説明

表示装置

【課題】 光取り出し効率を向上する有機EL素子を備えた表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 有機EL素子を有する画素を複数備える発光装置であって、画素は、同じ色を発する複数の発光領域と、非発光領域と、非発光領域にある反射構造と、を有し、発光領域の任意の発光位置から反射構造までの距離が発光光の伝搬距離以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の有機EL素子が配列された表示装置が盛んに研究開発されている。表示装置の複数の有機EL素子は、隔壁によってそれぞれの有機EL素子に区画されている。有機EL素子は、第一電極、発光層を含む有機化合物層、第二電極が積層された構成である。有機EL素子は、第一電極と第二電極との間に電圧が印加されることで光を発する。
【0003】
有機EL素子を備える表示装置では、発光層で生じた光のうち一部の光は、第一電極または第二電極と有機化合物層との界面等での反射により、有機EL素子外部へ取り出されずに、有機EL素子内を伝搬し、閉じ込められるという問題がある。この問題に対し、特許文献1では、隔壁が反射機能を有する構成について開示されている。この構成により、閉じ込められていた光の一部を隔壁によって反射させて、有機EL素子外部へ取り出すことができ、光取り出し効率が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−119197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、隔壁近傍以外の箇所で生じた光のうち有機EL素子内を伝搬する光は、隔壁に到達するまでに、2つの電極での反射の際に光エネルギーが吸収されて減衰する。そして、有機EL素子外部へ取り出すことができず、光取り出し効率の向上の効果が低減するという課題がある。
【0006】
本発明は、光取り出し効率を向上する有機EL素子を備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機EL素子を有する画素を複数備える発光装置であって、前記画素は、同じ色を発する複数の発光領域と、非発光領域と、前記非発光領域にある反射構造と、を有し、前記発光領域の任意の発光位置から前記反射構造までの距離が発光光の伝搬距離以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光取り出し効率を向上する有機EL素子を備えた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る表示装置の模式図。
【図2】比較例の有機EL表示装置の平面模式図。
【図3】本発明の実施形態2に係る表示装置の模式図。
【図4】本発明の実施形態3に係る表示装置の模式図。
【図5】本発明の実施形態1に係る表示装置の平面模式図の拡大図。
【図6】本発明の実施形態1に係る他の例の表示装置の平面模式図の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、図面上、各部材を認識可能な大きさとしたため、図面の縮尺は実際とは異なる。
【0011】
[実施形態1]
図1は本実施形態の有機EL表示装置1の概略図である。図1(a)は、有機EL表示装置1の概略斜視図である。有機EL表示装置1は、画素を複数備え、その複数の画素が配列された表示領域10とその外側にある外部領域11を有している。有機EL表示装置1は、R(赤),G(緑)、B(青)の三つの異なる色を発する画素100R,100G,100Bを有する。それらが、図1(a)に示すように、表示領域内に平面的に配置されている。
【0012】
図1(b)は、図1(a)の画素100R,100G,100Bを含む部分の詳細構造を示す平面模式図である。各色の画素、例えば画素100Rは、非発光領域となる隔壁によって複数の発光領域100Raに分割されている。画素100G,100Bも同様に複数の発光領域100Ga,100Baにそれぞれ分割されている。
【0013】
本発明において、有機EL素子とは、第一電極、発光層を含む有機化合物層、第二電極が積層された構造体を表わす。また本発明において、発光領域とは、基板に垂直な方向で、有機化合物層が第一電極と第二電極とに接して挟まれる領域である。また本発明において、画素の短手方向(X方向)の発光領域の長さを「発光領域幅」、画素の長手方向(Y方向)の発光領域の長さを「発光領域長さ」と呼称する。また画素とは、同一の駆動用TFTによって駆動される、単一或いは複数の発光領域のことを表わす。各発光領域は、後述する反射構造26により、その周囲を囲まれている。
【0014】
第一電極25は、画素100R,100G,100B間で分離されている。また、各画素100R,100G,100Bの第一電極25は、コンタクト部24を介して、それぞれ異なる駆動用TFTと電気的に接続されている。
【0015】
画素100Rの中の複数の発光領域100Raは、第一電極25が共通であるため、同一の駆動用TFTによって駆動される。即ち、複数の発光領域100Raが一つの画素100Rを構成する。100Ga,100Baに関しても同様である。
【0016】
図1(c)は、図1(b)のA−Bに沿った概略断面図である。有機EL表示装置1は、基板20と、基板20の上にある駆動回路21とを有している。駆動回路21は、少なくとも駆動用TFT(不図示)と配線(不図示)を含んでいる。駆動回路21の上には、駆動回路21の表面を平坦化するための平坦化層22があり、平坦化層22の上に側部層23が配置されている。平坦化層22、及び側部層23の上には第一電極25が画素ごとに配置されている。第一電極25は、コンタクト部24を介して駆動回路21の一部と電気的に接続されている。側部層23及び第一電極25により、反射構造26が構成される。反射構造26は、側部層23に傾斜面を有しているので、傾斜面上の第1電極25によって発光領域で発せられた光のうち基板20の面内方向に向かう光を反射して、有機EL素子外部に取り出すための光取り出し構造となる。
【0017】
第一電極25の上に、側部層23上の第一電極25及びコンタクト部24の第一電極25を被覆するように隔壁27が配置されている。隔壁27の開口部によって、発光領域100Raの面積が規定される。また、この隔壁27は、第一電極25のエッジ部分を覆うことにより、第一電極25と表示領域10全域に形成される第二電極29とが短絡するのを防ぐことができる。
【0018】
第一電極25の上には、少なくとも発光層を有する有機化合物層28が配置され、有機化合物層28の上に表示領域10全域に渡って第二電極29が配置されている。第一電極25と有機化合物層28と第二電極29によって有機EL素子が構成されている。なお、第一電極25上の隔壁27が配置されているため、反射構造26上の有機化合物層28は発光しない。つまり、反射構造26は非発光領域に配置されている。
【0019】
なお、第二電極29の上には、有機EL素子を水分や酸素から保護するための保護部材(不図示)が形成されていてもよい。
【0020】
図1(c)では、図1(b)のA−Bに沿った画素100Rの断面構造を示したが、画素100G,100Bに関しても同様である。
【0021】
以下に、画素間の構造を説明する。平坦化層22の上に側部層23が配置され、その上には第一電極25が配置されている。平坦化層22の上に配置された側部層23は、画素間において連続して配置されていてもよいし、分離して配置されていてもよい。また、側部層23は、画素内で連続して配置されていても良いし、分離して配置されていてもよい。隔壁27は、第一電極25のエッジ部を被覆していれば、画素間において連続して配置されていてもよいし、分離して配置されていてもよい。また、隔壁27は、側部層23上の第一電極25を覆う構成である。
【0022】
本発明の有機EL表示装置1は、各画素が隔壁27によって複数の発光領域に分割され、発光領域が反射構造26によって囲まれ、発光領域の任意の発光位置から反射構造26までの距離が発光光の伝搬距離以下である構成である。伝搬距離とは、発光位置で発生し有機EL素子内を伝搬した光の強度が発光位置での強度に対して半減する位置と発光位置との間の距離を表す。有機EL素子内を伝搬する光は、主として第一電極25と有機化合物層28との界面、あるいは第二電極29と有機化合物層28との界面で反射する際に吸収される。吸収率は、第一電極25、第二電極29、有機化合物層28の材料によって決まる。
【0023】
発光領域の任意の発光位置から反射構造26までの距離とは、発光領域の任意の発光位置から最も近い反射構造までの距離をいう。なお、図5は、画素100Gの平面模式図の一部を拡大した図である。図5において、発光位置Cと発光位置Dから反射構造までの距離がそれぞれ、実線の矢印、破線の矢印で示されている。本実施形態では、この実線の矢印、破線の矢印の長さが伝搬距離以下となっている。なお、反射構造は、図1(b)のように、発光領域を囲うように一体で配置されていてもよいし、図6のように、発光領域の各辺にのみ配置、つまり発光領域の角では分離されていてもよい。図6の構成において、発光位置Eと発光位置Fから反射構造までの距離がそれぞれ、実線の矢印、破線の矢印で示されている。
【0024】
また、発光領域の任意の発光位置から反射構造26までの距離が発光光の伝搬距離以下である構成であれば、図1(b)中のY方向(画素の長手方向)にある反射構造26の間の距離は伝搬距離の2倍以下ということになる。また、図1(b)中のY方向において、1つの発光領域の発光領域長さは伝搬距離の2倍以下となっている。
【0025】
上記の構成とすることによって、発光領域内の全ての発光位置からの光が、反射構造26まで伝搬距離以内で到達することができる。その結果、発光領域の全域から、基板の面内方向に伝搬する光を反射構造26により有機EL素子外部の方向へ反射して取り出すことができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0026】
なお、本発明において、光取り出し効率とは、有機EL素子に供給した電気エネルギーに対して、有機EL素子外部に取り出された光エネルギーの比、即ち外部量子効率を意味する。有機EL素子外部に取り出された光のエネルギーは積分球を用いて測定する。
【0027】
上述したように、有機EL素子内を伝搬する光は、伝搬する際に、主として第一電極25と有機化合物層28との界面、あるいは第二電極29と有機化合物層28との界面で反射する際に吸収される。この吸収されるエネルギーは、第一電極25や第二電極29などの材料に依存する。そして、後述するような第一電極25や第二電極29の材料は、一般に可視光領域において短波長の方が長波長よりも光エネルギーの吸収が大きい。このため、短波長側の光ほど、伝搬中の光エネルギーの減衰が大きくなるので伝搬距離が短くなる。このため、画素の発する色によって、発光領域の発光領域長さを異ならせてもよい。
【0028】
より具体的には、光の波長の大小関係がR>G>Bであるので、図1(b)に示すように、発光領域長さを、長波長の光を発する画素100Rで最も長く、短波長の光を発する画素100Bで最も短い構成としてもよい。
【0029】
以下に、本実施形態の有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0030】
まず、基板20上に駆動回路21が形成される。駆動回路21は、Alなどの金属配線、ポリシリコン或いはアモルファスシリコンなどを用いたTFT等で構成されている。TFT等は、公知のプロセスを用いて形成することができる。
【0031】
次に、駆動回路21上に平坦化層22が形成される。平坦化層22は、SiN、SiOなどの無機膜、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂膜を材料として用いることができ、スパッタリング法、CVD法、スピンコート法などで形成される。そしてフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングされる。このパターニングにより、平坦化層22にコンタクト部24が形成される。
【0032】
特に、トップエミッション型で、かつ、アクティブマトリクス型の有機EL素子を用いる場合には、平坦化層は樹脂膜を用いることが望ましく、その膜厚は1.0μm以上とすることが望ましい。
【0033】
次に、平坦化層22上に側部層23が形成される。側部層23は、上述した平坦化層22と同様の材料、製法を用いることができ、樹脂膜を用いることが望ましい。また、側部層側面231と平坦化層22のなす角度(以下、側部層23のテーパ角と呼称する)は、光取り出し効率向上の観点から、45°乃至80°であることが望ましい。また、膜厚は0.5μm乃至3.0μmが望ましい。また、図1(c)に示す側部層23の画素のY方向の幅Wは、10μm以下が望ましい。
【0034】
次に、平坦化層22及び側部層23上に第一電極25が形成される。第一電極25は、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の金属或いはそれらの合金からなる金属膜をスパッタリング法などで成膜し、フォトリソグラフィー法などでパターニングすることで形成される。金属膜の膜厚は、その表面での反射率が、可視光領域(波長400nm乃至780nm)において40%以上となるように、50nm以上であることが望ましい。また、第一電極25は、上記の金属膜の上に、酸化インジウム錫や酸化インジウム亜鉛等の透明酸化物導電膜を積層する構成であってもよい。なお、透明とは、可視光領域において、光透過率が40%以上であることをいう。第一電極25は、コンタクト部24を介して駆動回路21の一部と電気的に接続される。また、側部層23と第一電極25により、反射構造26が構成される。
【0035】
次に、コンタクト部24と、側部層23上の第一電極25を覆い、平坦化層22上の第一電極25上に開口部を設けるように、隔壁27が形成される。このため、反射構造26の配置される領域は非発光領域となる。隔壁27は、上述した平坦化層22、側部層23と同様の材料、製法を用いることができ、樹脂膜を用いることが望ましく、その膜厚は0.3μm以上が望ましい。
【0036】
次に、隔壁27上に、少なくとも発光層を含む有機化合物層28を形成する。有機化合物層28は、公知の材料を用いてマスク蒸着法、インクジェット法などで形成することができる。有機化合物層28は、発光層の他に、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、その他の有機機能層を含んでいてもよい。なお、有機化合物層28は隣の画素どうしが異なる発光色の場合には、少なくとも発光層は連続しないように形成する必要がある。例えば、発光層の成膜をマスク蒸着法で行う場合には、発光層の成膜領域を、画素に対応した領域に開口部を設けたシャドーマスクを用いて規定することができる。
【0037】
次に、有機化合物層28の上に、表示領域10全域に渡って第二電極29が形成される。第二電極29は、酸化インジウム錫や酸化インジウム亜鉛等の透明酸化物導電膜、或いはAl、Agなどの金属或いは合金からなる金属材料を膜厚5nm以上20nm以下で形成される金属膜を用いることができる。また、第二電極29は、金属材料どうしの積層構成、あるいは金属材料と透明酸化物導電膜の積層構成であってもよい。第二電極29は、スパッタ法、真空蒸着法などで形成される。そして、第二電極29は、表示領域10の外の外部領域11で、コンタクト部を介して駆動回路21と電気的に接続されるように形成される。
【0038】
また、本発明の有機EL表示装置において、第二電極29の上に、有機EL素子を水分や酸素から保護するための封止部材が形成されていてもよい。封止部材としては、例えばSiN、SiO2等の無機材料からなる無機層が好ましいが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、材料はこれに限定されるものではない。封止部材の構成として、無機層の単層構成であってもよいし、無機層と有機樹脂等からなる有機層が積層された構成であってもよい。この積層構成としては、無機層の上層に有機層が形成され、さらにその上に無機層が形成される構成でもよい。この無機層は、スパッタリング法やプラズマCVD法等の手法により形成するのが、防湿性の面から好ましい。また、これらの層の上部にガラス基板や封止缶等の部材を配設してもよい。
【0039】
[実施形態2]
図3は、本実施形態の有機EL表示装置の平面模式図である。実施形態1の有機EL表示装置は、画素100R,100G,100Bの発光領域100Ra,100Ga,100Baがそれぞれ、発光領域長さに関して異なる構成である。一方、本実施形態の有機EL表示装置では、発光領域長さを発光領域100Ra,100Ga,100Baで同じにする構成である。なお、発光領域の任意の発光位置から最も近い反射構造までの距離が発光光の伝搬距離以下である構成は変わらない。また、図3では、発光領域幅も発光領域100Ra,100Ga,100Baで同じである。
【0040】
実施形態1の構成では、発光領域長さ、つまり、隔壁27の開口部のY方向の幅と、図1(c)に示す側部層23の線間部Sの長さとが各色の画素によって異なっている。従って、Y方向において、パターニング時に、画素内で隔壁27及び側部層23を除去する面積が、各色によって異なっている。側部層23を樹脂膜で形成する場合、そのパターニングにはフォトリソグラフィー法を用いるのが望ましい。そして、除去面積が異なると、現像液の浸入の仕方が変わり、除去面積の大きい画素100Rの側部層23のテーパ角が、他の画素のそれよりも小さく形成される。よって、テーパ角が画素100R,100G,100Bで異なっている。このため、場合によっては、画素100Raのテーパ角、または画素100Baのテーパ角が好ましい45°乃至80°の範囲から外れてしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態の構成では、図3に示すように、各色の画素において、発光領域幅、発光領域長さを同じにし、X方向、Y方向において、パターニング時に画素内で側部層23を除去する面積を同じにしている。このため、側部層23を樹脂膜で形成する場合に、側部層23のテーパ角を均一に形成することができる。これにより、各色の画素の側部層23のテーパ角が望ましい範囲から外れる可能性を低減することができ、歩留り向上の点で好ましい。なお、発光領域長さを同じにする場合、最も伝搬距離の短い画素100Bの発光領域長さに他の色の画素も合わせるのがよい。このようにすることで、発光領域の任意の発光位置から最も近い反射構造までの距離を、各色の画素について伝搬距離以下とすることができる。
【0042】
[その他の実施形態]
図4は本実施形態の有機EL表示装置の平面模式図である。本実施形態の有機EL表示装置は、実施形態1と異なり、発光領域のX方向(画素の短手方向)において各画素の発光領域の発光領域幅が色ごとに異なっている構成である。この点以外は、実施形態1と同じ構成である。この構成により、特定の色の画素の寿命特性を改善することができる。
【0043】
一般的に、青色を発する有機EL素子は、赤色又は緑色を発する有機EL素子よりも、寿命が短い。つまり、図2で示す有機EL表示装置では、赤色を発する画素100R、緑色を発する画素100Gの寿命よりも青色を発する画素100Bの寿命の方が短い。
【0044】
一方、本発明のように画素内を複数の発光領域に分割するように反射構造を設ける場合には、図2で示す従来の有機EL表示装置に比べて、画素の発光領域の総面積は小さくなる。このため、本発明の有機EL表示装置の例えば画素100Rと、図2で示す有機EL表示装置の画素100Rとで、同じ電流が供給された場合、単位面積あたりに有機EL素子に通電される電流密度が異なる。具体的には、発光領域の総面積が小さい本発明の有機EL表示装置の画素100Rに流れる電流密度の方が大きくなる。このため、本発明の有機EL表示装置の画素100Rは、図2で示す有機EL表示装置の画素100Rに対して、寿命が短くなる。その他の色の画素でも同様である。
【0045】
特に、実施形態1の有機EL表示装置の構成では、画素の発光領域の総面積は画素100R,100G,100Bの順で小さくなっているので、図2で示す有機EL表示装置の各色の画素に対する寿命の変化は、青色の画素100Bが最も大きくなる。つまり、実施形態1の有機EL表示装置の構成では、図2で示す有機EL表示装置に比べて、より、各色の画素の寿命の差が大きくなってしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態の有機EL表示装置では、画素100R,100G,100Bの順で発光領域幅を大きくしている。この構成により、特に画素100Bの寿命を改善することができる。また、実施形態1の有機EL表示装置よりも各色の画素の寿命の差を小さくすることができる。
【0047】
なお、材料によっては、青色以外の有機EL素子の方が寿命が短くなる場合も考えられる。この場合には、寿命が短い有機EL素子を有する画素の発光領域の総面積を最も大きくすればよい。
【0048】
<実施例1>
以下、実施形態1の有機EL表示装置の具体的な例を述べる。なお、本実施例に用いた材料や素子構成が、本発明を限定するものではない。
【0049】
本実施例では、図1(b)のX方向(短手方向)の画素100R,100G、100Bの三画素分の画素ピッチを94.5μmとし、画素100R,100G、100B間の画素ピッチをそれぞれ31.5μmとした。また、各画素のY方向(長手方向)の画素ピッチを94.5μmとして、有機EL表示装置を作成した。
【0050】
まず、基板20上に駆動回路21を形成した。次に、駆動回路21上に、コンタクト部24を有したポリイミド樹脂の平坦化層22を膜厚2.0μmで形成した。
【0051】
次に、平坦化層22上にポリイミド樹脂を膜厚1.2μmで塗布し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングし、焼成し側部層23を形成した。側部層23の膜厚は1.0μmであり、テーパ角が60°、図1(c)に示す幅Wが画素100R,100G,100Bとも3.0μmであった。
【0052】
次に、平坦化層22及び側部層23上に、スパッタリング法を用いてAgを150nm、酸化インジウム亜鉛を10nm成膜し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングして第一電極25および反射構造26を形成した。
【0053】
次に、コンタクト部24と、側部層23上の第一電極25を覆い、平坦化層22上の第一電極25上に、画素100R、画素100G、画素100Bでそれぞれ以下の大きさの開口部を設けるように、隔壁27を形成した。すなわち、画素100RではX方向に幅20μm、Y方向に幅4.0μmの開口部、画素100GではX方向に幅20μm、Y方向に幅6.0μmの開口部、画素100BではX方向に幅20μm、Y方向に幅4.0μmの開口部であった。隔壁27は、ポリイミド樹脂を膜厚0.7μmで塗布し、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングし、焼成後の膜厚が0.5μmであった。
【0054】
次に、第一電極25および隔壁27上に、有機化合物層28を、公知の材料をマスク蒸着法を用いて形成した。有機化合物層28は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の機能層を積層して形成した。特に、発光層は、画素100Rでは公知の赤色発光材料、画素100Gでは公知の緑色発光材料、画素100Bでは公知の青色発光材料を用いて形成した。
【0055】
次に、有機化合物層28の上に、スパッタリング法を用いて表示領域10全域に渡って酸化インジウム亜鉛を30nm成膜し、第二電極29を形成した。
【0056】
次に、第二電極29までを形成した基板に、窒素雰囲気下で以下のようにキャップガラスによる封止部材を形成した。表示領域10よりも外側に、表示領域10を平面的に囲むようにUV硬化樹脂をディスペンサで描画し、この描画領域に0.7mm厚のキャップガラスを貼り合わせた。このキャップガラスは、表示領域10の有機EL素子と接触しないよう、表示領域10と対応する領域に0.3mmの彫りこみ部が形成されている。そして、表示領域10を遮光マスクで覆い、表示領域にUV照射されないようにした上で基板にUV照射を行い、UV硬化樹脂を硬化した。
【0057】
本実施例では、画素100Rでは、各発光領域100Raの発光領域幅を20μm、発光領域長さを9.0μmとした。画素100Gでは、各発光領域100Gaの発光領域幅を20μm、発光領域長さを6.0μmとした。画素100Bでは、各発光領域100Baの発光領域幅を20μm、発光領域長さを4.0μmとした。また、本実施例では、各発光領域の周囲が反射構造26で囲われた構成であった。
【0058】
本実施例の画素100Rの各発光領域100Raからの発光光の伝搬距離は、5.0μmであった。また、画素100Gの各発光領域100Gaからの発光光の伝搬距離は、3.5μmであった。さらに、画素100Bの各発光領域100Baからの発光光の伝搬距離は、2.5μmであった。このため、図1(b)の発光領域長さが、各画素において発光光の伝搬距離の2倍以下となっていた。つまり、各画素において発光領域の任意の発光位置から反射構造26までの距離が伝搬距離以下であった。このため、発光領域の全ての点からの発光光が、反射構造26まで伝搬距離以内で到達することができると考えられる。
【0059】
<実施例2>
以下、実施形態2の有機EL表示装置の具体的な例を述べる。なお、実施例1とは、画素100R,100G,100Bのそれぞれの発光領域の発光領域長さが同じである点が異なり、その他の構成、製造方法は同じである。
【0060】
本実施例では、図3のX方向の画素100R,100G、100Bの三画素分の画素ピッチを94.5μmとし、画素100R,100G、100B間の画素ピッチをそれぞれ31.5μmとした。また、各画素のY方向の画素ピッチを94.5μmとした。また、各色の画素の各発光領域の発光領域幅を20μm、発光領域長さを4.0μmとした。
【0061】
本実施例では、発光領域100Ra、100Ga、100Baからの発光光の伝搬距離は、それぞれ実施例1と同じく5.0μm、3.5μm、2.5μmであった。
【0062】
このため、本実施例の構成でも、図3のY方向に関して,各発光領域の発光領域長さが、発光光の伝搬距離の2倍以下となっていた。このため、本実施例の各発光領域では、発光領域の全ての点からの発光光が、反射構造26まで伝搬距離以内で到達することができると考えられる。
【0063】
また、本実施例の構成では、側部層23の画素内の除去面積が各色の画素の発光領域について同じであり、側部層23を樹脂膜で形成する場合に、側部層23のテーパ角を均一に形成することができた。
【0064】
<比較例1>
図2に実施例1の比較例となる有機EL表示装置を示す。本比較例の有機EL表示装置は、各画素がそれぞれ複数の発光領域に分割されていない点を除いて、実施例1の有機EL表示装置と同様の構成であり、同様の製造方法で作成されたものである。図2(a)は、本比較例の有機EL表示装置の画素100R、100G、100Bを含む部分の詳細構造を示す平面図である。各画素は、それぞれ単一の発光領域100Rb、100Gb、100Bbから形成され、各発光領域は反射構造26によりその周囲を囲まれている。図2(b)は、図2(a)のA−Bに沿った概略断面図である。尚、図2の有機EL表示装置において、図1で示される有機EL表示装置に含まれている部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0065】
本比較例では、図2(a)のX方向の画素100R,100G、100Bの三画素分の画素ピッチを94.5μm、画素100R,100G、100B間の画素ピッチをそれぞれ31.5μm、各画素のY方向の画素ピッチを94.5μmと,実施例1と同様にした。また、各画素100R、100G、100Bに関し、発光領域100Rb、100Gb、100Bbの発光領域幅を20μm、発光領域長さを64μmとした。
【0066】
本比較例では、発光領域100Rb、100Gb、100Bbからの発光光の伝搬距離は、それぞれ5.0μm、3.5μm、2.5μmであった。このため、各画素とも図2(a)の発光領域幅、発光領域長さが発光光の伝搬距離の2倍以下の距離となっていなかった。つまり、各画素の発光領域のうち、発光領域の発光位置から反射構造26までの距離が伝搬距離以下とはならない領域が存在すると考えられる。
【0067】
<評価>
実施例1,2の発光領域100Ra,100Ga,100Ba、比較例1の発光領域100Rb,100Gb,100Bbの光取り出し効率を以下のように測定した。すなわち、実施例1,2、比較例1のそれぞれの発光領域に、電流を供給し、前述のように有機EL素子外部に取り出された光のエネルギーを積分球を用いて測定した。電流の大きさは、電流密度25mA/cmであった。
【0068】
実施例1,2の光取り出し効率が、比較例1での各色の光取り出し効率を1.0として、表1に示されている。
【0069】
【表1】

【0070】
このように実施例1,2では、比較例1よりも各色の光取り出し効率が向上した。
【符号の説明】
【0071】
26 反射構造
100R,100G,100B 画素
100Ra,100Ga,100Ba 発光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を有する画素を複数備える発光装置であって、
前記画素は、同じ色を発する複数の発光領域と、非発光領域と、前記非発光領域にある反射構造と、を有し、
前記発光領域の任意の発光位置から前記反射構造までの距離が発光光の伝搬距離以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
長波長の光を発する画素と、短波長の光を発する画素と、を有し、
前記長波長の光を発する画素の方が前記短波長の光を発する画素よりも、発光領域長さが大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置であって、
長波長の光を発する画素と、短波長の光を発する画素と、を有し、
前記長波長の光を発する画素と前記短波長の光を発する画素とで、発光領域長さが同じであることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置であって、
長波長の光を発する画素と、短波長の光を発する画素と、を有し、
前記長波長の光を発する画素と前記短波長の光を発する画素のうち、寿命が短い有機EL素子を有する画素の方が他方の画素より発光領域の総面積が大きいことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−221811(P2012−221811A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87629(P2011−87629)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】