説明

表示装置

【課題】 高いコントラストを有する表示装置を得る。
【解決手段】 前面板と発光層と散乱層と励起源で構成された表示装置で、前面板は可視域の波長の光に対して透明な媒質で形成され、励起源は発光層を励起する手段を有し、発光層は発光媒質を含み、発光層の裏側に、発光層で発生した光の少なくとも一部を散乱し、発光層よりも有効屈折率が高い散乱層を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いコントラストを有する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な構成の表示装置が知られている。その一例として、特許文献1には、図9に断面図を示す構成の表示装置が開示されている。図9に示す表示装置1000は、前面板1001と発光層1002と、透明電極1003、金属電極1004で構成されている。透明電極1003、金属電極1004により、発光層1002に電子および正孔を供給すると、光が生成され、このうち外部に抽出される光が表示光1005となる。発光層1002で生成された光のうち、裏側(z軸のマイナス方向)に向かう光1006は、金属電極1004によって光取り出し側(z軸のプラス方向)に反射され、これにより、表示光1005の輝度が向上することが知られている。発光層で発生した光のうち、外部に出力され、表示光となる光の割合を光取り出し効率と呼ぶ。
【0003】
また、特許文献2には、図10に示す表示装置1100のように、発光層1002を励起するための電子源1007と、発光層1002の裏側に金属電極1004を配置した構成が開示されている。電子源に電界を加えると、電子が放出され、放出された電子が、金属電極1004を通過し、発光層1002に供給されると、光が生成される。表示装置1000と同様に、発光層1002で生成された光のうち、裏側の方向に向かう光1006を、金属電極1004によって、光取り出し側の方向に反射させることで、表示光の輝度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−283751
【特許文献2】米国特許6844667号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置に、外部から光を入射した場合における反射率を外光反射率と呼ぶ。
【0006】
上述の図9、10に示すように、従来提案されている表示装置1000、1100において、外光1008が入射すると、その一部は、前面板1001および発光層1002を透過し、金属電極1004によって強く反射され、反射光1009となる。このため、外光反射率が高くなり、コントラストが低下する。
【0007】
また、表示装置1100においては、電子源1007より放出された電子は、金属電極1004を通過する際に、エネルギーの一部が吸収される。そのため、発光層1002を励起する効率が悪く、生成される光量が低下し、表示光1005の輝度が低下する。よって、表示装置1100においては、表示光の輝度が低く、低コントラストな表示装置となる。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決し、表示光の輝度(表示輝度)を向上させると共に、外光反射を抑制し、高コントラストな表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本願発明は、基板と、前記基板上に配置された発光層と、前記発光層を介して前記基板と対向するように該基板上に配置され、少なくとも該発光層より発生した光の一部を散乱する散乱層と、を有し、前記発光層の有効屈折率は、前記散乱層の前記基板と対向する面とは反対側の面が接する領域の屈折率よりも大きく、前記散乱層の有効屈折率が前記発光層の有効屈折率よりも大きいことを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高コントラストな表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の表示装置の一例及び発光層で生じた光を説明するxz断面図。
【図2】本発明の表示装置の一例及び外光を説明するxz断面図。
【図3】本発明の表示装置の作製例。
【図4】本発明の表示装置の作製例。
【図5】本発明の表示装置の光取り出し効率を計算した結果を示すグラフ。
【図6】本発明の表示装置の外光反射率を計算した結果を示すグラフ。
【図7】本発明の表示装置の他の例の光取り出し効率を計算した結果を示すグラフ。
【図8】本発明の表示装置の他の例の外光反射率を計算した結果を示すグラフ。
【図9】従来の表示装置の一例におけるxz断面図。
【図10】従来の表示装置の他の例におけるxz断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明の実施の形態の表示装置を図1に示す。図1は表示装置100のxz断面図である。表示装置100は、基板である前面板101と、この基板上に配置された発光層102と、発光層を介して基板と対向するように、基板である前面板101上に配置され、少なくとも発光層より発生した光の一部を散乱する散乱層104とを有している。尚、本実施の形態では、散乱層104の前面板101と対向する面とは反対側の面である裏面が接する領域は、真空である。そして発光層102は、発光層の有効屈折率が、この真空領域の屈折率よりも大きくなるように、形成されている。更には、散乱層の有効屈折率は、発光層102の有効屈折率よりも大きくなるように設定されている。また、図1の表示装置100は、好ましい形態として、励起源の一部としての透明電極103を前面板101と発光層102との間に備えている。また励起源の一部として、発光層102と対向配置された電子源105も有している。
【0014】
前面板101は、可視光に対して透明な媒質で形成されており、例えば、ガラスで形成されている。発光層102は、発光媒質を含む層で、例えば蛍光体で構成され、可視波長域である波長350nmから800nmのいずれかの波長を含む光を発生する。散乱層104は、好ましくは非金属媒質で形成され、例えば、媒質中に微粒子を分散させることで構成されている。散乱層104の有効屈折率Neffは、散乱層104を構成する微粒子や微粒子の周囲の媒質などの各媒質の屈折率と、各媒質が空間に占める体積比率で決定され、式1で表すことができる。
【0015】
【数1】

【0016】
式1において、N1およびN2は、各媒質の屈折率(複素屈折率の実部)、ff1およびff2は、各媒質が空間に占める体積比率を表している。発光層102の有効屈折率も同様に、発光層102を構成する媒質の屈折率と各媒質が空間に占める体積比率から、式1で表すことができる。そして、散乱層104の有効屈折率は、発光層102の有効屈折率よりも高い屈折率を有している。このような構成の表示装置において、電子源105に電界を加えると電子が放出され、放出された電子が透明電極103に印加された高電圧によって加速された後、発光層102に照射して、光が発生することで表示光106を得る。
【0017】
次に、本実施形態において、コントラストが高い表示装置を得ることができる理由を述べる。まず、表示光106の増大について説明する。本実施形態の表示装置100では、散乱層104の有効屈折率が、発光層102の有効屈折率よりも大きいので、散乱層104の基板である前面板101に対向する面とは反対側の面である裏面(電子源105に対向する面)における臨界角を小さくすることが出来る。この結果、発光層102で発生した光のうち、散乱層104の裏面を透過する光を減少させ、全反射されて発光層102側に戻る光を増やすことが出来る。これについて、以下詳述する。尚、以下においては、散乱層104の基板である前面板101と対向する面とは反対側の面である裏面(電子源105に対向する面)を、最終面108と呼ぶこととする。また、散乱層104の裏面である最終面108が接する領域は、単に裏側領域という場合がある。
【0018】
また、散乱層104を設けない場合については、発光層102の裏面(電子源105に対向する面)を最終面として、以下説明する。
【0019】
発光層102で発生した光のうち、散乱層104で散乱された光107の一部は、最終面108で反射され、光取り出し側(前面板101側)に向かい、表示光となる。最終面108の反射率は、散乱層104と裏側領域(散乱層104と電子源105との間の領域であり、本実施形態においては上述の通り真空領域)との屈折率差と、最終面108へ入射する光の角度によって決定される。屈折率差が大きくなると、臨界角が小さくなる。入射角度が臨界角よりも大きくなると、光は全反射される。つまり、臨界角が小さくなることは、全反射光を増やすこととなる。
【0020】
散乱層104の有効屈折率を発光層102の有効屈折率よりも大きくすると、散乱層104を設けない場合と比べて、最終面108と裏側領域(本じ強い形態では真空領域)との屈折率差が増大し、最終面108の臨界角が小さくなる。散乱層104で光を散乱させると、光は様々な方向に伝播する光に変換される。散乱層104で光を散乱させると、最終面108への入射角が大きい光を増加することができ、全反射される光を増大させることができる。尚、仮に散乱層104の代わりに、発光層102よりも有効屈折率が大きいが散乱は生じない層を設けた場合を考えると、光は低屈折率媒質から高屈折率媒質に入射し、屈折されるため、最終面108への入射角度は浅くなり、全反射される光を増加させることができない。また、仮に、散乱層104の代わりに、散乱が有り、発光層102の有効屈折率以下の有効屈折率を有する層を設けた場合を考える。この場合、光は散乱され、最終面108への入射角が大きい光が増加するが、最終面108の臨界角は大きくなるか、発光層102と同じになるため、全反射される光は低下するか同じとなる。
【0021】
以上のとおり、本実施形態の散乱層104を設けることにより、より多くの光を反射し、外部に射出される表示光106を増大することができる。なお、発光媒質で発生した光の少なくとも一部を散乱層104で散乱すれば、散乱層104を設けない場合と比べて、表示光106を増大することができる。望ましくは、散乱層104に入射した光のうち、1%以上の光を散乱すると、この効果を更に得ることができ、より望ましくは5%以上、更に望ましくは10%以上の光を散乱すると、表示光106の輝度を更に増大することができる。
【0022】
なお、発光層102や前面板101を伝播する光のうち、発光層102と透明電極103との界面や、前面板101と外部領域の界面に、臨界角以上の角度で入射する光は全反射される。本実施の形態の構成において、この光を散乱層104で散乱および反射することにより、再び前面板101方向に向かう光に変換し、外部に射出することで、表示光106とすることができる。この効果により、表示光106の輝度を更に向上することが出来る。
【0023】
尚、上記では、散乱層104の裏面が接する領域は真空として説明したが、散乱層104の裏面が接する領域は真空に限らず、発光層102よりも屈折率が小さければ良く、例えば空気などでもかまわない。
【0024】
次に外光反射の低減について説明する。表示装置100に外光が入射すると、外光の一部は散乱層104に到達し、散乱される。この散乱光のうち、前面板101と外部との界面あるいは発光層102と透明電極103との界面における臨界角以上の光は全反射されるため、散乱光の一部の光のみが外光反射光となる。それゆえ、従来の構成と比べて、外光反射を低減することができる。尚、散乱層104で散乱された光の一部と、発光層102と散乱層104の界面および最終面108で反射された光は、外光反射光となるが、各界面の反射率は、界面の屈折率差によって決まる。散乱層104に、一般的な誘電体媒質や半導体媒質等、非金属部材を用いた場合には、従来の構成である金属膜による反射率と比べて、各界面の反射率は大幅に低下させることが出来るので、より外光反射光を低減できる。
【0025】
このように、本発明の実施形態の表示装置100においては、外光反射率が低く、表示光の輝度が高い、高コントラストな表示装置を得ることができる。
【0026】
尚、本発明の実施形態に含まれる発光層102および散乱層104は、図1で示した構成に制限されるものではない。例えば、散乱層104は、発光層102と同様に発光物質で構成してもよい。発光物質で構成することで、散乱層104でも光が生成されるため、発光量が増大し、最大輝度を増加することができる。
【0027】
また、発光層102、散乱層104は、媒質と、媒質中に分散させた微粒子とを備える構成としてもよい。また、発光層102と散乱層104の両者を媒質中に微粒子を分散させた構成とした場合、発光層が備える微粒子の、発光層が備える媒質中における充填率が、散乱層が備える微粒子の、散乱層が備える媒質中における充填率と異なるようにするとよい。また、発光層の媒質、微粒子が、散乱層の媒質、粒子とそれぞれ同一となるようにするとよい。例えば、微粒子の屈折率が、周囲の媒質の屈折率よりも高い場合、発光層102よりも散乱層104の微粒子の充填率が高くなるように構成すると、発光層102よりも散乱層104の有効屈折率を高くすることができる。このような構成にすると、発光層102および散乱層104を同じ材料で構成することができ、両層を同じ作製方法で、プロセスの条件を変更するだけで容易に作製することができる。なお、発光層102は散乱性を有していてもよい。発光層102が散乱性を有すると、各界面で全反射され、発光層102の内部に閉じ込められる光が散乱され、伝播方向が異なる光に変換されやすくなり、表示光106に変換されやすくなる。また、微粒子の径は、可視光の波長以下、より好ましくは、可視光の波長の2分の1以下、更に好ましくは、5分の1以下にするとよい。詳しくは後述するが、微粒子の径をこの大きさにすると、散乱特性は、ミー散乱に近くなり、配向強度分布を均一な分布に近づけることが出来る。
【0028】
図2は表示装置100のxz断面図である。散乱層104は、最終面108の臨界角以内の角度で入射する光109に対して、非散乱反射光110の強度が、非散乱透過光111の強度と散乱光112、113の強度の和よりも弱くなるように構成することが望ましい。換言すると、散乱層104は、散乱層104の基板である前面板101に対向する面とは反対側の面である裏面における臨界角以内の角度で散乱層に入射する光のうち、散乱層で散乱せずに基板側に反射する反射光の強度が、散乱層で散乱せずに散乱層を透過する光の強度と散乱層で散乱する光の強度の和よりも弱くなるように構成されているのが望ましい。ここで、散乱光112、113とは、図2に示す通り散乱層104で散乱される光とする。また非散乱反射光110とは、散乱層104と発光層102の界面および散乱層104と裏側領域(散乱層104の前面板101と対向する面とは反対側の面である裏面が接する領域)との界面で反射され、外光反射光となる光とする。非散乱透過光111とは、散乱層104で散乱されず、裏側領域(散乱層104の前面板101と対向する面とは反対側の面である裏面が接する領域)に透過する光とする。外光109は、各界面で屈折され、散乱層104内を最終面108の臨界角以内の角度で伝播する。外光109は、散乱層104で、散乱光112および113、非散乱反射光110、非散乱透過光111に分配される。このうち、外部に反射される非散乱反射光110は、周囲の照明や像が表示装置に写り込み、観賞を妨害する要因となる。散乱層104の散乱特性は、散乱層104の厚さや微粒子の径や密度、散乱層104を構成する媒質によって制御できる。散乱層104の散乱特性を制御し、非散乱反射光110の強度を低減し、非散乱透過光111の強度と散乱光112、113の強度との和よりも弱くなるように構成することで、写り込みを改善することができる。
【0029】
更に、散乱層104は、最終面108の臨界角以内の角度で入射する光109に対して、後方散乱光の強度よりも前方散乱光の強度が強くなるように構成することが望ましい。換言すると、散乱層104の基板に対向する面とは反対側の面における臨界角以内の角度で散乱層に入射する光のうち、散乱層で基板側に向けて散乱する光の強度が、散乱層で反対側の面に向けて散乱する光の強度よりも弱くなるように構成されているのが望ましい。ここで、前方散乱光112は、図2に示すように、散乱層104の内部で散乱された光のうち、最終面108に到達する光とし、後方散乱光113は、散乱層104と発光層102との界面に到達する光とする。散乱層104で散乱された光は、前方散乱光112と後方散乱光113に分配される。後方散乱光113の一部は、発光層102および前面板101を透過し、外部に射出され、外光反射光114となる。前方散乱光112の一部は、最終面108で反射され、散乱層104で再び散乱された後、発光層102および前面板101を透過し、外部に射出され、外光反射光115となる。表示装置の外光反射光の配向強度分布は、均一な分布となることが望ましい。外光反射光115は、後方外光反射光114と比べて、前方散乱光112が散乱層104を往復し、散乱回数が増える分、配向強度分布が均一化される。後方散乱光113の強度を前方散乱光112の強度よりも弱くすることで、結果、外光反射光の配向強度分布が均一化し、観察方向によるコントラストの変動が小さい表示装置を得ることができる。
【0030】
また、散乱層104に含まれる散乱体の大きさは可視域の波長よりも小さいことが望ましい。散乱光が発生する要因となる構造体を散乱体と呼ぶ。例えば、微粒子を媒質中に低密度で分散させた場合、微粒子が散乱体となる。微粒子を高密度で分散させた場合、微粒子と微粒子の間の領域が散乱体となる。単一の散乱体による散乱は、散乱体が光の波長と比べて小さくなるほど、入射方向とは異なる方向に散乱され、広い角度範囲に散乱される。特定方向から入射した外光109は、散乱体単体の散乱と他の散乱体への伝播を繰り返しながら散乱層104内を伝播する。散乱体単体の散乱光の配向強度分布を均一にするほど、散乱層104での多重散乱による強度分布も均一になり、外光反射光の配向強度分布を均一化することができる。より望ましくは、散乱体の大きさは、可視域の波長の2分の1以下、更に望ましくは5分の1以下とすることが望ましい。この大きさにすると、散乱特性は、ミー散乱に近くなり、配向強度分布が均一な分布に近づき、前記で述べた効果を更に得ることができる。
【0031】
なお、発光層102および散乱層104に含まれる微粒子の径、媒質、微粒子の周囲の媒質は互いに異なっていてもよい。各層で、微粒子の大きさ、充填率、周囲の媒質を適切に選択することで、所望の散乱特性と有効屈折率を有する層を構成することができ、前記で述べた効果を得ることができる。例えば、散乱特性を上げるには、微粒子の径を大きくしたり、充填率を下げればよい。尚、有効屈折率については、上述の式1に基づいて適宜調整すればよい。
【0032】
本発明に含まれる表示装置100は例えば次のプロセスで作製することができる。図3(a)〜(c)および図4(a)〜(c)は、表示装置100のxz面内の断面図で示している。なお、電子源105の作製プロセスは省略して図示している。
【0033】
まず、基板101に透明電極103を形成する。その上に、発光層102を成膜する(図3(a))。さらに、散乱層104として、微粒子10を溶媒11中に分散させた溶液を塗布する。微粒子10の塗布は例えばインクジェットの技術を用いることができる(図3(b))。塗布した溶液に熱を加え、溶媒11を揮発させることで散乱層104を作製することができる。
【0034】
あるいは、基板101に透明電極103を形成し、その上に発光媒質で形成された微粒子12を溶媒13中に分散させた溶液を塗布する(図4(a))。次に、微粒子14を溶媒15中に分散させた溶液を、発光層102の上に塗布する(図4(b))。塗布した溶液に熱を加え、溶媒13、15を揮発させることで、発光層102および散乱層104を形成する(図4(c))。発光層102および散乱層104に用いる分散液の微粒子の媒質や径、あるいは濃度が互いに異なる溶液を用いることで、両層で有効屈折率が異なる層を作製することができる。
【0035】
本発明に含まれる前面板101は、可視光に対して透明な材料であればよく、プラスチックで形成してもよい。また、本発明における励起源の一部としての透明電極103は、発光層102と散乱層104の間あるいは散乱層104の裏側に設けても良い。そして上述の通り、励起源の一部として、更に発光層102と対向配置させた電子源105を設けてもよい。尚、励起源は、前面板101と発光層102との間および発光層102の裏面とに、陽極と陰極を設けた構成であってもよい。両電極間に電流を印加し、電子と正孔を注入することで、発光層102で光を発生させることができる。あるいは、励起源は、前面板上に電極を配置し、発光層102の裏面に、セルと電極を配列し、セル内にプラズマによって紫外線を発生するガスを封入した構成としてもよい。このような構成とし、セルに含まれるガスに電流を流すと、紫外線が発生し、蛍光体粒子に照射されることで、蛍光体粒子が励起され、光を発生させることができる。
【0036】
なお、本発明において、前面板101と透明電極103の間に、フォトニック結晶や散乱媒質で構成された、屈折率分布を有する層を設けても良い。このような層は、発光層102、透明電極103、散乱層104の中を伝播する光を、回折あるいは散乱によって、異なる方向に向かう光に変換することができる。適切な屈折率分布を有する層を設けることで、外部に射出される光を増大し、表示光の輝度を更に向上することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を基づき、本発明の具体例を説明する。図1に表示装置100の一例を示す。前面板101は屈折率が1.5の媒質で形成されている。また、励起源として、発光層102と前面板101の間に屈折率1.8の媒質で形成された透明電極103が配置され、発光層102の背面に電子源105が配置されている。発光層102は、屈折率が1.5の発光媒質で構成されている。散乱層104は、発光層102の裏側に配置され、屈折率が2.2の媒質中に、屈折率が1.0、直径40nmの微粒子を充填率58%で分散させた層となっている。このとき散乱層104の有効屈折率は1.7となる。尚、散乱層104の裏側の領域(散乱層104と電子源105の間の領域であり、散乱層104の前面板101と対向する面とは反対側の面である裏面が接する領域)は真空となっており、其の屈折率は約1である。電子源105に電界を加えると、電子が放出され、発光層102に電子が供給され、光が発生する。発生した光が、前面板101を透過し、外部に射出されることで表示光106となる。
【0038】
図5は、表示装置100において、光取り出し効率を計算した結果を示す図である。図5には、従来の構成として散乱層104を設けない場合の光取り出し効率も示した。図5に示すように、本実施例の構成において、散乱層104を設け、発光層102の裏側に向かう光を反射することで、表示光の輝度を向上することができる。
【0039】
次に、表示装置100に外光を入射し、外光反射率を計算した結果を図6に示す。図6には従来の構成として、発光層102の裏側に金属膜を設けた場合の反射率も示した。図6に示すように、本実施例の構成で、外光反射率が低減されていることが分かる。このように、本実施例の表示装置100においては、上述の実施形態で説明した通り、発光層102の裏側に発光層102よりも有効屈折率が高い散乱層104を設けることで高い光取り出し効率を有し、外光反射率が低い、高コントラストな表示装置を得ることができる。
【0040】
更に、発光層102および散乱層104を同じ媒質で構成し、微粒子の充填率が互いに異なるように構成した場合の例(例2)を示す。前面板101、電子源105、透明電極103は、上述の例と同じ構成となっている。発光層102および散乱層104は、微粒子を微粒子とは異なる屈折率を有する媒質中に分散することで構成されている。両層は、同じ媒質で構成され、微粒子の充填率が互いに異なる構成となっている。発光層102は、屈折率が2.2の発光媒質中に、屈折率が1.0、直径40nmの微粒子を充填率41%で分散させた層となっている。このとき発光層102の有効屈折率は1.5となる。散乱層104は、発光層102を介して前面板101と対向するように、発光層102の裏側に配置され、屈折率が2.2の発光媒質中に、屈折率が1.0、直径40nmの微粒子を充填率58%で分散させた層となっている。このとき散乱層104の有効屈折率は1.7となる。このような構成において、電子源に電界を加えると、電子が放出され、発光層102および散乱層104に電子が供給され、光が発生する。発生した光が、前面板101を透過し、外部に射出されることで表示光106となる。
【0041】
図7は、上述の例2の表示装置100において、光取り出し効率を計算した結果を示す図である。図7には、散乱層104を設けない場合の光取り出し効率も示した。図7に示すように、本構成においても、散乱層104を設け、発光層102の裏側に向かう光を反射することで、表示光の輝度を向上することができる。
【0042】
更に、表示装置100に外光を入射し、外光反射率を計算した結果を図8に示す。図8には従来の構成(比較例)として、散乱層104を設けず、発光層102の裏側に金属膜を設けた場合の反射率も示した。図8に示すように、本構成においても、外光反射率が低減されていることが分かる。発光層102および散乱層104を、同じ媒質で微粒子の充填率が異なる層とすることで、互いに有効屈折率が異なる層を構成した、本例の表示装置100においても、高い光取り出し効率を有し、外光反射率が低い、高コントラストな表示装置が得ることができる。
【0043】
なお、各領域の構成や用いる媒質は、本実施例で示した構成および媒質とは異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
100,1000,1100 表示装置
101 前面板
102,1002 発光層
104 散乱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された発光層と、
前記発光層を介して前記基板と対向するように該基板上に配置され、少なくとも該発光層より発生した光の一部を散乱する散乱層と、を有し、
前記発光層の有効屈折率は、前記散乱層の前記基板と対向する面とは反対側の面が接する領域の屈折率よりも大きく、
前記散乱層の有効屈折率が前記発光層の有効屈折率よりも大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記散乱層は、非金属部材からなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記散乱層は、媒質と、該媒質中に分散された微粒子とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記微粒子が、発光物質からなることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記微粒子の径が、可視光の波長以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光層は、媒質と、該媒質中に分散された微粒子とを備えることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光層が備える前記媒質及び前記微粒子が、前記散乱層が備える前記媒質及び前記微粒子とそれぞれ同一であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光層が備える微粒子の前記発光層が備える媒質中における充填率が、前記散乱層が備える微粒子の前記散乱層が備える媒質中における充填率とは異なることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記散乱層は、前記散乱層の前記発光層に対向する面とは反対側の面における臨界角以内の角度で該散乱層に入射する光のうち、該散乱層で散乱せずに前記基板側に反射する反射光の強度が、該散乱層で散乱せずに該散乱層を透過する光の強度と該散乱層で散乱する光の強度の和よりも弱くなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記散乱層は、前記散乱層の前記発光層に対向する面とは反対側の面における臨界角以内の角度で該散乱層に入射する光のうち、該散乱層で前記基板側に向けて散乱する光の強度が、該散乱層で前記反対側の面に向けて散乱する光の強度よりも弱くなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−137638(P2012−137638A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290329(P2010−290329)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】