説明

表示装置

【課題】スペーサとアノード電極間、及びスペーサと電位規定電極間の放電を抑制する。
【解決手段】表示装置は、電子放出素子を有するリアプレート2と、アノード電極8と電位規定電極11とを有するフェースプレート1と、リアプレート2とフェースプレート1との間にアノード電極8及び電位規定電極11と対向して位置する板状のスペーサ4と、を有している。スペーサ4は、その絶縁性基材40が凹部12を有しており、凹部12は、アノード電極8、電位規定電極11、および、フェースプレート1のアノード電極8と電位規定電極11との間の部分と対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関し、特に、表示装置の内部の、リアプレートとフェースプレートの間に設けられたスペーサの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型化、軽量化が可能な表示装置として、電子放出素子を用いた平面型の電子線装置、すなわち電界放出型表示装置(FED)が提案されている。このような表示装置は、電子放出素子を備えたリアプレートと、電子の照射によって発光する発光部材を備えたフェースプレートとが対向して配置されている。リアプレートとフェースプレートの各々の周縁は枠材を介して封止されて真空(典型的には高真空あるいは超高真空)に維持されており、真空容器を形成している。フェースプレートには、発光部材に積層されリアプレートの電位より高い電位が印加されるアノード電極が設けられている。電子放出素子から放出された電子はアノード電極に引きつけられて発光部材の所定の位置に照射され、所望の画像が表示される。
【0003】
アノード電極には、電子を発光部材の所定の位置に照射させる目的のほか、表示装置の輝度を向上させるために、一般に数百Vから数10KVの高電位が印加される。しかもリアプレートとフェースプレート間の間隙は表示装置の薄型化のためにできるだけ小さくされている。このため、表示装置の内部には通常、かなり高い電界が生じており、特にアノード電極と他の内部構造物との間の放電が問題となる。この対策として、アノード電極の周囲を、多くの場合接地電位に規定された電位規定電極で取り囲む構成が知られている。
【0004】
ところで、表示装置の内部には、表示装置内外の気圧差によるリアプレート及びフェースプレートの変形や破損を防止するため、スペーサと呼ばれる板状の支持体が設けられている。スペーサは表示装置内外の気圧差による押し付け力からリアプレート及びフェースプレートを支持するため、アノード電極に接触して設けられている。このため、スペーサの電位はアノード電極側で高くなっており、スペーサのアノード電極側の面と電気規定電極との間の放電が問題となる。特許文献1にはスペーサと電位規定電極との間の放電を防止するため、スペーサと電位規定電極(ガード電極)とを必要な距離だけ離間させる技術が開示されている。特許文献2には、アノード電極を挟んで対峙するガード電極に接続する、スペーサの低抵抗膜の内側端部間隔を、アノード電極とガード電極の内側端部間隔よりも広くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−173093号公報
【特許文献2】特開2006−236733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにスペーサと電位規定電極とを必要な距離だけ離間させて放電を防止する場合、距離を確保するために電位規定電極を非常に薄く形成する必要があり、製造上の制約となる。アノード電圧がさらに増加した場合、このような構成では対処できない可能性もある。一方、放電を防止するためには、放電が生じる対象物同士を接触させ等電位にすることが有効であり、スペーサと接触しているアノード電極の場合、スペーサとの間での放電は比較的起こりにくいはずである。しかし、両者を完全に密着して接触させることは困難であり、実際には、スペーサとアノード電極の間に不可避的に存在する微小間隙のために、放電が生じる可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、フェースプレートが、アノード電極と、該アノード電極と離間して位置する電位規定電極と、を有する構成の表示装置において、スペーサとアノード電極間、及びスペーサと電位規定電極間の放電を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の表示装置は、電子放出素子を有するリアプレートと、前記電子放出素子の電位よりも高い電位に規定されるアノード電極と、前記アノード電極と離間して位置し、前記アノード電極の電位よりも低い電位に規定される電位規定電極と、を有し、前記リアプレートと対向するフェースプレートと、絶縁性基材を少なくとも有し、前記リアプレートと前記フェースプレートとの間に、前記フェースプレートに対向する対向面を有し、前記対向面の一部が前記アノード電極及び前記電位規定電極に接触する板状のスペーサと、を備え、前記絶縁性基材は、前記対向面に、前記フェースプレートの、前記アノード電極と前記電位規定電極との間の部分と空隙を介して対向する凹部を有し、前記アノード電極の前記電位規定電極側の端は、前記凹部の前記アノード電極側の縁より前記電位規定電極の近くに、前記電位規定電極の前記アノード電極側の端は、前記凹部の前記電位規定電極側の端より前記アノード電極の近くに位置している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フェースプレートが、アノード電極と、該アノード電極と離間して位置する電位規定電極と、を有する構成の表示装置において、スペーサとフェースプレート間の放電を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による表示装置の実施例の斜視図である。
【図2】図1に示す表示装置のフェースプレートの、図1のA−A方向に見た平面図である。
【図3A】第1の実施形態におけるスペーサの凹部の形状を示す断面図である。
【図3B】第2の実施形態におけるスペーサの凹部の形状を示す断面図である。
【図3C】第2の実施形態におけるスペーサの凹部近傍の斜視図である。
【図3D】第3の実施形態におけるスペーサの凹部の形状を示す断面図である。
【図4】本発明の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表示装置は、表面伝導型やSpindt型、CNT型、MIM型、BSD型などの電子放出素子9を備えた表示装置などを包含している。これらの表示装置では、電子放出素子を設けたリアプレートと発光体(例:蛍光体)を設けたフェースプレートとの間に支持体(スペーサ)が配置されており、本発明が適用される好ましい形態である。以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る表示装置について説明する。
【0012】
図1は、表示装置(以下、表示装置10という。)の構成の一例を示す部分破断斜視図である。表示装置10は、電子源5が設けられたリアプレート2と、リアプレート2と対向して位置するフェースプレート1と、を有している。電子源5は多数の電子放出素子9で構成されている。ここでは、電子放出素子9は表面伝導型電子放出素子を例にしている。電子源5は電子放出素子9がマトリックス状に複数配列され、X方向配線Dx1〜Dxmと、Y方向配線Dy1〜Dynによって単純マトリクス状に配線されてなる。
【0013】
フェースプレート1は、ガラス基板6と、その内面に形成され発光部材として機能する蛍光膜7と、蛍光膜7を覆うように、蛍光膜7と重ねて形成されたアノード電極8と、を備えている。アノード電極8には高圧端子Hvから、リアプレート2の電位(電子放出素子9や配線に付与される電位)よりも高い電位(アノード電位)が供給される。典型的には、アノード電位は1kV以上である。リアプレート2に形成された電子放出素子9から放出された電子ビームは、フェースプレート1に供給されるアノード電位によってフェースプレート1に向かって加速され、フェースプレート1に照射される。そして、フェースプレート1に照射された電子がフェースプレート1に形成された蛍光膜7に衝突することにより、蛍光膜7を構成する蛍光体が発光(カソードルミネセンス)する。電子を放出する電子放出素子9をマトリクス駆動によって選択することにより、フェースプレート1に画像が映し出される。アノード電極8に金属膜を用いれば、蛍光膜7が発する光の一部を反射することによって光利用率を向上させるためのメタルバックとしても機能する。アノード電極8は透明電極であってもよい。また、アノード電極8は、単一の部材だけでなく、導電膜と抵抗膜など、複数の部材を組み合わせて構成することもできる。つまり、アノード電極8は、実質的にアノード電位に規定される部材を総称したものである。
【0014】
図2は、図1のA−A方向に見た、フェースプレートの平面図(見上げ図)ある。図2を参照すると、フェースプレート1には、アノード電極8の周囲を取り巻き、かつアノード電極8と離間して位置する電位規定電極11が形成されている。図2の例では、アノード電極8と電位規定電極11は空隙を介して対向している。その結果、アノード電極8と電位規定電極11の間の部分では、ガラス基板6が露出している。アノード電極8と電位規定電極11の間の部分に、ガラス基板6の帯電を抑制するために、アノード電極8と電位規定電極11に接続された高抵抗膜(不図示)を設けることもできる。
【0015】
電位規定電極11は接地電位に規定することが好ましいが、アノード電位より低い電位であれば接地電位に限定されない。電位規定電極11はアノード電極8の周囲に形成される高電位空間の広がりを制限する。電位規定電極11の形状は特に限定されない。電位規定電極11は、例えば、リアプレート2側から高電位を受け取るために、フェースプレート1の外周部に設けられる図示しない電位取り出し部の周りを取り巻くように設けられてもよい。フェースプレート1のガラス基板6の表面からの電位規定電極11の高さは、フェースプレート1のガラス基板6の表面からのアノード電極8の高さとほぼ等しい。
【0016】
フェースプレート1とリアプレート2の間には支持枠3が設けられており、フェースプレート1,リアプレート2と、支持枠3は、ともに真空容器を構成している。真空容器の内部(減圧空間S)は、大気圧より低い圧力(真空)であり、典型的には、高真空あるいは超高真空である。フェースプレート1と支持枠3、及びリアプレート2と支持枠3は、各々、フリットガラスや低融点金属などの接合材によって接合されている。
【0017】
フェースプレート1とリアプレート2との間には、スペーサ4とよばれる支持体が設置されている。以下、表示装置の断面図である図3A,3Bを参照して、スペーサ4の構成について詳細に説明する。図3Aは本発明の第1の実施形態の、図3Bは本発明の第2の実施形態に係る表示装置の、スペーサ長手方向と平行でかつ表示装置の表示面に垂直な断面で見た断面図である。図3Cは本発明の第2の実施形態に用いられるスペーサの一部の斜視図である。第1の実施形態と、第2の実施形態とでは、電極膜の有無が異なる。
【0018】
スペーサ4は、少なくとも板状の絶縁性基材40を有している。スペーサ4は、典型的には、板状の絶縁性基材40の表面(側面)に帯電防止を目的とした高抵抗膜(図示せず)が設けられた板状の部材である。また、図1に示すように、スペーサ4の側面には、帯電防止を目的とした、複数の溝(線状の凹凸)が設けられている。スペーサ4のフェースプレート1側の面(対向面41)は図3Aに示すように、アノード電極8及び電位規定電極11と対向し、かつアノード電極8及び電位規定電極11と接触している。スペーサ4のリアプレート2側の面(反対面42)は図1に示すように、X方向配線Dx1〜Dxmに固定されている。第1の実施形態では、対向面41および反対面42は、絶縁性基材40の表面である。本願発明者らは、表示装置内(フェースプレート1、リアプレート2、及び支持枠3で構成される容器内)を真空にした後に表示装置を分解してスペーサ4の接触の度合いを観察した。アノード電極8及び電位規定電極11のスペーサ4との接触部分には、押し潰されたような跡が残っており、スペーサ4がこれらの部材と接触していることが確認できた。スペーサ4は全てのX方向配線Dx1〜Dxmの上に設けられてはおらず、複数のX方向配線毎に1つの割合で設けられている。スペーサ4は、絶縁性基材40としてガラスやセラミックスなどを用いており、大気圧に対して十分な強度を有している。リアプレート2とフェースプレート1に供給される電位により、スペーサ4の対向面41と反対面42には電圧が印加され、それによってスペーサ4の表面には電位分布が形成される。
【0019】
スペーサ4は、そのフェースプレート1と対向する面(対向面41)に、凹部12(切欠き)を有している。詳細には、スペーサ4の絶縁性基材40が凹部12を有している。そして、凹部12は絶縁性基材40の表面で構成されている。凹部12はスペーサ4の両方の側面において、開口している。側面は、対向面41に連続する面であって、フェースプレート1とリアプレート2との間の空間(真空空間)に露出する2面である。ここでは、凹部12をスペーサ4の側面方向から見た開口形状は台形状であるが、多角形状でもよいし、曲率を有するような略半円形状若しくは略半楕円形状であってもよい。凹部12の深さが10μm以上であると好ましく、100μm以上であるとより好ましい。なお、凹部12の深さとは、スペーサ4の絶縁性基材40において、凹部12の縁の両側(SP1、SP2)を結ぶ平面から垂直に、凹部12の表面へ下ろした直線の最大の長さである。凹部12はダイヤモンド砥石を用いた研削などの任意の方法で形成することができる。図3Aに示すように、凹部12は、フェースプレート1の、アノード電極8と電位規定電極11の間の部分(ガラス基板の表面が露出している部分)と空隙を介して対向している。更に、凹部12は、アノード電極8の端8aを含む一部と、電位規定電極11の端11aを含む一部とも空隙を介して対向している。詳細には、アノード電極8の電位規定電極11側の端8aは、凹部12のアノード電極側の縁(SP1)より電位規定電極11の近く(FP1)に位置している。同様に、電位規定電極11のアノード電極8側の端11aは、凹部12の電位規定電極11側の端(SP2)よりアノード電極8の近く(FP2)に位置している。つまり、アノード電極8と電位規定電極11の互いに対向する端8a,11aは、凹部12とフェースプレート1の間の空間に位置している。換言すれば、凹部12はアノード電極8の端8aと電位規定電極11の端11aが、凹部12とフェースプレート1の間の空間に露出するように形成されている。また、アノード電極8と電位規定電極11の間の部分の、スペーサ4への正射影が、全て、凹部12の縁より内側に収まると表現することもできる。具体的には、凹部12のスペーサ長手方向の長さ(SP1とSP2との距離)を、端8aと端11aの間隔(FP1とFP2との距離)より長くすればよい。
【0020】
スペーサ4のアノード電極8との接触部における電位はアノード電極の電位(アノード電位)と略等しく、スペーサ4の電位規定電極11との接触部における電位は電位規定電極11の電位と略等しい。しかし、アノード電極8とスペーサ4は全体としては接触しているものの、実際にはアノード電極8とスペーサ4の接触部には、製造誤差や組立時の誤差、接触部の表面粗さなど、様々な原因に起因した微小な間隙が存在していると考えられる。同様に、電位規定電極11とスペーサ4も全体としては接触しているものの、実際にはアノード電極8と電位規定電極11の接触部には微小な間隙が存在していると考えられる。このような微小な間隙は、アノード電極8あるいは電位規定電極11とスペーサ4との間に電位差を生じさせ、放電の原因となる。特に、アノード電極8の端8a及び電位規定電極11の端11aは、「ばり」などの突起が生じ易い等、電界集中が生じ易い形状となる場合が多い。そのため、端8aと端11aとスペーサ4との間で放電が特に生じ易い。
【0021】
本実施形態では、これらの端8a,11aは凹部12とフェースプレート1の間の空間に位置しており、端8a,端11aとスペーサ4との間に、放電を防止するに十分な間隔を持った間隙を容易に確保することができる。凹部12の形状や大きさは任意であって、端8a,11aと凹部12の周縁との間に適切な離隔距離を確保できるように適宜定めることができる。
【0022】
第2の実施形態として、図3B、図3Cに示すように、スペーサ4のスペーサ4の対向面41、即ちアノード電極8及び電位規定電極11との接続部に電極膜を設けることもできる。また、スペーサ4の反対面42、即ちX方向配線Dx1〜Dxmとの接続部にも電極膜を設けることができる。電極膜はフェースプレート1側に設けられた対向面電極膜13aと、リアプレート2側に設けられた反対面電極膜13bとを含み得る。電極膜により、スペーサ4の表面の電位(例えば、高抵抗膜の電位)を確実に規定することができる。図3Cには、スペーサ4の側面43に設けられた溝を示した。また、本実施形態でも、スペーサ4の側面43には不図示の高抵抗膜を設けることができる。
【0023】
電極膜13aは、絶縁性基材40上に設けられ、スペーサ4の対向面41の一部を構成している。なお、本実施形態でも、凹部12は、絶縁性基材40の表面で構成される。すなわち、本実施形態では、対向面41は対向面電極膜13aと絶縁性基材40の凹部12とが形成している。対向面電極膜13aは、凹部12を挟んで、アノード電極8側の第1部分と、電位規定電極11側の第2部分とに分かれて配置されている。なお、第1部分と第2部分は、それぞれ別々の材料で構成されていても良いが、同じ材料で構成するとスペーサ4の製造が簡単である。スペーサ4は、電極膜13aの第1部分を介してアノード電極8と接触して電気的に導通しており、電極膜13aの第2部分を介して電位規定電極11と電気的に導通している。そのため、スペーサ4とアノード電極8、スペーサ4と電位規定電極11を、それぞれ等電位にするのに有効である。当然、スペーサ4の表面には、アノード電極8の電位と、電位規定電極11の電位との電位差に応じた電位分布が生じる。スペーサ4の対向面電極膜13aとアノード電極8及び電位規定電極11との接続は、これらが互いに接触して電気的に接続される場合のほか、両者の間に存在する実質的に低抵抗な部材を介して電気的に接続される場合を含む。このような電極膜13aを用いた場合でも、アノード電極8の端8aと電位規定電極11の端11aをスペーサ4の凹部12とフェースプレート1の間の空間に位置させることで、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。電極膜13aの端13cは、スペーサ4の凹部のアノード電極側の縁12aと一致していることが望ましい。詳細に言えば、電極膜13aの端13cは、絶縁性基材40によって構成される凹部12のアノード電極側の縁12aに連続していることが望ましい。
【0024】
電極膜13aの厚みが極端に厚くなると、フェースプレート1の近傍での電子軌道に影響を及ぼす場合があるため、電極膜の厚みは薄い方が好ましく、1μm以下であるがことより好ましい。そのため、凹部12とフェースプレート1との距離は、実質的に凹部12の深さが支配的になる。凹部12の深さは、電極膜の厚みの10倍以上が好ましく、100倍以上がより好ましい。第1の実施形態と同様に、凹部12の深さが10μm以上であると好ましく、100μm以上であるとより好ましい。
【0025】
第3の実施形態は、以上述べた実施形態において、アノード電極8が凹部12とフェースプレート1との間の空間に張り出して延びる長さを最適化したものである。図3Dは図3Aの部分拡大図である。凹部12のアノード電極8側の縁をsp1、アノード電極8と電位規定電極11のスペーサ側の端を各々fp1、fp2とし、fp1からリアプレート2と直交する方向に引いた直線が凹部12の表面と交差する点をXとする。なお、アノード電極8と電位規定電極11の端とは、スペーサ4とフェースプレート1とが対向する領域内において、アノード電極8と電位規定電極11の距離が最短となる部分である。図3Dのように、最短となる部分がある程度の広がりを持っている場合には、fp1、fp2を、端のうちの、スペーサ4に最も近い点とする。また、sp1とfp1の距離をL、fp1とfp2の距離をG、fp1とXの距離をdとする。sp1とfp1と凹部とで画定される空間15は強電界領域となっているため、Lが極端に大きくなると、この強電界領域が拡大することになり、結果として微小放電の発生頻度が増加する。また、dがLの長さに対して極端に小さいと、空間15の電界を増大させ、微小放電の発生頻度が増大する。このため、Lには適切な上限値が存在する。また、d/Lには好適な下限が存在する。
【0026】
本実施形態では、0<L≦0.1×G、かつarctan(d/L)≧12°の関係を満たしており、0<L≦0.05×G、かつarctan(d/L)≧12°の関係を満たしていることがさらに好ましい。Lが0.1×G以下であると、上述の強電界領域の範囲を限定することができる。arctan(d/L)は図3Dの角度θに等しい。θが小さいと、アノード電極8と凹部12の表面が接近し、電界強度が高くなりやすい。θが12°以上であると、アノード電極8と凹部12の表面との離隔距離が確保されるため、電界の強度も抑えられる。これらの効果によって放電を回避することが容易となる。なお、角度θは90°未満である。
【0027】
微小放電としては例えば、放電電流によりアノード電極と周辺の低電位部位(接地部位等)との間が完全に短絡する状態には至らない程度の、局所的かつ短時間の放電がある。外部電圧源との関係で言い換えると、累積的な放電には至らずに、アノードと周辺の低電位部位との間で持続的な電圧印加が可能となる程度の放電である。微小放電は、アノードと周辺の接地部位との間の短絡を伴う放電の前駆的な現象である場合があり、装置の駆動動作を損なうものではないが、放電抑制の観点から配慮すべき現象である。微小放電は、規模は限定的ではあるが、アノードと低電位部位の間の電流値や発光現象を検出することで、その発生を検知可能である。
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳述する。以下に述べる各実施例においては、素子電極間の導電性薄膜に電子放出部を有するタイプのn×m個(n=480、m=100)の表面伝導型電子放出素子を、m本の行方向配線とn本の列方向配線とによりマトリクス配線したマルチ電子ビーム源を用いた。
【0029】
(実施例1) 実施例1の表示装置は図1を用いて説明した表示装置と同じ構成を有し、カラー表示を行うためにRGBの蛍光体とブラックマトリックスを内包している。アノード電極8と電位規定電極11との間の距離は4mmとした。アノード電極8はメタルバックと兼用し、電位規定電極11は接地電位とした。
【0030】
スペーサ4として、旭硝子社製商品番号PD200の、高さ2mm、幅0.2mmの平板状の基材40を用意し、凹部12を切削によって作製した。凹部12の形状は、長さ8mm、高さ0.3mmの台形形状とした。スペーサ4をフェースプレート1のアノード電極8の領域から電位規定電極11の領域まで跨ぐように配置し、アノード電極8と電位規定電極11の両者に接触させた。スペーサ4自体は、スペーサ固定部材(不図示)によりリアプレート2の所定の位置に固定した。
【0031】
アノード電極8及び電位規定電極11の各端とスペーサ4の凹部12との位置関係について検討するため、以下のサンプルを作製した。図3(a)において、スペーサ長手方向に平行で、アノード電極8から電位規定電極11へ向かって正となる座標軸を設定した。凹部12のアノード電極8側の縁の位置の座標をSP1、電位規定電極11側の縁の位置の座標をSP2、アノード電極8の端の位置の座標をFP1、電位規定電極11の端の位置の座標をFP2とした。L1、L2を各々、L1=FP1−SP1、L2=SP2−FP2と定義した。L1、L2がそれぞれ、−3mm、−2mm、−1mm、−0.2mm、0mm、1mm、2mmとなるように凹部12の大きさ及び位置を調整したサンプルを作製した。L1、L2が負値であることはアノード電極8及び電位規定電極11の端が凹部12の外側にあること、つまりこれらの端がスペーサ4と接触した状態または極めて近接した状態にあることを示している。L1、L2が正値であることはアノード電極8及び電位規定電極11の端が凹部12とフェースプレート1の間の空間にあること、つまりこれらの端がスペーサ4から離隔した位置にあることを示している。
【0032】
このような構成の表示装置において、電子ビーム源を駆動しない状態で、アノード電極8に加速電位Vaを印加し、徐々にVaを上昇させて表示装置が放電を開始した電圧Vbを求めた。図4(a)は、VbとL1、L2の関係を図示したグラフであり、図4(b)は、L2を1mmに固定した時の(図4(a)のA−A’線に沿った状態)VbとL1との関係を示したものである。図4(c)は、L1を1mmに固定した時の(図4(a)のB−B' 線に沿った状態)VbとL2の関係を図示したグラフである。これらから、L1≧0かつL2≧0のとき、すなわち、アノード電極8及び電位規定電極11の互いに対向する端8a,11aがいずれも、スペーサ4の凹部12とフェースプレート1の間の空間に位置しているときに、放電に対する耐圧が向上することがわかる。この条件を満たす構成の表示装置をVa=10kVで駆動したところ、放電は観測されず良好な画質の表示装置であることを確認できた。
【0033】
(実施例2) 実施例2は、スペーサが電極膜13a,13bを備えていることを除き、実施例1と同じ構成である。電極膜13aは、アノード電極8及び電位規定電極11と接触しこれらと電気的に接続されるタングステン電極である。同様に、電極膜13bは、リアプレート2の画像領域内の電極(X方向配線Dx1〜Dxm)と接触しこれらと電気的に接続されるタングステン電極である。各タングステン電極はスパッタリングによって形成した。
【0034】
本実施例においても、実施例1と同様に座標軸をとり、実施例1と同様にSP1、SP2、FP1、FP、L1、L2を定義した。そして、L1、L2がそれぞれ、−3mm、−2mm、−1mm、−0.2mm、0mm、1mm、2mmとなるように凹部12の大きさ及び位置を調整したサンプルを作製した。スペーサ4の電極膜13aは、いずれのケースでも凹部12の上側両側端まで延び、そこで終端している。
【0035】
このような構成の表示装置において、電子ビーム源を駆動しない状態で、アノード電極8に加速電位Vaを印加し、徐々にVaを上昇させて表示装置が放電を開始した電圧Vbを求めた。この結果、図4と同様の結果が得られた。具体的には、L1≧0かつL2≧0のとき、すなわち、アノード電極8及び電位規定電極11の互いに対向する端8a,11aが、スペーサ4の凹部12とフェースプレート1の間の空間に位置しているときに、放電に対する耐圧が向上することがわかった。この条件を満たす構成の表示装置をVa=10kVで駆動したところ、放電は観測されず良好な画質の表示装置であることを確認できた。
【0036】
(実施例3)
実施例3は,実施例1に記載のL1、L2の値を各々200μm、1200μmとし,第3の実施形態で述べたfp1からの垂線の長さdを85μmとなるように、凹部の大きさ及びアノード電極と電位規定電極の位置関係を変更した。これ以外は、実施例1と同様にしてスペーサを具備した表示装置を作成した。アノード電極に加速電位Va=25kV、電位規定電極に接地電位を印加したところ、放電は観測されず、放電の前駆的な現象である微小放電も観測されず、安定的に高電圧を印加可能であることを確認した。
【符号の説明】
【0037】
1 フェースプレート
2 リアプレート
4 スペーサ
8 アノード電極
11 電位規定電極
12 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出素子を有するリアプレートと、
前記電子放出素子の電位よりも高い電位に規定されるアノード電極と、前記アノード電極と離間して位置し、前記アノード電極の電位よりも低い電位に規定される電位規定電極と、を有し、前記リアプレートと対向するフェースプレートと、
絶縁性基材を少なくとも有し、前記リアプレートと前記フェースプレートとの間に、前記フェースプレートに対向する対向面を有し、前記対向面の一部が前記アノード電極及び前記電位規定電極に接触する板状のスペーサと、を備え、
前記絶縁性基材は、前記対向面に、前記フェースプレートの、前記アノード電極と前記電位規定電極との間の部分に空隙を介して対向する凹部を有し、
前記アノード電極の前記電位規定電極側の端は、前記凹部の前記アノード電極側の縁より前記電位規定電極の近くに位置し、
前記電位規定電極の前記アノード電極側の端は、前記凹部の前記電位規定電極側の端より前記アノード電極の近くに位置している、表示装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記対向面の前記一部を構成し、前記アノード電極に接触する電極膜を前記絶縁性基材上に有し、該電極膜の端は前記凹部の前記アノード電極側の縁と連続している、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記凹部の前記アノード電極側の前記縁をsp1、前記アノード電極の前記電位規定電極側の前記端をfp1、前記電位規定電極の前記アノード電極側の前記端をfp2、前記fp1から前記リアプレートと直交する方向に引いた直線が前記凹部の表面と交差する点をX、前記sp1と前記fp1の間の距離をL、前記fp1と前記fp2の間の距離をG、前記fp1と前記Xの間の距離をdとして、
0<L≦0.1×G、かつ12°≦arctan(d/L)<90°の関係を満たしている、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記Lは0<L≦0.05×Gの関係を満たしている、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記凹部の深さが前記電極膜の厚さの10倍以上である、請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記凹部の深さが前記電極膜の厚さの100倍以上である、請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記電極膜の厚みが1μm以下である、請求項5または6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記凹部の深さが10μm以上である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−71099(P2011−71099A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159637(P2010−159637)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】