説明

表示装置及びその製造方法

【課題】 表示装置及びその製造方法に関し、色バランスのズレが少ない高寿命なカラー表示装置を製造コストの増大なしに製造する。
【解決手段】 少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2の発光層7から順に形成していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置及びその製造方法に関するものであり、特に、表示装置を構成する異なった発光色で発光する有機エレクトロルミネッセント素子の輝度劣化の差による色バランスの崩れを低減するための構成に特徴のある表示装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセント素子を表示素子に用いたフルカラー表示装置の研究・開発が盛んに行われており、フルカラーの場合、赤(R)、緑(G)、青(B)からなる3つのサブピクセルより1つの画素を構成する手法が一般的に採用される。
【0003】
このフルカラー化を実現する手段としては、RGBにそれぞれ発光する有機エレクトロルミネッセント素子を独立に形成するRGB塗りわけ方式、白色発光有機エレクトロルミネッセント素子にRGBカラーフィルターを用いるカラーフィルター方式、青色発光有機エレクトロルミネッセント素子に青色を吸収し別の色を発光する色変換層を用いる色変換方式の3種類がある。
【0004】
以上の3種類の内で、最終的な発光効率が良い方式は、光吸収を利用しないRGB塗りわけ方式であり、構造も他の方式より容易であるために、有機エレクトロルミネッセント素子を用いたフルカラー表示装置においては、RGB塗りわけ方式を採用することが多い。
【0005】
このような有機エレクトロルミネッセント素子を用いたフルカラー表示装置の大きな課題としては、表示装置の寿命があり、この表示装置の寿命は、輝度減少と色バランスのズレという2つの観点から定義できる。
【0006】
上述のカラーフィルター方式或いは色変換方式では、それぞれ白色有機エレクトロルミネッセント素子のみ或いは青色発光有機エレクトロルミネッセント素子のみと1種類の有機エレクトロルミネッセント素子だけで良かったが、RGB塗りわけ方式では、RGBに対してそれぞれの発光色で発光する有機エレクトロルミネッセント素子が必要になる。
【0007】
そのために、RGBそれぞれの素子の寿命特性、即ち、輝度劣化が揃っていないと、表示装置としての色バランス(ホワイトバランス)が崩れやすく、RGB塗りわけ方式では、特に色バランスのズレの問題は大きくなる。
【0008】
この色バランスのズレを改善する方法としては、例えば、RGBを構成する各サブピクセルの開口率で調節する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−235891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この手法では、RGB毎に塗りわけ時のマスクが個別に必要であるため、素子の設計の変更時には開口率の設計変更が必要となり、その度に、新たなマスクが必要となり、製造コストの増大を招くという問題がある。
【0010】
したがって、本発明は、色バランスのズレが少ない高寿命なカラー表示装置を製造コストの増大なしに製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
なお、図における符号1は、ガラス基板等の基板である。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、表示装置の製造方法において、少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2の発光層7から順に形成していくことを特徴とする。
【0012】
本発明者は鋭意研究の結果、有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、正孔輸送層6成膜終了後から発光層7〜9を成膜開始するまでの時間(待ち時間)が素子の寿命特性に強い影響を与えることを発見した。
【0013】
即ち、待ち時間が短いと寿命特性は良くなり、待ち時間が長くなると寿命特性は悪化するため、寿命特性が悪い素子では、なるべく待ち時間を短くし、寿命特性が良い素子では、待ち時間を長くすることにより寿命特性を悪化させてRGB各素子の寿命特性を揃えることができ、それによって、表示装置の色バランスのズレを改善し、高寿命な表示装置を実現することができる。
【0014】
また、この手法では、RGB各素子の待ち時間を調節するだけで良いので、製造コストが増大することはない。
なお、この場合の輝度劣化とは、表示装置にて仕様条件の白色を連続的に表示した時に生じるRGB各素子での相対輝度減少量を意味する。
【0015】
また、この場合、正孔輸送層6の成膜後に成膜装置内に酸素或いは水の少なくとも一方を含む不純物ガスを導入することによって、正孔輸送層6のコンタミを加速して寿命特性が良い素子の待ち時間を短くしてもよく、それによって、スループットを向上することができる。
【0016】
特に、発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4が、赤、緑及び青に発光する3種類の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4から構成される場合には、現状の有機発光層材料の特性においては、青の発光層7、赤の発光層8、次いで、緑の発光層9の順で形成すれば良い。
【0017】
また、上述の製造方法によって表示装置を製造することによって、色バランスのズレが少ない高寿命なカラー表示装置を実現することができる。
【0018】
また、本発明は、発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4から形成された表示装置において、有機エレクトロルミネッセント素子2〜4は少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなるとともに、有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9の重なり部において、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2の発光層7から順に積層されていることを特徴とする。
【0019】
有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9の重なり部において、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2の発光層7から順に積層することによって、各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の寿命特性を揃えることができ、それによって、色バランスのズレを少なくすることができる。
【0020】
例えば、発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4が、赤、緑及び青に発光する3種類の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4からなる場合、有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9の重なり部において、青の発光層7上に赤及び緑の発光層8,9があり、且つ、赤の発光層8上に緑の発光層9があることになる。
【0021】
また、いずれの構成においても、各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を構成する陽極5と正孔輸送層6との間に正孔注入層を設けても良いし、或いは、各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を構成する発光層7〜9と陰極10との間に電子輸送層を設けても良く、さらには、陰極10と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。
【0022】
この場合の表示装置は単純マトリクス構造でも良いが、各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4に独立に駆動するためのアクティブ素子を設けてアクティブマトリクス型表示装置にしても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、RGB各素子の輝度劣化を揃えることが可能となり、色バランスの崩れが生じにくい表示装置を実現することができるとともに、成膜の順番を変更するだけで製造プロセス自体を変更する必要はないのでコスト増を招くことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ガラス基板等の透明絶縁性基板上にITO等の透明導電膜からなる陽極、正孔注入層及び正孔輸送層を順次形成したのち、シャドウマスクを用いて輝度劣化が一番大きいB素子の発光層/電子輸送層を所定の位置に形成し、次いで、B素子の輝度劣化と同程度になるように待ち時間を設定し、シャドウマスクを用いてR素子の発光層/電子輸送層を所定の位置に形成し、次いで、B素子の輝度劣化と同程度になるように待ち時間を設定し、シャドウマスクを用いて輝度劣化が一番少ないG素子の発光層/電子輸送層を所定の位置に形成したのち、Al等からなる陰極を形成するものである。
【実施例1】
【0025】
ここで、図2乃至図6を参照して、本発明の実施例1の有機EL素子を説明するが、まず、図2を参照して本発明の原理・現象を説明する。
図2参照
我々は研究の結果、有機EL素子を形成する際に、正孔輸送層成膜終了後から発光層を成膜開始するまでの時間(待ち時間)と素子の寿命特性(輝度半減時間)に図に示す強い相関関係があることを発見した。
【0026】
図から明らかなように、待ち時間が短いと寿命特性は良くなり、待ち時間が長くなると寿命特性は悪化する。
これは、待ち時間が長いと発光界面である発光層と正孔輸送層との界面つまり正孔輸送層表面に酸素や水等のコンタミが堆積されるためであり、この表面に堆積したコンタミの影響により素子寿命が悪化するからである。
【0027】
この現象を利用し、寿命特性が悪い素子では、なるべく待ち時間を短くし、寿命特性が良い素子では、待ち時間を長くすることにより、寿命特性を悪化させてRGB各素子の寿命特性を揃えることにより、表示装置の色バランスのズレを改善し、高寿命な表示装置が提供できる。
【0028】
次に、図3乃至図4を参照して本発明の実施例1のフルカラー表示装置の製造工程を説明する。
まず、ストライプ状にパターニングされた厚さが、例えば、150nmのITO陽極12が形成されたガラス基板11を超音波洗浄したのち、UVオゾン処理によってITO陽極12の表面を強制酸化する。
【0029】
次いで、成膜チャンバー内で、所定の開口部を有するシャドウマスク(図示を省略)を用いて熱抵抗加熱により厚さが、例えば、140nmの2TNATA(4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ) トリフェニルアミン) からなる正孔注入層13及び厚さが、例えば、10nmのα−NPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン) からなる正孔輸送層14を順次成膜する。
【0030】
次いで、所定の開口部を有するシャドウマスク(図示を省略)を用いて熱抵抗加熱により所定の位置に青色発光有機膜15を形成する。
なお、この場合の正孔輸送層14の形成後から青色発光有機膜15の形成開始までの待ち時間は5分であった。
【0031】
この青色発光有機膜15は、発光材料tbppy(1,3,6,8−テトラ4−ビフェニル)ピレン)をCBP(4,4′−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニール)に10%ドープした厚さが、例えば、20nmの青色発光層16、厚さが、例えば、10nmのBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinlato)−4−(phenyl−phenolato)−aluminium(III))からなる正孔ブロッキング層17、及び、厚さが、例えば、20nmのAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナート) アルミニウム)からなる電子輸送層18からなる。
【0032】
図4参照
次いで、青色発光有機膜15に隣接する所定の開口部を有するシャドウマスク(図示を省略)を用いて熱抵抗加熱により所定の位置に赤色発光有機膜19を形成する。
なお、この場合の正孔輸送層14の形成後から赤色発光有機膜19の形成開始までの待ち時間は20分とした。
【0033】
この赤色発光有機膜19は、発光材料DCJTB(4−dicyanomethylene−6−cp−julolidinostyryl−2−tert−butyly−4H−pyran)をAlq3に1%ドープした厚さが、例えば、30nmの赤色発光層20、及び、厚さが、例えば、30nmのAlq3からなる電子輸送層21からなる。
【0034】
次いで、赤色発光有機膜19に隣接する所定の開口部を有するシャドウマスク(図示を省略)を用いて熱抵抗加熱により所定の位置に緑色発光有機膜22を形成する。
なお、この場合の正孔輸送層14の形成後から緑色発光有機膜22の形成開始までの待ち時間は110分とした。
【0035】
この緑色発光有機膜22は、t(dta)py(1,3,6,8−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)ピレン)をAlq3に1%ドープした厚さが、例えば、30nmの緑色発光層23、及び、厚さが、例えば、20nmのAlq3からなる電子輸送層24からなる。
【0036】
次いで、シャドウマスク(図示を省略)を用いて厚さが、例えば、0.5nmのLiFからなる電子注入層25及び厚さが、例えば、200nmのAlからなる陰極26を陽極12と直交するようにストライプ状に成膜する。
【0037】
最後に、図示は省略するものの、乾燥窒素雰囲気下(例えば、露点温度−100℃)で、ゲッター材を入れて、UV接着剤を用いてガラスからなる封止板にて封止を行うことによって本発明の実施例1のフルカラー表示装置が完成する。
【0038】
図5参照
図5は、実施例1のフルカラー表示装置を連続白色表示した場合の輝度劣化特性の説明図であり、RGBの各素子の輝度劣化特性が非常に揃った状態となる。
【0039】
図6参照
図6は、実施例1のフルカラー表示装置の白色表示における色バランスの経時劣化の説明図であり、CIE表色系におけるx座標の変化Δx及びy座標の変化Δyのいずれの変化も1000時間経過した後も±1%以内であり、初期の白色色座標からのズレ|Δx|,|Δy|>1%を生じた時間を色バランスにおける表示装置の寿命とすると、寿命は1000時間以上となり大幅に改善された。
【0040】
ここで、実施例1のフルカラー表示装置における効果を説明するために、発光層/電子輸送層の形成順をB→R→GからR→G→Bとし、待ち時間をR6分、G25分、B45分とした以外は実施例1と同様にした比較例を作製した。
【0041】
図7参照
図7は、比較例のフルカラー表示装置を連続白色表示した場合の輝度劣化特性の説明図であり、B素子の輝度劣化特性が激しいことが分かる。
【0042】
図8参照
図8は、比較例のフルカラー表示装置の白色表示における色バランスの経時劣化の説明図であり、CIE表色系におけるy座標の変化Δyが非常に大きく、200時間経過後に1%を超え、色バランスにおける表示装置の寿命は約200時間となる。
【0043】
このように、比較例との対比から見て、色バランスにおける表示装置の寿命は5倍以上となり、各発光層の成膜順序を輝度劣化の大きいものから順に成膜することによる効果が確認された。
【実施例2】
【0044】
次に、図9を参照して本発明の実施例2のフルカラー表示装置の製造工程を説明する。 図9参照
まず、実施例1と全く同様に赤色発光有機膜19まで形成する。
【0045】
次いで、成膜チャンバー内に例えば、H2 Oを0.3%とO2 を0.1%含むArガス27を0.2sccmの流量で10分間流して露出している正孔輸送層14の表面の劣化を加速させる。
【0046】
次いで、正孔輸送層14の形成からの待ち時間が50分となった時点で、再び、実施例1と全く同様にG色発光有機膜22を形成したのち、シャドウマスク(図示を省略)を用いて厚さが、例えば、0.5nmのLiFからなる電子注入層25及び厚さが、例えば、200nmのAlからなる陰極26を陽極12と直交するようにストライプ状に成膜し、最後に、乾燥窒素雰囲気下(例えば、露点温度−100℃)で、ゲッター材を入れて、UV接着剤を用いてガラスからなる封止板にて封止を行うことによって本発明の実施例2のフルカラー表示装置が完成する。
【0047】
この本発明の実施例2においても、輝度半減期の短いB素子、R素子、G素子の順に形成しているので、RGBの各素子の輝度劣化特性が非常に揃った状態となり、それによって、実施例1と同様に色バランスにおける表示装置の寿命を大幅に改善することができる。
【0048】
また、実施例2においては、H2 OとO2 を添加したArガスを導入し、正孔輸送層・発光層界面に堆積するコンタミ量を増やすことにより緑色発光有機膜の待ち時間を110分から50分へと60分も大幅に短縮できるので、装置全体のスループットを向上することができ、延いては低コスト化が可能になる。
【0049】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、上記の各実施例においては、フルカラー表示装置として説明しているが、本発明はフルカラー表示装置に限られるものではなく、例えば、赤色発光素子と緑色発光素子の2種類の有機EL素子によってカラー表示装置を構成しても良いものである。
【0050】
また、上記の各実施例に記載した発光層の材料は単なる一例であることは言うまでもなく、公知の他の有機EL材料の中から適宜選択するものである。
【0051】
また、上記の各実施例に記載した陽極、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、及び、陰極の材料は単なる一例であり各種の公知の材料に置き換えても良いことは言うまでもないことである。
【0052】
例えば、上記の各実施例においては電子注入層としてLiFを用いているが、LiFに限られるものではなく、LiFと同様なCsF,NaF,KF,RbF等のアルカリ金属のフッ化物、或いは、LiCl,LiBr,LiI,NaCl,NaBr,NaI,KCl,KBr,KI,RbCl,RbBr,RbI,CsCl,CsBr,CsIからなるアルカリ金属のハロゲン化物を用いても良いものである。
【0053】
また、上記の各実施例においては陰極としてAlを用いているが、Alに限られるものではなく、Ag,Au,Mo等の他の金属を用いても良いものである。
【0054】
また、上記の各実施例においては、陽極側を透明電極として、陽極側から光を取り出しているが、陰極側をAg薄膜やAu薄膜からなる半透明電極或いはITO等の透明電極として陰極側から光を取り出すようにしても良いものであり、その場合には、光取り出し効率を高めるために陽極を反射性電極としても良いものである。
【0055】
この場合、基板としてステンレス等の導電性基板や絶縁性の不透明基板を用いても良いものであり、陰極を半透明電極或いは透明電極とすることによって、基板の制限を受けることがなくなる。
【0056】
また、上記の実施例2においては、H2 OとO2 を添加したArガスによって正孔輸送層の表面のコンタミを加速しているが、H2 OとO2 の両方を添加することが望ましいものの、O2 のみを添加したArガス或いはH2 Oのみを添加したArガスを用いても良いものである。
【0057】
また、上記の各実施例においては、RGBの各サブピクセルの開口率が同じであることを前提に説明しているが、上述の特許文献1に記載されたようなRGBの各サブピクセルの開口率が異なる表示装置にも適応されるものである。
【0058】
また、上記の各実施例においては、説明を分かりやすくするために、輝度劣化が一番大きい素子を青色発光素子とし、一番輝度劣化が少ない素子を緑色発光素子としたが、必ずしもそうではなく、発光材料、素子構成等により輝度劣化が大きい順番は変化する場合があるが、いずにしても、輝度劣化が大きい順に素子の発光層を形成すれば良い。
【0059】
また、上記の実施例4においては、単純マトリクス型のパッシブ・マトリスク型表示装置として説明しているが、パッシブ・マトリスク型表示装置に限られるものではなく、TFT等のアクティブ素子を用いてアクティブ・マトリクス型表示装置としても良いものである。
【0060】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9から順に形成していくことを特徴とする表示装置の製造方法。
(付記2) 少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、前記正孔輸送層6成膜後から前記発光層7〜9成膜開始まで時間を発光色により変えることにより、前記複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を白色で連続的に表示した時に白色の色度変化を少なくしたことを特徴とする表示装置の製造方法。
(付記3)少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を形成する際に、前記正孔輸送層6成膜後に成膜装置内に酸素或いは水の少なくとも一方を含む不純物ガスを導入する工程を有することを特徴とする付記1記載の表示装置の製造方法。
(付記4) 上記発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4が、赤、緑及び青に発光する3種類の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4からなるとともに、前記有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9を形成する順を、青の発光層7、赤の発光層8、次いで、緑の発光層9の順とすることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1に記載の表示装置の製造方法。
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1に記載の表示装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする表示装置。
(付記6) 発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4から形成された表示装置において、前記有機エレクトロルミネッセント素子2〜4は少なくとも陽極5/正孔輸送層6/発光層7〜9/陰極10からなるとともに、前記有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9の重なり部において、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9から順に積層されていることを特徴とする表示装置。
(付記7) 上記発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4が、赤、緑及び青に発光する3種類の有機エレクトロルミネッセント素子2〜4からなるとともに、前記有機エレクトロルミネッセント素子2〜4の発光層7〜9の重なり部において、青の発光層7上に赤及び緑の発光層8,9があり、且つ、赤の発光層8上に緑の発光層9があることを特徴とする付記6記載の表示装置。
(付記8) 上記各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を構成する陽極5と正孔輸送層6との間に正孔注入層を設けたことを特徴とする付記5乃至7のいずれか1に記載の表示装置。
(付記9) 上記各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4を構成する発光層7〜9と陰極10との間に電子輸送層を設けたことを特徴とする付記5乃至8のいずれか1に記載の表示装置。
(付記10) 陰極10と電子輸送層との間に電子注入層を設けたことを特徴とする付記9記載の表示装置。
(付記11) 上記各有機エレクトロルミネッセント素子2〜4が、独立に駆動するためのアクティブ素子を備えていることを特徴とする付記5乃至10のいずれか1に記載の表示装置。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の活用例としては、二次元マトリクス状のフルカラー表示装置が典型的なものであるが、フルカラー表示装置等の表示装置に限られるものではなく、各サブピクセルに印加する電圧を調整することにより任意の色相で発光するムード照明用光源等の大型単一光源にも適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】待ち時間と輝度半減時間の相関関係の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のフルカラー表示装置の途中までの製造工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例1のフルカラー表示装置の図3以降の製造工程の説明図である。
【図5】本発明の実施例1のフルカラー表示装置を連続白色表示した場合の輝度劣化特性の説明図である。
【図6】本発明の実施例1のフルカラー表示装置の白色表示における色バランスの経時劣化の説明図である。
【図7】比較例のフルカラー表示装置を連続白色表示した場合の輝度劣化特性の説明図である。
【図8】比較例のフルカラー表示装置の白色表示における色バランスの経時劣化の説明図である。
【図9】本発明の実施例2のフルカラー表示装置の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 有機エレクトロルミネッセント素子
3 有機エレクトロルミネッセント素子
4 有機エレクトロルミネッセント素子
5 陽極
6 正孔輸送層
7 発光層
8 発光層
9 発光層
10 陰極
11 ガラス基板
12 ITO陽極
13 正孔注入層
14 正孔輸送層
15 青色発光有機膜
16 青色発光層
17 正孔ブロッキング層
18 電子輸送層
19 赤色発光有機膜
20 赤色発光層
21 電子輸送層
22 緑色発光有機膜
23 緑色発光層
24 電子輸送層
25 電子注入層
26 陰極
27 Arガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極/正孔輸送層/発光層/陰極からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子を形成する際に、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子の発光層から順に形成していくことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
少なくとも陽極/正孔輸送層/発光層/陰極からなり発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子を形成する際に、前記正孔輸送層成膜後に成膜装置内に酸素或いは水の少なくとも一方を含む不純物ガスを導入する工程を有することを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された表示装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子から形成された表示装置において、前記有機エレクトロルミネッセント素子は少なくとも陽極/正孔輸送層/発光層/陰極からなるとともに、前記有機エレクトロルミネッセント素子の発光層の重なり部において、輝度劣化が大きい有機エレクトロルミネッセント素子の発光層から順に積層されていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
上記発光色が異なる複数の有機エレクトロルミネッセント素子が、赤、緑及び青に発光する3種類の有機エレクトロルミネッセント素子からなるとともに、前記有機エレクトロルミネッセント素子の発光層の重なり部において、青の発光層上に赤及び緑の発光層があり、且つ、赤の発光層上に緑の発光層があることを特徴とする請求項4記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−318777(P2006−318777A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140625(P2005−140625)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】