説明

表示装置

【課題】立体像をユーザに提供できるようにする。
【解決手段】回転軸を有する回転台と、回転軸を回転中心として、回転台を回転させる駆動部と、回転部に取り付けられ、複数の発光素子がマトリクス状に配設されることにより形成された発光面を有する発光素子アレイとが備えられている。この発光素子アレイは、平面形状に構成され、発光面には、発光素子からの所定の方向以外の光を遮光する指向性制御ユニットが装着されている。指向性制御ユニットが装着されていることにより、所定の方向に対してのみ発光素子アレイからの発光が届かないように制御される。本技術は、立体像を表示する立体像表示装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、表示装置に関する。詳しくは、立体的に画像を表示するのに適した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を全周囲に渡って撮像したり、コンピュータにより作成したりした立体画像表示用の2次元映像情報等に基づいて被写体の全周囲に渡る立体画像を再生する光線再生方式の立体像表示装置に関しての提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、立体画像表示装置が開示されている。この立体画像表示装置によれば、光線束割り当て手段及び円筒状の2次元パターン表示手段を備える。光線束割り当て手段は、観測者から見て凸状の曲面を有する表示部の前面あるいは背面に設けられる。当該手段は、複数の開口部が形成されるか、あるいは、レンズがアレイ状に形成された曲面を有し、開口部あるいはレンズのそれぞれに表示部の複数の画素からの光線束が割り当てられる。2次元パターン表示手段は、2次元パターンを表示部に表示するようになされる。
【0004】
この立体画像表示装置によれば、フルモーション動画表示が容易な立体画像の画像マッピングを効率的に実行することができ、視点位置を変えても立体画像が破綻することなく、かつ、高い解像度で立体画像を表示できるというものである。
【0005】
また、特許文献2には、発光素子を棒状発光体に多数列をなして並べ、発光体をらせん上に配置して表示体を構成し、その表示体を高速回転することで、立体像を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−177709号公報
【特許文献2】特開2007−226013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に見られる立体画像表示装置によれば、観測者から見て凸状の曲面を有する表示部の前面あるいは背面に設けられ、複数の開口部が形成されるか、あるいは、レンズがアレイ状に形成された曲面を有する光線束割り当て手段を備える。開口部あるいはレンズのそれぞれに表示部の複数の画素からの光線束が割り当てられるので、実用的な画質が得られない可能性が有り、画質の向上が望まれている。
【0008】
特許文献2では、発光体をらせん状に配置した表示体を回転させることで、立体像を提供するが、点光源の時分割による3次元分布形成であり、マトリクス表示体の概念、視点生成の概念、視点における2次元画像の走査表示の概念はない。特許文献2によれば、3次元的に配置された発光体を発光させることで、3次元を実現するため、2次元の画像を全周囲から見えるように提供することは困難である。また、信号処理が複雑になる可能性がある。
【0009】
立体像を提供する際、立体表示機構を複雑化することなく、立体画像を全周囲から再現性良く視認できるようにすることが望まれている。
【0010】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、立体像をユーザに提供し、その立体像を再現性良く視認できるようにすることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術の一側面の表示装置は、回転軸を有する回転部と、前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、前記回転部に取り付けられ、複数の表示素子が配設される表示部とを備え、前記表示部には、前記表示素子から出射される光の方向を制御する指向性部材が装着される。
【0012】
前記指向性部材は、前記表示素子からの所定の方向以外の光を遮光するようにすることができる。
【0013】
前記表示部は、複数のブロックを有し、前記各ブロックにおいて、前記表示素子は線順次駆動されるようにすることができる。
【0014】
前記表示部は、複数のブロックを有し、前記各ブロックは、所定の角度を有して配されているようにすることができる。
【0015】
前記表示部は、複数のブロックを有し、前記複数のブロックのそれぞれで提供される画像から1枚の画像が形成されるようにすることができる。
【0016】
前記表示部の外側に配され、回転しない外装体をさらに有し、前記外装体は前記表示部からの光を遮光する遮光部を備え、前記遮光部によって遮光されている間に、表示部の表示の切り換えを行うようにすることができる。
【0017】
前記表示部における表示の切り換えの間、前記表示部を発光しないように制御するようにすることができる。
【0018】
前記表示部は、複数の方向に異なる画像を提供するようにすることができる。
【0019】
前記指向性部材は、前記表示素子の中心を焦点とする所定の形状で形成され、縦に列状に形成され、前記表示素子からの出射光の方向を制限する形状とされるようにすることができる。
【0020】
前記指向性部材は、各層でピッチの異なる遮光領域が複数の層に亘って設けられた形状とされるようにすることができる。
【0021】
本技術の一側面の表示装置においては、回転軸を有する回転部と、回転軸を回転中心として、回転部を回転させる駆動部と、回転部に取り付けられ、複数の表示素子が配設される表示部が備えられ、表示部には、表示素子から出射される光の方向を制御する指向性部材が装着されている。
【発明の効果】
【0022】
本技術の一側面によれば、立体像をユーザに提供し、その立体像を再現性良く視認できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態における表示装置の構成を示す図である。
【図2】表示装置の内部構成を示す図である。
【図3】2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図4】2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図5】表示装置の動作について説明するための図である。
【図6】画像の提供の仕方について説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態における表示装置の構成を示す図である。
【図9】画像の提供の仕方について説明するための図である。
【図10】2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図11】第3の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図12】画像の提供の仕方について説明するための図である。
【図13】第4の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図14】画像の表示のタイミングについて説明するための図である。
【図15】画像の提供の仕方について説明するための図である。
【図16】第5の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図17】輝度制御により書き込み時間を得る場合について説明するための図である。
【図18】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図19】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図20】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図21】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図22】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図23】指向性制御ユニットについて説明するための図である。
【図24】第6の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成について説明するための図である。
【図25】画像の提供の仕方について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
[立体像表示装置の構成について]
図1は、立体像表示装置10の構成例を示す斜視図である。また、図2は、立体像表示装置10の組立例を示す斜視図である。図1および図2を参照し、立体像表示装置10の構造について説明する。立体像表示装置10は、3次元で動画像や静止画像をユーザに提供する。また、3次元に係わらず、2次元の動画像や静止画像をユーザに提供することもできる。また、立体像表示装置10は、その周りの360度の視点の範囲内に、画像を認識できる領域があり、複数の視点(多視点)において画像を提供できる表示装置である。
【0026】
以下の説明においては、立体像表示装置10は、被写体を全周囲に渡って撮像したり、コンピュータにより作成されたりした立体画像表示用の2次元映像情報等(以下単に映像データDinという)に基づいて被写体の全周囲に渡る立体像を再生するものである場合を例に挙げて説明をする。
【0027】
図1、図2に示す立体像表示装置10は、光線再生方式の立体像表示装置の一例を構成し、2次元発光素子アレイ101、スリット付きの回転部104及び駆動機構付きの設置架台105を備えている。回転部104は、スリット付きの外装体41及び、吸気口付きの回転台42を有する。回転台42上には、外装体41が取り付けられる。回転台42は、円盤状を成しており、その中心位置には回転軸103が設けられている。
【0028】
回転軸103は、回転台42の回転中心とされる。また、回転軸103は、外装体41の回転中心にもなされている。以下の説明において、回転部104の回転軸103との記載をするが、回転軸103は、回転台42と外装体41の回転軸である。
【0029】
回転台42の所定の位置には吸気口106が設けられ、外装体41の内側へ空気を取り込むように構成されている。回転台42上の外装体41の内側には、所定の形状を有した1以上の2次元発光素子アレイ101が備えられている。2次元発光素子アレイ101は、例えば、m行×n列個の発光素子がマトリクス状に配列されたものである。発光素子には、発光ダイオードや、レーザダイオード、有機ELなどの自発光素子を用いることができる。
【0030】
2次元発光素子アレイ101は、回転部104の回転に応じて複数の発光素子が発光し、かつ、立体画像用の映像データDinに基づいて発光制御されるようになっている。2次元発光素子アレイ101は、例えば、プリント配線基板を湾曲状(例えば円弧状)に切り欠いた小口面に、複数の発光素子をライン状に配設(実装)した1次元発光素子基板#1を回転軸103に沿って複数枚積層した積層構造を有する。このように構成すると、曲面形状(例えば円弧状)の発光面を有した2次元発光素子アレイ101を容易に構成できるようになる。この形態を、第1の実施の形態として説明する。
【0031】
回転台42上の2次元発光素子アレイ101を覆うように取り付けられた外装体41は、所定の口径φ及び所定の高さHを有した円筒状で構成されている。外装体41の周面の所定の位置にはスリット102が設けられる。スリット102は、外装体41の周面において、回転軸103に平行する方向に穿設され、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方に固定され、光の放射角度を所定の範囲に制限する。
【0032】
外装体41の天板部位はファン構造とされ、回転台42の吸気口106から取り入れた冷却用の空気を外部へ排気するように構成される。例えば、外装体41の天板部位(上部)に、冷却用の羽根部材の一例となるブレード等のわずかなファン部107(排気口)が設けられ、回転動作を利用して空気の流れが作り出され、2次元発光素子アレイ101やその駆動回路から発生する熱が強制排気される。
【0033】
設置架台105は、回転台42を回転自在に支持する部分である。設置架台105の上部には、図示しない軸受け部が設けられる。軸受け部は回転軸103を回転自在に係合すると共に、回転部104を支持する。設置架台105の内部にはモータ52が設けられ、回転台42を所定の回転(変調)速度で回転するように構成される。例えば、回転軸103の下端には、直結方式のACモータ等が係合される。モータ52は、回転力を回転軸103に直接伝達し、回転軸103が回転することで、回転部104が所定の変調速度で回転される構成とされる。
【0034】
図1、図2に示した方式においては、回転部104に対して電力や映像データDinを送る際に、スリップリング51を介して送られる。スリップリング51は、固定側部品と回転側部品とに区分される。回転側部品は回転軸103に取り付けられる。固定側部品にはハーネス53(配線ケーブル)が接続される。回転側部品には他のハーネス54を介して2次元発光素子アレイ101が接続される。固定側部品と回転側部品との間は、図示しない摺動子が環状体に電気的に接触する構造となされている。摺動子は固定側部品または回転側部品を構成し、環状体は回転側部品または固定側部品を構成する。この構造により、設置架台105内において、外部から供給される電力や映像データDinが、スリップリング51を介して2次元発光素子アレイ101に伝送されるようになる。
【0035】
図3は、1次元発光素子基板#1の構成例を示す図である。1次元発光素子基板#1は、図示しない銀箔基板をパターニングして配線パターンを形成し、配線パターンが形成されたプリント配線基板31の外観をY形状に切断し、その内側を湾曲状(例えば円弧状)に切り欠くことで形成されている。
【0036】
この例では、湾曲状部位の反対側に配線構造のコネクタ34が形成される。さらに、1次元発光素子基板#kのプリント配線基板31の両辺に位置決め用の孔部32,33が形成される。外観がY形状に、その内側が湾曲状に切り欠かれたプリント配線基板31にシリアルパラレル変換用とドライバ用のIC35(半導体集積回路装置)が実装される。次いで、IC35が実装されたプリント配線基板31の湾曲状の織部または小口面に、j行個の発光素子20jがライン状に配設される。さらにライン状のレンズ部材109が発光素子20jの前面に配設されて1次元発光素子基板#1(基板)が形成される。
【0037】
このような1次元発光素子基板#1がn枚分だけ準備される。n枚の1次元発光素子基板#1を積層してm行×n列の2次元発光素子アレイ101を形成するためである。図4は、k枚の1次元発光素子基板#k(k=1〜n)の積層例を示す斜視図である。この例では、1次元発光素子基板#kを必要な枚数だけ積層して、j行個の発光素子20jをライン状に配設した曲面形状の2次元発光素子アレイ101が製造される。
【0038】
このようにして構成される2次元発光素子アレイ101は、図2に示した回転部104の所定の位置、この例では、回転台42上に取り付けられる。このとき、回転台42上に突出する棒状の位置決めピン83に、k枚の1次元発光素子基板#kのプリント配線基板の孔部が差し込まれると、各々の1次元発光素子基板#kが自己整合的に位置決めされた状態とされる。この状態が維持されるように、k枚の1次元発光素子基板#1〜#nが回転軸103に沿って積層されるように取り付けられる。
【0039】
この例では、所定の基板に実装された接続基板11が、回転台42上に立設される。接続基板11には、1次元発光素子基板#1〜#nの配線構造のコネクタと接続するための差し込み構造のコネクタが設けられる。上述の接続基板11の差し込み構造のコネクタに1次元発光素子基板#1〜#nの配線構造のコネクタが嵌合され、k枚の1次元発光素子基板#1〜#nが接続基板11に接続される。
【0040】
また、曲面形状の発光面(凹面側)がスリット102の位置に向くように、回転部104の回転軸103と、外装体41のスリット102との間に2次元発光素子アレイ101が配置される。2次元発光素子アレイ101は、スリップリング51の回転側部品からのハーネス54に接続される。視聴者検出センサ81が、外装体41の内部から外部を見通せる位置に取り付けられている。視聴者検出センサ81は、アーム部材82を介して上述の接続基板11に取り付けられる。視聴者検出センサ81はアーム部材82の一端に取り付けられ、モータ52によって回転される回転部104の外部で、当該立体像を視聴する視聴者を検出して、視聴有無を判別する際に使用されるようにすることができるが、このような検出が必要ない場合には、視聴者検出センサ81を備えない構成とすることもできる。
【0041】
回転台42上に2次元発光素子アレイ101が取り付けられると、回転台42上の2次元発光素子アレイ101を覆うように外装体41が取り付けられる。このとき、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方にスリット102が固定されることで、光の放射角度を所定の範囲に制限できるようになる。これにより、外装体41の周面のスリット102と、その内側の2次元発光素子アレイ101とにより発光ユニットUIを構成できるようになる。
【0042】
他方で、回転台42を回転自在に支持するための設置架台105が作成される。この例で、設置架台105の上部にスリップリング51を設けると共に、図示しない軸受け部が実装される。軸受け部は回転軸103を回転自在に係合する共に、回転部104を支持するようになる。設置架台105内にはスリップリング51の他に、モータ52や制御部55、I/F基板56、電源部57等が実装される。モータ52は、回転軸103に直結される。
【0043】
制御部55及び電源部57はハーネス53を介してスリップリング51の固定側部品に接続される。これにより、設置架台105内において、外部から供給される電力や映像データD1nが、スリップリング51を介して2次元発光素子アレイ101に伝送できるように構成される。設置架台105が準備できたら、2次元発光素子アレイ101が取り付けられた回転部104が設置架台105に取り付けられる。これにより、立体像表示装置10が完成する。
【0044】
図5は、立体像表示装置10の動作例を示す回転軸方向から見下ろした複式図である。図中、レンズ部材109は省略している。図5に示す立体像表示装置10は光線再生方式を採用しており、回転部104が回転軸103を回転中心として矢印R(図1参照)の方向に、あるいは、その逆の方向に回転する構造となっている。
【0045】
立体像表示装置10では、2次元発光素子アレイ101の発光面の前方の外装体41に、回転軸103に平行なスリット102が設けられ、2次元発光素子アレイ101から出射した光が、このスリット部位以外から漏れない構造を採っている。このスリット構造により、2次元発光素子アレイ101の各発光素子201〜212から出射された光がスリット102より左右方向の放射角度が大きく制限される。
【0046】
この例では、発光素子201〜212の数をm=12行個としているが幾つでもよい。この12個の発光素子201〜212によって、回転軸103を基準にして結像する立体画像の光は、回転部104の内部からスリット102を介して外部へ漏れ出るようになる。ここで、12個の発光素子201〜212の各々と、スリット102と結んだ各々の方向をベクトルで示すことにする。
【0047】
発光素子201とスリット102と結んだ線分が示す方向を、当該発光素子201からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。以後、この方向を“ベクトル201V方向”と記述する。以下、同様にして、発光素子202とスリット102と結んだ線分が示す方向を、発光素子202からスリット102を介して漏れ出た光の方向とする。この方向を“ベクトル202V方向”と記述する。例えば、発光素子201から出力された光は、スリット102を通過してベクトル201V方向に放射される。発光素子202から出力された光は、スリット102を通過してベクトル202V方向に放射される。
【0048】
このように、各発光素子201〜212の光が各々違った方向に放射されるため、スリット102で規制される縦1ライン分の光線再生が可能となっている。こうしたスリット構造の回転部104を視点pに対して回転走査することで、円筒形状の光線再生面を形成できるようになる。さらに、視点pに対する回転走査の角度に応じて、外部からの映像データDin、あるいは、回転部内部のROM等の記憶装置からの映像データDinを2次元発光素子アレイ101の発光ユニットUIに反映することで、任意の再生光線を出力することが可能となる。
【0049】
図6は、視点pから観察される発光点の軌跡例を示す図である。発光ユニットUIを有する回転部104が等速で回転され、視点p=300に対して回転走査される場合、視点300から観測される発光素子が時間Tの間隔で発光素子201から順に発光素子202,203,・・・212と移って行く。
【0050】
発光点の軌跡(図中の黒小丸印)が、例えば平面を成して見える構造は、2次元発光素子アレイ101の発光面形状とスリット102の位置を調整することで実現される。例えば、図6Aに示す時刻t=0において、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子201から漏れ出る光が観測される。図6Bに示す時刻t=Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子202から漏れ出る光が観測される。図中の右側から第1番目の白抜きの小丸印は、発光素子201の発光点を示している。
【0051】
図示はしないが、時刻t=2Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子203から漏れ出る光が観測され、t=3Tにおいて、発光素子204から漏れ出る光が観測され、t=4Tにおいて、発光素子205から漏れ出る光が観測され、t=5Tにおいて、発光素子206から漏れ出る光が観測される。さらにt=6Tにおいて、発光素子207から漏れ出る光が観測され、t=7Tにおいて、発光素子208から漏れ出る光が観測され、t=8Tにおいて、発光素子209から漏れ出る光が観測され、t=9Tにおいて、発光素子210から漏れ出る光が観測される。
【0052】
このように時間が経過し、図6Cに示す時刻t=10Tになり、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子211から漏れ出る光が観測される。同様に図6Dに示す時刻t=11Tにおいて、視点300でスリット102を介して2次元発光素子アレイ101を観察すると、発光素子212から漏れ出る光が観測される。
【0053】
このように、時間経過とともに、順次、発光素子201から212までの光が観測されるため、図6Dに示したように、白抜きの小丸印が横1列に並んでいる部分に像が映し出され、ユーザは、その像を観測することができる。このような構成の立体像表示装置10においては、上述したように、回転により視点を生成し(ポイント1)、情報伝搬の指向性により視差を生成し(ポイント2)、高速一括駆動の発光素子アレイを用いる(ポイント3)ことで、立体像の表示を可能としている。
【0054】
ポイント1とポイント2を実現する他の実施の形態であり、ポイント3の代替手段を以下に説明する。また、以下の説明においては、2次元発光素子アレイ101の構成を変え、他の構成は、基本的に第1の実施形態と同じく構成することが可能であるため、第1の実施の形態と同様の部分に関しては、説明や図示を省略する。
【0055】
[第2の実施の形態について]
図7は、2次元発光素子アレイ101の第2の実施の形態における構成を説明するための図である。図7に示した2次元発光素子アレイ500は、表示体501と指向性制御ユニット502から構成される。図7は、上側(または下側)から2次元発光素子アレイ500を見た場合を示している。表示体501は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど、平面のディスプレイを用いることができる。なおここでは、平面のディスプレイとして説明を続けるが、本実施の形態の適用範囲が、平面形状のディスプレイに限定される分けではなく、他の形状のディスプレイ(表示体)にも適用できる。
【0056】
指向性制御ユニット502は、表示体501の表面を加工する、装着するなどにより表示体501に設けられる。この指向性制御ユニット502は、所定の位置から表示体501を見ると、表示体501に表示されている画像を視認することができるが、所定の位置以外から表示体501を見ると、表示体501に表示されている画像を視認することができない状態に制御する。
【0057】
例えば、視点551から表示体501に表示されている画像を見ると視認できるが、視点551から角度θだけずれた視点552から表示体501に表示されている画像を見ると視認できない。このような制御を行う指向性制御ユニット502について、複数の実施の形態を挙げ、後述し、ここでは、このような制御を行うとして説明を続ける。
【0058】
このような指向性制御ユニット502を用いることで、情報伝搬の指向性による視差生成(ポイント2)を実現する。また、このように構成することで、第1の実施の形態においては必要とされるスリット102で、情報伝搬の指向性による視差生成を行わなくても良い構成とすることが可能となる。すなわち、表示部501に指向性制御ユニット502が備えられることで、表示部501の形状を、スリット102を考慮した形状とする必要がなくなる。よって、表示部501を、平面に構成したり、湾曲形状に構成したりすることが可能となり、その形状に自由度を増すことが可能となる。
【0059】
このような2次元発光素子アレイ500が、2次元発光素子アレイ101の代わりに、図8に示すように接続基板11に接続される。接続基板11は、回転台42に設けられているため、2次元発光素子アレイ500は、回転軸103を回転軸として回転する構成とされる。このように、2次元発光素子アレイ500を回転することで、回転による視点生成(ポイント1)を実現する。
【0060】
このように、第2の実施の形態においては、回転軸103を有する回転台42と、回転軸103を回転中心として、回転台42を回転させるモータ52と、回転台42に取り付けられ、複数の発光素子がマトリクス状に配設されることにより形成された発光面を有する発光素子アレイ500により立体像表示装置10が構成される。また、発光素子アレイ500は、平面形状の表示体501で構成され、その発光素子アレイ500の発光面には、発光素子からの所定の方向以外の光を遮光する指向性制御ユニット502が装着される。
【0061】
第2の実施の形態の場合、指向性制御ユニット502を用いることで、情報伝搬の指向性による視差生成を実現している。このため、第1の実施の形態において、情報の伝搬の指向性を実現していたスリット102をなくした構成とされる。すなわち、このような2次元発光素子アレイ500を用いた場合、回転部104の外装体41に設けられていたスリット102をなくし、単なる筒状に構成することができる。
【0062】
また、外装体41全体を透明な部材で構成する、2次元発光素子アレイ500が見える部分だけ透明な部材で構成する、または2次元発光素子アレイ500が見える部分だけスリット102が大きくなったような穴が開いているような構成としてもよい。すなわち、2次元発光素子アレイ500の表示部全体が見えるように、外装体41が構成される。
【0063】
または、外装体41自体をなくすことも可能である。しかしながら、2次元発光素子アレイ500は回転するため、回転している2次元発光素子アレイ500にユーザが接触するなどの危険性を回避するためには、外装体41を設けた方が良く、設ける場合には、上記したように構成される。
【0064】
また、外装体41を透明な部材で構成した場合、外装体41は回転させる構成とする必要がない。換言すれば、2次元発光素子アレイ500のみが回転される構成とすることが可能である。外装体41などを回転させなくて良くなる分だけ、モータ52などにかかる負荷が低減されるため、電力消費を低減させることが可能となる。
【0065】
2次元発光素子アレイ500が回転されることで、ユーザ(観測者)に立体像を提供することができる。図9を参照する。図9は、2つの時刻における2次元発光素子アレイ500が位置する位置を例示している。時刻tにおける2次元発光素子アレイ500の位置と、時刻tにおける2次元発光素子アレイ500の位置は、180度回転された状態の位置関係にある。
【0066】
時刻tのとき、視点551からは、2次元発光素子アレイ500に表示されている画像が見える状態である。その後、2次元発光素子アレイ500が回転され、時刻tのときに、視点552から、2次元発光素子アレイ500に表示されている画像が見える状態になる。例えば、時刻tのときに、視点551から見える画像が、車を正面から見たときの画像であったとすると、時刻tから時刻tの間に、2次元発光素子アレイ500に表示される画像を書き換えると、時刻tのときに、視点552から見える画像を、車を背後から見たときの画像とすることができる。
【0067】
このように、車を立体的に表示することが可能となる。また図示はしないが、時刻tから時刻tの間に、車の側面の画像を表示するようにすれば、所定の視点からは、車の側面が見えるようになる。すなわち、ユーザが立体像表示装置10の周りを一周すると、まるで車の周りを一周したかのような立体像をユーザに提供することが可能となる。このようなことを可能とするには、表示の切り換えを高速で行う必要がある。
【0068】
このような2次元発光素子アレイ500は、図10Aに示すように、全面が一括して表示できるように構成することができる。このようにした場合、比較的早く、画像の切り換えが行えることが望ましい。上記したように、2次元発光素子アレイ500に表示される画像を、例えば、車の周りを一周して見たような画像とした場合、2次元発光素子アレイ500に表示される画像は、回転とともに瞬時に切り換えられるように構成する必要がある。
【0069】
しかしながら、そのような切り換えが難しい場合、図10Bに示すように、1画面をM個のブロックに分割し、それぞれのブロックの始めから同時に描画が始まるように構成しても良い。Mブロックに分割し、各ブロックの先頭から、同時に描画を始めることで、全体としての描画を早めることが可能となる。
【0070】
ここで、角速度ω、周期T=2π/ω、視点数(分割数)=N、表示体画素分割数H×Vとする。また、視点毎の1フレームの表示時間は
Tf=T/N
とする。また周期Tは、
T≦33ms
を満たす値とされる。
【0071】
図10Aに示したように、2次元発光素子アレイ500の全画面を一括表示する場合、画素あたりの表示保持時間は、Th=Tfとなる。視点毎に1フレーム画像を表示することで、各視点に対して光線再生型の画像を生成する多視点立体画像を提供することが可能となる。
【0072】
水平走査線で順次表示するようにした場合、1ラインあたりの走査時間をtoとすると、全面を順次走査すると最下ラインの表示遅延時間は、
Td=t×H
となる。1画面の書き込み後の表示が歪まないためには、以下の条件が満たされる必要がある。
Td≪Tobs=T/N
【0073】
この条件を満たすことが困難な場合、図10Bに示すようにMブロックに分割することで解決することができる。すなわち、この条件を走査時間に関して緩和するには走査線をMブロックに分割してNをN/M表示することが有効である。また、1ラインあたりの走査時間tを短くすることや、視点数Nを小さくすることも有効である。
【0074】
フルハイビジョンのLCDテレビジョン受像機を、240Hzで駆動する技術(to=1.0×10-4×33ms)で、走査線600本を10分割駆動したときTd=0.006×33ms、TdがTobsの10%以下という制限を設けると、N=16の視点数設定が可能となる。さらに高速駆動で走査線分割数を増やせばさらに視点数増加が可能である。
【0075】
第2の実施の形態のように、2次元発光素子アレイ500を表示体501と指向性制御ユニット502を用いて構成すると、以下のような効果が期待できる。まず、平面のディスプレイを用いることで、信号処理が容易となる。すなわち、第1の実施の形態のように、湾曲した2次元発光素子アレイ101を用いた場合、湾曲している表示部を考慮して画像が適切に表示されるように信号処理を行わなくてはならないが、平面(平面に近い形状)の2次元発光素子アレイ500であれば、従来の表示形式を適用することも可能となるため、信号処理が容易となる。
【0076】
また、このような2次元発光素子アレイ500を構成とすることで、2次元発光素子アレイ101よりもモジュール化が容易となる。また、平面で2次元発光素子アレイ500を構成することで、2次元発光素子アレイ500を回転させていない状態、すなわち、静止状態でも画像を提供することが可能となる。また、平面で2次元発光素子アレイ500を構成することで、周辺画素の歪みがない画像を提供することが可能となる。また、上述したように、外装体41を透明な筐体とすることが可能となる。
【0077】
[第3の実施の形態について]
図10Bのように、1画面をMブロックに分割するようにした場合、図11に示すような構成とすることもできる。但し、Mブロックに分割はしているが、図10Aに示した場合と同じく、一括表示にも対応できる。図11に示した2次元発光素子アレイ600は、2次元発光素子アレイ500をM個に分割した2次元発光素子アレイ600−1乃至600−Mから構成されている。
【0078】
図11に示した2次元発光素子アレイ600も、詳細は図示しないが、図7に示した第2の実施の形態と同じく、表示体601と指向性制御ユニット602から構成される。例えば、2次元発光素子アレイ600−1は、表示体601−1と指向性制御ユニット602−1から構成され、2次元発光素子アレイ600−2は、表示体601−2と指向性制御ユニット602−2から構成され、2次元発光素子アレイ600−Mは、表示体601−Mと指向性制御ユニット602−Mから構成される
【0079】
このようにMブロックに分割された2次元発光素子アレイ600を、上(または下)から見た場合、図12のようになる。第3の実施の形態においても、各2次元発光素子アレイ600−1乃至600−Mを構成するディスプレイは、平面に構成されているため、既に生産されている液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを用いることができるため、コストを低減させることが可能となる。
【0080】
各2次元発光素子アレイ600に装着されている指向性制御ユニット602は、装着されている2次元発光素子アレイ600に表示されている画像を、所定の位置からしか見えないように制御するために設けられている。
【0081】
例えば、視点651から表示体601−1に表示されている画像を見ると視認できるが、視点651から角度θだけずれた視点652などからは、表示体501に表示されている画像を見ると視認できない状態となる。同様に、視点652からは、表示体601−2に表示される画像のみが視認でき、視点653からは、表示体601−3に表示される画像のみが視認できる。
【0082】
このように、2次元発光素子アレイ600は、複数(M個)のブロックに分割され、各ブロック(2次元発光素子アレイ600−1乃至600−M)は、所定の角度を有して配列されている。
【0083】
このような2次元発光素子アレイ600が、2次元発光素子アレイ101の代わりに接続基板11に接続される(不図示)。接続基板11と接続されることで、2次元発光素子アレイ600は、回転軸103を回転軸として回転する構成とされる。第2の実施の形態と同じく、回転により視点生成が実現され、指向性制御ユニット602が用いられることで、情報伝播の指向性による視差生成が実現される。よって、この場合も第2の実施の形態と同じく、外装体41にスリット102は必要なく、スリット102は設けられない構成とされる。
【0084】
また外装体41全体を透明な部材で構成する、2次元発光素子アレイ600が見える部分だけ透明な部材で構成する、または2次元発光素子アレイ600が見える部分だけスリット102が大きくなったような穴が開いているような構成とすることも可能である。すなわち、2次元発光素子アレイ600の表示部全体が見えるように、外装体41が構成されればよい。
【0085】
再度図12を参照する。視点651においては、2次元発光素子アレイ600−1に表示されている画像が見える状態である。2次元発光素子アレイ600は、回転しているため、その同じ視点651において、次の時点では、2次元発光素子アレイ600−2に表示されている画像が見える状態となる。さらに、次の時点では、2次元発光素子アレイ600−3に表示されている画像が見える状態となる。
【0086】
このように、同一視点から見える画像は、2次元発光素子アレイ600−1から2次元発光素子アレイ600−Mまで、順次提示される画像で1枚の画像となるように構成されている。残像を利用することで、異なる時間で供給される画像であっても、ユーザにとっては、1枚の絵として見えることになる。このように残像を利用してユーザに1枚の画を提供するようにした場合、以下の条件を満たす必要がある。
【0087】
まず、2次元発光素子アレイ600が、Mブロックに分割されている場合、視点との関係から、螺旋角制約条件として、θ=2π/Nが満たされる。すなわち、隣接する2次元発光素子アレイ600同士のなす角は、このθを満たす角度とされる。
【0088】
螺旋表示体により水平ブロック走査が行われる場合、1フレーム時間は、ブロック表示よりも長くなる。水平ブロック表示時間は、
Tb=T/N
とされ、1フレーム表示時間は、
Tf=Tb×M=TM/N
とされ、周期Tは、
T≦33ms
を満たす値とされる。
【0089】
2次元発光素子アレイ600の全画面を一括表示する場合、画素あたりの表示保持時間は、Th=Tbとなる。視点毎に1フレーム画像を表示することで、各視点に対して光線再生型の画像を生成する多視点立体画像を提供することが可能となる。
【0090】
水平ブロック内の水平走査線で順次表示するようにした場合、1ラインあたりの走査時間をtoとすると、全面を順次走査すると最下ラインの表示遅延時間は、
Td=t×H/M
となる。1画面の書き込み後の表示が歪まないためには、以下の条件が満たされる必要がある。
Td≪Tobs=T/(NM)
この制約は、上述した第2の実施の形態と等価となるため、第2の実施の形態と同様に多視点画像表示が可能となる。
【0091】
第3の実施の形態のように、2次元発光素子アレイ600を表示体601と指向性制御ユニット602を用いて構成し、Mブロックに分割して構成すると、以下のような効果を期待できる。まず、平面の表示体を用いることで、信号処理が容易となる。また、周辺への発光輝度を分散化することが可能となる。
【0092】
また、図11に示したように、各2次元発光素子アレイ600−1乃至600−Mが所定の角度だけずらして配置された場合、図7に示したような、ずらさないで構成される2次元発光素子アレイ500と比較して、風の抵抗を受けづらい構成となる。2次元発光素子アレイ600は、外装体41内で回転されるため、空気抵抗を受けやすい。よって、空気抵抗を受けづらい構成とすることで、抵抗を減らすことができるため、回転のために係るモータ52の動力を弱めることができ、電力の低減を図ることが可能となる。
【0093】
また、2次元発光素子アレイ600は、M個の2次元発光素子アレイ600−1乃至600−Mから構成されているため、仮に、このうちの1つの2次元発光素子アレイ600、例えば、2次元発光素子アレイ600−1が壊れたとしても、この2次元発光素子アレイ600−1だけを交換すれば、2次元発光素子アレイ600を継続して使用することができる。すなわち、不良モジュールの交換を容易にすることが可能となる。
【0094】
[第4の実施の形態について]
次に、第4の実施の形態として、解像度を向上させる2次元発光素子アレイの構成について説明する。図13は、第4の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成を示す図である。図14に示した2次元発光素子アレイは、2次元発光素子アレイ700−1、2次元発光素子アレイ700−2、2次元発光素子アレイ700−3から構成されている。ここでは、3個の2次元発光素子アレイが配置されている例を挙げて説明を続けるが、3個以上の2次元発光素子アレイが配置されるようにしてもよい。
【0095】
3個の2次元発光素子アレイ700が配置される場合、図13に示すように、配置された2次元発光素子アレイ700により三角形が構成される。このように、複数の2次元発光素子アレイ700の各2次元発光素子アレイ700は、異なる方向に向けられて設置される。
【0096】
1枚の2次元発光素子アレイ700、例えば、2次元発光素子アレイ700−1は、図7に示した2次元発光素子アレイ500と同一の構成とすることができる。すなわち、2次元発光素子アレイ700は、表示体701と指向性制御ユニット702から構成される。
【0097】
またこれらの3個の2次元発光素子アレイ700−1乃至700−3は、回転軸103を回転軸として、回転されるように外装体41内に設けられる。外装体41は、透明な筺体で構成される。このように構成されることで、視点751からは、2次元発光素子アレイ700−1で表示されている画像が見え、視点752からは、2次元発光素子アレイ700−2で表示されている画像が見え、視点753からは、2次元発光素子アレイ700−3で表示されている画像が見える状態となる。
【0098】
また視点751にとどまって2次元発光素子アレイ700を見た場合、まず、2次元発光素子アレイ700−1で表示されている画像が見え、次の時点で、2次元発光素子アレイ700−2で表示されている画像が見え、さらに次の時点で、2次元発光素子アレイ700−3で表示されている画像が見えることになる。この場合、図14に示すようなタイミングで、各2次元発光素子アレイ700−1乃至700−3で画像の表示が行われ、図15に示すような画像がユーザに提供されることになる。
【0099】
まず図14を参照する。2次元発光素子アレイ700−1の描画開始ラインから、IMG1a、IMG2a、IMG3a、・・・の順で、割り当てられた画像の一部分が表示される。時間がT/3だけ経過すると、2次元発光素子アレイ700−2の描画開始ラインから、IMG1b、IMG2b、IMG3b、・・・の順で、割り当てられた画像の一部分が表示される。Tは、回転周期を表す。またここでは、1枚の完成される画像(2次元発光素子アレイ700−1乃至700−3で提供される画像)がユーザに提供されるまでの時間と等価となる。
【0100】
さらに時間がT/3だけ経過すると、2次元発光素子アレイ700−3の描画開始ラインから、IMG1c、IMG2c、IMG3c、・・・の順で、割り当てられた画像の一部分が表示される。このような表示が行われることで、視点751に位置するユーザには、まず2次元発光素子アレイ700−1に表示されたIMG1a、IMG2a、IMG3a、・・・が提供され、T/3時間経過後に、2次元発光素子アレイ700−2に表示されたIMG1b、IMG2b、IMG3b、・・・が提供され、さらにT/3時間経過後に、2次元発光素子アレイ700−3に表示されたIMG1c、IMG2c、IMG3c、・・・が提供されることで、1枚の画像が提供される。
【0101】
すなわち、1枚の画像が、3回に分割された状態で提供される。図15を参照するに、ラインa-1は、IMG1aに相当する画を表示し、ラインb-1は、IMG1bに相当する画を表示し、ラインc-1は、IMG1cに相当する画を表示する。同様に、ラインa-2は、IMG2aに相当する画を表示し、ラインb-2は、IMG2bに相当する画を表示し、ラインc-2は、IMG2cに相当する画を表示する。このように、IMG1aが表示されるラインa-1の隣のラインb-1にはIMG1bが表示され、IMG1bが表示されるラインb-1の隣のラインc-1にはIMG1cが表示される。
【0102】
このように、2次元発光素子アレイ700−1で表示される画像の間に、2次元発光素子アレイ700−2と2次元発光素子アレイ700−3でそれぞれ表示される画像が補間される。換言すれば、2次元発光素子アレイ700-1乃至700−3は、それぞれ1枚の画像のうちの1/3を表示するように構成される。1枚の画像を複数の2次元発光素子アレイ700で表示することで、解像度を向上させることが可能となる。
【0103】
このように、2次元発光素子アレイ700をL個(上記した例では3個)、回転軸対象に配置し、回転周期Tに対してT/Lごとに1枚の画像に対応した、解像度1/Lの間引き画像を、所定の視点に対して、画素をずらしてシーケンシャルに表示させることで、解像度を向上させることが可能となる。
【0104】
第4の実施の形態においても、第2の実施の形態と同じく、表示体701と指向性制御ユニット702で2次元発光素子アレイ700を構成しているので、第2の実施の形態と同じく信号処理が容易となる、モジュール化が容易となる、静止状態でも2D表示が可能となる、周辺画素ひずみがない、透明な筺体を用いることができるなどの効果を期待することができる。さらに第4の実施の形態によれば、解像度を向上させることが可能となる。
【0105】
[第5の実施の形態について]
次に、第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態によれば、例えば、画像を表示するまでの時間(走査時間)がかかるような2次元発光素子アレイを用いることができる。上述したように、例えば、複数の視点から、異なる画像を見せるようにするためには、視点毎に表示される画像を切り換える必要があるが、そのような切り換えを実現するためには、2次元発光素子アレイや、その表示を制御するための制御部の構成などに、ある程度の性能が必要となる。
【0106】
仮に、そのような性能が得られない2次元発光素子アレイを用いても、全周囲に画像を提供できるようにするための実施の形態について説明する。図16は、第5の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成を示す図である。図16に示した2次元発光素子アレイ800は、第2の実施の形態における2次元発光素子アレイ500と同様の構成を有する。第5の実施の形態においては、外装体41の構成が、図16に示すように、遮光部分831を有する構成とされている。
【0107】
外装体41は、回転せず、2次元発光素子アレイ800は、外装体41内で回転するように構成されている。外装体41の遮光部分831以外の部分は、透明な部材などで構成され、2次元発光素子アレイ800に表示される画像を見える状態に構成される。または、遮光部分831のみが、外装体41として設けられる。遮光部分831は、2次元発光素子アレイ800に表示される画像が見えない状態に構成される。この遮光部分831は、2次元発光素子アレイ800の表示を書き換える時間の間、2次元発光素子アレイ800の発光面をユーザに見せないようにするために設けられている。
【0108】
この遮光部分831に隠れて、2次元発光素子アレイ800が見えない状態になったときから、2次元発光素子アレイ800の表示の切り換えが開始され、遮光部分831から2次元発光素子アレイ800が出て、2次元発光素子アレイ800が見える状態になったときには、画像の書き換えが全て終了し、2次元発光素子アレイ800に画像が表示されている状態とされる。このように、書き換えの時間の間、ユーザからは、2次元発光素子アレイ800が見えない状態とすることで、書き換え時間がかかるような2次元発光素子アレイ800であっても、ユーザに書き換え途中の画像を見せるようなことなく、画像を提供することができる。
【0109】
図16に示した外装体41には、遮光部分831が1箇所設けられているため、1回の書き換えに対応している。複数の書き換えに対応させるには、複数の遮光部分831を設けることで実現できる。このように、遮光部分831を設けることで、1枚の画像信号の書き込みが完了するまでのブランキング期間の間、遮光することができ、そのような遮光を行うことで、良好な画像を表示することが可能となる。
【0110】
また、外装体41に遮光部分831を設けない他の方法により、書き込み時間を得られるようにしてもよい。図17は、バックライトのオン、オフで書き込み時間を得られるようにした場合について説明するための図である。2次元発光素子アレイ800が液晶などの表示素子で構成され、バックライトが備えられている場合、そのバックライトのオン、オフで2次元発光素子アレイ800の書き込み時間を得られるようにする。
【0111】
図17において、上段は画像の書き込み率を示し、下段は光源輝度を示す。画像書き込み率が100%のときだけ、バックライトがオン(高原輝度が100%)とされることが読み取れる。図中、Tは、回転周期である。1周する間に、画像書き込み率は、0〜100%まで変化する時間と、100%が維持される時間がある。この0〜100%まで変化する間は、光源輝度が0%、すなわちバックライトがオフの状態にされるため、ユーザは、2次元発光素子アレイ800に書き込まれ途中である画像を視認することができない。
【0112】
そして、書き込み率が100%になり、その状態が維持されている間は、光源輝度が100%、すなわちバックライトがオンの状態にされるため、ユーザは、2次元発光素子アレイ800に書き込まれた画像を視認することができる。
【0113】
このように、液晶表示素子などのバックライトのオン、オフを制御することで、1枚の画像信号の書き込みが完了するまでの時間(ブランキング期間)の間、遮光することができ、そのような遮光を行うことで、良好な画像を表示することが可能となる。
【0114】
[指向性制御ユニットについて]
図18は、表示体501と指向性制御ユニット502を拡大した図である。表示体501と指向性制御ユニット502、表示体601と指向性制御ユニット602、表示体701と指向性制御ユニット702、および表示体801と指向性制御ユニット802は、同一なので、ここでは、表示体501と指向性制御ユニット502を例に挙げて説明する。
【0115】
表示体501は、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各画素から構成されている。指向性制御ユニット502には、図19に示すように、隣接する画素同士を仕切るように設けられた縦方向のスリットが構成されている。このような表示体501の表示部から前方に向けて、縦に列状に遮光バリアを形成することで、表示部の法線方向に限定的な広がりをもつ指向性を付与することができる。
【0116】
指向性制御ユニット502のバリア断面形状は、平坦構造を適用することもできるが、ランプ反射板のように、表示体501の表示画素中心を焦点とする放物線や楕円弧状を適用することもできる。例えば、指向性制御ユニット502の指向性の強度分布を例示すると、図20に示すようにごく狭い角度の範囲で、強度が最大となるような指向性を有するように指向性制御ユニット502は構成される。
【0117】
このような指向性制御ユニット502は、表示体501の表示体に直接あるいは透明基板上に樹脂材料などにより構成される。また、バリア上方に画素配列と異なるピッチの透過窓を配置し、特定の視点に焦点を結ばせるように、指向性制御ユニット502を構成してもよい。
【0118】
さらに、指向性制御ユニット502は、遮光機能で出射光の方向を制御するために設けるので、図21に示すように、指向性制御ユニット502のバリアを表示体501の表示部に並行な上下方向に複数層の遮光領域の組み合わせ、置き換える構成とすることも可能である。すなわち、図21に示すように、画素配列と異なるピッチで、表示体501上に、上下2層の遮光領域を設けることで、特定の視点に対して出射光の方向を制御することができる。
【0119】
さらに、図22に示すように、指向性フィルムを用いてもよい。この指向性フィルムは、図23に示すような指向性の強度分布を有する。図23に示した強度分布における極角は、図20に示した強度分布よりも極角も広い。よって、指向性としては精度が低いが、簡易的に構成してもよい場合などに指向性制御ユニット502として用いることができる。
【0120】
このように、指向性制御ユニット502として、どのような構造を有するものを用いるかは、表示体501との関係や、どの程度の精度が必要となるかなど、種々のことが考慮され、決定される。また、ここで例として挙げた指向性制御ユニット502は、一例であり、これらの記載のみに限定を示すものではない。
【0121】
[第6の実施の形態について]
次に、第6の実施の形態について説明する。図24は、第6の実施の形態における2次元発光素子アレイの構成を示す図である。第6の実施の形態においても、表示体901と指向性制御ユニット902との組み合わせから2次元発光素子アレイ900が構成される。図24に示すように、表示体901には、IMG1、IMG2、IMG3、およびIMG4といった4視点用の4つの画像が表示され、指向性制御ユニット902と組み合わされることで、静止状態で多方向に光線の指向性を付与できるように構成されている。
【0122】
2次元発光素子アレイ900が静止状態において、視点951からは、表示体901に表示されているIMG1が見え、視点952からは、表示体901に表示されているIMG2が見え、視点953からは、表示体901に表示されているIMG3が見え、視点954からは、表示体901に表示されているIMG4が見えるように構成されている。
【0123】
このような2次元発光素子アレイ900を回転させることで、周囲にも視点を生成することが可能となる。図25は、2次元発光素子アレイ900を回転させたときに、各視点において見える画像(IMG)を説明するための図である。2次元発光素子アレイ900が、位置Aに位置しているときには、視点951では、IMG1が見える状態であり、視点952では、IMG2が見える状態であり、視点953では、IMG3が見える状態であり、視点954では、IMG4が見える状態である。
【0124】
2次元発光素子アレイ900が回転され、位置Bに位置すると、視点952で、IMG1が見える状態となり、視点953で、IMG2が見える状態となり、視点954で、IMG3が見える状態となり、視点955で、IMG4が見える状態となる。さらに2次元発光素子アレイ900が回転され、位置Cに位置すると、視点953で、IMG1が見える状態となり、視点954で、IMG2が見える状態となりであり、視点955で、IMG3が見える状態となり、視点956で、IMG4が見える状態となる。
【0125】
このように、回転されることで、各視点に順次、2次元発光素子アレイ900で表示されている画像が提供される。例えば視点954においては、2次元発光素子アレイ900が位置Aに位置しているときに、IMG4が提供され、次に、2次元発光素子アレイ900が位置Bに位置するため、IMG3が提供される。そして、さらに次の時点で、2次元発光素子アレイ900が位置Cに位置するため、IMG2が提供され、次の時点で、2次元発光素子アレイ900が位置Dに位置するため、IMG1が提供される。このように、所定の視点においては、順次、方位に応じた画像がユーザに提供される。
【0126】
このような2次元発光素子アレイ900においても、第5の実施の形態として説明した遮光部分831を用いて、画像の書き換えの時間を確保したり、上述した指向性制御ユニットを用いたりすることは可能である。また、遮光による指向性付与の代わりに、屈折、すなわち例えば、レンズを用いて指向性を付与する構成とすることも可能である。
【0127】
上述した実施の形態を適用することで、実施の形態によっては制限があるが、ほぼ360度のどの位置からも2次元発光素子アレイで表示されている画像を閲覧することが可能となる。また、その画像としては、閲覧する位置により異なる画像とすることも可能であるし、同一の画像とすることも可能である。異なる画像とすることで、複数の視点に異なる情報を提供することができるし、同一の画像とすることで、複数の視点で、同一の情報を閲覧することが可能となる。
【0128】
異なる画像とした場合、例えば、車などの商品の全形を見せることができるようになり、利用者が実際の商品を見られなくても、その商品のイメージをつかみやすくなり、宣伝効果を向上させることが可能となる。また、同一の画像とした場合も、ほぼ同じタイミングで複数の方向に画像を提供し、宣伝することができるため、他の宣伝との差別化をはかることができ、効率良い宣伝を行うことが可能となる。
【0129】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0130】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0131】
(1)
回転軸を有する回転部と、
前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、
前記回転部に取り付けられ、複数の表示素子が配設される表示部と
を備え、
前記表示部には、前記表示素子から出射される光の方向を制御する指向性部材が装着される
表示装置。
(2)
前記指向性部材は、前記表示素子からの所定の方向以外の光を遮光する
前記(1)に記載の表示装置。
(3)
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記各ブロックにおいて、前記表示素子は線順次駆動される
前記(1)に記載の表示装置。
(4)
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記各ブロックは、所定の角度を有して配されている
前記(1)に記載の表示装置。
(5)
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記複数のブロックのそれぞれで提供される画像から1枚の画像が形成される
前記(1)に記載の表示装置。
(6)
前記表示部の外側に配され、回転しない外装体をさらに有し、
前記外装体は前記表示部からの光を遮光する遮光部を備え、
前記遮光部によって遮光されている間に、表示部の表示の切り換えを行う
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の表示装置。
(7)
前記表示部における表示の切り換えの間、前記表示部を発光しないように制御する
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の表示装置。
(8)
前記表示部は、複数の方向に異なる画像を提供する
前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の表示装置。
(9)
前記指向性部材は、前記表示素子の中心を焦点とする所定の形状で形成され、縦に列状に形成され、前記表示素子からの出射光の方向を制限する形状とされる
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の表示装置。
(10)
前記指向性部材は、各層でピッチの異なる遮光領域が複数の層に亘って設けられた形状とされる
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の表示装置。
【符号の説明】
【0132】
500 2次元発光素子アレイ, 501 表示体, 502 指向性制御ユニット, 600 2次元発光素子アレイ, 601 表示体, 602 指向性制御ユニット, 700 2次元発光素子アレイ, 701 表示体, 702 指向性制御ユニット, 800 2次元発光素子アレイ, 801 表示体, 802 指向性制御ユニット, 831 部分遮光, 900 2次元発光素子アレイ, 901 表示体, 902 指向性制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転部と、
前記回転軸を回転中心として、前記回転部を回転させる駆動部と、
前記回転部に取り付けられ、複数の表示素子が配設される表示部と
を備え、
前記表示部には、前記表示素子から出射される光の方向を制御する指向性部材が装着される
表示装置。
【請求項2】
前記指向性部材は、前記表示素子からの所定の方向以外の光を遮光する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記各ブロックにおいて、前記表示素子は線順次駆動される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記各ブロックは、所定の角度を有して配されている
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示部は、複数のブロックを有し、
前記複数のブロックのそれぞれで提供される画像から1枚の画像が形成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示部の外側に配され、回転しない外装体をさらに有し、
前記外装体は前記表示部からの光を遮光する遮光部を備え、
前記遮光部によって遮光されている間に、表示部の表示の切り換えを行う
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示部における表示の切り換えの間、前記表示部を発光しないように制御する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、複数の方向に異なる画像を提供する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記指向性部材は、前記表示素子の中心を焦点とする所定の形状で形成され、縦に列状に形成され、前記表示素子からの出射光の方向を制限する形状とされる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記指向性部材は、各層でピッチの異なる遮光領域が複数の層に亘って設けられた形状とされる
請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−15690(P2013−15690A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148745(P2011−148745)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】