説明

表示装置

【課題】 製造工程が煩雑になる虞がなく、複数のバリエーションも簡単に製造することができる有機ELパネルを用いた表示装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも発光層を有する有機層5を第一電極(透明電極)3と第二電極(背面電極)6とによって狭持してなる有機EL素子9を透光性の支持基板(ガラス基板)2上に配設し、封止部材7を支持基板2上に有機EL素子9を覆うように気密的に配設してなる有機ELパネル1と、有機ELパネル1の後方から支持基板2における有機EL素子9の非形成個所に向けて光を出射する照明手段と、を備え、有機EL素子9によって発光表示される第一の表示領域S1と、照明手段20からの光(表示光)L2が支持基板2を透過して発光表示される第二の表示領域S2と、を有してなることを特徴とする表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものであり、特に有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ELパネルとしては、ガラス材料からなる透光性基板上に、ITO(indium tin oxide)等によって陽極となる透明電極(前面電極)と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層からなる有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等の非透光性の背面電極とを順次積層して積層体である有機EL素子を形成し、この積層体を覆うガラス材料からなる封止部材を透光性基板上に配設してなるものが知られている。このような有機ELパネルは、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−267066号公報
【0003】
この有機ELパネルを用いた表示装置としては、透光性基板であるガラス基板に、透明電極,絶縁層,有機層及び背面電極からなる積層体を蒸着により順次積層形成し、この積層体によって有機EL素子からなる各セグメント表示部を構成するものがある。また所定個所のセグメント表示部には、他のセグメント表示部との表示色を異ならせるために、前記透明電極の下層としてカラーフィルタ(着色層)層が形成され、このカラーフィルタ層によって各表示部の表示色を異ならせるものであった。このような構成は、様々な発光色や表示形態が得られることから装飾性に優れた表示装置を得ることから、近年、注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成の表示装置を用いて装飾的な表示を得るためには、有機ELパネル内にカラーフィルタ層を形成しなければならず、前記表示装置の製造工程が煩雑になる恐れがあった。また、前記表示装置における表示色あるいは表示形態の複数のバリエーションを確保するためには、有機ELパネルを共通化することができず、個別に有機ELパネルを製造しなければならないという問題を有していた。
【0005】
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、製造工程が煩雑になる虞がなく、複数のバリエーションも簡単に製造することができる有機ELパネルを用いた表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、前記課題を解決するため、少なくとも発光層を有する有機層を第一電極と第二電極とによって狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、封止部材を前記支持基板上に前記有機EL素子を覆うように気密的に配設してなる有機ELパネルと、前記有機ELパネルの後方から前記支持基板の前記有機EL素子の非形成個所に向けて光を出射する照明手段と、を備え、前記有機EL素子によって発光表示される第一の表示領域と、前記照明手段からの光が前記支持基板を透過して発光表示される第二の表示領域と、を有してなることを特徴とする。
【0007】
また、前記照明手段は、前記支持基板の前記封止部材が気密的に配設される封止部に向けて光を照射してなることを特徴とする。
【0008】
また、前記照明手段は、光源の前方に設けられる暗色層を備えてなることを特徴とする。
【0009】
また、前記支持基板の表示光の出射面側に意匠部を設け、前記第二の表示領域にて得られる表示パターンは、前記意匠部によって規定されてなることを特徴とする。
【0010】
また、前記第二の表示領域は、前記有機EL素子の発光色とは異なる色で発光表示されてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記照明手段は、複数の異なる表示色を選択可能であり、前記第二の表示領域の表示色を変更可能としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、少なくとも発光層を有する有機層を透光性の第一電極と非透光性の第二電極とによって狭持した有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、前記有機EL素子を覆うように封止部材を前記支持基板上に配設してなる有機ELパネルを備えた表示装置に関し、装飾表示を施す場合であって製造工程が煩雑になる虞がなく、また装飾表示の複数のバリエーション対応においても有機ELパネルを共通化することができるため、有機ELパネルの製造工程を簡素化することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を用いて本発明の実施形態である表示装置について説明する。かかる表示装置は、図1に示すように、有機ELパネル1と、照明手段20とから主に構成されている。
【0014】
有機ELパネル1は、図2に示すように、ガラス基板(支持基板)2と、透明電極(第一電極)3と、絶縁層4と、有機層5と、背面電極(第二電極)6と、封止部材7と、から主に構成されている。
【0015】
ガラス基板2は、長方形形状からなる透光性の支持基板であり、後述する第一の表示領域と第二の表示領域とを備えている。
【0016】
透明電極3は、ガラス基板2上にITO等の導電性材料を蒸着法やスパッタリング法等の手段によって形成されるもので、日の字型の表示セグメント部3aと、個々の表示セグメント部3aからそれぞれ引き出し形成されたリード部3bと、リード部3bの終端部に設けられる電極端子3cとを備えており、表示セグメント部3a単位毎に図示しない給電回路からの定電流を選択的に与えることが可能な構造を得ている。尚、電極端子3cは、ガラス基板2の一辺に集中的に配設されるように各表示セグメント部3aに対応するリード部3bが引き出し形成される。
【0017】
絶縁層4は、例えば、ポリイミド系等の絶縁材料からなり、例えばフォトリソグラフィー法等の手段によって形成される。絶縁層4は、表示セグメント部3aに対応した窓部4aを有し、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、透明電極3の表示セグメント部3aの周縁部と若干重なるように窓部4aが形成され、また、透明電極3と背面電極6との絶縁を確保するためにリード部3b上を覆うように配設される。
【0018】
有機層5は、透明電極3上に配設されるもので、少なくとも発光層を有するものであれば良いが、本発明の実施の形態においては正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層を蒸着法等の手段によって順次積層形成してなるものであり、例えば白色発光をなすものである。
【0019】
背面電極6は、アルミ(Al)や、マグネシウム銀(Mg:Ag)等の金属性の導電性材料を蒸着法やスパッタリング法等の手段によって有機層6上に形成してなるもので、長方形形状をなす単一の金属電極(非透光性の電極)であり、有機層5における発光部(表示セグメント部3a)の共通電極となる。背面電極6は、透明電極3の各電極端子3cに隣接するようにガラス基板2の一辺に設けられる陰極用の電極端子6aと電気的に接続される。尚、電極端子6aは透明電極3と同材料により、背面電極6の幅方向に沿うように細長状に形成される。
【0020】
以上のように、ガラス基板2上に透明電極3と絶縁層4と有機層5と背面電極6とを順次積層し積層体を形成することで有機EL素子9が得られる。有機EL素子9は回路基板11に配設される図示しない制御回路からの駆動信号に基づいて光輝する。有機ELパネル1は、有機EL素子9から発せられる表示光L1を透明電極3及びガラス基板2を透過してガラス基板2側から出射して発光表示をなすものであり、ガラス基板2における有機EL素子9の形成個所が第一の表示領域S1となる(図1参照)。
【0021】
封止部材7は、例えばガラス材料からなる平板部材に収納部である凹部7aを形成してなるものである。封止部材7は、凹部7aを取り囲むように形成される支持部7bを、例えば紫外線硬化型のエポキシ樹脂からなる接着剤10を介しガラス基板2上に気密的に配設することで、封止部材7とガラス基板2とで有機EL素子9を収納する気密空間を構成する。封止部材7は、透明電極3の電極端子3c及び背面電極6の電極端子6aが外部に露出するようにガラス基板2よりも若干小さ目に構成されている。なお、封止部材7は凹形状ではなく、平板状であっても良い。
【0022】
照明手段20は、有機ELパネル1の後方である有機ELパネル1の封止部材7側に位置する回路基板11上に配設されており、ガラス基板2の封止部材7が接着剤10を介して気密的に配置される封止部2aと対向している。なお、回路基板11は有機EL素子9を光輝させるための前記制御回路と照明手段20を光輝させるための制御回路とが配設されている。照明手段20は、有機ELパネル1から発せられる表示光L1とは異なる色の表示光L2(例えば、赤色)を放つLEDやランプ(着色カバーによって覆われたランプ)体等からなる光源20aと、光源20aを収納するケース体20bと、光源20aの前方に設けられる半透過性の暗色層20cとを備えている。照明手段20は、前記制御回路からの駆動信号に基づいて光源20aが光輝するものである。光源20aから発せられた表示光L2は、封止部材7の支持部7b,接着剤10及びガラス基板2の封止部2aを透過して発光表示をなす。すなわち、ガラス基板2における光源20aからの表示光L2が透過する個所が第二の表示領域S2となり、本実施形態では、ガラス基板2の封止部材7が気密的に配設される封止部2aに第二の表示領域S2が備えられることとなる。また、光源20aの前方に暗色層20cを設けることで、非発光時に光源20aが使用者に視認されることを防ぐことができる。なお、照明手段20は、光源20aを光輝させるための前記制御回路が配設された別体の回路基板上に光源20aが配設されるものであっても良い。
【0023】
以上の各部によって表示装置が構成される。かかる表示装置は、有機ELパネル1の後方に照明手段20を備え、ガラス基板2における有機EL素子9の非形成個所である封止部材7が配置される封止部2aを照明手段20によって透過照明することで、有機EL素子9から構成される第一の表示領域S1とは異なる第二の表示領域S2を発光表示させることができ、第二の表示領域S2が有機EL素子9から発せられる表示光とは異なる色にて光輝することにより、有機ELパネル1の後方に照明手段20を備えるといった簡単な構成で表示装置が装飾性に優れた表示を行うことが可能となる。また、従来のように有機ELパネル1の内部にカラーフィルタを形成しなくとも装飾性に優れた表示が可能となることから、有機ELパネル1の製造工程を煩雑にすることがなく、また表示装置のバリエーション対応についても有機ELパネル1を共通化できるため、製造工程を複雑にすることがない。また、特に照明手段20からの表示光L2を透過させてガラス基板2における封止部材7の封止部2aに第二の表示領域S2を備えることによって、従来は表示機能が設けられない封止部2aの領域を表示領域として利用するため、有機ELパネル1を拡大化させることなく新たな表示領域を設けることが可能となる。
【0024】
なお、本発明の表示装置は、図3に示すように、文字や数字あるいは模様を示す意匠部21をガラス基板2の表示面側に印刷形成し、照明手段20からの表示光L2が意匠部21を透過することにより、第二の表示領域S1にて得られる表示パターンを意匠部21によって規定するものであってもよい。意匠部21を設けることによって所定の情報を詳細に表示することができ、表示装置としての機能を更に向上させることができる。
【0025】
また、前述した実施形態は、照明手段20によってガラス基板2の封止部材7が配置される封止部2aを照明手段20によって透過照明するものであったが、本発明の表示装置は、照明手段20からの表示光L2が透過して第二の表示領域S2となる領域はガラス基板2における有機EL素子9の非形成個所であればよく、図4に示すように、ガラス基板2における有機EL素子9の形成個所と封止部材7が配設される封止部2aとの間の領域を照明手段20からの表示光L2が透過して第二の表示領域S2となるものであっても良い。
【0026】
また、前述した実施形態では、照明手段20からの表示光L2が単色からなるものであったが、本発明における照明手段は、複数の表示色が備えられるように異なる色の光を放つ複数の光源を用意し、状況に応じて前記光源を特定して光輝させることで第二の表示領域S2の表示色を変更させたり、また光源の前面に異なる色の複数のカラーフィルタを備え、状況に応じてカラーフィルタを選択して、光源からの光を選択したカラーフィルタを介して第二の表示領域S2に照射することで複数の異なる表示色を選択可能なものであっても良く、第二の表示領域S2の表示色を変更可能とすることで表示装置としての装飾性を更に向上させることができる。
【0027】
また、前述した実施形態では、有機ELパネル1の背後に照明手段20を配設するものであったが、本発明の照明手段は、有機ELパネル1の後方から表示光L2を照射可能とする構成であれば良く、例えば、照明手段を有機ELパネル1の側方に配置し、この照明手段からの光を導光部材を介して後方から有機ELパネル1に向けて出射するものであっても良い。
【0028】
また、前述した実施形態では、表示装置は単一の照明手段20を備えるものであったが、本発明の照明手段は複数設けられるものであっても良い。
【0029】
また、前述した実施形態では、セグメント表示型の有機ELパネルを用いているが、ドットマトリクス型の有機ELパネルに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態における表示装置を示す要部断面図である。
【図2】同上における有機ELパネルを示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態である表示装置を示す要部断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態である表示装置を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
S1 第一の表示領域
S2 第二の表示領域
1 有機ELパネル
2 ガラス基板(支持基板)
2a 封止部
3 透明電極(第一電極)
5 有機層
6 背面電極(第二電極)
7 封止部材
9 有機EL素子
10 接着剤
11 回路基板
20 照明手段
20a 光源
20b ケース体
20c 暗色層
21 意匠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を有する有機層を第一電極と第二電極とによって狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に配設し、封止部材を前記支持基板上に前記有機EL素子を覆うように気密的に配設してなる有機ELパネルと、前記有機ELパネルの後方から前記支持基板における前記有機EL素子の非形成個所に向けて光を出射する照明手段と、を備え、前記有機EL素子によって発光表示される第一の表示領域と、前記照明手段からの光が前記支持基板を透過して発光表示される第二の表示領域と、を有してなることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記支持基板の前記封止部材が気密的に配設される封止部に向けて光を出射してなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記照明手段は、光源と、この光源の前方に設けられる暗色層を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記支持基板の表示面側に意匠部を設け、前記第二の表示領域にて得られる表示パターンは、前記意匠部によって規定されてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第二の表示領域は、前記有機EL素子の発光色とは異なる色で発光表示されてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記照明手段は、複数の異なる表示色を選択可能であり、前記第二の表示領域の表示色を変更可能としてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−350147(P2006−350147A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178730(P2005−178730)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】