説明

表示装置

【課題】 映像表示装置において、クロック信号CKH1とCKH2との間に生じる位相のずれにより、表示画面に縦すじが発生する場合がある。
【解決手段】 第1のクロック信号線が電源線と第1の面積で重なって交差することにより生じるラインクロス容量と第2のクロック信号線が電源線と重なることにより生じるラインクロス容量とを実質的に同じにすることで、クロック信号CKH1とCKH2との間に生じる位相のずれを無くし、縦すじの発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置における駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像表示装置は、薄型テレビ、携帯電話などのモニターとして市場ニーズが強く、液晶表示装置(Liquid Crystal Display ; LCD)や有機EL(Electro Luminescence)表示装置(或いはOrganic Light Emitting Diode ; OLED)などの研究開発が盛んに行われている。これらの表示装置の駆動方式は、基本的に同じであり、大きく分けてパッシブマトリクス型とアクティブマトリクス型とに分類できる。このうち、アクティブマトリクス型の映像表示装置は、それぞれの画素にスイッチング素子を設け、それぞれの画素にビデオ信号に応じた電圧を印加して、または電流を流して表示を行う。
【0003】
ここで、図11を用いて、従来のアクティブマトリクス型有機EL表示装置の構成を説明する。
【0004】
図11に示すようなアクティブマトリクス型有機EL表示装置には、基板10上にゲート信号を供給する垂直ドライバ50に接続された複数本のゲート信号線51と、ドレイン信号を供給する水平ドライバ60から出力されるサンプリングパルスのタイミングに応じてサンプリングトランジスタSPT1、SPT2、…、SPTnが順次オンし、それに応じてデータ信号線62のデータ信号(ビデオ信号)Sigが供給される複数本のドレイン信号線61と、垂直ドライバ50及び水平ドライバ60の駆動に必要な電源電圧VVSS、VVDD、HVSS、HVDDを供給する電源ライン80、82、101、107と、電源電圧PVDDによって有機EL素子73に電流を供給する電源ライン74が配置されている。ゲート信号線51とドレイン信号線61との各交点に対応する各画素には有機EL素子73、選択トランジスタ70、駆動トランジスタ71及び保持容量72が配置されている。
【0005】
また、基板10とは別基板の外付け回路基板20には、パネル駆動用LSIが設けられている。この外部に設けられた回路基板20から第1及び第2のクロック信号CKH1及びCKH2が供給される。これらのクロック信号CKH1とCKH2は、位相が逆のクロック信号であり、サンプリングトランジスタSPt1、SPt2、…、SPtnがビデオ信号をラッチするタイミングを決める後述のタイミング信号HSWを生成するための基準信号である。さらに、パネル駆動用LSIからは、垂直ドライバのスタート信号STVと水平ドライバのスタート信号STHとビデオ信号Sigが供給される。
【0006】
次ぎに、有機EL表示装置の動作原理を図11を用いて説明する。まず、図11において、外付け回路基板20から入力されるクロック信号CKH1、CKH2は、それぞれレベルシフタ(L/S)100に入力され昇圧される。その後、クロック信号CKH1、CKH2は、複数段のバッファ回路103からなるバッファ回路部102に入力され、水平ドライバ60を構成する各シフトレジスタ25に入力される。
【0007】
各シフトレジスタ25は、水平方向のスタート信号STHに基づいて順次タイミング信号HSWを出力する。このタイミング信号HSWに基づいて、そのタイミングで選択されたサンプリングトランジスタSPTがオンし、対応するドレイン信号線61とデータ信号線62が接続され、外部から入力されるビデオ信号Sigがそのドレイン信号線61に供給される。
【0008】
また、ゲート信号が所定のゲート信号線51から選択トランジスタ70のゲート電極に入力され、その行の選択トランジスタ70がオンする。それによって、選択トランジスタ70を介して、ビデオ信号Sigが駆動トランジスタ71のゲート電極に供給される。それと同時に保持容量72がビデオ信号Sigに応じた電圧に充電あるいは放電され、ビデオ信号(データ電位)Sigが保持される。これによって、選択トランジスタ70がオフした後もデータ電位は保持容量によって安定的に保持される。保持されたデータ電位は駆動トランジスタ71のゲート電位と一致し、駆動トランジスタ71を介してデータ電位に応じた電流が電源電圧PVDDによって有機EL素子73に供給される。有機EL素子73は、供給される電流量に応じた輝度で発光し、表示装置としての表示を得ることが出来る。
【0009】
ここで、スタート信号STHに基づいて、各シフトレジスタ25から順次タイミング信号HSWが作成され、そのタイミング信号HSWに応じてビデオ信号Sigがドレイン信号線61に供給される理論的な仕組みを図9のタイミングチャートを用いて具体的に説明する。
【0010】
第1段目のシフトレジスタ25に入力される水平スタート信号STHがクロック信号の2パルス分のパルス幅を有する場合について説明する。第1段目のシフトレジスタ25に入力される水平スタート信号STHがH(High)、かつ第1のクロック信号CKH1がHになると、第1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1がHになる。タイミング信号HSW1の出力と同時にその反転信号であるXHSW1も出力され、CMOSであるサンプリングトランジスタSPT1がオンし、データ信号線62とドレイン信号線61が接続され、ビデオ信号Sigがドレイン信号線61に供給される。ここでは、HSW1がHである場合のみを図示しているが、実際には、タイミング信号HSW1が反転した信号(XHSW)も同時に出力されている。以下、タイミング信号HSWのみを図示し、その反転信号であるXHSWは省略して説明する。
【0011】
その後、水平スタート信号STHがL(Low)、かつ第2のクロック信号CKH2がLになると、第1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1がLになる。これにより、サンプリングトランジスタSPT1がオフし、データ信号線62とドレイン信号線61とが非接続となり、ドレイン信号線61の電位が確定する。また、第1段目のシフトレジスタ25は、このタイミング信号HSW1の出力と同時にタイミング信号HSW1と同一な波形のシフトパルス信号SHPを第2段目のシフトレジスタ25に出力する。
【0012】
第1段目のシフトレジスタ25から第2段目のシフトレジスタ25に出力されたシフトパルスSHP1は、第1段目のシフトレジスタ25に入力されるスタート信号STHと同様の役割を担う。SHP1がH、かつ第2のクロック信号CKH2がHになると、第2段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW2がHになる。これによりサンプリングトランジスタSPT2がオンし、ビデオ信号Sigがドレイン信号線61に供給される。
【0013】
その後、SHP1がL、かつ第1のクロック信号CKH1がLになると、第2段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW2がLになる。これにより、サンプリングトランジスタSPT2がオフし、データ信号線62とドレイン信号線61とが非接続となり、ドレイン信号線61の電位が確定する。第2段目のシフトレジスタ25は、このタイミング信号HSW2の出力と同時に、タイミング信号HSW2と同一な波形を有するシフトパルスSHP2を第3段目のシフトレジスタ25に出力する。
【0014】
以上の動作を繰り返すことにより、順次タイミング信号HSW1、HSW2、HSW3・・・が作成され、それらの信号に応じて、ビデオ信号が各画素に供給される。
【0015】
ここで、第1段目のシフトレジスタ25に入力される水平スタート信号STHがクロック信号の2パルス分のパルス幅を有する場合、第1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1がHの期間、タイミング信号HSW2〜HSW4が順次立ち上がり、タイミング信号HSW1の立ち下りと同時にタイミング信号HSW5が立ち上がる。つまり、サンプリングトランジスタSPT1がオンしている間にSPT2〜SPT4がオンし、SPT1がオフすると同時にSPT5がオンすることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の有機EL表示装置では、理論的には図9に示すように各シフトレジスタ25に同位相で入力されるはずの第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2が、位相がずれた状態で各シフトレジスタ25に入力されることがあった。図10に第2のクロック信号CKH2の位相が第1のクロック信号CKH1に比べてΔtだけ遅延した場合を示す。
【0017】
第2のクロック信号CKH2の位相遅延によって、第2のクロック信号CKH2の立ち下がり(L)でタイミング信号HSWが立ち下がる奇数番目のタイミング信号HSW1、HSW3、HSW5、・・・のパルス幅はΔtだけ広がることとなる。その結果、例えば、タイミング信号HSW1とHSW5がHighになる期間が重なることがあった。すなわち、1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1の立ち下りの直前に、5段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW5が立ち上がる状況が生じていた。この5段目のタイミング信号HSW5の立ち上がりの影響で、一時的にビデオ信号にノイズがのる場合がある。ビデオ信号にノイズがのった状態で1段目のタイミング信号HSW1が立ち下がると、1列目のドレイン信号線61の電位は、ノイズののった状態のビデオ信号で確定してしまい、所望のビデオ信号が得られないことがある。図10に示すような場合、この現象が各行の奇数列において生じるので、1画素おきに縦すじが入った表示になってしまうという問題が生じていた。ここで、1画素はRGBWからなり、1画素のRGBWは1本のドレイン信号線61を共有している。
【0018】
そこで、本発明においては、第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2との間で位相のずれが生じる原因を解明するとともに、その解決手段を提供し、表示品位の向上に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2との間で生じる位相のずれは、図11における回路配置の都合から第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2を伝送する2本のクロック信号線105、106のうち、第2のクロック信号線106のみが、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間で水平ドライバ回路60に電源電圧HVSSを供給する第1の電源線101とA点で交差し、第1及び第2のクロック信号線105、106の間でラインクロス容量の差が発生し、第2のクロック信号のみの位相が遅延することが原因であることがわかった。つまり、第2のクロック信号のみに位相遅延が生じるので、本来同じタイミングであるべき第1のクロック信号との間で位相のずれが生じていた。
【0020】
図11は、第1の電源線101と第2のクロック信号線106がA点で交差する例を示しているが、各段のバッファ回路103に電源電圧HVSS、HVDDを供給する必要があるため、容易なレイアウト変更ではこの交差点をなくすことはできない。
【0021】
そこで、本発明は、上述の位相遅延により生じる位相のずれを解決することを目的とする。
【0022】
本発明の表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素と、画素に映像を表示するための表示信号を出力するドライバ回路60と、ドライバ回路60に第1の電源電圧を供給する第1の電源線101と、ドライバ回路101に前記表示信号の出力タイミングを制御する第1のクロック信号を伝送する第1のクロック信号線105と、ドライバ回路60に第1のクロック信号が反転した第2のクロック信号を伝送する第2のクロック信号線106と、を有する表示装置において、第2のクロック信号線106は、第1の電源線101と第1の面積で重なって交差し、第1のクロック信号線105は、第1の電源線101と重なるが交差しない信号遅延調整部104を有する。
【0023】
この構成により、信号遅延調整部104で、第2のクロック信号線106が第1の電源線101とA点で交差する部分で生じていた第2のクロック信号の位相遅延と同じだけ第1のクロック信号を遅延させることができる。その結果、クロック信号CKH1とCKH2との間で位相のずれが生じず、タイミング信号HSW1が立ち下がる直前に、タイミング信号HSW5が立ち上がることがなく、即ちノイズののったビデオ信号で確定することがなく、所望のビデオ信号をドレイン信号線61に供給することができる。それによって、縦すじの発生を防止して、高品質な表示装置が得られる。即ち、本願においては、第2のクロック信号線106で発生するクロック信号の位相遅延を解消するのではなく、第1のクロック信号線105に本来不要な位相遅延を意図的に発生させることで両方のクロック信号線のクロック信号のタイミングを揃えるものである。
【0024】
また、第1及び第2のクロック信号線105、106は、同層に形成され、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる信号遅延調整部104の面積は、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差する部分の面積と等しくなるような構成とする。第1及び第2のクロック信号線105、106が同層に形成された場合、それぞれの信号線と第1の電源線101との間で生じるラインクロス容量を実質的に等しくするためには、それぞれの信号線と第1の電源線101とが重畳する面積のみを実質的に等しくすればよい。逆に言えば、第1及び第2のクロック信号線105、106が異層に形成された場合、それぞれのクロック信号線105、106と第1の電源線101との間の層間絶縁膜の膜厚、層間絶縁膜の誘電率を考慮して、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる信号遅延調整部104の面積を決定すればよい。
【0025】
また、第1のクロック信号線105は、第1の電源線101と並行に延在し、第1のクロック信号線105の一部が、第1の電源線101の第1のクロック信号線105が延在する側の第1の側辺から入って第1の側辺から出ることにより第1の電源線101と重なることで信号遅延調整部104が形成される。これによって、第1及び第2のクロック信号CKH1、CKH2の位相が同じ電源線101に起因して遅延するので、遅延値を合わせやすい。
【0026】
また、第1の電源線101の第1の側辺と第1のクロック信号線105の側辺とによって囲まれる領域において、第1の側辺方向の領域の最大幅が、第1の側辺と垂直方向の領域の最大幅よりも広い構成をとってもよい。これによって、第1のクロック信号線105の冗長な長さを短くすることができる。
【0027】
本発明における他の実施形態では、信号遅延調整部104は、第1の電源線101の一部が突き出した電源線突出部を有し、第1のクロック信号線105が電源線突出部と重なるので、第1のクロック信号線105の配線長を変更することなく信号遅延調整部104
を形成でき、本発明を実施する際のパターン変更を最小化できる。
【0028】
さらに、上記構成により、第1の電源線101、または第1及び第2のクロック信号線105、106を形成する過程でマスクずれが生じた場合でも、それぞれのクロック信号線105、106と電源線とが交差する面積を一定に保つことができる。つまり、それぞれのラインクロス容量を同等に保つことができるので、マスクずれが生じた場合でも縦すじが発生せず、高品質の表示装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明における表示装置は、第1及び第2のクロック信号CKH1、CKH2の電圧レベルを変換するレベルシフタ回路100と、電流駆動能力が異なる複数のバッファ回路103からなるバッファ回路部102とをさらに備え、信号遅延調整部104は、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間に設けられる。
【0030】
また、信号遅延調整部104は、所定段のバッファ回路103と次段のバッファ回路103の間に設けられてもよい。これにより、信号遅延調整部104が少なくとも1段のバッファ回路103の後に形成されるので、クロック信号がなまりにくく、信号の減衰を防止できる。また、全てのバッファ回路103後に形成する必要は必ずしもないので、レイアウトを優先できる。
【0031】
また、第1及び第2のクロック信号線105、106の幅は、第1の電源線101の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0032】
また、本発明における他の実施形態は、マトリクス状に配置された複数の画素と、画素に映像を表示するための表示信号を出力するドライバ回路60と、ドライバ回路60に第1及び第2の電源電圧を供給する第1及び第2の電源線101、107と、ドライバ回路60に表示信号の出力タイミングを制御する第1のクロック信号を伝送する第1のクロック信号線105と、ドライバ回路60に第1のクロック信号が反転した第2のクロック信号を伝送する第2のクロック信号線106と、を有する表示装置において、第2のクロック信号線106は、第1の電源線と第1の面積で重なって交差し、第1のクロック信号線は、第2の電源線と交差しないで、第1の面積と等しい面積で第2の電源線と重なる信号遅延調整部を有する。
【0033】
この構成により、クロック信号CKH1とCKH2との間で位相のずれが生じず、タイミング信号HSW1が立ち下がる際に、ノイズののったビデオ信号を拾わず、所望のビデオ信号をデータ線に供給することができ、高品質な表示装置が得られる。特に、第2の電源線107と重ねることでレイアウトの自由度が大幅に向上する。
【0034】
また、第1及び第2のクロック信号線105、106は、同層に形成され、第1及び第2の電源線101、107は、同層に形成され、第1のクロック信号線105が第2の電源線107と重なる信号遅延調整部104の面積は、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差する部分の面積と等しくなるような構成とする。第1及び第2の電源線101、107を同層に、第1及び第2のクロック信号線を同層に形成することで、第1のクロック信号線105が第2の電源線107と重なることで生じるラインクロス容量と第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差することで生じるラインクロス容量とを実質的に等しくするためには、信号遅延調整部104の面積と第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差する面積とを実質的に等しくなるようにすれば足りる。
【0035】
また、信号遅延調整部104は、第2の電源線107と並行に延在し、第1のクロック信号線105の一部が、第2の電源線107の第1のクロック信号線105が延在する側
の第2の側辺から入って第2の側辺から出ることにより第2の電源線107と重なることで信号遅延調整部が形成される。これにより、第1のクロック信号線105と第2のクロック信号線106とを別々の電源線と重ね、あるいは交差させることができるので、レイアウトの自由度がより向上する。
【0036】
また、第2の電源線107の第2の側辺と第1のクロック信号線105の側辺とによって囲まれる領域において、第2の側辺方向の領域の最大幅が、第2の側辺と垂直方向の領域の最大幅よりも広くてもよい。これによって、第1のクロック信号線105の冗長な長さを短くすることができる。
【0037】
また、信号遅延調整部104は、第2の電源線107の一部が突き出した電源線突出部を有し、第1のクロック信号線105が電源線突出部と重なる。この構成により、マスクずれにも対応した信号遅延調整部104を提供することができる。
【0038】
また、第1及び第2のクロック信号の電圧レベルを変換するレベルシフタ回路100と、電流駆動能力が異なる複数のバッファ回路103からなるバッファ回路部102とをさらに備え、信号遅延調整部104は、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間に設けられる。
【0039】
また、信号遅延調整部104は、所定段のバッファ回路103と次段のバッファ回路103の間に設けられてもよい。これにより、バッファ回路103後に信号遅延調整部104を設けることで、クロック信号のなまりが抑制され、クロック信号の減衰を防止することができる。
【0040】
また、第1及び第2のクロック信号線105、106の幅は、第1の電源線101の幅よりも狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、第2のクロック信号線106で生じる位相遅延に応じて、第1のクロック信号線105に信号遅延調整部104を設けることで、各シフトレジスタ25に供給されるクロック信号CKH1とCKH2との間で生じる位相のずれを防止することができる。それによって、縦すじなどの表示むらのない高品質な表示装置を提供することができる。
【0042】
また、信号遅延調整部104を所定段のバッファ回路103と次段のバッファ回路103との間に設けることで、クロック信号がなまることなく、第1及び第2のクロック信号の両信号の信号遅延を防止することができる。
【0043】
また、信号遅延調整部104における第1のクロック信号線105が第1の電源線101の突出部と重なる構成にすることで、縦すじなどの表示むらのない高品質な表示装置を提供することができるとともに、マスクずれにも対応することができる。さらに、上記構成により第1のクロック信号線の冗長な長さを短くすることができる。
【0044】
また、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差することで生じる位相遅延に応じて、第1のクロック信号線105を第2の電源線107と重ねることで、クロック信号CKH1とCKH2との間で生じる位相のずれを防止することができる。それによって、縦すじなどの表示むらのない高品質な表示装置を提供することができる。
【0045】
さらに、第1及び第2のクロック信号線105、106をそれぞれ別々の電源線と重ね、或いは交差させることができるので、レイアウトの自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、アクティブマトリクス型有機EL表示装置の一例を示す概略図である。なお、本発明は、有機EL表示装置に限らず、液晶表示装置や、その他の表示素子を用いるアクティブマトリクス型の表示装置に用いることが出来る。
【0047】
図1において、信号遅延調整部104を有する電位変換回路部110以外の構成は、図11と同様である。つまり、パネル領域10内の表示領域には、列方向に延びる複数のドレイン信号線61と行方向に延びるゲート信号線51とが配置されている。ドレイン信号線61とゲート信号線51との交差付近には、スイッチング用の選択トランジスタ70と、それに接続された保持容量72と、ゲート電極が選択トランジスタ70のドレイン電極に接続された駆動トランジスタ71と、駆動トランジスタのドレイン電極に接続された有機EL素子73が配置され、表示画素を形成している。すなわち、行方向に延在する複数のゲート信号線51と行方向に延在する複数のドレイン信号線61とによってマトリクス状に複数の画素が配置されている。
【0048】
表示領域の周辺には、複数のドレイン信号線61が共通に接続されている水平ドライバ60と、複数のゲート信号線51が共通に接続されている垂直ドライバ50が配置されている。水平ドライバ60からは、画素にビデオ信号を供給するための表示信号が出力され、垂直ドライバ50からは、選択トランジスタ70をオンするための表示信号が出力される。
【0049】
水平ドライバ60には、レベルシフタ回路100、複数のバッファ回路103、信号遅延調整部104、第1及び第2のクロック信号線105、106、第1及び第2の電源線101、107を備える電位変換回路部110からクロック信号CKH1、CKH2及び電源電圧HVSS、HVDDが供給される。ここで、クロック信号CKH1とCKH2とは信号の波形が反転したクロック信号である。つまり、2つのクロック信号は、同位相だが、信号の立ち上がり、若しくは立ち下りが逆の信号である。なお、図示していないが、垂直ドライバ50周辺にも同様の構成の電位変換回路部が配置されている。
【0050】
また、パネル領域10外には、パネル駆動用LSIが搭載された外付け回路基板20が設けられている。このパネル駆動用LSIは、水平及び垂直ドライバ60、50、バッファ回路103を動作させるための電源電圧HVSS、HVDD、VVSS、VVDD、水平及び垂直ドライバを動作させるためのクロック信号CKH1,CKH2,CKV1,CKV2、タイミング信号STH,STV、ビデオ信号Sigを作成している。
【0051】
また、水平ドライバ60には、複数のシフトレジスタ25と複数のサンプリングトランジスタSPT1,SPT2,SPT3…が配置され、水平ドライバ60を駆動するための電源電圧HVSS、HVDDを供給する第1および第2の電源線101、107、クロック信号CKH1,CKH2を供給するクロック信号線105、106が接続されている。ここでは、例えば第1の電源線101の電源電圧HVSSはグランドレベル、第2の電源線107の電源電圧HVDDは10.5Vに設定されている。各シフトレジスタ25は、クロック信号CKH1,CKH2に基づき、水平方向のスタート信号STH、シフトパルス信号SHPを順次次段のシフトレジスタ25に転送し、タイミング信号HSWを出力する。そして、第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2に同期して出力されるタイミング信号HSWによって水平ドライバから画素に出力される表示信号の出力タイミングが制御される。つまり、表示信号の出力タイミングは、第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2によって制御される。
【0052】
図1において特徴的なことは、電位変換回路部110内における第1のクロック信号線105が信号遅延調整部104を有することである。これにより、CKH1とCKH2との位相のずれを防止することができる。
【0053】
以下、本発明において特徴的な信号遅延調整部104の実施形態について図面を用いて説明する。
【0054】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図2を用いて説明する。図2は、図1における電位変換回路部110の主要な部分の拡大図である。図2の電位変換回路部110は、信号遅延調整部104、第1及び第2のクロック信号線105、106が接続されたレベルシフタ(L/S)100と複数のバッファ回路103、水平ドライバ60と複数のバッファ回路103に電源電圧を供給する第1及び第2の電源線105、106とから構成されている。第1及び第2のクロック信号線105、106の延在方向に第1の電源線101の一部が延びている。ここで、第1の電源線101は、複数のバッファ回路103と水平ドライバ60の電源として機能し(HVSS)、例えば、グランドレベルに接続されている。
【0055】
レベルシフタ回路100から延びる線幅W1の第2のクロック信号線106は、レベルシフタ100とバッファ回路103との間で線幅W2の第1の電源線101と第1の面積で重なって交差する。つまり、第2のクロック信号線106は、第1の電源線101の第1の側辺、即ち、第1のクロック信号線106が延在する側の側辺から入り、第1の電源線101のもう一方の側辺から出ることによって、第1の電源線101と交差している。本願で交差するとは、第1の側辺から入って、反対側の側辺から出ることである。その際、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが重畳する面積を第1の面積とする。また、レベルシフタ回路100から延びる線幅W1の第1のクロック信号線105は、第1の電源線101と交差しないで、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間で屈曲し、第1の面積と実質的に等しい面積で第1の電源線101と重なっている。つまり、第1のクロック信号線105は、第1の電源線101の第1の側辺から入り、第1の電源線101上で第1の電源線101が延在する方向に曲がり、再び第1の電源線101の第1の側辺から出ることによって、第1の電源線101と交差しないで重なっている。その際、第1のクロック信号線105は、第1の電源線101と重畳する面積が上述の第1の面積と実質的に等しくなるように第1の電源線105と重なっている。
【0056】
第1の実施形態により、第2のクロック信号線106と第1の電源線101との間に生じるラインクロス容量と第1のクロック信号線105と第1の電源線101との間に生じるラインクロス容量とが実質的に等しくなる。それによって、クロック信号CKH1とCKH2との間で生じる位相のずれを防止することができる。言い換えれば、第2のクロック信号CKH2の位相遅延に応じて、第1のクロック信号CKH1の位相を遅延させることによって、クロック信号CKH1とCKH2との間で生じる位相のずれを防止している。
【0057】
第1の実施形態におけるより好ましい形態は、第1の電源線101の第1の側辺と第1のクロック信号線105の側辺とによって囲まれる領域において、第1の側辺方向の最大幅L1が、第1の側辺と垂直な方向の最大幅L2よりも広いことである。つまり、L1とL2がL1>L2となることが好ましい。
【0058】
また、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる面積が第1の面積と実質的に等しくなるためには、電源線の幅W2とL2がW2/2>L2となる関係を満たす必要がある。なお、ここでは、第1および第2のクロック信号線105、106の線幅W1が等しいことを前提としている。上記関係を満たす必要がある理由は、第2のクロッ
ク信号線106が第1の電源線101と重なる領域の第1の側辺に垂直な方向の長さが、おおよそ第1の電源線101の幅W2であり、第1のクロック信号線105は、第1の電源線101上で折り返しているので、L2がL2>W2/2になると第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる面積が第1の面積よりも大きくなり、等しくならないからである。
【0059】
ここでは、第1及び第2のクロック信号線105、106の幅がそれぞれW1で等しいとして説明したが、本発明においては、それぞれの信号線105、106の幅が異なっていてもよく、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差して重なる第1の面積と、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる面積が実質的に同じであればよい。例えば、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と重なる部分の線幅のみを太くして、重なる長さは短くしてもよい。
【0060】
また、第1のクロック信号線105と第2のクロック信号線106が異なる層に形成されると、面積が同じであっても、層間絶縁膜の厚さや誘電率によって位相遅延量が変わってしまい、位相を揃えるのが難しいので、第1のクロック信号線105と第2のクロック信号線106とを同層に形成して面積を等しくするのが簡便である。
【0061】
また、図2においては、第1のクロック信号線105が矩形に屈曲した実施例を示したが、本発明は、この形態に限られることはなく、例えば、図3のような構成にしてもよい。つまり、第1のクロック信号線105が第1の側辺から入り、第1の電源線101上で鋭角に曲がり、再び第1の側辺から出る構成としてもよい。即ち、本発明は、第1のクロック信号線105の形状に依らず、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差して重なる第1の面積と、第1のクロック信号線105と第1の電源線101とが重なる面積が実質的に同じであればよい。
【0062】
なお、電源線や信号線などの材料は、例えばAl、Mo、ポリシリコンなどの導電性の配線である。また、電源線の幅は、表示パネルに内蔵できる駆動回路の占有面積などにもよるが、100〜120μmが好ましく、クロック信号線の幅は、10μm程度が好ましい。
【0063】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を図4を用いて説明する。第2の実施形態の電位変換回路部110における第1の電源線101は、レベルシフタ100とバッファ回路103との間で第1の電源線101が突出した電源線突出部を有する。そして、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが交差して重なる第1の面積と実質的に等しい面積となるように、第1の電源線101と平行に延在した第1のクロック信号線105が電源線突出部と重なることを特徴とする。
【0064】
第2の実施形態によっても、第2のクロック信号線106と第1の電源線101との間に生じるラインクロス容量と第1のクロック信号線105と第1の電源線101との間に生じるラインクロス容量とが実質的に等しくなり、クロック信号CKH1とCKH2との間で生じる位相のずれを防止することができる。
【0065】
さらに、第2の実施形態により、マスクずれが生じた場合でも、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが交差して重なる第1の面積と、第1のクロック信号線105と電源線突出部とが交差して重なる面積とを実質的に同じに保つことが出来る。
【0066】
次に、第2の実施形態の利点を第1の実施形態を示した図2と比較して説明する。図2において、例えば第1の電源線101を形成する過程でマスクずれが生じ、第1の電源線
101が左右どちらかにずれて形成された場合を考える。この場合、第1の電源線101が多少左右にずれて形成されても、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが重なる面積は変化しない。しかし、第1の電源線101が右側、即ち第2のクロック信号線106が延在する側にずれて形成された場合、第1のクロック信号線105と第1の電源線101とが重なる面積は小さくなる。また、第1の電源線101が左側、即ち第1のクロック信号線105が延在する側にずれて形成された場合、その面積は大きくなる。つまり、第1の実施形態において、マスクずれが生じた場合、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが重なる第1の面積は変わらないが、第1のクロック信号線105と第1の電源線101とが重なる面積は変わってしまう場合がある。
【0067】
それに対して、第2の実施形態を示した図4においては、第1の電源線101を形成する過程でマスクずれが生じ、第1の電源線101が左右どちらかにずれて形成された場合であっても、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが重なる面積は変化せず、第1のクロック信号線105と第1の電源線101とが重なる面積も変化しない。また、2本のクロック信号線が延在する方向にマスクずれが生じた場合でも、第1及び第2のクロック信号線105、106のそれぞれが第1の電源線101と重なる面積は実質的に変化しない。
【0068】
したがって、第2の実施形態によれば、マスクずれが生じた場合でも、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが交差する第1の面積と第1のクロック信号線105と第1の電源線101とが重なる面積とを同じに保つことができ、位相のずれを発生させることがない。つまり、マスクずれにも対応した信号遅延調整部104を提供することができる。
【0069】
また、第2の実施形態においては、図4における長さL3が1μm以上であることが好ましい。なぜなら、マスクずれの最大値はおおよそ1μm程度なので、L3が1μm以上となるように設計されていれば、第2のクロック信号線106と第1の電源線101とが交差して重なる第1の面積と、第1のクロック信号線105と電源線突出部とが重なる面積とを確実に同じに保つことが出来る。
【0070】
(第3及び第4の実施形態)
図5、図6を用いて第3及び第4の実施形態を説明する。図5に示す第3の実施形態は、第2のクロック信号線106と第1の電源線101との交差部と、第1の実施形態における信号遅延調整部104が第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に設けられることを特徴としている。これにより、第1の実施形態に比して、クロック信号CKH1及びCKH2の両信号の信号遅延を防止できる。第1の実施形態の場合、レベルシフタ回路100から出力された直後のクロック信号CKH1及びCKH2は、第1の電源線101との交差部及び信号遅延調整部104によって信号がなまる場合がある。それによって、クロック信号CKH1及びCKH2のそれぞれの信号が遅延する場合がある。言い換えれば、それぞれのクロック信号の間で位相のずれは生じないが、それぞれのクロック信号CKH1、CKH2が同時に遅延する場合がある。
【0071】
それに対して、第3の実施形態では、バッファ回路の出力後に第2のクロック信号線106と第1の電源線101との交差部と第1のクロック信号線105の信号遅延調整部104を設けているので、バッファ後のクロック信号CKH1、CKH2は、交差部及び信号遅延調整部104によって信号がなまることなく、クロック信号CKH1、CKH2の両信号の信号遅延をより防止できる。
【0072】
ここでは、第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に信号遅延調整部が配置される例を示したが、本発明はこれに限定されるわけではない。つま
り、第2段目よりも後段のバッファ回路103間に交差部及び信号遅延調整部104が配置されていてもよい。ただし、後段になるほどバッファ回路103の回路素子が大きくなるので、レイアウト設計の自由度の観点から、第1段目と第2段目のバッファ回路103の間に信号遅延調整部104が配置されるのがより好ましい。
【0073】
図6に示す第4の実施形態は、第2のクロック信号線106と第1の電源線101との交差部と第2の実施形態における信号遅延調整部104が第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に設けられることを特徴としている。これにより、第3の実施形態と同様に信号のなまりによるクロック信号CKH1及びCKH2の両信号の信号遅延を防止できる。
【0074】
また、本発明は、交差部及び信号遅延調整部104が第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に設けられていることに限らず、第2段目以降のバッファ回路103間に設けてもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態について図7を用いて説明する。第5の実施形態における電位変換回路部110は、第1及び第2のクロック信号線105、106に接続されたレベルシフタ回路100と複数のバッファ回路103とを有し、2本のクロック信号線105、106が延在する方向に、第1の電源線101と第2の電源線107が延在している。ここで、第1の電源線101は、例えばグランドレベルに設定されており(HVSS)、第2の電源線107は、10.5Vの高電位(HVDD)に設定されている。第1〜第4の実施形態では、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差し、第1のクロック信号線105が第1の電源線101と交差しないで重なるように、または第1の電源線101の突出部と重なるように信号遅延調整部104が形成されている。それに対して、第5の実施形態は、第2のクロック信号線106は第1の電源線101と交差し、第1のクロック信号線105は第1及び第2の電源線105、107と交差しないで第2の電源線107と重なる構成である。
【0075】
つまり、第2のクロック信号線106は、第1の電源線101の第1の側辺から入り、もう一方の側辺から出て第1の電源線101と交差し、第1のクロック信号線105は、第1及び第2の電源線101、107と交差せず、第2の電源線107の第1のクロック信号線105が延在する側の第2の電源線107の第2の側辺から入り、再び第2の側辺から出て第2の電源線107と重なっている。
【0076】
第5の実施形態における信号遅延調整部104によっても第1〜第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。即ち、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差することにより生じる第2のクロック信号の位相遅延に応じて、第1のクロック信号線105の信号遅延調整部104で第1のクロック信号を遅延させ、第1と第2のクロック信号の位相のずれを防止できる。それによって、縦すじなどの表示むらの発生を防止することができる。
【0077】
また、第1及び第2のクロック信号線105、106は同層に、第1及び第2の電源線101、107は同層に形成することが望ましい。これは、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差することで生じる位相遅延と信号遅延調整部104で生じさせる位相遅延とを実質的に等しくするために、信号遅延調整部104の面積と第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差する面積とを等しくすればよいからである。
【0078】
図7においては、第1のクロック信号線105が矩形に屈曲し信号遅延調整部104を形成しているが、本発明はこれに限られることなく、図3に示すように第1のクロック信
号線105が第2の電源線107の第2の側辺から入って、第2の電源線107上で鋭角に折り返し信号遅延調整部104を形成してもよい。
【0079】
また、図7においては、信号遅延調整部104が第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に設けられた例を図示しているが、本発明はこれに限られるものではない。つまり、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間、或いは第2段目以降のバッファ回路103の間に設けられてもよい。
【0080】
(第6の実施形態)
第6の実施形態を図8を用いて説明する。第6の実施形態では、第5の実施形態と同様に、電位変換回路部110は第1及び第2のクロック信号線105、106に接続されたレベルシフタ回路100と複数のバッファ回路103とを有し、第1及び第2のクロック信号線105、106が延在する方向に、第1の電源線101と第2の電源線107が延在している。第5の実施形態と異なる点は、第2の電源線107が電源線突出部を有することである。そして、第1のクロック信号線105が電源線突出部と重なることで信号遅延調整部104を形成する。
【0081】
第1のクロック信号線105が第2の電源線107の電源線突出部と重なることで、第2のクロック信号線106が第1の電源線101と交差することにより生じる第2のクロック信号の位相遅延に応じて、第1のクロック信号を遅延させ、第1と第2のクロック信号の位相のずれを防止することができる。それによって、縦すじなどの表示むらの発生を防止することができる。
【0082】
さらに、第1のクロック信号線105が第2の電源線107の電源線突出部と重なることで、マスクずれが生じた場合でも第1のクロック信号CKH1と第2のクロック信号CKH2との間で位相のずれが発生しない。
【0083】
また、図8においては、信号遅延調整部104が第1段目のバッファ回路103と第2段目のバッファ回路103との間に設けられた例を図示しているが、本発明はこれに限られるものではない。つまり、レベルシフタ回路100とバッファ回路部102との間、或いは第2段目以降のバッファ回路103の間に設けられてもよい。
【0084】
上記第1〜6の実施形態では、第1の電源線101としてHVSSを例示したが、HVDDとしても良いし、それ以外でも良い。第1及び第2の電源線101、107がHVSSとHVDDであるなら、通常近接して配置されるので、レイアウト設計しやすく、HVSSとHVDDは通常同層に形成されるので、位相遅延量を揃えやすい。
【0085】
また、第2のクロック信号線107が第1の電源線101と交差し、第1のクロック信号線105が信号遅延調整部104を有するとしたが、第1のクロック信号線105と第2のクロック信号線106とが入れ替わっていても良い。
(タイミング信号の作成方法)
以上に示したように、本発明の第1〜5の実施形態によれば、電位変換回路110内で第1のクロック信号線105が信号遅延調整部104を有することで、図9に示す理論的なタイミング信号HSWを得ることが出来る。
【0086】
図8では、第1段目のシフトレジスタ25に入力される水平スタート信号STHがクロック信号の2パルス分のパルス幅を有する場合について、具体的に説明する。第1段目のシフトレジスタ25に入力される水平スタート信号STHがH(High)、かつCKH1がHになると、第1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1がHになる。タイミング信号HSW1の出力と同時にその反転信号であるXHSW1も出
力され、これらの信号によりCMOSであるサンプリングトランジスタSPT1がオンし、ビデオ信号がデータ信号線61に供給される。ここでは、HSW1がHである場合のみを図示しているが、実際には、タイミング信号HSW1が反転した信号(XHSW)も同時に出力されている。以下、タイミング信号HSWのみを図示し、その反転信号であるXHSWは省略して説明する。
【0087】
その後、STHがL(Low)、かつCKH2がLになると、第1段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW1がLになる。これにより、サンプリングトランジスタSPT1がオフし、ビデオ信号線62とデータ信号線61とが非接続となり、データ信号線の電位が確定する。このタイミング信号HSW1の出力と同時に、第1段目のシフトレジスタ25は、タイミング信号HSW1と同一な波形を有する信号であるシフトパルス信号SHP1を第2段目のシフトレジスタ25に出力する。
【0088】
第1段目のシフトレジスタ25から第2段目のシフトレジスタ25に出力されたシフトパルスSHP1は、第1段目のシフトレジスタ25に入力されるスタート信号STHと同様の役割を担う。SHP1がH、かつCKH2がHになると、第2段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW2がHになる。これによりサンプリングトランジスタSPT2がオンし、ビデオ信号がデータ信号線61に供給される。その後、SHP1がL、かつCKH1がLになると、第2段目のシフトレジスタ25から出力されるタイミング信号HSW2がLになる。これにより、サンプリングトランジスタSPT2がオフし、ビデオ信号がデータ信号線61に供給されなくなり、データ信号線の電位が確定する。このタイミング信号HSW2の出力と同時に、第2段目のシフトレジスタ25は、タイミング信号HSW2と同一な波形を有するシフトパルスSHP2を第3段目のシフトレジスタ25に出力する。
【0089】
以上の動作を繰り返すことによりタイミング信号HSW1、HSW2、HSW3・・・が作成され、それらの信号に応じてビデオ信号が各画素に供給される。
【0090】
以上のように、本発明は、信号遅延調整部104によって、クロック信号CKH1とCKH2との間で位相のずれを発生させず、同位相でシフトレジスタ25に入力することができる。その結果、例えばHSW1が立ち下がる直前にHSW5が立ち上がることなく、第1段目のシフトレジスタ25から所望のビデオ信号が出力される。それによって、縦すじなどの表示むらが発生することなく、高品位の表示装置を提供することができる。
【0091】
なお、バッファ回路などのばらつきによりクロック信号CKH1とCKH2との間で若干位相がずれる場合があるが、その位相のずれは、5〜10ns(ナノ秒)程度以下であればよい。
【0092】
また、ここでは、STHがクロック信号の2パルス分のパルス幅を有する場合の例で説明したが、本発明はこれに限られるものではない。一般的に、STHがクロック信号のMパルス分のパルス幅を有する場合、即ち、STHの立ち上がりから立ち下りまでの間にクロック信号がM回立ち上がる、或いは立ち下がる場合、第N段目のシフトレジスタ25から出力される第Nのタイミング信号HSW(N)の立ち下がる直前に、第(N+2M)段目のシフトレジスタ25から出力される第(N+2M)のタイミング信号HSW(N+2M)が立ち上がることなく、第N段目のシフトレジスタ25から所望のビデオ信号が出力されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置を有機EL表示装置に応用した場合の等価回路図。
【図2】図1における電位変換回路部の等価回路図。
【図3】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図4】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図5】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図6】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図7】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図8】本発明に係る電位変換回路部の等価回路図。
【図9】理論的または本発明における水平ドライバのタイミングチャート図。
【図10】従来の有機EL表示装置での水平ドライバのタイミングチャート図。
【図11】従来の有機EL表示装置における等価回路図。
【符号の説明】
【0094】
10 表示パネル
20 外付け回路基板
25 シフトレジスタ
50 垂直ドライバ
51 ゲート信号線
60 水平ドライバ
61 データ信号線
62 ビデオ信号線
70 選択トランジスタ
71 駆動トランジスタ
72 保持容量
73 有機EL素子
80 VVSS
82 VVDD
100 レベルシフタ
101 第1の電源線(HVSS)
102 バッファ回路部
103 バッファ回路
104 信号遅延調整部
105 第1のクロック信号線
106 第2のクロック信号線
107 第2の電源線(HVDD)
110 電位変換回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の画素と、
前記画素に映像を表示するための表示信号を出力するドライバ回路と、
前記ドライバ回路に第1の電源電圧を供給する第1の電源線と、
前記ドライバ回路に前記表示信号の出力タイミングを制御する第1のクロック信号を伝送する第1のクロック信号線と、
前記ドライバ回路に前記第1のクロック信号が反転した第2のクロック信号を伝送する第2のクロック信号線と、を有する表示装置において、
前記第2のクロック信号線は、前記第1の電源線と重なって交差し、
前記第1のクロック信号線は、前記第1の電源線と重なるが交差しない信号遅延調整部を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のクロック信号線は、同層に形成され、
前記第1のクロック信号線が前記第1の電源線と重なる前記信号遅延調整部の面積は、前記第2のクロック信号線が前記第1の電源線と交差する部分の面積と等しいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1のクロック信号線は、前記第1の電源線と並行に延在し、前記第1のクロック信号線の一部が、前記第1の電源線の前記第1のクロック信号線が延在する側の第1の側辺から入って前記第1の側辺から出ることにより前記第1の電源線と重なることで前記信号遅延調整部が形成されることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1の電源線の前記第1の側辺と前記第1のクロック信号線の側辺とによって囲まれる領域において、前記第1の側辺方向の前記領域の最大幅が、前記第1の側辺と垂直方向の前記領域の最大幅よりも広いことを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1の電源線は、前記第1の電源線の一部が突き出した電源線突出部を有し、
前記第1のクロック信号線が前記電源線突出部と重なることで前記信号遅延調整部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のクロック信号の電圧レベルを変換するレベルシフタ回路と、
電流駆動能力が異なる複数のバッファ回路からなるバッファ回路部と、をさらに備え、
前記信号遅延調整部は、前記レベルシフタ回路と前記バッファ回路部との間に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記信号遅延調整部は、所定段の前記バッファ回路と次段の前記バッファ回路の間に設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1及び第2のクロック信号線の幅は、前記第1の電源線の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1〜7に記載の表示装置。
【請求項9】
マトリクス状に配置された複数の画素と、
前記画素に映像を表示するための表示信号を出力するドライバ回路と、
前記ドライバ回路に第1及び第2の電源電圧を供給する第1及び第2の電源線と、
前記ドライバ回路に前記表示信号の出力タイミングを制御する第1のクロック信号を伝送する第1のクロック信号線と、
前記ドライバ回路に前記第1のクロック信号が反転した第2のクロック信号を伝送する第2のクロック信号線と、を有する表示装置において、
前記第2のクロック信号線は、前記第1の電源線と重なって交差し、
前記第1のクロック信号線は、前記第2の電源線と重なるが交差しない信号遅延調整部を有することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記第1及び第2のクロック信号線は、同層に形成され、
前記第1及び第2の電源線は、同層に形成され、
前記第1のクロック信号線が前記第2の電源線と重なる前記信号遅延調整部の面積は、前
記第2のクロック信号線が前記第1の電源線と交差する部分の面積と等しいことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1のクロック信号線は、前記第2の電源線と並行に延在し、前記第1のクロック信号線の一部が、前記第2の電源線の前記第1のクロック信号線が延在する側の第2の側辺から入って前記第2の側辺から出ることにより前記第2の電源線と重なることで前記信号遅延調整部を形成することを特徴とする請求項9〜10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2の電源線の前記第2の側辺と前記第1のクロック信号線の側辺とによって囲まれる領域において、前記第2の側辺方向の前記領域の最大幅が、前記第2の側辺と垂直方向の前記領域の最大幅よりも広いことを特徴とする請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2の電源線は、前記第2の電源線の一部が突き出した電源線突出部を有し、前記第1のクロック信号線が前記電源線突出部と重なることで前記信号遅延調整部を形成することを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1及び第2のクロック信号の電圧レベルを変換するレベルシフタ回路と、電流駆動能力が異なる複数のバッファ回路からなるバッファ回路部と、をさらに備え、
前記信号遅延調整部は、前記レベルシフタ回路と前記バッファ回路部との間に設けられることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の表示装置。
【請求項15】
前記信号遅延調整部は、所定段の前記バッファ回路と次段の前記バッファ回路の間に設けられることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の表示装置。
【請求項16】
前記第1及び第2のクロック信号線の幅は、前記第1の電源線の幅よりも狭いことを特徴とする請求項9〜15に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−264468(P2007−264468A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91954(P2006−91954)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】