説明

表示装置

【課題】外装枠の温度上昇を抑えつつ、表示パネルの駆動回路部の過熱を防止すること。
【解決手段】液晶表示装置100は、液晶パネル105の表示面側の周縁部を覆うことで外装枠を構成する上フレーム106と、表示パネル105の周縁部を背面側から支持する下ホルダ107を備える。表示パネル105に背面から光を照射するバックライト光源110は、バックライトケース109に収容されている。表示パネル105を駆動する液晶ドライバIC101は、下ホルダ107の貫通部107b内に設けた熱伝導部材112を介してバックライトケース109と熱的に結合しており、液晶ドライバIC101が発生した熱をバックライトケース109に放熱させる構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の放熱構造
【背景技術】
【0002】
バックライトを用いた表示装置では、光源の駆動回路部で発生する熱を装置外に排出するために放熱対策が講じられる。
従来の液晶表示装置は、液晶パネルの背面に直下型のバックライト装置を備え、液晶パネルの周縁部を表示面側から金属製フレームで覆っている。液晶パネルの背面側には該パネルの周縁部を支持する支持部材が設けられ、さらに箱形状に形成したバックライトケースが配置される。液晶パネルと駆動回路基板を繋ぐFPC(Flexible Printed Circuit)には、液晶パネルを駆動する液晶ドライバICが実装され、該ICが発生した熱は、外枠の金属製フレームに伝熱されて筐体内の空間に排出される。自然空気冷却式、または冷却ファン等による強制空気冷却式の放熱構造が採用される。
近年、液晶表示装置は、限られたスペースに設置する用途上の要請やデザイン性向上の要求を受けて、表示画面周囲の非表示エリアである額縁幅、つまり外装枠を正面から見た場合の枠幅を極力狭くすることが求められている。このため、金属製フレームを外装枠と兼用する構造が提案されている。一方では、液晶パネルの大型化や高精細化、液晶ドライバICの高密度化に伴い、その発熱量は増加傾向にある。よって温度上昇幅を動作保証温度内に抑えるためには更なる放熱構造の工夫が必要になる。特許文献1には、液晶ドライバICが発生した熱を、熱伝導性部材を介して、外装枠と兼用したフレームに伝熱する放熱技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−226068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術のように、液晶ドライバICの熱を外装枠と兼用したフレームに伝える構成では以下の問題がある。
金属製の外装部材の温度が、規格温度値(例えば70°C)付近まで上昇した場合や、規格温度値以下であっても誤ってユーザが外装部材に触れた場合、不快感を抱く可能性があった。加えて、液晶パネルの大型化や高精細化、液晶ドライバICの高密度化に伴い、液晶ドライバICの過熱を防止するための、更なる放熱構造が必要であった。
そこで本発明の目的は、外装枠の温度上昇を抑えつつ、表示パネルの駆動回路部の過熱を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、表示パネルと、該表示パネルの周縁部を覆うことで外装枠を構成するフレーム部材を備えた表示装置であって、前記表示パネルを駆動する駆動回路部と、前記表示パネルに背面から光を照射する光源を収容したケース部材を備え、前記駆動回路部と前記ケース部材とを熱的に結合させた構成を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外装枠の温度上昇を抑えつつ、表示パネルの駆動回路部の過熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図2ないし4と併せて本発明の第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の変形例に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【図3】熱解析モデルの断面を模式的に例示する図である。
【図4】各部の熱解析結果を例示するグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の各実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1および図2を用いて本発明の第1実施形態に係る表示装置を説明する。
図1は、直下型バックライト装置を有する液晶表示装置100の部分断面図である。以下では、液晶パネル105の表示面側を上方とし、非表示面(背面)側を下方と定義して各部の位置関係を説明する。
図1には、液晶パネル105の周縁部を表示面側から支持する上フレーム106と、液晶パネル105を背面側から支持する下ホルダ107と、光源部を収容するバックライトケース(以下、BLケースという)109を示す。液晶ドライバIC101への制御信号を生成するコントロール基板102は、BLケース109の背後に配置され、液晶ドライバIC101に信号を分配する駆動回路基板103は上フレーム106と下ホルダ107との間に形成された空間に位置する。液晶パネル105と駆動回路基板103を接続するFPC104には液晶ドライバIC101が実装されている。
【0009】
まず、液晶パネル105の支持構造を説明すると、その周縁部を表示面側から覆う枠状のフレーム部材として上フレーム106が設けられている。液晶パネル105の周縁部はその背面から下ホルダ107によって保持されている。上フレーム106と液晶パネル105との間には弾性部材106aが配置され、液晶パネル105と下ホルダ107の間には弾性部材107aが配置されている。これらの弾性部材は、液晶パネル105に局所的な応力がかからないように液晶パネル105に近接または接触している。変形のし難さを表す物性値である弾性率に関して、弾性部材106aより弾性部材107aの方が大きい材質を用いている。これより、局所的な応力を逃がしつつ液晶パネル105の組込位置の保持や塵埃等の異物侵入を防止できる。弾性率の値としては、弾性部材106aがアスカーC硬度10から30程度であり、弾性部材107aがアスカーC硬度30から50程度である。なお、アスカーCとはSRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたデュロメータ(スプリング式硬度計)の一つである。アスカーCで20と記載されていれば、アスカーC硬度計での測定値が20であることを示す。弾性部材106a、107aついては、経年変化によって部材の厚みが変化し難いように圧縮残留歪が3%程度の材料が用いられる。
【0010】
下ホルダ107は液晶パネル105の周縁部を下方から支持する支持部材としての役割の他に、直下型バックライト光源(以下、単に光源という)110の光学シート群108を上方から押え、駆動回路基板103を保持する機能をもつ。液晶パネル105に背面から光を照射する光源110には発光ダイオード等が使用され、光学シート群108は光を拡散させるシート部材や輝度を向上させるためのシート部材等を含む。下ホルダ107は電気的絶縁性やその断面形状を考慮して、ABS樹脂や、ABSおよびPC(ポリカーボネート)等のポリマーアロイの樹脂で形成されている。下ホルダ107の内側には、バックライト装置を構成するBLケース109が位置しており、金属製の板状材料を用いたプレス加工により略箱形状に形成される。光源110は、BLケース109の開口部を光学シート群108が閉塞して形成される空間内にてBLケース109の内底面に配置されている。BLケース109の背面には、光源110が発生した熱を液晶表示装置100の筐体内部の空間へ伝えるために放熱器111が取り付けられている。
【0011】
本実施形態に係る液晶表示装置100にて液晶ドライバIC101は、金属製のBLケース109と熱的に接合されることによって放熱が行われる。更には、液晶ドライバIC101とBLケース109との熱接触抵抗を下げるために、熱伝導部材112を介して熱的に接合されることが好ましい。図1には、下ホルダ107に形成した貫通部107b内に熱伝導部材112を設けた例を示す。熱伝導部材112は、液晶ドライバIC101の放熱を十分に行いつつ、液晶ドライバIC101やFPC104に機械的負荷が加わらないことが好ましい。そのため、熱伝導率が1ないし6(W/m・K)程度であって、かつアスカーC硬度が10程度の柔軟性を有する材質を用いる。さらにはシロキサンを含まないアクリル系基材等の材質を使用することが好ましい。これは、電子回路への障害を引き起こす一因となる低分子シロキサンガスが発生しないようにするためである。
【0012】
以下、液晶表示装置100の組立順序を説明する。
まず、作業者は光源110を収容したBLケース109を下にして、これに光学シート群108を載置した後、光学シート群108の熱伸縮を考慮して下ホルダ107で0.5mm程度のクリアランス(隙間)をもって挟持している。これにより、BLケース109および光学シート群108からなる略密閉構造の光拡散空間が形成される。次に作業者は光学シート群108を下にして、液晶パネル105を下ホルダ107に載置する。液晶パネル105のガラス端部から延伸したFPC104上の液晶ドライバIC101は熱伝導部材112と密着し、BLケース109に対して熱的に結合される位置関係に組み立てられる。
熱伝導部材112は、下ホルダ107にて液晶ドライバIC101と対向する貫通部107b内に配置されているので、液晶ドライバIC101が発生した熱は熱伝導部材112からBLケース109に伝わる。貫通部107bは、下ホルダ107に形成した穴部または下ホルダ107の一部を切り欠いて形成した切り欠き部である。熱伝導部材112は、金属製のBLケース109の外側面にて液晶ドライバIC101と対向する位置に両面テープ等で接着されている。
以上のように本実施形態では、熱伝導部材112を液晶ドライバIC101とBLケース109の間に設けることで、上フレーム106に伝わる熱量を減少させることができる。これにより、外装枠と兼用した上フレーム106の温度上昇を抑えつつ、液晶ドライバIC101の放熱を行える。
【0013】
図2は第1実施形態の変形例を示す。図1の構成に加えて、BLケース109とは反対側の上フレーム106にも熱伝導部材201を設けている。熱伝導部材201を介して上フレーム106にも液晶ドライバIC101の熱が伝わるので、上フレーム106の温度は図1の構成に比べて上昇する。しかし、液晶ドライバIC101の上昇温度値に関しては、放熱経路が上下二つの経路となるので、熱伝達量が増加する。その結果、上昇温度値を図1の構成に比べて減少させることができる。
【0014】
次に図3および4を用いて、本実施形態に係る表示装置を模式化した場合の熱解析の結果を説明する。
図3は、液晶表示装置400の放熱構造に係る解析モデルを断面図で示す。図3には、液晶ドライバIC401、図の上側の熱伝導部材402、上フレーム403、図の下側の熱伝導部材404、BLケース405、放熱板406、光源407を示す。また液晶表示装置400の周囲には、その大きさに対して十分に大きい放熱空間408が設けられ、熱伝導、熱対流、熱輻射を考慮した解析を行った。発熱部品として液晶ドライバIC401と複数の光源407を想定し、それぞれの発熱量を0.8(W/個)、0.17(W/個)で与えた。以上に示した構成部品については、互いの接触熱抵抗を解析上無視して結果を導出している。
【0015】
下表1は、液晶表示装置400の熱解析を行うにあたっての解析条件値を示し、雰囲気温度(周囲温度)を25°Cとした。

【表1】

【0016】
下表2は、熱伝導部材を以下に示す位置にそれぞれ設けた場合の各部の温度を示す。
(I)熱伝導部材402を液晶ドライバIC401と上フレーム403との間に配置した場合(上向三角印参照)
(II)熱伝導部材404を液晶ドライバIC401とBLケース405との間に配置した場合(下向三角印参照)
(III)熱伝導部材402を液晶ドライバIC401と上フレーム403との間に配置し、かつ熱伝導部材404を液晶ドライバIC401とBLケース405との間に配置した場合(四角印参照)。
【表2】

本例では上フレーム403、液晶ドライバIC401、BLケース405の温度を熱解析により求めた結果を示す。解析パラメータについては、放熱板406に対する拘束条件の温度を40°C、50°C、60°Cとして解析を行った。
【0017】
図4に熱解析の結果を例示する。
図4(A)は、横軸に放熱板406の拘束温度を示し、縦軸に上フレーム403の解析温度を示す。前記(II)の場合(下向三角印参照)と、前記(III)の場合(四角印参照)のグラフ線を実線で示す。比較例として、前記(I)を採用した従来構造の場合(上向三角印参照)のグラフ線を破線で示す。
図4(B)は、横軸に放熱板406の拘束温度を示し、縦軸に液晶ドライバIC401の解析温度を示す。三角印および四角印、並びに実線、破線のグラフ線の意味は図4(A)の場合と同じである。なお、グラフには示していないが、前記の表2に示した結果より、BLケース405の解析温度は放熱板406の拘束温度とほぼ等しい値が得られた。
まず、熱伝導部材の配置箇所による解析温度の違いに注目すると、図4(A)に示すように、放熱板406の拘束温度50°Cにおける上フレーム403の解析温度は、以下の通りである。
・前記(I)の場合 :56.7°C
・前記(II)の場合 :42.2°C
・前記(III)の場合:50.2°C
上フレーム403の温度は、熱伝導部材404を液晶ドライバIC401とBLケース405との間にのみ設置した場合が最も低い。これは液晶ドライバIC401の熱が殆どBLケース405に伝わる構造にしたことによる。
【0018】
一方、放熱板406の拘束温度50°Cにおける液晶ドライバIC401の解析温度は、以下の通りである。
・前記(I)の場合 :81.9°C
・前記(II)の場合 :78.2°C
・前記(III)の場合:64.3°C
液晶ドライバIC401の温度は、その両側にて熱伝導部材402、404をそれぞれ配置した場合が最も低い。これは液晶ドライバIC401の熱が上フレーム403とBLケース405の両方に伝わる構造にしたことによる。
以上の解析結果から、放熱板406の温度を所定値以下に保てば液晶ドライバIC401や上フレーム403の温度上昇値を従来構造に比べて低減できることが分かる。本実施形態を効果的に適用するための放熱板406の温度としては、図4の解析結果から60°C未満に保てばよいことが判明した。
第1実施形態によれば、液晶パネルの駆動回路部とBLケース部材とを熱的に結合させて当該駆動回路部からBLケース部材への伝熱経路を形成することにより、外装枠の温度上昇を抑えつつ、表示パネルの駆動回路部の過熱を防止できる。
【0019】
[第2実施形態]
次に図5を用いて本発明の第2実施形態に係る表示装置を説明する。なお、第2実施形態に係る液晶表示装置600にて、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることにより、それらの詳細な説明を省略する。
液晶パネル105の背後にあるBLケース601は、光源110の光を光拡散空間で均一化させるだけでなく、液晶表示装置600の剛性を保つ役割も果たしている。金属製のBLケース601は、その周辺部がコ字状の断面形状をもつように折り返されている。つまり、側面部が図5の右方に向けて折り返された形状となっており、折り返し部601bには、液晶ドライバIC101と対向する箇所に貫通部601aが形成されている。貫通部601a内には熱伝導部材604が配置されており、該部材を介して液晶ドライバIC101と放熱器602とが結合している。放熱器602は、折り返し部601bによって形成される空間にて当該部分が下ホルダ107に密着した面とは反対側に取り付けられている。液晶ドライバIC101が発生した熱は、熱伝導部材604を介して放熱器602に伝わり、放熱器602から筐体内部の空間へ排出される。この筐体内部に放熱された空気は、自然空気冷却やファン等の強制空気冷却手段(図示せず)を用いて速やかに筐体外部へと排出される。
【0020】
図4(A)および(B)の解析結果が示すように、放熱板やBLケースの温度を低下させることにより、液晶ドライバIC101や上フレーム106の温度低減効果を確認することができた。そこで、第2実施形態では、光源110の放熱については第1の放熱手段として放熱器603を使用し、液晶ドライバIC101の放熱については第2の放熱手段として放熱器602を使用している。このように、各々の発熱源に対して放熱部材を別個に設けているので、外装枠を兼用した上フレームの温度上昇を抑えつつ、液晶ドライバICの過熱を防止する放熱構造を実現できる。
【符号の説明】
【0021】
100,200,400,600 液晶表示装置
101,401 液晶ドライバIC
105 液晶パネル
106,403 上フレーム
107 下ホルダ
107b 貫通部
109,405,601 BLケース
110,407 光源
111 放熱器
112,201,402,404,604 熱伝導部材
601a 貫通部
602,603 放熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、該表示パネルの周縁部を覆うことで外装枠を構成するフレーム部材を備えた表示装置であって、
前記表示パネルを駆動する駆動回路部と、
前記表示パネルに背面から光を照射する光源を収容したケース部材を備え、
前記駆動回路部と前記ケース部材とを熱的に結合させたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動回路部は、熱伝導部材を介して前記ケース部材と熱的に結合していることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動回路部はさらに、熱伝導部材を介して前記フレーム部材と熱的に結合していることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルの周縁部を背面から支持する支持部材を備え、
前記熱伝導部材が前記支持部材に形成した貫通部に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ケース部材にて前記光源とは反対の背面側に第1の放熱手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項6】
前記駆動回路部から発生する熱に対する第2の放熱手段を前記ケース部材に設けたことを特徴とする請求項5記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97303(P2013−97303A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242281(P2011−242281)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】