説明

表示装置

【課題】大地震が発生した場合でも表示を確実に行うことができる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、梁1が変形した場合に当該梁の変形量に応じた起電力を発生する起電力発生手段4と、起電力発生手段で発生した起電力に応じて熱エネルギーを発生する発熱手段5と、発熱手段から予め設定した閾値を超えた熱エネルギーが付与された場合に化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば構造材の変形を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建造物の中には、当該建造物を構成する柱や梁等の構造材の変形量が許容量を超えているか否かを表示する表示装置を備えるものがある。
【0003】
この表示装置は、例えばセンサと、制御手段と、LED等の表示手段と、表示手段を駆動させるための電源とを備えている。
【0004】
センサは、例えば上記構造材の変形量を電気的に検知するものである。制御手段は、上記センサで検知した構造材の変形量と、当該構造材に関して変形が許容される許容量とを比較し、構造材の変形量が許容量を超えている場合には消灯している表示手段を点灯させるものである。
【0005】
この表示装置によれば、例えば地震が発生することにより構造材に外力が加わり、当該外力で構造材が変形した場合、上記表示手段の明滅を見れば、構造材の変形量が許容量を超えたか否かが分かる。すなわち、上記表示手段が消灯していれば、構造材の変形量が許容量を超えていないことが分かる一方、表示手段が点灯していれば、構造材の変形量が許容量を超えていることが分かる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−207867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記表示装置では、表示手段を駆動する電源が必要であるため、例えば電源をも破壊するような大地震が発生した場合には、表示手段で表示することができない虞れがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑み、大地震が発生した場合でも表示を確実に行うことができる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造材が変形した場合に当該構造材の変形量に応じた起電力を発生する起電力発生手段と、前記起電力発生手段で発生した起電力に応じてエネルギーを発生するエネルギー発生手段と、前記エネルギー発生手段から予め設定した閾値を超えたエネルギーが付与された場合に化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る表示装置は、上記請求項1において、前記起電力発生手段は、圧電素子により構成したものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る表示装置は、上記請求項1において、前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により熱エネルギーを発生するものであり前記色相変化部材は、予め設定した熱エネルギーが付与された場合に化学変化する顔料で形成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に係る表示装置は、上記請求項1において、前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により光エネルギーを発生するものであり前記色相変化部材は、予め設定した光エネルギーが付与された場合に化学変化する顔料で形成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係る表示装置は、上記請求項1において、前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により電気エネルギーを発生するものであり前記色相変化部材は、予め設定した電気エネルギーが付与された場合に化学変化する材料で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表示装置によれば、構造材が変形した場合に当該構造材の変形量に応じた起電力を発生する起電力発生手段と、起電力発生手段で発生した起電力に応じてエネルギーを発生するエネルギー発生手段と、エネルギー発生手段から予め設定した閾値を超えたエネルギーが付与された場合に化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材とを備えているため、電源を必要としない。よって、大地震が発生した場合にも確実に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る表示装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
[実施の形態1]
実施の形態1に係る表示装置は、例えばビル等の建造物において、その建造物を構成する柱、梁等の構造材に適用するものである。この表示装置2は、図1および図2に示すように、電気回路部2aと、色相変化部材6とを備えている。
【0017】
電気回路部2aは、起電力発生手段4と、発熱手段(エネルギー発生手段)5と、一対の導線3a,3bとを備えている。
【0018】
起電力発生手段4は、例えば直方体状に形成した水晶、チタン酸バリウム等の圧電素子で構成してある。本実施の形態では、この起電力発生手段4を梁(構造材)1に貼り付けてある。より具体的には、この起電力発生手段4は、例えば地震の発生や台風の通過により梁1が上下方向に変形した場合には、当該梁1の変形に伴って起電力発生手段4も上下方向に変形するよう一側面の全面を梁1に貼り付けてある。なお、上記梁1は、例えば断熱性を有する壁、床、および天井で画成した断熱空間の内部において、当該断熱空間を貫通する態様で設けてある。また、起電力発生手段4の上端および下端には、例えば導電性を有する銅等の金属材料で形成した一対の端子板4a,4bを設けてある。
【0019】
このような起電力発生手段4は、例えば地震の発生や台風の通過により梁1が上下方向に変形し、かつ起電力発生手段4が上下方向に変形した場合には、その変形量に応じた起電力を上端と下端との間に発生するものである。本実施の形態では、起電力発生手段4の上下方向の変形量と、発生する起電力とが正比例の関係にある起電力発生手段4を使用している。
【0020】
発熱手段5は、例えばニクロム線で構成してある。この発熱手段5は、上記起電力発生手段4で発生した起電力により熱エネルギー(エネルギー)を発生するものである。
【0021】
各導線3a,3bは、例えば導電性を有する銅等の金属材料を線状に形成したものである。これらの導線3a,3bは、2本で一組を構成している。
【0022】
一方の導線3aは、自身の一端を、上述した一対の端子板4a,4bのうち一方の端子板4aに電気的に接続してあり、かつ自身の他端を、上記発熱手段5の一方の端部に電気的に接続してある。
【0023】
他方の導線3bは、自身の一端を、上述した一対の端子板4a,4bのうち他方の端子板4bに電気的に接続してあり、かつ自身の他端を、上記発熱手段5の他方の端部に電気的に接続してある。
【0024】
色相変化部材6は、例えば矩形板状の取付板7の一方の表面(表示面)に示温顔料を塗布することで形成したものである。より具体的には、色相変化部材6は、図3に示すように、第1示温顔料を塗布した第1示温領域6aを上半分に備えており、第2示温顔料を塗布した第2示温領域6bを下半分に備えている。
【0025】
これら第1示温顔料、および第2示温顔料は、常温では、例えば青色である。第1示温顔料は、上記発熱手段5で発生した熱エネルギーによって予め設定した第1閾値である第1温度(例えば100℃)を超えた場合にのみ、熱分解等の化学変化により色相が青色から黄色に変化し、かつ色相が変化した状態を維持するものである。よって、色相変化部材6の第1示温領域6aは、発熱手段5で発生した熱エネルギーが0[J]であり、周囲温度が常温である場合には、青色である一方、発熱手段5で発生した熱エネルギーが予め設定した第1閾値を超え、周囲温度が予め設定した第1温度を超えた場合には、色相が青色から黄色に変化するものである。換言すれば、色相変化部材6の第1示温領域6aは、発熱手段5で発生した熱エネルギーに対応した色相で表示を行うものであって、発熱手段5から付与される熱エネルギーが予め設定した第1閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。このような第1示温顔料は、例えば震度5弱の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、上記発熱手段5を介して起電力発生手段4の変形で生じる熱エネルギーによって色相が変化するよう設定したものである。
【0026】
第2示温顔料は、上記発熱手段5で発生した熱エネルギーによって予め設定した第2閾値である第2温度(例えば200℃)を超えた場合にのみ、熱分解等の化学変化により色相が青色から赤色に変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。よって、色相変化部材6の第2示温領域6bは、発熱手段5で発生した熱エネルギーが0[J]であり、周囲温度が常温である場合には、青色である一方、発熱手段5で発生した熱エネルギーが予め設定した第2閾値を超え、周囲温度が予め設定した第2温度を超えた場合には、色相が青色から赤色に変化するものである。換言すれば、色相変化部材6の第2示温領域6bは、発熱手段5で発生した熱エネルギーに対応した色相で表示を行うものであって、発熱手段5から付与される熱エネルギーが予め設定した第2閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。このような第2示温顔料は、例えば震度5強や震度6弱等の震度5強以上の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、上記発熱手段5を介して起電力発生手段4の変形で生じる熱エネルギーによって色相が変化するよう設定したものである。
【0027】
このような色相変化部材6は、外気温度の影響を低減するため、例えば断熱性を有する壁、床、および天井で画成した断熱空間の内部において、当該断熱空間を形成する第1の壁10に形成した点検口10aに臨むよう第2の壁12に取付板7を介して取り付けてあり、点検口10aを介して断熱空間の外部からその色相を確認することができるように設置してある。しかも、色相変化部材6は、示温顔料を塗布した取付板7の一方の表面において、例えば第1示温領域6aおよび第2示温領域6bに上記発熱手段5が接触する態様で取り付けてある。また、点検口10aを塞ぐ透明部材11は、外気温度の影響を低減するため、断熱性を有する材料で形成してある。
【0028】
次に、このような構成を有する表示装置2の作用を説明する。表示装置2は、通常、色相変化部材6の表示面が青色である。
【0029】
その後、比較的小規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱未満の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0030】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発熱手段5に電流が流れ、発熱手段5は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて熱エネルギーを発生する。
【0031】
この熱エネルギーは、震度5弱未満の揺れにより発生するものであるため、第1示温顔料を化学変化させることができず、かつ第2示温顔料を化学変化させることができない。よって、色相変化部材6の第1示温領域6aおよび第2示温領域6bは、青色のままである。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材6を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないことを確認することができる。
【0032】
また、比較的中規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0033】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発熱手段5に電流が流れ、発熱手段5は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて熱エネルギーを発生する。
【0034】
この熱エネルギーは、震度5弱の揺れにより発生するものであるため、第2示温顔料を化学変化させることができないが、第1示温顔料を化学変化させて色相を青色から黄色に変化させる。よって、色相変化部材6の第2示温領域6bは、青色のままであるが、第1示温領域6aは、黄色である。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材6を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないが、比較的大きく弾性変形したことを確認することができる。
【0035】
このように第1示温領域6aの色相が黄色に変化した色相変化部材6は、取付板7とともに第2の壁12から取り外し、全面が青色である色相変化部材6に取り替える。
【0036】
また、大規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5強以上の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0037】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発熱手段5に電流が流れ、発熱手段5は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて熱エネルギーを発生する。
【0038】
この熱エネルギーは、震度5強以上の揺れにより発生するものであるため、第1示温顔料を化学変化させて色相を青色から黄色に変化させるとともに、第2示温顔料を化学変化させて色相を青色から赤色に変化させる。よって、色相変化部材6の第1示温領域6aは、黄色であり、第2示温領域6bは、赤色である。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材6を見れば、管理者は、梁1が塑性変形したことを確認することができる。
【0039】
本実施の形態1に係る表示装置2によれば、発熱手段5から付与される熱エネルギーが予め設定した各閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材6を備えるため、電源を必要としない。よって、大地震が発生した場合にも、発熱手段5から色相変化部材6に付与される熱エネルギーが予め設定した各閾値を超えたか否かを確実に表示することができる。また、この表示装置2は、起電力発生手段4と、一対の端子板4a,4bと、一対の導線3a,3bと、ニクロム線で構成した発熱手段5と、色相変化部材6とで構成してあり、メモリやCPU等の高価な電気部品を必要としない。よって、この表示装置2は、安価であるため、巨大地震のような数十年に一度、あるかないかの自然現象に対して有利である。また、色相で表示するため、専門家の判定を必要とせず、一般人でも、梁1にどのような変形が発生したか直ちに判断することができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態1の色相変化部材6には、予め設定した閾値が異なり、各閾値を超えたエネルギーが付与された場合に色相が変化する示温領域6a,6bを2つ設けるもので説明した。しかし、この発明はそれに限られず、色相変化部材6には、予め設定した閾値が異なり、各閾値を超えたエネルギーが付与された場合に色相が変化する示温領域を3つ以上の複数設けても良い。
【0041】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る表示装置を説明する。実施の形態2に係る表示装置も、実施の形態1に係る表示装置と同様で、例えばビル等の建造物において、その建造物を構成する柱、梁等の構造材に適用するものである。この実施の形態2に係る表示装置を図4に示す。なお、この実施の形態2に係る表示装置20において、上述した実施の形態1の表示装置2と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。この表示装置20は、図4に示すように、電気回路部20aと、色相変化部材16とを備えている。
【0042】
電気回路部20aは、起電力発生手段4と、発光手段(エネルギー発生手段)15と、一対の導線3a,3bとを備えている。
【0043】
発光手段15は、例えばフォトトランジスタやLED(Light Emitting Diode)である。この発光手段15は、上記起電力発生手段4で発生した起電力により光エネルギー(エネルギー)を発生するものである。
【0044】
実施の形態2では、一方の導線3aは、自身の一端を、上述した一対の端子板4a,4bのうち一方の端子板4aに電気的に接続してあり、かつ自身の他端を、上記発光手段15の一方の端子に電気的に接続してある。また、他方の導線3bは、自身の一端を、上述した一対の端子板4a,4bのうち他方の端子板4bに電気的に接続してあり、かつ自身の他端を、上記発光手段15の他方の端子に電気的に接続してある。
【0045】
色相変化部材16は、例えば矩形板状の取付板7の一方の表面(表示面)に示光顔料を塗布することで形成したものである。より具体的には、色相変化部材16は、第1示光顔料を塗布した第1示光領域16aを上半分に備えており、第2示光顔料を塗布した第2示光領域16bを下半分に備えている。
【0046】
これら第1示光顔料、および第2示光顔料は、常温では、例えば青色である。第1示光顔料は、上記発光手段15から付与される光エネルギーが第3閾値を超えた場合にのみ、熱分解等の化学変化により色相が青色から黄色に変化し、かつ色相が変化した状態を維持するものである。よって、色相変化部材16の第1示光領域16aは、発光手段15で発生した光エネルギーが0[J]である場合には、青色である一方、発光手段15で発生した光エネルギーが予め設定した第3閾値を超えた場合には、色相が青色から黄色に変化するものである。換言すれば、色相変化部材16の第1示光領域16aは、発光手段15で発生した光エネルギーに対応した色相で表示を行うものであって、発光手段15から付与される光エネルギーが予め設定した第3閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。このような第1示光顔料は、例えば震度5弱の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、上記発光手段15を介して起電力発生手段4の変形で生じる光エネルギーによって色相が変化するよう設定したものである。
【0047】
第2示光顔料は、上記発光手段15で発生した光エネルギーが第4閾値を超えた場合にのみ、熱分解等の化学変化により色相が青色から赤色に変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。よって、色相変化部材16の第2示光領域16bは、発光手段15で発生した光エネルギーが0[J]である場合には、青色である一方、発光手段15で発生した光エネルギーが予め設定した第4閾値を超えた場合には、色相が青色から赤色に変化するものである。換言すれば、色相変化部材16の第2示光領域16bは、発光手段15で発生した光エネルギーに対応した色相で表示を行うものであって、発光手段15から付与される光エネルギーが予め設定した第4閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持するものである。このような第2示光顔料は、例えば震度5強や震度6弱等の震度5強以上の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、上記発光手段15を介して起電力発生手段4の変形で生じる光エネルギーによって色相が変化するよう設定したものである。
【0048】
このような色相変化部材16は、第1の壁30に形成した点検口30aに臨むよう第2の壁32に取付板7を介して取り付けてあり、上記色相変化部材16を設けた部屋の外部から上記点検口30aを介してその色相を確認することができるように設置してある。しかも、色相変化部材16は、示光顔料を塗布した取付板7の一方の表面に発光手段15から発する光が、第1示光領域16aおよび第2示光領域16bに当たるよう取付板7の一方の表面(表示面)に設けてある。また、点検口30aを塞ぐ透明部材31には、点検口30aの全域を覆う態様で、色相変化部材16の顔料に化学変化を発生させる光の波長をカットするフィルター33を設けてある。
【0049】
次に、このような構成を有する表示装置20の作用を説明する。表示装置20は、通常、色相変化部材16の表示面が青色である。
【0050】
その後、比較的小規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱未満の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0051】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発光手段15に電流が流れ、発光手段15は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて光エネルギーを発生し、色相変化部材16の表示面に光スポット15aを形成する。
【0052】
この光エネルギーは、震度5弱未満の揺れにより発生するものであるため、第1示光顔料を化学変化させることができず、かつ第2示光顔料を化学変化させることができない。よって、色相変化部材16の第1示光領域16aおよび第2示光領域16bは、青色のままである。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材16を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないことを確認することができる。
【0053】
また、比較的中規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0054】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発光手段15に電流が流れ、発光手段15は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて光エネルギーを発生し、色相変化部材16の表示面に光スポット15aを形成する。
【0055】
この光エネルギーは、震度5弱の揺れにより発生するものであるため、第2示光顔料を化学変化させることができないが、第1示光顔料を化学変化させて色相を青色から黄色に変化させる。よって、色相変化部材16の第2示光領域16bは、青色のままであるが、第1示光領域16aは、黄色である。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材16を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないが、比較的大きく弾性変形したことを確認することができる。
【0056】
このように第1示光領域16aの色相が黄色に変化した色相変化部材16は、取付板7とともに第2の壁12から取り外し、全面が青色である色相変化部材16に取り替える。
【0057】
また、大規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5強の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0058】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび発光手段15に電流が流れ、発光手段15は、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて光エネルギーを発生し、色相変化部材16の表示面に光スポット15aを形成する。
【0059】
この光エネルギーは、震度5強の揺れにより発生するものであるため、第1示光顔料を化学変化させて色相を青色から黄色に変化させるとともに、第2示光顔料を化学変化させて色相を青色から赤色に変化させる。よって、色相変化部材16の第1示光領域16aは、黄色であり、第2示光領域16bは、赤色である。そして、管理者が点検口10aを介して当該色相変化部材16を見れば、管理者は、梁1が塑性変形したことを確認することができる。
【0060】
本実施の形態2に係る表示装置20によれば、発光手段15から付与される光エネルギーが予め設定した各閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持して、発光手段15から付与されるエネルギーが閾値を超えか否かを表示する色相変化部材16を備えるため、電源を必要としない。よって、梁1の上下方向の変形量に応じ、発光手段15から付与される光エネルギーが予め設定した各閾値を超えたか否かを確実に表示することができる。また、この表示装置20は、起電力発生手段4と、一対の端子板4a,4bと、一対の導線3a,3bと、ニクロム線で構成した発光手段15と、色相変化部材16とで構成してあり、メモリやCPU等の高価な電気部品を必要としない。よって、この表示装置20は、安価であるため、巨大地震のような数十年に一度、あるかないかの自然現象に対して有利である。また、色相で表示するため、専門家の判定を必要とせず、一般人でも、梁1にどのような変形が発生したか直ちに判断することができる。
【0061】
また、この表示装置20によれば、発光手段15から照射される光量を記録(録画)することで、光量の程度を視認することもできる。
【0062】
なお、上述した実施の形態2の色相変化部材16には、予め設定した閾値が異なり、各閾値を超えたエネルギーが付与された場合に色相が変化する示光領域16a,16bを2つ設けるもので説明した。しかし、この発明はそれに限られず、色相変化部材16には、予め設定した閾値が異なり、各閾値を超えたエネルギーが付与された場合に色相が変化する示光領域を3つ以上の複数設けても良い。
【0063】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る表示装置200を説明する。実施の形態3に係る表示装置200も、実施の形態1に係る表示装置2と同様で、例えばビル等の建造物において、その建造物を構成する柱、梁等の構造材に適用するものである。この実施の形態3に係る表示装置200の要部を図5に示す。なお、この実施の形態3に係る表示装置200において、上述した実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。なお、この実施の形態3では、上記一対の導線3a,3bが、起電力発生手段4で発生した起電力に応じて電力(電気エネルギー)を発生するエネルギー発生手段として機能する。
【0064】
この表示装置200は、電気回路部200aを備えている。この電気回路部200aは、実施の形態1の電気回路部2aと比較した場合、発熱手段5に代えて並列回路部205を設けてある。この並列回路部205には、第1導電路210および第2導電路220が並列となるよう設置してある。
【0065】
第1導電路210には、第1色相変化部材211が設けてある一方、第2導電路220には第2色相変化部材221が設けてある。
【0066】
また、この並列回路部205において、一方の分岐個所には、電路切換手段230を設けてある。この電路切換手段230は、並列回路部205に加えられる電位差、具体的には一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端との電位差に応じて上記電路210,220を切り換えて、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端とを電気的に接続するものである。より具体的には、電路切換手段230は、予め設定した電位差よりも大きな電位差が並列回路部205に加えられた場合には、第2導電路220によって、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端とを電気的に接続する一方、予め設定した電位差よりも小さな電位差が並列回路部205に加えられた場合には、第1導電路210によって、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端とを電気的に接続するものである。本実施の形態の電路切換手段230は、通常、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端との電位差がほぼ0であるため、第1導電路210によって一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端とを電気的に接続しているが、震度5強以上の揺れにより起電力発生手段4で発生した起電力が並列回路部205に加えられた場合、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端との電位差が予め設定した電位差を超えて、第1導電路210から第2導電路220に切り換えるものである。その後、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端との電位差が、予め設定した電位差を下回った場合、電路切換手段230は、再び、第2導電路220から第1導電路210に切り換わる。
【0067】
第1色相変化部材211は、一対のガラス板の間に設けた透明層である。この第1色相変化部材211は、所定の金属材料および所定の有機樹脂材料で構成した重合体である。各ガラス板は、矩形状に形成してあり、無色透明である。また、第1色相変化部材211は、自身の上端を、導線212および上記電路切換手段230を介して一方の導線3aの他端に接続してあり、かつ自身の下端を、導線213を介して上記他方の導線3bの他端に接続してある。
【0068】
この第1色相変化部材211は、自身に付与される電気エネルギーが、予め設定した第5閾値を超えない状態では無色透明であるが、第5閾値を超えた場合には色相が化学変化により無色透明から例えば赤色透明に変化し、かつ色相が変化した状態を維持するものである。本実施の形態では、第1色相変化部材211は、例えば震度5弱の揺れが上記建物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、起電力発生手段4の変形で発生する電気エネルギーによって色相が変化するよう設定してある。
【0069】
第2色相変化部材221は、一対のガラス板の間に設けた透明層である。この第2色相変化部材221は、所定の金属材料および所定の有機樹脂材料で構成した重合体である。各ガラス板は、矩形状に形成してあり、無色透明である。また、第2色相変化部材221は、自身の上端を、導線222を介して上記電路切換手段230に接続してあり、かつ自身の下端を、導線223を介して上記他方の導線3bの他端に接続してある。
【0070】
この第2色相変化部材221は、自身に加えられる電気エネルギーが、予め設定した第6閾値を超えない状態では無色透明であるが、第6閾値を超えた場合には色相が化学変化により無色透明から例えば青色透明に変化し、かつ色相が変化した状態を維持するものである。本実施の形態では、第2色相変化部材221は、例えば震度5強以上の揺れが上記建物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、起電力発生手段4の変形で発生する電気エネルギーによって色相が変化するよう設定してある。
【0071】
次に、このような構成を有する表示装置200の作用を説明する。表示装置200は、通常、第1色相変化部材211および第2色相変化部材221が無色透明であり、電路切換手段230により第1導電路210を通じて、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端とが電気的に接続されている。
【0072】
その後、比較的小規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱未満の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0073】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび並列回路部205に電流が流れ、並列回路部205に電気エネルギーが与えられる。
【0074】
この電気エネルギーは、震度5弱未満の揺れにより発生するものであるため、第1色相変化部材211を化学変化させることができない。よって、第1色相変化部材211は無色透明のままである。また、上記地震の揺れでは電路切換手段230が作動することもないため、第2色相変化部材221に電気的エネルギーが与えられることもなく、第2色相変化部材221も無色透明のままである。そして、管理者が点検口10aを介して色相変化部材211,221を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないことを確認することができる。
【0075】
また、比較的中規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5弱の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が弾性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、自身の変形量に応じた起電力を一対の端子板4a,4bの間に発生する。
【0076】
一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび並列回路部205に電流が流れ、並列回路部205に電気エネルギーが与えられる。
【0077】
この電気エネルギーは、震度5弱の揺れにより発生するものであるため、第1色相変化部材211を化学変化させて色相を無色透明から赤色透明に変化させる。また、上記地震の揺れでは電路切換手段230が作動することもないため、第2色相変化部材221に電気的エネルギーが与えられることもなく、第2色相変化部材221も無色透明のままである。そして、管理者が点検口10aを介して色相変化部材211,221を見れば、管理者は、梁1が塑性変形していないが、比較的大きく弾性変形したことを確認することができる。
【0078】
また、比較的大規模の地震が発生し、その地震により例えば震度5強以上の揺れが上記建造物に加わり、その揺れにより梁1が塑性変形する場合、当該梁1の変形とともに、起電力発生手段4も変形する。そして、起電力発生手段4は、地震の変形量に応じた起電力を一対の端子板の間に発生する。
【0079】
この起電力は、震度5強以上の地震によるものであるため、電路切換手段230が作動し、一方の導線3aの他端と、他方の導線3bの他端との電気的接続を、第1導電路210から第2導電路220に切り換える。
【0080】
また、一対の端子板4a,4bの間に起電力が発生すると、当該起電力により導線3a,3bおよび並列回路部205に電流が流れ、並列回路部205に電気エネルギーが与えられる。
【0081】
この電気エネルギーは、震度5強の揺れにより発生するものであるため、第2色相変化部材221を化学変化させて色相を無色透明から青色透明に変化させる。また、電路切換手段230の作動により第1色相変化部材211に電気エネルギーが与えられることがないため、第1色相変化部材211は無色透明のままである。そして、管理者が点検口10aを介して色相変化部材211,221を見れば、管理者は、梁1が塑性変形したことを確認することができる。
【0082】
本実施の形態3に係る表示装置200によれば、与えられる電気エネルギーが予め設定した各閾値を超えた場合には化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材211,221を備えるため、電源を必要としない。よって、大地震が発生した場合にも、与えられた電気エネルギーが予め設定した各閾値を超えたか否かを確実に表示することができる。また、この表示装置200は、起電力発生手段4と、一対の端子板4a,4bと、一対の導線3a,3bと、2枚の色相変化部材211,221を有する並列回路部205と、一対のガラス板と、電路切換手段230とで構成してあり、メモリやCPU等の電気部品を必要としない。よって、この表示装置200は、安価であるため、巨大地震のような数十年に一度、あるかないかの自然現象に対して有利である。また、色相で表示するため、専門家の判定を必要とせず、一般人でも、梁1に対してどのような変形が発生したか直ちに判断することができる。
【0083】
また、上述した実施の形態1,2、3の表示装置2,20、200には、起電力発生手段4の上端および下端に端子板4a,4bを設け、梁1の上下方向の変形が塑性変形であるか否かを表示するもので説明した。しかし、この発明はそれに限られず、梁1の変形方向に応じて適宜端子板4a、4bを設ける部位を変更しても良い。
【0084】
さらに、上述した実施の形態1,2、3には、起電力発生手段4を梁1に取り付けるもので説明した。しかし、この発明はそれに限られず、建造物を構成する柱や壁等の他の構造材に起電力発生手段4を取り付けても良い。もちろん、鋼材ダンパーのような制震部材に取り付けても良い。制震部材に起電力発生手段4を取り付けた場合、制震部材は梁よりも小さな震度で降伏を始め、制震部材は梁よりも大きく揺動するため、起電力発生手段4で発生する起電力も梁に起電力発生手段4を設けた場合より大きなものとなる。よって、この制震部材の揺動を考慮して適宜エネルギー発生手段や顔料を設定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置を示す説明図である。
【図2】図1に示した表示装置が備える色相変化部材を示す斜視図である。
【図3】図2に示した色相変化部材の詳細を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る表示装置を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る表示装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1 梁(構造材)
2 表示装置
2a 電気回路部
3a 導線
3b 導線
4 起電力発生手段
4a 端子板
4b 端子板
5 発熱手段(エネルギー発生手段)
6 色相変化部材
6a 第1示温領域
6b 第2示温領域
7 取付板
10 壁
10a 点検口
11 透明部材
12 壁
15 発光手段(エネルギー発生手段)
16 色相変化部材
16a 第1示光領域
16b 第2示光領域
20 表示装置
20a 電気回路部
30 壁
30a 点検口
31 透明部材
32 壁
33 フィルター
200 表示装置
200a 電気回路部
205 並列回路部
210 第1導電路
211 第1色相変化部材
220 第2導電路
221 第2色相変化部材
230 電路切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材が変形した場合に当該構造材の変形量に応じた起電力を発生する起電力発生手段と、
前記起電力発生手段で発生した起電力に応じてエネルギーを発生するエネルギー発生手段と、
前記エネルギー発生手段から予め設定した閾値を超えたエネルギーが付与された場合に化学変化によって色相が変化し、かつその色相が変化した状態を維持する色相変化部材と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記起電力発生手段は、圧電素子により構成したものであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により熱エネルギーを発生するものであり、
前記色相変化部材は、予め設定した熱エネルギーが付与された場合に化学変化する顔料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により光エネルギーを発生するものであり、
前記色相変化部材は、予め設定した光エネルギーが付与された場合に化学変化する顔料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記エネルギー発生手段は、前記起電力発生手段で発生した起電力により電気エネルギーを発生するものであり、
前記色相変化部材は、予め設定した電気エネルギーが付与された場合に化学変化する材料で形成したことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−187367(P2009−187367A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27750(P2008−27750)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】