説明

表示装置

【課題】広色域の色を表示している画像の領域を容易に判別することができる表示装置を提供すること。
【解決手段】広色域表示画素検知部(13a)は、xvYCC規格で表現された広色域の色を表した領域100aを検知する。広色域表示画素強調部(13b)は、前記検知部(13a)が検知した広色域の色を表示する画素を強調表示、例えば、前記広色域の色と白色で交互に表示する(フラッシング)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来、表示していた色域を超えた広色域の色を表示し、当該広色域の色を表示していることを明示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界には、テレビ画面に表示される画像の色域を超えた色が存在する。例えば、HDTVで表示できる色域は、ITU-RBT.709規格で規定されている。一方、ITU-RBT.709規格の色域を超えた色を表示できる表示装置が開発されている。
ITU-RBT.709規格で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色域の範囲を超えた色域を表現するための規格の一例としてxvYCC規格が国際標準規格「IEC61966-2-4」によって提案されている(非特許文献1参照)。xvYCC規格の特徴は、ITU-RBT.709規格との互換性を確保しながら、広色域の色を表現するため色空間を広げた点にある。
【0003】
新たに開発された、xvYCC規格に対応した表示装置において、xvYCC規格に準拠した映像信号(以下、xvYCC信号と記す)に基づいた映像を表示すると、ITU-RBT.709規格に準拠した映像信号(以下、RGB信号と記す)に基づいた映像で表示される色域の色よりも広範囲の色を表示することができる。
【非特許文献1】"Multimedia systems and equipment-Colour measurement and management-Part2-4:Colour management-Extended-gamut YCC colour space for video applications-xvYCC",2006-01-17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、xvYCC信号に基づいた映像を表示装置に表示する場合、ユーザは、前述した、ITU-RBT.709規格で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色域の範囲を超えた広色域の色の表示領域を、容易には判別できないので、例えば、前記広色域の色を表示している領域を目立たせるような、画質調整をする場合、不便であった。
【0005】
また、例えば、xvYCC信号に基づいた映像を表示できる表示装置のデモンストレーションを行うような場合、ユーザに対して表示装置が広色域の色を表示していることを認識させることができない。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、広色域の色を表示している画像の領域を容易に判別することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の技術手段は、所定の色空間よりも広色域の色空間に対応した色信号を含む画像を表示するための表示装置において、前記広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号を前記所定の色空間に対応した映像信号に変換するための映像信号変換部と、前記広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号を検知するための検知部と、映像信号を強調表示するための強調部とを含む表示装置において、前記検知部が検知した映像信号を強調表示することを特徴とする表示装置である。
【0008】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、映像信号に係わる映像が動画の場合には、前記所定の色空間よりも広色域の色空間に該当する映像信号が表示されたときに、ユーザの一時停止操作により表示される静止画について、所定の色空間よりも広色域の色空間に該当する映像信号を強調表示することを特徴とする。
【0009】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記強調表示は、前記検知した映像信号の表示において、前記広色域の色の表示と所定の色の表示とを切り換えることを特徴とする。
【0010】
第4の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記強調表示は、前記検知した映像信号を前記所定の色空間に対応した映像信号に変換し、前記変換した後の映像信号の表示における色の濃さ及び/又は色合いを変更し、前記変更した後の表示と所定の色の表示とを切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、広色域の色を表示している領域を容易に判別することができる。従って、例えば、広色域の色を表示している画像の領域を目立たせるような、画質調整が容易にできる。また、xvYCC信号に基づいた映像を表示できる表示装置のデモンストレーションを行う場合、ユーザは、前記表示装置が広色域の色を表現している画像の領域を容易に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係わる表示装置を説明する前に、ITU-RBT.709規格とxvYCC規格による映像信号について簡単に説明する。
図1は、光の色をxyの平面座標で表したxy色度図で、図2は、ITU-RBT.709規格の色空間、及び、xvYCC規格の色空間を二次元で表した図である。
撮像装置は、光電変換により、R、G、Bの3成分の色信号R、G、Bを出力する。
そして、前記色信号R、G、Bを所定の方式(カラーマトリクス係数による演算)によって、ITU-RBT.709規格の輝度信号Y、色差信号Cb、Crに変換する。
【0013】
次に、輝度信号Yを表すために、8ビットのデータ量を用いて表現される0〜255よりも狭い整数範囲、16〜235の整数値に、0〜1.0の輝度信号Yの信号レベルを割り当てる。それ故、輝度信号Yは、220階調で表される。
ここまでの処理に両規格の間に相違はない。
【0014】
次の、色差信号Cb、Crを表すための処理が両規格の間で相違している。ITU-RBT.709規格は、8ビットのデータ量を用いて表現される0〜255よりも狭い整数範囲、16〜240の整数値に、−0.5〜0.5の信号レベルを割り当てる(図2横軸参照)。つまり、−0.5未満は−0.5に、0.5超は0.5に丸めて表現している。なお、Cb、Crは、225(=240−16+1)階調で表わされる。
こうして得られた輝度信号Y、色差信号Cb、Crに基づいてRGBの信号を再現して表示装置に表示される。
【0015】
上記の輝度信号Y、色差信号Cb、Crの映像信号により、図1の三角形及び図2の中央の菱形領域で示した色空間が再現される。
【0016】
一方、xvYCC規格では、色差信号Cb、Crについて、8ビットのデータ量1〜254の整数範囲を用いて表現する。そこで、上記1〜254の整数の内の16〜240の整数値には、−0.5〜0.5の色差信号Cb、Crの信号レベルを割り当て、上記整数値の1〜15には、−0.57〜−0.5未満の色差信号Cb、Crの信号レベルを割り当て、同241〜254には、0.5超〜0.56の色差信号Cb、Crのレベルを割り当てる(図2横軸参照)。
【0017】
つまり、xvYCC規格の色差信号Cb、Crは、ITU-RBT.709の色差信号Cb、Crを包含して、−0.57〜0.56に拡張された色差信号Cb、Crを表現している。
なお、前記変換により、色差信号Cb、Crの信号レベルが−0.57未満、0.56を超える値に変換された場合には、−0.57以上、0.56以下に丸められる。
【0018】
これにより、xvYCC規格の輝度信号Y及び色差信号Cb,Crが、xvYCC規格対応の表示装置に入力され、当該表示装置において、入力された輝度信号Y及び色差信号Cb,Crが、色信号R、G、Bに変換された場合には、変換後の色信号R、G、Bの信号レベルは、図2に示したように、0〜1.0よりも広範囲の値、即ち、0未満や1を超える値(図2の1<R,G,B:R,G,B<0)をとり得る。
【0019】
このように、xvYCC規格においては、ITU-RBT.709で表現できる色域よりも広色域の色を表現することができるが、ユーザは、xvYCC信号に基づいた映像が表示装置に表示された場合、当該広色域の色を表示している領域を容易に認識できない。
そこで、本発明では、広色域の色を表示している領域を容易に認識できるようにする。
図3の表示画面に表示される画像100において、100aが、xvYCC規格で表現された広色域の色を表した表示領域とする。その場合、本発明は、前記表示領域100aの各画素の色を、例えば、前記広色域の色と白色で交互に表示する(フラッシング)ことで、広色域の色を表示している領域を容易に認識できるようにするものである。
【0020】
図4は、本発明に係わる表示装置1を説明するためのブロック図である。
表示装置1は、所定の色空間(例えば、ITU-RBT.709、ITU-RBT.601)よりも広色域の色空間を表示するための映像信号(例えば、xvYCC信号)を含む画像データを表示することができる。
11は、表示装置1に入力される静止画像、動画像(MPEG等)のコンテンツデータをデコードするコンテンツデータデコード部である。コンテンツデータデコード部11は、さらに、前記デコードしたデータから映像信号を抽出して、1フレーム分の映像信号、つまり、輝度信号Y、色差信号Cb、Crを表示制御部13に出力する。
表示制御部13は、入力された輝度信号Y、色差信号Cb、Crを、画像メモリ12に記録し、色信号R、G、Bに変換する処理を実行する。
【0021】
また、表示制御部13は、広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号(例えばxvYCC信号)を所定の色空間に対応した映像信号(例えばRGB信号)に変換する映像信号変換部13aと、入力された輝度信号Y、色差信号Cb、Cr(映像信号)から所定の色域(色空間)よりも広色域の色に該当する映像信号を検知する広色域表示画素検知部13bと、前記検知部13bが検知した映像信号を強調表示する処理を実行する広色域表示画素強調部13cを有する。なお、広色域表示画素検知部13b、広色域表示画素強調部13cの詳細な説明については、後述する。
【0022】
14は、ユーザが、表示装置1を操作するための操作部で、操作部14を介してユーザは、表示装置1に前記強調処理の実行の要否、及び、後述する、一時停止の実行を指示する。
15は、表示制御部13が変換した色信号R、G、Bに対して、当該色信号を表示部16に表示するために必要となる各種画像処理を施し、表示部16に出力する処理を制御する画像データ出力部である。
表示部16は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)、FED(Field Emission Display)、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、PTAディスプレイ(Plasma Tube Array Display)等から構成される。
また、表示部16は、所定の色空間に対応した映像信号(例えば、RGB信号)よりも広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号(例えば、xvYCC信号)の表示に対応した広色域パネル、又は、前記広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号の表示に対応していない低色域パネルから構成される。
【0023】
(広色域表示画素の検知)
広色域表示画素検知部13bは、入力された輝度信号Y、色差信号Cb、Cr(映像信号)から所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号を検知する。
前記検知方法は、様々あるが、例えば、入力された輝度信号Y、色差信号Cb、Crを画像メモリ12に記録し、画像メモリ12内のある画素に対応する、表示制御部13が変換した色信号R、G、Bの信号レベルが0未満や1を超える値(拡張された色域に対応する値)の場合には、当該画素が広色域の色を表示すると判定することにより、所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号(広色域の色を表示する、画像メモリ12内の画素)を検知することができる。
なお、前記画像メモリ12内のある画素に対応する、色差信号Cb、Crの信号レベルが−0.57〜−0.5又は0.5〜0.56の場合には、当該画素が広色域の色を表示すると判定してもよい。
【0024】
(広色域表示画素の強調)
広色域表示画素強調部13cは、広色域表示画素検知部13bが検知した広色域の色を表示する映像信号を強調表示する処理を実行する。強調表示処理の一例としては、広色域表示画素検知部13bが検知した広色域の色を表示する画像メモリ12内の画素において、前記広色域の色の表示と、所定の色、例えば、白色の表示とを切り換える処理、すなわち、点滅表示処理(フラッシング)を実行する。
【0025】
次に、前記強調表示処理を、図5のフロー図を用いて説明する。
コンテンツデータデコード部11が、表示装置1に入力されたコンテンツデータをデコードし(ステップS1)、デコードしたデータから映像信号を抽出して、1フレーム分の輝度信号Y、色差信号Cb、Crを表示制御部13に出力する(ステップS2)。
次に、表示制御部13は、輝度信号Y、色差信号Cb、Crを、色信号R、G、Bに変換する(ステップS3)。
そして、広色域表示画素検知部13bは、広色域の色を表示するための映像信号を検知し(ステップS4)、広色域表示画素強調部13cは、広色域表示画素検知部13bが検知した映像信号を強調表示する(ステップS5)。
【0026】
映像信号に係わる映像が動画の場合、つまり、コンテンツデータが動画像の場合の強調処理を図6のフロー図を用いて説明する。
動画像のコンテンツデータがコンテンツデータデコード部11に入力されると、前述したように、当該デコード部11は、入力された動画像のコンテンツデータをデコードし、デコードしたデータを表示制御部13に出力し、画像データ出力部15は、当該コンテンツデータを表示部16に出力、表示する(ステップS11)。
【0027】
ここで、ステップS11の表示において、所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号が表示されたときに、ユーザが操作部14の一時停止ボタンを操作すると(ステップS12/YES)、ユーザの一時停止操作により表示される静止画について、所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号を強調表示する(ステップS13)。
すなわち、表示制御部13は、動画像データの1フレーム分の画像データ(静止画像データ)を画像メモリ12に記録する。そして、広色域表示画素強調部13cは、当該メモリ12に記録した静止画(データ)について、前述したように、所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号を強調表示する。
【0028】
一時停止ボタンを操作しない場合には(ステップS12/NO)、動画(データ)について、前述したように、広色域表示画素強調部13cは、所定の色域よりも広色域の色に該当する映像信号を強調表示する(ステップS14)。
なお、この場合、強調表示として、所定の色、例えば、白色を表示するよう表示制御してもよい。
【0029】
次に、表示部16が低色域の表示パネルから構成されている場合の強調表示について説明する。このような場合、広色域表示画素検知部13bが検知した映像信号を、映像信号変換部13aによって所定の色空間に対応した映像信号(例えば、RGB信号)に変換する。具体的には、xvYCC規格の色差信号Cb,Crの、信号レベル−0.57〜−0.5未満を−0.5に補正し、信号レベル0.5超〜0.56を0.5に補正する。
また、前記xvYCC規格の輝度信号Y及び色差信号Cb,Crを、前述のように、色信号R、G、Bに変換した場合に、変換した色信号R、G、Bの信号レベルが0未満又は1を超える値(拡張された色域に対応する値)になると、それぞれ0又は1に補正するようにしてもよい。
【0030】
そして、広色域表示画素強調部13cが、前記変換した後の映像信号の表示における色の濃さ及び/又は色合いを変更し、前記変更した後の表示と所定の色の表示とを切り換える(フラッシング)。なお、変更する色の濃さ、色合いのレベルは、操作部14を介してユーザが設定することができる。
【0031】
このようにすることで、たとえ、低色域の表示パネルであっても、広色域の色を表示する領域を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】光の色をxyの平面座標で表したxy色度図である。
【図2】ITU-RBT.709規格の色空間、及び、xvYCC規格の色空間を二次元で表した図である。
【図3】xvYCC信号に基づいた映像を、本発明に係わる表示装置に表示した場合に、表示画面に表示される画像の一例を示した図である。
【図4】本発明に係わる表示装置を説明するためのブロック図である。
【図5】本発明の強調表示処理を説明するためのフロー図である。
【図6】動画像表示における強調表示処理を説明するためのフロー図である。
【符号の説明】
【0033】
1…表示装置、11…コンテンツデータデコード部、12…画像メモリ、13…表示制御部、13a…映像信号変換部、13b…広色域表示画素検知部、13c…広色域表示画素強調部、14…操作部、15…画像データ出力部、16…表示部、100…画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色空間よりも広色域の色空間に対応した色信号を含む画像を表示するための表示装置において、
前記広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号を前記所定の色空間に対応した映像信号に変換するための映像信号変換部と、
前記広色域の色空間に対応した色信号を含む映像信号を検知するための検知部と、
映像信号を強調表示するための強調部とを含む表示装置において、
前記検知部が検知した映像信号を強調表示することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
映像信号に係わる映像が動画の場合には、前記所定の色空間よりも広色域の色空間に該当する映像信号が表示されたときに、ユーザの一時停止操作により表示される静止画について、所定の色空間よりも広色域の色空間に該当する映像信号を強調表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記強調表示は、前記検知した映像信号の表示において、前記広色域の色空間の表示と所定の色空間の表示とを切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記強調表示は、前記検知した映像信号を前記所定の色空間に対応した映像信号に変換し、前記変換した後の映像信号の表示における色の濃さ及び/又は色合いを変更し、前記変更した後の表示と所定の色の表示とを切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−229884(P2009−229884A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76031(P2008−76031)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】