説明

表示装置

【課題】製造コストが抑制された両面表示装置。
【解決手段】一対の基板と該一対の基板間に挟持された発光機能層15とを備え、第1の基板10側に発光を射出する第2の画素32と第2の基板11側に発光を射出する第1の画素31が規則的に配置された表示装置であって、第1の画素31は発光機能層15の、第1の基板10側に形成された第1画素電極35と第2の基板11側に形成された共通電極19と第1の基板10側に形成された反射層13と、を備え、第2の画素32は、発光機能層の、第1の基板10側に形成された第2画素電極36と第2の基板11側に形成された共通電極19と第2の基板11側に形成された反射層14と、を備える表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通電により発光するEL(エレクトロルミネッセンス)現象を利用した有機EL装置は表示装置としての利用が拡大している。そして、近年新たな用途として、表裏両面から同時に見るような使用方法が考えられている。かかる用途に対応する両面表示型の有機EL装置として、例えば特許文献1には、カソードの両側に少なくともEL層を含む発光機能層を形成する態様が提案されている。また、特許文献2には、カソードの一部を透明部材で形成する態様が提案されており、特許文献3には、発光機能層を挟持する電極、すなわちアノードとカソードの双方を透明部材で形成する態様が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−58260号公報
【特許文献2】特開2001−332392号公報
【特許文献3】特開2002−252089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カソードの両側に発光機能層を形成する態様は、製造コストを上昇させ得る。また、カソードとアノードの双方を透明部材で形成することは電極材料の選択の幅を狭めることとなり、発光特性等に影響を及ぼし得る。また、さらに進んだ用途として、複数人が表示装置を挟んで向かい合って、該表示装置と相手の双方を見ながら会議等を行う使用方法も提案されている。かかる用途のためには、表示装置内に透明領域を設ける必要がある。そして、向かい合った複数人が左右反転していない画像を見るためには、該表示装置の一方の側の画像と他方の側の画像が夫々独立して形成される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる表示装置は、第1の基板と第2の基板との一対の基板と該一対の基板間に挟持された発光機能層とを備え、上記第1の基板側に発光を射出する第2の画素が形成された第2の画素領域と上記第2の基板側に発光を射出する第1の画素が形成された第1の画素領域とが規則的に配置された表示装置であって、上記第1の画素は上記発光機能層の第1の基板側に形成された第1画素電極と上記発光機能層の第2の基板側に形成された共通電極と上記発光機能層の第1の基板側に形成された反射層とを備え、上記第2の画素は上記発光機能層の第1の基板側に形成された第2画素電極と上記発光機能層の第2の基板側に形成された共通電極と上記発光機能層の第2の基板側に形成された反射層とを備え、上記第1の基板の上記発光機能層側には上記第1画素電極と上記第2画素電極とを駆動する駆動素子が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、反射層を2層形成することで、発光機能層内で生じる光を第1の基板側と第2の基板側の双方から射出させることができる。したがって、両面表示装置を、製造コストの増加を抑制しつつ実現できる。
【0008】
[適用例2]上述の表示装置であって、平面視で上記反射層が形成されておらず、上記第1の基板及び上記第2の基板を介して光が透過可能な透明領域が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0009】
このような構成であれば、表示される画像を見つつ、該表示装置を介して反対側を視認できる。したがって、会議等において画像と相手の双方を視認可能な両面表示装置を実現できる。
【0010】
[適用例3]上述の表示装置であって、上記透明領域は上記第1画素電極及び上記第2画素電極の双方が形成されていない領域であることを特徴とする表示装置。
【0011】
このような構成であれば、透明領域において発光機能層が発光することを抑制でき、表示品質を向上できる。
【0012】
[適用例4]上述の表示装置であって、上記第1の画素領域における上記共通電極及び上記発光機能層は上記第2の画素領域における上記共通電極及び上記発光機能層と同一の層であることを特徴とする表示装置。
【0013】
このような構成であれば、共通電極の形成工程及び発光機能層の形成工程を増加させることなく、発光を第1の基板側と第2の基板側の双方から射出させることができる。したがって、両面表示装置を製造コストの増加を抑制しつつ実現できる。
【0014】
[適用例5]上述の表示装置であって、上記第1画素電極と上記第2画素電極との2種類の画素電極の少なくとも一方は夫々が独立に駆動される赤色サブ画素電極と緑色サブ画素電極と青色サブ画素電極との3種類のサブ画素電極を有しており、上記一方の画素電極に対応する画素領域は、平面視で上記赤色サブ画素電極を含み赤色光を射出する赤色サブ画素領域と、平面視で上記緑色サブ画素電極を含み緑色光を射出する緑色サブ画素領域と、平面視で上記青色サブ画素電極を含み青色光を射出する青色サブ画素領域と、の3種類のサブ画素領域に区画されていることを特徴とする表示装置。
【0015】
このような構成であれば、少なくとも一方の面にカラー画像を表示可能な両面表示装置を、製造コストの増加を抑制しつつ実現できる。
【0016】
[適用例6]上述の表示装置であって、上記3種類のサブ画素領域における、上記発光機能層の上記反射層側の反対の側には、各々のサブ画素領域から射出される光の色に対応するカラーフィルターが形成されていることを特徴とする表示装置。
【0017】
このような構成であれば、発光機能層をサブ画素間で共通のものを用いつつ、少なくとも一方の面にカラー画像を表示可能な両面表示装置を実現できる。
【0018】
[適用例7]上述の表示装置であって、上記3種類のサブ画素電極は、上記発光機能層の上記反射層側の反対の側に半透過反射層を有しており、上記半透過反射層と上記反射層との間に特定の波長範囲の光を共振させる光共振器構造が形成されていることを特徴とする表示装置。
【0019】
このような構成であれば、発光機能層をサブ画素間で共通のものを用いつつ、少なくとも一方の面にカラー画像を表示可能な両面表示装置を実現できる。
【0020】
[適用例8]上述の表示装置であって、上記第1画素電極と上記第2画素電極との少なくとも一方は千鳥状に配置されていることを特徴とする表示装置。
【0021】
このような構成であれば、表示領域内に筋状のムラが発生することを低減でき、表示品質を向上できる。
【0022】
[適用例9]上述の表示装置であって、上記第1画素電極と上記第2画素電極との少なくとも一方は列状に配置されていることを特徴とする表示装置。
【0023】
このような構成であれば、第2の基板側に形成される反射層を帯状にでき、マスク成膜を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態にかかる有機EL装置の概要を示す斜視図。
【図2】有機EL装置の表示領域内における各領域の配置の態様を示す図。
【図3】表示領域内における画素領域の配置を示す図。
【図4】第1の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図5】第1の実施形態にかかる有機EL装置の表示領域における模式断面図。
【図6】第2の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図7】第2の実施形態にかかる有機EL装置の表示領域における模式断面図。
【図8】第3の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図9】第3の実施形態にかかる有機EL装置の表示領域における模式断面図。
【図10】第4の実施形態にかかる有機EL装置の回路構成図。
【図11】第4の実施形態にかかる有機EL装置の表示領域における模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる表示装置としての有機EL装置について、図面を参照しつつ述べる。なお、本発明はEL装置であれば無機EL材料を用いたEL装置を用いても実現可能であるが、本実施形態においては、EL材料に有機系のEL材料を用いた有機EL装置を例にして説明する。また、以下の各図においては、各層や各部位を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部位の縮尺を実際とは異ならしめてある。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる有機EL装置91、及び後述する各実施形態にかかる有機EL装置の概要を示す斜視図である。有機EL装置91は、上面と下面の双方に平面視でほぼ重なる表示領域100を有している。左側の眼80で見ている面が第1の面としての上面3であり、右側の眼80で見ている面が第2の面としての下面4である。
【0027】
上面3からは第1の表示光5が射出され、下面4からは該第1の表示光とは異なる表示光である第2の表示光6が射出される。「異なる表示光」とは異なる画像を形成する光ということである。したがって、有機EL装置91は該有機EL装置を介して対向するように位置する2人の観察者に夫々異なる画像を表示できる。ここで、後述する発光機能層15(図5参照)を透明材料からなる一対の電極で挟持して同一の表示光を表裏両面(上面と下面)から射出した場合、異なる画像は形成できない。すなわち、上述の2人の観察者に図示するような左右方向が正しい画像を表示できず、どちらか一方の観察者に左右が反転した画像を表示してしまう。したがって、少なくとも文字情報は正しく表示できない。
【0028】
本実施形態の有機EL装置91は、後述するように共通の発光機能層15を用いて表裏両面(上面3と下面4)に夫々異なる画像を表示することで、左右の反転を起こさずに、2人の観察者に共通の画像を表示できる。また、表示領域100には、透明領域(外光7の一部を透過させることができる領域)が規則的に形成されている。したがって、該有機EL装置を介して向かい合う2人の観察者は、表示領域100に形成される画像と共に相手の顔を見ることができる。そのため、会議等において、視線を変更することなく画像(画像情報)を見ながら、いわゆるフェイストゥフェイスの会話を行うことが可能である。
【0029】
図2(a)及び(b)は、有機EL装置91、及び後述する各実施形態にかかる有機EL装置の表示領域100内における各領域の配置の態様を示す図である。各領域とは、上面に向けて第1の表示光5を射出する第1の画素領域41、下面に向けて第2の表示光6を射出する第2の画素領域42、外光7の一部を透過させることができる透明領域43の3種類の領域である。かかる3種類の領域が、表示領域100内に規則的に形成されている。
【0030】
図2(a)は、上述の各領域(41,42,43)が夫々列状(図4等におけるY方向)に配置された態様を示している。かかる態様の配置は、千鳥状の配置に比べて後述する第2の反射層14(図5参照)の形成が容易になるという利点を有している。また、同じく後述する第1の反射層13(図5参照)を、複数の第1の画素領域41にまたがる帯状に形成できるという利点も有している。さらには、各領域(41,42,43)の面積が異なる場合にも有利である。なお、本図においては縦方向の列状に各領域が配置されているが、横方向の行状(図4等におけるX方向)に配置する態様も可能である。
【0031】
図2(b)は、上述の各領域(41,42,43)が千鳥状に配置された態様を示している。かかる配置によれば、比較的滑らかな画像の表示が可能となる。有機EL装置91及び後述する各実施形態にかかる有機EL装置は、図2(a)に示す列状の配置を採用している。しかし、かかる配置に限定されるものではなく、全ての態様において図2(b)に示す千鳥状の配置も採用可能である。
【0032】
図3(a)〜(d)は、上述の各領域(41,42,43)内がさらに細かく区画された場合を示すものである。主として、後述の第2の実施形態以降の有機EL装置において、第1の画素領域41と第2の画素領域42とが、射出される光の色によりサブ画素領域として区画された場合を示している。図3(a)は、本実施形態にかかる有機EL装置91における上述の各領域(41,42,43)を示している。有機EL装置91は白黒表示なので、第1の画素領域41と第2の画素領域42の双方ともサブ画素領域を有していない。すなわち、双方の画素領域(41,42)は白色光を任意の強度で射出できるが有色光は射出できない。なお、「白色光」とは純粋な白色の光のみではなく、若干の色度を有するが該色度を変更できない単色光も含んだ概念として用いている。
【0033】
図4は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91の回路構成図である。有機EL装置91は、表示領域100と該表示領域の周辺部に形成された周辺領域(符号無し)とを備えている。表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線103と、Y方向に延在する複数の信号線104と、同じくY方向に延在する複数の電源線106と、が形成されている。X方向が信号線104と電源線106とで規定され、Y方向が走査線103で規定される方形の区画毎に、第1の有機EL画素(以下、「第1の画素」と称する。)31と第2の有機EL画素(以下、「第2の画素」と称する。)32が、上述の図2(a)に示す列状に形成されている。なお、以下の記載において、第1の画素31と第2の画素32の総称を「有機EL画素(31,32)」と表記する。後述する他の構成要素についても同様である。
【0034】
第1の画素31は上述の第1の画素領域41に対応する画素であり、第1画素電極35(図5参照)を備える有機EL素子29と後述する他の構成要素とで構成されている。第2の画素32は上述の第2の画素領域42に対応する画素であり、第2画素電極36(図5参照)を備える有機EL素子29と後述する他の構成要素とで構成されている。本実施形態にかかる有機EL装置91は白黒画像を表示する装置であるため、各画素の射出する光の色に区別は無い。ここで有機EL画素(31,32)とは、有機EL素子29等の各要素で構成される機能的な概念である。画素領域(41,42)は表示光が射出される領域であり、平面的な概念である。なお、表示領域100内には上述の透明領域43も配置されているが、該透明領域は有機EL素子29等が形成されていない領域であるため、回路図である本図では図示されていない。
【0035】
有機EL装置91はアクティブマトリクス型の表示装置であり、各々の有機EL画素(31,32)は、走査線103を介して走査信号がゲート電極23(図5参照)に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスター)108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画像信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画像信号がゲート電極23に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源線106から駆動電流が流れ込む有機EL素子29(図5参照)等からなる。
【0036】
周辺領域には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線駆動回路120は、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて、走査線103に走査信号を順次供給する。信号線駆動回路130は、信号線104に画像信号を供給する。電源線106には、図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。走査線駆動回路120の動作と信号線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0037】
走査線103が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源線106から画素電極に駆動電流が流れ、有機EL素子29は駆動電流の大きさに応じて発光して、各々の画素(31,32)に対応する画素領域(41,42)から表示光(5,6)として射出される。
【0038】
図5は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91の、表示領域100(図1及び2参照)における模式断面図である。図示するように、有機EL装置91は、素子基板10と対向基板11、及びかかる一対の基板間に形成された各要素で構成されている。対向基板11側、すなわち対向基板11の後述する各要素が形成されている側の反対側の面が上面(第1の面)3である。素子基板10側、すなわち素子基板10の各要素が形成されている側の反対側の面が下面(第2の面)4である。
【0039】
表示領域100は、上述したように平面視で上面3から第1の表示光5を射出する第1の画素領域41と下面4から第2の表示光6を射出する第2の画素領域42と外光7の少なくとも一部を透過させることができる透明領域43との計3種類の領域を備えている。そして、第1の画素領域41には第1の画素31が形成されており、第2の画素領域42には第2の画素32が形成されている。図示するように、第1の画素31と第2の画素32との違いは反射層(13,14)の、基板面の垂直方向における形成位置である。かかる形成位置の違いにより、表示光(5,6)が射出される方向を変えることができる。なお、上記のように括弧内に符号をカンマで区切って併記する場合、「第1の要素」と「第2の要素」の双方を示している。
【0040】
透明領域43は、垂直方向において上記一対の基板と表示領域100の略全面に形成される各層で構成されており、上述の反射層(13,14)等は形成されていない。そして、かかる全面的に形成される各層は透明材料あるいは半透過性材料からなる。また、素子基板10と対向基板11はガラス等の透明材料からなる。したがって、透明領域43は有機EL装置91を介して外光7の少なくとも一部を透過させることができる。
【0041】
なお、透明領域43では後述する発光機能層15に通電させる必要がないため、画素電極(35,36)は形成されていない。ただし、該画素電極が透明性を有する(後述する)ITO等で形成されている場合、同一の材料層が該画素電極とは電気的に独立した態様で形成されていても良い。
【0042】
以下、有機EL画素(31,32)を構成する各要素について、素子基板10側から順に述べる。なお、本実施形態の有機EL装置91、及び後述する各実施形態の有機EL装置は、第1の画素31と第2の画素32とで表示光が射出される方向が異なることに特徴がある。そこで、本図では、上述の双方の画素(31,32)を構成する要素のうち、有機EL素子29と該有機EL素子を駆動する駆動用TFT(以下、単に「TFT」と称する。)112を示し、スイッチング用TFT108と保持容量110は図示を省略している。
【0043】
TFT112は、素子基板10の上層に形成されている。素子基板10とTFT112との界面に、保護層を別途形成してもよい。なお、「上方」及び「上層」とは、対向基板11側を意味している。TFT112は、半導体層21と、走査線103と同一の層をパターニングして形成されたゲート電極23、及び、半導体層21とゲート電極23との間に形成されたゲート絶縁層70等からなる。半導体層21のうちゲート電極23と平面視で重なる領域がチャネル領域22であり、該チャネル領域の両側にソース領域25とドレイン領域26とが形成されている。なお、ゲート電極23は、素子基板10側から順にTi(チタン)とAlCu(アルミニウム・銅合金)とTiN(窒化チタン)とが積層された構造を有している。
【0044】
TFT112の上層には、窒化シリコン、又は酸化シリコン等の無機絶縁材料とアクリル樹脂等の有機系材料とを積層した層間絶縁層71が形成されている。ドレイン領域26には、層間絶縁層71を局所的にエッチングして形成されたコンタクトホール27を介して、画素電極(35,36)が電気的に接続されている。画素電極(35,36)の形成材料は透明性と導電性とが必要であり、かつ、後述する共通電極としての陰極19よりも仕事関数が高いことが必要である。そのため、有機EL装置91では、画素電極(35,36)を透明導電材料であるITO(酸化インジウム・錫合金)で形成している。ITOに代えてIZO(酸化インジウム・亜鉛合金)を用いてもよい。さらには、金属を含まない透明導電材料であるPEDOTを用いてもよい。
【0045】
第1画素電極35の下層には、第1の反射層13と該第1の反射層を覆う保護層28が形成されている。第1の反射層13(及び後述する第2の反射層14)の形成材料は、反射率が高く加工性(パターニング性)に優れた材料が好ましい。したがって、有機EL装置91の第1の反射層13(及び後述する第2の反射層14)は、Al(アルミニウム)等で形成されている。第1の反射層13は厚さが略80nmであり、全面的に形成したAl層をパターニングして形成されている。
【0046】
保護層28は窒化シリコンからなり、第1画素電極35の形成時に第1の反射層13を保護する機能を果たしている。また、窒化シリコンは絶縁材料であるため、第1画素電極35と第1の反射層13とを電気的に絶縁できる。したがって、第1の反射層13を窒化シリコンからなる保護層28で完全に覆う構成であれば、第1の反射層13を島状ではなく、Y方向(図4参照)に隣り合う第1の画素領域41間にまたがる帯状に形成することもできる。すなわち、Y方向においては、平面視で第1の反射層13の形成領域内に島状にパターニングされた第1画素電極35が配置された態様にできる。
【0047】
また、X方向においても、第1の反射層13の形成領域内に第1画素電極35が配置された態様にすることができる。すなわち、第1の反射層13は、コンタクトホール27の形成領域以外では平面視で第1画素電極35よりも広く、すなわち平面視で第1画素電極35を覆うように形成することができる。
【0048】
なお、第1画素電極35は透明性が必須ではなく、Ag(銀)等の反射性材料で形成することもできる。かかる場合、第1画素電極35が第1の反射層13を兼ねることとなる。そして、保護層28は不要となる。また、第1の反射層13(及び後述する第2の反射層14)は、フォトリソグラフィー法等によりパターニングして形成するのではなく、マスク蒸着等のマスク成膜法で成膜とパターニングを一括して形成しても良い。
【0049】
画素電極(35,36)が形成された素子基板10の上層には発光機能層15が全面的に、形成されている。したがって、第1の画素領域41と第2の画素領域42との2種類の領域において、発光機能層15は共通の層である。したがって、本実施形態にかかる有機EL装置91(および後述する各実施形態にかかる有機EL装置)の製造において、発光機能層の形成工程は1回のみである。
【0050】
発光機能層15は総称であり、具体的には素子基板10側から順に正孔注入層と正孔輸送層と有機EL層と電子輸送層との計4層が積層されて形成されている。電子輸送層の上層に形成される電子注入層を含めての計5層と考えてもよい。本実施形態の有機EL装置91はカラーではなく白黒(モノクロ)の表示装置であるため、有機EL層は白色光を発光する層である。したがって、発光機能層15は白色発光機能層である。なお、上述の有機EL層は、単一の材料からなる層に限定されない。夫々異なる色に発光する層を積層して、全体として白色光を射出できればよい。また、純粋な白色光を射出する必要は無く、若干の色を帯びた光でもよい。
【0051】
発光機能層15の上層には、共通電極としての陰極19が、発光機能層15と同様に全面的に形成されている。陰極19と発光機能層15と画素電極(35,36)との積層体が有機EL素子29である。TFT112を介して画素電極(35,36)に電圧が印加されると該画素電極と陰極19との間に発光機能層15を介して電流が流れ、発光機能層15に含まれる有機EL層は電流量に応じて発光する。
【0052】
上述したように、第1画素電極35の素子基板10側には第1の反射層13が形成されている。したがって、第1の画素領域41において、発光機能層15と素子基板10との間には第1の反射層13が位置することとなり、該領域において素子基板10側へ向かう発光は対向基板11側へと反射される。また、該領域において対向基板11側へ向かった発光は、そのまま、第1の表示光5として第1の面3側すなわち対向基板11側から射出される。したがって、第1の画素31で生じた発光は、全て第1の表示光5として第1の面3側すなわち対向基板11側から第1の表示光5として射出される。
【0053】
有機EL装置91は白黒表示の有機EL装置であるため、有機EL素子29は共振器構造を要しない。したがって陰極19は、必ずしも半透過性を有する必要はなく、透明性(透光性)であっても良い。一方で、透明領域43(図2参照)は外光7の一部を透過させれば良いので、陰極19は、完全に透明である必要はない。したがって陰極19は、透明性を有していても良く、半透過性を有していても良い。
【0054】
また、陰極19は、電極であるため導電性が必要であり、さらに、電子注入性を確保するために、画素電極(35,36)の形成材料よりも仕事関数が低い材料で形成される必要がある。有機EL装置91においては、電子注入層としてAlを2nm、LiF(フッ化リチウム)を1nm積層した上に陰極19としてITOを積層して、透明性と電子注入性を確保している。
【0055】
第2の画素領域42における陰極19の上層には、第2の反射層14が形成されている。該第2の反射層は、第1の反射層13と同じくAlからなり、層厚も同様に80nmである。ただし、形成方法は、下地となる陰極19にダメージが及ぶことを抑制するためにも、マスク蒸着等のマスク成膜法によることが好ましい。第2の反射層14は、第1の反射層13とは異なり電気的に互いに独立している必要が無い。また、平面視でコンタクトホール27と重なっても問題はない。したがって、本実施形態においてはY方向(図4参照)に延在する帯状に形成できる。
【0056】
第2の反射層14は、発光機能層15内で生じた光を素子基板10側に反射する機能の他に、陰極配線(補助配線)としての機能も果たしている。上述したよう、陰極19は透明性を発揮させるために極めて薄く形成されている。したがって陰極19は面抵抗が高く、有機EL装置の中央近傍では電圧降下のため有機EL層に流れる電流量が低下する傾向にある。第2の反射層14は陰極19の上層に何も介さずに積層されているため、該陰極と電気的に一体化している。
【0057】
そして、第2の反射層14は層厚が80nmと陰極19の層厚に比べて充分に厚く、かつ表示領域100内に規則的に形成されている。したがって、第2の反射層14は透明性を要しない領域において実質的に陰極19の層厚を増加させて、陰極19の面抵抗を低下させている。かかる面抵抗の低下により、中央部近傍においてもかかる電圧降下が抑制されるため、有機EL装置91は中央部と周辺部とで輝度等の差が少ない品質の向上した画像を表示できる。
【0058】
第2の画素32は第2画素電極36の下層に反射層を有していないため、発光機能層15内で生じた発光のうち、素子基板10側へ向かう発光はそのまま第2の面4側から第2の表示光6として射出される。一方、発光機能層15の上層には第2の反射層14が位置しているため、対向基板11側へ向かう発光は該第2の反射層で反射されて、素子基板10側へ向かい第2の面4側から第2の表示光6として射出される。したがって、第2の画素領域42で生じる発光の略全ては、第2の面4側から第2の表示光6として射出される。
【0059】
第2の反射層14が形成された陰極19の上層、すなわち陰極19と対向基板11との間には、封止層79が形成されている。封止層79は、単層であるように図示されているが、実際には陰極19の上層から順に形成された陰極保護層と有機緩衝層とガスバリア層の計3層からなる積層体と、該積層体と対向基板11との間に充填された透明性を有する接着材層と、からなる。上述の封止層79を構成する各層は全て透明材料からなるため、透明領域43は外光7の少なくとも一部を透過させることができる。したがって、有機EL装置91を介して向かい合う二人の人は互いに相手を視認できる。
【0060】
上述してきたように、本実施形態にかかる有機EL装置91は、透明領域43では外光7を少なくとも一部は透過させ、第1の画素領域41では対向基板11側に第1の表示光5を射出し、第2の画素領域42では素子基板10側に第2の表示光6を射出している。そのため、透明領域では反射層(13,14)のような遮光性の層を形成せず、一方画素領域(41,42)では反射層(13,14)により発光機能層15内で生じた光を一方の側にのみ射出している。
【0061】
ここで、画素電極(35,36)が形成されている領域では発光機能層15内で発光が生じるため、反対側へ表示光(5,6)が射出されることを抑制するためには、平面視で画素電極(35,36)が反射層(13,14)内に含まれる必要がある。しかし、第1の画素領域41ではコンタクトホール27の形成領域に第1の反射層13は形成できない。また、反射層(13,14)は外光を反射するため、該反射層が画素電極(35,36)と重ならない部分、すなわち平面視で該反射層が該画素電極からはみ出す部分を極端に広く形成すると、表示品質を低下させる可能性もある。
【0062】
かかる現象を抑制するためには、透明領域43以外の領域において、平面視で画素電極(35,36)を囲む領域に隔壁(不図示)を形成しても良い。上述の領域において画素電極(35,36)と発光機能層15との間に遮光性の絶縁性材料からなる隔壁を形成することで、発光機能層15の発光が好ましくない側へ射出されることと、外光7が反射されることの双方を抑制でき表示品質を向上できる。
【0063】
(本実施形態の効果)
上述したように、有機EL装置91は、第1の画素31と第2の画素32の2種類の画素を有している。双方の画素(31,32)は類似した構成を有しており、異なる点は反射層(13,14)の形成位置(垂直方向における位置)のみである。
【0064】
ここで、一般の有機EL装置においても、表示光を素子基板10側と対向基板11側とのどちらか一方の側からのみ射出させるために反射層を形成することが一般的である。したがって、本実施形態にかかる有機EL装置91は、新たに1層の反射層を形成することのみで、第1の面3と第2の面4の双方の面から表示光を射出できる。また、有機EL装置91はアクティブマトリクス型の表示装置であるため、隣り合う画素(31,32)間で異なる発光を生じさせることができる。したがって、有機EL装置91は若干の工程数の増加すなわち製造コストの増加のみで、第1の面3と第2の面4の双方の面から表示光を射出して、双方の面(3,4)の表示領域100に夫々異なる画像を形成できる。
【0065】
ここで、上述の異なる画像とは、同一の文字情報を左右反転させたものを含んでいる。有機EL装置91のような構成を用いずに、画素電極(35,36)と陰極19の双方を透明材料で形成した場合にも、双方の面の表示領域100に画像を形成できる。しかし、かかる画像は一方の面を基準とした場合、他方の面では左右が逆転してしまうため、少なくとも文字情報は正しく表示できない。
【0066】
有機EL装置91は、かかる文字情報も左右逆転させずに双方の面の表示領域100に形成できるため、会議等において複数の人が該有機EL装置を介して共通の情報を視認しつつ会話を行うことができる。さらに、表示領域100内に透明領域43が形成されているため、画像と向かい合う相手の表情等を同時に視認できる。したがって、本実施形態にかかる有機EL装置91を用いることで、文字情報等の画像情報を資料にしつつ行う会議等を効率的に遂行できる。さらに、有機EL装置91、及び後述する各実施形態の有機EL装置(92,93,94)は、デジタルサイネージとして用いる場合においても、双方の面(3,4)に表示できるため死角の無い宣伝表示を行うことができる。
【0067】
なお、図2及び図3(a)においては、表示領域100内に形成された3種類の領域(41,42,43)の面積比は、略1:1:1となるように図示されている。しかし、該面積比は上述の値に限定されるものではなく、任意に設定可能である。また、相手の顔、表情等を見る必要が無い場合には透明領域43を形成せずに、第1の画素領域41と第2の画素領域の2種類の領域のみにすることもできる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について述べる。本実施形態にかかる有機EL装置92は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91と使用の目的及び態様が共通しており、構成も類似している。すなわち、図1に示すように、第1の面3と第2の面4の双方に平面視でほぼ重なる表示領域100を有しており、該双方の面(3,4)に夫々異なる画像を表示できる。そして、表示領域100に形成された透明領域43(図2等参照)により、該有機EL装置を介して対向する側(すなわち反対側)を視認できる。該透明領域を含む3種類の領域の配置の態様も共通している。すなわち、図2(a)に示すような列状の配置が採用されている。
【0069】
有機EL装置92は、白黒表示ではなくカラー表示である点で、第1の実施形態の有機EL装置91とは異なっている。したがって、透明領域43以外の2つの領域は、3原色光のいずれかを射出するサブ画素領域にさらに細かく区画されている。
【0070】
図3(b)に、有機EL装置92における画素領域(41,42)内におけるサブ画素領域の配置の態様を示す。図示するように、第1の画素領域41は、赤色光を射出する領域である第1赤色サブ画素領域51rと緑色光を射出する領域である第1緑色サブ画素領域51gと青色光を射出する領域である第1青色サブ画素領域51bと、の3原色光のいずれかを射出するサブ画素領域に区画されている。
【0071】
同様に第2の画素領域42も、赤色光を射出する領域である第2赤色サブ画素領域52rと緑色光を射出する領域である第2緑色サブ画素領域52gと青色光を射出する領域である第2青色サブ画素領域52bと、の3原色光のいずれかを射出するサブ画素領域に区画されている。したがって、双方の画素領域(41,42)は、かかる3原色光を任意の比で混合して得られる任意の色の光を射出できる。したがって、有機EL装置92は、第1の面3と第2の面4の双方の側の表示領域100にカラー画像を表示(形成)できる。
なお、以下の記載において、例えば第1サブ画素領域51(r,g,b)と表記した場合、第1の画素領域41に図3(b)に示すように含まれる上述の3種類のサブ画素領域を示すものとする。
【0072】
図6は、有機EL装置92の回路構成図である。本図は上述の第1の実施形態における図4に相当する図であり、後述する図7は第1の実施形態における図5に相当する図である。上述したように、有機EL装置92は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91と使用の目的等が共通している。構成も、白黒表示ではなくカラー表示である点を除くと類似している。そこで、本図、及び図7においては共通する構成要素には同一の符号を付与し説明の記載は一部省略する。
【0073】
有機EL装置92は、平面視において表示領域100と該表示領域の周囲を囲む周辺領域に区分される。周辺領域には、走査線駆動回路120と信号線駆動回路130と、該双方の駆動回路の同期を図る同期信号線140が形成されている。表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線103と、Y方向に延在する複数の信号線104と、同じくY方向に延在する複数の電源線106と、が形成されている。そして、表示領域100内には、第1の画素31と第2の画素32が、上述の図2(a)に示す列状に形成されている。なお、上述したように列状ではなく千鳥状に形成することもできる。また、本図は回路図であるため透明領域43(図2参照)は不図示である点も上述の有機EL装置91と同様である。
【0074】
有機EL装置92は、上述の画素領域とサブ画素領域の関係に対応するように、画素(31,32)が、3種類のサブ画素で構成されている。すなわち、第1の画素31は、第1赤色サブ画素33rと第1緑色サブ画素33gと第1青色サブ画素33bとの3種類のサブ画素で構成されている。同様に、第2の画素32も、第2赤色サブ画素34rと第2緑色サブ画素34gと第2青色サブ画素34bとの3種類のサブ画素で構成されている。かかる各符号に含まれる各小文字のアルファベットは、各サブ画素(33,34)に対応する上述の各サブ画素領域(51,52)から射出される発光の色を示している。他の構成要素(後述するカラーフィルター等)においても、同様である。
【0075】
各サブ画素(33,34)は、後述するカラーフィルター75(r,g,b)と共振器構造とにより、発光機能層15内で生じる白色光を、赤色光、緑色光、青色光の3原色光のいずれかの光とした上で、各サブ画素領域(51,52)から射出できる。なお、「各サブ画素(33,34)」とは上述の6種類のサブ画素の総称であり「各サブ画素領域(51,52)」とは上述の6種類のサブ画素領域の総称である。
【0076】
図示するように、上述の計6種類のサブ画素(33,34)はX方向が信号線104と電源線106とで規定され、Y方向が走査線103で規定される方形の区画毎に形成されている。そして、各々のサブ画素(33,34)は、有機EL素子29とスイッチング用TFT108と保持容量110と駆動用TFT112とを備えている。そして、第1の実施形態にかかる有機EL装置91の各画素(31,32)と同様に駆動用TFT112を介して電源線106から有機EL素子29に駆動電流が流れ、該有機EL素子は駆動電流の大きさに応じて発光する。したがって、個々の有機EL素子29毎に発光量は任意に制御できる。その結果、表示領域100内にカラー画像が形成される。
【0077】
図7は、有機EL装置92の、表示領域100における模式断面図である。図示するように有機EL装置92の表示領域100は、第1の面3から第1の表示光5を射出する第1の画素領域41と第2の面4から第2の表示光6を射出する第2の画素領域42と透明領域43の計3種類の領域を含んでいる。そして、上述したように、第1の画素領域41と第2の画素領域42はさらに3種類のサブ画素領域を含んでいる。そして、各サブ画素領域(51,52)の夫々は、平面視でサブ画素(33,34)と1対1に対応している。
【0078】
すなわち、第1赤色サブ画素領域51rには第1赤色サブ画素33rが対応し、第1緑色サブ画素領域51gには第1緑色サブ画素33gが対応し、第1青色サブ画素領域51bには第1青色サブ画素33bが対応している。同様に、第2赤色サブ画素領域52rには第2赤色サブ画素34rが対応し、第2緑色サブ画素領域52gには第2緑色サブ画素34gが対応し、第2青色サブ画素領域52bには第2青色サブ画素34bが対応している。
【0079】
上述したように、各サブ画素(33,34)は有機EL装置91の「画素」と同様な構成を有している。すなわち、(駆動用)TFT112と有機EL素子29と図示を省略したスイッチング用TFT108と保持容量110等で構成されている。したがって、第1の実施形態にかかる有機EL装置91と同様に、有機EL素子29を構成する一対の電極間に印加する電圧を制御することで、任意の量の光を射出できる。なお、有機EL素子29とは、本来は一対の電極(陰極19と画素電極(35,36))と発光機能層15の積層体であるが、本図では便宜的に反射層(13,14)あるいは半透過反射層12も含めて有機EL素子29として示している。また、本図では第1の反射層13を覆う保護層28(図5参照)の図示を省略している。
【0080】
有機EL装置92は、各画素電極(35,36)も、3種類のサブ画素電極で構成されている。すなわち、第1画素電極35は、第1赤色サブ画素電極37rと第1緑色サブ画素電極37gと第1青色サブ画素電極37bとで構成されており、第2画素電極36は、第2赤色サブ画素電極38rと第2緑色サブ画素電極38gと第2青色サブ画素電極38bとで構成されている。
【0081】
有機EL装置92の発光機能層15は、第1の実施形態の有機EL装置91の発光機能層15と同様に、白色光を発光する有機EL層を備える白色発光機能層である。そして、有機EL装置92は、かかる白色光から特定の波長範囲の光を強調して有色光とした後に射出することで、カラー表示を可能にしている。そのため、有機EL装置91と比べて、以下の点で異なっている。
【0082】
まず、各々のサブ画素(33,34)に対応するカラーフィルター75(r,g,b)が形成されている。次に、陰極19が、半透過性すなわち略50%の光透過性を有する材料層で形成されている。そして次に、第2サブ画素34(r,g,b)における、第2サブ画素電極38(r,g,b)と素子基板10の間には、半透過性を有する材料層である半透過反射層12が形成されている。かかる半透過層(陰極19又は半透過反射層12)は、反射層(13,14)と組み合わされることで共振器構造を構成している。有機EL装置92は、上述の各発光色を該共振器構造とカラーフィルター75(r,g,b)との機能によって得ている。
【0083】
まず、第2の面4から射出される光について述べる。第2サブ画素34(r,g,b)は、上述したように第2サブ画素電極38(r,g,b)と層間絶縁層71の間に半透過反射層12を備えており、陰極19の上層に第2の反射層14を備えている。そして、第2サブ画素電極38(r,g,b)と素子基板10との間にはカラーフィルター75(r,g,b)を備えている。なお、半透過反射層12は、層厚略10nmのAlあるいはMg・Ag合金からなる。
【0084】
発光機能層15の発光のうちの略半分は対向基板11側へと向かい、第2の反射層14において反射されて素子基板10側へ向かう。また、残りの略半分の光は直接素子基板10側へと向かう。そして、かかる素子基板10側へと向かった光の略50%は半透過反射層12、及び後述するカラーフィルター75を透過して第2の面4から射出される。残りの略50%の光は半透過反射層12で反射されて対向基板11側へ向かう。そして第2の反射層14で反射されて再度半透過反射層12側に向かう。発光機能層15で発光した光が半透過反射層12と第2の反射層14との間で反射を繰り返すことが共振であり、その結果として、半透過反射層12と第2の反射層14との間の距離によって定まる特定の波長範囲の光が強調される。
【0085】
上述の半透過反射層12と第2の反射層14との間の距離が共振長である。有機EL装置92では、第2画素電極36の厚さ、すなわちITO層の厚さを第2サブ画素電極38(r,g,b)毎に変化させることで、各第2サブ画素34(r,g,b)の射出光の波長に合わせた共振長を形成している。したがって、半透過反射層12を透過してくる光は、第2赤色サブ画素34rにおいては赤色光が強調され、第2緑色サブ画素34gにおいては緑色光が強調され、第2青色サブ画素34bにおいては青色光が強調されている。
【0086】
カラーフィルター75は有色透明の樹脂層であり、特定の波長範囲の光を他の波長範囲の光に比べて高い比率で透過させることで、該特定の波長範囲の光を強調して色純度を向上させる機能を有している。具体的には、赤色カラーフィルター75rは赤色光に相当する波長範囲の光を高い比率で透過させ、緑色カラーフィルター75gは緑色光に相当する波長範囲の光を高い比率で透過させ、青色カラーフィルター75bは青色光に相当する波長範囲の光を高い比率で透過させる機能を有している。上述の共振器構造で特定の波長範囲の光が強調された光は、該カラーフィルターによりさらに色純度が向上した光となって、第2の面4から射出される。
【0087】
上述の共振器構造と該カラーフィルターにより、第2サブ画素34(r,g,b)は3原色光のいずれかの波長範囲の光を射出できる。したがって、かかるサブ画素を備える第2の画素32は、3原色光を任意の比率で混合して得られる任意の色(色度)の光を、第2の表示光6として第2の面4から射出できる。したがって有機EL装置92は、第2の面4側にカラー画像を形成できる。
【0088】
次に、第1の面3から射出される光について述べる。第1サブ画素33(r,g,b)は、第1サブ画素電極37(r,g,b)と層間絶縁層71との間に(図示しない保護層を介して)第1の反射層13を備えている。そして上述したように、陰極19は半透過性を有する材料層で形成されている。したがって、第1の反射層13と陰極19との間に共振器構造が形成されている。該共振器構造の共振長は、第2の画素32における共振長と同様に、各第1サブ画素33(r,g,b)の射出光の波長に合わせた厚さに設定されている。なお、陰極19の形成材料は半透過反射層12と同様に、層厚略10nmのAlあるいはMg・Ag合金を用いることができる。
【0089】
そして、第1の画素領域41における対向基板11の封止層79側には、カラーフィルター層76が形成されている。なおカラーフィルター層76は、各発光色に対応するカラーフィルター75(r,g,b)と隣り合う該カラーフィルター間を遮光するブラックマトリクス75kと該カラーフィルターを保護するオーバーコート層77と、からなる。上述の共振器構造により特定の波長範囲の光が強調された光は、該カラーフィルター層によりさらに色純度が向上した光(有色光)となる。したがって、上述の共振器構造とカラーフィルター層76とにより、第1の画素31を構成する3種類の第1サブ画素33(r,g,b)は、3原色光のいずれかを第1の表示光5として第1の面3側から射出できる。したがって有機EL装置92は、第1の面3にカラー画像を形成できる。
【0090】
以上述べたように、有機EL装置92は、両面すなわち第1の面3と第2の面4の双方の面にカラー画像を形成できる。また、透明領域43は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91の該領域と同様に、外光7の一部を透過させることができる。したがって、本実施形態にかかる有機EL装置92を会議等に用いる場合、向かい合う二人の人は、該有機EL装置を介して互いに相手を視認しつつ、夫々が必要とするカラー画像を見ることができる。
なお、上述の半透過層の、光を透過させる比率は略50%に限定されるものではない。色純度の向上はカラーフィルター75(r,g,b)により一層依存することで、半透過層の透過率は増加させてもよい。
【0091】
本実施形態にかかる有機EL装置92においても、反対側への表示光(5,6)の射出、すなわち第1の画素領域41において下面4側に光が射出されること、及び第2の画素領域42において上面3側に光が射出されることを抑制する必要がある点は、上述の第1の実施形態にかかる有機EL装置91と同様である。また、外光7の反射を抑制する必要がある点も同様である。有機EL装置92はカラーフィルター層76にブラックマトリクス75kを備えているため、第1の画素領域41ではかかる現象を抑制できるが第2の画素領域42では問題となり得る。
【0092】
かかる現象を抑制するために、有機EL装置91と同様に、平面視で画素電極(35,36)が反射層(13,14)内に含まれるように形成することが好ましい。また隔壁の形成も、上述の現象を抑制するためには有効であるのも同様である。平面視で画素電極(35,36)を囲む遮光性の絶縁性材料からなる隔壁を画素電極(35,36)と発光機能層15との間に形成することで、発光機能層15の発光が好ましくない側へ射出されることと、外光7が反射されることの双方を抑制できる。また、双方の基板(10,11)の裏面、すなわち封止層79側の反対側の面の所定の領域に遮光層を形成しても良い。第1の画素領域41においては素子基板10の裏面に遮光層を形成し、第2の画素領域42においては対向基板11の裏面に遮光層を形成すれば、外光7の反射を抑制して表示品質を向上できる。
【0093】
(本実施形態の効果)
本実施形態にかかる有機EL装置92は、第1の面3側に発光(表示光)を射出する第1の画素31と、第2の面4側に発光(表示光)を射出する第2の画素32と、を備えている。かかる2種類の画素を表示領域100内に形成することで、双方の面に夫々異なる画像を形成できる。上述の双方の画素は、画素電極(35,36)、TFT112をはじめとする駆動用の素子、及び発光機能層15等の構成要素が共通している。したがって、本実施形態の有機EL装置92は、従来の(一般の)カラー表示可能な有機EL装置に半透過層(12か19のいずれか)とカラーフィルター75(r,g,b)と反射層(13,14)とが新たに追加されて構成されている。すなわち、かかる構成要素の追加で第1の面3と第2の面4の双方の面から表示光を射出してそれぞれ異なる画像を形成することを可能にしている。また、本実施形態の有機EL装置92は透明領域43を有しているため、該有機EL装置を介して互いに視認することを可能にしている。したがって、会議等において有機EL装置92を用いた場合、複数の人が共通のカラー画像と相手の双方を視認しつつ会話を行うことができる。
【0094】
ここで、上述の効果は(透明領域43も含めて)2台(2つ)の有機EL装置を貼り合せても得ることができる。しかし、そのような構成の装置は発光機能層15等の構成要素を全て2組形成することが必要であり、コストの点で問題がある。本実施形態の有機EL装置92は、わずかな工程の追加で上述の効果を得ることができる点に特徴がある。なお、表示領域100内に形成された3種類の領域(41,42,43)の面積比が1:1:1に限定されるものではなく任意に設定可能である点は、第1の実施形態にかかる有機EL装置91と同様である。ただし、第1の画素領域41と第2の画素領域42とにおけるサブ画素領域の比は限定される。透明領域43を備えない構成も可能である点も、第1の実施形態にかかる有機EL装置91と同様である。
【0095】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について述べる。第3の実施形態にかかる有機EL装置93は、上述の各実施形態にかかる有機EL装置と同様の両面表示型の有機EL装置である。透明領域43を有している点も共通している。異なる点は、一方の面(一方の側)ではカラー画像を表示して、他方の面(他方の側)では白黒画像を表示する点である。したがって、有機EL装置91と有機EL装置92の双方と使用の目的及び態様が共通しており、構成も類似している。そこで、以下の記載において、上述の各有機EL装置(91,92)の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与して、説明の記載は一部省略する。
【0096】
図3(c)は、有機EL装置93の表示領域100内における画素領域の配置の態様を示す図である。図示するように、第1の面3(後述する図9参照)側に表示光を射出する第1の画素領域41は3種類の第1サブ画素領域51(r,g,b)で構成されている。一方、第2の面4(後述する図9参照)側に表示光を射出する第2の画素領域42はサブ画素領域を有しておらず、上述3種類の第1サブ画素領域51に対応する領域が夫々第2の画素領域42となっている。そして、第1の画素領域41と第2の画素領域42との間には外光の少なくとも一部を透過させる透明領域43が形成されている。上述の各実施形態の有機EL装置(91,92)と同様に、隣り合う各サブ画素領域(r,g,b)の間、及び各領域(41,42,43)間は、外光7(図9等参照)を透過させ得る。
【0097】
図8は、第3の実施形態にかかる有機EL装置93の回路構成図である。上述の第1の実施形態における図4に相当する図であり、該図4と同様に透明領域43(図2参照)は図示を省略している。図示するように、第1の画素31は、第1赤色サブ画素33rと第1緑色サブ画素33gと第1青色サブ画素33bとからなる。上述の図3(c)と対応させた場合、第1赤色サブ画素領域51rには第1赤色サブ画素33rが対応し、第1緑色サブ画素領域51gには第1緑色サブ画素33gが対応し、第1青色サブ画素領域51bには第1青色サブ画素33bが対応している。そして、行方向に一列に配置された3つの第2の画素領域42には、夫々第2の画素32が対応している。
【0098】
上述の各第1サブ画素33(r,g,b)及び第2の画素32の双方は、有機EL素子29とTFT112と保持容量110とスイッチング用TFT108とを備えている。したがって、第1サブ画素33(r,g,b)と第2の画素32は略同様の構成を有している。上述の各画素(31,32)及び上述の各第1サブ画素33(r,g,b)は、上述の有機EL装置91及び有機EL装置92と同様に列状に配置されている。すなわち、Y方向に同一の画素(31,32)及び同一の第1サブ画素33(r,g,b)が配置されている。
【0099】
図9は、第3の実施形態にかかる有機EL装置93の、表示領域100における模式断面図である。図示するように、断面構成すなわち基板面に垂直方向の構成も、図5に示す有機EL装置91及び図7に示す有機EL装置92の構成と類似している。すなわち、第1サブ画素33(r,g,b)が形成されている第1の画素領域41にはカラーフィルター層76が形成されている。そして、第2の画素32が形成されている第2の画素領域42には、陰極19の上層に第2の反射層14が形成されている。第1の画素領域41と第2の画素領域42との間は素子基板10及び対向基板11を介して外光7が透過可能な透明領域43となっている。
【0100】
第1サブ画素33(r,g,b)の画素電極、すなわち第1サブ画素電極37(r,g,b)は厚さ(層厚)が夫々異なっており、第1の反射層13と半透過性を有する陰極19との間に共振器構造が形成されている。なお、上述の有機EL装置92と同様に、各第1サブ画素電極37(r,g,b)を合わせたものが第1画素電極35となる。サブ画素は個々に制御されるため、夫々の第1の画素領域41からは、任意の比率で混合した光が射出される。したがって、第1の面3側にはカラー画像が形成される。
【0101】
第2の画素32は、有機EL装置91の該第2の画素と同様に、カラーフィルター層76も共振器構造も備えていない。したがって、特定の波長範囲の光を強調する機能を有さず、発光機能層15の発光を、波長分布を殆んど変化させることなく第2の表示光6として第2の面4側から射出する。
【0102】
第1画素電極35及び第2画素電極36の双方共、ITOで形成されている。そして、第1青色サブ画素電極37bと第2画素電極36とは同一のITO層をパターニングすることで形成されている。したがって、層厚は略同一である。しかし、第2の画素32は発光機能層15と素子基板10との間に半透過層を有していないため、第2の反射層14と素子基板10との間には共振器構造が形成されてない。したがって、第2の画素32においては、青色光に相当する波長範囲の光が強調されることは無い。したがって、第2の面4側には白黒の画像が形成される。
【0103】
本実施形態にかかる有機EL装置93においても、上述の各実施形態の有機EL装置(91,92)と同様に、反対側への表示光(5,6)の射出、及び外光7の反射を抑制することが好ましい。そのためには、平面視で画素電極(35,36)が反射層(13,14)内に含まれるように形成すること、そして平面視で画素電極(35,36)を囲む遮光性の絶縁性材料からなる隔壁を画素電極(35,36)と発光機能層15との間に形成すること、さらには双方の基板(10,11)の裏面、すなわち封止層79側の反対側の面の所定の領域に遮光層を形成することが好ましい点も上述の各実施形態の有機EL装置(91,92)と同様である。
【0104】
(本実施形態の効果)
以上述べたように、本実施形態の有機EL装置93は一方の面(第1の面3)にカラー画像を形成し、他方の面(第2の面4)には上述のカラー画像とは異なる内容の白黒画像を形成できる。そして透明領域43により該有機EL装置を介して反対側を視認できる。したがって、上述の各実施形態の有機EL装置(91,92)と同様に、会議等において有機EL装置93を用いた場合、複数の人が共通の画像と相手の双方を視認しつつ会話を行うことができる。
【0105】
ここで、第1の画素領域41における断面構成は、一般的な白色光を発光する有機EL層(すなわち該有機EL層を備える発光機能層)を用いて一方の面のみにカラー画像の表示を行う有機EL装置と略同一である。そして、かかる有機EL装置のもう一方の領域すなわち第2の画素領域42に第2の反射層14を新たに形成することのみで、他方の面にも白黒画像を表示(形成)している。
【0106】
両面表示型の有機EL装置において、一方の面のみカラー画像が表示できれば充分な場合もあり得る。例えば会議等で用いる場合において、顧客側にのみにカラー画像を表示する場合である。本実施形態の有機EL装置93は、最小限の工程の増加すなわち最小限の製造コストの増加で、かかる一方の面のみカラー画像が表示される両面表示型の有機EL装置を実現している。
【0107】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について述べる。第4の実施形態にかかる有機EL装置94は、上述の第3の実施形態にかかる有機EL装置93と同様に一方の面にカラー画像が表示(形成)され、もう一方の面に白黒画像が表示される両面表示型の有機EL装置である。有機EL装置93とは透明領域43を有している点も共通しており、構成も類似している。そこで、以下の記載において、有機EL装置93の構成要素と共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略する。
【0108】
図3(d)は、有機EL装置94の表示領域100内における画素領域の配置の態様を示す図である。図示するように、第1の面3(後述する図11参照)側に表示光を射出する領域である第1の画素領域41は有機EL装置93の該領域と同様に3種類の第1サブ画素領域51(r,g,b)で構成されている。そして、透明領域43を介して第1の画素領域41と対向する位置(領域)には、第2の面4(後述する図11参照)側に表示光を射出する領域である第2の画素領域42が1つ形成されている。
【0109】
図10は、第4の実施形態にかかる有機EL装置94の回路構成図である。本図は上述の第1の実施形態における図4に相当する図である。本図は回路図であるため、図4と同様に上述の透明領域43は不図示である。図示するように、第1の画素31の構成は、有機EL装置92及び有機EL装置93における該画素の構成と同一であり、3つのサブ画素からなっている。第2の画素32の構成も有機EL装置93における該画素の構成と同一であり、サブ画素は有していない。第1の画素31を構成する第1サブ画素33(r,g,b)の各々を1つの画素と仮定した場合、第1の面3に画像を表示するための画素の個数と第2の面4に画像を表示するための画素の個数との比が1対1ではなく3対1になっている。表示領域100内における各画素(31,32)等の配置も、第2の画素32の構成も有機EL装置93における該配置と類似している。すなわち、第1の画素31と第2の画素32、そして第1の画素31を構成する各第1サブ画素33(r,g,b)が、上述の図2(a)に示す列状に形成されている。
【0110】
図11は、第4の実施形態にかかる有機EL装置94の、表示領域100における模式断面図である。図示するように、第1の画素領域41における断面構成と透明領域43における断面構成は、図9に示す有機EL装置93の該断面構成と同一である。第2の画素領域42に形成されている第2の画素32も有機EL素子29とTFT112と図示しない保持容量等との組み合わせであることは、有機EL装置93における第2の画素32と共通している。ただし、他の実施形態における第2の画素32に比べると、第2画素電極36が若干大きく形成されている。そのため、第1の画素領域41と第2の画素領域42との比は、上述した画素の個数の比である3対1ではなく3:2程度が確保されている。かかる構成により、本実施形態の有機EL装置94は第1の面3にはカラー画像が表示され、第2の面4には上述のカラー画像に比べて画素密度が低い白黒画像が表示されることとなる。
【0111】
本実施形態にかかる有機EL装置94においても、上述の各実施形態の有機EL装置(91,92,93)と同様に、反対側への表示光(5,6)の射出、及び外光7の反射を抑制することが好ましい。そのためには、平面視で画素電極(35,36)が反射層(13,14)内に含まれるように形成すること、そして平面視で画素電極(35,36)を囲む遮光性の絶縁性材料からなる隔壁を画素電極(35,36)と発光機能層15との間に形成すること、さらには双方の基板(10,11)の裏面、すなわち封止層79側の反対側の面の所定の領域に遮光層を形成することが好ましい点も上述の各実施形態の有機EL装置(91,92,93)と同様である。
【0112】
(本実施形態の効果)
以上述べたように、本実施形態の有機EL装置94は、第3の実施形態の有機EL装置93と同様に、一方の面のみカラー画像が表示され他方の面には白黒画像が表示される両面表示型の有機EL装置を実現している。上述したように、かかる構成の有機EL装置は、一般的な一方の面のみにカラー画像を表示する有機EL装置に若干のコストを加えることで実現できる。そして、本実施形態の有機EL装置94は白黒画像の表示を、表示品質の若干の低下と引き換えにさらに低いコストで実現している。したがって、一方の面(第1の面3)に表示される画像と他方の面(第2の面4)に表示される画像との間でより一層の表示品質の差が許容される場合において好適であり、製造コストの増加をより一層抑制しつつ両面表示型の有機EL装置を実現できる。
【0113】
本発明の実施の形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
【0114】
(変形例1)
上述の各実施形態において、発光機能層に含まれる有機EL層は白色光を射出する有機EL層である。カラー画像の表示は、各サブ画素毎に、かかる白色光に含まれる光のうちの特定の波長範囲の光を強調することで行っている。しかし、本発明の実施形態としては、有機EL層を各サブ画素が射出する表示光の色に合わせて個別に形成する構成も可能である。かかる構成であればカラーフィルターあるいは共振器構造を省くことが可能となる。なお、かかる個別の有機EL層は、インク吐出法あるいはマスク成膜法で形成できる。
【0115】
(変形例2)
上述の(第1の実施形態を除く)各実施形態にかかる有機EL装置は、特定の波長範囲の光を強調するために、カラーフィルターと共振器構造とを併用している。しかし、上述の強調はカラーフィルターと共振器構造との内のどちらか一方のみでも可能である。そして、第1の画素31と第2の画素32とで構成を変えてもよい。特に素子基板10側にカラーフィルターを形成することはコストを上昇させるため、第2の面4側に光を射出する第2の画素32は共振器構造のみで有色光を取り出す構造にすると若干の表示品質の低下と引き換えに製造コストを削減できる。
【0116】
(変形例3)
上述の各実施形態では、有機EL装置91〜94はアクティブマトリクス型であるものとして説明してきたが、発光機能層を走査電極とデータ電極とで挟持するパッシブ(単純)マトリクス型であっても良い。かかる構成でも、反射層(13,14)を発光機能層15の両側に形成することで、単一の発光機能層を用いての両面表示が可能となる。
【符号の説明】
【0117】
3…第1の面としての上面、4…第2の面としての下面、5…第1の表示光、6…第2の表示光、7…外光、10…素子基板、11…対向基板、12…半透過反射層、13…反射層としての第1の反射層、14…反射層としての第2の反射層、15…発光機能層、19…共通電極としての陰極、21…半導体層、22…チャネル領域、23…ゲート電極、25…ソース領域、26…ドレイン領域、27…コンタクトホール、28…保護層、29…有機EL素子、31…第1の画素、32…第2の画素、33…第1サブ画素、34…第2サブ画素、35…第1画素電極、36…第2画素電極、41…第1の画素領域、42…第2の画素領域、43…透明領域、51…第1サブ画素領域、52…第2サブ画素領域、70…ゲート絶縁層、71…層間絶縁層、75b…青色カラーフィルター、75g…緑色カラーフィルター、75k…ブラックマトリクス、75r…赤色カラーフィルター、76…カラーフィルター層、77…オーバーコート層、79…封止層、80…眼、91…第1の実施形態の表示装置としての有機EL装置、92…第2の実施形態の表示装置としての有機EL装置、93…第3の実施形態の表示装置としての有機EL装置、94…第4の実施形態の表示装置としての有機EL装置、100…表示領域、103…走査線、104…信号線、106…容量線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、140…同期信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板との一対の基板と該一対の基板間に挟持された発光機能層とを備え、前記第1の基板側に発光を射出する第2の画素が形成された第2の画素領域と前記第2の基板側に発光を射出する第1の画素が形成された第1の画素領域とが規則的に配置された表示装置であって、
前記第1の画素は前記発光機能層の前記第1の基板側に形成された第1画素電極と前記発光機能層の前記第2の基板側に形成された共通電極と前記発光機能層の前記第1の基板側に形成された反射層とを備え、
前記第2の画素は前記発光機能層の前記第1の基板側に形成された第2画素電極と前記発光機能層の前記第2の基板側に形成された共通電極と前記発光機能層の前記第2の基板側に形成された反射層とを備え、
前記第1の基板の前記発光機能層側には前記第1画素電極と前記第2画素電極とを駆動する駆動素子が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
平面視で前記反射層が形成されておらず、前記第1の基板及び前記第2の基板を介して光が透過可能な透明領域が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記透明領域は前記第1画素電極及び前記第2画素電極の双方が形成されていない領域であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記第1の画素領域における前記共通電極及び前記発光機能層は前記第2の画素領域における前記共通電極及び前記発光機能層と同一の層であることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置であって、
前記第1画素電極と前記第2画素電極との2種類の画素電極の少なくとも一方は夫々が独立に駆動される赤色サブ画素電極と緑色サブ画素電極と青色サブ画素電極との3種類のサブ画素電極を有しており、
前記一方の画素電極に対応する画素領域は、
平面視で前記赤色サブ画素電極を含み赤色光を射出する赤色サブ画素領域と、
平面視で前記緑色サブ画素電極を含み緑色光を射出する緑色サブ画素領域と、
平面視で前記青色サブ画素電極を含み青色光を射出する青色サブ画素領域と、
の3種類のサブ画素領域に区画されていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記3種類のサブ画素領域における、
前記発光機能層の前記反射層側の反対の側には、各々のサブ画素領域から射出される光の色に対応するカラーフィルターが形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記3種類のサブ画素電極は、前記発光機能層の前記反射層側の反対の側に半透過反射層を有しており、
前記半透過反射層と前記反射層との間に特定の波長範囲の光を共振させる光共振器構造が形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの1項に記載の表示装置であって、
前記第1画素電極と前記第2画素電極との少なくとも一方は千鳥状に配置されていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかの1項に記載の表示装置であって、
前記第1画素電極と前記第2画素電極との少なくとも一方は列状に配置されていることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−129392(P2011−129392A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287303(P2009−287303)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】