説明

表面伝導型電子放出素子及び該電子放出素子を利用する電子源

【課題】本発明は、表面伝導型電子放出素子及び該電子放出素子を利用する電子源に関し、特にカーボンナノチューブを含む表面伝導型電子放出素子及び該電子放出素子を利用する電子源に関する。
【解決手段】本発明の表面伝導型電子放出素子は、基板及び基板に平行して設置された複数の電極を含む。前記表面伝導型電子放出素子は、それぞれ前記複数の電極に嵌入された複数のカーボンナノチューブ素子を含む。前記カーボンナノチューブ素子の一部は前記電極に固定され、対向する端部は、近接する電極の方向に延伸する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面伝導型電子放出素子及び該電子放出素子を利用する電子源に関し、特にカーボンナノチューブを含む表面伝導型電子放出素子及び該電子放出素子を利用する電子源に関する。
【背景技術】
【0002】
SEDとは、表面伝導型電子放出素子(Surface−conduction Electron−emitter,SCE)と呼ばれる平面構造の素子を応用したディスプレイ装置の名称である。平面状の電子放出源から真空中に電子を放ち、蛍光体にぶつけて発光させる「FED」と呼ばれる表示技術の1つである。ブラウン管の電子銃にあたる装置が平面状になっており、ブラウン管のような明るくてコントラストの高い画面を大型平面ディスプレイで実現することが可能となっている。また、発光原理そのものは、ブラウン管と同様で、電子を真空中に放って発光面に塗布された蛍光物質にぶつける仕組みを用いている。具体的には、ブラウン管の電子銃に相当する電子放出部をディスプレイの画素分だけ並べたガラス基板と、蛍光体を塗布したガラス基板を近接して配置することで、その間を真空封止した構造を取る。そして、電子放出素子をディスプレイのすべての画素に放出することによって、ブラウン管と同じ発光原理を可能にしている。なお、ブラウン管のように偏向が必要ないため薄型で大画面の平面ディスプレイを作ることが可能である。加えて、消費電力もブラウン管ディスプレイの半分程度で済むため、液晶やPDP(プラズマディスプレイ)と並び、大型平面テレビやディスプレイを普及させる技術として、既に製品化が始まっている。
【0003】
一般に、SEDは複数のSCE10を備える。図1に示すように、SCE10は、陰極基板12と、電極112、114と、導電性薄膜116と、エミッタ118と、を備える。前記エミッタ118の一部には、ナノスケールの隙間120が形成されている。前記電極112、114に所定の電圧を印加すると、前記エミッタ隙間120の間に所定の電界が印加されることで、電子が放出される。このとき、前記エミッタ隙間120から放出された電子は、導電性薄膜116の表面に沿ってトンネリングし、この放出された電子は、陽極電極14に印加された高電圧によって加速されて蛍光体16と衝突する。従って、この衝突から発生したエネルギーにより、蛍光体16が励起されることで発光が行われる。
【0004】
SEDはCRTと同様の発光原理に基づいており、定評のあるCRTの画質を基本的に継承しながら、精細度などが改善された高画質表示ができる。また消費電力が非常に低く、環境負荷低減の観点からも優位性がある。
【非特許文献1】Xiaobo Zhang外、Advanced Materials、2006年、第18巻、p.1505−1510
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エミッタ間隙の形成において、長時間及び高電流が必要であるので、エネルギー消費が高くなる。また、前記エミッタ間隙はナノスケールで形成されるので、放出電子の行程が短く、放出電子の大部分が陽極電極で蛍光層に衝突できない。前記エミッタ間隙を長く設ける場合、高電圧の印加が必要であり、SCEに損傷を与えるという問題がある。
【0006】
従って、前記問題を解決するために、エネルギー消費が低く、電子放出効率が高い表面伝導型電子放出素子を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面伝導型電子放出素子は、基板及び該基板に平行して設置された複数の電極を含む。前記表面伝導型電子放出素子は、それぞれ前記複数の電極に嵌入された複数のカーボンナノチューブ素子を含む。前記カーボンナノチューブ素子の一部は前記電極に固定され、対向する端部は、近接する電極の方向に延伸する。
【0008】
前記複数のカーボンナノチューブ素子はそれぞれ前記基板に平行するように設置される。
【0009】
前記カーボンナノチューブ素子が設置される電極に近接する電極に、カーボンナノチューブ素子を設置しない場合、前記カーボンナノチューブ素子の端部とこの端部に近接する電極との間に隙間が形成される。
【0010】
前記電極の全部にカーボンナノチューブ素子を設置する場合、近接するカーボンナノチューブ素子の間に隙間が形成される。
【0011】
前記電極は、前記基板に垂直して下方電極及び上方電極を積み重ねることにより形成される。
【0012】
近接する前記電極の間に支持部を設置し、前記支持部を前記下方電極より薄くように形成することが好ましい。
【0013】
さらに、前記電極の一部及び前記カーボンナノチューブ素子の大部分を覆うように、固定層を設けることができる。
【0014】
さらに、近接する電極の間の前記基板に凹部を形成することができる。
【0015】
前記カーボンナノチューブ素子を、のこぎり状に形成することができる。
【0016】
前記カーボンナノチューブ素子は、複数のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブヤーンからなる。
【0017】
前記隙間の寸法は1μm〜10μmにされる。
【0018】
本発明は、前記表面伝導型電子放出素子を利用する電子源を提供する。前記電子源は、基板と、前記基板に垂直する複数の電極と、前記基板に平行する複数のカーボンナノチューブ素子を含む。前記複数のカーボンナノチューブ素子はそれぞれ前記複数の電極に嵌入される。前記カーボンナノチューブ素子の一部は前記電極に固定され、対向する端部は近接する電極の方向に延伸する。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比べると、本発明では、近接するSCEの間の距離を数μmに設けることにより、放出電子を陽極側に引き寄せるのに十分な時間を提供することができる。従って、電子放出効率が高くなる。また、カーボンナノチューブは良好な電子放出特性を有するので、電子放出素子の電圧が低くなり、エネルギー消費も低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0021】
(実施例1)
図2に示すように、本実施例のSCE(表面伝導型電子放出素子)20は、基板22と、前記基板22の表面に垂直に設置された第一電極24及び第二電極24’と、複数のカーボンナノチューブ(CNT)素子26と、を含む。前記第一電極24は第一上方電極244及び第一下方電極242を有し、前記第二電極24’は第二上方電極244’及び第二下方電極242’を有する。前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’はそれぞれ前記基板22に電気的に接続されている。前記第二上方電極244及び前記第二上方電極244’はそれぞれ前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’上に形成されている。前記複数のCNT素子26はそれぞれ前記第一上方電極244と前記第一下方電極242との間及び、前記第二上方電極244’と前記第二下方電極242’との間に設置されている。前記CNT素子26は、それぞれ複数のカーボンナノチューブからなる。隣接する前記CNT素子26の間に間隙28が形成されている。
【0022】
前記基板22は、石英、ガラス、セラミック、プラスチックなどの絶縁材料からなり、また、導電性材料の表面に絶縁材料を被覆させることにより形成することもできる。前記基板22の厚さは実際の条件により設定される。前記基板22が導電性材料の表面に酸化物の絶縁材料を被覆することにより形成される場合、前記酸化物の絶縁材料は所定の厚さに形成される。本実施例において、前記基板22はシリコンシートの表面に二酸化ケイ素を被覆させることにより得られ、厚さが0.5〜1μmに形成されている。
【0023】
前記第一電極24及び前記第二電極24’は、それぞれチタン、パラジウム、金、タングステン、白金などの金属からなり、厚さが20nm〜150nm、幅が数十μm乃至数百μmに形成されている。前記隙間28の寸法は数μm乃至数十μmに設定されている。本実施例において、前記第一電極24及び前記第二電極24’の幅は90μm〜190μm、前記隙間28の寸法は10μmに設定されている。
【0024】
さらに、前記第一電極24の第一下方電極242及び前記第二電極24’の第二下方電極242’を前記基板22に固定させるために、チタンやタングステンなどの良好な付着性がある金属を利用して、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’を形成することができる。前記第一上方電極244及び前記第二上方電極244’のそれぞれと前記CNT素子26との電気抵抗を低減するために、前記第一上方電極244及び前記第二上方電極244’は金又は白金、パラジウムなどの良好な導電性がある金属からなる。前記第一下方電極242及び第二下方電極242’と前記基板22、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’と前記CNT素子26とを良好に電気的に接続するために、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’は多層の金属層から形成される。例えば、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が前記基板22と接続する部分は、チタン又はタングステンからなり、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が前記CNT素子26と接続する部分は、金又は白金、パラジウムからなる。
【0025】
図3に示すように、前記第二電極24’に前記CNT素子26を設置せず、前記第一電極24にだけ前記CNT素子26を設置することができる。この場合、前記CNT素子26の端部262と前記第二電極24’との間に隙間が形成される。
【0026】
本実施例のSCE20は図4に示されるように、前記第一電極24及び前記第二電極24’のそれぞれに前記CNT素子26が設置され、前記CNT素子26は二つの端部262を有する。前記CNT素子26は前記第一電極24及び前記第二電極24’に平行して、前記CNT素子26の前記端部262は前記第一電極24及び前記第二電極24’のそれぞれの両側から外部へ延伸する。前記第一電極24設置される前記CNT素子26と、及び前記第二電極24’に設置される前記CNT素子26と、近接する端部の間に隙間28が形成されている。
【0027】
前記第一電極24及び前記第二電極24’をそれぞれ一体成型で製造することができる。この場合、前記CNT素子26は導電性のテープで、前記第一電極24及び前記第二電極24’のそれぞれの表面に固定することができる。また、前記CNT素子26を前記第一電極24及び前記第二電極24’に嵌入して構成することができる。
【0028】
図5を参照すると、本実施例は、前記SCE20を利用する電子源30を提供している。前記電子源30は、複数の前記SCE20からなる。前記電子源30は、基板22と、複数の前記第一電極24及び前記第二電極24’と、複数の前記CNT素子26と、を含む。複数の前記第一電極24及び前記第二電極24’はそれぞれ前記基板22に平行して前記基板22に設置される。
【0029】
前記電子源30を電子放出表示装置(図示せず)に利用する場合、前記電子源30の上方に陽極電極32及び蛍光層34を設置する。前記電子源30の前記第一電極24及び前記第二電極24’に電圧を印加すると、前記第二電極24’に設置された前記CNT素子26からの電子は前記隙間28に入射すると同時に、前記第一電極24へ飛ぶ。この場合、前記陽極電極32のバイアス電圧が原因で、前記電子は前記陽極電極32の方向に飛び、前記蛍光層に衝突する。本実施例において、前記陽極電極32の電界強度と前記第一電極24及び前記第二電極24’の間の電界強度との比が、6:1に達する場合、前記陽極電極32の電流強度と前記第一電極24及び前記第二電極24’の間に流れる電流強度とは同じになる。従って、前記電子源30は、高い電子放出効率及び電子利用効率という優れた点がある。
【0030】
(実施例2)
図6に示すように、本実施例のSCE40は、基板42と、前記基板42の表面に垂直に設置された第一電極44及び第二電極44’と、複数のCNT素子46と、を含む。前記第一電極44は第一上方電極444及び第一下方電極442を有し、前記第二電極44’は第二上方電極444’及び第二下方電極442’を有する。前記SCE40と実施例1のSCE20とを比べると、次の点が異なる。前記SCE40の前記第一電極44及び前記第二電極44’の間に、前記基板42に支持部48が設置されている。前記支持部48の厚さは前記第一下方電極442及び前記第二下方電極442’のそれぞれの厚さより薄くなるように設けられる。前記支持部48は、酸化ケイ素、アルミナ、金属酸化物、セラミックなどのいずれか一種からなる。前記支持部48を設置することにより、前記CNT素子46の前記第一電極44又は第二電極44’の外部に延伸する部分を、自身の重力が原因で湾曲又は破損することを防止することができる。本実子例において、前記支持部48は、二酸化ケイ素であり、厚さは40nm〜70nmにされる。
【0031】
(実施例3)
図7に示すように、本実施例のSCE50は、基板52と、前記基板52の表面に垂直に設置された第一電極54及び第二電極54’と、複数のCNT素子56と、を含む。前記SCE50と実施例1のSCE20とを比べると、次の点が異なる。前記第一電極54及び前記第二電極54’の間の前記基板52の表面に凹部58が形成されている。本実施例では、ウェットエッチングにより前記凹部58を形成する。前記ウェットエッチング処理において、80℃の水酸化カリウム溶液を利用して10分間反応させる。本実施例の前記凹部58の厚さは10μm〜20μmに形成される。前記基板52は、絶縁材料からなるか又はこの絶縁材料の表面に酸化物を塗布してなるので、前記CNT素子56からの電子に対して一定程度に電磁波を遮蔽する。前記凹部58を設置することにより、前記CNT素子56及び前記基板52の間の距離を増加し、前記基板52による電子遮蔽の効果を低下させることができる。
【0032】
(実施例4)
図8に示すように、本実施例のSCE60は、基板62と、前記基板62の表面に垂直に設置された第一電極64及び第二電極64’と、複数のCNT素子66と、を含む。前記SCE60と実施例1のSCE20とを比べると、次の点が異なる。前記SCE60はさらに固定層68を含む。前記固定層68は、第一電極64及び第二電極64’のそれぞれの一部及び前記CNT素子66の大部分を覆うように設けられる。前記固定層68は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属の酸化物、セラミック、などのいずれか一種からなる。前記固定層68を設置することにより、前記CNT素子66の安定性を高めることができる。
【0033】
なお、上述の四つの実施例のCNT素子は、図9に示すように、のこぎり状に配列された複数のカーボンナノチューブからなることができる。
【0034】
次に、図10乃至図14を参照して、実施例1のSCE20製造方法を説明する。
【0035】
第一段階では、基板22を提供する。前記基板22は、石英、ガラス、セラミック、プラスチックなどの絶縁材料からなり、また、導電性材料の表面に絶縁材料を被覆させることにより形成することもできる。前記基板22の厚さは実際の条件により設定される。前記基板22が導電性材料の表面に酸化物の絶縁材料を被覆することにより形成される場合、前記酸化物の絶縁材料は所定の厚さに形成される。本実施例において、前記基板22はシリコンシートの表面に二酸化ケイ素を被覆させることにより得られ、厚さが0.5〜1μmに形成されている。
【0036】
第二段階では、図11を参照すると、前記基板22に第一下方電極242及び第二下方電極242’を設置する。詳しく説明すると、まず、前記基板22にフォトレジストを塗布してフォトレジストマスクを形成して、フォトリソグラフィー法により前記フォトレジストマスクに二つの平行な領域を形成して前記基板22の一部を露出させる。その後、真空蒸着、スパッタリング、電子線蒸着などの方法により、前記基板22に少なくとも一層の金属層を堆積させる。最後に、アセトンなどの有機溶剤で前記フォトレジストマスク及び、前記フォトレジストマスクに堆積された金属層を除去する。これにより、前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’が得られる。上述の方法に代わりに、前記基板22に少なくとも一層の金属層を堆積させて、前記金属層の表面にフォトレジストマスクを形成して、前記フォトレジストマスクに所定のパターンを設定する。前記所定のパターンに対して、ウェットエッチング又はイオンエッチングで不要な領域を除去して、アセトンなどの有機溶剤で前記フォトレジストマスクを除去する。これにより、前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’が得られる。
【0037】
前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’は、チタン、白金、金、タングステンなどのいずれか一種からなり、長さ及び幅は数十マイクロメートル乃至数百マイクロメートルにされる。前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’の間の距離は、数マイクロメートル乃至数十マイクロメートルにされる。前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’を前記基板22と良く接続させるために、前記第一下方電極242及び前記第二下方電極242’はチタン又はタングステンからなることが好ましい。
【0038】
さらに、前記第一電極24の第一下方電極242及び前記第二電極24’の第二下方電極242’を前記基板22に固定させるために、チタンやタングステンなどの良好な付着性がある金属を利用して、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’を形成することができる。前記第一下方電極242及び第二下方電極242’を多層の金属層から形成することができる。例えば、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が前記基板22と接続する部分は、チタン又はタングステンからなり、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が前記CNT素子26と接続する部分は、金又は白金、パラジウムからなる。
【0039】
第三段階では、前記第一電極24の第一下方電極242及び前記第二電極24’の第二下方電極242’にそれぞれCNT素子26を設置する。図12に示すように、前記CNT素子26はそれぞれ前記基板22に平行して第一下方電極242及び第二下方電極242’に設置される。前記CNT素子16はカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブヤーンからなる。前記CNT素子16は、舗装、堆積、スプレーにより前記第一下方電極242及び第二下方電極242’設置される。
【0040】
舗装工程により前記CNT素子16を設置する方法は、次の工程を含む。第一段階では、カーボンナノチューブフィルムを提供する。第二段階では、前記基板22に平行し且つ前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に垂直して前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に前記カーボンナノチューブフィルムを設置して、前記カーボンナノチューブフィルムにアルコールを滴下して、前記カーボンナノチューブフィルムを縮ませてカーボンナノチューブヤーンを形成する。上述の工程を繰り返して、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に複数のカーボンナノチューブヤーンからなる前記CNT素子16が形成される。前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブアレイを提供するステップと、前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き出すステップと、を含む。前記カーボンナノチューブフィルムの方法は非特許文献1に詳しく説明されている。
【0041】
前記カーボンナノチューブフィルムを前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に設置することは、次のように行われる。前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が設置される前記基板22の一側の端部に粘着剤を設置し、この粘着剤が設置された端部をカーボンナノチューブアレイに接触させて、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に垂直して前記基板22を移動させる。これにより、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’にカーボンナノチューブフィルムを形成することができる。
【0042】
スプレー工程により前記CNT素子16を設置する方法は、次の工程を含む。まず、複数のカーボンナノチューブを、エチルアルコール、アセトン、イソプロピル、1,2−ジクロロエタンなどの有機溶剤又は、表面活性剤を含む溶液(例えば、DBSを含む水溶液)に分散させる。次に、前記複数のカーボンナノチューブを含む溶液を前記第一下方電極242及び第二下方電極242’にスプレーして、前記溶剤を気化させると、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に複数のカーボンナノチューブが形成されている。前記第一下方電極242及び第二下方電極242’を、溶剤の沸点より高い温度まで加熱させて前記溶剤を気化させることができる。前記溶剤は前記高温の条件で素早く気化されるので、カーボンナノチューブが第一下方電極242及び第二下方電極242’に凝集することを防止することができる。
【0043】
堆積工程により前記CNT素子16を設置する方法は、次の工程を含む。まず、複数のカーボンナノチューブを、エチルアルコール、アセトン、イソプロピル、1,2−ジクロロエタンなどの有機溶剤又は、表面活性剤を含む溶液(例えば、DBSを含む水溶液)に分散させる。次に、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’が形成される前記基板22を、カーボンナノチューブを含む溶液に所定の時間浸漬させる。前記カーボンナノチューブは自身の重力が原因で前記第一下方電極242及び第二下方電極242’の表面に堆積する。最後に、前記溶液を気化させて、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に前記CNT素子16を形成することができる。
【0044】
さらに、前記スプレー工程及び前記堆積工程は、前記CNT素子26を所定の方向に向かせる段階を含むことができる。この段階では、前記CNT素子26を前記第一下方電極242及び第二下方電極242’に垂直して形成させるために、前記CNT素子26に対して気流を吹き付けて、又は、電界を印加することにより加工を行う。
【0045】
第四段階では、図13に示すように、前記第一下方電極242及び第二下方電極242’と同じように、前記CNT素子26の表面に第一上方電極244及び第二上方電極244’を設置する。第一上方電極244及び第二上方電極244’の製造方法は前記第一下方電極242及び第二下方電極242’の製造方法と同じである。第一上方電極244及び第二上方電極244’はチタン、白金、金、タングステンなどのいずれか一種からなり、白金、金であることが好ましい。
【0046】
第五段階では、図14に示すように、隙間28を形成する。まず、前記第四段階において作成される前記CNT素子26と、前記第一上方電極244及び前記第二上方電極244’と、の表面にフォトレジストマスクを塗布して、フォトリソグラフィー法により前記フォトレジストマスクの一部を除去して前記CNT素子26の一部を露出させる。イオンエッチング法により前記露出されるCNT素子26の一部を除去して、隙間28を形成する。前記隙間28の寸法は1〜10マイクロメートルにされる。イオンエッチング法で、水素、酸素、六フッ化硫黄などのいずれか一種を利用してエッチングする。本実施例において、酸素プラズマを利用して、気圧が2Pa、電力が100W、反応時間が2分間の条件で、前記CNT素子26の一部を除去する。勿論、前記隙間28を、マスキング法により形成することができる。
【0047】
さらに、本段階では、前記基板22に残留されるカーボンナノチューブをイオンエッチング方法により除去することができる。
【0048】
実施例2のSCE40の製造方法は、実施例1のSCE20の製造方法と比べると、次の点が異なる。第一下方電極442及び第二下方電極442’を設置した後、真空蒸着、スパッタリング、電子線蒸着などの方法により、前記基板42に支持体48を堆積させる。前記支持部48は、酸化ケイ素、アルミナ、金属の酸化物、セラミックなどのいずれか一種からなる。本実子例において、前記支持部48は、二酸化ケイ素であり、厚さは40nm〜70nmにされる。
【0049】
実施例3のSCE50の製造方法は、実施例1のSCE20の製造方法と比べると、次の点が異なる。前記CNT素子56の間に隙間を形成した後、前記隙間に対向して前記基板52に凹部58を形成する。本実施例では、ウェットエッチングにより前記凹部58を形成する。前記ウェットエッチング処理において、80℃の水酸化カリウム溶液を利用して10分間反応させる。本実施例の前記凹部58の厚さは10μm〜20μmに形成される。前記基板52は、絶縁材料又はこの絶縁材料の表面に酸化物を塗布してかなるので、前記CNT素子56からの電子に対して一定程度に電磁波を遮蔽する。前記凹部58を設置することにより、前記CNT素子56及び前記基板52の間の距離を増加し、前記基板52による電子遮蔽の効果を低下させることができる。
【0050】
実施例4のSCE60の製造方法は、実施例1のSCE20の製造方法と比べると、次の点が異なる。前記CNT素子66の間に隙間を形成した後、前記CNT素子66の表面に形成されたフォトレジストマスクを除去せず、固定層68を形成する。前記固定層68は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、金属の酸化物、セラミック、などのいずれか一種からなる。前記固定層68を設置することにより、前記CNT素子66の安定性を高めることができる。
【0051】
なお、前記隙間を形成する段階では、のこぎり状の金型を利用して、前記CNT素子をのこぎり状に加工することができる。図9を参照すると、これにより、近接する前記CNT素子の間に隙間が形成されることができる。
【0052】
図5を参照すると、電子源30の製造方法は次の段階を含む。第一段階では、基板22を提供する。第二段階では、前記基板22に複数の平行な下方電極を設置する。第三段階では、それぞれ前記複数の下方電極の表面にCNT素子26を設置する。前記CNT素子26は複数の平行するカーボンナノチューブからなり、前記電極に垂直して設置される。第四段階では、前記下方電極と同じように、前記CNT素子26の表面に上方電極を設置する。前記下方電極及び前記上方電極は電極24、24’を構成する。第五段階では、隙間28を形成する。
【0053】
従来技術と比べて、本発明のSCE及び電子源は、フォトリソグラフィー、マスキングなどの方法を介して製造されるので、製造方法は簡単である。近接するSCEの間の距離を数μmに設けることにより、放出電子を陽極側に引き寄せるのに十分な時間を提供することができる。従って、電子放出効率が高くなる。また、カーボンナノチューブは良好な電子放出特性を有するので、電子放出素子の電圧が低くなり、エネルギー消費も低くなる。従って、本発明のSCE及び電子源を利用することにより、SEDの製造工程を簡単にし、SEDの発光効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】従来技術であるSCEの模式図である。
【図2】本発明の実施例1に係るSCEの模式図である。
【図3】本発明の実施例1に係るSCEの模式図である。
【図4】本発明の実施例1に係るSCEの模式図である。
【図5】本発明の実施例1に係る電子源及びこの電子源を利用するSEDの模式図である。
【図6】本発明の実施例2に係るSCEの模式図である。
【図7】本発明の実施例3に係るSCEの模式図である。
【図8】本発明の実施例4に係るSCEの模式図である。
【図9】本発明の実施例1の変型例に係るSCEの模式図である。
【図10】本発明の実施例1の製造方法のフローチャートである。
【図11】本発明の実施例1の製造方法の第二段階を示す図である。
【図12】本発明の実施例1の製造方法の第三段階を示す図である。
【図13】本発明の実施例1の製造方法の第四段階を示す図である。
【図14】本発明の実施例1の製造方法の第五段階を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 SCE
112 電極
114 電極
116 導電性薄膜
118 エミッタ
12 基板
120 隙間
14 陽極電極
16 蛍光体
20 SCE
22 基板
24,24’ 電極
242,242’ 下方電極
244,244’ 上方電極
26 CNT素子
262 端部
28 隙間
30 電子源
32 陽極電極
34 蛍光層
40 SCE
42 基板
44,44’ 電極
442,442’ 下方電極
444,444’ 上方電極
46 CNT素子
48 支持部
50 SCE
52 基板
54,54’ 電極
56 CNT素子
58 凹部
60 SCE
62 基板
64,64’ 電極
66 CNT素子
68 固定層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び該基板に平行して設置された複数の電極を含む表面伝導型電子放出素子であり、
前記複数の電極のそれぞれに嵌入された複数のカーボンナノチューブ素子を含み、
前記カーボンナノチューブ素子の一部は前記電極に固定され、対向する端部は近接する電極の方向に延伸することを特徴とする表面伝導型電子放出素子。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブ素子はそれぞれ前記基板に平行するように設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ素子が設置された電極に近接する電極に、カーボンナノチューブ素子が設置されておらず、
前記カーボンナノチューブ素子の端部と該端部に近接する電極との間に隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項4】
前記電極の全部にカーボンナノチューブ素子が設置され、
近接するカーボンナノチューブ素子の間に隙間が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項5】
前記電極は、前記基板に垂直して下方電極及び上方電極を積み重ねることにより形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項6】
近接する前記電極の間に支持部が設置され、前記支持部は前記下方電極より薄くように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項7】
前記電極の一部及び前記カーボンナノチューブ素子の大部分を覆うように、固定層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項8】
近接する電極の間の前記基板に凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ素子は、のこぎり状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ素子は、複数のカーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブヤーンからなることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項11】
前記隙間の寸法は1μm〜10μmにされていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の表面伝導型電子放出素子。
【請求項12】
請求項1の表面伝導型電子放出素子を利用した電子源であり、
基板と、該基板に垂直する複数の電極と、前記基板に平行する複数のカーボンナノチューブ素子を含み、
前記複数のカーボンナノチューブ素子はそれぞれ前記複数の電極に嵌入され、
前記カーボンナノチューブ素子の一部は前記電極に固定され、対向する端部は近接する電極の方向に延伸していることを特徴とする電子源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−130574(P2008−130574A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305027(P2007−305027)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【Fターム(参考)】