説明

表示装置の製造方法

【課題】樹脂硬化物による接合部分にダメージを与えることなく容易かつ確実にリペア作業を行いうる表示装置の製造技術を提供する。
【解決手段】本発明では、(a)表示部又は保護部の少なくとも一方に樹脂組成物を塗布する。(b)表示部と保護部とを樹脂組成物を介して密着させる。(c)保護部の外方から紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させることにより、表示部と保護部との間に樹脂硬化物層を介在させる。更に樹脂硬化物層の不具合に応じ、(d)保護部と表示部とが接合された樹脂硬化物層の側面側から当該樹脂硬化物層の厚さより径の小さいワイヤーを当接させて当該樹脂硬化物層内を移動させることにより表示部と保護部とを分離する。(e)分離された表示部及び保護部上に付着している樹脂硬化物を、有機溶剤を含有する除去用溶液によって剥離除去する。その後、(f)工程(a)〜(c)を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等に用いられる液晶表示装置(LCD)等の表示装置に関し、特に、表示部上に透明な保護部を設けた表示装置の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示装置としては、例えば図7に示すようなものが知られている。この図7に示すように、この液晶表示装置101は、液晶表示パネル102上に、例えば、ガラスやプラスチックスからなる透明な保護部103が設けられている。この場合、液晶表示パネル102表面及び偏光板(図示せず)を保護するため、保護部103との間にスペーサ104を介在させることによって液晶表示パネル102と保護部103との間に空隙105が設けられるようになっている。
【0003】
しかし、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105の存在により、光の散乱に起因するコントラストや輝度の低下、またパネルの薄型化の妨げとなっている。
このような問題に鑑み、液晶表示パネルと保護部との間の空隙に樹脂を充填することも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、このような表示パネルと保護部の間に充填した樹脂内に異物や気泡の混入が確認された場合には、表示パネルと保護部とを引き剥がしてリペアを行う必要がある。
しかし、表示パネルと保護部とを引き剥がす際に、これら表示パネルと保護部に傷が付いたり割れたりする等のダメージを与えるおそれがある。
【0005】
また、表示パネルと保護部に付着した樹脂硬化物を溶剤で完全に除去することは非常に困難である。
さらに、この種の樹脂硬化物に対して溶解性の高い溶剤は存在するが、安全性に難があり、しかも、当該溶剤そのものを完全に除去するためには、別の洗浄工程が必要になる。
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、樹脂硬化物による接合部分にダメージを与えることなく容易かつ確実にリペア作業を行いうる表示装置の製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためなされた本発明は、画像を表示する表示部と、当該表示部上に配置された透光性の保護部とを有し、前記表示部と前記保護部との間に透光性の樹脂硬化物層が介在する表示装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c)の後に、当該表示装置の不具合に応じて、更に以下の工程(d)〜(f)を有する表示装置の製造方法である。
(a)前記表示部又は前記保護部の少なくとも一方に、前記樹脂硬化物の原料である樹脂組成物を塗布する工程。
(b)前記表示部と前記保護部とを樹脂組成物を介して密着させる工程。
(c)前記保護部の外方から紫外線を照射して前記樹脂組成物を硬化させることにより、前記表示部と前記保護部との間に前記樹脂硬化物層を介在させる工程。
(d)前記保護部と前記表示部とが接合された前記樹脂硬化物層の側面側から当該樹脂硬化物層の厚さより径の小さいワイヤーを当接させて当該樹脂硬化物層内を移動させることにより、前記表示部と前記保護部とを分離する工程。
(e)分離された前記表示部及び前記保護部上に付着している樹脂硬化物を、有機溶剤を含有する除去用溶液によって剥離除去する工程。
(f)前記工程(a)〜(c)を繰り返す工程。
本発明では、前記発明において、前記樹脂硬化物層の弾性率が、1.0×105Pa未満である場合にも効果がある。
本発明では、前記発明において、前記有機溶剤は、硬化前の前記樹脂組成物と当該有機溶剤とを体積比で1:1で混合した場合に相溶するものから選択することもできる。
本発明では、前記発明において、前記除去用溶液が、有機溶剤としてリモネン又はトルエンを含有することもできる。
本発明では、前記発明において、前記除去用溶液が、有機溶剤として、リモネンに加えてエチルアルコール又はイソプロピルアルコールを含有することもできる。
本発明では、前記保護部が高分子材料からなる一方で、前記除去用溶液が有機溶剤としてリモネンを含有する場合も効果がある。
本発明では、前記発明において、前記表示装置が、前記表示部の表面に偏光板が設けられている液晶表示装置である場合も効果がある。
【0008】
本発明では、表示部と保護部とを樹脂硬化物層を介して接合させた後、不具合が発見された場合には、保護部と表示部とが接合された樹脂硬化物層の側面側から当該樹脂硬化物層の厚さより径の小さいワイヤーを当接させて当該樹脂硬化物層内を移動させることにより、表示部と保護部とを分離し、さらに、分離された表示部及び保護部上に付着している樹脂硬化物を、有機溶剤を含有する除去用溶液によって剥離除去することから、リペア作業の際に引き剥がすという手順を行わないので、表示部と保護部に傷が付いたり割れたりする等のダメージを与えることがない。
本発明において、樹脂硬化物層の弾性率が、1.0×105Pa未満である場合には、より円滑迅速に樹脂硬化物層を切断して表示部と保護部とを分離することができる。
本発明において、有機溶剤として、硬化前の樹脂組成物と当該有機溶剤とを体積比で1:1で混合した場合に相溶するものから選択することにより(例えば、リモネン又はトルエン)、分離された表示部及び保護部上に付着している樹脂硬化物を溶解させて円滑かつ確実に剥離することができる。
しかも、本発明において、除去用溶液として、有機溶剤としてリモネン又はトルエンを含有するものを用いた場合には、表示部の表面に設けられた偏光板に対して変質を与えることがない。
本発明において、除去用溶液が、有機溶剤であるリモネンに加えてエチルアルコール又はイソプロピルアルコールを含有するものを用いれば、樹脂硬化物の剥離性を向上させることができるとともに、除去用溶液の揮発性が高くなるので、作業効率を向上させることができる。
そして、このような本発明によれば、特に、表示部の表面に偏光板が設けられている液晶表示装置において、リペア作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように、本発明によれば、樹脂硬化物による接合部分にダメージを与えることなく容易かつ確実にリペア作業を行いうる表示装置の製造技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る表示装置の製造方法の例を示す流れ図、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)は、同表示装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【0011】
本実施の形態では、まず、図2(a)に示すように、例えば、表示部2の表面に、光硬化型樹脂組成物(以下適宜「樹脂組成物」「樹脂」などと称する。)を所定量滴下して、樹脂組成物層4を塗布形成する(ステップS1)。
本発明の場合、この樹脂組成物層4は、印刷法によって形成することも可能である。
【0012】
本明細書では、表示部2と保護部3との間の間隔を定めるためのスペーサは用いず、位置決め手段(図示せず)によって表示部2と保護部3との間隔を定める場合を例にとって説明するが、スペーサを用いる場合についても適用することができる。
【0013】
なお、液晶表示装置の場合は、表示部2上に偏光板(図示せず)が設けられている。一方、保護部3としては、例えば、透光性を有するガラス板、アクリル樹脂(例えば、PMMA:ポリメチルメタクリレート)等の高分子材料(プラスチック)からなる基板を好適に用いることができる。
【0014】
このような保護部3を水平に保持した状態で下降させ、図示しない位置決め昇降機構によって保護部3を所定の位置に固定して、図2(b)に示すように、表示部2と保護部3との間の空隙に当該樹脂組成物層4を配置充填する。
【0015】
本発明の場合、光硬化型樹脂組成物としては、硬化後において、透過率が90%以上、25℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以下、硬化収縮率が5%以下であるものを用いる。
【0016】
また、本発明の場合、特に限定されることはないが、濡れ拡がり速度、はみ出しにくさ(表面張力)観点からは、粘度が1000mPa・s〜5000mPa・sのものを用いることが好ましく、より好ましくは、2000mPa・s〜3000mPa・sである。
【0017】
具体的には、例えば、ポリウレタンアクリレート、イソボルニルアクリレート等の光反応性アクリレート材料と、光重合開始剤とを主剤とし、その他の添加剤、例えば増感剤、可塑剤、透明粒子等、本発明の目的の範囲で添加することが可能である。
【0018】
ここで、光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名IRGACURE(イルガキュア)184:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等を好適に用いることができる。
【0019】
なお、保護部3は、表示部2に対する紫外線保護の観点から紫外線領域をカットする機能が付与されている場合がある。その場合には、本発明で用いる光重合開始剤としては、可視光領域でも硬化できる光重合開始剤(例えば、商品名SpeedCure TPO:日本シイベルヘグナー(株)社製等)を用いることが好ましい。
【0020】
本発明における樹脂組成物は、それをUV照射により硬化させて得られる樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)を1×105Pa以下、好ましくは1×103〜1×105Paとし、樹脂硬化物の屈折率を好ましくは1.45以上1.55以下、より好ましくは1.51以上1.52以下とし、さらに、樹脂硬化物の厚さが100μmの場合の可視光領域の透過率を90%以上とするように調製したものである。樹脂組成物を構成する主要な樹脂成分としては共通でも、共に配合する樹脂成分あるいはモノマー成分等が異なると、それを硬化させた樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)が1×105Paを超える場合があるが、そのような樹脂硬化物となる樹脂組成物は、本発明に係る樹脂組成物には含まれない。
【0021】
また、この樹脂組成物は硬化収縮率が、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは0〜2%となるように調製したものである。そのため、樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力を低減させることができ、樹脂硬化物層5と表示部2又は保護部3との界面に歪みができることを防止できる。
【0022】
また、樹脂組成物を表示部2と保護部3との間に介在させ、その樹脂組成物を硬化させた場合に、樹脂硬化物層5と表示部2又は保護部3との界面で生じる光の散乱を低減させることができ、表示画像の輝度を高めるとともに、視認性を向上させることができる。
【0023】
なお、この樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力の程度は、樹脂組成物を平板上に滴下し、それを硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度によって評価することができる。例えば、樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル板上に滴下し、それをUV照射により90%以上の硬化率で硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度が6.0nm以下であれば、表示部と保護部との間に樹脂組成物を介在させ、それを硬化させた場合にそれらの界面に生じる歪みが実用上無視できるが、本発明の樹脂組成物によれば、この平均表面粗度を6.0nm以下、好ましくは5.0nm、より好ましくは1〜3nmにすることができる。ここで、ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。また、アクリル板としては、液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。これらのガラス板やアクリル板の平均表面粗度は、通常、1.0nm以下である。
【0024】
その後、図2(c)に示すように、樹脂組成物層4に対して、保護部3を介して紫外線UVを照射することにより樹脂を硬化させる(ステップS3)。
本発明の場合、特に限定されることはないが、樹脂の均一な硬化をより達成する観点からは、表示部2の保護部3の表面に対して直交する方向に紫外線の照射を行うことが好ましい。
【0025】
また、これと同時に、例えば光ファイバー等を用い、表示部2と保護部3の間の樹脂組成物層4に対し、樹脂組成物層4の外方側面側から紫外線を直接照射してもよい。
その後、表示部2と保護部3の間に充填された樹脂硬化物層5内に異物や気泡の混入の有無を検査する(ステップS4)。
そして、ステップS5において、検査の結果が良好である場合には、当該工程を終了する。
【0026】
一方、ステップS5において、表示部2と保護部3の間の樹脂硬化物層5内に異物や気泡の混入されている等の不具合があると確認された場合には、リペアを行う。
この場合、本発明では、図3(a)(b)に示すように、ワイヤ20を用いて樹脂硬化物層5を切断することにより、表示部2と保護部3とを分離させる(ステップS6)。
【0027】
図4及び図5は、本発明における樹脂硬化物層の切断方法の例を示す説明図である。
図4に示す例では、一対のプーリ10、11に架け渡されたワイヤ20を図中左右方向にスライドさせながら表示部2と保護部3間の樹脂硬化物層5をワイヤ20に押し当て、その状態でパネル1をワイヤ20と直交する方向に移動させることにより、樹脂硬化物層5を切断して表示部2と保護部3とを分離させる。
【0028】
一方、図5に示す例の場合は、一対の滑車を構成するように配置した複数のプーリ10〜13間にワイヤ20を架け渡し、さらに、プーリ10、11間のワイヤ20のたるみを吸収する引っ張りばね14、15を、滑車として移動するプーリ12、13にそれぞれ連結するように構成したものである。
【0029】
この例では、表示部2と保護部3間の樹脂硬化物層5をワイヤ20に押し当て、その状態でパネル1をワイヤ20と直交する方向に移動させることにより、樹脂硬化物層5を切断して表示部2と保護部3とを分離させる。
この場合、プーリ10、11間のワイヤ20のたるみは、引っ張りばね14、15の弾性力によって吸収され、プーリ10、11間のワイヤ20は常時張られた状態になる。
【0030】
本発明に用いるワイヤ20としては、炭素鋼によって作られた金属線(例えばピアノ線)等を好適に用いることができる。
ここで、ワイヤ20の太さは、表示部2と保護部3間の樹脂硬化物層5の厚さより細ければ特に限定されることはないが、切断性の観点からは、50μm〜100μmのものを用いることが好ましい。
このようにして表示部2と保護部3とを分離した後は、表示部2と保護部3の表面に残っている樹脂硬化物を、有機溶剤を含有する除去用溶液によって払拭除去する(ステップS7)。
【0031】
図6(a)〜(c)は、樹脂硬化物に対する有機溶剤による払拭方法を模式的に示す説明図である。
図6(a)(b)に示すように、表示部(例えばLCDセル)又は保護部(例えば、プラスチック板、ガラス板)上の樹脂組成物に対して紫外線を照射して硬化させた場合を考える。
【0032】
本発明では、図6(c)に示すように、後述する有機溶剤を含有する除去用溶液を樹脂硬化物上に例えば滴下やスプレー法によって塗布し、例えば5分間程度室温で放置して樹脂硬化物を含浸膨潤させる。
さらに、樹脂硬化物上に塗布した除去用溶液の有機溶剤と同一の溶剤を含浸させたエラストマー等からなるワイプ部材を用い、樹脂硬化物を払拭する。
【0033】
本発明の場合、除去用溶液に含有される有機溶剤としては、硬化する前の樹脂組成物と当該有機溶剤とを体積比で1:1で混合した場合に相溶するもの、すなわち、溶解パラメータ(SP値)が小さいものを好適に用いることができる。本発明では、特に当該溶解パラメータが9未満のものを好適に用いることができる。
【0034】
このような有機溶剤を含有する除去用溶液によれば、表示部2と保護部3の表面に残っている樹脂硬化物を完全に除去することができる。
その一方で、液晶表示装置の場合には、例えば表示部2上に設けられる偏光板(トリアセチルセルロースからなる)に対して変質等のダメージを与えない有機溶剤を用いることが好ましい。
【0035】
本発明では、以上の要件を満たす有機溶剤として、例えば、リモネン(C610、溶解パラメータ:0.6)、トルエン(C78、溶解パラメータ:8.8)を用いることが好ましい。
なお、本発明の除去用溶液には、払拭性、揮発性を向上させる観点から、エチルアルコール、イソプロピルアルコールを添加することができる。
これらのうち、安全性を向上させる観点からは、有機溶剤としてリモネンを用いることが好ましい。
【0036】
また、保護部2として高分子材料からなる基板(特にPMMA基板)を用いている場合には、有機溶剤としてリモネンを用いると、基板表面に変質を起こさず樹脂硬化物を払拭できることから好ましい。
なお、有機溶剤がリモネンである場合には、エチルアルコール、イソプロピルアルコールを添加することにより、払拭性、揮発性を向上させることができる。
【0037】
以上の払拭工程後、表示部2と保護部3の払拭表面を例えば、顕微鏡による外観変化観察によって検査し(ステップS8)、樹脂硬化物の残渣がなく、表面に変質が生じていない場合には、ステップS1に戻り、上述した最初の工程を繰り返す(ステップS9)。
一方、ステップS9において、表示部2と保護部3の表面において、樹脂の残渣が残っていたり、表面変質が生じている場合には、例えば不良品として処理する。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態の説明には限られず、種々の変更を行うことができる。
例えば、上述の実施の形態では、樹脂硬化物層5を切断する際にワイヤに対して表示装置側を移動させるようにしたが、本発明はこれに限られず、パネルに対してワイヤ側を移動させることも可能である。
さらにまた、本発明は、上述した液晶表示装置のみならず、例えば、有機EL装置等の種々のフラットパネルディスプレイに適用することができるものである。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔塗工液の調製〕
ポリイソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物70重量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート30重量部、2−ヒドロキシブチルメタクリレート10重量部、テルペン系水素添加樹脂30重量部、ブタジエン重合体140重量部、光重合開始剤4重量部、可視光領域用光重合開始剤0.5重量部を混練機にて混練して樹脂組成物を調製した。
【0041】
<本発明における樹脂硬化物の物性:参考例>
〔透過率、弾性率〕
上述した配合で調製した樹脂組成物を、保護部用の厚さ100μmの白色のガラス板上に滴下して、紫外線照射装置内のUVコンベアにて搬送し樹脂を硬化させた(樹脂硬化物の厚さ100μm)。
この樹脂硬化物について、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製 V−560)によって透過率を測定したところ、90%以上であった。
次に、この樹脂硬化物について、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製 DMS6100)を用いて弾性率(測定周波数1Hz、25℃)を測定したところ、1.0×104Paであった。
【0042】
〔硬化収縮率〕
さらに、硬化収縮率については、硬化前の樹脂液と硬化後の固体の比重を電子比重計(MIRAGE社製 SD−120L)を用いて測定し、両者の比重差に基づき以下の式より算出したところ、1.8%であった。

硬化収縮率(%)=(硬化物比重−樹脂液比重)/硬化物比重 ×100

〔表面粗度の測定〕
上述した樹脂組成物2mgをLCDセル用ガラス板に滴下し、紫外線照射による硬化反応の際に生ずる内部応力により発生するガラス板表面の所定領域(2.93mm×2.20mm)の歪み(Ra:平均表面粗度)を、Zygo(3次元非接触表面粗度測定計)にて測定したところ、2.7nmであった。
【0043】
本例の場合、樹脂硬化物は、弾性率が1×104Paであり、また、硬化収縮率は、1.8%であり、そのため、平均表面粗度Ra=2.7nmで歪みがほとんどない良好な結果が得られた。したがって、このような樹脂硬化物を表示部と保護部との間に配置充填させることにより、歪みのない表示装置を得ることができる。
【0044】
<実施例及び比較例>
上記図6(a)に示すように、上述した樹脂組成物を、上記保護部用ガラス板又はLCDセル用ガラス板上に塗布し、図6(b)に示すように、この樹脂組成物に対して紫外線を照射して硬化させた。
そして、図6(c)に示すように、有機溶剤として、リモネン、トルエン又はMEKを樹脂硬化物上に塗布し、5分間室温で放置した。
【0045】
さらに、樹脂硬化物上に塗布した有機溶剤と同一の溶剤を含浸させたワイプを用い、樹脂硬化物を払拭した。
その後、各サンプルの払拭性を顕微鏡による外観変化観察によって確認した。その結果を表1に示す。
ここでは、外観上問題なく払拭ができたものを○、外観上問題が生じたものを×とした。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、有機溶剤として、リモネン、トルエンを用いた場合には、外観上問題なく払拭を行うことができた。
一方、有機溶剤として、MEKを用いた場合には、払拭を完全に行うことができず、しかもLCDセル用ガラス板上の偏光板に変質が見られた。
【0048】
<実施例における払拭工程後の樹脂硬化物の物性>
〔樹脂硬化物払拭後の透過率、弾性率、硬化収縮率〕
払拭工程が終了した保護部用ガラス板上に、上記参考例と同一の条件で樹脂組成物を滴下して、同一の条件で硬化させた。
この樹脂硬化物について、上記参考例と同一の条件で透過率を測定したところ、上記参考例の場合と同等の結果(誤差範囲内)が得られた。
【0049】
次に、この樹脂硬化物について、上記参考例と同一の条件で弾性率を測定したところ、上記参考例の場合と同等の結果(誤差範囲内)が得られた。
さらに、上記参考例と同一の条件で硬化収縮率を測定・算出したところ、上記参考例の場合と同等の結果(誤差範囲内)が得られた。
【0050】
〔樹脂硬化物払拭後の表面粗度の測定〕
一方、払拭工程が終了したLCDセル用ガラス板に上記参考例と同一の条件で樹脂組成物を滴下し、上記参考例と同一の条件で表面の歪みを測定したところ、平均表面粗度Raが上記参考例の場合と同等の結果(誤差範囲内)となった。
以上のように、本実施例においては、リペアの前後において、透過率、弾性率、硬化収縮率、平均表面粗度が、いずれも変わらない結果が得られた。
【0051】
これらの結果から、本発明によれば、樹脂硬化物による接合部分にダメージを与えることなく容易かつ確実にリペア作業を行うことができ、これにより歪みのない表示装置を歩留まり良く得ることができることが理解される。
【0052】
<参考実施例>
〔塗工液の調製〕
ポリブタジエンアクリレート50重量部、ヒドロキシルエチルメタクリレート20重量部、光重合開始剤3重量部、可視光領域用光重合開始剤1重量部を混練機にて混練して参考実施例の樹脂組成物を調製した。
【0053】
〔透過率、弾性率、硬化収縮率〕
上述した配合で調製した樹脂組成物を、上述した保護部用のガラス板上に滴下して、同一の条件で硬化させた。
この樹脂硬化物について、上記実施例と同一の条件で透過率を測定したところ、90%以上であった。
次に、この樹脂硬化物について、上記実施例と同一の条件で弾性率を測定したところ、2.0×107Paであった。
さらに、上記実施例と同一の条件で硬化収縮率を測定・算出したところ、5.6%であった。
【0054】
〔表面粗度の測定〕
LCDセル用ガラス板に上記実施例と同一の条件で上記樹脂組成物を滴下し、上記実施例と同一の条件で表面の歪みを測定したところ、12.4nmであった。
本例の場合、樹脂硬化物は、弾性率が2×107Paであり、また、硬化収縮率は、5.6%であり、そのため、平均表面粗度Ra=12.4nmで歪みが上記実施例に比べて大きくなった。
一方、上述した樹脂組成物を、上記保護部用ガラス板又はLCDセル用ガラス板上に塗布し、この樹脂組成物に対して紫外線を照射して硬化させた。
【0055】
そして、有機溶剤として、リモネン又はトルエンを樹脂硬化物上に塗布し、5分間室温で放置した。
さらに、樹脂硬化物上に塗布した有機溶剤と同一の溶剤を含浸させたワイプを用い、樹脂硬化物を払拭した。
その後、各サンプルの払拭性を顕微鏡による外観変化観察によって確認したところ、払拭を完全に行うことができず、外観上問題が生じた。ただし、実用可能なレベルではあった。
以上の結果から、本発明では、樹脂硬化物の弾性率は、1×105Paを超えないことがより好ましいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る表示装置の製造方法の例を示す流れ図
【図2】(a)〜(c):同表示装置の製造方法を模式的に示す断面図
【図3】(a)〜(c):同表示装置の製造方法を模式的に示す断面図
【図4】本発明における樹脂硬化物層の切断方法の例を示す説明図
【図5】本発明における樹脂硬化物層の切断方法の他の例を示す説明図
【図6】樹脂硬化物の有機溶剤による払拭方法を模式的に示す説明図
【図7】従来の表示装置を構成を示す断面図
【符号の説明】
【0057】
2…表示部 3…保護部 5…樹脂硬化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示部と、当該表示部上に配置された透光性の保護部とを有し、前記表示部と前記保護部との間に透光性の樹脂硬化物層が介在する表示装置の製造方法であって、
以下の工程(a)〜(c)の後に、当該表示装置の不具合に応じて、更に以下の工程(d)〜(f)を有する表示装置の製造方法。
(a)前記表示部又は前記保護部の少なくとも一方に、前記樹脂硬化物の原料である樹脂組成物を塗布する工程。
(b)前記表示部と前記保護部とを樹脂組成物を介して密着させる工程。
(c)前記保護部の外方から紫外線を照射して前記樹脂組成物を硬化させることにより、前記表示部と前記保護部との間に前記樹脂硬化物層を介在させる工程。
(d)前記保護部と前記表示部とが接合された前記樹脂硬化物層の側面側から当該樹脂硬化物層の厚さより径の小さいワイヤーを当接させて当該樹脂硬化物層内を移動させることにより、前記表示部と前記保護部とを分離する工程。
(e)分離された前記表示部及び前記保護部上に付着している樹脂硬化物を、有機溶剤を含有する除去用溶液によって剥離除去する工程。
(f)前記工程(a)〜(c)を繰り返す工程。
【請求項2】
前記樹脂硬化物層の貯蔵弾性率が、1.0×105Pa未満である請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶剤は、硬化前の前記樹脂組成物と当該有機溶剤とを体積比で1:1で混合した場合に相溶するものから選択する請求項1又は2のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記除去用溶液は、有機溶剤としてリモネン又はトルエンを含有する請求項1又は2のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記除去用溶液は、有機溶剤として、リモネンに加えてエチルアルコール又はイソプロピルアルコールを含有する請求項4記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記保護部が高分子材料からなる一方で、前記除去用溶液が有機溶剤としてリモネンを含有する請求項1乃至5のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記表示装置が、前記表示部の表面に偏光板が設けられている液晶表示装置である請求項1乃至6のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186962(P2009−186962A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105109(P2008−105109)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】