説明

表面保護フィルム

【課題】可塑剤を用いなくても十分に高い濡れ性を発現でき、さらに、リワーク性にも優れる、新規な表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】基材層1と粘着剤層2を有する表面保護フィルム10であって、該粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する1回目濡れ速度が5.0cm/sec以上であり、アクリル板に対する3回目濡れ速度が5.0cm2/sec以上であり、アクリル板に対する粘着力が0.02〜0.5N/25mmである表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関する。本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層を有し、表示部材や画像認識部材や電子機器の表面に貼り付けて該表面を保護する用途等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
LCDや有機ELおよびこれらを用いたタッチパネル等の表示部材やカメラのレンズ部等の画像認識部材や電子機器の表面には、該表面の傷や汚れなどを防止するために、表面保護フィルムが貼り合わせられることがある。
【0003】
このような表面保護フィルムは、組み立て等の製造工程内や製品の出荷時において手作業で貼り合わせることがあり、手作業で貼り合わせる場合には被着体と表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込むことがある。
【0004】
表面保護フィルムを被着体に手作業で貼り合わせる場合に、被着体と表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込まないようにする技術として、表面保護フィルムの粘着剤層に可塑剤を添加して濡れ性を向上させる技術が報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、可塑剤が添加された粘着剤層を用いる場合、該可塑剤によって被着体が汚染されることがある。
【0006】
また、表面保護フィルムを被着体に手作業で貼り合わせる場合には、濡れ性とともに軽剥離性が要求される。被着体に貼り合わされた表面保護フィルムは、剥離された後に再度被着体に貼り合わされ、再び保護フィルムとして使用されるためである。濡れ性が良くても剥離が重いと、表面保護フィルムを剥離した際に該表面保護フィルムに変形し、再度保護フィルムとして使用できなくなる。そのために何度も気泡なく貼り合わせることができ、保護フィルムの変形なく剥離することができるリワーク性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−209324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、可塑剤を添加しなくても十分に高い濡れ性を発現でき、さらに、リワーク性にも優れる、新規な表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表面保護フィルムは、
基材層と粘着剤層を有する表面保護フィルムであって、
該粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する1回目濡れ速度が5.0cm/sec以上である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する3回目濡れ速度が5.0cm/sec以上である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する粘着力が0.02〜0.5N/25mmである。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護フィルムは、表示部材、画像認識部材、または電子機器の表面に用いられる。
【0013】
本発明は、表示部材も提供する。
本発明の表示部材は、本発明の表面保護フィルムで被覆されている。
【0014】
本発明は、画像認識部材も提供する。
本発明の画像認識部材は、本発明の表面保護フィルムで被覆されている。
【0015】
本発明は、電子機器も提供する。
本発明の電子機器は、本発明の表面保護フィルムで被覆されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可塑剤を用いなくても十分に高い濡れ性を発現でき、さらに、リワーク性にも優れる、新規な表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。
【図2】濡れ速度の測定におけるアクリル板と試験片との貼り合わせ前の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪A.表面保護フィルム≫
本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層とを備える。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。表面保護フィルム10は、基材層1と粘着剤層2を備える。本発明の表面保護フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。
【0020】
基材層1の粘着剤層2を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材層に、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミン、長鎖アルキル系添加剤等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層を設けたりすることができる。
【0021】
本発明の表面保護フィルムは、離型性を有する剥離ライナーが貼り合わせられていても構わない。
【0022】
本発明の表面保護フィルムの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。本発明の効果を十分に発現するための観点から、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは15〜250μmであり、さらに好ましくは20〜200μmであり、特に好ましくは25〜150μmである。
【0023】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する1回目濡れ速度が5.0cm/sec以上であり、好ましくは10cm/sec以上であり、より好ましくは15cm/sec以上であり、さらに好ましくは20cm/sec以上であり、特に好ましくは30cm/sec以上である。上記1回目濡れ速度の上限値は、特に限定されないが、現実的には、好ましくは1000cm/sec以下であり、より好ましくは100cm/sec以下である。粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する1回目濡れ速度が、上記範囲内にあれば、本発明の表面保護フィルムは、可塑剤を用いなくても十分に高い濡れ性を発現できる。なお、上記1回目濡れ速度の測定については、後述する。
【0024】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する3回目濡れ速度が、好ましくは5.0cm/sec以上であり、より好ましくは10cm/sec以上であり、さらに好ましくは15cm/sec以上であり、特に好ましくは20cm/sec以上であり、最も好ましくは30cm/sec以上である。上記3回目濡れ速度の上限値は、特に限定されないが、現実的には、好ましくは1000cm/sec以下であり、より好ましくは100cm/sec以下である。粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する3回目濡れ速度が、上記範囲内にあれば、本発明の表面保護フィルムは、可塑剤を用いなくても十分に高い濡れ性を一層発現でき、さらに、リワーク性にも優れる。なお、上記3回目濡れ速度の測定については、後述する。
【0025】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する粘着力が、好ましくは0.02〜0.5N/25mmであり、より好ましくは0.02〜0.45N/25mmであり、さらに好ましくは0.02〜0.4N/25mmである。粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する粘着力が、上記範囲内にあれば、本発明の表面保護フィルムは、リワーク性に優れる。なお、上記粘着力の測定については、後述する。
【0026】
本発明の表面保護フィルムは、粘着剤層の被着体と接する面における水の接触角が、好ましくは90°以上である。上記水の接触角の上限値は、特に限定されないが、現実的には、好ましくは120°以下である。粘着剤層の被着体と接する面における水の接触角が、上記範囲内にあれば、本発明の表面保護フィルムは、低粘着力と濡れ性とを同時に実現できる。
【0027】
<A−1.基材層>
基材層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは10〜250μmであり、さらに好ましくは15〜200μmであり、特に好ましくは20〜150μmである。
【0028】
基材層は、単層でも良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層は、延伸されたものであっても良い。
【0029】
基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。基材層は、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。
【0030】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。
【0031】
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層の材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
【0032】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部である。
【0033】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0034】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0035】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0036】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0037】
<A−2.粘着剤層>
粘着剤層の厚みは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは3〜50μmであり、さらに好ましくは5〜30μmである。
【0038】
粘着剤層は粘着剤により構成される。粘着剤は1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0039】
粘着剤は、好ましくは、ポリマーPを主成分とする。粘着剤中のポリマーPの含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【0040】
ポリマーPは、架橋されたポリマーであっても良い。
【0041】
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な粘着剤を採用し得る。このような粘着剤としては、例えば、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。本発明の効果がより一層発現できる点で、粘着剤として、好ましくは、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤である。
【0042】
シリコーン系粘着剤としては、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。このようなシリコーン系粘着剤としては、好ましくは、シリコーン樹脂をブレンドまたは凝集させることにより得られるものを採用し得る。
【0043】
シリコーン系粘着剤としては、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤や過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が挙げられる。これらのシリコーン系粘着剤の中でも、過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)を使用せず、分解物が発生しないことから、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0044】
付加反応硬化型シリコーン系粘着剤の硬化反応としては、例えば、ポリアルキルシリコーン系粘着剤を得る場合、一般的に、ポリアルキル水素シロキサン組成物を白金触媒により硬化させる方法が挙げられる。
【0045】
ウレタン系粘着剤としては、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。このようなウレタン系粘着剤としては、好ましくは、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂からなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
粘着剤層を構成する粘着剤中には、任意の適切な添加剤を含有し得る。このような添加剤としては、例えば、軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、滑剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料、溶剤などが挙げられる。しかしながら、本発明において、粘着剤層を構成する粘着剤中には、好ましくは、可塑剤を含まない。可塑剤が添加された粘着剤層を用いると、濡れ性は向上するものの、該可塑剤によって被着体が汚染されるおそれがあるからである。
【0047】
粘着剤層を構成する粘着剤は、任意の適切な方法によって製造し得る。粘着剤層を構成する粘着剤は、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、紫外線(UV)による重合など、ポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法を用いるとともに、任意の適切な架橋方法を採用し、必要に応じて任意の適切な添加剤を用いることによって製造し得る。
【0048】
粘着層を構成する粘着剤は、ゾル成分における低分子量成分の含有割合が少ない方が好ましい。低分子量成分の含有割合が少ないと、被着体への汚染が少なく安定したリワーク性が得られると推測できる。
【0049】
本発明の表面保護フィルムは、任意の適切な用途に用い得る。好ましくは、本発明の表面保護フィルムは、表示部材、画像認識部材、または電子機器の表面に用いられる。
【0050】
本発明の表面保護フィルムで被覆されている表示部材は、手作業で何度も貼り合わせ・剥離を行うことが可能である。
【0051】
本発明の表面保護フィルムで被覆されている画像認識部材は、手作業で何度も貼り合わせ・剥離を行うことが可能である。
【0052】
本発明の表面保護フィルムで被覆されている電子機器は、手作業で何度も貼り合わせ・剥離を行うことが可能である。
【0053】
≪B.表面保護フィルムの製造方法≫
本発明の表面保護フィルムは、任意の適切な方法により製造することができる。このような製造方法としては、例えば、
(1)粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法、
(2)それに準じ、セパレータ状に塗布、形成した粘着剤層を移着する方法、
(3)粘着剤層の形成材料を基材上に押出して形成塗布する方法、
(4)基材と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、
(5)基材上に粘着剤層を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、
(6)粘着剤層とフィルムやラミネート層等の基材形成材とを二層または多層ラミネートする方法、
などの、任意の適切な製造方法に準じて行うことができる。
【0054】
上記塗布の方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0055】
生産性およびコストの点からは、本発明の表面保護フィルムの製造方法としては、特に、粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法が好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、「部」は「重量部」を意味する。
【0057】
(1回目濡れ速度の測定)
試験片:2.5cm×8.0cm
被着体:アクリル板(三菱レイヨン社製、商品名:アクリライトL)
測定回数:3(独立して3回測定したものの平均値を採用)
測定環境:クラス10000のクリーンルーム(温度23℃、湿度50%RH)
(1)図2に、1回目濡れ速度の測定におけるアクリル板と試験片との貼り合わせ前の状態を示す。図2にように、試験片(表面保護フィルム)の粘着剤層面の一部をアクリル板に接触させた状態で、角度を20〜30度にした。
(2)次に、試験片から手を離し、自重のみで貼り合わせ、手を離したと同時にデジタルカメラで試験片の粘着剤層がアクリル板に濡れ広がる様子を0.2秒間隔で記録した。
(3)上記(1)でアクリル板に接触させた箇所以外の粘着剤層面がアクリル板に接触した時を初期点として、そこから0.2秒毎の濡れ広がる様子を、画像解析ソフト「ImageJ」により解析した。
(4)濡れ速度を下記の算出式を用いて算出した。
濡れ速度(cm/sec)=(初期点から0.2秒後の濡れ面積(cm)−初期点の濡れ面積(cm))/0.2(sec)
【0058】
(3回目濡れ速度の測定)
1回目濡れ速度の測定後のサンプルを用い、サンプル端部を指で持ちあげて、図2の様に試験片(表面保護フィルム)の粘着剤層面の一部をアクリル板に接触させた状態で、角度20〜30°にした。次に、試験片から手を離して自重のみで貼り合わせ、手を離したと同時にデジタルカメラで試験片の粘着剤層がアクリル板に濡れ広がる様子を0.2秒間隔で記録し、1回目濡れ速度と同様にして2回目濡れ速度を測定した。同様にして、2回目濡れ速度測定後のサンプルを用い、3回目濡れ速度を測定した。
【0059】
(濡れ性の評価)
1回目濡れ速度の測定方法と同じ試験片を作製し、手作業にて10m/minの速度で試験片をアクリル板に貼り合わせ、試験片とアクリル板の間の気泡の有無を確認した。
○:気泡無し。
△:僅かに気泡を巻き込むが、指などで簡単に気泡を除去でき、実使用上問題ない。
×:気泡を多数巻き込み、気泡を簡単に除去できない。
【0060】
(汚染性の評価)
粘着力測定後のアクリル板(三菱レイヨン社製、商品名:アクリライトL)を3波長蛍光灯下で目視し、糊残り、曇りの有無を確認した。
○:糊残り及び曇り無し。
×:糊残りあるいは曇り有り。
【0061】
(粘着力の測定)
表面保護フィルムを、幅25mm、長さ150mmに切断し、評価用サンプルとした。
温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で、評価用サンプルの粘着剤層面をアクリル板(三菱レイヨン社製、商品名:アクリライトL)に、2kgローラー1往復により貼り付けた。23℃で30分間養生した後、万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM−1kNB)を用い、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/minで粘着力を測定した。
【0062】
(リワーク性の評価)
リワーク性は、下記の基準で評価した。
○:3回目濡れ速度が5.0cm/sec以上であり、フィルムの変形および粘着剤層面の変形がない。
×:3回目濡れ速度が5.0cm/sec未満であり、濡れ性評価が×であり、フィルムの変形および粘着剤層面の変形がある。
【0063】
(フィルムの変形の評価)
粘着力測定後の表面保護フィルムの形状を蛍光灯下目視にて判断した。
フィルムの変形は、下記の基準で評価した。
○:変形がない。
×:変形がある。
【0064】
(粘着剤層面の変形の評価)
粘着力測定後の表面保護フィルムの粘着剤層面の形状を蛍光灯下目視にて判断した。
○:変形がない。
×:変形がある。
【0065】
(水の接触角の測定)
粘着剤層の表面に5.0μlの水滴を滴下し、滴下直後の水に対する接触角を自動接触角測定装置(英弘精機株式会社製、OCA20)により測定した。接触角の数値は、n=3の平均をとった。
【0066】
〔実施例1〕
シリコーン系粘着剤として「X−40−3229」(固形分60%、信越化学工業社製)100重量部、白金触媒として「CAT−PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(1)を作製した。
結果を表1に示した。
【0067】
〔実施例2〕
シリコーン系粘着剤として「X−40−3229」(固形分60%、信越化学工業社製)90重量部、「KR−3700」(固形分60%、信越化学工業社製)10重量部、白金触媒として「CAT−PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(2)を作製した。
結果を表1に示した。
【0068】
〔実施例3〕
シリコーン系粘着剤として「X−40−3229」(固形分60%、信越化学工業社製)80重量部、「KR−3700」(固形分60%、信越化学工業社製)20重量部、白金触媒として「CAT−PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(3)を作製した。
結果を表1に示した。
【0069】
〔実施例4〕
ウレタン系粘着剤として「PREMINOL 7012」(固形分100%、AGC旭硝子社製)100重量部、架橋剤として「コロネートL」(固形分75%、日本ポリウレタン社製)13.2重量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.015重量部、溶剤としてトルエン110重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、ウレタン系粘着剤組成物を作製した。
得られたウレタン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度130℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥させた。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せ、エージング温度50℃にて2日間エージングを行い、表面保護フィルム(4)を作製した。
結果を表1に示した。
【0070】
〔実施例5〕
ウレタン系粘着剤として「US−902」(固形分60%、一方社油脂工業社製)100重量部、架橋剤として「架橋剤N」(一方社油脂工業社製)9.6重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、ウレタン系粘着剤組成物を作製した。
得られたウレタン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度100℃、乾燥時間2分の条件でキュアー・乾燥させた。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せ、エージング温度40℃にて4日間エージングを行い、表面保護フィルム(5)を作製した。
結果を表1に示した。
【0071】
〔比較例1〕
2−エチルヘキシルアクリレート200g、2−ヒドロキシエチルアクリレート8g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4g、酢酸エチル312gの混合物を、窒素気流中、65℃にて、6時間反応させて、Tg=−68℃、重量平均分子量50万のアクリルポリマーAの溶液(40重量%)を得た。得られたアクリルポリマーAの溶液(40重量%)を酢酸エチルで20重量%に希釈し、この溶液100gにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業(株)社製、商品名:コロネートHX)0.8g、架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1重量%酢酸エチル溶液)0.4gを加えて、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
得られたアクリル系粘着剤溶液を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度110℃、乾燥時間3分の条件でキュアー・乾燥させた。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(C1)を作製した。
結果を表1に示した。
【0072】
〔比較例2〕
シリコーン系粘着剤として「SD 4587L PSA」(固形分60%、東レ・ダウコーニング社製)100重量部、白金触媒として「SRX−212 CATALYST」(信越化学工業社製)0.9重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(C2)を作製した。
結果を表1に示した。
【0073】
〔比較例3〕
シリコーン系粘着剤として「X−40−3229」(固形分60%、信越化学工業社製)60重量部、「KR−3700」(固形分60%、信越化学工業社製)40重量部、白金触媒として「CAT−PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(C3)を作製した。
結果を表1に示した。
【0074】
〔比較例4〕
シリコーン系粘着剤として「X−40−3229」(固形分60%、信越化学工業社製)40重量部、「KR−3700」(固形分60%、信越化学工業社製)60重量部、白金触媒として「CAT−PL−50T」(信越化学工業社製)0.5重量部、溶剤としてトルエン300重量部を配合し、ディスパーで攪拌して、シリコーン系粘着剤組成物を作製した。
得られたシリコーン系粘着剤組成物を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度150℃、乾燥時間1分の条件でキュアー・乾燥した。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(C4)を作製した。
結果を表1に示した。
【0075】
〔比較例5〕
比較例1で得られたアクリル粘着剤溶液100重量部に対し、可塑剤としてフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)』((株)ジェイ・プラス社製)を50重量部配合して、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
得られたアクリル系粘着剤溶液を、ポリエステル樹脂からなる基材「ルミラーS10」(厚み38μm、東レ社製)にファウンテンロールで乾燥後の厚みが21μmとなるよう塗布し、乾燥温度110℃、乾燥時間3分の条件でキュアー・乾燥させた。
次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にフッ化シリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(C5)を作製した。
結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の表面保護フィルムは、表示部材や画像認識部材や電子機器の表面に貼り付けて該表面を保護する用途等に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0078】
1 基材層
2 粘着剤層
10 表面保護フィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層を有する表面保護フィルムであって、
該粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する1回目濡れ速度が5.0cm/sec以上である、
表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する3回目濡れ速度が5.0cm/sec以上である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層の被着体と接する面における、アクリル板に対する粘着力が0.02〜0.5N/25mmである、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
表示部材、画像認識部材、または電子機器の表面に用いられる、請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護フィルムで被覆されている表示部材。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護フィルムで被覆されている画像認識部材。
【請求項7】
請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護フィルムで被覆されている電子機器。






【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224802(P2012−224802A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95694(P2011−95694)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】