表面プラズモンセンサー
【課題】簡易な構成で、吸収がある検出対象の屈折率を、光吸収の影響を受けずに測定できる表面プラズモンセンサーを提供する。
【解決手段】表面プラズモンセンサー1は、プリズム5上に形成されており、検出対象を含む試料14を接触させた金属膜6に対し、光源2から出射された光ビーム13を金属膜6の試料14が接触している面とは反対側の面に照射することにより、試料14の屈折率を検出する構成である。金属膜6の膜厚は、上記検出対象を含まない試料14を接触させた金属膜6に対する光ビーム13の反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄い。
【解決手段】表面プラズモンセンサー1は、プリズム5上に形成されており、検出対象を含む試料14を接触させた金属膜6に対し、光源2から出射された光ビーム13を金属膜6の試料14が接触している面とは反対側の面に照射することにより、試料14の屈折率を検出する構成である。金属膜6の膜厚は、上記検出対象を含まない試料14を接触させた金属膜6に対する光ビーム13の反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表面プラズモン共鳴を利用した表面プラズモンセンサーが多く開発されている。表面プラズモンセンサーは、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出するためのものであり、溶液の濃度測定、蛋白質・高分子の検出等に広範に用いられている。また、表面プラズモンセンサーは、検出対象を含む液体または気体の屈折率の時間変化を追うことにより、金属膜の該検出対象を吸着する吸着層への該検出対象の吸着過程や反応の時間変化等も検出することができる。
【0003】
ここで、溶液の濃度を測定するための表面プラズモンセンサーを例として、表面プラズモンセンサーの具体的な構成について説明する。表面プラズモンセンサーは、誘電体基板上に金属膜が形成されており、該金属膜の該誘電体基板が形成されている側とは反対側の面に、検出対象、例えば所定の分子が吸着可能な吸着層が形成されており、該吸着層に対し上記分子を含む溶液を接触させることにより、該分子を該吸着層に吸着させる。そして、上記表面プラズモンセンサーは、光源から出射された光ビームを上記金属膜の上記吸着層が形成されている面とは反対側の面に照射することにより、上記溶液の屈折率を検出する。さらに、上記表面プラズモンセンサーは、上記溶液の屈折率の検出と同様に、上記分子を含まない溶媒の屈折率も検出し、上記溶媒の屈折率と上記溶液の屈折率との屈折率変化から、上記溶液の濃度を求める。
【0004】
上記表面プラズモンセンサーでは、上記屈折率を検出するために、表面プラズモン共鳴を利用している。表面プラズモン共鳴とは、誘電体基板上の金属膜に適切な偏光方向および入射角で光ビームを入射させた場合、該光ビームの該金属膜に平行な方向の波数と、表面プラズモンの波数とが一致すると、共鳴を起こす現象のことである。なお、表面プラズモンとは、金属表面の自由電子が、金属表面に平行な方向に振動する粗密波である。
【0005】
すなわち、上記表面プラズモンセンサーでは、上記光ビームを上記金属膜に照射したとき、該光ビームが適切な入射角および偏光方向で該金属膜に入射されると、該光ビームは該金属膜上において表面プラズモンに変換される。そのため、上記光ビームの上記金属膜に対する反射率は、表面プラズモンに変換された分だけエネルギーが利用されるために小さくなる。
【0006】
上記光ビームを適切な入射角および偏光方向で上記金属膜に入射した場合の入射角と反射率との関係を、横軸を入射角、縦軸を反射率としたグラフとして表現すると、反射率がある入射角で低下していることが分かる。この反射率が低下した部分を、dipという。以下の説明においては、上記dipにおける反射率の最小値を反射率Rminとし、このときの入射角を入射角θminとする。
【0007】
すなわち、上記適切な入射角とは、上記光ビームのほとんどが上記金属膜上で表面プラズモンに変換される入射角θminである。また、上記適切な偏光方向とは、上記誘電体基板と上記金属膜との間に形成された界面の法線と上記光ビームの光軸とを含む面を入射面とし、該入射面に対して平行な偏光方向(p偏光)である。なお、上記光ビームの偏光方向が、上記入射面に対して垂直な偏光方向(s偏光)では、上記表面プラズモン共鳴は起こらない。
【0008】
上記表面プラズモンセンサーは、表面プラズモン共鳴を利用して入射角θminを求めることにより、予め計算された入射角θminと上記溶液の屈折率との関係から、該溶液の屈折率を算出することができる。
【0009】
また、非特許文献1には、上記金属膜の膜厚および上記入射角θminは、上記金属膜上に接触する媒質の屈折率に依存していると記載されている。したがって、上記入射角と上記反射率との関係は、上記金属膜上に接触する溶媒または溶液の屈折率に応じて異なる。そのため、上記表面プラズモンセンサーは、上記分子を含まない溶媒を上記金属膜に接触させた場合と、上記分子を含む溶液を上記金属膜に接触させた場合とにおける屈折率変化を検出することができる。
【0010】
そして、上記表面プラズモンセンサーは、上記屈折率変化を用いて、予め計算された屈折率と上記溶液の濃度との関係から、該溶液の濃度を算出することができる。
【0011】
表面プラズモンセンサーの金属膜の膜厚は、一般に、検出対象を含む液体または気体の正確な屈折率を検出するために、検出対象を含まない液体または気体を金属膜に接触させた場合における、光ビームの該金属膜に対する反射率Rminが最も小さくなるように選択される。以下の説明においては、反射率Rminが最も小さくなる金属膜の膜厚を膜厚dと呼ぶ。
【0012】
しかしながら、従来の表面プラズモンセンサーは、吸収がある検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する場合には、金属膜の膜厚を膜厚dとしたとしても、検出対象の光吸収特性の変化に伴い入射角θminの値が変化してしまう。その結果、従来の表面プラズモンセンサーでは、検出対象を含む液体または気体の正しい屈折率を算出することができないという問題があった。
【0013】
吸収がある検出対象を含む液体または気体の正確な屈折率を検出するためには、所定の濃度の検出対象を含む液体または気体について、消衰係数に対する入射角θminと屈折率との関係を予め算出または測定しておく必要がある。
【0014】
しかしながら、入射角θminと屈折率との関係はほぼ線形であるが、消衰係数と入射角θminとの関係は線形ではないため、消衰係数の細かい変化に対する入射角θminを予め算出または測定する必要がある。そのため、入射角θminから、検出対象を含む液体または気体の屈折率、消衰係数および濃度を算出するための計算が非常に複雑となってしまう。
【0015】
そこで、上記問題の解決手段として、特許文献1では、以下の2つの方法が提案されている。第1の方法は、光源の波長を検出対象の吸収最大波長とし、光吸収変化が原因で起こる屈折率変化を測定する方法である。第2の方法は、入射角θminから屈折率を、反射率の変化から消衰係数を求める方法である。
【特許文献1】特開2001−242072号公報(公開日:2001年9月7日)
【非特許文献1】Surface Plasmons on smooth and rough surfaces and on gratings, Heinz Raether, Springer-Verlag, 1988 p.118〜p.123
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載された第1の方法および第2の方法には、それぞれ以下のような問題点がある。
【0017】
まず、第1の方法は、光源の波長を検出対象の吸収最大波長としているが、光源の波長が検出対象の吸収最大波長近傍のときのみ有効であり、光源の波長が検出対象の吸収最大波長と大きく異なる場合には適用することはできない。したがって、上記第1の方法では、光源の波長を常に検出対象の吸収最大波長に合わせる必要がある。しかしながら、光源の波長には制限があり、かつ、自由に波長を設定することはできないために、上記第1の方法は実用的でないという問題があった。
【0018】
また、第2の方法では、入射角θminから屈折率、反射強度から消衰係数を求めているが、入射角θminは消衰係数にも依存するため、正確な屈折率を検出することができない。また、消衰係数の増加に伴い、反射率Rminも増加するために、dipが判別しにくくなり、入射角θminを検出するときのS/Nが悪化してしまう。このように、上記第2の方法では、吸収のある検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する場合には、光吸収の影響を受けるために正確な屈折率を検出することができず、検出精度が悪くなってしまう。
【0019】
さらに、上記第2の方法では、消衰係数を算出するためには反射強度を正確に求める必要があり、p偏光とs偏光の両方で測定するとともに、上記各偏光方向に対する透過率等を各入射角に対して補正しなければならず、作業が非常に煩雑となってしまう。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、吸収がある検出対象の屈折率を、光吸収の影響を受けずに測定できる表面プラズモンセンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の表面プラズモンセンサーは、上記課題を解決するために、透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーであって、上記金属膜の膜厚は、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜に対する上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0022】
従来の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとしていた。上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとした場合は、消衰係数が0のときに上記光ビームの上記金属膜に対する反射率の最小値Rminと、反射率Rminにおける上記光ビームの上記金属膜に対する入射角θminとが最小値となる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0のとき最小値となり、消衰係数の増加に伴い単調増加していく。そのため、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0023】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で上記入射角θminおよび上記反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。
【0024】
そのため、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとする場合と比較して、所定の範囲内の消衰係数において、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。そのため、吸収がある検出対象を用いた場合でも、上記入射角θminは消衰係数にほとんど依存しない。したがって、従来の装置の金属膜厚を薄くするだけという簡易な構成で、光吸収の影響を受けずに吸収がある検出対象の屈折率を正確に検出することができる。
【0025】
さらに、本発明の表面プラズモンセンサーは、消衰係数の増加に伴う反射率Rminの変動も抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。また、入射角θminと屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は線形であるため、非常に単純な計算により、入射角から上記液体または上記気体の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。
【0026】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜は、金からなることが好ましい。
【0027】
上記検出対象を含む液体または気体は、上記金属膜に直接接触する。そのため、上記金属膜は上記液体または上記気体によって化学反応を起こさない安定した金属から構成されていることが望ましい。金は、非常に安定した金属であり、錆びないために耐久性が高く、さらに、表面プラズモンを効率よく励起する。そのため、本発明の表面プラズモンセンサーの金属膜として金を用いることにより、上記検出対象を含む上記液体または上記気体によって化学反応を起こさず、該液体または該気体の屈折率を高い分解能で検出するとともに、金属膜の酸化による経時劣化を防ぐことができる。
【0028】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記光源の波長は、約600nm〜約1550nmであってもよい。
【0029】
金属膜上に表面プラズモンを励起させるためには、光源から出射される光ビームの波長が重要である。上述したように、上記金属膜は金から構成されていることがもっとも望ましいが、金から構成された該金属膜上に表面プラズモンを励起するためには、約600nm〜約1550nmの波長の光ビームを該金属膜に照射することが望ましい。上記光源から約600nm〜約1550nmの波長の光ビームを金から構成された上記金属膜に照射することにより、表面プラズモンの励起効率が高まり、高い分解能で上記検出対象を含んだ上記液体または上記気体の屈折率を検出することができる。
【0030】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差が、約20nm以下であってもよい。
【0031】
上記金属膜の膜厚が上記膜厚dである場合、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0032】
また、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも大きく異なる値にした場合には、該金属膜の膜厚を該膜厚dにした場合と同様に、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0033】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差を約20nm以下にすることにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を、膜厚dの場合よりも抑えることができる。また、反射率Rminの変動も、膜厚dの場合よりも抑えることができるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0034】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差が、約10nm〜約15nmであってもよい。
【0035】
上記構成により、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を十分に小さく、例えばdipの1/10程度にまで抑えること可能である。そのため、上記検出対象を含んだ上記液体または上記気体の正確な屈折率が検出可能な、検出対象の消衰係数の範囲を最大限にすることができる。また、この消衰係数の範囲における反射率Rminの変動も、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとした場合と比較して、半分以下に抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0036】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記誘電体基板は、上記表面プラズモンセンサーから着脱可能な構成であってもよい。
【0037】
金属膜を形成した誘電体基板が、表面プラズモンセンサーから着脱可能であることにより、検出対象に応じて金属膜を誘電体基板ごと取り替えることが可能となる。これにより、1つの装置を用いて、多種の検出対象の検出を行うことが可能となる。すなわち、他の材料から構成されており、かつ、他の膜厚を有する金属膜が形成された誘電体基板と取り替えることにより、上記表面プラズモンセンサーの感度や測定範囲等を変えることができる。
【0038】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、金属膜表面に、特定の分子を吸着する吸着層を備えていてもよい。
【0039】
上記検出対象を含む液体または気体には、上記検出対象以外の物質が混入している可能性がある。その場合、表面プラズモンセンサーによって上記液体または上記気体の屈折率を検出すると、上記検出対象および上記物質が含まれた濃度が検出されてしまう。
【0040】
そこで、本発明の上記構成にすることにより、検出対象である、所定の分子のみを吸着することができ、該分子のみの濃度を知ることが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の表面プラズモンセンサーは、以上のように、誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーであって、上記金属膜の膜厚は、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜に対する上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0042】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で上記入射角θminおよび上記反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。
【0043】
そのため、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとする場合と比較して、所定の範囲内の消衰係数において、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。そのため、吸収がある検出対象を用いた場合でも、上記入射角θminは消衰係数にほとんど依存しない。したがって、従来の装置の金属膜厚を薄くするだけという簡易な構成で、光吸収の影響を受けずに吸収がある検出対象の屈折率を正確に検出することができる。
【0044】
さらに、本発明の表面プラズモンセンサーは、消衰係数の増加に伴う反射率の変動も抑えられるため、入射角検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。また、入射角と屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は線形であるため、非常に単純な計算により、入射角から上記液体または上記気体の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の一実施形態について図1〜図16に基づいて説明すると以下の通りである。
【0046】
本発明の表面プラズモンセンサーは、透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出するものである。
【0047】
本発明では、上記金属膜の膜厚が、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜における上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0048】
〔表面プラズモンセンサーの全体構成〕
まず、本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成の概略を示す図である。
【0049】
表面プラズモンセンサー1は、図1に示すように、光源2と、コリメートレンズ3と、集光レンズ4と、プリズム(誘電体基板)5と、金属膜6と、第1レンズ7と、第2レンズ8と、光検出器9と、光源駆動回路10と、算出回路11と、モニター12とを備えている。
【0050】
本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料(検出対象を含む液体または気体)14の屈折率を検出するものであり、試料14の濃度測定、蛋白質や高分子等の検出等に好適に用いられる。なお、試料14としては、検出対象を含む液体または気体が挙げられる。
【0051】
光源2は、光ビーム13を出射するものであり、半導体レーザや発光ダイオード等が好適に用いられる。光源2から出射された光ビーム13は、金属膜6に照射されることにより、金属膜6表面において表面プラズモンを励起する。ここで、光ビーム13が複数の波長を含んでいる場合、各波長における表面プラズモンの励起条件が異なる。そのため、光ビーム13が金属膜6によって反射された反射光の入射角依存性が異なり、分析が複雑になってしまう。したがって、光源2の波長領域は、できるだけ狭いことが望ましい。
【0052】
また、光源2から出射された光ビーム13の偏光方向は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面の法線と、光ビーム13の光軸を含む面とを入射面としたとき、該入射面に対して平行な偏光方向、すなわちp偏光が望ましい。光ビーム13は、偏光方向をp偏光とすることにより、金属膜6表面において表面プラズモンを励起することができる。なお、光ビーム13の偏光方向が上記入射面に対して垂直な偏光方向、すなわちs偏光の場合は、光ビーム13は金属膜6表面において表面プラズモンを励起することができない。
【0053】
コリメートレンズ3は、光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換するものである。コリメートレンズ3の焦点距離は、短ければ短いほど、光源2から出射された光ビーム13の利用効率が上がる。
【0054】
集光レンズ4は、光源2から出射された光ビーム13を、金属膜6上に集光するものである。コリメートレンズ3によって光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換しておくことにより、集光レンズ4は効率よく光ビーム13を金属膜6上に集光することができる。また、集光レンズ4は、位置を調整することにより、様々な入射角で光ビーム13を金属膜6へ入射することができる。
【0055】
集光レンズ4としては、全方位を集光する平凸レンズ等のレンズを用いてもよいし、一方向のみ集光するシリンドリカルレンズ等のレンズを用いてもよい。集光レンズ4として全方位を集光するレンズを用いた場合は、金属膜6への入射角が複雑となるが、照射面積を小さくすることができる。そのため、全方位を集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の局所的な情報を得ることが可能となる。
【0056】
また、集光レンズ4として一方向のみ集光するレンズを用いた場合は、集光しない方向は元のビームサイズのままであるため、金属膜6への入射角は集光した方向にのみ依存する。そのため、一方向のみを集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の解析が容易となるとともに、光ビーム13の照射面積を大きくできるため、試料14の全体的な情報を得ることができる。
【0057】
金属膜6への入射角の角度範囲は、集光レンズ4の開口数で決まるが、金属膜6に試料14が接触している場合は、金属膜6上において表面プラズモンが励起されるように決定する必要がある。さらに、金属膜6への入射角の範囲を、全ての光ビーム13が全反射するような範囲にすることも好ましい。なお、コリメートレンズ3および集光レンズ4は、それぞれ一度平行光にしてから集光する構成にしているが、有限系のレンズ1つで代用してもよい。
【0058】
プリズム5は、透光性を有する誘電体基板であり、光源2から出射された光ビーム13を通過させることにより、任意の入射角で光ビーム13を金属膜6に照射し、金属膜6表面に表面プラズモンを励起するものである。プリズム5を構成する材料としては、光源2の波長を透過でき、金属膜6上に表面プラズモンを励起できる材料であれば特に限定されないが、ガラスや樹脂等が好適に用いられる。
【0059】
金属膜6表面に表面プラズモンを効率よく励起するためには、光ビーム13を入射角が約45度で金属膜6に照射することが望ましい。しかしながら、光ビーム13をプリズム5ではなく平行基板を介して、約45度の入射角で金属膜6に入射させることは困難である。そのため、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、プリズム5を用いることにより、金属膜6に入射角約45度で光ビーム13を照射している。
【0060】
プリズム5としては、図1においては三角プリズムが用いられているが、台形、楔形、半円柱型、半球型プリズム等も好適に用いられる。例えば、プリズム5として半円柱型や半球型プリズムを用いた場合は、半円柱および半球の中心に向かって光ビーム13を入射すると、プリズムの入射面への入射角がほぼ直角であるために、該入射面における反射率が小さくなり、光の利用効率が高くなる。
【0061】
さらに、プリズム5として半円柱型プリズムを用いた場合には、半円柱の中心に向かって光ビーム13を入射すると、プリズムの入射面への入射角と、金属膜6への入射角とが等しいため、入射角を換算する必要もない。
【0062】
また、プリズム5として三角プリズムを用いた場合は、入射面での屈折により、プリズムへの入射角と金属膜6への入射角とが異なるが、半円柱型プリズムに比べ安価であるために、一般的に利用されている。プリズム5は、上述した構成に限られず、金属膜6に適切な角度で入射できればよいため、他の形状でもよいし、導波路でもよい。
【0063】
金属膜6は、光源2から照射された光ビーム13により、表面プラズモンを発生させるものである。金属膜6は、プリズム5の所定の一面上に直接形成されていてもよいし、プリズム5と同程度の屈折率を有した誘電体基板上に形成し、上記誘電体基板の金属膜6が形成されている側とは反対側の面をプリズム5の所定の一面上にインデックスマッチング剤を挟んでのせてもよい。上記インデックスマッチング剤としては、市販されている液体やジェル等を用いてもよいし、UV硬化樹脂を用いてもよい。ただし、金属膜6が形成された上記誘電体基板が傾くと、入射角の誤差が生じるため、該誘電体基板をプリズム5上に安定して固定可能なインデックスマッチング剤を用いる必要がある。また、上記誘電体基板またはプリズム5との密着性の向上や、金属膜6の面精度を上げるために、上記誘電体基板またはプリズム5と金属膜6との間に下地層を設けてもよい。
【0064】
また、金属膜6が形成された上記誘電体基板をプリズム5に対して着脱可能にしておくことにより、検出対象に応じて金属膜を誘電体基板ごと取り替えることが可能となる。これにより、1つの装置を用いて、多種の試料14の検出を行うことが可能となる。すなわち、他の材料から構成されており、かつ、他の膜厚を有する金属膜6が形成された誘電体基板と取り替えることにより、表面プラズモンセンサー1の感度や測定範囲等を変えることができる。
【0065】
なお、プリズム5の所定の一面上とは、プリズム5が図1に示す三角プリズムの場合は三角形の底辺を含む面であり、プリズム5が半円柱型または半球型プリズムの場合は半円柱または半球型の中心を含む面であり、プリズム5によって光ビーム13を入射角約45度で金属膜6に入射可能な面である。
【0066】
また、金属膜6表面にさらに特定の分子を吸着できる吸着層を設け、試料14中の特定の分子を検出する構成としてもよい。試料14には、検出対象以外の物質が混入している可能性がある。その場合、表面プラズモンセンサー1によって試料14の屈折率を検出すると、上記検出対象および上記物質が含まれた濃度が検出されてしまう。そこで、金属膜6に上記吸着層を設けることにより、検出対象のみを吸着することができ、該検出対象のみの濃度を知ることが可能となる。
【0067】
金属膜6を構成する材料としては、表面プラズモンを励起可能な金属または合金であればよく、例えば、銀、銅、アルミニウム、白金、金等が好適に用いられる。金属膜6は、試料14に直接接触するために、試料14によって化学反応を起こさない安定した金属から構成されていることが望ましい。
【0068】
上述した金属のうち、金は、非常に安定した金属であり、錆びないために耐久性が高く、さらに、表面プラズモンを効率よく励起する。そのため、表面プラズモンセンサー1の金属膜として、金は最も好適に用いられる。金属膜6として金を用いることにより、試料14によって化学反応を起こさず、高い分解能で屈折率を検出することができるとともに、金属膜の酸化による経時劣化を防ぐことができる。金属膜6が金から構成されている場合、金属膜6上に表面プラズモンを励起するためには、約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金属膜6に照射することが望ましい。光源2から約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金から構成された金属膜6に照射することにより、表面プラズモンの励起効率が高まり、高い分解能で試料14の屈折率を検出することができる。
【0069】
また、金属膜6の膜厚は、非特許文献1に示すように、主に4つの要素、すなわちプリズム5、金属膜6および試料14の屈折率と光源2の波長とにより、試料14の屈折率を検出するために好適な膜厚に決定される。上述したように、従来では、金属膜6の膜厚は、検出対象を含まない状態の試料14を接触させた金属膜6における光ビーム13の反射率の最小値が最小となる膜厚dに設定されており、通常、数10nm程度である。ただし、本発明においては、この膜厚dより薄い膜厚を用いることが特徴であり、この詳細については後述する。
【0070】
第1レンズ7および第2レンズ8は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面において反射した光ビーム13を、光検出器9へ集光させて入射させるためのものである。第1レンズ7および第2レンズ8は、上記界面からの反射光を一度平行光にしてから光検出器9に集光する構成であるが、本発明はこれに限られず、1つの有限系のレンズを用いてもかまわない。
【0071】
光検出器9は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面において光ビーム13が反射した反射光強度を検出するものである。光検出器9としては、CCD若しくはCMOS、またはアレイ状検出器を用いることにより、反射光を一度に取り込むことが好ましい。特に、光検出器9としてCCDまたはCMOSを用いれば、光ビーム13のどの光線を測定に用いるかを選択することができる。
【0072】
光源駆動回路10は、光源2を駆動するものであり、図示しない電源から電圧の供給を受けて光源2に電流を流すことにより、光源2を駆動する。なお、光源2の破壊を防ぐために、光源駆動回路10には光源2に流す電流値に上限値を設けておくことが好ましい。
【0073】
算出回路11は、光検出器9の検出結果から試料14の屈折率を算出するものである。具体的には、算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、光ビーム13の金属膜6への入射角θminを算出する。そして、算出回路11は、予め入力された入射角θminと屈折率との関係から、算出された上記入射角θminに対応する屈折率を算出する。ここで、試料14が1種類であると想定される場合には、算出回路11は、さらに予め入力された屈折率と濃度との関係から、算出された上記屈折率に対応する濃度を算出することもできる。
【0074】
入射角θminと屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は、一般に、線形近似することができる。そのため、非常に単純な計算により、入射角θminから試料14の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。また、算出回路11は、表面プラズモンセンサー1による検出結果を記憶する記憶部を備えていてもよい。算出回路11としては、LSIやICなどの半導体チップや、これらを複合化したコンピュータ等が好適に用いられる。
【0075】
モニター12は、算出回路11に記憶された測定結果や、該測定結果から算出した真の反射率や、反射率から判断した試料14の屈折率や濃度等の種々の結果を表示するものである。モニター12としては、例えば、CRTや液晶ディスプレイ等が好適に用いられる。
【0076】
次に、本実施形態の表面プラズモンセンサー1を用いて、試料14の屈折率を検出する方法について図2および図3を参照して説明する。図2は、表面プラズモンセンサー1の金属膜6に対する試料14の接触方法の一実施例を示す図である。図3は、表面プラズモンセンサー1の金属膜6に対する試料14の接触方法の他の一実施例を示す図である。なお、試料14は、表面プラズモンセンサー1によって屈折率を検出する対象であり、所定の分子を含んだ液体または気体である。
【0077】
まず、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料14の屈折率の検出を行うために、試料14を金属膜6表面に接触させる。例えば、試料14として液体を用いた場合には、図2に示すように、金属膜6のプリズム5が設けられている側とは反対側の面に液滴として接触させる。また、例えば、試料14として液体または気体を用いた場合には、図3に示すように、金属膜6表面に設けられたフローセル15に液体または気体を流して接触させる。試料14を金属膜6表面に接触させる方法としては、上述した方法に限られず、試料14が金属膜6表面に接触可能な構成であればかまわない。
【0078】
そして、試料14を金属膜6表面に接触させた後、光源2から光ビーム13が出射される。そして、光ビーム13は、コリメートレンズ3によって平行光に変換され、集光レンズ4によって様々な入射角で、プリズム5を介してプリズム5と金属膜6との間に形成された界面に対して金属膜6にp偏光で照射される。そして、光ビーム13は、金属膜6で反射され、その反射光は第1レンズ7および第2レンズ8を介して光検出器9へ集光される。そして、光検出器9へ集光された反射光の反射光強度の入射角依存性の測定を行い、モニター12に表示する。
【0079】
さらに算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、入射角θminを算出する。そして、予め入力された入射角θminと屈折率との関係から、算出された入射角θminに対応する試料14の屈折率を算出する。さらに、算出回路11は、予め屈折率と濃度との関係を入力しておくことにより、算出された上記屈折率に対応する試料14の濃度を算出することもできる。
【0080】
〔金属膜6の膜厚の選定〕
次に、金属膜6の膜厚の選定方法について、図4〜図16を参照して説明する。金属膜6の膜厚は、上述したように、4つの要素、すなわちプリズム5、金属膜6および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率と光源2の波長とにより、種々の構成を選択することができる。以下に、金属膜6の膜厚の選定に用いられる上記各要素の取り得る値について、代表的な例を説明する。
【0081】
プリズム5の屈折率としては、一般にプリズムに用いられる石英の屈折率1.46と、高屈折率な屈折率2.0とを用いる。なお、プリズムの材料としては、石英だけでなくガラスも好適に用いられるが、一般的なガラスの屈折率は約1.5であり、石英の場合とほぼ同様の結果となる。
【0082】
金属膜6の屈折率は、金属膜6を構成する材料に依存しており、金属膜6を構成する材料は、上述したように種々の材料が考えられる。ただし、以下の説明においては、金属膜6の材料としてAuを用いる。
【0083】
試料14の検出対象を含まない状態の屈折率としては、試料14が検出対象を含む液体である場合と、検出対象を含む気体である場合が考えられる。そのため、試料14が検出対象を含む液体である場合、検出対象を水に溶かして濃度を測定することを想定し、検出対象を溶かす前の溶媒、すなわち水の屈折率1.33を用いる。また、試料14が検出対象を含む気体である場合、検出対象を空気または真空中に溶かして濃度を想定することを想定し、検出対象を溶かす前の屈折率1.0を用いる。
【0084】
金属膜6を構成する材料をAuとした場合、光源2の波長としては、金属膜6上に表面プラズモンを励起するのに適した赤色から赤外域が用いられる。具体的に、以下の説明においては、半導体レーザの波長635nm、780nm、YAGレーザの波長1054nmを用いる。
【0085】
以下に、上記4つの要素を組み合わせた場合における金属膜6の膜厚の選定について第1実施例〜第3実施例を挙げて説明する。ただし、プリズム5を石英、試料14を液体とすると、金属膜6において表面プラズモンをほとんど励起することができないため、この構成は除外した。
【0086】
〔第1実施例〕
まず、金属膜6の膜厚の選定の第1実施例について図4〜7を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0087】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図4を参照して説明する。図4は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0088】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を35nmとしている。
【0089】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図4に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約3.4度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.8度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.5度であることが分かる。
【0090】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0091】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を30nm、35nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図5(a)および図5(b)を参照して説明する。図5(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図5(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚30nm、破線が膜厚35nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0092】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.7度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.344として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0093】
また、金属膜6の膜厚が35nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.4度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0094】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図5(a)および図5(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0095】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.05の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を35nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0096】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約20nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0097】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を30nm、35nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図6を参照して説明する。図6(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図6(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚30nmの場合、破線が膜厚35nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0098】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.16度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.8度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.334として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図6(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0099】
また、金属膜6の膜厚が35nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加する。これは、上述したdip(約0.8度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0100】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図6(a)および図6(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0101】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.018の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を35nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0102】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約15nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0103】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を22.5nm、25nm、35nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図7を参照して説明する。図7(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図7(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚22.5nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚35nmの場合を示す。
【0104】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである35nmの場合、図7(a)に示すように、消衰係数が0から0.02まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.09度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.5度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.332として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図7(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0105】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.02まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.05度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて半分以下の変動に抑えられている。
【0106】
また、金属膜6の膜厚が22.5nmの場合、図7(a)および図7(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである35nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0107】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである35nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.012の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を22.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0108】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約12.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0109】
〔第2実施例〕
次に、金属膜6の膜厚の選定の第2実施例について図8〜11を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0110】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図8を参照して説明する。図8は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0111】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を40nmとしている。
【0112】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図8に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約1.2度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.3度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.12度であることが分かる。
【0113】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0114】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を33.5nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図9(a)および図9(b)を参照して説明する。図9(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図9(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚33.5nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0115】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.003として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0116】
また、金属膜6の膜厚が40nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.13度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0117】
また、金属膜6の膜厚が33.5nmの場合、図9(a)および図9(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0118】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を40nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を33.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0119】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約16.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0120】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を26.5nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図10を参照して説明する。図10(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図10(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚26.5nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0121】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.07度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.3度)の1/3程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.002として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0122】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.3度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、45nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
【0123】
また、金属膜6の膜厚が26.5nmの場合、図10(a)および図10(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0124】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.01の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を30nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を26.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0125】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0126】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を22nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図11を参照して説明する。図11(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図11(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚22nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
【0127】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図11(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.03度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.12度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図11(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0128】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.015度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
【0129】
また、金属膜6の膜厚が22nmの場合、図11(a)および図11(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0130】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を22nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0131】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0132】
〔第3実施例〕
次に、金属膜6の膜厚の選定の第3実施例について図12〜15を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として1.46を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0133】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図12を参照して説明する。図12は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0134】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を40nmとしている。
【0135】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図12に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約2.1度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.4度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.18度であることが分かる。
【0136】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0137】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を33nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図13(a)および図13(b)を参照して説明する。図13(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図13(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚33nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0138】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.33度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.005として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0139】
また、金属膜6の膜厚が40nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0140】
また、金属膜6の膜厚が33nmの場合、図13(a)および図13(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0141】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を40nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を33nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0142】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約17nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0143】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を27nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図14を参照して説明する。図14(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図14(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚27nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0144】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.0015として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0145】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.4度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0146】
また、金属膜6の膜厚が27nmの場合、図14(a)および図14(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0147】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.008の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を30nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を27nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0148】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0149】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を21nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図15を参照して説明する。図15(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図15(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚21nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
【0150】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図15(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.05度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.18度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図15(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0151】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.02度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、40nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0152】
また、金属膜6の膜厚が21nmの場合、図15(a)および図15(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0153】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を21nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0154】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約19nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0155】
上記第1実施例〜上記第3実施例に示したように、金属膜6の膜厚を膜厚d、すなわち、消衰係数が0の状態で表面プラズモン共鳴を起こす膜厚とした場合は、消衰係数が0のときに入射角θminおよび反射率Rminが最小値となる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0のとき最小値となり、消衰係数の増加に伴い単調増加していく。そのため、入射角θminおよび反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0156】
そこで、表面プラズモンセンサー1では、金属膜6の膜厚を膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で入射角θminおよび反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。そのため、金属膜6の膜厚を膜厚dとする場合と比較して、入射角θminおよび反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。
【0157】
このとき、金属膜6の膜厚の下限値は、入射角θminが金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合の入射角θminと同じになる膜厚である。すなわち、上述した本発明の効果は、金属膜6の膜厚を下限値から膜厚dまでの範囲内とすることにより、得ることができる。金属膜6の膜厚の選定方法における上記第1実施例〜上記第3実施例の結果に基づいて、金属膜6の膜厚d、推奨膜厚、下限値を下記表にまとめる。(単位はすべてnm)
【0158】
【表1】
【0159】
上記表1から、金属膜6の膜厚が膜厚dより20nm薄い膜厚から膜厚dまでの範囲内であれば、本発明の効果を得られることが分かる。このように、金属膜6の膜厚と膜厚dとの差を約20nm以下にすることにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を、膜厚dの場合よりも抑えることができる。また、反射率Rminの変動も、膜厚dの場合よりも抑えることができるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0160】
また、金属膜6の膜厚を膜厚dより10nm〜15nmの範囲で薄くすることにより、推奨値の範囲となることが分かる。これにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を十分に小さく、例えばdipの1/10程度にまで抑えること可能である。そのため、試料14の正確な屈折率が検出可能な、検出対象の消衰係数の範囲を最大限にすることができる。また、この消衰係数の範囲における反射率Rminの変動も、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と比較して、半分以下に抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0161】
したがって、金属膜6の膜厚を膜厚dより薄い膜厚とすることにより、試料14に吸収がある場合でも、入射角θminの変化は試料14の屈折率のみに依存する。そのため、算出回路11は、予め入力された入射角θminと試料14の屈折率との関係から、入射角θminに対応した正確な屈折率、さらには濃度を算出することができる。
【0162】
ここで、入射角θminと、反射率Rminと、屈折率との関係について図16を参照して説明する。図16(a)は金属膜6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、入射角θminと試料14の屈折率との関係をプロットしたグラフであり、図16(b)は金属膜6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、反射率Rminと試料14の屈折率との関係をプロットしたグラフである。
【0163】
図16(a)のグラフから、入射角θminと試料14の屈折率との関係はほぼ線形であることが分かる。また、金属膜6の材料、プリズム5の屈折率および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として他の組合せを用いた場合であっても、図16(a)に示したグラフと同様に線形となる。したがって、算出回路11は、入射角θminと試料14の屈折率との関係を予め計算しておくことにより、線形近似することによって、非常に単純な計算で入射角θminから試料14の屈折率を算出することができる。また、試料14の屈折率と濃度との関係もほぼ線形であるために、入射角θminと屈折率との関係と同様に、単純な計算で濃度も算出することが可能である。
【0164】
また、図16(b)のグラフから、試料14の屈折率は反射率Rminに依存していないことが分かる。そのため、試料14の屈折率は、入射角θminのみに基づいて算出することができる。
【0165】
なお、試料14の屈折率の検出における誤差をさらに少なくするためには、金属膜6の膜厚を試料14の消衰係数の範囲に応じて選択することが望ましい。具体的には、試料14の消衰係数が上記第1実施例〜上記第3実施例において述べた範囲よりも小さい場合には、より膜厚dに近い膜厚とする。
【0166】
また、上記説明においては、入射角θminの変化がdipの半値全幅の1/10程度であれば、検出できない範囲の角度シフトであると説明したが、表面プラズモンセンサー1の検出感度が高くなるに伴い、金属膜6の膜厚を膜厚dにより近い膜厚にすることが望ましい。
【0167】
また、金属膜6の膜厚の選定方法における上記第1実施例〜上記第3実施例では、金属膜6の材料としてAuを用いて説明しているが、本発明の原理は金属膜6がAuから構成されている場合に限られず、金属膜6が他の材料から構成されている場合であっても適用することができる。また、プリズム5および試料14についても、金属膜6と同様であり、プリズム5および試料14が上述した材料以外から構成されていたとしても、本発明の原理を適用することが可能である。
【0168】
また、試料14である、検出対象を含まない液体または気体自体にもともと吸収がある場合でも、検出対象に吸収があり、該検出対象を含む液体または気体の濃度を濃くしたときに試料14の消衰係数が増加すれば、本発明の原理と同様である。
【0169】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出するものであり、上記液体または上記気体の濃度測定、蛋白質や高分子等の検出等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成の概略を示す図である。
【図2】表面プラズモンセンサーの金属膜に対する試料の接触方法の一実施例を示す図である。
【図3】表面プラズモンセンサーの金属膜に対する試料の接触方法の他の一実施例を示す図である。
【図4】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図6】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図7】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図8】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.0を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図9】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図10】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図11】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図12】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として1.46を、試料の屈折率として1.0を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図13】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図14】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図15】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図16】(a)は金属膜の材料としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、入射角θminと試料の屈折率との関係をプロットしたグラフであり、(b)は金属膜の材料としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、反射率Rminと試料の屈折率との関係をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0172】
1 表面プラズモンセンサー
2 光源
3 コリメートレンズ
4 集光レンズ
5 プリズム(誘電体基板)
6 金属膜
7 第1レンズ
8 第2レンズ
9 光検出器
10 光源駆動回路
11 算出回路
12 モニター
13 光ビーム
14 試料(検出対象を含む液体または気体)
15 フローセル
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用して、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表面プラズモン共鳴を利用した表面プラズモンセンサーが多く開発されている。表面プラズモンセンサーは、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出するためのものであり、溶液の濃度測定、蛋白質・高分子の検出等に広範に用いられている。また、表面プラズモンセンサーは、検出対象を含む液体または気体の屈折率の時間変化を追うことにより、金属膜の該検出対象を吸着する吸着層への該検出対象の吸着過程や反応の時間変化等も検出することができる。
【0003】
ここで、溶液の濃度を測定するための表面プラズモンセンサーを例として、表面プラズモンセンサーの具体的な構成について説明する。表面プラズモンセンサーは、誘電体基板上に金属膜が形成されており、該金属膜の該誘電体基板が形成されている側とは反対側の面に、検出対象、例えば所定の分子が吸着可能な吸着層が形成されており、該吸着層に対し上記分子を含む溶液を接触させることにより、該分子を該吸着層に吸着させる。そして、上記表面プラズモンセンサーは、光源から出射された光ビームを上記金属膜の上記吸着層が形成されている面とは反対側の面に照射することにより、上記溶液の屈折率を検出する。さらに、上記表面プラズモンセンサーは、上記溶液の屈折率の検出と同様に、上記分子を含まない溶媒の屈折率も検出し、上記溶媒の屈折率と上記溶液の屈折率との屈折率変化から、上記溶液の濃度を求める。
【0004】
上記表面プラズモンセンサーでは、上記屈折率を検出するために、表面プラズモン共鳴を利用している。表面プラズモン共鳴とは、誘電体基板上の金属膜に適切な偏光方向および入射角で光ビームを入射させた場合、該光ビームの該金属膜に平行な方向の波数と、表面プラズモンの波数とが一致すると、共鳴を起こす現象のことである。なお、表面プラズモンとは、金属表面の自由電子が、金属表面に平行な方向に振動する粗密波である。
【0005】
すなわち、上記表面プラズモンセンサーでは、上記光ビームを上記金属膜に照射したとき、該光ビームが適切な入射角および偏光方向で該金属膜に入射されると、該光ビームは該金属膜上において表面プラズモンに変換される。そのため、上記光ビームの上記金属膜に対する反射率は、表面プラズモンに変換された分だけエネルギーが利用されるために小さくなる。
【0006】
上記光ビームを適切な入射角および偏光方向で上記金属膜に入射した場合の入射角と反射率との関係を、横軸を入射角、縦軸を反射率としたグラフとして表現すると、反射率がある入射角で低下していることが分かる。この反射率が低下した部分を、dipという。以下の説明においては、上記dipにおける反射率の最小値を反射率Rminとし、このときの入射角を入射角θminとする。
【0007】
すなわち、上記適切な入射角とは、上記光ビームのほとんどが上記金属膜上で表面プラズモンに変換される入射角θminである。また、上記適切な偏光方向とは、上記誘電体基板と上記金属膜との間に形成された界面の法線と上記光ビームの光軸とを含む面を入射面とし、該入射面に対して平行な偏光方向(p偏光)である。なお、上記光ビームの偏光方向が、上記入射面に対して垂直な偏光方向(s偏光)では、上記表面プラズモン共鳴は起こらない。
【0008】
上記表面プラズモンセンサーは、表面プラズモン共鳴を利用して入射角θminを求めることにより、予め計算された入射角θminと上記溶液の屈折率との関係から、該溶液の屈折率を算出することができる。
【0009】
また、非特許文献1には、上記金属膜の膜厚および上記入射角θminは、上記金属膜上に接触する媒質の屈折率に依存していると記載されている。したがって、上記入射角と上記反射率との関係は、上記金属膜上に接触する溶媒または溶液の屈折率に応じて異なる。そのため、上記表面プラズモンセンサーは、上記分子を含まない溶媒を上記金属膜に接触させた場合と、上記分子を含む溶液を上記金属膜に接触させた場合とにおける屈折率変化を検出することができる。
【0010】
そして、上記表面プラズモンセンサーは、上記屈折率変化を用いて、予め計算された屈折率と上記溶液の濃度との関係から、該溶液の濃度を算出することができる。
【0011】
表面プラズモンセンサーの金属膜の膜厚は、一般に、検出対象を含む液体または気体の正確な屈折率を検出するために、検出対象を含まない液体または気体を金属膜に接触させた場合における、光ビームの該金属膜に対する反射率Rminが最も小さくなるように選択される。以下の説明においては、反射率Rminが最も小さくなる金属膜の膜厚を膜厚dと呼ぶ。
【0012】
しかしながら、従来の表面プラズモンセンサーは、吸収がある検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する場合には、金属膜の膜厚を膜厚dとしたとしても、検出対象の光吸収特性の変化に伴い入射角θminの値が変化してしまう。その結果、従来の表面プラズモンセンサーでは、検出対象を含む液体または気体の正しい屈折率を算出することができないという問題があった。
【0013】
吸収がある検出対象を含む液体または気体の正確な屈折率を検出するためには、所定の濃度の検出対象を含む液体または気体について、消衰係数に対する入射角θminと屈折率との関係を予め算出または測定しておく必要がある。
【0014】
しかしながら、入射角θminと屈折率との関係はほぼ線形であるが、消衰係数と入射角θminとの関係は線形ではないため、消衰係数の細かい変化に対する入射角θminを予め算出または測定する必要がある。そのため、入射角θminから、検出対象を含む液体または気体の屈折率、消衰係数および濃度を算出するための計算が非常に複雑となってしまう。
【0015】
そこで、上記問題の解決手段として、特許文献1では、以下の2つの方法が提案されている。第1の方法は、光源の波長を検出対象の吸収最大波長とし、光吸収変化が原因で起こる屈折率変化を測定する方法である。第2の方法は、入射角θminから屈折率を、反射率の変化から消衰係数を求める方法である。
【特許文献1】特開2001−242072号公報(公開日:2001年9月7日)
【非特許文献1】Surface Plasmons on smooth and rough surfaces and on gratings, Heinz Raether, Springer-Verlag, 1988 p.118〜p.123
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載された第1の方法および第2の方法には、それぞれ以下のような問題点がある。
【0017】
まず、第1の方法は、光源の波長を検出対象の吸収最大波長としているが、光源の波長が検出対象の吸収最大波長近傍のときのみ有効であり、光源の波長が検出対象の吸収最大波長と大きく異なる場合には適用することはできない。したがって、上記第1の方法では、光源の波長を常に検出対象の吸収最大波長に合わせる必要がある。しかしながら、光源の波長には制限があり、かつ、自由に波長を設定することはできないために、上記第1の方法は実用的でないという問題があった。
【0018】
また、第2の方法では、入射角θminから屈折率、反射強度から消衰係数を求めているが、入射角θminは消衰係数にも依存するため、正確な屈折率を検出することができない。また、消衰係数の増加に伴い、反射率Rminも増加するために、dipが判別しにくくなり、入射角θminを検出するときのS/Nが悪化してしまう。このように、上記第2の方法では、吸収のある検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出する場合には、光吸収の影響を受けるために正確な屈折率を検出することができず、検出精度が悪くなってしまう。
【0019】
さらに、上記第2の方法では、消衰係数を算出するためには反射強度を正確に求める必要があり、p偏光とs偏光の両方で測定するとともに、上記各偏光方向に対する透過率等を各入射角に対して補正しなければならず、作業が非常に煩雑となってしまう。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、吸収がある検出対象の屈折率を、光吸収の影響を受けずに測定できる表面プラズモンセンサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の表面プラズモンセンサーは、上記課題を解決するために、透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーであって、上記金属膜の膜厚は、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜に対する上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0022】
従来の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとしていた。上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとした場合は、消衰係数が0のときに上記光ビームの上記金属膜に対する反射率の最小値Rminと、反射率Rminにおける上記光ビームの上記金属膜に対する入射角θminとが最小値となる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0のとき最小値となり、消衰係数の増加に伴い単調増加していく。そのため、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0023】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で上記入射角θminおよび上記反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。
【0024】
そのため、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとする場合と比較して、所定の範囲内の消衰係数において、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。そのため、吸収がある検出対象を用いた場合でも、上記入射角θminは消衰係数にほとんど依存しない。したがって、従来の装置の金属膜厚を薄くするだけという簡易な構成で、光吸収の影響を受けずに吸収がある検出対象の屈折率を正確に検出することができる。
【0025】
さらに、本発明の表面プラズモンセンサーは、消衰係数の増加に伴う反射率Rminの変動も抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。また、入射角θminと屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は線形であるため、非常に単純な計算により、入射角から上記液体または上記気体の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。
【0026】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜は、金からなることが好ましい。
【0027】
上記検出対象を含む液体または気体は、上記金属膜に直接接触する。そのため、上記金属膜は上記液体または上記気体によって化学反応を起こさない安定した金属から構成されていることが望ましい。金は、非常に安定した金属であり、錆びないために耐久性が高く、さらに、表面プラズモンを効率よく励起する。そのため、本発明の表面プラズモンセンサーの金属膜として金を用いることにより、上記検出対象を含む上記液体または上記気体によって化学反応を起こさず、該液体または該気体の屈折率を高い分解能で検出するとともに、金属膜の酸化による経時劣化を防ぐことができる。
【0028】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記光源の波長は、約600nm〜約1550nmであってもよい。
【0029】
金属膜上に表面プラズモンを励起させるためには、光源から出射される光ビームの波長が重要である。上述したように、上記金属膜は金から構成されていることがもっとも望ましいが、金から構成された該金属膜上に表面プラズモンを励起するためには、約600nm〜約1550nmの波長の光ビームを該金属膜に照射することが望ましい。上記光源から約600nm〜約1550nmの波長の光ビームを金から構成された上記金属膜に照射することにより、表面プラズモンの励起効率が高まり、高い分解能で上記検出対象を含んだ上記液体または上記気体の屈折率を検出することができる。
【0030】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差が、約20nm以下であってもよい。
【0031】
上記金属膜の膜厚が上記膜厚dである場合、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0032】
また、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも大きく異なる値にした場合には、該金属膜の膜厚を該膜厚dにした場合と同様に、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0033】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差を約20nm以下にすることにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を、膜厚dの場合よりも抑えることができる。また、反射率Rminの変動も、膜厚dの場合よりも抑えることができるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0034】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚と上記膜厚dとの差が、約10nm〜約15nmであってもよい。
【0035】
上記構成により、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を十分に小さく、例えばdipの1/10程度にまで抑えること可能である。そのため、上記検出対象を含んだ上記液体または上記気体の正確な屈折率が検出可能な、検出対象の消衰係数の範囲を最大限にすることができる。また、この消衰係数の範囲における反射率Rminの変動も、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとした場合と比較して、半分以下に抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0036】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記誘電体基板は、上記表面プラズモンセンサーから着脱可能な構成であってもよい。
【0037】
金属膜を形成した誘電体基板が、表面プラズモンセンサーから着脱可能であることにより、検出対象に応じて金属膜を誘電体基板ごと取り替えることが可能となる。これにより、1つの装置を用いて、多種の検出対象の検出を行うことが可能となる。すなわち、他の材料から構成されており、かつ、他の膜厚を有する金属膜が形成された誘電体基板と取り替えることにより、上記表面プラズモンセンサーの感度や測定範囲等を変えることができる。
【0038】
また、本発明の表面プラズモンセンサーでは、金属膜表面に、特定の分子を吸着する吸着層を備えていてもよい。
【0039】
上記検出対象を含む液体または気体には、上記検出対象以外の物質が混入している可能性がある。その場合、表面プラズモンセンサーによって上記液体または上記気体の屈折率を検出すると、上記検出対象および上記物質が含まれた濃度が検出されてしまう。
【0040】
そこで、本発明の上記構成にすることにより、検出対象である、所定の分子のみを吸着することができ、該分子のみの濃度を知ることが可能となる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の表面プラズモンセンサーは、以上のように、誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーであって、上記金属膜の膜厚は、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜に対する上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0042】
そこで、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で上記入射角θminおよび上記反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、上記入射角θminおよび上記反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。
【0043】
そのため、本発明の表面プラズモンセンサーでは、上記金属膜の膜厚を上記膜厚dとする場合と比較して、所定の範囲内の消衰係数において、上記入射角θminおよび上記反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。そのため、吸収がある検出対象を用いた場合でも、上記入射角θminは消衰係数にほとんど依存しない。したがって、従来の装置の金属膜厚を薄くするだけという簡易な構成で、光吸収の影響を受けずに吸収がある検出対象の屈折率を正確に検出することができる。
【0044】
さらに、本発明の表面プラズモンセンサーは、消衰係数の増加に伴う反射率の変動も抑えられるため、入射角検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。また、入射角と屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は線形であるため、非常に単純な計算により、入射角から上記液体または上記気体の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の一実施形態について図1〜図16に基づいて説明すると以下の通りである。
【0046】
本発明の表面プラズモンセンサーは、透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出するものである。
【0047】
本発明では、上記金属膜の膜厚が、上記検出対象を含まない上記液体または上記気体を接触させた該金属膜における上記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴としている。
【0048】
〔表面プラズモンセンサーの全体構成〕
まず、本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成について図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成の概略を示す図である。
【0049】
表面プラズモンセンサー1は、図1に示すように、光源2と、コリメートレンズ3と、集光レンズ4と、プリズム(誘電体基板)5と、金属膜6と、第1レンズ7と、第2レンズ8と、光検出器9と、光源駆動回路10と、算出回路11と、モニター12とを備えている。
【0050】
本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料(検出対象を含む液体または気体)14の屈折率を検出するものであり、試料14の濃度測定、蛋白質や高分子等の検出等に好適に用いられる。なお、試料14としては、検出対象を含む液体または気体が挙げられる。
【0051】
光源2は、光ビーム13を出射するものであり、半導体レーザや発光ダイオード等が好適に用いられる。光源2から出射された光ビーム13は、金属膜6に照射されることにより、金属膜6表面において表面プラズモンを励起する。ここで、光ビーム13が複数の波長を含んでいる場合、各波長における表面プラズモンの励起条件が異なる。そのため、光ビーム13が金属膜6によって反射された反射光の入射角依存性が異なり、分析が複雑になってしまう。したがって、光源2の波長領域は、できるだけ狭いことが望ましい。
【0052】
また、光源2から出射された光ビーム13の偏光方向は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面の法線と、光ビーム13の光軸を含む面とを入射面としたとき、該入射面に対して平行な偏光方向、すなわちp偏光が望ましい。光ビーム13は、偏光方向をp偏光とすることにより、金属膜6表面において表面プラズモンを励起することができる。なお、光ビーム13の偏光方向が上記入射面に対して垂直な偏光方向、すなわちs偏光の場合は、光ビーム13は金属膜6表面において表面プラズモンを励起することができない。
【0053】
コリメートレンズ3は、光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換するものである。コリメートレンズ3の焦点距離は、短ければ短いほど、光源2から出射された光ビーム13の利用効率が上がる。
【0054】
集光レンズ4は、光源2から出射された光ビーム13を、金属膜6上に集光するものである。コリメートレンズ3によって光源2から出射された光ビーム13を平行光に変換しておくことにより、集光レンズ4は効率よく光ビーム13を金属膜6上に集光することができる。また、集光レンズ4は、位置を調整することにより、様々な入射角で光ビーム13を金属膜6へ入射することができる。
【0055】
集光レンズ4としては、全方位を集光する平凸レンズ等のレンズを用いてもよいし、一方向のみ集光するシリンドリカルレンズ等のレンズを用いてもよい。集光レンズ4として全方位を集光するレンズを用いた場合は、金属膜6への入射角が複雑となるが、照射面積を小さくすることができる。そのため、全方位を集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の局所的な情報を得ることが可能となる。
【0056】
また、集光レンズ4として一方向のみ集光するレンズを用いた場合は、集光しない方向は元のビームサイズのままであるため、金属膜6への入射角は集光した方向にのみ依存する。そのため、一方向のみを集光するレンズを用いた表面プラズモンセンサー1は、試料14の解析が容易となるとともに、光ビーム13の照射面積を大きくできるため、試料14の全体的な情報を得ることができる。
【0057】
金属膜6への入射角の角度範囲は、集光レンズ4の開口数で決まるが、金属膜6に試料14が接触している場合は、金属膜6上において表面プラズモンが励起されるように決定する必要がある。さらに、金属膜6への入射角の範囲を、全ての光ビーム13が全反射するような範囲にすることも好ましい。なお、コリメートレンズ3および集光レンズ4は、それぞれ一度平行光にしてから集光する構成にしているが、有限系のレンズ1つで代用してもよい。
【0058】
プリズム5は、透光性を有する誘電体基板であり、光源2から出射された光ビーム13を通過させることにより、任意の入射角で光ビーム13を金属膜6に照射し、金属膜6表面に表面プラズモンを励起するものである。プリズム5を構成する材料としては、光源2の波長を透過でき、金属膜6上に表面プラズモンを励起できる材料であれば特に限定されないが、ガラスや樹脂等が好適に用いられる。
【0059】
金属膜6表面に表面プラズモンを効率よく励起するためには、光ビーム13を入射角が約45度で金属膜6に照射することが望ましい。しかしながら、光ビーム13をプリズム5ではなく平行基板を介して、約45度の入射角で金属膜6に入射させることは困難である。そのため、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、プリズム5を用いることにより、金属膜6に入射角約45度で光ビーム13を照射している。
【0060】
プリズム5としては、図1においては三角プリズムが用いられているが、台形、楔形、半円柱型、半球型プリズム等も好適に用いられる。例えば、プリズム5として半円柱型や半球型プリズムを用いた場合は、半円柱および半球の中心に向かって光ビーム13を入射すると、プリズムの入射面への入射角がほぼ直角であるために、該入射面における反射率が小さくなり、光の利用効率が高くなる。
【0061】
さらに、プリズム5として半円柱型プリズムを用いた場合には、半円柱の中心に向かって光ビーム13を入射すると、プリズムの入射面への入射角と、金属膜6への入射角とが等しいため、入射角を換算する必要もない。
【0062】
また、プリズム5として三角プリズムを用いた場合は、入射面での屈折により、プリズムへの入射角と金属膜6への入射角とが異なるが、半円柱型プリズムに比べ安価であるために、一般的に利用されている。プリズム5は、上述した構成に限られず、金属膜6に適切な角度で入射できればよいため、他の形状でもよいし、導波路でもよい。
【0063】
金属膜6は、光源2から照射された光ビーム13により、表面プラズモンを発生させるものである。金属膜6は、プリズム5の所定の一面上に直接形成されていてもよいし、プリズム5と同程度の屈折率を有した誘電体基板上に形成し、上記誘電体基板の金属膜6が形成されている側とは反対側の面をプリズム5の所定の一面上にインデックスマッチング剤を挟んでのせてもよい。上記インデックスマッチング剤としては、市販されている液体やジェル等を用いてもよいし、UV硬化樹脂を用いてもよい。ただし、金属膜6が形成された上記誘電体基板が傾くと、入射角の誤差が生じるため、該誘電体基板をプリズム5上に安定して固定可能なインデックスマッチング剤を用いる必要がある。また、上記誘電体基板またはプリズム5との密着性の向上や、金属膜6の面精度を上げるために、上記誘電体基板またはプリズム5と金属膜6との間に下地層を設けてもよい。
【0064】
また、金属膜6が形成された上記誘電体基板をプリズム5に対して着脱可能にしておくことにより、検出対象に応じて金属膜を誘電体基板ごと取り替えることが可能となる。これにより、1つの装置を用いて、多種の試料14の検出を行うことが可能となる。すなわち、他の材料から構成されており、かつ、他の膜厚を有する金属膜6が形成された誘電体基板と取り替えることにより、表面プラズモンセンサー1の感度や測定範囲等を変えることができる。
【0065】
なお、プリズム5の所定の一面上とは、プリズム5が図1に示す三角プリズムの場合は三角形の底辺を含む面であり、プリズム5が半円柱型または半球型プリズムの場合は半円柱または半球型の中心を含む面であり、プリズム5によって光ビーム13を入射角約45度で金属膜6に入射可能な面である。
【0066】
また、金属膜6表面にさらに特定の分子を吸着できる吸着層を設け、試料14中の特定の分子を検出する構成としてもよい。試料14には、検出対象以外の物質が混入している可能性がある。その場合、表面プラズモンセンサー1によって試料14の屈折率を検出すると、上記検出対象および上記物質が含まれた濃度が検出されてしまう。そこで、金属膜6に上記吸着層を設けることにより、検出対象のみを吸着することができ、該検出対象のみの濃度を知ることが可能となる。
【0067】
金属膜6を構成する材料としては、表面プラズモンを励起可能な金属または合金であればよく、例えば、銀、銅、アルミニウム、白金、金等が好適に用いられる。金属膜6は、試料14に直接接触するために、試料14によって化学反応を起こさない安定した金属から構成されていることが望ましい。
【0068】
上述した金属のうち、金は、非常に安定した金属であり、錆びないために耐久性が高く、さらに、表面プラズモンを効率よく励起する。そのため、表面プラズモンセンサー1の金属膜として、金は最も好適に用いられる。金属膜6として金を用いることにより、試料14によって化学反応を起こさず、高い分解能で屈折率を検出することができるとともに、金属膜の酸化による経時劣化を防ぐことができる。金属膜6が金から構成されている場合、金属膜6上に表面プラズモンを励起するためには、約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金属膜6に照射することが望ましい。光源2から約600nm〜約1550nmの波長の光ビーム13を金から構成された金属膜6に照射することにより、表面プラズモンの励起効率が高まり、高い分解能で試料14の屈折率を検出することができる。
【0069】
また、金属膜6の膜厚は、非特許文献1に示すように、主に4つの要素、すなわちプリズム5、金属膜6および試料14の屈折率と光源2の波長とにより、試料14の屈折率を検出するために好適な膜厚に決定される。上述したように、従来では、金属膜6の膜厚は、検出対象を含まない状態の試料14を接触させた金属膜6における光ビーム13の反射率の最小値が最小となる膜厚dに設定されており、通常、数10nm程度である。ただし、本発明においては、この膜厚dより薄い膜厚を用いることが特徴であり、この詳細については後述する。
【0070】
第1レンズ7および第2レンズ8は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面において反射した光ビーム13を、光検出器9へ集光させて入射させるためのものである。第1レンズ7および第2レンズ8は、上記界面からの反射光を一度平行光にしてから光検出器9に集光する構成であるが、本発明はこれに限られず、1つの有限系のレンズを用いてもかまわない。
【0071】
光検出器9は、プリズム5と金属膜6との間に形成された界面において光ビーム13が反射した反射光強度を検出するものである。光検出器9としては、CCD若しくはCMOS、またはアレイ状検出器を用いることにより、反射光を一度に取り込むことが好ましい。特に、光検出器9としてCCDまたはCMOSを用いれば、光ビーム13のどの光線を測定に用いるかを選択することができる。
【0072】
光源駆動回路10は、光源2を駆動するものであり、図示しない電源から電圧の供給を受けて光源2に電流を流すことにより、光源2を駆動する。なお、光源2の破壊を防ぐために、光源駆動回路10には光源2に流す電流値に上限値を設けておくことが好ましい。
【0073】
算出回路11は、光検出器9の検出結果から試料14の屈折率を算出するものである。具体的には、算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、光ビーム13の金属膜6への入射角θminを算出する。そして、算出回路11は、予め入力された入射角θminと屈折率との関係から、算出された上記入射角θminに対応する屈折率を算出する。ここで、試料14が1種類であると想定される場合には、算出回路11は、さらに予め入力された屈折率と濃度との関係から、算出された上記屈折率に対応する濃度を算出することもできる。
【0074】
入射角θminと屈折率との関係および屈折率と濃度との関係は、一般に、線形近似することができる。そのため、非常に単純な計算により、入射角θminから試料14の屈折率だけでなく、濃度を求めることができる。また、算出回路11は、表面プラズモンセンサー1による検出結果を記憶する記憶部を備えていてもよい。算出回路11としては、LSIやICなどの半導体チップや、これらを複合化したコンピュータ等が好適に用いられる。
【0075】
モニター12は、算出回路11に記憶された測定結果や、該測定結果から算出した真の反射率や、反射率から判断した試料14の屈折率や濃度等の種々の結果を表示するものである。モニター12としては、例えば、CRTや液晶ディスプレイ等が好適に用いられる。
【0076】
次に、本実施形態の表面プラズモンセンサー1を用いて、試料14の屈折率を検出する方法について図2および図3を参照して説明する。図2は、表面プラズモンセンサー1の金属膜6に対する試料14の接触方法の一実施例を示す図である。図3は、表面プラズモンセンサー1の金属膜6に対する試料14の接触方法の他の一実施例を示す図である。なお、試料14は、表面プラズモンセンサー1によって屈折率を検出する対象であり、所定の分子を含んだ液体または気体である。
【0077】
まず、本実施形態の表面プラズモンセンサー1は、試料14の屈折率の検出を行うために、試料14を金属膜6表面に接触させる。例えば、試料14として液体を用いた場合には、図2に示すように、金属膜6のプリズム5が設けられている側とは反対側の面に液滴として接触させる。また、例えば、試料14として液体または気体を用いた場合には、図3に示すように、金属膜6表面に設けられたフローセル15に液体または気体を流して接触させる。試料14を金属膜6表面に接触させる方法としては、上述した方法に限られず、試料14が金属膜6表面に接触可能な構成であればかまわない。
【0078】
そして、試料14を金属膜6表面に接触させた後、光源2から光ビーム13が出射される。そして、光ビーム13は、コリメートレンズ3によって平行光に変換され、集光レンズ4によって様々な入射角で、プリズム5を介してプリズム5と金属膜6との間に形成された界面に対して金属膜6にp偏光で照射される。そして、光ビーム13は、金属膜6で反射され、その反射光は第1レンズ7および第2レンズ8を介して光検出器9へ集光される。そして、光検出器9へ集光された反射光の反射光強度の入射角依存性の測定を行い、モニター12に表示する。
【0079】
さらに算出回路11は、光検出器9で検出された光ビーム13の反射光強度から、入射角θminを算出する。そして、予め入力された入射角θminと屈折率との関係から、算出された入射角θminに対応する試料14の屈折率を算出する。さらに、算出回路11は、予め屈折率と濃度との関係を入力しておくことにより、算出された上記屈折率に対応する試料14の濃度を算出することもできる。
【0080】
〔金属膜6の膜厚の選定〕
次に、金属膜6の膜厚の選定方法について、図4〜図16を参照して説明する。金属膜6の膜厚は、上述したように、4つの要素、すなわちプリズム5、金属膜6および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率と光源2の波長とにより、種々の構成を選択することができる。以下に、金属膜6の膜厚の選定に用いられる上記各要素の取り得る値について、代表的な例を説明する。
【0081】
プリズム5の屈折率としては、一般にプリズムに用いられる石英の屈折率1.46と、高屈折率な屈折率2.0とを用いる。なお、プリズムの材料としては、石英だけでなくガラスも好適に用いられるが、一般的なガラスの屈折率は約1.5であり、石英の場合とほぼ同様の結果となる。
【0082】
金属膜6の屈折率は、金属膜6を構成する材料に依存しており、金属膜6を構成する材料は、上述したように種々の材料が考えられる。ただし、以下の説明においては、金属膜6の材料としてAuを用いる。
【0083】
試料14の検出対象を含まない状態の屈折率としては、試料14が検出対象を含む液体である場合と、検出対象を含む気体である場合が考えられる。そのため、試料14が検出対象を含む液体である場合、検出対象を水に溶かして濃度を測定することを想定し、検出対象を溶かす前の溶媒、すなわち水の屈折率1.33を用いる。また、試料14が検出対象を含む気体である場合、検出対象を空気または真空中に溶かして濃度を想定することを想定し、検出対象を溶かす前の屈折率1.0を用いる。
【0084】
金属膜6を構成する材料をAuとした場合、光源2の波長としては、金属膜6上に表面プラズモンを励起するのに適した赤色から赤外域が用いられる。具体的に、以下の説明においては、半導体レーザの波長635nm、780nm、YAGレーザの波長1054nmを用いる。
【0085】
以下に、上記4つの要素を組み合わせた場合における金属膜6の膜厚の選定について第1実施例〜第3実施例を挙げて説明する。ただし、プリズム5を石英、試料14を液体とすると、金属膜6において表面プラズモンをほとんど励起することができないため、この構成は除外した。
【0086】
〔第1実施例〕
まず、金属膜6の膜厚の選定の第1実施例について図4〜7を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0087】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図4を参照して説明する。図4は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0088】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を35nmとしている。
【0089】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図4に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約3.4度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.8度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.5度であることが分かる。
【0090】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0091】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を30nm、35nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図5(a)および図5(b)を参照して説明する。図5(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図5(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚30nm、破線が膜厚35nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0092】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.7度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.344として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0093】
また、金属膜6の膜厚が35nmの場合、図5(a)に示すように、消衰係数が0から0.09まで増加するに伴い、入射角θminが約0.4度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約3.4度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0094】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図5(a)および図5(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0095】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.05の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を35nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0096】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約20nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0097】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を30nm、35nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図6を参照して説明する。図6(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図6(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚30nmの場合、破線が膜厚35nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0098】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.16度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.8度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.334として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図6(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0099】
また、金属膜6の膜厚が35nmの場合、図6(a)に示すように、消衰係数が0から0.025まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加する。これは、上述したdip(約0.8度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図5(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0100】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図6(a)および図6(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0101】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.018の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を35nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を30nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0102】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約15nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0103】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を22.5nm、25nm、35nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図7を参照して説明する。図7(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図7(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚22.5nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚35nmの場合を示す。
【0104】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである35nmの場合、図7(a)に示すように、消衰係数が0から0.02まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.09度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.5度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.332として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図7(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0105】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.02まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.05度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて半分以下の変動に抑えられている。
【0106】
また、金属膜6の膜厚が22.5nmの場合、図7(a)および図7(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである35nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0107】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである35nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.012の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を22.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0108】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約12.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0109】
〔第2実施例〕
次に、金属膜6の膜厚の選定の第2実施例について図8〜11を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0110】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図8を参照して説明する。図8は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0111】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を40nmとしている。
【0112】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図8に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約1.2度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.3度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.12度であることが分かる。
【0113】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0114】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を33.5nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図9(a)および図9(b)を参照して説明する。図9(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図9(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚33.5nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0115】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.003として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0116】
また、金属膜6の膜厚が40nmの場合、図9(a)に示すように、消衰係数が0から0.035まで増加するに伴い、入射角θminが約0.13度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約1.2度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図9(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0117】
また、金属膜6の膜厚が33.5nmの場合、図9(a)および図9(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0118】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を40nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を33.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0119】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約16.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0120】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を26.5nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図10を参照して説明する。図10(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図10(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚26.5nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0121】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.07度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.3度)の1/3程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.002として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0122】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図10(a)に示すように、消衰係数が0から0.018まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.3度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図10(b)に示すように、45nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
【0123】
また、金属膜6の膜厚が26.5nmの場合、図10(a)および図10(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0124】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.01の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を30nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を26.5nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0125】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18.5nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0126】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を22nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図11を参照して説明する。図11(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図11(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚22nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
【0127】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図11(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.03度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.12度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図11(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0128】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.015度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、35nmの場合に比べて1/3程度の変動に抑えられている。
【0129】
また、金属膜6の膜厚が22nmの場合、図11(a)および図11(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0130】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を22nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0131】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0132】
〔第3実施例〕
次に、金属膜6の膜厚の選定の第3実施例について図12〜15を参照して説明する。本実施例では、上記4つの要素として、金属膜6の材質としてAuを、光源2の波長として635nm、780nm、1054nmの3波長を、プリズム5の屈折率として1.46を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.0を選択した場合における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0133】
まず、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合の光源2の各波長における、光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係について図12を参照して説明する。図12は、上記4つの要素で消衰係数を0とした場合における、光源2から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビーム13の金属膜6に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。なお、図中の点線は光ビーム13の波長635nmを、破線は光ビームの波長780nmを、実線は光ビームの波長1054nmを示している。
【0134】
また、光源2から出射された光ビーム13の各波長における金属膜6の膜厚は、反射率の最小値Rminが0に近くなるように、光ビーム13の波長が635nmの場合は金属膜6の膜厚を50nm、光ビーム13の波長が780nmの場合は金属膜6の膜厚を45nm、光ビーム13の波長が1054nmの場合は金属膜6の膜厚を40nmとしている。
【0135】
光ビーム13の各波長における反射率が落ちるdipの半値全幅は、図12に示すように、光ビーム13の波長が635nmのとき約2.1度、光ビーム13の波長が780nmのとき約0.4度、光ビーム13の波長が1054nmのとき約0.18度であることが分かる。
【0136】
次に、試料14の光吸収を考慮し、消衰係数を0から増加させた場合において、光源2の各波長における金属膜6の膜厚の選定について説明する。
【0137】
〔波長635nm〕
まず、光ビーム13の波長が635nmの場合において、金属膜6の膜厚を33nm、40nm、50nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図13(a)および図13(b)を参照して説明する。図13(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図13(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚33nm、破線が膜厚40nm、実線が膜厚50nmを示す。
【0138】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長635nmの膜厚dである50nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.33度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/6程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.005として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0139】
また、金属膜6の膜厚が40nmの場合、図13(a)に示すように、消衰係数が0から0.032まで増加するに伴い、入射角θminが約0.2度増加する。これは、上述したdipの半値全幅(約2.1度)の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、反射率Rminの値も、図13(b)に示すように、50nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0140】
また、金属膜6の膜厚が33nmの場合、図13(a)および図13(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである50nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0141】
以上のことから、光ビーム13の波長が635nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである50nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.024の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を40nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を33nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0142】
したがって、光ビーム13の波長が635nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約17nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0143】
〔波長780nm〕
次に、光ビーム13の波長が780nmの場合において、金属膜6の膜厚を27nm、30nm、45nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図14を参照して説明する。図14(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図14(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚27nmの場合、破線が膜厚30nmの場合、実線が膜厚45nmの場合を示す。
【0144】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである45nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.08度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.4度)の1/5程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.0015として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0145】
また、金属膜6の膜厚が30nmの場合、図14(a)に示すように、消衰係数が0から0.015まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.04度増加する。これは、上述したdip(約0.4度)の半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。反射率Rminの値も、図14(b)に示すように、45nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0146】
また、金属膜6の膜厚が27nmの場合、図14(a)および図14(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである45nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0147】
以上のことから、光ビーム13の波長が780nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである45nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.008の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を30nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を27nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0148】
したがって、光ビーム13の波長が780nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約18nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0149】
〔波長1054nm〕
次に、光ビーム13の波長が1054nmの場合において、金属膜6の膜厚を21nm、25nm、40nmとしたときの試料14の消衰係数と、入射角θminと、反射率Rminとの関係について図15を参照して説明する。図15(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、図15(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料14の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。なお、点線が膜厚21nmの場合、破線が膜厚25nmの場合、実線が膜厚40nmの場合を示す。
【0150】
金属膜6の膜厚が光ビーム13の波長の膜厚dである40nmの場合、図15(a)に示すように、消衰係数が0から0.007まで増加するのに伴い、入射角θminが約0.05度増加してしまうことが分かる。この入射角θminの増加した値は、上述したdipの半値全幅(約0.18度)の1/4程度であり、誤差として検出されてしまう範囲である。この入射角θminの誤差は、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率が1.001として検出されることになる。また、反射率Rminの値も、図15(b)に示すように、消衰係数の増加に伴い増加している。これは、入射角θminの検出時のS/N低下となる。
【0151】
また、金属膜6の膜厚が25nmの場合、消衰係数が0から0.007まで増えたときの入射角θminの増加分は約0.02度である。これは、dipの半値全幅の1/10程度であり、検出できない程度の角度シフトである。また、消衰係数が増えたときの反射率Rminも、40nmの場合に比べて半分程度の変動に抑えられている。
【0152】
また、金属膜6の膜厚が21nmの場合、図15(a)および図15(b)に示すように、入射角θminおよび反射率Rminが、膜厚dである40nmの場合と同等程度の変化であることが分かる。
【0153】
以上のことから、光ビーム13の波長が1054nmの場合、金属膜6の膜厚を膜厚dである40nmとしては、入射角θminの変化をdipの半値全幅の1/10程度に抑えるためには、消衰係数が0から0.003の範囲の試料14しか測定できないという不具合が生じることが分かる。しかしながら、金属膜6の膜厚を25nm、すなわち上記膜厚dよりもさらに薄い膜厚とすることにより、入射角θminに対する試料14の吸収の影響を小さくすることができる。ただし、金属膜6の膜厚を21nmまで薄くしてしまうと、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と同様の不具合が生じてしまう。
【0154】
したがって、光ビーム13の波長が1054nmの場合における金属膜6の膜厚は、金属膜6の膜厚dに対して、約0nm〜約19nmの範囲内で薄くすることにより、光ビーム13の金属膜6に対する入射角θminおよび反射率Rminは、金属膜6の膜厚を膜厚dとしたときよりも消衰係数の変化に影響されないことが分かる。
【0155】
上記第1実施例〜上記第3実施例に示したように、金属膜6の膜厚を膜厚d、すなわち、消衰係数が0の状態で表面プラズモン共鳴を起こす膜厚とした場合は、消衰係数が0のときに入射角θminおよび反射率Rminが最小値となる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0のとき最小値となり、消衰係数の増加に伴い単調増加していく。そのため、入射角θminおよび反射率Rminの変化を所定の範囲内に抑えるためには、狭い範囲の消衰係数の検出対象しか測定できないという不具合が生じる。
【0156】
そこで、表面プラズモンセンサー1では、金属膜6の膜厚を膜厚dよりも薄くすることにより、所定の消衰係数の値で入射角θminおよび反射率Rminを最小とすることができる。すなわち、入射角θminおよび反射率Rminは、消衰係数が0から所定値までで一度減少し、所定値以降で増加していく。そのため、金属膜6の膜厚を膜厚dとする場合と比較して、入射角θminおよび反射率Rminの変化を半分程度にすることができる。
【0157】
このとき、金属膜6の膜厚の下限値は、入射角θminが金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合の入射角θminと同じになる膜厚である。すなわち、上述した本発明の効果は、金属膜6の膜厚を下限値から膜厚dまでの範囲内とすることにより、得ることができる。金属膜6の膜厚の選定方法における上記第1実施例〜上記第3実施例の結果に基づいて、金属膜6の膜厚d、推奨膜厚、下限値を下記表にまとめる。(単位はすべてnm)
【0158】
【表1】
【0159】
上記表1から、金属膜6の膜厚が膜厚dより20nm薄い膜厚から膜厚dまでの範囲内であれば、本発明の効果を得られることが分かる。このように、金属膜6の膜厚と膜厚dとの差を約20nm以下にすることにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を、膜厚dの場合よりも抑えることができる。また、反射率Rminの変動も、膜厚dの場合よりも抑えることができるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0160】
また、金属膜6の膜厚を膜厚dより10nm〜15nmの範囲で薄くすることにより、推奨値の範囲となることが分かる。これにより、消衰係数の増加に伴う入射角θminの変動を十分に小さく、例えばdipの1/10程度にまで抑えること可能である。そのため、試料14の正確な屈折率が検出可能な、検出対象の消衰係数の範囲を最大限にすることができる。また、この消衰係数の範囲における反射率Rminの変動も、金属膜6の膜厚を膜厚dとした場合と比較して、半分以下に抑えられるため、入射角θmin検出時のS/Nの劣化を抑えることができる。
【0161】
したがって、金属膜6の膜厚を膜厚dより薄い膜厚とすることにより、試料14に吸収がある場合でも、入射角θminの変化は試料14の屈折率のみに依存する。そのため、算出回路11は、予め入力された入射角θminと試料14の屈折率との関係から、入射角θminに対応した正確な屈折率、さらには濃度を算出することができる。
【0162】
ここで、入射角θminと、反射率Rminと、屈折率との関係について図16を参照して説明する。図16(a)は金属膜6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、入射角θminと試料14の屈折率との関係をプロットしたグラフであり、図16(b)は金属膜6の材料としてAuを、プリズム5の屈折率として2.0を、試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、反射率Rminと試料14の屈折率との関係をプロットしたグラフである。
【0163】
図16(a)のグラフから、入射角θminと試料14の屈折率との関係はほぼ線形であることが分かる。また、金属膜6の材料、プリズム5の屈折率および試料14の検出対象を含まない状態の屈折率として他の組合せを用いた場合であっても、図16(a)に示したグラフと同様に線形となる。したがって、算出回路11は、入射角θminと試料14の屈折率との関係を予め計算しておくことにより、線形近似することによって、非常に単純な計算で入射角θminから試料14の屈折率を算出することができる。また、試料14の屈折率と濃度との関係もほぼ線形であるために、入射角θminと屈折率との関係と同様に、単純な計算で濃度も算出することが可能である。
【0164】
また、図16(b)のグラフから、試料14の屈折率は反射率Rminに依存していないことが分かる。そのため、試料14の屈折率は、入射角θminのみに基づいて算出することができる。
【0165】
なお、試料14の屈折率の検出における誤差をさらに少なくするためには、金属膜6の膜厚を試料14の消衰係数の範囲に応じて選択することが望ましい。具体的には、試料14の消衰係数が上記第1実施例〜上記第3実施例において述べた範囲よりも小さい場合には、より膜厚dに近い膜厚とする。
【0166】
また、上記説明においては、入射角θminの変化がdipの半値全幅の1/10程度であれば、検出できない範囲の角度シフトであると説明したが、表面プラズモンセンサー1の検出感度が高くなるに伴い、金属膜6の膜厚を膜厚dにより近い膜厚にすることが望ましい。
【0167】
また、金属膜6の膜厚の選定方法における上記第1実施例〜上記第3実施例では、金属膜6の材料としてAuを用いて説明しているが、本発明の原理は金属膜6がAuから構成されている場合に限られず、金属膜6が他の材料から構成されている場合であっても適用することができる。また、プリズム5および試料14についても、金属膜6と同様であり、プリズム5および試料14が上述した材料以外から構成されていたとしても、本発明の原理を適用することが可能である。
【0168】
また、試料14である、検出対象を含まない液体または気体自体にもともと吸収がある場合でも、検出対象に吸収があり、該検出対象を含む液体または気体の濃度を濃くしたときに試料14の消衰係数が増加すれば、本発明の原理と同様である。
【0169】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、検出対象を含む液体または気体の屈折率を検出するものであり、上記液体または上記気体の濃度測定、蛋白質や高分子等の検出等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明に係る表面プラズモンセンサーの一実施形態の全体構成の概略を示す図である。
【図2】表面プラズモンセンサーの金属膜に対する試料の接触方法の一実施例を示す図である。
【図3】表面プラズモンセンサーの金属膜に対する試料の接触方法の他の一実施例を示す図である。
【図4】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図6】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図7】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図8】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.0を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図9】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図10】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図11】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図12】金属膜の材質としてAuを、プリズムの屈折率として1.46を、試料の屈折率として1.0を用い、消衰係数を0とした場合における、光源から出射された各波長635nm、780nm、1054nmの光ビームの金属膜に対する入射角と反射率との関係を示すグラフである。
【図13】(a)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が635nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図14】(a)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が780nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図15】(a)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、入射角θminとの関係を示したグラフであり、(b)は光ビームの波長が1054nmの場合における、試料の消衰係数と、反射率Rminとの関係を示したグラフである。
【図16】(a)は金属膜の材料としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、入射角θminと試料の屈折率との関係をプロットしたグラフであり、(b)は金属膜の材料としてAuを、プリズムの屈折率として2.0を、試料の屈折率として1.33を用い、消衰係数0とした場合における、反射率Rminと試料の屈折率との関係をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0172】
1 表面プラズモンセンサー
2 光源
3 コリメートレンズ
4 集光レンズ
5 プリズム(誘電体基板)
6 金属膜
7 第1レンズ
8 第2レンズ
9 光検出器
10 光源駆動回路
11 算出回路
12 モニター
13 光ビーム
14 試料(検出対象を含む液体または気体)
15 フローセル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーにおいて、
前記金属膜の膜厚は、前記検出対象を含まない前記液体または前記気体を接触させた該金属膜に対する前記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴とする表面プラズモンセンサー。
【請求項2】
前記金属膜は、金からなることを特徴とする請求項1に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項3】
前記光源の波長は、約600nm〜約1550nmであることを特徴とする請求項2に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項4】
前記金属膜の膜厚と前記膜厚dとの差は、約20nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項5】
前記金属膜の膜厚と前記膜厚dとの差は、約10nm〜約15nmであることを特徴とする請求項4に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項6】
前記誘電体基板は、前記表面プラズモンセンサーから着脱可能なことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項7】
前記金属膜は、その表面に所定の分子を吸着する吸着層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項1】
透光性を有する誘電体基板上に形成されており、かつ、検出対象を含む液体または気体を接触させた金属膜に対し、光源から出射された光ビームを該金属膜の該液体または該気体が接触している面とは反対側の面に照射することにより、該液体または該気体の屈折率を検出する表面プラズモンセンサーにおいて、
前記金属膜の膜厚は、前記検出対象を含まない前記液体または前記気体を接触させた該金属膜に対する前記光ビームの反射率の最小値が最小となる膜厚dより薄いことを特徴とする表面プラズモンセンサー。
【請求項2】
前記金属膜は、金からなることを特徴とする請求項1に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項3】
前記光源の波長は、約600nm〜約1550nmであることを特徴とする請求項2に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項4】
前記金属膜の膜厚と前記膜厚dとの差は、約20nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項5】
前記金属膜の膜厚と前記膜厚dとの差は、約10nm〜約15nmであることを特徴とする請求項4に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項6】
前記誘電体基板は、前記表面プラズモンセンサーから着脱可能なことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【請求項7】
前記金属膜は、その表面に所定の分子を吸着する吸着層が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面プラズモンセンサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−25215(P2009−25215A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190104(P2007−190104)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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