説明

表示装置

少なくとも2つの異なる状態を有する層配置または層分離に基づく、例えば光スイッチのような表示セルである。流体(5)の一方は、例えば油等であって、第1の状態では、少なくとも第1の支持板(3)に隣接し、第2の状態では、他の流体(6)の少なくとも一部が、第1の支持板に隣接する。油の移動を制御するため、均一電極(7)の一部が除去される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の透明支持板と第2の支持板の間の空間に、相互に不混和の、少なくとも第1の流体と第2の流体を有する光スイッチに関し、第2の流体は電気伝導性または極性を有する。特に本発明は、第1の透明支持板と第2の支持板の間の空間に、相互に不混和の、少なくとも第1の流体と第2の流体を有する画像素子を有する表示装置に関し、第2の流体は電気伝導性または極性を有する。
【0002】
光スイッチは、例えばディスプレイ用のシャッター用、ダイアフラム、さらには切替式カラーフィルタとして使用しても良い。
【背景技術】
【0003】
TFT−LCD等の表示装置は、ラップトップコンピュータやその構成体に使用され、GSMテレフォン向けの幅広い用途がある。LCDの代わりに、例えば(高分子)LED表示装置が利用される場合もある。
【0004】
これらの従来のディスプレイとは別に、現在、電気泳動式ディスプレイのような他の表示技術が開発されており、この技術は、白い紙への適用に適している。
【0005】
本発明は、エレクトロウェッティングと呼ばれる原理に基づくものである。本発明は、この技術を用いた新たな方法を提供する。
【0006】
例えば、ある(第1の)流体が(着色)油であり、第2の(他の)流体が水である場合、(界面張力によって)水の層と油の層を有する2層システムが提供される。しかしながら、水と第1の支持板上の電極の間に電圧が印加されると、静電力によって、油層は隅の方に移動し、あるいは分裂する。これにより水の一部が油層に侵入し、画像素子は、部分的に透明になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像素子のアドレス指定に、均一(インジウムスズ酸化物)電極が用いられる場合、これは最も単純な方法であるため、画素全体に電場が印加される。従って原則として、(第1の)流体(油)の移動に好適な方向は存在しない。ただし実際には、画像素子には常に(小さな)不均一性(絶縁体または油の厚さのばらつき、画素壁の僅かな不規則性等)が存在し、これにより(第1の)流体(油)の動きが決まる。その結果、電位印加時には、常に同じ動きが生じる。しかしながらこの動きは、画素間で異なる。グレースケールの均一性を含むいくつかの理由、および隣接画素間において油の混合が生じる可能性の低減のため、さらに油の動きを制御する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題のため、本発明による表示装置は、各画像素子内に、画像素子の全領域の一部のみを覆う第1の電極を有する。第1の電極は、画像素子の端部に沿って、画像素子の少なくとも一部を除去されていることが好ましい。
【0009】
電圧印加時には、電極の設置領域には電場が存在する。この領域では、第2の流体に対する濡れ性が、有意に高くなる(油−水システムにおいて、より親水性になる)。一方、電極のない領域では、電場は生じず、従ってこの領域では、第2の流体に対する濡れ性が低くなる(より疎水性になる)。その結果、油は、最も濡れ性の低い領域の方向に移動するようになる。
【0010】
特定の実施例では、本発明による表示装置は、画像素子の残留領域に少なくとも一つの別の電極を有する。第1および別の電極に電圧を印加する駆動手段が存在する場合、油の移動が促進される。
【0011】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下に示す実施例を参照することによって、さらに明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面は、概略的なものであって、スケールは示されていない。通常、対応する素子には、同一の参照符号が付されている。
【0013】
図1には、本発明による表示装置1の一部の断面概略図を示す。2つの透明基板または支持板3、4の間には、第1の流体5と第2の流体6が設置され、これらの流体は相互に不混和性である。第1の流体5は、例えばテトラデカンのようなアルカン、またはこの実施例のような(シリコン)油である。第2の流体6は、電気伝導性または極性があり、例えば水または水溶液(例えば、水とエチルアルコールの混合物中にKClを含む溶液)である。
【0014】
第1の状態では、外部電圧が印加されておらず(図1a)、流体5、6は、例えばガラスまたはプラスチック製の、第1および第2の透明支持板3、4に隣接している。第1の支持板3の上には、例えばインジウム(スズ)酸化物の(透明)電極7と、この例ではアモルファスフッ素重合体(AF1600)の中間低濡れ性(疎水性)層8と、が設置される。
【0015】
相互接続部20、21を介して、電圧(電源9)が印加されると、層5は、隅の方に移動し、あるいは小さな液滴に分離する(図1b、分離膜)。これは、静電エネルギーが、曲面の形成によって生じる静電エネルギー損失よりも大きくなった際に生じる。極めて重要な態様として、電気式切り替え手段(電源9)によって、支持板3を覆う連続膜5の状態と、壁2に接する膜状態の間で、可逆的な切り替えが可能となる。
【0016】
図2には、本発明による表示装置の実施例を示す。この図では、電極7の一部が除去されている(図3参照)。電圧が印加されると、電極(ITO)が存在する場所に電場が生じる。この領域では、コーティングの第2の流体に対する濡れ性が高くなる。一方、底部の左隅(図3)には、電極(ITO)が存在せず、コーティングの濡れ性は低い状態のままである。その結果、油は、第2の流体に対する濡れ性の最も低い領域である、底部の左隅に移動する。これにより電位印加時には、常に、表示セルの隅部に向かうように制御された同一の動きが生じる。
【0017】
電圧は、駆動ユニット22によって印加される。除去されるITO領域の寸法は、適正に選定される。大きな除去領域が選定された場合、油の残留領域は広くなり、これによりディスプレイの輝度が低下する。これに対して小さな除去領域が選定された場合には、この隅部に向かう油の移動が生じにくくなる。画像素子端部に沿って、画像素子の全面積の少なくとも5%を占める部分が、露出されることが好ましく、画像素子端部に沿って、画像素子の全面積の最大50%(好ましくは10%)を占める部分が、露出されることが好ましい。
【0018】
マトリクス駆動表示装置において、例えば薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチ素子のマトリクスが、駆動信号の印加用に選定される。薄膜トランジスタは、電極7の存在しない領域に設置されることが好ましい。必要であれば、この領域(および中間画素領域)は、ブラックマトリクスによって被覆されても良く、これによりコントラストが向上する。
【0019】
図4には、画像素子の隅部に別の電極7'が設置された、別の実施例を示す。電極7、7’には、電圧パルス(図5参照)が提供され、油膜の収縮が促進される。まず、電圧パルス15が電極7に印加され、油がほとんどの活性領域から移動する。電極7’はアースされ、その結果、油は画像素子の対応する隅部に移動する。次に電極7の電圧が除去されると、短電圧パルス16が電極7’に印加される。これにより、油は電極7’から移動し、画像素子の残留部全体に再分布する。電極7’の電圧が除去されると、油は、再び画像素子のこの部分全体に広がる。
【0020】
本願で選定した電極配置は、単なる例示に過ぎない。環状形状等の、他の電極配置を選定しても良い。そのような環状形状は、例えばシャッター用およびダイアフラムに用いられる。
【0021】
油が収集される電極は、全寸法に対して、できる限り小さくすることが好ましいが、それと同時に、移動方向を定めることができるよう十分に大きくする必要がある。
【0022】
本発明は、あらゆる新しい特徴的素子を含み、あらゆる特徴的素子の組み合わせも包含する。請求項の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものではない。「有する」という動詞およびその活用形は、請求項に記載されていない素子の存在を否定するものではない。素子の前に用いられる「一つの」という冠詞は、そのような素子が複数存在することを否定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】本発明による表示装置の一部の概略断面図である。
【図1b】本発明による表示装置の一部の概略断面図である。
【図2a】本発明による表示装置の一部の別の概略断面図である。
【図2b】本発明による表示装置の一部の別の概略断面図である。
【図3】本発明による表示装置の一部の正面図である。
【図4】本発明による表示装置の一部の正面図である。
【図5】駆動電圧を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明支持板と第2の支持板の間の空間内に、相互に不混和性の、少なくとも第1の流体と第2の流体を有する光スイッチであって、
前記第2の流体は、電気伝導性または極性があり、当該スイッチは、少なくとも一つの前記支持板上に、当該光スイッチの全領域の一部のみを覆う第1の電極を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記第1の電極は、当該光スイッチの端部に沿って、少なくとも一部を除去されていることを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記第1の電極は、実質的に長方形状の光スイッチの隅部の一つに沿って、少なくとも一部を除去されていることを特徴とする請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項4】
前記第1の電極は、当該光スイッチの端部に沿って、当該光スイッチの全面積の少なくとも5%を占める部分を除去されていることを特徴とする請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項5】
前記第1の電極は、当該光スイッチの端部に沿って、当該光スイッチの全面積の最大50%を占める部分を除去されていることを特徴とする請求項2に記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記第1の電極は、当該光スイッチの端部に沿って、当該光スイッチの全面積の最大10%を占める部分を除去されていることを特徴とする請求項5に記載の光スイッチ。
【請求項7】
当該光スイッチの残留領域に、少なくとも一つの別の電極を有することを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
【請求項8】
前記第1および別の電極に、電圧を印加する駆動手段を有することを特徴とする請求項7に記載の光スイッチ。
【請求項9】
複数の画像素子を有する表示装置であって、各画像素子は、請求項1または2に記載の光スイッチを有することを特徴とする表示装置。
【請求項10】
前記第1の電極が除去された前記部分に、スイッチ装置が存在することを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1の電極が除去された前記部分は、ブラックマスクによって被覆されることを特徴とする請求項10に記載の表示装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−511782(P2007−511782A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530854(P2006−530854)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050697
【国際公開番号】WO2004/104671
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】