説明

表示装置

【課題】2つの異なる光学特性を持つRGBの発光素子をデルタ配列させた表示装置は、エッジがぎざぎざに表示され偽色が生じる。
【解決手段】行方向に周期的な色で配列した発光素子と、光学特性の異なる発光領域を有する2つの発光素子に電流を供給する画素回路と画像データを処理して画素回路に伝達する処理回路とを有し、画素回路ならびに画素回路に接続された2つの発光素子は色の1周期おきに、周期の間の画素回路並びに2つの発光素子を基準の位置として、列方向に1/2行分ずれて配置されており、処理回路は、基準の位置にある画素回路に対して当該画素回路の行と列に対応した画像データを伝達し、列方向に1/2行分ずれて配置された画素回路に対して、当該画素回路の行と列に対応した画像データに、画素回路が1/2行分ずれて配置されている列方向に隣接する行の同じ列に対応した画像データを混合させた画像データを伝達する回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置、とくに有機エレクトロルミネセンス素子を用いた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子という)は、2枚の電極間に挟まれた薄膜の有機層に電流を流して発光させる。これを2次元に配列して表示装置を構成することができる。
【0003】
有機EL素子は光取り出し効率が低いことが大きな課題である。薄膜の発光層から光が様々な角度で出射するが、発光層を上下から挟む保護層などの層と外部空間との境界面で全反射が発生し、大部分の光が外部空間にとりだされず、素子内部に閉じ込められてしまう。この課題を解決するために、様々な構成が提案されている。
【0004】
特許文献1には、有機EL素子の発光面上に樹脂から成るマイクロレンズ(以下レンズという)を配置して正面への取り出し効率を向上させる構成が開示されている。レンズは各有機EL素子に対応して設けられる。このレンズアレイによって全反射していた光を外部に取り出すことができ、さらに外部にとりだされた光を一定の角度範囲に集光することできる。このため、表示装置として用いた場合、正面から見た輝度が向上する。
【0005】
光の取り出し効果を高めるため、レンズの直径は発光領域より大きくする。しかし、隣の画素のレンズ同士が重なり合うと取り出し効率が低下したり混色を生じたりするので、レンズ径は画素寸法より大きくできない。一方、有機EL素子の発光領域を小さくすると電流密度が高くなって劣化が速くなるため、発光領域をあまり小さくすることはできない。
【0006】
図12(a)は、レンズアレイを無理なく配置するために発光領域を互い違いに配置した表示装置の画素レイアウト図である。各行各列には画素回路(31,32,33など)が設けられ、各画素回路に1つずつ有機EL素子(31R,32G,33Bなど)が配置されている。有機EL素子の発光領域を覆う位置にレンズ110が配置されている。図にはm−1とmの2行、n−1とnの2列しか描かれていないが、実際には640行×480列などの多数の有機EL素子が並んでいる。ここでは、RGBの3列をまとめて1列と数えることにする。
【0007】
カラー表示装置を構成する赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の有機EL素子が行方向(図の左右方向)に周期的に並んでおり、RGBの1組が1つの画素を構成する。同一行の有機EL素子は、隣り合う発光領域(31Rと32G,32Gと33Bなど)で位置が列方向(図の上下方向)に1/2行分ずれている。1つの列ではRGBの3つの発光領域が下向きの三角形51の配置をなしており、隣の列ではRGBが上向きの三角形52になっている。
【0008】
図12(a)のように互い違いに発光領域を設けることによって、画素密度の高い表示装置でもレンズアレイを設けることができる。
【0009】
ところで、表示装置に入力される画像信号は、多くの場合、R、G、Bの副画素が、行方向に同形で配列し、列方向には同列に並ぶ図13のいわゆるストライプ配置を前提に作成されている。ストライプ配置においては、RGBの組からなる画素の発光領域の重心が正方格子をなし、R、G、Bそれぞれの発光領域も正方格子状に並んでいる。
【0010】
一方、図12(a)の配置はRGBの発光領域がデルタ配列をなしている。デルタ配列では、各行のRGB3つを副画素として画素を構成した場合、画素の重心は正方格子をなすが、各色が作る格子は1列おきに格子点がずれたものになる。
【0011】
図13の正方格子をなす画素配列を前提とした画像信号が、デルタ配置の画素を持つ図12(a)の表示装置にそのまま表示されると、表示画面上で1列ごとにずれた画像として表示されてしまう。このずれは、画像のエッジ部分がギザギザに見える原因となり、解像感の高い表示装置では偽色や色モアレを引き起こすなど、表示品位を著しく損ねる。
【0012】
図12(a)の画素配置を図12(b)の配置にすることが特許文献2に記載されている。また、ストライプ配置の画像データをデルタ配置の画像データに変換する方法が特許文献3で提案されている。特許文献3のデータ変換方法は、以下のようにして図12(b)の画素配置に対して適用される。
【0013】
奇数列(n−1列が奇数列とする)では同じm−1行にあるRGBの発光領域31R,32G,33Bの組が1つの画素10を構成する。次のm行でも同様に発光領域41R,42G,43Bの組から画素11が構成される。
【0014】
偶数列(n列)では、同じm−1行にあるRの発光領域34RとBの発光領域36Bの2つの発光領域とすぐ下のm行n列にあるGの発光領域45Gの組を1つの画素12とする。m−1行のGの発光領域35Gは、すぐ上のm−2行n列にあるRとBの発光領域(不図示)とで1つの画素を作る。また、m行のRの発光領域44RとBの発光領域46Bは次のm+1行n列のGの発光領域とで1つの画素12を構成する。
【0015】
m−1とmの2行にまたがる画素12のデルタ配置52は、同一行の発光領域の組からなる画素10、11のデルタ配置51と同形の下向き三角形になる。画素の重心および各色の発光点が作る格子は1列おきに格子点がずれたものになる。しかし、発光点の配置はすべての画素で同じ向きの三角形となり、画素内の発光領域の配置がそろった表示装置になる。
【0016】
図12(b)のように構成した画素10−12に対して、入力画像のRGBデータを以下のように割り当てる。すなわち、奇数列の画素10、11に対しては入力画像の1画素分をそのまま割り当て、偶数列の2行にわたる画素12に対してはその2行の平均データを割り当てる。
【0017】
この結果、m−1行n−1列の画素10のR、G、Bの発光領域31R,32G,33Bは、もとの画像信号のm−1行n−1列の画素に対応したR,G,Bの画像データがそれぞれ与えられる。m行n−1列の画素11についても同様である。
【0018】
n列の画素12に対しては、Rの発光領域34Rには元の画像信号のm−1行n列のRの画像データとm行n列のRの画像データとの平均をとった画像データが与えられる。Bの発光領域36BとGの発光領域45Gに対しても、同様にm−1行n列とm行n列の画像データの平均をとった画像データが与えられる。
【0019】
また、m−1行n列のGの発光領域35Gには、元の画像信号のm−2行n列のGの画像データとm−1行n列のGの画像データとの平均画像データが与えられる。m行n列のRの発光領域44Rには、元のRの画像データのm行n列とm+1行n列の平均をとった画像データが与えられる。Bの発光領域46Bについても同様である。
【0020】
このようなデータ処理により、エッジのギザギザや偽色、色モアレなどの画質劣化を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2004−039500号公報
【特許文献2】特開2002−221917号公報
【特許文献3】特開2002−156940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
レンズアレイを設けた表示装置は、それを持たない表示装置に比べて正面から見た輝度は高くなるが、斜め方向から見た輝度は減少してしまう。表示装置の使用形態(ユーザーシーン)によっては正面輝度よりも視野角の広さが求められる場面もあり、レンズのような集光性の高い素子を有機EL素子の上に設けると、そういった場面では使いづらいことになる。
【0023】
広い視野角と高い正面輝度を両立させるために、レンズを設けた発光領域とレンズを設けない発光領域とを1画素内に並列させ、2つの発光領域を組み合わせることが考えられる。図14は、RGBの有機EL素子がそれぞれレンズ110を設けた発光領域(31R,32G,33Bなど)とレンズを設けない発光領域(31r、32g、33bなど)の2つの発光領域を持つ場合の画素配列を示す。図12(a)と同じ部分には同じ符号を付した。
【0024】
同一行同一列の2つの発光領域(31Rと31r)は共通の画素回路(31)に接続されている。2つの発光領域は同じ行内で上の行に近い配置(31R,32g,33Bなど)と下の行に近い配置(31r、32G,33bなど)をとり、この配置が隣同士で反転している。またRGBを組とした画素単位で見ても、隣接する画素同士で全体に上下が反転した発光領域配置をなす。
【0025】
レンズに限らず、2つの発光領域に正面輝度、視野角−輝度特性などの光学特性が異なる2種類の光学素子を設けて、2つの発光領域を組み合わせて使用することにより、2種類の光学特性が両立した表示装置を作ることができる。2つ発光領域の発光比率を変えることにより、2種類の光学特性の間を可変に調節することもできる。
【0026】
しかし、図14のような各有機EL素子が2つの発光領域を持つ表示装置では次のような問題が生じる。
【0027】
奇数列(n−1列)では、同じm−1行にあるレンズ110を搭載したRGBの発光領域31R、32G,33Bとレンズ110を搭載しないRGBの発光領域31r、32g、33bとが1つの画素11を構成し、1画素のRGBのデータがこれらの発光領域に与えられる。m行についても同様に画素11が構成される。レンズのある発光領域とレンズのない発光領域の2つの発光領域は、もとの入力画像では1つの画素のRGBいずれかであるから、同色の、レンズ110を搭載した発光領域と搭載しない発光領域には、同じデータが割り当てられる。
【0028】
偶数列(n列,n+2列など)では、同じ行にあるレンズ110を搭載したRの発光領域34RとBの発光領域36Bおよびその下の行にあるレンズ110を搭載したGの発光領域45Gの組が1つの画素12を構成する。
【0029】
ところが、これらのレンズ110を搭載した発光領域34R,35G,36Bと画素回路を共通にし、したがって同じデータが与えられるレンズなしの発光領域は、m−1行のRの発光領域34rとBの発光領域36b、およびm行のGの発光領域45gであり、レンズ有りの発光領域が作るデルタ配置52とは異なる形状の、縦長の逆三角形54になってしまう。前の行や次の行に対しても同様の処理がされることから、レンズのない発光領域の作るデルタ配置54は列方向に相互に重なりあう状態になる。縦長のデルタ配置54の発光領域は、それが発光することによって偽色、色モアレ、画像エッジ部分のギザギザ感などの画質劣化が発生し、表示品位を著しく損ねる。
【0030】
画素12のレンズを搭載しないほうの発光領域44r、35g、46bが通常のデルタ配置になるようにしても、今度はレンズ110を搭載したほうの発光領域44R,35G,46Bが縦長のデルタ配置になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は上の問題を解決するためになされたものであり、行方向と列方向に配列した複数の画素回路と、前記画素回路に接続され、行方向に周期的な色で配列した発光素子と、画像データを処理して前記画素回路に伝達する処理回路とを有する表示装置であって、
前記複数の画素回路の各々は、互いに異なる光学特性の発光領域を持つ2つの前記発光素子に交互に電流を供給する回路であり、
前記画素回路ならびに前記画素回路が電流を供給する前記2つの発光素子は、前記色の1周期おきに、前記周期の間の前記画素回路並びに前記2つの発光素子を基準の位置として、列方向に1/2行分ずれて配置されており、
前記処理回路は、 前記基準の位置にある画素回路に対して、当該画素回路の行と列に対応した画像データを伝達し、
前記列方向に1/2行分ずれて配置された画素回路に対して、当該画素回路の行と列に対応した画像データに、前記画素回路が1/2行分ずれて配置されている列方向に隣接する行の同じ列に対応した画像データを混合させた画像データを伝達する回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
上述した本発明の構成によれば、有機EL素子を用いた表示装置で、RGBの副画素がそれぞれ異なる光学特性の2つの領域を持ち、同じ光学特性の発光領域がデルタ配置をなす場合に、表示品位を落とさずに表示することが可能である。とくにレンズを配した発光領域とレンズのない発光領域が互いに逆のRGBのデルタ配置をなす表示装置に関して、偽色、色モアレ、画像エッジ部分のギザギザ感などのない表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態である表示装置の全体図である。
【図2】本発明の表示装置の画素と発光領域の配置を示す図である。
【図3】本発明の表示装置の画素回路である。
【図4】表示装置に入力される画像信号である。
【図5】本発明の表示装置の処理回路とデータの流れを示す図である。
【図6】本発明の表示装置の画素回路に伝達される画像データを示す図である。
【図7】有機EL素子の構造を示す断面図である。
【図8】本発明の有機EL素子ELA,ELBの光学特性を示すグラフである。
【図9】本発明の表示装置の点灯と消灯のタイミングチャートである。
【図10】本発明の表示装置の輝度対視野角特性の変化を示すグラフである。
【図11】本発明の表示装置の消費電力の変化を示すグラフである。
【図12】従来の表示装置の発光領域の配置を示す図である。
【図13】従来の表示装置の別の発光領域の配置を示す図である。
【図14】本発明の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【0035】
表示装置は、制御回路86と、RGBの各画像信号を処理する処理回路87R,87G,87Bと、パネル80を有している。
【0036】
表示装置の外からは赤(R)、緑(G)、青(B)の色別の並列画像信号が入力され、RGBそれぞれに分かれて処理回路87R,87G,87Bで処理される。処理回路87(以下、RGBをまとめて呼ぶときはRGBの添え字を省く)で処理された画像データはデータ線駆動回路81に送られ、データ線駆動回路81はデータ信号線DataR(n)、DataR(n)、DataR(n)(nは列番号。以下、総称するときは列番号を省略する)にデータ信号を与える。データ信号線Dataは画素回路84にデータ信号Vdataを伝達する。
【0037】
制御線P1(m)(mは行番号。以下、総称するときは行番号を省略する)はゲート線駆動回路82で生成する制御信号を、制御線P2、P3は発光期間制御回路83で生成する制御信号を、それぞれ画素回路84に伝達する。
【0038】
パネル80にはRGBの3色の有機EL素子が行方向に周期的に並んでおり、RGBの1周期で1つの画素が構成されている。列方向には同じ色の有機EL素子が配列している。以下、列番号はRGBの行方向の周期配列の1周期を1組にまとめて1列と数え、各周期すなわち画素を単位として第1列、第2列、・・・第N列と呼ぶことにする。
【0039】
有機EL素子の配列の下層に画素回路84が配列している。2列、4列、・・・n列などの偶数列にある画素回路14は、1列,3列・・・n―1列などの奇数列の画素回路の位置を基準として、列方向に1/2行分ずらして配置されている。画素回路84の位置が列ごとにずれているために、それらを行方向に接続する制御線P1−P3は、奇数列と偶数列の画素同士を接続するように蛇行している。
【0040】
図2(a)(b)は、画素回路と有機EL素子の発光領域の配置を示す図である。図1の画素回路84に対応する画素回路31−26,41−46の各々の有機EL素子は2つの発光領域を持ち、小文字のアルファベットを付けて示す発光領域には平坦な表面の有機EL素子ELAが配置され、大文字のアルファベットを付けて示す発光領域には表面にレンズを設けた有機EL素子ELBが配置されている。
【0041】
画素回路31は、それに接続された2つの発光領域31rと31Rの有機EL素子ELAとELBを駆動する。1/2行分ずれた位置にある画素回路34は、その上層の、同じく位置が列方向に1/2行分ずれた2つの発光領域34rと34Rを駆動する。
【0042】
図2の一点鎖線で示した正方格子は、入力される画像信号の基準となる行と列を示している。以下の図4に示す入力画像信号R(m、n)などは、この基準となる行と列のm行n列の画素に対応した画像データである。
【0043】
図2(a)は、m行n列の画素回路およびそれに接続される有機EL素子の2つの発光領域が次のm+1行に近い方向にずれた場合の配置を示している。図2(b)は、m行n列の画素回路およびそれに接続される有機EL素子の2つの発光領域が前のm−1行に近い方向にずれた場合の配置である。図の太い実線X1とX2の間にある画素回路が同じ制御線P1−P3に接続される。
【0044】
2つの発光領域は隣の列同士で配置が列方向に反転しているので、1列おきに列方向に1/2行分ずらせた2つの発光領域の組をとると、すべての組で同じ発光領域の配置になる。それらを共通の画素回路で駆動することにより、1/2行ずれた位置で1つの画素としての表示が行われ、図14に示したような離れた発光領域の画素ができることがない。また2つの発光領域の配置がすべての画素で同じになるので、以下に説明するように、入力画像データを各画素へ割り振るときに1/2行ずれた画素にはその位置にある2つの行の平均画像データを割り振ることにより、画像のふちがぎざぎざになることも回避できる。
【0045】
図3は画素回路84とそれに接続される有機EL素子ELAとELBを示す回路図である。1つの画素回路84にはレンズのない有機EL素子ELAとレンズ付きの有機EL素子ELBの2つが接続されている。各色とも同じ回路であるので、図3では1つの画素回路とそれに接続される1色の有機EL素子のみ示している。
【0046】
画素回路84のそれぞれには、データ信号線Dataと制御線P1−P3が接続されている。制御線P1は画素回路を行ごとに順次選択し、その行の画素回路84にデータ信号Vdataを書き込む。制御線P1はTFT(M1)のゲート端子に接続され、選択された行の画素回路ではTFT(M1)が導通し、データ信号線Dataからデータ信号が保持容量C1に伝達され保持される。
【0047】
有機EL素子ELAのアノード電極はTFT(M3)のソース端子に接続されており、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。有機EL素子ELBのアノード電極はTFT(M4)のソース端子に接続されており、カソード電極は接地電位CGNDに接続されている。
【0048】
TFT(M3)及びTFT(M4)のドレイン端子は共通化され、TFT(M2)のドレイン端子に接続される。TFT(M2)のソース端子は電源電位に接続される。TFT(M1)のソース端子は、保持容量C1の一端に接続されると同時に、TFT(M2)のゲート端子に接続される。保持容量C1の他端は電源電位である。
【0049】
TFT(M3)のゲート端子に接続される制御線P2は、有機EL素子ELAに流れる電流を導通または遮断してその発光期間を制御する。TFT(M4)のゲート端子に接続される制御線P3は、有機EL素子ELBに流れる電流を導通または遮断してその発光期間を制御する。
【0050】
有機EL素子ELAに電流を供給し発光させるときは、制御線P1にLOWレベル、P2にHIレベル、P3にLOWレベルの信号を入力する。このときTFT(M1)はOFF、TFT(M3)はON、TFT(M4)はOFFになる。TFT(M3)が導通状態であるため、保持容量C1に生じた電圧により、TFT(M2)のドレイン電流が有機EL素子ELAに供給され、供給された電流に応じた輝度で有機EL素子ELAが発光する。制御線P2がHIレベルにある期間中発光が続き、LOWレベルになると発光は停止する。時間的に積算した光量が有機EL素子ELAの見かけの輝度となる。
【0051】
有機EL素子ELBに電流を供給し発光させるときは、制御線P1にLOWレベル、P2にLOWレベル、P3にHIレベルの信号を入力する。このときTFT(M1)はOFF、TFT(M3)もOFF、TFT(M4)はONになる。TFT(M4)が導通状態であるため、保持容量C1に保持された電圧に応じた電流がTFT(M2)のドレインから有機EL素子ELBに供給され有機EL素子ELBが発光する。制御線P3がHIレベルにある期間の積算光量が有機EL素子ELBの見かけの輝度となる。
【0052】
駆動回路を共通にする有機EL素子ELAとELBは、制御線P1によって同じ選択期間に同じデータ信号線Dataからデータ信号Vdataが与えられる。制御線P1の制御信号によって行を選択し、選択された行の画素回路84にデータ信号線からデータ信号を入れて保持する操作を「書き込み」という。1回の書込み操作では、同じ画素回路84の有機EL素子ELAとELBに同じデータ信号が与えられる。
【0053】
有機EL素子ELAとELBをそれぞれのデータ信号によって点灯させるには、1つのデータ信号を書き込んだ後、制御線P2を選択レベルにして有機EL素子ELAを点灯させ、次いで再書き込みをしてデータ信号を変更し、制御線P3を選択レベルにして有機EL素子ELBを点灯させればよい。通常は1画面分の画像信号が送られるフレーム周期ごとに各行に1回の書き込みが行われる。したがって、有機EL素子ELAと有機EL素子ELBの表示を切り替えるには、1つのフレーム周期(1フレーム期間という)で画素回路に有機EL素子ELAのデータを書き込んで点灯させ、次の1フレーム期間で同じ画素回路に有機EL素子ELBのデータを書き込んで点灯させる。
【0054】
2つの有機EL素子にそれぞれスイッチを設けて電流を供給する画素回路を構成することにより、2つの有機EL素子を異なる時間に異なるデータで発光させることができる。制御線P2は有機EL素子ELAを、制御線P3は有機EL素子ELBを、それぞれの信号により発光させるので、有機EL素子ELAとELBを全画素で位相をそろえて、すなわち同じフレームでは同じ有機EL素子が発光するようにすることができる。これによって、以下で説明するように、表示装置全体としての光学特性を切り替えたり、適当な割合で2つの光学特性を混ぜ合わせることができる。
【0055】
図4は、表示装置に外から入力される画像信号を示す。画像信号はRGB並列の各画素に対応した画像データR(m,n),G(m,n),B(m,n)がm、nの順に時系列に並んだ信号である。画像信号は1フレーム期間(通常は1/60秒)に、第1行の第1列から第N列まで、それに続く第2行の第1列から第N列まで、以下、最終M行の第1列から第N列までの画像データが時系列で送られてくる。1フレーム期間の画像信号が1枚の画像を構成し、毎秒60枚の画像が送られてくる。各画像データは実際には8ビットのディジタル信号であるが、ここでは1つの画像データとして表してある。
【0056】
図4の入力画像信号は、もとの画像を正方格子の区画(画素)に分けて各区画のRGBの輝度を信号にしたものである。したがってストライプ配列の画素の各画素に与えられるべき画像データとして作られている。
【0057】
図4の入力画像信号はRGB別に処理回路87に送られ、変換されて、データ線駆動回路81を経てデータ信号線のデータ信号などになる。
【0058】
図5は、画像データを処理する処理回路87の構成を示す図である。各色でまったく同じであるので、Rの処理回路87Rのみを示した。画素配置は図2(a)の場合を仮定している。図2(b)の配置の場合は以下の説明のm+1行をm−1行に置き換えればよい。
【0059】
処理回路87は.入力された画像信号R(1,1)−R(M,N)を2行分蓄えるラインメモリL1とL2、L1とL2の偶数列の画像データを混合する混合器MIX、L1、L2およびMIXから生成された画像データを1ライン分保持するラインメモリL3を含む。
【0060】
1行からM行までの画像信号R(1,1)−R(M,N)は、1行ずつ順にラインメモリL1に書き込まれ、次の行のラインデータが来る直前に一括してL2に転送され、このようにして常に引き続く2行のラインデータを保持している。図5は、ラインメモリL2にm行の画像データ、ラインメモリL1にm+1行の画像データが保持されているときを示している。2行のラインデータがラインメモリL1とL2に格納されると、直後にL2の奇数列データがそのままラインメモリL3の同じ列アドレスに送られる。同時に、L1とL2の偶数列の画像データが混合器MIXに送られ、平均または加重平均が求められてラインメモリL3の対応列に送られる。その後L3からラインデータが読み出され、これがデータ線駆動回路81に送られる。データ線駆動回路81は、このラインデータを制御線P1がm行を選択するタイミングでm行の画像データとしてデータ信号線DataRに出力する。
【0061】
L3のラインデータの読み出しと並行して、L1のm+1行データがL2に転送され、次のm+2行のラインデータがL1に格納される。この動作が行単位で繰り返されて、すべての行について上の動作が完了すると、次のフレーム(偶数番目のフレーム)で同じ動作が繰り返される。
【0062】
Bの処理回路87BとGの処理回路87GもRの処理回路87Rとまったく同じ動作をする。
【0063】
このようにして、RGBの各処理回路は、m行とm+1行の画像データの混合データを生成しデータ線駆動回路81に送る。データ線駆動回路81は、m行の選択タイミングでこれをデータ信号Vdataとしてデータ信号線Dataに出力しm行の画素回路に伝達する。
【0064】
以上、図2(a)の画素回路配置についての処理回路を説明したが、先に述べたように、図2(b)のように画素回路が1列おきに上に1/2行分ずれている場合は、m+1行の画像データを混合させる代わりにm−1行の画像データを混合させる。それ以外は同様である。
【0065】
このように、処理回路87は、画素回路とそれに接続される有機EL素子ELAとELBの配置が列方向に1/2行分ずれている列については、当該行の画像データに、ずれている方向に隣接する行(下にずれているときは次の行、上にずれているときは前の行)の画像データを混合させる処理を行う。
【0066】
図6は制御線P1−P3とデータ信号線Dataのデータ信号Vdataを示すタイミングチャートである。やはり図2(a)の画素配置を仮定している。P1(m−1),P1(m),P1(m+1)は、それぞれm−1、m、m+1行の制御線P1に印加される制御信号を示す。VdataR(n−1)はn−1列のR、G,Bの各データ信号線Data(n−1)のデータ信号、VdataR(n)、VdataG(n) ,VdataB(n)はそれぞれn列のR,G,Bのデータ信号線Dataによって伝達されるデータ信号である。RGBの1周期内にある3つの画素回路のそれぞれにデータ信号線DataR,DataG,DataBが接続され、データ信号VdataR,VdaatG,VdataBが伝達される。
【0067】
画素回路84は、m−1、m、m+1行の制御線P1(m−1)、P1(m)、P1(m+1)の制御信号によって順次選択され、n−1列とn列のデータ信号線から与えられたデータ信号がそれぞれの画素回路に書き込まれる。
【0068】
有機EL素子ELAとELBの書き込みと発光は引き続く2つのフレームで交互に行う。
【0069】
P2(m)とP3(m)は、奇数フレームでは、m行の書き込みが終了したのちP2がHレベルになりP3はLのままである。偶数フレームでは、逆にm行の書き込みが終了したのちP3がHレベルになりP2はLのままである。他の行のP2,P3は、タイミングがずれるだけでm行のP2(m), P3(m)と同じ波形である。したがって、RGBいずれも、また奇数列・偶数列いずれも、奇数フレームで有機EL素子ELAが発光し、偶数フレームで有機EL素子ELBが発光する。図2で言うと、奇数フレームでレンズなしの31r、32g、33b、34r、35g、36bおよび41r、42g、43b、44r、45g、46bの各発光領域が発光し、引き続く偶数フレームでレンズ付きの31R、32G、33B、34R、35G、36Bおよび41R、42G、43B、44R、45G、46Bの各発光領域が発光する。
【0070】
図5の各データ信号に付したR(m、n)は、図4に示した元の入力画像信号のm行n列のRの画像信号であることを示す。R(m−1、n)+R(m、n)やG(m、n)+G(m+1、n)は、それぞれ同じn列のm−1とmの2行、およびmとm+1の2行の画素データを足して2分したデータである。
【0071】
奇数列(n−1列)のデータ信号VdataR(n−1)、VdataG(n−1)、VdataB(n−1)は、m−1行が選択されたタイミングでm−1行の画像データR(m−1,n−1)、G(m−1,n−1)、B(m−1,n−1)がそのままデータ信号として伝達されてくる。同様に、m行選択のタイミングではm行の画像データが、m+1行選択のタイミングではm+1行の画像データがそのまま送られている。これはどのフレームでも同じである。
【0072】
これに対して偶数列(n列)のデータ信号は、もとの入力画像データでそのものではなく、処理回路87R,87G,87Bで変換された画像データになっている。
【0073】
VdataR(n)は、
m−1行の選択タイミングでm−1行とm行の平均データ[R(m−1,n)+R(m,n)]/2、
m行選択タイミングでm行とm+1行の平均データ[R(m,n)+R(m+1,n)]/2、
m+1行選択タイミングでm+1行とm+2行の平均データ[R(m+1,n)+R(m+2,n)]/2
の各画像データに変換されて伝達されてくる。なお、図5では「/2」が省略されている。
【0074】
VdataG(n)、VdataB(n)も、VdataR(n)と同様である。
【0075】
これらの画像データは各タイミングでその行の画素回路に書き込まれる。奇数列の画素回路には当該画素回路の行と列に対応した入力画像データがそのままデータ信号として送られ、書き込まれる。したがって、2つの発光領域の有機EL素子ELAとELBは、もとの画像(入力画像)の同じ1つの画素に対応する画像データR(m,n)などに従って発光する。
【0076】
一方、偶数列の1つの画素回路に入る画像データは、その画素回路の行と列に対応した画像データR(m,n)と「次の」行の同列の画像データR(m+1,n)を混合させた画像データである。これは、図2(a)に示した偶数列の画素回路の位置が当該行と次の行の間に位置していることに対応している。図2(b)のように、偶数列の画素回路の位置を当該行と前の行の間にずらせた場合は、偶数列の画素回路に入る画像データは、その画素回路の行と列に対応した画像データR(m,n)と「前の」行の同列の画像データR(m−1,n)を混合させた画像データとなる。
【0077】
図6に示すように、奇数フレームでは各行の書き込みの後P2の信号がH(high)レベルになるので、奇数フレームに伝達された画像データが有機EL素子ELAに流れる電流を決定し有機EL素子ELAを発光させる。また、偶数フレームでは各行の書き込みの後P3の信号がH(high)レベルになるので、偶数フレームに伝達された画像データが有機EL素子ELBに流れる電流を決定し有機EL素子ELBを発光させる。
【0078】
次に、上に説明した画像データの処理とその画素回路への伝達によって、表示画面上に形成される画像について説明する。
【0079】
奇数列の画素回路で駆動される有機EL素子は、元の対応する行と列の画像データに従って発光する。偶数列の画素回路で駆動される有機EL素子は、2行の画像データの平均データが与えられ、それにしたがって発光する。引き続くどの2つのフレームについても同様である。この結果、偶数列ではつねに、引き続く2行にまたがった6つの発光領域34r、34R,35g,35G,36b,36Bを1つの画素として表示が行われる。次の2行にまたがった6つの発光領域44r、44R,45g,45G,46b,46Bも同様である。また、その2行の画像データの平均画像データで表示されるので、位置が1/2ピッチずれていることが表示画像の上では緩和される。行方向には等輝度で列方向に輝度が変化する画像を表示しても、奇数列と偶数列で同様に輝度が変化し、均一な輝度変化画像が得られる。
【0080】
静止画ではフレーム間で画像データは同じであるから、奇数フレームの有機EL素子ELAによる表示と偶数フレームの有機EL素子ELBによる表示の画像は同一となる。動画においても、動きの激しい部分を除いて引き続くフレーム間では近い画像が表示される。これらの場合は、上の効果が十分発揮される。
【0081】
後で説明するように、奇数フレームと偶数フレームの発光期間を異ならせることにより輝度と視野角のバランスを調節できる。高輝度だが狭視野角の画像と、低輝度で広視野角の画像とを切り替えても、画像自体が変化することないので、両者を混合させた中間的な特性を持たせることができる。
【0082】
上の説明では、偶数行の画像データを2行の平均画像データで作成した。しかし、2行のうち、上の行の画像データを下の行より混合比率を高める、あるいは時間的に先に選択される行のデータの重みを後の行の重みより重くするなどの加重平均をとってもよい。いずれの場合も、2行にまたがる2つの発光領域にはその2行の画像データに同じ処理を施した画像データが書き込まれるようにすることが好ましい。
【0083】
奇数列と偶数列の区別は相対的なものであって、入れ替わっていてもよい。2つの発光領域の配置が上下に反転している2種類の配置のうちのいずれかを奇数列とすれば、他方が偶数列になる。奇数フレームと偶数フレームについても同様である。
【0084】
1列おきにずらせる画素回路の位置を1/2行分上にすることも下にすることもできる。
【0085】
単色のモノクロ表示装置は、レンズなしとレンズ付の2つの有機EL素子が正方形の画素回路領域にあり、同じ画素回路で駆動される。本発明をモノクロ表示装置に適用する場合は、以上の説明をRだけがあってGとBがない表示装置についてのものとすればよい。
【0086】
Rの有機EL素子ELBだけがレンズをもち、GとBはレンズがなく発光領域の形状や内部構造により異なる光学特性の発光領域を形成している場合には、2つの発光領域の配置を画素すなわちRGBの周期ごとに反転するだけで済み、画素回路の列ごとに反転する必要はない。その場合には、Gの第1画像データと第2の画像データの伝送タイミングをRとBと同じにする、すなわち第1画像データと第2の画像データの伝送を偶数列のRGBで同位相にする。
【0087】
1つの画素回路に接続される光学特性の異なる有機EL素子が3つ以上あり、隣の列で配置が反転している表示装置に対しても、本発明が適用できる。有機EL素子が3つ(ELA,ELB,ELCとする)の表示装置においては、ELAを第1フレーム、ELBを第2フレーム、再びELAを第3フレーム、ELCを第4フレームでそれぞれ発光させ、第1と第2の2フレームと、第3と第4の2フレームにそれぞれ上で説明した画像データの振り分けを適用する。
【0088】
以上、有機EL素子を例にとって説明したが、本発明は、無機EL材料やLEDを発光素子とする表示装置にも同様に適用できる。
【0089】
以下、本発明に用いる有機EL素子の詳細な構造と、本発明の応用例を説明する。
【0090】
図7は図2のAA‘に沿った有機EL素子ELA,ELBの断面図である。2つの発光領域41rと41Rに有機EL素子ELAおよびELBがそれぞれ形成されている。図ではRの発光領域の断面を示したが、G,Bの発光領域も同様の構造である。
【0091】
有機EL素子ELA,ELBは、一対の電極であるアノード電極21及びカソード電極24と、それらの電極間に挟持された発光層を含む有機化合物の層23(以下、有機EL層と呼称する)を備えている。アノード電極21は発光領域別にパターニングされており、カソード電極24は共通の電極である。有機EL素子間には領域間を分離する素子領域分離層22が設けられている。
【0092】
アノード電極21は、Ag等の高い反射率を持つ導電性の金属材料から形成される。アノード電極は、金属材料から成る層とホール注入特性に優れたITO(Indium−Tin−Oxide)などの透明導電性材料から成る層との積層体から構成しても良い。
【0093】
カソード電極24は半反射性或いは光透過性の材料で形成されており、発光層で発光した光はカソード電極を通して素子外部に取り出される。可視光に対しての反射率が20〜80%の半反射性のカソード電極は、AgやAgMgなどの電子注入性に優れた導電性の金属材料から成る2〜50nmの膜厚の層で形成される。
【0094】
有機EL層23は発光層を含む単層又は複数の層からなる。有機EL層23の構成例としては、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる4層構成や、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機EL層23を構成する材料は、公知の材料を使用することができる。
【0095】
基板20には、有機EL素子ELA,ELBを駆動する画素回路(不図示)が形成される。画素回路は薄膜トランジスタ(以下TFT:thin−film−transistorと称する)、容量、配線他の回路要素から構成される。
【0096】
カソード電極24の上には、空気中の酸素や水分から有機EL層23を保護するための保護層25が形成されている。保護層25は、SiN、SiONなどの無機材料、あるいは無機材料と有機材料との積層膜からなる。CVD法で形成することが好ましい。無機材料の膜厚は0.1μm以上10μm以下が好ましい。1um以上にすると製造工程中に表面に除去できない異物が付着してもそれを覆うことができる。
【0097】
保護層25は表面が平坦であることが好ましい。有機材料を使うことで表面を平坦にすることが可能である。
【0098】
有機EL素子ELBの上にはレンズ110が形成されている。レンズ110は樹脂材料、無機材料を加工することなどにより形成されている。レンズは、型押し、フォトリソフラフィなどの方法により形成することができる。
【0099】
有機EL層23から出射された光が透明なカソード電極24を透過する。次いで保護層25、レンズ110を透過して、有機EL素子の外部へ出射される。レンズ110が形成されている有機EL素子ELBは、レンズが無い場合に比べて出射角度が基板垂直方向に近く集光効果があるため、表示装置の正面方向への出射光量を高める。また、発光層から大きな角度で斜めに出射された光でも、レンズを通ることで出射方向が垂直に近づき、出射面での全反射光量が減少する。その結果、光取り出しの効率も向上する。
【0100】
レンズを用いず、有機EL素子の有機層や電極層の厚さを変えるなど、有機EL素子ELAとELB自体に構造の違いを持たせて異なる光学特性にすることも可能である。
【0101】
図8は(a)有機EL素子ELAと(b)有機EL素子ELBの輝度対視野角特性を示す。視野角は正面から見たときを0度とする。有機EL素子ELA・ELBともに同じ電流で発光させ、相対輝度値を示している。有機EL素子ELBの発光領域は、視野角特性は狭いけれども、正面の輝度は有機EL素子ELAの発光領域より約4倍高い。
【0102】
有機EL素子ELAとELBが並存する表示装置を作り、視野角特性の広い光学特性をもつ有機EL素子ELAを点灯させ、正面輝度が高く視野角特性の狭い有機EL素子ELBを消灯させると、視野角特性の広い表示が得られる。逆に有機EL素子ELBを点灯させ、有機EL素子ELAを消灯させると、正面の輝度は高くなるが視野角は狭くなる。
【0103】
広い視野角を必要としない場合は、正面輝度の高い有機EL素子ELBを低電流で点灯して、有機EL素子ELAと同じ正面輝度にすることにより、低消費電力の表示モードになる。図8の特性の素子であれば、消費電力は1/4になる。
【0104】
光学特性の異なる2つの発光領域を組み合わせて使用することで、ユーザーシーンに応じて、正面から見た輝度の高い「高輝度屋外視認性モード」、斜め方向からでも見やすい「広視野角モード」、周囲が暗い環境で輝度を低くする「低消費電力モード」などの多種のモードを選択可能にし、表示画素品位が高くフレキシビリティの高い表示装置を提供することができる。
【0105】
有機EL素子ELAと有機EL素子ELBの表示をフレームごとに切り替え、平均的な表示にすることで、目に見える輝度と視野角を有機EL素子ELAと有機EL素子ELBの中間に制御することができる。有機EL素子ELAと有機EL素子ELBの特性の混合比率は、その点灯時間比率を変えて構成できる。
【0106】
図9(a)〜(e)は、図8の有機EL素子ELAと有機EL素子ELBをフレームごとに切り替え、異なる発光デューティで発光させる表示装置のタイミングチャートである。横軸は時間、縦軸は点灯のON(HI)・OFF(LOW)を示す。画素回路から供給される電流はどの点灯タイミングにおいても同じである。
【0107】
(有機EL素子ELAの点灯時間):(有機EL素子ELBの点灯時間)の比は、(a)16:0、(b)12:1、(c)8:2、(d)4:3、(e)0:4である。正面から見た平均の輝度は、ELA:ELB=4:0、3:1、2:2、1:3、0:4になる。
【0108】
図10は輝度対視野角特性、図11は相対消費電力である。図10、図11の(a)〜(e)は、図9の(a)〜(e)に対応する。(a)から(e)に向かうに従って、正面輝度は一定で視野角特性を徐々に狭くすることができる。それにつれて消費電力は少なくなる。
【0109】
(有機EL素子ELAの点灯時間):(有機EL素子ELBの点灯時間)の比を(a)16:0、(b)12:4、(c)8:8、(d)4:12、(e)0:16とすると、(a)では正面輝度は低いが視野角が広い「広視野角モード」になり、(e)は正面輝度が高く視野角が狭いので屋外で使用できる「高輝度屋外視認モード」となる。(b)−(d)はその段階的切り替えになる。
【0110】
以上説明した本発明は、レンズアレイを搭載した発光領域と搭載しない発光領域の組み合わせだけに限らず、光学特性が異なる2つの発光領域を併用するすべての表示装置に適用できる。光学特性の違いは、レンズによらず光学薄膜による干渉などを用いて形成してもよい。2つの発光領域にレンズ径や焦点距離の異なるレンズを搭載した表示装置、あるいは、レンズによらず、有機EL素子自体の材料や層構造を変えて異なる光学特性を付与した2つの発光領域を併用した表示装置も本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
31−36,41−46 画素回路
31R、34R、41R,44R レンズのあるRの有機EL素子の発光領域
32G、35G、42G,45G レンズのあるGの有機EL素子の発光領域
33B、36B、43B,46B レンズのあるBの有機EL素子の発光領域
31r、34r、41r,44r レンズのないRの有機EL素子の発光領域
32g、35g、42g,45g レンズのないGの有機EL素子の発光領域
33b、36b、43b,46b レンズのないBの有機EL素子の発光領域
10、11、12 画素
84 画素回路
86 制御回路
87R,87G,87B 処理回路
P1(m)−P3(m) 制御線
DataR(n),DataG(n),DataB(n) データ信号線
R(m,n),G(m,n),B(m,n) m行n列の入力画像データ
VdataR(n)、VdataG(n)、VdataB(n) データ信号線に伝達されるデータ信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向と列方向に配列した複数の画素回路と、前記画素回路に接続され、行方向に周期的な色で配列した発光素子と、画像データを処理して前記画素回路に伝達する処理回路とを有する表示装置であって、
前記複数の画素回路の各々は、互いに異なる光学特性の発光領域を持つ2つの前記発光素子に交互に電流を供給する回路であり、
前記画素回路ならびに前記画素回路が電流を供給する前記2つの発光素子は、前記色の1周期おきに、前記周期の間の前記画素回路並びに前記2つの発光素子を基準の位置として、列方向に1/2行分ずれて配置されており、
前記処理回路は、
前記基準の位置にある画素回路に対して、当該画素回路の行と列に対応した画像データを伝達し、
前記列方向に1/2行分ずれて配置された画素回路に対して、当該画素回路の行と列に対応した画像データに、前記画素回路が1/2行分ずれて配置されている列方向に隣接する行の同じ列に対応した画像データを混合させた画像データを伝達する回路であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記2つの発光素子が、前記色の周期内で列ごとに列方向に反転して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の画素回路が、同位相で、前記2つの発光素子に交互に電流を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記2つの発光素子は、正面輝度および輝度対視野角特性が異なることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−118406(P2012−118406A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269730(P2010−269730)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】