の構成を表す断面図である。
【図5】赤色有機層,緑色有機層および青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状の一例を表す図である。
【図6】赤色有機層,緑色有機層および青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状の他の例を表す図である。
【図7】赤色有機層,緑色有機層および青色有機層の表示領域内における厚み分布の形状の更に他の例を表す図である。
【図8】図5に示した赤色有機層を形成する工程を説明するための図である。
【図9】表1に示した八つの組合せ(No.1〜No.8)のそれぞれに対応した色度変化を表す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の製造方法の流れを表す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る表示装置の45度の色度視野角特性を表す図である。
【図12】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図13】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図14】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図15】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図16】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図17】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0131】
10…画素、10R…赤色有機発光素子、10G…緑色有機発光素子、10B…青色有機発光素子、11…基板、14…第1電極、15…電極間絶縁膜、16…有機層、16A…正孔注入層、16B…正孔輸送層、16CR…赤色発光層、16CG…緑色発光層、16CB…青色発光層、16D…電子輸送層、17…第2電極、30…保護膜、40…接着層、50…封止用基板、51…カラーフィルタ、P1…第1端部、P2…第2端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に第1電極、発光層を含む有機層および第2電極を順に積層することにより複数の有機発光素子を形成すると共に、前記複数の有機発光素子として、赤色,緑色および青色を含む複数色の有機発光素子を形成する表示装置の製造方法であって、
前記有機層を形成する工程は、
前記複数色のうち第一色目の有機層を、理論値Lの厚みで形成する工程と、
前記第一色目の有機層の厚みLdを計測する工程と、
前記複数色のうち他の色の有機層について、各色ごとの理論値Lに、前記第一色目の有機層の厚みLdの計測結果に基づいて各色ごとに算出した補正値aを加えることにより、各色ごとに設定値Laを算出する工程と、
前記他の色の有機層を設定値Laの厚みで形成する工程と
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記発光層で発生した光を、前記第1電極と前記有機層との界面および前記第2電極と前記有機層との界面の間で共振させる共振器構造を構成すると共に、
前記理論値Lを、数1により算出し、
前記補正値aを、前記有機層の厚みLdと理論値Lとのずれ量ΔL(ΔL=Ld−L)の理論値Lに対する比(ΔL/L)を、前記複数色のすべてで等しくするように算出する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
(数1)
2L/λ+Φ/(2π)=m
(式中、Lは前記第1電極と前記有機層との界面および前記第2電極と前記有機層との界面の間の光学的距離、Φは前記第1電極と前記有機層との界面で生じる反射光の位相シフトΦ1 および前記第2電極と前記有機層との界面で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは共振器構造から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mは整数をそれぞれ表す。)
【請求項3】
前記数1におけるmを、前記複数色のすべてで等しくする
ことを特徴とする請求項2記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第一色目の有機層を、理論値Lの最も大きい色の有機層とする
ことを特徴とする請求項2または3記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記有機発光素子として、前記第1電極および前記第2電極の間に発光層を含む赤色有機層を有する赤色有機発光素子と、前記第1電極および前記第2電極の間に発光層を含む緑色有機層を有する緑色有機発光素子と、前記第1電極および前記第2電極の間に発光層を含む青色有機層を有する青色有機発光素子とを形成し、
前記赤色有機層,前記緑色有機層および前記青色有機層の厚みの理論値をそれぞれLr,Lg,Lbとし、前記ずれ量をそれぞれΔLr,ΔLg,ΔLbとすると、数2を満たす
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
(数2)
ΔLr/Lr=ΔLg/Lg=ΔLb/Lb
【請求項6】
前記赤色有機層,前記緑色有機層および前記青色有機層を、赤色,緑色,青色の順、または緑色,赤色,青色の順で形成する
ことを特徴とする請求項5記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記基板を搬送する速度を調整することにより、前記他の色の有機層を前記設定値Laの厚みで形成する
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機層の成膜レートを調整することにより、前記他の色の有機層を前記設定値Laの厚みで形成する
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
第1電極および第2電極の間に発光層を含む赤色有機層を有する赤色有機発光素子と、前記第1電極および前記第2電極の間に発光層を含む緑色有機層を有する緑色有機発光素子と、前記第1電極および前記第2電極の間に発光層を含む青色有機層を有する青色有機発光素子とを配列した表示領域を備え、
前記緑色有機層または前記青色有機層の前記表示領域内における厚み分布の形状は、前記赤色有機層を含む残り二色の有機層の前記表示領域内における厚み分布を緩和可能な形状である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記緑色有機層または前記青色有機層の前記表示領域内における厚み分布の形状は、前記赤色有機層を含む残り二色の有機層の前記表示領域内における厚み分布を打消し可能な形状である
ことを特徴とする請求項9記載の表示装置。
【請求項11】
前記緑色有機層または前記青色有機層の前記表示領域内における厚み分布の形状と、前記赤色有機層を含む残り二色の有機層の前記表示領域内における厚み分布の形状とは、設定厚みの線に関して対称である
ことを特徴とする請求項9または10記載の表示装置。
【請求項12】
前記緑色有機層または前記青色有機層の厚み分布の形状は、前記表示領域の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状であり、
前記赤色有機層を含む残り二色の有機層の厚み分布の形状は、前記表示領域の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状である
ことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記緑色有機層または前記青色有機層の厚み分布の形状は、前記表示領域の中央付近で薄く周辺で厚い凹形状であり、
前記赤色有機層を含む残り二色の有機層の厚み分布の形状は、前記表示領域の中央付近で厚く周辺で薄い凸形状である
ことを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記赤色有機発光素子,前記緑色有機発光素子および前記青色有機発光素子は、前記発光層で発生した光を、前記第1電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面および前記第2電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面の間で共振させる共振器構造を有する
ことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
前記赤色有機層,前記緑色有機層および前記青色有機層の厚みの理論値Lが、数1を満たしており、
前記赤色有機層,前記緑色有機層および前記青色有機層の理論値LをそれぞれLr,Lg,Lbとし、前記赤色有機層,前記緑色有機層および前記青色有機層の厚みLdと理論値Lとのずれ量ΔL(ΔL=Ld−L)をそれぞれΔLr,ΔLg,ΔLbとすると、数2を満たす
ことを特徴とする請求項14記載の表示装置。
(数1)
2L/λ+Φ/(2π)=m
(式中、Lは前記第1電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面および前記第2電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面の間の光学的距離、Φは前記第1電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面で生じる反射光の位相シフトΦ1 および前記第2電極と前記赤色有機層,前記緑色有機層または前記青色有機層との界面で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは共振器構造から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mは整数をそれぞれ表す。)
(数2)
ΔLr/Lr=ΔLg/Lg=ΔLb/Lb

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−293962(P2008−293962A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105880(P2008−105880)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】