説明

表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材およびその製造方法

【課題】表面に微細で規則的な凹凸パターンが形成された炭素材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム材を陽極酸化することにより得られる表面に規則的なホールアレー構造を有する酸化アルミニウム製モールド、または、それを鋳型として作製したネガ型モールドを用いて、該モールドの表面構造を炭素の前駆体となるポリマーに転写し、その後、炭素化処理を施すことにより製造された、表面に微細で規則的な凹凸パターンを有する炭素材、およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント技術を用いて作製した、表面に微細で規則的な凹凸パターンを有する炭素材、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、サブミクロンからナノメータースケールの微細な凹凸パターンを基板表面に一括転写することが可能であることから、撥水・撥油性膜や反射防止膜、細胞培養シートなど様々な機能性デバイスを作製するための手法として期待されている。
【0003】
この手法は、微細なパターンが形成されたモールドをポリマーやガラスからなる基板に押し付けることでパターンの転写を行うものであるが、一旦ナノパターンが形成されたモールドの作製を行えば、そのモールドは繰り返し利用することができるため、電子ビームリソグラフィーをはじめとする他の微細加工法に比べ、高スループットな処理が可能であるといった特徴がある。通常、インプリントに用いられるモールドは、各種リソグラフィー技術により作製されることから大面積のパターン形成は困難であるが、自己組織化的に形成される規則構造材料をモールドとして適用すれば、このような問題点を解決することもできる。アルミニウム材を酸性浴中で陽極酸化することで得られる陽極酸化ポーラスアルミナは、円柱状の細孔が規則配列したホールアレー構造を有する代表的な自己組織化規則構造材料であるが、ポーラスアルミナ、または、それを鋳型として作製したネガ型構造体をモールドとして使用することで、大面積のホールアレー構造やピラーアレー構造を形成することが可能である(非特許文献1)。ナノインプリント法による微細構造の形成と各種機能性デバイスへの応用に関しては、これまでにも様々な研究がなされてきているが、構造転写を行う材料に関しては、現在までのところ熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、低融点ガラス、ゾル−ゲル材料に限定されたものであった。
【0004】
ナノスケールで構造が制御された炭素材料は、触媒、機能性電極、電子材料など様々な応用が期待できることから、その作製手法の確立が重要な課題となっている。これまでにも、鋳型プロセスやドライエッチングをはじめいくつかの方法により炭素材料の構造制御が試みられている。鋳型プロセスによれば、鋳型の空隙に炭素前駆体となる有機物を導入し、これに不活性ガス中で熱処理を施し炭化したのち、鋳型を溶解除去することで、インバースオパール構造等に構造制御された炭素材料が得られることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、これらの手法では構造制御された炭素材料を得るために鋳型を溶解除去する必要があるため、スループットが低いといった問題点があった。
【0005】
炭素材料ナノ構造体の作製に、インプリント法を適用することが可能となれば、従来法の問題点を解決し、高スループットな手法として有効であると期待できるが、これまでに、ナノスケールで構造が制御された炭素材料の作製にインプリント法を適用した例は報告されていない。
【特許文献1】特開2005-262324号公報
【非特許文献1】T. Yanagishita, K. Nishio, and H. Masuda, Jpn. J. Appl. Phys., 45, L804 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、幅広い分野への応用展開が期待される表面に微細凹凸パターンが形成された炭素材をナノインプリント法によって効率よく作製する技術を提供するものである。とくに、アルミニウム材を陽極酸化することによって得られる陽極酸化ポーラスアルミナまたはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いることで、微細凹凸パターンを表面に有する炭素材を容易に得る手段について鋭意検討を行った結果完成されたものである。その目的は、サイズの均一な細孔または突起が規則的に配列した微細凹凸パターンが表面に形成された炭素材、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を解決するために、本発明は次のような構成を有する。すなわち、本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材は、インプリントプロセスにより表面に規則的な微細凹凸パターンが形成された有機系材料が熱処理により炭素化されていることを特徴とするものからなる。つまり、インプリントプロセスにより、炭素前駆体として機能する有機系材料の表面に、ラインアンドスペースパターンやホールアレーパターン、ピラーアレーパターンのように凸部と凹部から構成されるサブミクロンからナノメーターサイズの微細で規則的な凹凸パターンの形成を行った後、加熱による炭素化処理によって、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材を得るものである。
【0008】
この本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材においては、表面に形成された凹凸パターンは、ホールアレー構造またはピラーアレー構造からなり、その細孔径(ホールアレー構造)または突起径(ピラーアレー構造)が、10nmから1μmの範囲内にある構造体を得ることができる。
【0009】
また、上記ホールアレー構造の細孔深さと細孔径の比(細孔深さ/細孔径)で表わされるアスペクト比が0.5以上のホールアレーパターンを有する炭素材を得ることができ、さらには、アスペクト比4以上の構造体を得ることも可能である。また、上記ピラーアレー構造のピラー高さをピラーの直径で割った値として示されるアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が0.5以上の炭素材を得ることができ、さらには、高アスペクト比のモールドを用いれば、アスペクト比10以上の構造体を得ることも可能である。
【0010】
また、上記炭素化される有機系材料が、該有機系材料とは別の材料からなる基板の上に設けられたものからなる構成とすることが可能である。すなわち、本発明では、インプリント法にもとづき炭素前駆体表面に微細パターンを形成したのち炭素化することで、微細な凹凸パターンを有する炭素材を得るものであることから、基板上に設けた炭素前駆体薄膜に微細パターンを形成し、炭素化を行うことが可能である。炭素化処理では、通常800℃以上の温度で加温することから、基板には、例えば、石英やシリコン、サファイヤ、炭素材料など800℃以上の耐熱性を有する材料を用いることができる。
【0011】
本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法は、有機系材料の表面にインプリントプロセスにより規則的な微細凹凸パターンを形成し、該有機系材料に熱処理を加えて有機系材料を炭素化することを特徴とする方法からなる。前述の如く、インプリントプロセスにより、炭素前駆体として機能する有機系材料の表面に、ラインアンドスペースパターンやホールアレーパターン、ピラーアレーパターンのように凸部と凹部から構成されるサブミクロンからナノメーターサイズの微細で規則的な凹凸パターンの形成を行った後、加熱による炭素化処理によって、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材を得る方法である。
【0012】
この本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法においても、表面に形成される凹凸パターンが、ホールアレー構造またはピラーアレー構造からなり、その細孔径または突起径が、10nmから1μmの範囲内にある構造とすることができる。
【0013】
また、上記ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が0.5以上である構造とすることができ、ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が4以上である構造とすることもできる。また、上記ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が0.5以上である構造とすることができ、ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が10以上である構造とすることもできる。
【0014】
また、上記有機系材料とは別の材料からなる基板の上に上記有機系材料を設け、該有機系材料を炭素化する方法を採用することができ、この場合には、基板に、800℃以上の耐熱温度を有する材料を用いることが好ましい。
【0015】
上記本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法においては、上記有機系材料として炭素前駆体として機能する高分子の単量体または半重合体、さらには、架橋剤を加えた高分子を用い、インプリント用モールドを上記高分子材料の層に押し付けながら該高分子材料層に光照射や加温処理を加えることで固化させ、しかる後に固化された高分子材料層からインプリント用モールドを剥離することにより高分子材料層の表面に規則的な微細凹凸パターンを形成し、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材を得ることができる。
【0016】
また、上記有機系材料として炭素前駆体として機能する高分子材料、例えば重合度の低い架橋性樹脂を用い、該高分子材料に、該高分子材料を軟化点以上の温度に加温して軟化させ、該高分子材料にインプリント用モールドを押しつけ該モールドのパターン転写を行った後、該高分子材料に熱処理を加え該高分子材料を炭素化することにより、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材を得ることができる。
【0017】
炭素の前駆体として機能する高分子には、光硬化性架橋ポリマー、熱硬化性樹脂などを用いることができるが、特に、フラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、架橋性のアクリル樹脂のいずれか、あるいはそれらの混合物を用いることが望ましい。
【0018】
インプリント用モールドには、アルミニウム材の陽極酸化により形成される表面に規則的なホールアレー構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型構造のピラーアレー構造を有するモールドを用いることができる。
【0019】
また、硫酸を電解液として用い、化成電圧10V〜30Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型を、あるいは、シュウ酸を電解液として用い、化成電圧30V〜130Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型を、あるいは、リン酸を電解液として用い、化成電圧180V〜200Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型を、インプリント用モールドとして用いることで、より高い規則性を有するホールアレー構造あるいはピラーアレー構造を有するインプリント用モールドを得ることができる。
【0020】
さらに、定電圧で、長時間陽極酸化を施したのち、一旦、酸化皮膜を除去し、再び同一条件で陽極酸化を施すことで作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いることができ、このような手法を採用すれば、高い孔配列規則性を有するインプリント用モールドを得ることができる。
【0021】
また、陽極酸化に先立ち、アルミニウムの表面に微細な窪みを形成し、これを陽極酸化時の細孔発生の開始点として作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いることもでき、このような手法を採用することにより、細孔配列を制御した陽極酸化ポーラスアルミナの作製が可能であることから、これをモールドとして用いることで、凹凸パターンの配列を制御した炭素材の形成も可能である。
【0022】
また、陽極酸化と孔径拡大処理を繰り返し行うことにより孔径を連続的に変化させた細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いることもできる。このように、陽極酸化とウェットエッチングによる孔径拡大処理を繰り返す方法で作製される、テーパー形状の細孔を有するポーラスアルミナ、または、それを鋳型として作製したネガ型モールドをインプリントに用いることにより、炭素前駆体材料からのモールドの離型性が向上し、その結果、カーボンナノ構造表面を精度よく、高スループットで作製することが可能になる。
【0023】
また、ロール状のアルミニウムの表面に形成した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製した金属ピラーが配列したロール状モールドを、連続インプリント用モールドとして用いることもできる。このようなロール状インプリント用モールドを用いることにより、炭素前駆体材料に連続的にインプリント処理を施すことができ、それによってカーボン凹凸パターンを作製する際のスループットを一層向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明に係る表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材およびその製造方法によれば、サイズの均一な細孔または突起が規則的に配列した微細凹凸パターンが表面に形成された炭素材を効率よく容易に得ることができる。この表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材は、幅広い分野への応用展開が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、アルミニウム材1の表面にモールドとして機能する陽極酸化ポーラスアルミナ2の層を形成し、この細孔3が規則的に配列されたホールアレー構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナ2を、炭素前駆体として機能する高分子材4のインプリントに適用した場合を模式的に示したものである。陽極酸化ポーラスアルミナ2の表面の微細で規則的な凹凸構造を高分子材4の表面に転写し、その後、試料を不活性ガス雰囲気下で加熱し炭化処理を施すことで、表面に規則的で微細なピラーアレー構造の凹凸パターンを有する炭素材5を作製することができる。
【0026】
図2は、陽極酸化ポーラスアルミナ2を鋳型とし、その細孔3内へ物質6の充填を行った後、鋳型を溶解除去することで得られたネガ型モールド7により、高分子材8のインプリントを行い、その後、加熱による炭化処理を施すことで微細なホールアレー構造の凹凸パターンを有する炭素材9の作製を行う場合を模式的に示したものである。鋳型プロセスで作製したモールド7を用いることで、表面にホールアレーパターンが形成された炭素材9の作製が可能であることがわかった。
【0027】
図3は、耐熱性を有する基板11上に、高分子材を炭素材前駆体12として設け、この高分子材からなる炭素材前駆体12に、図1に示したような陽極酸化ポーラスアルミナ2の層を有するモールド13を用いてインプリントを行い、炭素材前駆体12の表面に微細な凹凸パターンを形成したのちモールド13を剥離し、炭素材前駆体12に炭化処理を施すことで、基板11上に所望の微細表面構造を有する炭素材14を形成したものである。高分子材の炭素化には、一般に、800℃以上、好ましくは1000℃以上の高温条件で熱処理を行う必要がある。したがって、基板11には、石英などの耐熱性に優れた材料を用いることが望ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により更に本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
実施例1〔フラン樹脂を用いたカーボンピラーアレーの形成〕
純度99.99%のアルミニウム板表面に、500 nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つSiC製モールドを押し付け、表面に微細な凹凸パターンを形成した。テクスチャリング処理を施したアルミニウム板を、0.1 Mの濃度に調整したリン酸水溶液中で、浴温0℃において直流200Vの条件下で2分間陽極酸化を行った。その後、10重量%リン酸水溶液に90分間浸漬し、孔径拡大処理を施した。作製した陽極酸化ポーラスアルミナを、フルオロアルキルシラン溶液に浸漬し、表面の離型処理を行った。離型処理後のポーラスアルミナモールドを2wt%シュウ酸を添加したフルフリルアルコール溶液に浸漬し、80℃で24時間保持することで重合固化しフラン樹脂の形成を行った。重合固化後のフラン樹脂よりモールドを剥離し、フラン樹脂の表面に微細な突起パターンを得た。その後、真空加熱炉を用いて1000℃で5時間加熱処理を施すことで炭素化を行った。図4に炭化処理後の炭素材ピラーアレー21の電子顕微鏡による観察結果を示す。
【0029】
実施例2〔フラン樹脂を用いたホールアレーの形成〕
純度99.99%のアルミニウム板表面に、500 nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つSiC製モールドを押し付け、表面に微細な凹凸パターンを形成した。テクスチャリング処理を施したアルミニウム板を、0.1 Mの濃度に調整したリン酸水溶液中で、浴温0℃において直流200Vの条件下で20分間陽極酸化を行った。その後、10重量%リン酸水溶液に30分間浸漬し、孔径拡大処理を施した。その後、試料の表面にイオンビームスパッタ装置を用いて、Ni電析の際の電極層として機能するPtを100nmスパッタした。電極層を付与した陽極酸化ポーラスアルミナの細孔内および細孔表面にNi電析を行った後、鋳型を溶解除去することでNiピラーが規則的に配列したネガ型モールドを得た。作製したモールドの表面を離型剤で処理したのち、2wt%のシュウ酸を溶解したフルフリルアルコールに浸漬し、80℃で24時間保持することで、重合固化を行った。得られたフラン樹脂よりメタルモールドを剥離し、真空加熱炉中で1000℃の条件下で5時間熱処理を行うことで炭素化を行った。図5に炭化処理後の炭素材ホールアレー31の電子顕微鏡による観察結果を示す。
【0030】
実施例3〔フルフリルアルコールの半重合体への熱インプリントによる炭素ナノパターンの作製〕
純度99.99%のアルミニウム板表面に、500 nm周期で突起が規則的に配列した構造を持つSiC製モールドを押し付け、表面に微細な凹凸パターンを形成した。テクスチャリング処理を施したアルミニウム板を、0.1 Mの濃度に調整したリン酸酸水溶液中で、浴温0℃において直流200Vの条件下で10秒間陽極酸化を行った。その後、10重量%リン酸水溶液に25分間浸漬し、孔径拡大処理を施した。この操作を5回繰り返すことで、細孔周期500nm、細孔開口部400nm、底部1500nm、孔深さ800nmのテーパー状細孔を有するポーラスアルミナを得た。試料表面にイオンビームスパッタ装置により、Ptを50nmコートしたのち、Pt層を電極としてNiメッキを行った。アルミナ細孔内および、その表面にNiを電析したのち、鋳型を溶解除去することでNiモールドを得た。得られた試料の表面を、フッ素系の表面処理剤により表面修飾した。離型処理を施したモールドを、フラン樹脂の半重合体シートに、150℃の加温条件下で、2t/cm2の条件下で押し付け、熱インプリントを行いパターン形成を行った。表面に微細パターンを形成したフラン樹脂半重合体を80℃で10時間熱処理しフラン樹脂としたのち、真空加熱炉中で1000℃の条件下で5時間加熱処理を行い、炭化処理を施し、規則的なくぼみパターンが形成された炭素材を得た。
【0031】
実施例4〔光インプリントにより形成したポリマーナノ構造体の炭化処理によるカーボンピラーアレーの形成〕
実施例1と同様の手法により作製したポーラスアルミナモールドの表面を離型処理した。これをモールドとして、光硬化性樹脂に光インプリントを行い、石英基板表面にポリマーピラーアレーを形成した。得られたポリマーピラーアレーを真空加熱炉中で1000℃5時間加熱処理を施すことで炭素化処理を行った。図6に、形成された高アスペクト比の炭素材ナノ構造体41の電子顕微鏡による観察結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る炭素材は、微細で規則的な表面凹凸パターンが要求されるあらゆる用途に展開可能であり、電極材等として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の炭素材の製造プロセスの一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の炭素材の製造プロセスの別の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の炭素材の製造プロセスのさらに別の例を示す概略構成図である。
【図4】実施例1で得られた炭素材ピラーアレーの電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
【図5】実施例2で得られた炭素材ホールアレーの電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
【図6】実施例4で得られた炭素材ナノ構造体の電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 アルミニウム材
2 陽極酸化ポーラスアルミナ
3 細孔
4 高分子材
5 炭素材
6 充填物質
7 モールド
8 高分子材
9 炭素材
11 耐熱性基板
12 炭素材前駆体
13 モールド
14 炭素材
21 炭素材ピラーアレー
31 炭素材ホールアレー
41 炭素材ナノ構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリントプロセスにより表面に規則的な微細凹凸パターンが形成された有機系材料が熱処理により炭素化されていることを特徴とする、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項2】
表面に形成された凹凸パターンが、ホールアレー構造またはピラーアレー構造からなり、その細孔径または突起径が、10nmから1μmの範囲内にある、請求項1に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項3】
前記ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が0.5以上である、請求項2に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項4】
前記ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が4以上である、請求項3に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項5】
前記ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が0.5以上である、請求項2に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項6】
前記ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が10以上である、請求項5に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項7】
前記炭素化される有機系材料が、該有機系材料とは別の材料からなる基板の上に設けられたものからなる、請求項1〜6のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項8】
前記基板の材料が800℃以上の耐熱温度を有している、請求項7に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材。
【請求項9】
有機系材料の表面にインプリントプロセスにより規則的な微細凹凸パターンを形成し、該有機系材料に熱処理を加えて有機系材料を炭素化することを特徴とする、表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項10】
表面に形成される凹凸パターンが、ホールアレー構造またはピラーアレー構造からなり、その細孔径または突起径が、10nmから1μmの範囲内にある、請求項9に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項11】
前記ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が0.5以上である、請求項10に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項12】
前記ホールアレー構造のアスペクト比(細孔深さ/細孔径)の値が4以上である、請求項11に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項13】
前記ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が0.5以上である、請求項10に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項14】
前記ピラーアレー構造のアスペクト比(ピラー高さ/ピラー径)の値が10以上である、請求項13に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項15】
前記有機系材料とは別の材料からなる基板の上に前記有機系材料を設け、該有機系材料を炭素化する、請求項9〜14のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項16】
前記基板に、800℃以上の耐熱温度を有する材料を用いる、請求項15に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項17】
前記有機系材料として炭素前駆体として機能する高分子材料を用い、インプリント用モールドを前記高分子材料の層に押し付けながら該高分子材料層を熱または光によって固化し、しかる後に固化された高分子材料層からインプリント用モールドを剥離することにより高分子材料層の表面に規則的な微細凹凸パターンを形成する、請求項9〜16のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項18】
前記有機系材料として炭素前駆体として機能する高分子材料を用い、該高分子材料に、該高分子材料を軟化点以上の温度に加温して該高分子材料にインプリント用モールドを押しつけ該モールドのパターン転写を行った後、該高分子材料に熱処理を加え該高分子材料を炭素化する、請求項9〜16のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項19】
炭素前駆体としてフラン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂のいずれか、あるいはそれらの混合物を用いる、請求項17または18に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項20】
アルミニウム材の陽極酸化により形成される表面に規則的なホールアレー構造を有する陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したピラーアレー構造を有するモールドを、インプリント用モールドとして用いる、請求項9〜19のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項21】
硫酸を電解液として用い、化成電圧10V〜30Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項22】
シュウ酸を電解液として用い、化成電圧30V〜130Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項23】
リン酸を電解液として用い、化成電圧180V〜200Vにおいて作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20に記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項24】
定電圧で陽極酸化を施した後、一旦酸化皮膜を溶解除去し、再び同一条件下で陽極酸化を施すことで作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20〜23のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項25】
陽極酸化に先立ち、アルミニウムの表面に微細な窪みを形成し、これを陽極酸化時の細孔発生の開始点として作製した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20〜24のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項26】
陽極酸化と孔径拡大処理を繰り返し行うことにより孔径を連続的に変化させた細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製したネガ型をインプリント用モールドとして用いる、請求項20〜25のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。
【請求項27】
ロール状のアルミニウムの表面に形成した陽極酸化ポーラスアルミナ、またはそれを鋳型として作製した金属ピラーが配列したロール状モールドを、連続インプリント用モールドとして用いる、請求項20〜26のいずれかに記載の表面に規則的な凹凸パターンを有する炭素材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47454(P2010−47454A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214631(P2008−214631)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】