表示装置及びその製造方法
【課題】製造歩留まりを向上できるとともに表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板120上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極66と、第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、第1電極60の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁70と、を備えた表示装置であって、隔壁70は、そのボトム70Bから有機活性層64より厚い膜厚を有する下層部71において第1電極60の周縁に沿った端面71Aと基板主面120Aとの成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする。
【解決手段】基板120上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極66と、第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、第1電極60の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁70と、を備えた表示装置であって、隔壁70は、そのボトム70Bから有機活性層64より厚い膜厚を有する下層部71において第1電極60の周縁に沿った端面71Aと基板主面120Aとの成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置及びその製造方法に係り、特に、複数の自発光性素子によって構成された表示装置及びその製造方法に関する。
【0002】
に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0004】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、アレイ基板として陽極と陰極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を挟持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成される。有機EL素子には、有機活性層に低分子系材料を用いた素子構成と、高分子系材料を用いた素子構成とがある。
【0005】
低分子系の素子は真空蒸着法などのドライプロセスにより形成する例が多く、積層構造を容易に形成しやすい。一方、高分子系の素子はインクジェット法等のウェットプロセスにより形成する例が多く、このインクジェット法は、材料の使用効率が格段によいといった利点がある。
【0006】
すなわち、高分子系材料を用いた有機活性層は、インクジェット法により液状の発光材料を画素毎に塗布し、乾燥することによって形成される。この場合、各画素は、隣接画素間の分離(絶縁)を行うための隔壁によって区画されている。また、各画素は、塗布された発光材料の液滴が画素内にまんべんなく付与されるよう隔壁に親液性を有する親液性絶縁膜を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このような親液性絶縁膜の形成にあたっては、CVD法などで無機絶縁材料を成膜した後に、フォトレジストを塗布し、このフォトレジストをフォトエッチングプロセスによってパターン化し、フォトレジストから露出した無機絶縁材料を除去し、さらに、フォトレジストを除去することで形成することが考えらえる。このため、製造工程数が多く、製造高コストが増大するだけでなく、製造歩留まりの低下を招く。
【0008】
また、親液膜を省略して疎液膜のみで隔壁を構成した場合、発光材料が隔壁に馴染まず、画素毎に独立に形成された電極(陽極)と隔壁との境界部分で発光材料の膜厚が極端に薄くなるおそれがある。このような場合、後に、成膜される電極(陰極)と陽極との間でショートするおそれがある。また、発光材料の膜厚の不均一性に起因して発光ムラを生じるおそれがある。
【特許文献1】特開2002−202735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、製造歩留まりを向上できるとともに表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1様態による表示装置の製造方法は、
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下となるように形成されることを特徴とする。
【0011】
この発明の第2様態による表示装置は、
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、製造歩留まりを向上できるとともに表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置及び表示装置の製造方法について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100と、アレイ基板100の少なくとも表示エリア102を密封する封止体200とを備えて構成されている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0015】
各画素PX(R、G、B)は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離し、かつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10及び画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを備えている。これら画素スイッチ10および駆動トランジスタ20は例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここではその半導体層にポリシリコンを用いている。
【0016】
各画素PX(R、G、B)は、表示素子としての有機EL素子40(R、G、B)をそれぞれ備えている。すなわち、赤色画素PXRは、赤色に発光する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、緑色に発光する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、青色に発光する有機EL素子40Bを備えている。
【0017】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構造であり、画素毎PXに独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素PXに共通に形成された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、によって構成される。
【0018】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymに走査信号を供給する走査線駆動回路107と、信号線Xnに映像信号を供給する信号線駆動回路108と、を備えている。
【0019】
すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。画素スイッチ10は、ここでは走査線Ymと信号線Xnとの交差部近傍に配置されている。駆動トランジスタ20は、有機EL素子40と直列に接続されている。蓄積容量素子30は、画素スイッチ10と直列に、且つ駆動トランジスタ20と並列に接続されており、蓄積容量素子30の両電極は、駆動トランジスタ20のゲート電極及びソース電極にそれぞれ接続されている。
【0020】
電源供給線Pは、表示エリア102の周囲に配置された図示しない第1電極電源線に接続されている。有機EL素子40の第2電極66側端は、表示エリア102の周囲に配置されコモン電位ここでは接地電位を供給する図示しない第2電極電源線に接続されている。
【0021】
より詳細に説明すると、画素スイッチ10のゲート電極は走査線Ymに接続され、ソース電極は信号線Xnに接続され、ドレイン電極は蓄積容量素子30の一端及び駆動トランジスタ20のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ20のソース電極は蓄積容量素子30の他端及び電源供給線Pに接続され、ドレイン電極は有機EL素子40の第1電極60に接続されている。
【0022】
図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120上に配置された有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0023】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120表面の絶縁膜上に配置される。この第1電極60は、ここではITO(Indium Tin Oxide:インジウム・ティン・オキサイド)やIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などの光透過性導電部材によって形成され、陽極として機能する。
【0024】
有機活性層64は、少なくとも発光機能を有する有機化合物を含み、各色共通に形成されるホールバッファ層、エレクトロンバッファ層、及び各色毎に形成される有機発光層の多層積層で構成されても良く、機能的に複合された2層または単層で構成されても良い。例えば、ホールバッファ層は、陽極および有機発光層間に配置され、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体などの薄膜によって形成される。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有する有機化合物によって形成される。この発光層は、例えば高分子系の発光材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などの薄膜により構成される。
【0025】
第2電極66は、有機活性層64上に各有機EL素子40に共通に配置される。この第2電極66は、例えばCa(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ba(バリウム)、Ag(銀)、Yb(イッテルビウム)などの電子注入機能を有する金属膜によって形成され、陰極として機能している。この第2電極66は、陰極として機能する金属膜の表面をカバーメタルで被覆した2層構造であっても良い。カバーメタルは、例えばアルミニウムによって形成される。
【0026】
このように構成された有機EL素子40では、第1電極60と第2電極66との間に挟持された有機活性層64に電子及びホールを注入し、これらを再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活時に生じる所定波長の光放出により発光する。ここでは、このEL発光は、アレイ基板100側すなわち第1電極60側から出射される。
【0027】
ところで、アレイ基板100は、表示エリア102において、各画素RX(R、G、B)を分離する隔壁70を備えている。すなわち、隔壁70は、配線基板120上に独立島状に形成された第1電極60の周縁に沿って格子状またはストライプ状に配置されている。これにより、隔壁70は、第1電極60を画素毎に電気的に分離するとともに、第1電極60を露出し、第1電極60上への有機活性層64の配置を可能とする。第1電極60が露出した部分は、実質的に表示に寄与する開口部APとなる。また、この隔壁70は、各色画素PX(R、G、B)にそれぞれ配置される有機活性層64の混色を防止する機能を有している。
【0028】
赤、緑、及び、青にそれぞれ発光する3種類の有機発光層をインクジェット法により選択的に塗布する方法は、工程も少なく、材料の使用効率も格段に良いといったメリットもある。しかしながら、インクジェット法は、有機発光層やホールバッファ層などを画素個別に塗布していくことから、発光部分の膜厚が不均一になりやすく、また、膜厚が不均一な領域においては発光ムラを発生するおそれがあり、表示品位の低下をもたらす。また、膜厚が不均一な領域においては、単位面積あたりの電流密度が膜厚の薄い部分に集中することから、有機活性層の劣化を早めてしまい、信頼性上の問題も引き起こす。
【0029】
インクジェット法により吐出された発光材料などの液滴を隔壁70に囲まれた画素内に均一に広げるためには、親液性の薄膜を隔壁70の画素内部において、第1電極60の周縁を1乃至4μm程度の幅で覆うように配置することが考えられる。この親液膜を配置しなかった場合、撥インク処理を行った隔壁70と第1電極60との界面で、第1電極60やホールバッファ層の表面が露出するおそれがある。このような塗布膜に異常が存在する画素では、第1電極60とその後に成膜される第2電極との間でショートを起こし、該当画素が点灯しないという表示不良が発生してしまい、歩留まりの低下は避けられない。しかし、親液膜を配置しようとすると、その分の製造工程数が増えてしまい、製造コストの増大に繋がるとともに、歩留まりの低下を引き起こす可能性がある。
【0030】
そこで、この実施の形態では、有機活性層64の膜厚を均一化するために、隔壁70にテーパー角度の低い部分と高い部分とを設けている。すなわち、隔壁70は、図2に示すように、下層部71及び上層部72を有している。下層部71は、有機活性層64より厚い膜厚T1を有しており、より詳細には、隔壁70のボトム70Bから有機活性層64の表面までの高さHより大きな膜厚T1を有している。有機活性層64の膜厚は、1000乃至2000オングストローム程度であるため、第1電極60の膜厚を考慮しても、隔壁70の膜厚T1は、ボトム70Bから5000乃至10000オングストロームであれば、高さHより十分大きい。上層部72は、下層部71よりトップ側に位置しており、下層部71との境界73から隔壁70のトップ70Tまでの膜厚T2を有している。
【0031】
下層部71において、第1電極60の周縁に沿った端面のテーパー角度すなわち端面71Aと基板主面120Aとの成す角度θ1は、上層部72の端面72Aと基板主面120Aとの成す角度θ2より小さい。このような構造の隔壁70を採用することにより、隔壁70の下層部71付近に塗布形成される有機活性層64は、低テーパー角度の端面71Aで囲まれた画素内において、極めて均一な膜厚分布で成膜できる。また、隔壁70は、その上層部72付近において、各画素を高テーパー角度の端面72Aで囲むため、本来の目的である混色防止の機能を損なうことがない。
【0032】
有機活性層64に接触する下層部71の端面71Aは、そのテーパー角度θ1が30°以下になるように形成されることが望ましい。これにより、開口部APに配置された有機活性層64の膜厚分布を均一化することが可能となる。
【0033】
また、端面71Aのテーパー角度θ1は、10°以上であることが望ましい。テーパー角度θ1を0°とした場合、下層部71としての機能を失ってしまう。つまり、上層部72のテーパー角度θ2と面一となってしまい、有機活性層64の膜厚分布を均一化することは困難となる。このため、テーパー角度θ1は、最低でも10°は必要である。
【0034】
一方で、隔壁70における上層部72の端面72Aは、そのテーパー角度θ2がテーパー角度θ1より大きく(望ましくは50°以上であり)、しかも70°以下になるように形成されることが望ましい。これにより、画素に向けて吐出された発光材料が例え隔壁70の端面72Aに付着した場合であっても、発光材料を開口部APに導きやすくなるとともに、隣接する他の色画素への流出を防止することができる。
【0035】
このようなテーパー角度の異なる2つの端面を有する隔壁70は、二種類のレジストを用いることなく、プロセスの制御により一種類のレジストで形成可能である。これにより、製造工程を増やすことなく、高品質なデバイスを提供することができ、製造コストを低減できるとともに製造歩留まりを向上することができる。
【0036】
次に、このような構造の隔壁70を備えた有機EL表示装置の第1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、第1電極60を有する配線基板120を用意する。すなわち、金属膜及び絶縁膜の成膜、パターニングなどの処理を繰り返し、絶縁性基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108の他に、信号線Xn、走査線Ym、電源供給線P等の各種配線も形成した、縦480画素、横640×3(R、G、B)画素の合計92万画素を有した配線基板120を形成する。そして、各画素にITOからなる500オングストロームの膜厚を有する第1電極60を形成する。この第1電極60については、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、マスクスパッタ法で形成しても良い。
【0038】
続いて、図3Aに示すように、配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を、スピンナーなどで30000オングストロームの膜厚を有するように塗布する。そして、この第1有機材料81を、約90℃の高温下で120sec間乾燥させる。
【0039】
続いて、図3Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した開口パターンを有する第1マスクM1を介して露光する(第1露光工程)。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるような第1マスクM1を介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。大きな出力の光源を用いることが可能であれば、露光工程は、露光時間を短縮できる一括露光によって行われることが望ましいが、配線基板120を複数の領域に分割して順次露光する分割露光によって行われても良い。
【0040】
続いて、図3Cに示すように、有機膜81を第1マスクM1より大きな開口パターンを有する第2マスクM2を介して露光する(第2露光工程)。この第2露光工程では、第1露光工程より少ない露光量で有機膜81を露光する。望ましくは、第2露光工程での露光量は、第1露光工程での20乃至40%とする。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力40mWのランプを用いて、画素開口部APより大きな部分に光が照射されるような第2マスクM2を介して、75mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。ここで採用した第2マスクM2の開口パターンは、第1マスクM1の開口パターンより2乃至4μmほど大きい。
【0041】
続いて、図3Dに示すように、有機膜81を現像する。すなわち、2.38%のTMAH(テトラメチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的強い露光量で露光された部分(画素の中央部分)は完全に除去され、第1電極60を露出する。また、比較的弱い露光量で露光された部分(画素の周辺部分)は深部まで十分に露光されておらず、上層部分が除去される一方で下層部分が残留する。このため、有機膜81は、下層部分から上層部分に向かって細くなるようなテーパー状に形成される。
【0042】
続いて、図3Eに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、ボトム部分のエッジは後退することなく、開口部APを規定する。このような焼成処理により、ボトムに近い下層部分では、比較的膜厚が薄いために小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では、比較的膜厚が厚いために大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。なお、テーパー角度は、材料の選択、照射エネルギーの設定、現像速度の設定などを調整することで制御可能である。
【0043】
続いて、図3Fに示すように、各画素内に、有機発光層の他にホールバッファ層などを含む有機活性層64を塗布する。すなわち、ホールバッファ層や有機発光層などを形成する高分子系発光ポリマー材料の2.0wt%重量溶液を、隔壁70によって区画された画素内に向けて噴射し、第1電極60上に塗布する。この溶液の塗布は、ピエゾ式インクジェットノズルを用い、発光ポリマー材料の供給量が0.05ml/minの条件下で行われる。このように塗布された発光ポリマー材料の溶液は、各画素の周辺に配置された隔壁70の下部に露出した部分が親液性となっているため、親液膜がなくても画素内での広がりを阻害されることが無く、均一に広がる。
【0044】
そして、100℃の高温下で15秒間の乾燥処理を行うことで、溶液に含まれる溶媒を除去する。このようにして形成された各画素の有機活性層64は、溶媒除去後に均一な膜厚に形成された。このため、後に形成される第2電極66と第1電極60との間が確実に電気的に絶縁され、ショートの発生を防止することができる。
【0045】
続いて、図3Gに示すように、有機活性層64上に第2電極66を形成する。すなわち、陰極として機能する金属膜としてバリウム(Ba)を10−7Paの真空度において600オングストロームの膜厚に蒸着し、続けて、カバーメタルとして機能する金属膜としてアルミニウム(Al)を1500乃至3000オングストロームの膜厚で蒸着する。これにより、有機EL素子40が形成される。
【0046】
続いて、アレイ基板100上の表示エリア102を封止するために、封止体200の外周に沿って紫外線硬化型のシール材400を塗布し、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中において、アレイ基板100と封止体200とを貼り合わせる。これにより、有機EL素子40は、不活性ガス雰囲気の密閉空間内に封入される。その後、紫外線を照射して、シール材300を硬化させる。
【0047】
このようにして形成した下面発光方式のカラー表示型アクティブマトリクス有機EL表示装置では、有機活性層64の膜厚ばらつきに起因するような表示不良のない、良好な表示が得られた。また、有機活性層64の形成にインクジェット方式を採用しているため、発光ポリマー材料の使用効率は80%程度と高く、発光ポリマー材料の供給系に残留したもの以外は全て有効に成膜に用いられたことが分かった。
【0048】
次に、第2の製造方法について説明する。ここでは、隔壁70の形成工程についてのみ説明する。
【0049】
まず、図4Aに示すように、第1電極60を有する配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を塗布する。そして、この第1有機材料81を乾燥させる。
【0050】
続いて、図4Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した開口パターンを有するマスクMを介して露光する。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるようなマスクMを介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。このとき、マスクMは、有機膜81から所定距離以上、例えば有機膜81の表面から100μm以上のギャップを有するように離間した状態で配置される。このようにマスクMと有機膜81とを離間することにより、光源から照射された光は、マスクMの開口パターンを通過した後に開口パターンよりも大きく広がる。結果として、有機膜81は、開口パターンよりも広い領域(81A+81B)が露光される。このとき、有機膜81において、開口パターンに対応する領域81Aはその外周の領域81Bより強く露光される。
【0051】
続いて、図4Cに示すように、有機膜81を現像する(第1現像工程)。すなわち、0.7乃至0.9%のTMAH溶液(第1現像液)を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的強い露光量で露光された部分(画素の中央部分)81Aは完全に除去され、第1電極60を露出する。
【0052】
続いて、図4Dに示すように、有機膜81を現像する(第2現像工程)。すなわち、第1現像液よりも高濃度の第2現像液、例えば2.38%のTMAH溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的弱い露光量で露光された部分(画素の周辺部分)81Bは深部まで十分に露光されておらず、上層部分が除去される一方で下層部分が残留する。このため、有機膜81は、下層部分から上層部分に向かって細くなるようなテーパー状に形成される。
【0053】
続いて、図4Eに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、ボトム部分のエッジは後退することなく、開口部APを規定する。このような焼成処理により、ボトムに近い下層部分では、比較的膜厚が薄いために小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では、比較的膜厚が厚いために大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。
【0054】
このような第2の製造方法によって形成された隔壁70を備えた有機EL表示装置においても、第1の製造方法によって製造された有機EL表示装置と同様に、発光ポリマー材料を隔壁内部の画素内に均一に広げることが可能となり、表示性能の低下を防止することが可能となるなどの効果が得られる。
【0055】
次に、第3の製造方法について説明する。ここでは、隔壁70の形成工程についてのみ説明する。
【0056】
まず、図5Aに示すように、第1電極60を有する配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、黒色顔料を含有し露光されることによって現像液に対して不溶性となるネガティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を塗布する。そして、この第1有機材料81を乾燥させる。
【0057】
続いて、図5Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した遮光パターンを有するマスクMを介して露光する。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるようなマスクMを介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。これにより、画素に対応した部分は全く露光されず、画素を囲む部分すなわち隔壁に対応した部分が露光される。このとき、有機膜81は黒色であるため、露光された部分であっても深部まで十分に露光されない。
【0058】
続いて、図5Cに示すように、有機膜81を現像する。すなわち、2.38%のTMAH溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、未露光部分(画素の中央部分)は完全に除去され、第1電極60を露出する。また、露光部分も深部まで十分露光されておらず、特に画素の周辺部分において、露光された上層部分が残留する一方で未露光の下層部分が除去される。このため、有機膜81は、上層部分から下層部分に向かって細くなるような逆テーパー状に形成される。
【0059】
続いて、図5Dに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、有機膜81の庇部分81Cがメルトダウンし、結果として有機膜81のボトム部分で開口部APを規定するとともに、ボトムに近い下層部分では比較的小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では比較的大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。
【0060】
このような第3の製造方法によって形成された隔壁70を備えた有機EL表示装置においても、第1の製造方法によって製造された有機EL表示装置と同様に、発光ポリマー材料を隔壁内部の画素内に均一に広げることが可能となり、表示性能の低下を防止することが可能となるなどの効果が得られる。
【0061】
ここで、有機EL素子40の有機活性層64の成膜状態を比較する。図6Aは、上述した実施の形態のように隔壁70における下層部のテーパー角度が30°以下であり上層部のテーパー角度が30°より大きいような端面を有する本実施形態の構造での膜厚分布を示している。図6Bは、開口部側端面が面一であって30°より大きなテーパー角度を有する比較例の構造での膜厚分布を示している。ここで、「0」の位置は隔壁70と第1電極60上に配置された有機活性層64との境界に相当し、正の画素内距離を有する位置は開口部AP内の位置に相当し、また、負の画素内距離を有する位置は隔壁70上の位置に相当するものとする。なお、この膜厚分布は、FIB加工SEM写真により画素内部の隔壁エッジからの各層の断面像を10〜15μm間隔で撮影し、その膜厚を計測することにより得られる。
【0062】
ここで、本実施形態の構造では、下層部の膜厚は5100オングストロームであり、下層部における端面のテーパー角度は13°であり、また、上層部の膜厚は24600オングストロームであり、上層部における端面のテーパー角度は47°である。一方、比較例の構造では、隔壁全体の膜厚は29800オングストロームであり、その端面のテーパー角度は43°である。
【0063】
図6Aに示すように、本実施形態の構造によれば、開口部AP内に配置された有機活性層64がほぼ均一な膜厚に形成されたことを確認できた。これに対して、図6Bに示すように、比較例の構造によれば、開口部の中央部付近ではほぼ均一な膜厚となるものの、開口部の周辺部に向かうほど中央部より大きな膜厚となり、十分に平坦化されていないことが確認された。このように、隔壁の下層部に30°より小さなテーパーを持たせることにより、実質的に発光に寄与する領域すなわち開口部内でほぼ均一な膜厚の有機活性層を形成することができる。
【0064】
以上説明したように、この実施の形態に係る表示装置及びその製造方法によれば、高分子系の発光ポリマー材料を適用することで、有機EL素子の有機活性層をインクジェット法にて選択的に成膜する方法を採用することができる。この成膜方法は、工程数が少なく、発光ポリマー材料の使用効率も格段によいといったメリットもある。
【0065】
また、各画素を分離する隔壁のうち、そのボトムから有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、第1電極の周縁に沿った端面と基板主面とのなす角度を30°以下とすることにより、親液膜が無くても画素内の有機活性層の膜厚を均一化することができる。
【0066】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0067】
すなわち、この発明は、成膜した有機膜を露光するに際して露光量に差をつけることで、現像した際に完全に除去される部分と一部残留する部分とを形成し、これを焼成することで画素周辺部分にテーパー角度の異なる端面を形成している。このため、有機膜の露光工程では、露光量に差をつけるような方法であれば、如何なる方法も採用可能であり、例えば、ハーフトーンマスクを用いた露光方法であっても良い。
【0068】
また、上述した実施の形態では、親液性の隔壁を適用しなくても、均一な膜厚の有機活性層を形成できる構成について説明したが、プロセス上のマージンが十分であれば、親液性の隔壁を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の1画素分の構造例を概略的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3D】図3Dは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3E】図3Eは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3F】図3Fは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3G】図3Gは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4B】図4Bは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4C】図4Cは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4D】図4Dは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4E】図4Eは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5C】図5Cは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5D】図5Dは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図6A】図6Aは、本実施形態の構造を採用した画素における有機活性層の膜厚分布を示す図である。
【図6B】図6Bは、比較例の構造を採用した画素における有機活性層の膜厚分布を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…有機活性層、66…第2電極、70…隔壁、71…下層部、72…上層部、100…アレイ基板、200…封止体、400…シール材、PX…画素、
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置及びその製造方法に係り、特に、複数の自発光性素子によって構成された表示装置及びその製造方法に関する。
【0002】
に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光性素子であることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0004】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。このような有機EL表示装置は、アレイ基板として陽極と陰極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を挟持した有機EL素子をマトリックス状に配置することにより構成される。有機EL素子には、有機活性層に低分子系材料を用いた素子構成と、高分子系材料を用いた素子構成とがある。
【0005】
低分子系の素子は真空蒸着法などのドライプロセスにより形成する例が多く、積層構造を容易に形成しやすい。一方、高分子系の素子はインクジェット法等のウェットプロセスにより形成する例が多く、このインクジェット法は、材料の使用効率が格段によいといった利点がある。
【0006】
すなわち、高分子系材料を用いた有機活性層は、インクジェット法により液状の発光材料を画素毎に塗布し、乾燥することによって形成される。この場合、各画素は、隣接画素間の分離(絶縁)を行うための隔壁によって区画されている。また、各画素は、塗布された発光材料の液滴が画素内にまんべんなく付与されるよう隔壁に親液性を有する親液性絶縁膜を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このような親液性絶縁膜の形成にあたっては、CVD法などで無機絶縁材料を成膜した後に、フォトレジストを塗布し、このフォトレジストをフォトエッチングプロセスによってパターン化し、フォトレジストから露出した無機絶縁材料を除去し、さらに、フォトレジストを除去することで形成することが考えらえる。このため、製造工程数が多く、製造高コストが増大するだけでなく、製造歩留まりの低下を招く。
【0008】
また、親液膜を省略して疎液膜のみで隔壁を構成した場合、発光材料が隔壁に馴染まず、画素毎に独立に形成された電極(陽極)と隔壁との境界部分で発光材料の膜厚が極端に薄くなるおそれがある。このような場合、後に、成膜される電極(陰極)と陽極との間でショートするおそれがある。また、発光材料の膜厚の不均一性に起因して発光ムラを生じるおそれがある。
【特許文献1】特開2002−202735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、製造歩留まりを向上できるとともに表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1様態による表示装置の製造方法は、
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下となるように形成されることを特徴とする。
【0011】
この発明の第2様態による表示装置は、
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、製造歩留まりを向上できるとともに表示品位の良好な表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置及び表示装置の製造方法について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100と、アレイ基板100の少なくとも表示エリア102を密封する封止体200とを備えて構成されている。表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0015】
各画素PX(R、G、B)は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離し、かつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10及び画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを備えている。これら画素スイッチ10および駆動トランジスタ20は例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここではその半導体層にポリシリコンを用いている。
【0016】
各画素PX(R、G、B)は、表示素子としての有機EL素子40(R、G、B)をそれぞれ備えている。すなわち、赤色画素PXRは、赤色に発光する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、緑色に発光する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、青色に発光する有機EL素子40Bを備えている。
【0017】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構造であり、画素毎PXに独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素PXに共通に形成された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、によって構成される。
【0018】
また、アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。さらに、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymに走査信号を供給する走査線駆動回路107と、信号線Xnに映像信号を供給する信号線駆動回路108と、を備えている。
【0019】
すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。画素スイッチ10は、ここでは走査線Ymと信号線Xnとの交差部近傍に配置されている。駆動トランジスタ20は、有機EL素子40と直列に接続されている。蓄積容量素子30は、画素スイッチ10と直列に、且つ駆動トランジスタ20と並列に接続されており、蓄積容量素子30の両電極は、駆動トランジスタ20のゲート電極及びソース電極にそれぞれ接続されている。
【0020】
電源供給線Pは、表示エリア102の周囲に配置された図示しない第1電極電源線に接続されている。有機EL素子40の第2電極66側端は、表示エリア102の周囲に配置されコモン電位ここでは接地電位を供給する図示しない第2電極電源線に接続されている。
【0021】
より詳細に説明すると、画素スイッチ10のゲート電極は走査線Ymに接続され、ソース電極は信号線Xnに接続され、ドレイン電極は蓄積容量素子30の一端及び駆動トランジスタ20のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ20のソース電極は蓄積容量素子30の他端及び電源供給線Pに接続され、ドレイン電極は有機EL素子40の第1電極60に接続されている。
【0022】
図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120上に配置された有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0023】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120表面の絶縁膜上に配置される。この第1電極60は、ここではITO(Indium Tin Oxide:インジウム・ティン・オキサイド)やIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などの光透過性導電部材によって形成され、陽極として機能する。
【0024】
有機活性層64は、少なくとも発光機能を有する有機化合物を含み、各色共通に形成されるホールバッファ層、エレクトロンバッファ層、及び各色毎に形成される有機発光層の多層積層で構成されても良く、機能的に複合された2層または単層で構成されても良い。例えば、ホールバッファ層は、陽極および有機発光層間に配置され、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体などの薄膜によって形成される。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有する有機化合物によって形成される。この発光層は、例えば高分子系の発光材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などの薄膜により構成される。
【0025】
第2電極66は、有機活性層64上に各有機EL素子40に共通に配置される。この第2電極66は、例えばCa(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ba(バリウム)、Ag(銀)、Yb(イッテルビウム)などの電子注入機能を有する金属膜によって形成され、陰極として機能している。この第2電極66は、陰極として機能する金属膜の表面をカバーメタルで被覆した2層構造であっても良い。カバーメタルは、例えばアルミニウムによって形成される。
【0026】
このように構成された有機EL素子40では、第1電極60と第2電極66との間に挟持された有機活性層64に電子及びホールを注入し、これらを再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活時に生じる所定波長の光放出により発光する。ここでは、このEL発光は、アレイ基板100側すなわち第1電極60側から出射される。
【0027】
ところで、アレイ基板100は、表示エリア102において、各画素RX(R、G、B)を分離する隔壁70を備えている。すなわち、隔壁70は、配線基板120上に独立島状に形成された第1電極60の周縁に沿って格子状またはストライプ状に配置されている。これにより、隔壁70は、第1電極60を画素毎に電気的に分離するとともに、第1電極60を露出し、第1電極60上への有機活性層64の配置を可能とする。第1電極60が露出した部分は、実質的に表示に寄与する開口部APとなる。また、この隔壁70は、各色画素PX(R、G、B)にそれぞれ配置される有機活性層64の混色を防止する機能を有している。
【0028】
赤、緑、及び、青にそれぞれ発光する3種類の有機発光層をインクジェット法により選択的に塗布する方法は、工程も少なく、材料の使用効率も格段に良いといったメリットもある。しかしながら、インクジェット法は、有機発光層やホールバッファ層などを画素個別に塗布していくことから、発光部分の膜厚が不均一になりやすく、また、膜厚が不均一な領域においては発光ムラを発生するおそれがあり、表示品位の低下をもたらす。また、膜厚が不均一な領域においては、単位面積あたりの電流密度が膜厚の薄い部分に集中することから、有機活性層の劣化を早めてしまい、信頼性上の問題も引き起こす。
【0029】
インクジェット法により吐出された発光材料などの液滴を隔壁70に囲まれた画素内に均一に広げるためには、親液性の薄膜を隔壁70の画素内部において、第1電極60の周縁を1乃至4μm程度の幅で覆うように配置することが考えられる。この親液膜を配置しなかった場合、撥インク処理を行った隔壁70と第1電極60との界面で、第1電極60やホールバッファ層の表面が露出するおそれがある。このような塗布膜に異常が存在する画素では、第1電極60とその後に成膜される第2電極との間でショートを起こし、該当画素が点灯しないという表示不良が発生してしまい、歩留まりの低下は避けられない。しかし、親液膜を配置しようとすると、その分の製造工程数が増えてしまい、製造コストの増大に繋がるとともに、歩留まりの低下を引き起こす可能性がある。
【0030】
そこで、この実施の形態では、有機活性層64の膜厚を均一化するために、隔壁70にテーパー角度の低い部分と高い部分とを設けている。すなわち、隔壁70は、図2に示すように、下層部71及び上層部72を有している。下層部71は、有機活性層64より厚い膜厚T1を有しており、より詳細には、隔壁70のボトム70Bから有機活性層64の表面までの高さHより大きな膜厚T1を有している。有機活性層64の膜厚は、1000乃至2000オングストローム程度であるため、第1電極60の膜厚を考慮しても、隔壁70の膜厚T1は、ボトム70Bから5000乃至10000オングストロームであれば、高さHより十分大きい。上層部72は、下層部71よりトップ側に位置しており、下層部71との境界73から隔壁70のトップ70Tまでの膜厚T2を有している。
【0031】
下層部71において、第1電極60の周縁に沿った端面のテーパー角度すなわち端面71Aと基板主面120Aとの成す角度θ1は、上層部72の端面72Aと基板主面120Aとの成す角度θ2より小さい。このような構造の隔壁70を採用することにより、隔壁70の下層部71付近に塗布形成される有機活性層64は、低テーパー角度の端面71Aで囲まれた画素内において、極めて均一な膜厚分布で成膜できる。また、隔壁70は、その上層部72付近において、各画素を高テーパー角度の端面72Aで囲むため、本来の目的である混色防止の機能を損なうことがない。
【0032】
有機活性層64に接触する下層部71の端面71Aは、そのテーパー角度θ1が30°以下になるように形成されることが望ましい。これにより、開口部APに配置された有機活性層64の膜厚分布を均一化することが可能となる。
【0033】
また、端面71Aのテーパー角度θ1は、10°以上であることが望ましい。テーパー角度θ1を0°とした場合、下層部71としての機能を失ってしまう。つまり、上層部72のテーパー角度θ2と面一となってしまい、有機活性層64の膜厚分布を均一化することは困難となる。このため、テーパー角度θ1は、最低でも10°は必要である。
【0034】
一方で、隔壁70における上層部72の端面72Aは、そのテーパー角度θ2がテーパー角度θ1より大きく(望ましくは50°以上であり)、しかも70°以下になるように形成されることが望ましい。これにより、画素に向けて吐出された発光材料が例え隔壁70の端面72Aに付着した場合であっても、発光材料を開口部APに導きやすくなるとともに、隣接する他の色画素への流出を防止することができる。
【0035】
このようなテーパー角度の異なる2つの端面を有する隔壁70は、二種類のレジストを用いることなく、プロセスの制御により一種類のレジストで形成可能である。これにより、製造工程を増やすことなく、高品質なデバイスを提供することができ、製造コストを低減できるとともに製造歩留まりを向上することができる。
【0036】
次に、このような構造の隔壁70を備えた有機EL表示装置の第1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、第1電極60を有する配線基板120を用意する。すなわち、金属膜及び絶縁膜の成膜、パターニングなどの処理を繰り返し、絶縁性基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108の他に、信号線Xn、走査線Ym、電源供給線P等の各種配線も形成した、縦480画素、横640×3(R、G、B)画素の合計92万画素を有した配線基板120を形成する。そして、各画素にITOからなる500オングストロームの膜厚を有する第1電極60を形成する。この第1電極60については、一般的はフォトリソグラフィプロセスで形成しても良いし、マスクスパッタ法で形成しても良い。
【0038】
続いて、図3Aに示すように、配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を、スピンナーなどで30000オングストロームの膜厚を有するように塗布する。そして、この第1有機材料81を、約90℃の高温下で120sec間乾燥させる。
【0039】
続いて、図3Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した開口パターンを有する第1マスクM1を介して露光する(第1露光工程)。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるような第1マスクM1を介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。大きな出力の光源を用いることが可能であれば、露光工程は、露光時間を短縮できる一括露光によって行われることが望ましいが、配線基板120を複数の領域に分割して順次露光する分割露光によって行われても良い。
【0040】
続いて、図3Cに示すように、有機膜81を第1マスクM1より大きな開口パターンを有する第2マスクM2を介して露光する(第2露光工程)。この第2露光工程では、第1露光工程より少ない露光量で有機膜81を露光する。望ましくは、第2露光工程での露光量は、第1露光工程での20乃至40%とする。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力40mWのランプを用いて、画素開口部APより大きな部分に光が照射されるような第2マスクM2を介して、75mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。ここで採用した第2マスクM2の開口パターンは、第1マスクM1の開口パターンより2乃至4μmほど大きい。
【0041】
続いて、図3Dに示すように、有機膜81を現像する。すなわち、2.38%のTMAH(テトラメチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的強い露光量で露光された部分(画素の中央部分)は完全に除去され、第1電極60を露出する。また、比較的弱い露光量で露光された部分(画素の周辺部分)は深部まで十分に露光されておらず、上層部分が除去される一方で下層部分が残留する。このため、有機膜81は、下層部分から上層部分に向かって細くなるようなテーパー状に形成される。
【0042】
続いて、図3Eに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、ボトム部分のエッジは後退することなく、開口部APを規定する。このような焼成処理により、ボトムに近い下層部分では、比較的膜厚が薄いために小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では、比較的膜厚が厚いために大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。なお、テーパー角度は、材料の選択、照射エネルギーの設定、現像速度の設定などを調整することで制御可能である。
【0043】
続いて、図3Fに示すように、各画素内に、有機発光層の他にホールバッファ層などを含む有機活性層64を塗布する。すなわち、ホールバッファ層や有機発光層などを形成する高分子系発光ポリマー材料の2.0wt%重量溶液を、隔壁70によって区画された画素内に向けて噴射し、第1電極60上に塗布する。この溶液の塗布は、ピエゾ式インクジェットノズルを用い、発光ポリマー材料の供給量が0.05ml/minの条件下で行われる。このように塗布された発光ポリマー材料の溶液は、各画素の周辺に配置された隔壁70の下部に露出した部分が親液性となっているため、親液膜がなくても画素内での広がりを阻害されることが無く、均一に広がる。
【0044】
そして、100℃の高温下で15秒間の乾燥処理を行うことで、溶液に含まれる溶媒を除去する。このようにして形成された各画素の有機活性層64は、溶媒除去後に均一な膜厚に形成された。このため、後に形成される第2電極66と第1電極60との間が確実に電気的に絶縁され、ショートの発生を防止することができる。
【0045】
続いて、図3Gに示すように、有機活性層64上に第2電極66を形成する。すなわち、陰極として機能する金属膜としてバリウム(Ba)を10−7Paの真空度において600オングストロームの膜厚に蒸着し、続けて、カバーメタルとして機能する金属膜としてアルミニウム(Al)を1500乃至3000オングストロームの膜厚で蒸着する。これにより、有機EL素子40が形成される。
【0046】
続いて、アレイ基板100上の表示エリア102を封止するために、封止体200の外周に沿って紫外線硬化型のシール材400を塗布し、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中において、アレイ基板100と封止体200とを貼り合わせる。これにより、有機EL素子40は、不活性ガス雰囲気の密閉空間内に封入される。その後、紫外線を照射して、シール材300を硬化させる。
【0047】
このようにして形成した下面発光方式のカラー表示型アクティブマトリクス有機EL表示装置では、有機活性層64の膜厚ばらつきに起因するような表示不良のない、良好な表示が得られた。また、有機活性層64の形成にインクジェット方式を採用しているため、発光ポリマー材料の使用効率は80%程度と高く、発光ポリマー材料の供給系に残留したもの以外は全て有効に成膜に用いられたことが分かった。
【0048】
次に、第2の製造方法について説明する。ここでは、隔壁70の形成工程についてのみ説明する。
【0049】
まず、図4Aに示すように、第1電極60を有する配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を塗布する。そして、この第1有機材料81を乾燥させる。
【0050】
続いて、図4Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した開口パターンを有するマスクMを介して露光する。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるようなマスクMを介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。このとき、マスクMは、有機膜81から所定距離以上、例えば有機膜81の表面から100μm以上のギャップを有するように離間した状態で配置される。このようにマスクMと有機膜81とを離間することにより、光源から照射された光は、マスクMの開口パターンを通過した後に開口パターンよりも大きく広がる。結果として、有機膜81は、開口パターンよりも広い領域(81A+81B)が露光される。このとき、有機膜81において、開口パターンに対応する領域81Aはその外周の領域81Bより強く露光される。
【0051】
続いて、図4Cに示すように、有機膜81を現像する(第1現像工程)。すなわち、0.7乃至0.9%のTMAH溶液(第1現像液)を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的強い露光量で露光された部分(画素の中央部分)81Aは完全に除去され、第1電極60を露出する。
【0052】
続いて、図4Dに示すように、有機膜81を現像する(第2現像工程)。すなわち、第1現像液よりも高濃度の第2現像液、例えば2.38%のTMAH溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、比較的弱い露光量で露光された部分(画素の周辺部分)81Bは深部まで十分に露光されておらず、上層部分が除去される一方で下層部分が残留する。このため、有機膜81は、下層部分から上層部分に向かって細くなるようなテーパー状に形成される。
【0053】
続いて、図4Eに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、ボトム部分のエッジは後退することなく、開口部APを規定する。このような焼成処理により、ボトムに近い下層部分では、比較的膜厚が薄いために小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では、比較的膜厚が厚いために大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。
【0054】
このような第2の製造方法によって形成された隔壁70を備えた有機EL表示装置においても、第1の製造方法によって製造された有機EL表示装置と同様に、発光ポリマー材料を隔壁内部の画素内に均一に広げることが可能となり、表示性能の低下を防止することが可能となるなどの効果が得られる。
【0055】
次に、第3の製造方法について説明する。ここでは、隔壁70の形成工程についてのみ説明する。
【0056】
まず、図5Aに示すように、第1電極60を有する配線基板120上に有機膜81を成膜する。すなわち、有機膜81を形成する有機材料として、黒色顔料を含有し露光されることによって現像液に対して不溶性となるネガティブタイプの感光性有機材料(例えばアクリル系感光性有機材料)を塗布する。そして、この第1有機材料81を乾燥させる。
【0057】
続いて、図5Bに示すように、有機膜81を画素の開口部APに対応した遮光パターンを有するマスクMを介して露光する。すなわち、露光用の光源として例えば紫外の波長帯域(約365nm)を有する出力75mWの強力なランプを用いて、画素開口部APに対応した部分に光が照射されるようなマスクMを介して、250mJの照射エネルギー(露光量)で有機膜81を露光する。これにより、画素に対応した部分は全く露光されず、画素を囲む部分すなわち隔壁に対応した部分が露光される。このとき、有機膜81は黒色であるため、露光された部分であっても深部まで十分に露光されない。
【0058】
続いて、図5Cに示すように、有機膜81を現像する。すなわち、2.38%のTMAH溶液を用いて有機膜81を現像する。これにより、未露光部分(画素の中央部分)は完全に除去され、第1電極60を露出する。また、露光部分も深部まで十分露光されておらず、特に画素の周辺部分において、露光された上層部分が残留する一方で未露光の下層部分が除去される。このため、有機膜81は、上層部分から下層部分に向かって細くなるような逆テーパー状に形成される。
【0059】
続いて、図5Dに示すように、有機膜81を焼成する。すなわち、220℃の高温下で有機膜81を30分間ベーク処理を行う。これにより、有機膜81に含まれる溶媒等の水分が除去されるため、有機膜81が収縮する。このとき、有機膜81の庇部分81Cがメルトダウンし、結果として有機膜81のボトム部分で開口部APを規定するとともに、ボトムに近い下層部分では比較的小さなテーパー角度の端面が形成され、また、トップに近い上層部分では比較的大きなテーパー角度の端面が形成される。このようにして、テーパー角度の異なる下層部71及び上層部72を含む隔壁70が形成される。
【0060】
このような第3の製造方法によって形成された隔壁70を備えた有機EL表示装置においても、第1の製造方法によって製造された有機EL表示装置と同様に、発光ポリマー材料を隔壁内部の画素内に均一に広げることが可能となり、表示性能の低下を防止することが可能となるなどの効果が得られる。
【0061】
ここで、有機EL素子40の有機活性層64の成膜状態を比較する。図6Aは、上述した実施の形態のように隔壁70における下層部のテーパー角度が30°以下であり上層部のテーパー角度が30°より大きいような端面を有する本実施形態の構造での膜厚分布を示している。図6Bは、開口部側端面が面一であって30°より大きなテーパー角度を有する比較例の構造での膜厚分布を示している。ここで、「0」の位置は隔壁70と第1電極60上に配置された有機活性層64との境界に相当し、正の画素内距離を有する位置は開口部AP内の位置に相当し、また、負の画素内距離を有する位置は隔壁70上の位置に相当するものとする。なお、この膜厚分布は、FIB加工SEM写真により画素内部の隔壁エッジからの各層の断面像を10〜15μm間隔で撮影し、その膜厚を計測することにより得られる。
【0062】
ここで、本実施形態の構造では、下層部の膜厚は5100オングストロームであり、下層部における端面のテーパー角度は13°であり、また、上層部の膜厚は24600オングストロームであり、上層部における端面のテーパー角度は47°である。一方、比較例の構造では、隔壁全体の膜厚は29800オングストロームであり、その端面のテーパー角度は43°である。
【0063】
図6Aに示すように、本実施形態の構造によれば、開口部AP内に配置された有機活性層64がほぼ均一な膜厚に形成されたことを確認できた。これに対して、図6Bに示すように、比較例の構造によれば、開口部の中央部付近ではほぼ均一な膜厚となるものの、開口部の周辺部に向かうほど中央部より大きな膜厚となり、十分に平坦化されていないことが確認された。このように、隔壁の下層部に30°より小さなテーパーを持たせることにより、実質的に発光に寄与する領域すなわち開口部内でほぼ均一な膜厚の有機活性層を形成することができる。
【0064】
以上説明したように、この実施の形態に係る表示装置及びその製造方法によれば、高分子系の発光ポリマー材料を適用することで、有機EL素子の有機活性層をインクジェット法にて選択的に成膜する方法を採用することができる。この成膜方法は、工程数が少なく、発光ポリマー材料の使用効率も格段によいといったメリットもある。
【0065】
また、各画素を分離する隔壁のうち、そのボトムから有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、第1電極の周縁に沿った端面と基板主面とのなす角度を30°以下とすることにより、親液膜が無くても画素内の有機活性層の膜厚を均一化することができる。
【0066】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0067】
すなわち、この発明は、成膜した有機膜を露光するに際して露光量に差をつけることで、現像した際に完全に除去される部分と一部残留する部分とを形成し、これを焼成することで画素周辺部分にテーパー角度の異なる端面を形成している。このため、有機膜の露光工程では、露光量に差をつけるような方法であれば、如何なる方法も採用可能であり、例えば、ハーフトーンマスクを用いた露光方法であっても良い。
【0068】
また、上述した実施の形態では、親液性の隔壁を適用しなくても、均一な膜厚の有機活性層を形成できる構成について説明したが、プロセス上のマージンが十分であれば、親液性の隔壁を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置の1画素分の構造例を概略的に示す断面図である。
【図3A】図3Aは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3B】図3Bは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3C】図3Cは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3D】図3Dは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3E】図3Eは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3F】図3Fは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図3G】図3Gは、有機EL表示装置の第1の製造方法を説明するための図である。
【図4A】図4Aは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4B】図4Bは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4C】図4Cは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4D】図4Dは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図4E】図4Eは、有機EL表示装置の第2の製造方法を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5B】図5Bは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5C】図5Cは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図5D】図5Dは、有機EL表示装置の第3の製造方法を説明するための図である。
【図6A】図6Aは、本実施形態の構造を採用した画素における有機活性層の膜厚分布を示す図である。
【図6B】図6Bは、比較例の構造を採用した画素における有機活性層の膜厚分布を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…有機EL表示装置、10…画素スイッチ、20…駆動トランジスタ、30…蓄積容量素子、40…有機EL素子、60…第1電極、64…有機活性層、66…第2電極、70…隔壁、71…下層部、72…上層部、100…アレイ基板、200…封止体、400…シール材、PX…画素、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が30°以下となるように形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記下層部は、ボトムから5000乃至10000オングストロームの膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記隔壁は、前記下層部よりトップ側の上層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が70°以下となるように形成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
前記有機膜を画素開口部に対応した開口パターンを有する第1マスクを介して露光する第1露光工程と、
前記有機膜を前記第1マスクより大きな開口パターンを有する第2マスクを介して露光する第2露光工程と、
前記有機膜を現像する現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2露光工程での露光量は、前記第1露光工程での20乃至40%であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
画素開口部に対応した開口パターンを有するマスクを前記有機膜から離間した状態で、前記有機膜を露光する露光工程と、
前記有機膜を第1現像液にて現像する第1現像工程と、
前記有機膜を前記第1現像液より高濃度の第2現像液にて現像する第2現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、黒色顔料を含有し露光されることによって現像液に対して不溶性となるネガティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
前記有機膜を画素開口部に対応した遮光パターンを有するマスクを介して露光する露光工程と、
前記有機膜を現像する現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機活性層は、インクジェット方式により前記第1電極上に塗布することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記有機活性層は、高分子系材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項1】
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置の製造方法であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が30°以下となるように形成されることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記下層部は、ボトムから5000乃至10000オングストロームの膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記隔壁は、前記下層部よりトップ側の上層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が70°以下となるように形成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
前記有機膜を画素開口部に対応した開口パターンを有する第1マスクを介して露光する第1露光工程と、
前記有機膜を前記第1マスクより大きな開口パターンを有する第2マスクを介して露光する第2露光工程と、
前記有機膜を現像する現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2露光工程での露光量は、前記第1露光工程での20乃至40%であることを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、露光されることによって現像液に対して可溶性となるポジティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
画素開口部に対応した開口パターンを有するマスクを前記有機膜から離間した状態で、前記有機膜を露光する露光工程と、
前記有機膜を第1現像液にて現像する第1現像工程と、
前記有機膜を前記第1現像液より高濃度の第2現像液にて現像する第2現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記隔壁は、
前記第1電極を有する基板上に、黒色顔料を含有し露光されることによって現像液に対して不溶性となるネガティブタイプの感光性有機材料でなる有機膜を成膜する成膜工程と、
前記有機膜を画素開口部に対応した遮光パターンを有するマスクを介して露光する露光工程と、
前記有機膜を現像する現像工程と、
前記有機膜を焼成する焼成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記有機活性層は、インクジェット方式により前記第1電極上に塗布することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
基板上において、マトリクス状に配置された画素毎に独立島状に形成された第1電極と、前記第1電極に対向して配置され全画素に共通に形成された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に保持された有機活性層と、前記第1電極の周縁に沿って配置され各画素を分離する隔壁と、を備えた表示装置であって、
前記隔壁は、そのボトムから前記有機活性層より厚い膜厚を有する下層部において、前記第1電極の周縁に沿った端面と前記基板の主面との成す角度が10°以上30°以下であることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記有機活性層は、高分子系材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2006−4743(P2006−4743A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179607(P2004−179607)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
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