説明

表示装置

【課題】高さ方向に立体物が表示されない領域をドライバに提示してドライバに注意喚起を促す表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両周囲を撮像する複数の撮像手段1と、撮像手段1から取得した撮像映像に基づいて俯瞰映像を作成し、この俯瞰映像に死角エリアを重畳する映像処理ユニット2と、この映像処理ユニット2によって死角エリアが重畳された重畳映像を表示する表示手段3とを備え、映像処理ユニット2は、路面からの高さに応じて異なる死角エリアを俯瞰映像に重畳することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のカメラ映像を合成した俯瞰映像の死角エリアを表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車載カメラの撮像映像を合成して俯瞰映像を作成する全周囲撮像システムが知られている(例えば特許文献1を参照)。この俯瞰映像では、路面投影された車両などの立体物が倒れこんだ平面形状で映っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−12465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、俯瞰映像では一定以上の高さの立体物を表示することができないという問題があった。
【0005】
図6は、従来の路面投影による俯瞰映像をイメージで説明する図である。図6に示すように、路上の立体物100は、車両に搭載された撮像手段101a、101bによって撮像される。撮像手段101a、101bは、それぞれ撮像範囲102a、102bの領域を撮像する。また、点線103によって、撮像手段101a、101bの撮像映像のうち合成映像の作成に用いられる部分が定められている。すなわち、撮像範囲102aの路面投影部分のうち、点線103より撮像手段101a側の部分と、撮像範囲102bの路面投影部分のうち、点線103より撮像手段101b側の部分とが合成して俯瞰映像105が作成される。実空間上の立体物100は、俯瞰映像105上では、投影面106で示される。
【0006】
次に、この投影面106について詳細に説明する。図7は、立体物の路面投影についてイメージで説明する図である。図7に示すように、撮像手段101aは、撮像範囲102aで立体物100を撮像している。立体物100のうち所定以上の高さの部分は、撮像範囲102aの領域外に突出しており、俯瞰映像105に映らない。立体物100のうち、撮像範囲102a内に含まれる撮像面110が撮像手段101aによって撮像される。この撮像面110は、路面投影によって投影面111に変換される。ここで、俯瞰映像が作成される際に、撮像手段101aによって路面投影された映像からは、点線103よりも撮像手段101a側の部分が抽出される。したがって、投影面111のうち、点線103よりも撮像手段101a側の幅Wの部分しか俯瞰映像105上では反映されない。同様に、撮像手段101bによって路面投影された映像からは、点線103よりも撮像手段101b側の部分が抽出されて俯瞰映像の作成に用いられる。このとき、投影面111のうち撮像手段101b側の部分は俯瞰映像に反映されないため、ドライバは一定以上の高さの立体物に気づかずに立体物に車両を衝突してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、高さ方向に立体物が表示されない領域をドライバに提示してドライバに注意喚起を促す表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の表示装置は、映像処理ユニットが路面からの高さに
応じて異なる死角エリアを俯瞰映像に重畳することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高さ方向に立体物が表示されない領域をドライバに提示してドライバに注意喚起を促すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における表示装置の構成を示すブロック図
【図2】同図1の要部であるCPUが信号処理部に行う処理を説明するフローチャート図
【図3】同図1の要部である信号処理部によるグラフィック重畳処理を説明するフローチャート図
【図4】(A)路面からの高さがh1に設定されたときに信号処理部が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図(B)路面からの高さがh2に設定されたときに信号処理部が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図(C)路面からの高さがh3に設定されたときに信号処理部が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図
【図5】(A)路面からの高さがh1に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図(B)路面からの高さがh2に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図(C)路面からの高さがh3に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図
【図6】従来の路面投影による俯瞰映像をイメージで説明する図
【図7】立体物の路面投影についてイメージで説明する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態における表示装置について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態における表示装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、表示装置は、車体に取り付けられて自車両周囲を撮像する撮像手段1と、この撮像手段1から入力した撮像映像を映像処理する映像処理ユニット2と、映像処理ユニット2から入力された表示映像を表示する表示手段3と、ユーザが情報を入力する入力手段4とを備える。
【0014】
撮像手段1は複数のカメラで構成され、自車両周囲を撮像する。例えば、車体には前方、後方、左右の側方にそれぞれ1つずつカメラが設けられて自車両の全周囲を撮像する。撮像手段1は、撮像映像を電気信号に変換して映像処理ユニット2に入力する。
【0015】
映像処理ユニット2は、ECU(Electric Control Unit)で構成され、車室内に設けられる。映像処理ユニット2は、撮像手段1から入力された撮像映像のレンズ歪みを補正する。映像処理ユニット2は、この補正した映像に視点変換を施した俯瞰映像を生成する。また、映像処理ユニット2は、この俯瞰映像にガイドラインや自車両などのグラフィックを重畳する。なお、グラフィックが重畳された部分の撮像映像を視認可能にするため、映像処理ユニット2は、各グラフィックにαブレンディングを施したうえで撮像映像に重畳することが望ましい。
【0016】
表示手段3は、ユーザに視認可能な車内に設けられる。例えば、表示手段3は、インスツルメントパネル内の設けられたナビゲーション装置のディスプレイと兼用される。表示手段3は映像処理ユニット2から入力された映像信号を表示する。例えば、表示手段3は、撮像映像や、この撮像映像に重畳された各種グラフィックを表示する。
【0017】
入力手段4は、例えばスイッチやボタン、タッチパネル、ジョグダイヤルの少なくとも一つで構成される。ユーザは、入力手段4を操作して、路面からの高さ情報を入力する。入力手段4に入力された路面からの高さ情報は映像処理ユニット2に出力される。
【0018】
映像処理ユニット2は、ADコンバータ21と、信号処理部22と、ビデオメモリ23と、不揮発性メモリ24と、CPU25と、DAコンバータ26とを有する。
【0019】
ADコンバータ21は、複数のADコンバータで構成され、撮像手段1を構成する各カメラにそれぞれ接続される。ADコンバータ21は、撮像手段1の各カメラからそれぞれ撮像映像を取得してアナログデジタル変換を行い、この変換した撮像映像を信号処理部22に出力する。
【0020】
信号処理部22は、ADコンバータ21から入力された撮像映像にレンズ歪み補正処理を行う。そして、信号処理部22は、この補正した映像に視点変換処理、グラフィックの重畳処理を行う。例えば、信号処理部22は、自車両上方から路面投影モデルを用いた俯瞰映像に視点変換する。
【0021】
ビデオメモリ23は、信号処理部22に入力された撮像映像を一時記憶する。不揮発性メモリ24は、レンズ歪み補正処理に必要な補正データテーブル、視点変換処理に必要なマッピングテーブル等のデータテーブルや、自車両のグラフィックデータ、高さ情報に対応した境界線のグラフィックデータを格納する。
【0022】
CPU25は、映像処理ユニット2全体の制御を行う。例えば、CPU25は、入力手段4から入力された高さ情報に基づいて、路面からの高さに応じた自車両の死角エリアを算出する。CPU25は、算出した所定の高さにおける自車両の死角エリアと、入力手段4から入力された高さ情報に基づいて、入力された高さにおける死角エリアのグラフィックの重畳処理を信号処理部22に命令する。
【0023】
次に、CPU25が信号処理部22に行う処理を説明する。図2は、CPU25が信号処理部22に行う処理を説明するフローチャート図である。
【0024】
ステップS1に示すように、まずCPU25は、入力手段4から高さ情報を取得する。次に、ステップS2に示すように、CPU25は、この高さ情報に基づいて、CPU25は、路面からの高さに応じた死角エリアのグラフィックのアドレスを決定する。次に、ステップS3に示すように、CPU25は、ステップS2で取得した高さ情報に応じて、不揮発性メモリ24から読み出す情報のアドレスを決定する。例えば、CPU25は、ステップS1で取得した高さ情報が所定の閾値未満であるとき、不揮発性メモリ24から読み出す情報のアドレスのうち、死角エリアのグラフィックのアドレスは除かれる。この場合、CPU25は、所定時間後に再度ステップS1からの処理を繰り返す。そして、CPU25は、信号処理部22に対してステップS2で決定したアドレス情報を出力する。
【0025】
次に、信号処理部22によるグラフィック重畳処理を説明する。図3は、信号処理部が死角グラフィックを重畳する範囲をイメージで説明する図である。
【0026】
まず、ステップS11に示すように、信号処理部22は、ADコンバータ21から入力された撮像画像をビデオメモリ23に一時的に格納する。
【0027】
ステップS12に示すように、信号処理部22は、ビデオメモリ23からステップS11で一時的に格納された撮像画像を取り出す。信号処理部22は、不揮発性メモリ24に記憶されている補正データテーブルに基づきこの撮像画像に歪み補正処理を行う。そして
、信号処理部22は、この歪み補正処理を行った処理画像から表示手段3に出力するための表示映像を作成する。
【0028】
次に、ステップS13に示すように、信号処理部22は、不揮発性メモリ24から読み出したガイドライン等のグラフィックをステップS12の表示映像に重畳する。
【0029】
次に、ステップS14に示すように、信号処理部22は、ステップS3でCPU25から入力されたアドレス情報に基づいて、不揮発性メモリ24から死角エリアのグラフィックデータを読み出してステップS12の表示映像に重畳する。
【0030】
次に、ステップS15に示すように、信号処理部22は、表示映像にステップS13とステップS14において重畳した重畳映像をDAコンバータ26に出力する。表示手段3は、DAコンバータ26から入力されたこの重畳映像を表示する。
【0031】
次に、ステップS14で重畳される死角エリアのグラフィックについて説明する。
【0032】
図4(A)は路面からの高さがh1に設定されたときに信号処理部22が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図である。図4(B)は路面からの高さがh2に設定されたときに信号処理部22が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図である。図4(C)は路面からの高さがh3に設定されたときに信号処理部22が死角エリアを重畳する範囲をイメージで説明する図である。
【0033】
図4(A)〜(C)では、自車両前方と右側方にそれぞれ設けた撮像手段1a、1bにおいて、路面からの高さに応じた死角エリアが示される。この高さは、入力手段4によって設定される。また、図4(A)〜(C)では、撮像手段1a、1bのそれぞれ撮像範囲41a、41b内において、境界42近辺にある高さの立体物があった場合に、立体物に消失部分が生じる領域が示されている。図4(A)では、立体物の高さh1以上の部分について消失が生じる死角エリア43が示されている。この死角エリア43内に立体物があるとき、立体物の高さh1以上の部分には消失部分が生じている。同様に、図4(B)、(C)では、立体物の高さh2、h3以上の部分について消失が生じる死角エリア44、45がそれぞれ示されている。この死角エリア44、45内にそれぞれ立体物があるとき、立体物の高さh2、h3以上の部分にはそれぞれ消失部分が生じている。
【0034】
図4(A)〜(C)に示される3つの高さh1〜h3にそれぞれ対応する死角エリア43〜45が、信号処理部22によってステップS12の表示映像に重畳される。なお、本実施形態では任意の3つの高さh1〜h3に対する死角エリア43〜45が示されたが、入力手段4の入力によって連続的に変化する高さに応じて、死角エリアが連続的に変化して重畳されてもよい。また、入力手段4の入力によって段階的に変化する高さに応じて死角エリアが段階的に変化して重畳されもよい。また、入力手段4の入力によらず、予め定められた高さについて、予め定められた死角エリアが重畳されてもよい。
【0035】
次に、図4で示される死角エリア43〜45重畳された重畳映像が表示手段3でどのように表示されるか説明する。図5(A)は、路面からの高さがh1に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図である。図5(B)は、路面からの高さがh2に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図である。図5(C)は、路面からの高さがh3に設定されたときに表示手段に表示された映像をイメージで説明する図である。
【0036】
図5(A)〜(C)の画面には、それぞれ自車両50のグラフィックとガイドライン51のグラフィックが重畳された俯瞰映像が示されている。図4の境界42は、図5(A)
〜(C)の境界52aに対応する。この関係は、他の境界52b〜52dについても同様である。
【0037】
路面からの高さがh1に設定されたとき、図5(A)に示すように、俯瞰映像の四隅の境界52a〜52dには、死角エリア53a〜53dがそれぞれ表示される。
【0038】
路面からの高さがh2に設定されたとき、図5(B)に示すように、俯瞰映像の四隅の境界52a〜52dには、死角エリア54a〜54dがそれぞれ表示される。そして、この死角エリア54a〜54d上に死角エリア53a〜53dがそれぞれ重畳されて表示される。
【0039】
路面からの高さがh3に設定されたとき、図5(C)に示すように、俯瞰映像の四隅の境界52a〜52dには、死角エリア55a〜55dがそれぞれ表示される。そして、この死角エリア55a〜55d上に死角エリア54a〜54dがそれぞれ重畳されて表示される。さらに死角エリア54a〜54d上に死角エリア53a〜53dがそれぞれ重畳されて表示される。
【0040】
このように表示手段3に路面からの高さに応じて異なる死角エリア53〜55を表示することで、どの高さ以上の立体物が消失するかをドライバに確認させることができる。これによって、俯瞰映像において自車両と高さを有する障害物との接触の危険性をドライバに注意喚起することができる。ドライバは、表示手段3の表示映像に頼らずに後方を確認することを意識付けられるので、自車両と障害物との接触を防止することができる。
【0041】
以上のように、本発明によれば、路面からの高さに応じた障害物の存在をユーザに直感的に示して自車両と障害物との接触を防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態では入力手段4によって路面からの高さを設定したが、予め高さとこれに対応付けられた死角エリアの情報が不揮発性メモリ24に複数記憶されてもよい。例えば、信号処理部22は、不揮発性メモリ24から死角エリアの情報を読み出して、所定時間毎に図5(A)〜(C)のように死角エリアの重畳状態を変化させて表示手段3に表示してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、路面投影モデルを用いた俯瞰映像において車両などの立体物が倒れこんだ平面形状で表示されても、この立体物と自車両との衝突を防止する点で有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 撮像手段
2 映像処理ユニット
3 表示手段
4 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周囲を撮像する複数の撮像手段と、
前記撮像手段から取得した撮像映像に基づいて俯瞰映像を作成し、この俯瞰映像に死角エリアを重畳する映像処理ユニットと、
この映像処理ユニットによって死角エリアが重畳された重畳映像を表示する表示手段とを備え、
前記映像処理ユニットは、路面からの高さに応じて異なる死角エリアを前記俯瞰映像に重畳することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
路面からの高さを入力する入力手段をさらに備え、
前記映像処理ユニットは、前記入力手段によって入力された路面からの高さに応じた死角エリアを前記俯瞰映像に重畳することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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