説明

表示装置

【課題】製造歩留まりの低下を招くことなく表示品位な表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
支持基板101と、
支持基板上に配置された第1電極60と、
第1電極に対向して配置され、光透過性及び光反射性を有する第2電極64と、
第1電極と第2電極との間に配置され、発光層62Aを含む有機活性層62と、
支持基板と第1電極との間に配置された反射層115と、
第1電極と反射層との間に配置され、発光層の発光主波長よりも厚い膜厚からなり、反射層と第2電極との間で発生しうる光干渉を解消する干渉解消層116と、
第2電極上に配置され、第2電極を介して出射した発光層の発光主波長における発光強度を最大化せしめる光学調整層80と、
を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に係り、特に、自発光性の表示素子を備えた構成の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置が注目されている。この有機EL表示装置は、自発光素子である有機EL素子を備えていることから、視野角が広く、バックライトを必要とせず薄型化が可能であり、消費電力が抑えられ、且つ応答速度が速いといった特徴を有している。
【0003】
これらの特徴から、有機EL表示装置は、液晶表示装置に代わる、次世代平面表示装置の有力候補として注目を集めている。有機EL表示装置としては、有機EL素子で発生したEL光をアレイ基板側から外部に取り出す下面発光(ボトムエミッション)方式、及び、有機EL素子で発生したEL光を封止基板側から外部に取り出す上面発光(トップエミッション)方式がある。
【0004】
有機EL素子は、画素回路などとともにアレイ基板に備えられ、陽極と陰極との間に発光機能を有する有機化合物を含む有機活性層を保持して構成されている。各画素は、隔壁によって分離されている。
【0005】
ボトムエミッション方式では、1画素当たりの有機EL素子の発光面積の割合(開口率)が画素回路や配線によって制約されてしまう。開口率の制約を緩和できるトップエミッション方式が主流となりつつある。
【0006】
一方で、共振器構造を備えた有機EL素子では、発光層で発生した光のうち共振波長の光だけが増幅されて取り出されるため、ピーク強度が高く幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、この有機EL素子で構成される表示装置の色再現範囲を拡大することが可能になることが知られている(マイクロキャビティ効果)。
【0007】
ところが、上述のような共振器構造を備えた有機EL素子のように、取り出される光のスペクトルのピーク幅が狭くなると、発光面を斜め方向から見た場合に、光の波長が大きくシフトしたり発光強度が低下したりする等、発光特性の視野角依存性が高くなる。
【0008】
このような課題に対して、特許文献1などによれば、視野角依存性が知覚上非常に認識されやすいホワイト(白色)について特に深刻な問題となることに着目し、輝度変動量のRGBバランスを調整し、ホワイトの視野角依存性を減少させる技術を開示している。
【特許文献1】特開2002−367770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、マイクロキャビティ効果を利用する場合、視野角によって有機EL素子内部の共振条件が変化するため、表示特性も変化してしまう場合がある。また、共振条件を満足する製造マージン(特に、有機活性層の膜厚制御)が狭く、わずかな膜厚の変化の影響によりマイクロキャビティ効果が得られなくなるといった課題もある。
【0010】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、製造歩留まりの低下を招くことなく表示品位が良好な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の態様による表示装置は、
支持基板と、
前記支持基板上に配置された第1電極と、
前記第1電極に対向して配置され、光透過性及び光反射性を有する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、発光層を含む有機活性層と、
前記支持基板と前記第1電極との間に配置された反射層と、
前記第1電極と前記反射層との間に配置され、前記発光層の発光主波長よりも厚い膜厚からなり、前記反射層と前記第2電極との間で発生しうる光干渉を解消する干渉解消層と、
前記第2電極上に配置され、前記第2電極を介して出射した前記発光層の発光主波長における発光強度を最大化せしめる光学調整層と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、製造歩留まりの低下を招くことなく表示品位が良好な表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0014】
有機EL表示装置1は、図1に示すように、画像を表示するアクティブエリア102を有するアレイ基板100を備えている。アクティブエリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。また、図1では、カラー表示タイプの有機EL表示装置1を例に示しており、アクティブエリア102は、複数種類の色画素、例えば3原色に対応した赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBによって構成されている。
【0015】
アレイ基板100の少なくともアクティブエリア102は、封止基板200によって封止されている。封止基板200は、光透過性を有するガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性の基板である。この封止基板200のアレイ基板100と対向する内面は、例えば、平坦に形成されている。
【0016】
これらのアレイ基板100と封止基板200とは、アクティブエリア102を囲むように枠状に配置されたシール部材300によって貼り合せられている。シール部材300は、例えば、感光性樹脂(例えば紫外線硬化型樹脂)であっても良いし、フリットであっても良い。
【0017】
各画素PX(R、G、B)は、画素回路10及びこの画素回路10によって駆動制御される表示素子40を備えている。なお、図1に示した画素回路10は、一例であって、他の構成の画素回路を適用しても良いことは言うまでもない。
【0018】
図1に示した例では、画素回路10は、駆動トランジスタDRT、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、蓄積容量素子CSなどを備えて構成されている。駆動トランジスタDRTは、表示素子40に供給する電流量を制御する機能を有している。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は、サンプル・ホールドスイッチとして機能する。第3スイッチSW3は、駆動トランジスタDRTから表示素子40への駆動電流の供給、つまり表示素子40のオン/オフを制御する機能を有している。蓄積容量素子CSは、駆動トランジスタDRTのゲートーソース間の電位を保持する機能を有している。
【0019】
駆動トランジスタDRTは、高電位電源線P1と第3スイッチSW3との間に接続されている。表示素子40は、第3スイッチSW3と低電位電源線P2との間に接続されている。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のゲート電極は、第1ゲート線GL1に接続されている。第3スイッチSW3のゲート電極は、第2ゲート線GL2に接続されている。第1スイッチSW1のソース電極は、映像信号線SLに接続されている。
【0020】
これらの駆動トランジスタDRT、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び、第3スイッチSW3は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成され、その半導体層は、ここではポリシリコンによって形成されている。
【0021】
このような回路構成の場合、第1ゲート線GL1からオン信号が供給されたのに基づいて第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2がオンとなり、映像信号線SLを流れる電流量に応じて高電位電源線P1から駆動トランジスタDRTに電流が流れ、また、駆動トランジスタDRTを流れる電流に応じて蓄積容量素子CSが充電される。これにより、駆動トランジスタDRTは、映像信号線SLから供給された電流量と同一の電流量を、高電位電源線P1から表示素子40に供給可能となる。
【0022】
そして、第2ゲート線GL2からオン信号が供給されたのに基づいて第3スイッチSW3がオンとなり、蓄積容量素子CSで保持した容量に応じて、駆動トランジスタDRTは、高電位電源線P1から第3スイッチSW3を介して表示素子40に所定輝度に対応した所定量の電流を供給する。これにより、表示素子40は、所定の輝度に発光する。
【0023】
表示素子40は、自発光性の表示素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する有機EL素子40Bを備えている。
【0024】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構成であり、例えば、図2に示すように、配線基板120上に配置されている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性の支持基板101上に、アンダーコート層111、ゲート絶縁膜112、層間絶縁膜113、有機絶縁膜(平坦化層)114などの絶縁層を備える他に、各種スイッチSW、駆動トランジスタDRT、蓄積容量素子Cs、各種配線(ゲート線、映像信号線、電源線等)などを備えて構成されたものとする。
【0025】
すなわち、図2に示した例では、アンダーコート層111の上には、スイッチや駆動トランジスタなどのトランジスタ素子(図1に示した回路構成においては第3スイッチSW3に相当する)20の半導体層21が配置されている。半導体層21は、ゲート絶縁膜112によって覆われている。
【0026】
ゲート絶縁膜112の上には、トランジスタ素子20のゲート電極20Gなどが配置されている。ゲート電極20Gは、層間絶縁膜113によって覆われている。層間絶縁膜113の上には、トランジスタ素子20のソース電極20S及びドレイン電極20Dなどが配置されている。
【0027】
これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dは、ゲート絶縁膜112及び層間絶縁膜113を半導体層21まで貫通するコンタクトホールを介して半導体層21にそれぞれコンタクトしている。これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dは、第1有機絶縁膜114によって覆われている。
【0028】
第1有機絶縁層114の上には、反射層115が配置されている。この反射層115は、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料を用いて形成されている。また、この反射層115は、各画素に島状に配置されても良いし、アクティブエリア102の全体にわたって配置されても良い。このような反射層115は、第2有機絶縁層116によって覆われている。
【0029】
第1有機絶縁層114及び第2絶縁層116は、感光性の樹脂材料、たとえばアクリル系樹脂によって形成されている。特に、第1有機絶縁層114は、その表面(反射層115が積層される面)に凹凸構造を形成すべくフォトリソグラフィプロセスを経て形成される。また、第2有機絶縁層116は、下層の凹凸の影響を緩和しその表面を平坦化するように、樹脂材料をコーティングするなどの手法により形成される。
【0030】
この実施の形態においては、有機EL素子40は、第2有機絶縁層116の上に配置されている。この有機EL素子40は、第1電極60と第2電極64との間に有機活性層62を保持した構成であり、以下に詳細な構造について説明する。
【0031】
すなわち、第1電極60は、第2有機絶縁層116の上において画素PX毎に独立島状に配置され、陽極として機能する。この第1電極60は、第1有機絶縁層114及び第2有機絶縁層116をドレイン電極20Dまで貫通するコンタクトホールを介して、ドレイン電極20Dにコンタクトしている。
【0032】
このような第1電極60は、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料を用いて形成されている。
【0033】
有機活性層62は、第1電極60上に配置され、少なくとも発光層を含んでいる。この有機活性層62は、発光層以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。このような有機活性層62は、複数の機能層を複合した単層で構成されても良いし、各機能層を積層した多層構造であっても良い。有機活性層62においては、発光層が有機系材料であればよく、発光層以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。有機活性層62において、発光層以外の機能層は共通層であってもよい。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成される。
【0034】
有機活性層62は、高分子系材料によって形成された薄膜を含んでいても良い。このような薄膜は、インクジェット法などの選択塗布法により成膜可能である。また、有機活性層62は、低分子系材料によって形成された薄膜を含んでいても良い。このような薄膜は、マスク蒸着法などの手法により成膜可能である。
【0035】
第2電極64は、複数の画素PXに共通であって、各画素PXの有機活性層62の上に配置され、陰極として機能する。このような第2電極64は、光透過性及び光反射性を有し、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との混合物などからなる半透過層として構成されている。
【0036】
また、アレイ基板100は、アクティブエリア102において、隣接する画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。この隔壁70は、例えば、各第1電極60の周縁を覆うように配置され、アクティブエリア102において格子状またはストライプ状に形成されている。このような隔壁70は、例えば樹脂材料をパターニングすることによって形成される。この隔壁70は、第2電極64によって覆われている。
【0037】
次に、この実施の形態における有機EL表示装置の主要構成について、より詳細に説明する。
【0038】
すなわち、図3に示すように、支持基板101の上に、第1有機絶縁層114が配置されている。なお、支持基板101と第1有機絶縁層114との間の層については省略している。第1有機絶縁層114は、その表面に凹凸構造を有する凹凸層に相当し、その凹凸形状は、隣接する凸部(または隣接する凹部)のピッチは30μm以下で、且つ、凹凸の深さ(つまり凸部のトップから凹部のボトムまでの高さ)は0.5μm以上となるように形成されている。ここに示した例では、第1有機絶縁層114は、アクリル系樹脂によって形成され、ピッチは9μmであり、凹凸の深さが1.5μmであった。
【0039】
一方、支持基板101の上には、有機EL素子40を構成する第1電極60が配置され、また、第1電極60に対向して第2電極64が配置されている。これらの第1電極60と第2電極64との間には、有機活性層62が配置されている。ここに示した例では、有機活性層62は、発光層62Aに加え、発光層62Aと第1電極60との間に配置されたホール輸送層62Hと、発光層62Aと第2電極64との間に配置された電子輸送層62Eと、を備えている。
【0040】
支持基板101と第1電極60との間には反射層115が配置されている。すなわち、反射層115は、第1有機絶縁層114の上に配置され、第1有機絶縁層114の凹凸構造に倣ってその表面に凹凸構造を有する。つまり、反射層115の表面の凹凸形状は、第1有機絶縁層114と略同一である。ここでは、反射層115は、アルミニウムをスパッタ成膜することによって形成されている。
【0041】
第1電極60と反射層115との間には第2有機絶縁層116が配置されている。すなわち、第2有機絶縁層116は、反射層115を覆うように配置され、その表面は平坦化されている。このような第2有機絶縁層116は、発光層の発光主波長よりも厚い膜厚からなり、反射層115と第2電極64との間で発生しうる光干渉を解消する干渉解消層として機能する。つまり、第2有機絶縁層116においてはその膜厚が不均一であり、下地の凹部上の膜厚が凸部上の膜厚より厚く形成されており、これらの膜厚差によって光干渉を解消している。ここでは、第2有機絶縁層116は、アクリル系樹脂によって形成されている。
【0042】
これにより、素子内部での多重反射・多重干渉効果を抑制し、有機活性層62の膜厚変化や視野角依存性を低減することが可能となる。
【0043】
この一方で、干渉解消層を適用した場合には、素子内部での多重反射・多重干渉効果を用いた有機EL素子の発光色の改善効果も抑制されるため、発光色の色純度が低下してしまう。
【0044】
そこで、この実施の形態においては、発光層62Aから第2電極64を介して出射した発光層62Aの発光主波長における発光強度を最大化せしめる光学調整層80を備えている。この光学調整層80は、第2電極64の上に配置されている。このような光学調整層80は、光透過性を有する材料であれば、ITO、SiON、SiNxなどの無機系材料によって形成しても良いし、有機系材料によって形成しても良い。
【0045】
ここに示した例では、光学調整層80は、ホール輸送層62Hと同一材料によって形成した。このとき、光学調整層80の屈折率は、発光層62Aの発光主波長において1.85であった。また、光学調整層80の膜厚は、380nmとした。
【0046】
このような構成によれば、干渉効果を打ち消す干渉解消層を用いた表示装置において、色純度の向上を図ることが可能となる。つまり、有機活性層の膜厚変化や視野角変化によらず、色再現性の良好な表示装置を提供することができる。
【0047】
上述した光学調整層80の屈折率及び膜厚は、以下に示す関係式を満たすように設定されることがより望ましい。
【0048】
すなわち、発光層62Aの発光主波長をλとし、有機活性層62において発光層62Aから第2電極64までの光学長(つまり、ここに示した例では、発光層62Aの膜厚及び電子輸送層62Eの膜厚の総和)をLとし、光調整層80の屈折率をnとし光調整層80の厚さをdとし、第2電極64の屈折率をn’とし第2電極64の厚さをd’とし、mを整数(m=0、1、2・・・)としたとき、
n・d+n’・d’+L=λ/4×(2m+1)
で示す式の関係を満足するように、n及びdが設定される。
【0049】
このような関係式を満足する条件の光学調整層80によれば、発光層62Aから出射される光の発光スペクトルより狭くすることができ、色画素における発光色の色純度を向上することが可能となる。
【0050】
特に、整数mは、小さい値ほど透過率が低下するもののスペクトル幅が狭くなる傾向にあり、上記関係式において、整数mが2以上の条件を選択することが望ましい。
【0051】
なお、発光層62Aの発光主波長λは、発光層62Aを形成する材料の発光スペクトルのうち、最大発光強度となる発光波長λ(peak)での発光強度に対して80%以上の発光強度が得られる波長の範囲であるものとする。
【0052】
次に、青色画素(発光主波長が470nm〜480nm)を例に、光学調整層80を適用したときの発光スペクトルを測定した。ここでは、上記関係式を満足するように、光学調整層80の屈折率は1.85とし、膜厚は380nmとした。このとき、m=3次を選んだ。
【0053】
この構成を光学調整層ありの最良のケース(Best)とし、また、比較として、光学調整層なしのケース、及び、光学調整有りの非最良のケース(Worst)を同時に示す。非最良のケースとしては、上記関係式における右辺がλ/2となっている。この測定結果を図4に示す。
【0054】
光学調整層なしのケースでは、得られた発光スペクトルの半値幅は58nmであった。一方、最良のケースでは、発光スペクトルの半値幅は44nmであり、光学調整層によって発光スペクトルの色純度が向上していることが分かる。また、同じく光学調整層を有するケースにおいても非最良のケースでは、発光スペクトルの半値幅は67nmとなり、光学調整層の無いケースよりも発光スペクトルの色純度が低下していることが確認された。
【0055】
次に、干渉解消層が無い一般的な上面発光素子と、干渉解消層があり且つ最良条件の光学調整層を有する上面発光素子との発光スペクトルを図5に示す。
【0056】
一般的な上面発光素子は、キャビティー効果によって色純度が向上しており、このときの発光スペクトルの半値幅は49nmであった。一方、干渉解消層があり且つ最良条件の光学調整層を有する上面発光素子では、キャビティー効果を改良しているにもかかわらず、発光スペクトルの半値幅が44nmとなっており急峻な発光スペクトルが得られていることが確認された。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、干渉効果を打ち消す干渉解消層を用いた表示装置において色純度の高い表示装置を提供することができる。
【0058】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置を切断したときの構造を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、一画素の素子構造を概略的に示す図である。
【図4】図4は、光学調整層を適用したことによる効果の検証結果を示す図である。
【図5】図5は、干渉解消層及び光学調整層を適用したことによる効果の検証結果を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1…有機EL表示装置 PX(R、G、B)…画素
40…有機EL素子(表示素子)
60…第1電極 62…有機活性層 64…第2電極
80…光学調整層
100…アレイ基板 101…支持基板 114…第1有機絶縁層
115…反射層 116…第2有機絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に配置された第1電極と、
前記第1電極に対向して配置され、光透過性及び光反射性を有する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、発光層を含む有機活性層と、
前記支持基板と前記第1電極との間に配置された反射層と、
前記第1電極と前記反射層との間に配置され、前記発光層の発光主波長よりも厚い膜厚からなり、前記反射層と前記第2電極との間で発生しうる光干渉を解消する干渉解消層と、
前記第2電極上に配置され、前記第2電極を介して出射した前記発光層の発光主波長における発光強度を最大化せしめる光学調整層と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光層の発光主波長をλとし、
前記有機活性層において前記発光層から前記第2電極までの光学長をLとし、
前記光学調整層の屈折率をnとし、前記光学調整層の厚さをdとし、
前記第2電極の屈折率をn’とし、前記第2電極の厚さをd’とし、
mを整数(m=0、1、2・・・)としたとき、
n・d+n’・d’+L=λ/4×(2m+1)
で示す式の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記整数mが2以上であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記有機活性層は、前記発光層と前記第1電極とに間にホール輸送層を有し、
前記光学調整層は、前記ホール輸送層と同一材料によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光学調整層は、光透過性を有する無機系材料によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
さらに、前記絶縁基板と前記反射層との間に配置され、その表面に凹凸構造を有する凹凸層を有し、
前記干渉解消層は、前記凹凸層の凹部上の膜厚が凸部上の膜厚より厚く形成されたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−187748(P2009−187748A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25468(P2008−25468)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】