説明

表面を絶縁化したグラファイトシートとその製造方法

【課題】 熱伝導性、柔軟性を維持しながら表面からのグラファイト粉末の脱離を防止し、表面の電気的な絶縁性を持たせたグラファイトシートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、膜厚300μm以下のポリイミドフィルムを不活性ガス中で室温から昇温して1000℃から1600℃の温度範囲までで焼成する予備処理工程と、前記予備処理工程後室温から昇温して温度2500℃以上の温度までで焼成しグラファイトシートを得る本処理工程と、前記本処理工程で得られたグラファイトシートを圧延処理する圧延処理工程と、前記圧延処理工程後グラファイトシートの表面に絶縁材料層を設ける行程とを有するグラファイトシートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラファイトシートの製造方法に関し、特に表面に絶縁層を有するグラファイトシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ポリイミドフィルムを熱処理し、その後圧延処理することによって柔軟性のあるグラファイトフイルムを直接的に得ることは公知である。
【0003】このフィルムの物性としては、単結晶グラファイトと同様なものを呈し、かつ鱗片状の剥離や、残留酸などの現象が生ぜず、高品質で折れ曲げに強く柔軟性富む熱伝導性に優れたグラファイトフィルムが得られるものである。
【0004】一方、近年、電子機器の小型化、高性能化が進むにつれて、高密度に集積されたCPUなどから発生する熱をいかにして放出するかが重要な検討項目になってきている。また、放熱性のみならず、いかに場所による温度ばらつきを低減するかも重要である。
【0005】これまでは、熱伝導性に優れたアルミ板や銅板などの金属板が適当に加工されたり、冷却ファンと組み合わせたりして放熱対策がなされているのが現状である。
【0006】かかる状況下で、グラファイトシートは、金属板と比較すると熱伝導性がよく、軽く柔軟性があるなどの特長を有するために、電子機器や装置、設備の熱伝導材として期待され始めてきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、グラファイトシートをそのまま電子機器の内部で熱伝導材として使用する際には、電気伝導性が優れているために、電子部品間の電気的ショートを発生する場合がある。
【0008】また、直接金属と接触させると、熱反応を発生し、変質などが生じる場合もある。
【0009】これらの不都合を防ぐために、グラファイトシートに有機高分子のフィルムを貼ることが提案されている。しかしながら、有機高分子薄膜を貼ることは、発熱体とグラファイトを接触させた時に、グラファイトへの熱伝導の妨げになる。
【0010】従って、絶縁性に優れかつ化学的に安定で、熱抵抗の少なくなるような表面を持つグラファイトシートの実現が待望されている状況にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、膜厚300μm以下のポリイミドフィルムを不活性ガス中で室温から昇温して1000℃から1600℃の温度範囲までで焼成する予備処理工程と、前記予備処理工程後室温から昇温して温度2500℃以上の温度までで焼成しグラファイトシートを得る本処理工程と、前記本処理工程で得られたグラファイトシートを圧延処理する圧延処理工程と、前記圧延処理工程後グラファイトシートの表面に絶縁材料層を設ける工程とを有するグラファイトシートの製造方法である。
【0012】このような構成により、絶縁性に優れ、化学的に安定なグラファイトシートが実現される。
【0013】
【発明の実施の形態】請求項1記載の本発明は、膜厚300μm以下のポリイミドフィルムを不活性ガス中で室温から昇温して1000℃から1600℃の温度範囲までで焼成する予備処理工程と、前記予備処理工程後室温から昇温して温度2500℃以上の温度までで焼成しグラファイトシートを得る本処理工程と、前記本処理工程で得られたグラファイトシートを圧延処理する圧延処理工程と、前記圧延処理工程後グラファイトシートの表面に絶縁材料層を設ける工程とによって、表面が絶縁層化されたグラファイトシートとその製造方法である。
【0014】このような構成により、グラファイトシートの表面の絶縁化、化学的安定性の向上、及びグラファイト粉末の脱離防止の作用を呈する。
【0015】このグラファイトシートの表面は多くの場合層状構造の面が広がっているために、化学反応が表面一層のみにとどまることが多い。内部まで反応が進むようにするために、請求項2に示すようにグラファイトシートの表面に微細な傷を付けることができる。
【0016】ここで、請求項3記載のように、絶縁材料層を設ける工程は、グラファイトシートの表面を絶縁化する工程である。
【0017】このような構成であると、高分子フィルムで包むことにより絶縁する場合のように熱接触を悪くする恐れがなくなり、グラファイトシートの高い熱伝導性を有効に利用することができる。
【0018】このような構成とするための絶縁層としては、基本的には、グラファイトシートの用途に合った特性が維持できる範囲のものであれば使用できるものである。
【0019】また、グラファイトシートの表面に絶縁層を形成するためには、グラファイトシートの表面の一定の厚さの層を化学的に絶縁性のものにすることが有効であるが、そのためにはグラファイト表面の炭素と、例えば水素やハロゲンの原子と結合させ、表面層が2重結合を持たないようにすればよい。
【0020】ここで、請求項4記載のように、グラファイトシートの表面に形成される絶縁材料層の膜厚が0.1μmから50μmの範囲にあることが好ましい。
【0021】というのは、グラファイトシートの基本特性を発現させるためには、絶縁材料層は薄いほうが好ましく、かかる範囲より厚いと熱伝導特性の良さを発現させるのに長時間かかってしまうが、その一方で薄過ぎると機械的強度などの観点から好ましくないためである。
【0022】そして、請求項5記載のように、絶縁材料層は元のグラファイトシートを構成している炭素原子と、これに結合したフッ素からなるものであることが、絶縁性、耐熱性、機械的強度など用途として多く使われる条件からすると好適である。
【0023】また、請求項6記載のように、絶縁材料層を設ける工程は、グラファイトシートを特定の温度範囲に保ちつつ一定の時間フッ素ガスにさらす工程であってよい。形成される絶縁材料層の厚さは、この温度と時間によって規定できる。
【0024】グラファイトシートの表面をフッ素ガスと反応させるためには、必ずしも高温の条件にする必要はなく、請求項7記載のように、フッ素含んだプラズマを用いるものであってもよい。プラズマを用いてフッ素を導入し、絶縁化処理するに際しては、グラファイトシートの温度を下げて行ってもよい。
【0025】また、フッ素を含むプラズマを形成するには、フッ素ガスに限らず、フッ化水素ガスを用いてもよい。当然のことながら、プラズマを発生させるにはアルゴンなどの希釈ガスが用いられてもよい。
【0026】請求項8記載のように、グラファイトシートの表面を絶縁材料化するために塩素、または臭素を用いてもよいが加熱反応では絶縁層化しないため、請求項9に記載のように、プラズマを用いることが好ましい。
【0027】ここで、請求項10記載のように、グラファイトシートの表面に形成した絶縁材料層の表面で、その絶縁材料層の厚さに比べて十分薄い領域を酸素プラズマによって活性化することができる。
【0028】そして、請求項11記載のように、活性化された絶縁材料層の上に金属等の導電性の薄膜で形成された導電性の配線回路を設置することができる。
【0029】または、請求項12記載のように、金属等の導電性の薄膜で形成された導電性の配線回路を設置されたポリイミドのような絶縁性の高分子フィルムをグラファイトシートに貼ることを行ってもよい。
【0030】以下、本発明の各実施の形態に即して、より詳細に説明をしていく。
【0031】(実施の形態1)本実施の形態では、ポリイミドフィルムとして、東レ・デュポン製(商品名カプトン)の膜厚75μmのものを用いた。
【0032】次に、熱処理による発泡性を出すために、かかるポリイミドフィルムを用いた予備焼成を、窒素中で、昇温速度5℃/minで昇温し、最高処理温度を1200℃として行った。
【0033】そして、本焼成を、Arガス雰囲気下で、昇温速度20℃/minで昇温し、最高処理温度を2800℃として行った。
【0034】この本焼成後のフィルムは、グラファイトシートとなっており、発泡状態にあり、膜厚は250ないし300μmで、柔軟性はなく、固くてもろいものであった。
【0035】そこで、グラファイトシートに柔軟性を持たせるために、ローラーにより圧延を行った。
【0036】具体的には、グラファイトシートの両面を膜厚125μmのポリイミドフィルムで挟み、ローラー間隔50μmに設定した圧延ローラーで圧延を行った。
【0037】この圧延後の膜厚は95μmであり、十分な可撓性及び柔軟性を持っていた。
【0038】以上のグラファイト化の条件及び圧延処理の条件は、代表例であり、確実にグラファイト化され圧延処理が実行されるのであれば、かかる条件に限定されるものでないことはもちろんである。
【0039】こうして得られたグラファイトシートを素材にして、これにニッケル製の反応管中350℃で1時間フッ素を反応させてグラファイトシートの表面から厚さ約5μmところまでフッ素化した。素材のグラファイトシートの表面が発泡していて、圧延した後でも平面でないことからこのフッ素化した層の厚さは必ずしも均一ではないが、どの部分でも絶縁性を示した。
【0040】もちろん、フッ素を反応させる温度を高くすると、また時間を長くするとフッ素化した層は厚くなる。発明者らは、種々検討した結果、使用に耐えるフッ素化した絶縁材料層の厚さは0.5から50μmが実用的には好ましいことを知り、そのためには、反応条件として320℃から630℃の間の温度で、このましくは350℃から430℃の間の温度で0.5から12時間の間フッ素ガスにさらすことで実現されることを見出した。
【0041】さて、本実施の形態では、発熱源の温度を100℃に設定し、5cm角のグラファイトシートのみ用いたもの、その両面を上記したと同様に5μmの厚さにフッ素化した絶縁層を形成したものであって、グラファイトシートを1枚のみ用いたもの、2枚重ねて用いたもの及び3枚重ねて用いたものを各々用意し、発熱源に接触させて定常状態になった時点での温度を測定した。
【0042】その結果は、素材のグラファイトシートのみだと87℃、フッ素処理して表面を絶縁化したグラファイトシートを用いた場合も87℃と、実質的に変わらない温度となった。
【0043】また、両面にかかる絶縁層を形成したグラファイトシートは、単独のグラファイトシートと同様な可撓性及び柔軟性を保っており、更に鉄板と軽く接触させ相対移動してもグラファイト粉末は発生しなかった。
【0044】更に、両面に絶縁層を形成したグラファイトシートは、表及び裏方向に各々100回湾曲させた場合ても剥離や亀裂などの破損は全く発生しなかった。
【0045】従って、本実施の形態による両面が絶縁層で覆われたグラファイトシートは、グラファイトシート本来の熱伝導性、可撓性及び柔軟性を保ったまま、機械的強度の向上、グラファイト粉末の脱離の防止、表面の絶縁化を実現したものであるといえる。
【0046】なお、本実施の形態のグラファイトシートを電子機器装置内に取り付けるために、切断、トリミング、取り付け穴あけ等の加工をする場合には、グラファイトシートに加工すると同じ扱いですむことはもちろんである。
【0047】(実施の形態2)本実施の形態では、実施の形態1と同様な素材となるグラファイトシートを作成するにあたって、ローラーで圧延するに当たって、ローラーの表面に600番のサンドペーパーを取り付けて圧延を行った。その結果、グラファイトシートに柔軟性を与えるとともに表面に極めて細かな圧痕を形成することができた。このグラファイトシートを実施の形態1の場合と同様にフッ素と反応させたところ、極めて容易に表面の10μmの厚さにフッ素化ができた。この方法によれば本グラファイトシートの中にまで化学反応を容易に進めることができるようになる。
【0048】さらに、用いるサンドペーパーの粒子サイズを各種試みたところ、400番(50ミクロン)から1000番(15ミクロン)程度のものが好ましいことが分かった。これにより、シートに深さ15〜50ミクロン程度の傷が形成される。
【0049】また、圧延の際に上下のローラーの回転速度(周辺速度)に差をつけると、こすれるようになり圧痕ではなく細かなスクラッチ状になり、圧痕を付けた場合よりも反応が進みやすくなる。圧痕の場合よりも、サンドペーパーの粒子は5ミクロン以上と細かくてもよい。
【0050】圧延に用いる上下のローラーの片方にだけ、サンドペーパーを取り付ければ、グラファイトシートの片面にのみ細かな傷を付けることができ、その面のほうだけ厚いフッ素化反応をさせることができる。
【0051】傷を付ける方法として本実施の形態では、サンドペーパーを用いたがこれに限るものではなく、また圧延の際に同時に行うのではなく、例えば圧延した後に改めて、例えばサンドプラスなどで粒径5ミクロン〜50ミクロンの粒径で表面に傷を付ける方法であってもよいことは自明である。
【0052】(実施の形態3)本実施の形態では、実施の形態1と同様の素材となるグラファイトシートを作製した後、このシートをプラズマ発生装置内に設置し、室温でアルゴンで希釈したフッ素ガスを含むプラズマにさらし、プラズマにさらされた片面をフッ素化して厚さ1.5μmの絶縁性の層を形成したグラファイトシートを作製した。
【0053】こうして得られたグラファイトシートについては、グラファイトシート本来の熱伝導性を維持しながら表面の絶縁化について、実施の形態1と同様の結果が確認された。また実施の形態1で示したように、使用に耐えるフッ素化した層の厚さは0.5から50μmであり、これを得るための工程は、グラファイトシートをマイナス200℃からプラス250℃の間で、好ましくはマイナス50℃からプラス100℃の間の温度で、10分から200分間フッ素を含むプラズマにさらすことが適当であることを見出した。
【0054】プラズマによって絶縁層を形成する場合は、片面にのみ絶縁層が形成され、両面に絶縁層を形成する場合には2回の反応を行わなければならない。しかしながら、常に両面を絶縁性にする必要があるわけではなく、導電材料として片面だけ絶縁化することが必要な場合もある。
【0055】従って、本実施の形態によるセラミック薄膜で両面が覆われたグラファイトシートは、グラファイトシート本来の熱伝導性を保ったまま、機械的強度の向上、グラファイト粉末の脱離の防止、表面の絶縁化を実現したものであるといえ、更にその上を高分子薄膜で覆ったものは、グラファイトシート本来の可撓性及び柔軟性をも呈し得るものである。
【0056】なお、絶縁層の形成方法としてアルゴンを用いたが、必ずしもこれに限るものではない。例えばフッ素ガスを希釈するのに窒素ガスを用いることも可能であり、この場合には絶縁層の中に窒化炭素成分も含まれる。窒素炭素は硬く耐摩耗性がありグラファイトシートの表面を保護するために有効である。かかる窒化炭素はフッ素化した炭素層中に分散しているので、本来のグラファイトシートの柔軟製を損なうものではないことはもちろんである。
【0057】(実施の形態4)本実施の形態では、実施の形態1と同様の単独のグラファイトシートを作製した後、グラファイトシートをプラズマ装置の中に設置し、室温で酸素プラズマに20分間さらした。この操作により、グラファイトシートの表面に形成されたフッ化炭素の絶縁層は親水性を呈するようになった。また、このような処理をされた絶縁層の表面は、接着剤とのなじみがよくなり、接着強度が大きくなった。さらに金属を蒸着したときに均一に十分な密着性を持った膜となることが分かった。
【0058】そして、本実施の形態のグラファイトシートを用いて、実施の形態1のものと同様に物性を確認し比較したところ、特に接着性が改善されており、過度に折り曲げたりした場合でも、絶縁層がグラファイトシート表面より剥離するような現象は全く発生しなかった。
【0059】従って、本実施の形態による絶縁層の表面の改質は実施の形態3によるプラズマ法で形成された絶縁層にも適用できることは言うまでもない。
【0060】(実施の形態5)本実施の形態では、実施の形態2と同様にプラズマによりグラファイトシートの表面に反応性の元素を結合させるにあたり、フッ素の代わりに塩素ないし臭素用いた。塩素または臭素、沃素はグラファイトシートを加熱しただけでは反応しない。そのためにプラズマ化しエネルギーの高い状態にして反応させる必要があった。このうち沃素は内部まで反応が進行しなかったので、実用的でない。また塩素と臭素を比較すると、塩素の方が反応が進みやすいことが分かった。すなわちプラス100℃で3時間プラズマにさらしたところ、形成された絶縁層の厚さは塩素の場合には約1μmなのに対して臭素では0.6μmであった。但しいずれも絶縁性を示し、またグラファイトシート本来の柔軟性を損なうものではなかった。
【0061】そして、本実施の形態のグラファイトシートを用いて、実施の形態1のものと同様に物性を確認し比較したところ、特に接着性が改善されており、過度に折り曲げたりした場合でも、絶縁層がグラファイトシート表面より剥離するような現象は全く発生しなかった。
【0062】また本実施例で得られた絶縁層に対して、実施例3に示した、酸素プラズマ処理は同様に有効であったことを付記しておく。
【0063】(実施の形態6)本実施の形態では、実施の形態4によって表面の反応性を大きくした絶縁層を持つグラファイトシートでサイズが10cmx10cmのものに銅を1μmの厚さに蒸着し、更にその銅の蒸着膜をリソグラフィーによりパワーIC用の回路パターンに形成した。この上にICチップを直接フリップチップ方式でボンディングした。これを同じサイズのポリイミドフィルムの上に同様の回路を形成し、ICチップをボンディングした場合と比較したところ、ICチップを動作させて定常状態になったときの温度はグラファイトシート上のものが85℃であったのに対しポリイミド上のものは97℃を超える温度になってしまった。
【0064】本実施の形態によれば、熱伝導性に優れたグラファイトシートの上に薄い絶縁層を介して直接回路を形成することができ、発熱の大きい素子を効率的に冷却することができる。さらに、本グラファイトシート自身が柔軟であることから、従来使われてきたポリイミドを超えるような新しい機能の実現が可能となる。
【0065】(実施の形態7)本実施の形態では、実施の形態3によって表面処理されたグラファイトシート、あるいは表面に絶縁材料層の形成されていないグラファイトシートに適当に選択された接着剤によって、電子回路の形成されたポリイミド等の高分子からなるフィルムが接着された。
【0066】このようなフレキシブルな電子回路をもちいて、実施の形態5と同様に同一サイズの電子回路を作りICの温度を比較したところ、88℃程度であった。本実施例によれば、電子回路のベースフィルムとして、50μmのポリイミドフィルムが介在しているために、回路上に付けた部品、特にトランジスタやICなどからの発熱を取り去る効果は、実施の形態6に比較すると劣るが、従来使われてきた回路材料構成をあまり大幅に変えることなく使用できる。
【0067】高分子フィルムだけの回路では発熱が問題となってきているような部分に本実施の形態の高分子フィルムの電子回路をグラファイトシートに貼り付けた構成を使用することにより、簡便に解決することができる。
【0068】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ポリイミドフィルムを予備焼成と本焼成からなる焼成を行い、焼成後圧延ロ−ラーを用いて圧延を行ったグラファイトシートの表面に絶縁材料層を設けることにより、柔軟性、電気的絶縁性に優れ、グラファイト粉末が脱離しにくいといった特性の改善が図られた良品質のグラファイトシ−トが得られるものである。更にこの絶縁層の表面を処理することで、電子回路を直接形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 膜厚300μm以下のポリイミドフィルムを不活性ガス中で室温から昇温して1000℃から1600℃の温度範囲までで焼成する予備処理工程と、前記予備処理工程後室温から昇温して温度2500℃以上の温度までで焼成しグラファイトシートを得る本処理工程と、前記本処理工程で得られたグラファイトシートを圧延処理する圧延処理工程と、前記圧延処理工程後グラファイトシートの表面に絶縁材料層を設ける工程とによって表面に絶縁性の層が形成されたグラファイトシートの製造方法。
【請求項2】 圧延処理工程またはその後において表面に微細な傷を付ける工程が含まれている請求項1記載のグラファイトシートの製造方法。
【請求項3】 絶縁材料層を設ける工程は、グラファイトシートの表面にフッ素を反応させる工程である請求項1乃至2記載のグラファイトシートの製造方法。
【請求項4】 絶縁材料層を設ける工程は、グラファイトシートの表面に塩素ないし臭素を反応させる工程である請求項1記載のグラファイトシートの製造方法。
【請求項5】 膜厚300μm以下のポリイミドフィルムを不活性ガス中で焼成し、圧延処理されたグラファイトシートであって、前記圧延処理後グラファイトシートの表面に絶縁材料層を形成したグラファイトシート。
【請求項6】 圧延処理またはその後においてグラファイトシートの表面に微細な傷がつけられている請求項5記載のグラファイトシート。
【請求項7】 絶縁材料層は、グラファイトシートの表面にフッ素を反応させて形成される請求項5乃至6記載のグラファイトシート。
【請求項8】 絶縁材料層が主として炭素とフッ素からなる請求項5記載のグラファイトシート。
【請求項9】 絶縁材料層は、グラファイトシートの表面に塩素ないし臭素を反応させて形成させる請求項5記載のグラファイトシート。
【請求項10】 グラファイトシートの表面に形成された絶縁材料層の上に導電性の材料の薄膜で電子回路が形成された請求項6乃至8記載のグラファイトシート。

【公開番号】特開2000−247740(P2000−247740A)
【公開日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−50015
【出願日】平成11年2月26日(1999.2.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】